(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】スイッチおよびスイッチの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01H 13/18 20060101AFI20230612BHJP
F16F 1/18 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01H13/18 B
F16F1/18 Z
(21)【出願番号】P 2021038328
(22)【出願日】2021-03-10
【審査請求日】2021-12-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000222934
【氏名又は名称】東洋電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100126664
【氏名又は名称】鈴木 慎吾
(74)【代理人】
【識別番号】100154852
【氏名又は名称】酒井 太一
(74)【代理人】
【識別番号】100194087
【氏名又は名称】渡辺 伸一
(72)【発明者】
【氏名】藤 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】新井 倫人
(72)【発明者】
【氏名】冨永 祐介
(72)【発明者】
【氏名】河原 竜
(72)【発明者】
【氏名】花崎 芳和
【審査官】井上 信
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-78852(JP,A)
【文献】実開昭62-100643(JP,U)
【文献】実開昭57-192625(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01H 13/12 - 13/24
H01H 13/50 - 13/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング(21)に移動可能に支持される可動子(24)を備え、
前記可動子(24)の移動により、前記ハウジング(21)に支持されたハウジング側端子(35)と、前記可動子(24)に支持された可動端子(41)と、を接離させるスイッチにおいて、
前記可動子(24)は、前記ハウジング(21)内に第一の方向で往復動可能に挿入され、
前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の一方は、前記可動子(24)の移動に伴い、前記ハウジング(21)側又は前記可動子(24)側から入力を受けて弾性変形し、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の他方を相手端子(41A)として接離する弾性端子(35A)とされ、
前記弾性端子(35A)は、
前記相手端子(41A)に対して
接することで電気的に接続可能な接点機能部(38)と、前記可動子(24)の移動に伴う前記入力を受ける開閉機能部(37d)と、を備え、
前記第一の方向に長手方向を向けて延び、前記第一の方向と交差する第二の方向に弾性変形することで、前記相手端子(41A)に対して接離するものであり、
前記長手方向の一端部が、前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)に支持され、前記長手方向の他端部が、前記開閉機能部(37d)とされ、
前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに別体に構成され
、
前記開閉機能部(37d)よりも前記長手方向の一端側に、前記接点機能部(38)を備えていることを特徴とするスイッチ。
【請求項2】
前記相手端子(41A)を支持する前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)は、前記可動子(24)の移動に伴い前記開閉機能部(37d)に接して前記入力を与える第二開閉機能部(31b)を備え、
前記開閉機能部(37d)および前記第二開閉機能部(31b)は、それぞれ湾曲形状を成し、互いの接触時には、それぞれの湾曲形状同士を接触させることを特徴とする
請求項1に記載のスイッチ。
【請求項3】
前記弾性端子(35A)は、板状の弾性片(37)を備え、
前記弾性片(37)は、側縁にリブ(37e)を形成した補強部(37f)を備えていることを特徴とする
請求項1又は2に記載のスイッチ。
【請求項4】
前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに異なる材料で形成されていることを特徴とする
請求項1から3の何れか1項に記載のスイッチ。
【請求項5】
前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)は、前記可動子(24)の移動方向で規定の幅を有して互いに接離する接触面(38s,43s)を有していることを特徴とする
請求項1から4の何れか1項に記載のスイッチ。
【請求項6】
ハウジング(21)に移動可能に支持される可動子(24)を備え、
前記可動子(24)の移動により、前記ハウジング(21)に支持されたハウジング側端子(35)と、前記可動子(24)に支持された可動端子(41)と、を接離させるスイッチにおいて、
前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の一方は、前記可動子(24)の移動に伴い、前記ハウジング(21)側又は前記可動子(24)側から入力を受けて弾性変形し、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の他方を相手端子(41A)として接離する弾性端子(35A)とされ、
前記弾性端子(35A)は、
前記相手端子(41A)に対して電気的に接続可能な接点機能部(38)と、
前記可動子(24)の移動に伴う前記入力を受ける開閉機能部(37d)と、を備え、
前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに別体に構成され、
前記可動子(24)は、移動前位置(P1)と移動後位置(P2)との間で第一の方向で移動可能であり、
