(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】高電圧隔離のためのデュアルディープトレンチ
(51)【国際特許分類】
H01L 21/76 20060101AFI20230612BHJP
H01L 29/06 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01L21/76 L
H01L29/06 301M
(21)【出願番号】P 2021133052
(22)【出願日】2021-08-18
(62)【分割の表示】P 2019509513の分割
【原出願日】2017-08-16
【審査請求日】2021-08-22
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】サミール ペンハルカル
(72)【発明者】
【氏名】ビンホワ フー
(72)【発明者】
【氏名】アレクセイ サドブニコフ
(72)【発明者】
【氏名】グル マトゥール
【審査官】宇多川 勉
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0163583(US,A1)
【文献】特開2011-171602(JP,A)
【文献】特開2007-201220(JP,A)
【文献】特開2015-230920(JP,A)
【文献】特表2017-527110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/76
H01L 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
集積回路であって、
頂部表面と底部表面とを有する基板と、
前記基板内に位置する埋め込み層と、
前記埋め込み層より上に位置するトランジスタウェル領域と、
前記埋め込み層を貫通するように前記頂部表面から延在する第1のトレンチであって、第1のトレンチ深さと前記頂部表面において画定される第1の開口とを有
し、第1の導体を含む、前記第1のトレンチと、
前記埋め込み層を貫通するように前記頂部表面から延在する第2のトレンチであって、前記第1のトレンチと前記トランジスタウェル領域との間に置かれ、前記第1のトレンチ深さより浅い第2のトレンチ深さと前記頂部表面において画定される第2の開口とを有し、
第2の導体を含み、前記第2の開口が前記第1の開口よりも小さい、前記第2のトレンチと、
を含む、集積回路。
【請求項2】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第1の導体が
、前記埋め込み層から絶縁されて前記第1のトレンチの底部辺りで前記基板とオーミック接触し、
前記第2の
導体が
、前記埋め込み層と前記基板とから絶縁される、集積回路。
【請求項3】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第2のトレンチが、前記
第2の導体を浮遊状態に絶縁する誘電体ライナーを
更に含む、集積回路。
【請求項4】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第2の
導体が、前記埋め込み層と前記基板との間の接合の降伏電圧に関連するバイアス電圧を受け取るように構成される、集積回路。
【請求項5】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第2の
導体が、前記埋め込み層と前記基板との間の接合の電界密度閾値に関連するバイアス電圧を受け取るように構成される、集積回路。
【請求項6】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第1のトレンチが、前記埋め込み層と前記基板との間の接合の降伏電圧に関連する距離で前記第2のトレンチから離間される、集積回路。
【請求項7】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第1のトレンチが、埋め込み層と前記基板との間の接合の電界密度閾値に関連する距離で前記第2のトレンチから離間される、集積回路。
【請求項8】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記第1のトレンチが、1μmより大きい距離で前記第2のトレンチから離間される、集積回路。
【請求項9】
請求項1に記載の集積回路であって、
前記トランジスタウェル領域の外につくられる高電圧回路と、
前記トランジスタウェル領域内につくられて前記第1のトレンチ及び前記第2のトレンチによって前記高電圧回路から遮蔽される低電圧回路と、
を更に含む、集積回路。
【請求項10】
方法であって、
基板内に埋め込み層を形成することと、
前記埋め込み層より上にトランジスタウェル領域を形成することと、
前記埋め込み層を貫通するように前記基板の頂部表面から延在する第1のトレンチを形成することであって、前記第1のトレンチが第1のトレンチ深さと前記頂部表面において画定される第1の開口とを有する、前記第1のトレンチを形成することと、
前記第1のトレンチ内に第1の導体を形成することと、
前記埋め込み層を貫通するように前記基板の前記頂部表面から延在する第2のトレンチを形成することであって、前記第2のトレンチが前記第1のトレンチと前記トランジスタウェル領域との間に置かれ、前記第2のトレンチが前記第1のトレンチ深さより浅い第2のトレンチ深さと前記頂部表面において画定される第2の開口とを有し、前記第2の開口が前記第1の開口よりも小さい、前記第2のトレンチを形成することと、
前記第2のトレンチ内に第2の導体を形成することと、
を含む、方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1の導体が
、前記埋め込み層から絶縁されて前記第1のトレンチの底部辺りで前記基板とオーミック接触
し、
前記第2の導体が
、前記埋め込み層と前記基板とから絶縁される、方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、
前記
第2の導体を浮遊状態に絶縁することを更に含む、方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、
前記埋め込み層と前記基板との間の接合の降伏電圧に関連するバイアス電圧を受けるための前記
第2の導体とのコンタクトを形成することを更に含む、方法。
【請求項14】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1のトレンチが、前記埋め込み層と前記基板との間の接合の降伏電圧に関連する距離で前記第2のトレンチから離間される、方法。
【請求項15】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1のトレンチが、前記埋め込み層と前記基板との間の接合の電界密度閾値に関連する距離で前記第2のトレンチから離間される、方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、
前記第1のトレンチが、1.5μmより大きい距離で前記第2のトレンチから離間される、方法。
【請求項17】
請求項
10に記載の方法であって、
前記第1のトレンチを前記形成することが、前記第1の開口を介して所定の時間期間の間に前記基板の頂部層と前記埋め込み層と前記基板の底部層とをエッチングすることを含み、