前記可動子(24)の移動範囲内で前記移動前位置(P1)と前記移動後位置(P2)との間には、前記可動端子(41)および前記ハウジング側端子(35)の接離が切り替わる切替位置(P3)が設定され、
前記可動子(24)が前記移動前位置(P1)および前記移動後位置(P2)の一方の位置と前記切替位置(P3)との間を移動するとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)と前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)とは、互いに摺接するものであり、
前記可動子(24)が前記一方の位置にあるとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)は、前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)よりも前記一方の位置側にあり、
前記可動子(24)が前記切替位置(P3)にあるとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)は、前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)よりも前記移動前位置(P1)および前記移動後位置(P2)の他方の位置側にあることを特徴と
するスイッチ。
【請求項7】
請求項1から6の何れか一項に記載のスイッチの製造方法において、
前記弾性端子(35A)が接離する前記相手端子(41A)は、前記相手端子(41A)を支持する前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)の本体(31)に、相手側接点機能部(43)をインサート成形した構成であることを特徴とするスイッチの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチおよびスイッチの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内の隔壁に取り付けられた固定接点部材(固定端子)と、押圧可能な押しボタンに取り付けられてハウジング内に配置された可動接点部材(可動端子)と、を備えるスイッチ装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
可動接点部材は、板バネ材を略U字状に折り曲げて形成される。可動接点部材は、一対の腕部の先端部に可動接点部を屈曲形成するとともに、可動接点部よりも腕部の基端側に山形部を屈曲形成している。可動接点部材は、ハウジング内の隔壁に形成した突起に対して山形部を乗り降りさせることで弾性変形し、可動接点部を固定接点部材の固定接点部に対して接離(接触、離間)させ、接点間の通電をオン、オフ(開閉)させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、端子の弾性変形により接点を開閉させるスイッチにおいて、従来の可動端子のように、接点部のような接点機能部と山形部のような開閉機能部とを同一の部材(弾性片)に形成すると、両機能を満足させる形状、加工および材料等の選定が難しくなるという課題がある。
そこで本発明は、端子の弾性変形により接点を開閉させるスイッチおよびスイッチの製造方法において、端子の設計を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決手段として、請求項1に記載した発明は、ハウジング(21)に移動可能に支持される可動子(24)を備え、前記可動子(24)の移動により、前記ハウジング(21)に支持されたハウジング側端子(35)と、前記可動子(24)に支持された可動端子(41)と、を接離させるスイッチにおいて、前記可動子(24)は、前記ハウジング(21)内に第一の方向で往復動可能に挿入され、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の一方は、前記可動子(24)の移動に伴い、前記ハウジング(21)側又は前記可動子(24)側から入力を受けて弾性変形し、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の他方を相手端子(41A)として接離する弾性端子(35A)とされ、前記弾性端子(35A)は、前記相手端子(41A)に対して接することで電気的に接続可能な接点機能部(38)と、前記可動子(24)の移動に伴う前記入力を受ける開閉機能部(37d)と、を備え、前記第一の方向に長手方向を向けて延び、前記第一の方向と交差する第二の方向に弾性変形することで、前記相手端子(41A)に対して接離するものであり、前記長手方向の一端部が、前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)に支持され、前記長手方向の他端部が、前記開閉機能部(37d)とされ、前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに別体に構成され、前記開閉機能部(37d)よりも前記長手方向の一端側に、前記接点機能部(38)を備えていることを特徴とするスイッチを提供する。
【0006】
この構成によれば、端子の弾性変形により接点を開閉させるスイッチにおいて、弾性端子の開閉機能部と接点機能部とを互いに別部材に分けることで、弾性端子における形状、加工および材料の選定がしやすくなる。このため、端子ひいてはスイッチの設計を容易することができる。
また、ハウジング内に可動子がストローク可能に挿入される構成において、ストローク方向に延びる弾性端子の一端部が支点となり、他端部が力点としての開閉機能部となる。このため、弾性端子を弾性変形させるための入力が小さくて済み、スイッチ作動力を軽減することができる。接点機能部は、開閉機能部よりも長手方向の一端側(基端側)に配置されるので、接点機能部および開閉機能部をコンパクトに配置することができる。
【0009】
請求項2に記載した発明は、前記相手端子(41A)を支持する前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)は、前記可動子(24)の移動に伴い前記開閉機能部(37d)に接して前記入力を与える第二開閉機能部(31b)を備え、前記開閉機能部(37d)および前記第二開閉機能部(31b)は、それぞれ湾曲形状を成し、互いの接触時には、それぞれの湾曲形状同士を接触させることを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、弾性端子の開閉機能部とハウジング又は可動子の第二開閉機能部との摺動がスムーズになり、スイッチ作動力を軽減することができる。開閉機能部と第二開閉機能部との摺動部分の摩耗が抑えられ、弾性端子と相手端子との接点位置の変化を抑えることができる。
【0011】
請求項3に記載した発明は、前記弾性端子(35A)は、板状の弾性片(37)を備え、前記弾性片(37)は、側縁にリブ(37e)を形成した補強部(37f)を備えていることを特徴とする。
【0012】
この構成によれば、弾性端子を板状の弾性片で容易に形成するとともに、弾性片の規定箇所にリブを含む補強部を設けることで、弾性端子を弾性変形可能としつつ、規定箇所の剛性を高め、弾性端子の所望の弾性変形を得ることができる。
【0013】
請求項4に記載した発明は、前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに異なる材料で形成されていることを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、開閉機能部および接点機能部を、それぞれに要する耐摩耗性や耐食性などの要件に適した材料で形成可能となり、端子ひいてはスイッチの設計をより容易することができる。
【0015】
請求項5に記載した発明は、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)は、前記可動子(24)の移動方向で規定の幅を有して互いに接離する接触面(38s,43s)を有していることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、ハウジング側端子および可動端子の各接触面に荒れが生じたり弾性端子の弾性変形が影響したとしても、ハウジング側端子と可動端子との接続位置の変化を抑えることができる。
【0017】
請求項6に記載した発明は、ハウジング(21)に移動可能に支持される可動子(24)を備え、前記可動子(24)の移動により、前記ハウジング(21)に支持されたハウジング側端子(35)と、前記可動子(24)に支持された可動端子(41)と、を接離させるスイッチにおいて、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の一方は、前記可動子(24)の移動に伴い、前記ハウジング(21)側又は前記可動子(24)側から入力を受けて弾性変形し、前記ハウジング側端子(35)および前記可動端子(41)の他方を相手端子(41A)として接離する弾性端子(35A)とされ、前記弾性端子(35A)は、前記相手端子(41A)に対して電気的に接続可能な接点機能部(38)と、前記可動子(24)の移動に伴う前記入力を受ける開閉機能部(37d)と、を備え、前記開閉機能部(37d)と前記接点機能部(38)とは、互いに別体に構成され、前記可動子(24)は、移動前位置(P1)と移動後位置(P2)との間で第一の方向で移動可能であり、前記可動子(24)の移動範囲内で前記移動前位置(P1)と前記移動後位置(P2)との間には、前記可動端子(41)および前記ハウジング側端子(35)の接離が切り替わる切替位置(P3)が設定され、前記可動子(24)が前記移動前位置(P1)および前記移動後位置(P2)の一方の位置と前記切替位置(P3)との間を移動するとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)と前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)とは、互いに摺接するものであり、前記可動子(24)が前記一方の位置にあるとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)は、前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)よりも前記一方の位置側にあり、前記可動子(24)が前記切替位置(P3)にあるとき、前記可動端子(41)の接触面(43s)は、前記ハウジング側端子(35)の接触面(38s)よりも前記移動前位置(P1)および前記移動後位置(P2)の他方の位置側にあることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、可動子が移動前位置および移動後位置の一方の位置から切替位置に移動する間、および切替位置から前記一方の位置に戻る間、可動端子の接触面がハウジング側端子の接触面に摺接して互いにワイピングし合うので、可動端子およびハウジング側端子の各接触面の状態を良好に維持することができる。可動子が前記一方の位置にあるときは、可動端子の接触面がハウジング側端子の接触面の前記一方の位置側にあり、可動子が切替位置にあるときは、可動端子の接触面がハウジング側端子の接触面における移動前位置および移動後位置の他方の位置側にあるので、可動端子とハウジング側端子との摺接ストロークが可及的に確保される。これにより、可動端子およびハウジング側端子の各接触面の状態をより良好に維持することができる。
【0019】
請求項7に記載した発明は、請求項1から6の何れか一項に記載のスイッチの製造方法において、前記弾性端子(35A)が接離する前記相手端子(41A)は、前記相手端子(41A)を支持する前記ハウジング(21)又は前記可動子(24)の本体(31)に、相手側接点機能部(43)をインサート成形した構成であることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、相手側端子を支持する本体に相手側接点機能部を加締めて取り付ける構成に比べて、相手端子およびこれを支持する本体を容易かつ精度よく製造することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、端子の弾性変形により接点を開閉させるスイッチおよびスイッチの製造方法において、端子の設計およびスイッチの製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態のブレーキ操作部を示す説明図である。
【
図2】上記ブレーキ操作部のストップスイッチの取付状態を示す斜視図である。
【
図3】上記ストップスイッチの一部断面を含む斜視図である。
【
図4】上記ストップスイッチの軸方向に沿う断面図であり、上記ストップスイッチのオン状態(可動子が移動前位置にある状態)を示す。
【
図5】
図4の要部拡大図であり、上記ストップスイッチのオフ状態(可動子が移動後位置にある状態)を示す。
【
図6】
図5のVI矢視図であり、
図5相当を上段に示し、可動子の位置が異なるものを中段および下段にそれぞれ示す。
【
図7】
図4の要部拡大図であり、上記ストップスイッチのオンオフが切り替わるタイミング(可動子が切替位置にある状態)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。なお、以下の説明における前後左右等の向きは、特に記載が無ければ以下に説明する車両における向きと同一とする。また以下の説明に用いる図中適所には、車両前方を示す矢印FR、車両左方を示す矢印LH、車両上方を示す矢印UPが示されている。
【0024】
<ブレーキ操作部>
図1は、例えば自動二輪車の操舵用のバーハンドル11に取り付けられたブレーキ操作部1を示している。ブレーキ操作部1は、レバーホルダー3、ブレーキレバー4、ブレーキケーブル6、ストップスイッチ(スイッチ)20を備えている。
【0025】
レバーホルダー3は、バーハンドル11における乗員が把持するグリップ部の基端近くに取り付けられている。
ブレーキレバー4は、車両上下方向に延びるレバー支軸12を介してレバーホルダー3に揺動可能に支持されている。ブレーキレバー4は、グリップ部を把持した手で図中矢印A方向に揺動操作可能である。
【0026】
ブレーキケーブル6は、アウタケーブル6aと、アウタケーブル6a内に移動可能に挿入されたインナワイヤ6bと、を備えている。アウタケーブル6aの一端部6a1は、レバーホルダー3における車両前方側に延びる前方延出部3aに連結されている。インナワイヤ6bの一端部6b1は、ブレーキレバー4のレバー支軸12側の前端揺動部4aに連結されている。アウタケーブル6aおよびインナワイヤ6bの各他端部は、不図示のブレーキ装置に連結されている。
【0027】
レバーホルダー3の前方延出部3aには、ブレーキレバー4を操作したときに、車体後部に備えるストップランプ(ブレーキランプ)を点灯させるためのストップスイッチ20が取り付けられている。ストップスイッチ20は、ブレーキレバー4の操作に伴ってオン、オフされる。例えば、
図1に示したように、ブレーキレバー4を操作しない状態では、ブレーキレバー4の車幅方向内側の端面4bが、レバーホルダー3の前方延出部3aの車幅方向外側の端面3xに突き当たる。このとき、ストップスイッチ20の検出端部31aが、ブレーキレバー4の端面4bに押され、ストップスイッチ20のハウジング内(後述するスリーブ21内)に没入する。この状態では、ストップスイッチ20がオフになり、ストップランプが消灯する。
【0028】
この状態から、ブレーキ装置を制動操作するために、ブレーキレバー4が操作されて図中矢印Aに引かれ、レバー支軸12を中心に後方(グリップ部側)へ揺動すると、ブレーキレバー4の前記端面4bがレバーホルダー3の前記端面3xから離れる。このとき、ストップスイッチ20の検出端部31aは、ハウジング内に収容した付勢部材(後述する圧縮コイルバネ25)の付勢力によって、ブレーキレバー4の端面4bの移動に追従するように、レバーホルダー3の端面3xから突出する。この状態では、ストップスイッチ20がオンになり、ストップランプが点灯する。
【0029】
<ストップスイッチ>
図2~
図4に示すように、ストップスイッチ20は、略円筒状の外形を有している。ストップスイッチ20は、レバーホルダー3に形成されたスイッチ挿入孔3bに挿入されて支持されている。
ストップスイッチ20は、その外形を形成する円筒状のスリーブ(ハウジング)21と、スリーブ21の軸方向一端側の内部に軸方向で往復動可能に挿入されて支持される可動子24と、を備えている。スリーブ21内には、可動子24の他に接点などが収容されている。図中符号21aはスリーブ21ひいてはストップスイッチ20の中心軸線を示す。
【0030】
スリーブ21は、概ね軸方向の全長に渡る円筒状のスリーブ本体26と、スリーブ本体26の軸方向一端側に外嵌される有底円筒状のスリーブ端部27と、に分割して構成されている。スリーブ本体26およびスリーブ端部27は、それぞれ絶縁性の合成樹脂による一体成型品である。
【0031】
スリーブ本体26は、スイッチ挿入孔3bからの抜け止めをなるスナップフィット26aと、スイッチ挿入孔3bの挿入口3cからストップスイッチ20を挿入したときの挿入深さを定める位置決め凸部26bと、を備えている。スナップフィット26aおよび位置決め凸部26bは、例えば車両装着状態での下部に配置されている。スリーブ本体26の軸方向一端側の外周には、スリーブ端部27と係合する係合爪26cが、軸線21a中心の周方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0032】
スリーブ端部27は、軸方向と直交する板状をなしてスリーブ本体26の軸方向一端の開口部26dを塞ぐように配置される底部27aと、底部27aの周縁部から軸方向他端側に延びる円筒状の筒状部27bと、を備えている。
【0033】
底部27aは、可動子24の可動子本体31の検出端部31aを軸方向で出没させる端部挿通孔27cを備えている。筒状部27bは、スリーブ本体26の複数の係合爪26cを係合させる複数の係合孔27dと、車両装着状態での下部に形成された下部孔27eと、を備えている。下部孔27eは、スリーブ本体26の軸方向一端部の下部に形成された下部切欠き部26eと共に、スリーブ21の下部に水抜き部を形成する。
【0034】
スナップフィット26aは、レバーホルダー3のスイッチ挿入孔3bの下部に形成された係合孔3eに係合する。スナップフィット26aは、ストップスイッチ20の軸方向他端側の端部を、スリーブ本体26に一体化された基端部とする。スナップフィット26aにおけるストップスイッチ20の径方向外側に位置する外周面を符号26gで示す。スナップフィット26aの軸方向他端側の先端部には、外周面26gを径方向内側に変化させる段差面26hが形成されている。段差面26hは、軸方向一端側を向く面であり、この段差面26hよりも軸方向一端側に、径方向内側に変化した変位面26jが形成されている。
【0035】
レバーホルダー3の下面3dには、係合孔3eの下端が開口している。係合孔3eは、スナップフィット26aのレバーホルダー3側への係合を解除するための押圧治具(不図示)を挿入可能である。係合孔3eに押圧治具を挿入してスナップフィット26aを上方へ押圧することで、係合孔3eの上端に対するスナップフィット26aの段差面26hの係合が解除され、ストップスイッチ20をスイッチ挿入孔3bから軸方向一端側へ引き抜くことが可能である。
【0036】
レバーホルダー3の下面3d側には、スイッチ挿入孔3bの軸方向一端側の下部を切り欠く切り欠き部3fが形成されている。切り欠き部3fは、レバーホルダー3の前方延出部3aの外側端面3xから軸方向他端側に延びる幅広部3gと、幅広部3gの軸方向他端側に連なるガイド部3hと、を備えている。
【0037】
幅広部3gは、スリーブ端部27の底部27aの下方に形成された延長片27fを上方から入り込ませる。幅広部3gを設けることで、作業者が指先を入れて延長片27fを軸方向一端側に移動させることが可能である。すなわち、係合孔3eに対するスナップフィット26aの係合を解除した状態であれば、延長片27fを利用してストップスイッチ20をスイッチ挿入孔3bから抜き出すことが可能である。
【0038】
ガイド部3hは、スリーブ本体26の位置決め凸部26bを嵌合させるように入り込ませる。ガイド部3hに位置決め凸部26bが入り込むことで、スイッチ挿入孔3b内でのストップスイッチ20の軸心回りの回動が規制される。また、位置決め凸部26bがガイド部3hの軸方向他端に突き当たることで、スイッチ挿入孔3b内へのストップスイッチ20の挿入位置が規定される。
【0039】
図3、
図4は、ストップスイッチ20のオン状態(ブレーキレバー4を引く操作がなされた状態)を示している。
ストップスイッチ20は、スリーブ21内に、可動子24、固定部23および圧縮コイルバネ25を収容している。
【0040】
固定部23は、スリーブ21内の軸方向他端側に配置されて固定された挿入部材34と、挿入部材34の軸方向一端側からさらに軸方向一端側へ延びる一対のスリーブ側端子35と、を備えている。
【0041】
挿入部材34は、絶縁性の合成樹脂からなる一体成型品であり、軸方向に沿う円柱状に形成されている。挿入部材34は、軸方向他端側に形成された拡径部34aと、拡径部34aの軸方向一端側に延びる延出部34bと、を備えている。拡径部34aは、外周部にOリング36が装着され、スリーブ21の軸方向他端部内に嵌入されることで、スリーブ21の軸方向他端の開口部26kを閉塞する。挿入部材34の軸方向他端には、一対の導線33が差し込まれて固定されている。一対の導線33は、一対のスリーブ側端子35にそれぞれ個別に接続されている。
【0042】
延出部34bは、拡径部34aよりも例えば上下方向の幅が狭く、スリーブ21の内周面との間に適宜隙間を有している。
一対のスリーブ側端子35は、長手方向を軸方向に向けた帯状の弾性片37と、弾性片37に固定されるスリーブ側接点(固定接点、接点機能部)38と、を備えている。
【0043】
弾性片37は、導電性を有するバネ材で形成されている。弾性片37は、軸方向他端側(基端側)を挿入部材34に固定し、軸方向一端側(先端側)を自由端としている。弾性片37は、軸線21aに直交する径方向に厚さ方向を向けるように配置され、先端側を径方向で変位させるように弾性変形可能である。この弾性変形により、弾性片37の先端側に設けたスリーブ側接点38と、可動子24に設けた可動接点(相手側接点機能部)43と、が互いに接続、離間する。
【0044】
以下、一対のスリーブ側端子35の対向方向を上下方向として説明することがあるが、一対のスリーブ側端子35の対向方向は上下方向に限るものではない。
一対のスリーブ側端子35の間には、可動子24に設けられた可動端子41が配置されている。一対のスリーブ側端子35の各スリーブ側接点38の間には、可動端子41の可動接点43が配置されている。
【0045】
一対のスリーブ側端子35は、弾性片37がもつバネ力によって、互いに接近する側に付勢されている。一対のスリーブ側端子35は、可動子24の往復動に伴い、可動子24から入力を受けて弾性変形する。一対のスリーブ側端子35は、可動端子41を相手端子41Aとして接離する弾性端子35Aとされる。
【0046】
弾性片37は、板材に曲げ加工等を施して形成されている。弾性片37は、軸方向他端側から順に、導線接続部37a、径方向延出部37b、軸方向延出部37c、開閉機能部37dを備えている。
【0047】
導線接続部37aは、挿入部材34内で導線33に電気的に接続されている。
径方向延出部37bは、導線接続部37aの軸方向一端側からスリーブ本体26の内周面26fに向けて屈曲して径方向に延びている。
軸方向延出部37cは、径方向延出部37bの径方向外側から軸方向一端側に向けて屈曲して軸方向に延びている。
【0048】
開閉機能部37dは、軸方向延出部37cの軸方向一端部に形成されている。開閉機能部37dは、可動子24の移動に伴い可動子本体31の可動側開閉機能部31bに接触するように、可動子24に向けて(径方向内側に向けて)凸となる湾曲形状に形成されている。
【0049】
スリーブ側接点38は、弾性片37の軸方向延出部37cの開閉機能部37d寄り(軸方向一端側)に配置されている。スリーブ側接点38は、開閉機能部37dよりも軸方向他端側に配置されている。スリーブ側接点38は、弾性片37の軸方向延出部37cを径方向で貫通し、軸方向延出部37cの径方向の両面から上下に突出する態様で弾性片37に取り付けられている。
【0050】
開閉機能部37dと接点機能部(スリーブ側接点38)とは、互いに別体に構成され、かつ互いに別材料で形成されている。例えば、弾性片37の材質は、C5210(バネ用りん青銅)であり、スリーブ側接点38の材質は、Ag-Cu合金である。
【0051】
弾性片37の軸方向延出部37cの途中部分(軸方向で固定部23の先端部34c近傍からスリーブ側接点38に至る範囲)には、軸方向および径方向と直交する幅方向の両側縁からそれぞれ上下方向内側(可動端子41側)に屈曲するリブ37eが形成されている。弾性片37におけるリブ37eが形成された範囲は、他部位に対して弾性変形を抑えた補強部37fとされる。これにより、長尺な弾性片37の中間部分での弾性変形が抑えられる。すなわち、一対のスリーブ側端子35における補強部37fを避けた規定箇所で弾性変形を生じさせることが可能となり、スリーブ側端子35の動きをコントロールしやすくする。
【0052】
可動子24は、可動子本体31と、可動子本体31にインサートされた可動端子41と、を備えている。
可動子本体31は、絶縁性の合成樹脂による成型品であり、成型時に可動端子41をインサートしたインサート成形品である。
可動子本体31の軸方向他端部と挿入部材34の軸方向一端部との間には、圧縮コイルバネ25が縮設されている。可動子本体31は、圧縮コイルバネ25により、挿入部材34ひいてはスリーブ21に対して軸方向一端側に付勢されている。
【0053】
可動子本体31は、軸方向他端側から順に、バネ支持部31c、板状部31d、可動側開閉機能部31b、ガイドフランジ部31eおよび検出端部31aを備えている。
【0054】
バネ支持部31cは、可動子本体31の軸方向他端部に設けられ、圧縮コイルバネ25の軸方向一端部を支持している。
板状部31dは、バネ支持部31cから軸方向一端側へ延びる。板状部31dは、一対のスリーブ側端子35の対向方向を厚さ方向とした板状に形成されている。板状部31dは、上下方向厚さを抑えた偏平の壁状に形成されている。
【0055】
可動側開閉機能部31bは、板状部31dの軸方向一端部から板状部31dの厚さ方向で拡幅するように、板状部31dの上下に形成されている。上下一対の可動側開閉機能部31bは、上下一対のスリーブ側端子35の開閉機能部37dに対し、それぞれ接触可能な湾曲角部31fおよび頂面部31gを形成している。
【0056】
湾曲角部31fは、可動子24の移動に伴い、スリーブ側端子35の開閉機能部37dに接触し、スリーブ側端子35を緩やかに弾性変形させる。湾曲角部31fは、特に可動子24が軸方向他端側に移動したとき、すなわち一対のスリーブ側端子35が弾性片37の付勢力に抗して押し開かれるとき、スリーブ側端子35の開閉機能部37dとの間の摺動を滑らかにする。湾曲角部31fは、上下方向外側かつ軸方向他端側に向けて凸となる湾曲形状に形成されている。
【0057】
頂面部31gは、軸方向と平行に形成され、開閉機能部37dを介して乗り上がったスリーブ側端子35の開閉機能部37dを軸方向に沿って摺動させる。
【0058】
ガイドフランジ部31eは、一対の可動側開閉機能部31bの軸方向一端側に隣接して設けられている。ガイドフランジ部31eは、スリーブ21と同軸の円弧状の外周面を有し、この外周面をスリーブ本体26の内周面26fに摺接させる。ガイドフランジ部31eは、圧縮コイルバネ25に付勢された可動子24が軸方向一端側に移動することで、スリーブ端部27の底部27aに突き当たる。これにより、検出端部31aの軸方向一端側への移動が制限されない状態(ストップスイッチ20のオン状態)において、可動子24の軸方向一端側への移動が制限され、可動子24の軸方向位置が規定される。
【0059】
検出端部31aは、スリーブ21と同軸の小径円柱状をなし、ガイドフランジ部31eの軸方向一端側に延びる。検出端部31aは、スリーブ端部27の端部挿通孔27cに挿通されている。検出端部31aの先端部は、半球状に形成されている。
【0060】
可動端子41は、可動子本体31の板状部31d内に厚さ方向を揃えてインサートされたプレート42と、プレート42および板状部31dを厚さ方向で貫通し、板状部31dの厚さ方向の両面から突出するように設けられた単一の可動接点43と、を備えている。
プレート42の材質は、例えば、導電性を有する金属であり、可動接点43の材質は、例えば、Ag合金である。
【0061】
圧縮コイルバネ25は、軸方向一端部が可動子24のバネ支持部31cに支持され、軸方向他端部が挿入部材34の軸方向一端側の先端部34cに形成された先端凹部34d内に嵌入される。圧縮コイルバネ25は、可動子24を軸方向一端側に付勢している。
【0062】
可動子24が軸方向一端側に移動しきった状態(
図4に示す移動前位置P1にある状態)において、可動子24の一対の可動側開閉機能部31bは、一対のスリーブ側端子35の各開閉機能部37dから離れる。すると、一対のスリーブ側端子35は、可動端子41を挟み込むように弾性変形する。すなわち、一対のスリーブ側端子35は、互いに接近し合うように付勢されている。一対のスリーブ側端子35は、開閉機能部37dへの入力がない状態では、各々の弾性片37のバネ力により可動端子41を挟み込む。
【0063】
一対のスリーブ側端子35は、可動端子41を挟み込むことで、可動端子41と電気的に接続される。これにより、ストップスイッチ20はオン状態となる。この状態は、ブレーキレバー4に引く操作がなされた状態である。
【0064】
このとき、一対のスリーブ側接点38の互いに対向する円形の端面38sと、可動接点43における上下両側の円形の端面43sとは、軸方向で規定のラップ代を有している(
図6下段参照)。ストップスイッチ20がオン状態にあるとき、可動接点43(詳しくは、可動接点43の軸方向の中央位置43a)は、各スリーブ側接点38(詳しくは、スリーブ側接点38の軸方向の中央位置38a)に対して、軸方向一端側にオフセットしている。可動接点43の端面43sは、スリーブ側接点38の端面38sよりも大径である。
【0065】
図5は、ストップスイッチ20のオフ状態(ブレーキレバー4の非操作状態)を示している。
図5は、可動子24がブレーキレバー4の端面4bによる押圧で軸方向他端側に移動しきった状態(移動後位置P2にある状態)を示している。
ブレーキレバー4を引く操作が止んでブレーキレバー4が元の位置に戻ると、ブレーキレバー4の端面4bが可動子24の検出端部31aに当接し、検出端部31aをスリーブ21内に押し戻す。
【0066】
ブレーキレバー4が引かれた状態から徐々に操作前状態に戻り、ブレーキレバー4の端面4bが検出端部31aに当たった後、可動子24が移動を開始する。このとき、可動子24は、
図4に示す移動前位置P1から軸方向他端側へ移動を開始する。やがて、
図7に示すように、可動子24の一対の可動側開閉機能部31bが、一対のスリーブ側端子35の各開閉機能部37dに当接する。このときの可動子24の軸方向位置を切替位置P3とする。
【0067】
切替位置P3からさらに可動子24が軸方向他端側へ移動すると、可動子24の一対の可動側開閉機能部31bが、一対のスリーブ側端子35の各開閉機能部37dを押し開く。これにより、一対のスリーブ側端子35が上下方向で互いに離間し、
図5に示すように、一対のスリーブ側接点38と可動接点43とが互いに離間する。これにより、一対のスリーブ側端子35と可動端子41とが電気的に切断され、ストップスイッチ20はオフ状態となる。
【0068】
可動子24が移動後位置P2にあるとき、
図6上段に示すように、一対のスリーブ側接点38の互いに対向する端面38sと、可動接点43における上下両側の端面43sとは、軸方向でのラップ代がほぼ無くなる。可動子24が移動後位置P2にあるとき、可動接点43(詳しくは、可動接点43の中央位置43a)は、各スリーブ側接点38(詳しくは、スリーブ側接点38の中央位置38a)に対して、軸方向他端側にオフセットしている。
【0069】
可動側開閉機能部31bは、可動子本体31の幅方向(径方向)の両側に、互いに間隔を空けて分離するように設けられている。これら幅方向一対の可動側開閉機能部31bは、各スリーブ側端子35の開閉機能部37dの幅方向(径方向)の両側に対し、それぞれ摺接可能とされる。
【0070】
図7は、ブレーキレバー4を引く操作の途中、あるいはブレーキレバー4を引いた状態から戻す途中において、ストップスイッチ20のオフ、オンが切り替わるときの接点の状態を示している。
【0071】
ブレーキレバー4の操作前状態(
図5参照)からブレーキレバー4を引く操作が開始されると、ブレーキレバー4が揺動を開始し、ブレーキレバー4の端面4bがレバーホルダー3の端面3xから離間する。このブレーキレバー4の端面4bの移動に応じて、可動子24の検出端部31aが端部挿通孔27cから徐々に外部に突出する。可動子24は、ブレーキレバー4の操作前状態では、スリーブ21内に没入した位置(最も軸方向他端側となる移動後位置P2)にある(
図5参照)。可動子24は、ブレーキレバー4の操作に応じて軸方向一端側に移動し始める。
【0072】
この可動子24の移動が進むと、一対のスリーブ側端子35の開閉機能部37dと可動側開閉機能部31bとの接触位置は、最も高い頂面部31gから湾曲角部31fを下り始める。やがて、可動子24が前記切替位置P3に達した時点で(
図7参照)、各スリーブ側接点38が可動接点43に当接し、これらが電気的に接続される。この状態では、
図6中段に示すように、スリーブ側接点38が可動接点43に対して軸方向一端側にオフセットし、かつ軸方向でスリーブ側接点38と可動接点43とが規定のラップ代を有している。
【0073】
可動子24が切替位置P3からさらに軸方向一端側に移動すると、可動接点43とスリーブ側接点38との間のオフセット量は次第に小さくなる。可動子24が最も軸方向一端側に移動する手前で、前記オフセット量が0となり、それ以降は可動接点43がスリーブ側接点38に対して軸方向一端側にオフセットし始める。やがて、可動子24は、最も軸方向一端側まで移動した位置(最も軸方向一端側となる移動前位置P1)に至る(
図4参照)。この状態では、可動接点43は、スリーブ側接点38に対して軸方向一端側にオフセットし、かつ軸方向でスリーブ側接点38と規定のラップ代を有している。
【0074】
スリーブ側接点38の端面38sと可動接点43の端面43sとは、ストップスイッチ20のオフ、オンが切り替わるタイミングにおいて、軸方向で規定のラップ代を有して互いに接離する(
図7参照)。これにより、スリーブ側接点38および可動接点43の長期使用による摩耗や荒れが生じても、ストップスイッチ20のオン、オフが切り替わるタイミングへの影響が抑えられる。可動子24が移動前位置P1から切替位置P3に移動する間、および切替位置P3から移動前位置P1に戻る間において、可動接点43の端面43sとスリーブ側接点38の端面38sとは、互いに摺接し合う(ワイピングし合う)。このため、接触面の荒れや被膜の形成が抑えられ、この点でもスイッチ切替タイミングへの影響が抑えられる。
【0075】
以上説明したように、上記実施形態におけるストップスイッチ20は、スリーブ21に移動可能に支持される可動子24を備え、可動子24の移動により、スリーブ21に支持されたスリーブ側端子35と、可動子24に支持された可動端子41と、を接離させるスイッチであって、スリーブ側端子35は、可動子24の移動に伴い、可動子24側から入力を受けて弾性変形し、可動端子41を相手端子41Aとして接離する弾性端子35Aとされ、弾性端子35Aは、相手端子41Aに対して電気的に接続可能なスリーブ側接点38と、可動子24の移動に伴う前記入力を受ける開閉機能部37dと、を備え、開閉機能部37dとスリーブ側接点38とは、互いに別体に構成されている。
【0076】
この構成によれば、端子の弾性変形により接点を開閉させるスイッチにおいて、弾性端子35Aの開閉機能部37dと接点機能部(スリーブ側接点38)とを互いに別部材に分けることで、弾性端子35Aにおける形状、加工および材料の選定がしやすくなる。このため、端子ひいてはスイッチの設計を容易することができる。
なお、実施形態ではスリーブ側端子を弾性端子としたが、可動端子を弾性端子としてもよい。この場合、弾性端子は、可動子の移動に伴い、スリーブ側から入力を受けて弾性変形し、スリーブ側端子に対して接離する。
【0077】
また、上記ストップスイッチ20において、可動子24は、スリーブ21内に軸方向で往復動可能に挿入され、弾性端子35Aは、軸方向に長手方向を向けて延び、軸方向と交差する方向(実施形態では上下方向)に弾性変形することで、相手端子41Aに対して接離するものであり、弾性端子35Aは、長手方向の一端部がスリーブ21に支持され、長手方向の他端部が開閉機能部37dとされ、開閉機能部37dよりも長手方向の一端側に、スリーブ側接点38を備えている。
【0078】
この構成によれば、スリーブ21内に可動子24がストローク可能に挿入される構成において、ストローク方向に延びる弾性端子35Aの一端部が支点となり、他端部が力点としての開閉機能部37dとなる。このため、弾性端子35Aを弾性変形させるための入力が少なくて済み、スイッチ作動力を軽減することができる。スリーブ側接点38は、開閉機能部37dよりも長手方向の一端側(基端側)に配置されるので、スリーブ側接点38および開閉機能部37dをコンパクトに配置することができる。
【0079】
また、上記ストップスイッチ20において、相手端子41Aを支持する可動子24は、可動子24の移動に伴い開閉機能部37dに接して前記入力を与える可動側開閉機能部31bを備え、開閉機能部37dおよび可動側開閉機能部31bは、それぞれ湾曲形状を成し、互いの接触時には、それぞれの湾曲形状同士(凸部同士)を接触させる。
【0080】
この構成によれば、弾性端子35Aの開閉機能部37dと可動子24の可動側開閉機能部31bとの摺動がスムーズになり、スイッチ作動力を軽減することができる。開閉機能部37dと可動側開閉機能部31bとの摺動部分の摩耗が抑えられ、弾性端子35Aと相手端子41Aとの接点位置の変化を抑えることができる。
【0081】
また、上記ストップスイッチ20において、弾性端子35Aは、板状の弾性片37を備え、弾性片37は、側縁にリブ37eを形成した補強部37fを備えているので、弾性端子35Aを板状の弾性片37で容易に形成するとともに、弾性片37の規定箇所にリブ37eを含む補強部37fを設けることで、弾性端子35Aを弾性変形可能としつつ、規定箇所の剛性を高め、弾性端子35Aの所望の弾性変形を得ることができる。
【0082】
また、上記ストップスイッチ20において、開閉機能部37dとスリーブ側接点38とは、互いに異なる材料で形成されているので、開閉機能部37dおよびスリーブ側接点38を、それぞれに要する耐摩耗性や耐食性などの要件に適した材料で形成可能となり、端子ひいてはスイッチの設計をより容易することができる。
【0083】
また、上記ストップスイッチ20において、スリーブ側端子35および可動端子41は、可動子24の移動方向(軸方向)で規定の幅を有して互いに接離する端面38s,43sを有しているので、ハウジング側端子35および可動端子41の各端面38s,43sに荒れが生じたり弾性端子35Aの弾性変形が影響したとしても、ハウジング側端子35と可動端子41との接続位置の変化を抑えることができる。
【0084】
また、上記ストップスイッチ20において、可動子24は、移動前位置P1と移動後位置P2との間で移動可能であり、可動子24の移動範囲内で移動前位置P1と移動後位置P2との間には、可動端子41およびスリーブ側端子35の接離が切り替わる切替位置P3が設定され、可動子24が移動前位置P1と切替位置P3との間を移動するとき、可動端子41の端面43sとスリーブ側端子35の端面38sとは、互いに摺接するものであり、可動子24が移動前位置P1にあるとき、可動端子41の端面43sの中心位置43aは、スリーブ側端子35の端面38sの中心位置38aよりも移動前位置P1側にあり、可動子24が切替位置P3にあるとき、可動端子41の端面43sの中心位置43aは、スリーブ側端子35の端面38sの中心位置38aよりも移動後位置P2側にある。
【0085】
この構成によれば、可動子24が移動前位置P1から切替位置P3に移動する間、および切替位置P3から移動前位置P1に戻る間、可動端子41の端面43sがスリーブ側端子35の端面38sに摺接して互いにワイピングし合うので、可動端子41およびスリーブ側端子35の各端面38s,43sの状態を良好に維持することができる。可動子24が移動前位置P1にあるときは、可動端子41の端面43sがスリーブ側端子35の端面38sの移動前位置P1側にあり、可動子24が切替位置にあるときは、可動端子41の端面43sがスリーブ側端子35の端面38sよりも移動後位置P2側にあるので、可動端子41とスリーブ側端子35との摺接ストロークが可及的に確保される。これにより、可動端子41およびスリーブ側端子35の各端面38s,43sの状態をより良好に維持することができる。
なお、実施形態では移動前位置と切替位置との間でワイピングがなされる構成としたが、移動後位置と切替位置との間でワイピングがなされる構成としてもよい。この場合、移動後位置でスイッチがオンになり、移動前位置でスイッチがオフになる。
【0086】
上記実施形態におけるストップスイッチ20の製造方法において、弾性端子35Aが接離する相手端子41Aは、相手端子41Aを支持する可動子24の可動子本体31に、可動接点43をインサート成形した構成であるので、可動部本体31に可動接点43を加締めて取り付ける構成に比べて、可動端子41および可動子本体31を容易かつ精度よく製造することができる。
【0087】
なお、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、弾性片の先端部に開閉機能部を一体形成したが、弾性片に別体の開閉機能部を取り付けてもよい。また、弾性片の先端部以外に開閉機能部を設けてもよい。
本発明のスイッチは、ブレーキ操作部に限らずクラッチ操作部に設けてもよい。また、レバーホルダーに限らず種々の操作子や可動子の支持部に設けてもよい。
本発明のスイッチは、可動子が直線状に往復動するものに限らず、可動子が弧状に移動したり回動したりするものでもよい。
【0088】
本発明のスイッチは、自動二輪車等の鞍乗り型車両への適用に限らず、乗用車、バス、トラック、自転車などを含む車両全般に適用してもよい。また、本発明のスイッチは、車両への適用に限らず、航空機や船舶等の種々輸送機器、ならびに建設機械や産業機械等、様々な乗物に適用してもよい。さらに、本発明は、乗物以外でもスイッチを備える機器であれば、例えば手押しの芝刈り機や清掃機等に広く適用可能である。
そして、上記実施形態における構成は本発明の一例であり、実施形態の構成要素を周知の構成要素に置き換える等、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0089】
20 ストップスイッチ(スイッチ)
21 スリーブ(ハウジング)
24 可動子
31 可動子本体
31b 可動側開閉機能部(第二開閉機能部)
35 スリーブ側端子(ハウジング側端子)
35A 弾性端子
37 弾性片
37d 開閉機能部
37e リブ
37f 補強部
38 スリーブ側接点(接点機能部)
38a 中央位置
38s 端面(接触面)
41 可動端子
41A 相手端子
43 可動接点(相手側接点機能部)
43a 中央位置
43s 端面(接触面)
P1 移動前位置
P2 移動後位置
P3 切替位置