前記第2のトレンチを前記形成することが、前記第2の開口を介して前記所定の時間期間の間に前記基板の前記頂部層と前記埋め込み層と前記基板の前記底部層とをエッチングすることを含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
高電圧回路を前記トランジスタウェル領域の外に形成することと、
前記第1のトレンチと前記第2のトレンチとによって前記高電圧回路から遮蔽される低電圧回路を前記トランジスタウェル領域内に形成することと、
を更に含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
高電圧能力を備える集積回路には、自動車において用いるための電源管理システムを含め、広汎な産業用応用例がある。これらの集積回路には、高電圧範囲(例えば、80V~120V)で動作する高電圧トランジスタ、及び、より一層低い電圧範囲(例えば、1V~5V)で動作する低電圧トランジスタが含まれる。低電圧トランジスタを高電圧動作から保護するために、集積回路が、一つ又は複数の隔離方式を採用する場合がある。例えば、方式の一つは、高電圧トランジスタを低電圧トランジスタから隔離するために、バルク基板(例えば、P型基板)の頂部上に埋め込み層(例えば、N型埋め込み層)を形成することを含む。埋め込み層は、通常、高電圧トランジスタの動作範囲に対応する高電圧でバイアスされ、一方、バルク基板は、通常、接地供給電圧でバイアスされる。場合によっては、高バイアス電圧と接地供給電圧との差が、埋め込み層とバルク基板との間のPN接合の降伏電圧閾値を超えることがあり、それにより、漏れが生じ、集積回路の性能及び信頼性に影響する。
【発明の概要】
【0002】
低電圧動作と共に高電圧動作を扱い得る半導体デバイスの製造に関するシステム及び技法について説明される例において、半導体デバイスは、スタンドアローンのディスクリート構成要素であり得、又は、集積回路の一部として組み込まれ得る。半導体デバイスは、低電圧トランジスタを高電圧動作から保護するために或る隔離方式を採用する。説明される隔離方式によって、高電圧トランジスタが高電圧範囲で動作し得、半導体デバイスの埋め込み層とバルク基板との間の電圧ストレスが低減し得る。有利にも、説明される隔離方式は、半導体デバイスの接合降伏を減少させるために低コストで高性能な解決策を提供する。
【0003】
一例において、集積回路が、基板、埋め込み層、トランジスタウェル領域、第1のトレンチ、及び第2のトレンチを含む。基板は、頂部表面及び底部表面を有する。埋め込み層は、基板内に位置し、トランジスタウェル領域は、埋め込み層より上に位置する。第1のトレンチは、埋め込み層を貫通するように頂部表面から延在し、第1のトレンチは第1のトレンチ深さを有する。第2のトレンチは、埋め込み層を貫通するように頂部表面から延在する。第2のトレンチは、第1のトレンチとトランジスタウェル領域との間に置かれる。第2のトレンチは、第1のトレンチ深さより浅い第2のトレンチ深さを有する。
【0004】
より具体的には、基板は第1の導電型を有し、埋め込み層は、第1の導電型とは反対の第2の導電型を有する。第1のトレンチは第1の導体を含み得、第1の導体は、埋め込み層から絶縁され、第1のトレンチの底部辺りで基板とオーミック接触し、一方、第2のトレンチは、埋め込み層及び基板から絶縁される第2の導体を含み得る。
【0005】
半導体デバイスを製造する方法において、この方法は、基板内に埋め込み層を形成することを含む。また、この方法は、埋め込み層より上にトランジスタウェル領域を形成することを含む。さらに、この方法は、埋め込み層を貫通するように基板の頂部表面から延在する第1のトレンチを形成すること、及び、埋め込み層を貫通するように基板の頂部表面から延在する第2のトレンチを形成することを含む。より具体的には、第2のトレンチは、第1のトレンチとトランジスタウェル領域との間に置かれ、第2のトレンチは、第1のトレンチの深さより浅いトレンチ深さを有する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1A】例示の実施形態の或る態様に従った半導体デバイスの上面図を示す。
【0007】
【
図1B】例示の実施形態の或る態様に従った半導体デバイスの断面図を示す。
【0008】
【
図1C】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの上面図を示す。
【0009】
【
図1D】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示す。
【0010】
【
図2A】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2B】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2C】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2D】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2E】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2F】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【
図2G】例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイスの断面図を示して製造プロセスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
種々の図面における同様の参照記号は同様の要素を示す。図面は一定の縮尺で描かれていない。
【0012】
図1Aは、半導体デバイス100の上面図を示し、
図1Bは、その垂直構造を図示するため、半導体デバイス100の断面図を示す。半導体デバイス100は基板102を含み、基板102は下側半導体層104及び上側半導体層108にさらに分割され得る。下側半導体層104は基板102の底部表面102bを形成し、上側半導体層108は基板102の頂部表面102aを形成する。例えば、下側半導体層104は、バルクシリコン基板(例えば、102)、バルクシリコンウェハ上のエピタキシャル層、又は、絶縁体上シリコン(SOI)ウェハの一部であり得る。上側半導体層108は、下側半導体層102より上に、又は、バルクシリコン基板(例えば、102)の拡張部として形成されるエピタキシャル層であり得る。通常、下側及び上側半導体層104及び108は、同じ導電型(例えば、P型)を有する。
【0013】
半導体デバイス100は、基板102内に位置する埋め込み層106を含む。埋め込み層106は、下側半導体層104をドープすることによってつくられ得る。代替として、埋め込み層106は、下側半導体層104の頂部上でのインサイチュドープを用いてエピタキシャル層を成長させることによって形成され得る。埋め込み層106は、下側半導体層104と上側半導体層108との間に置かれ、埋め込み層106は、これらの二つの層104及び108とは反対の導電型を有する。従って、埋め込み層106は、下側半導体層104との第1のPN接合105、及び上側半導体層108との第2のPN接合107を形成する。埋め込み層106は、少なくとも1×10
18cm
-3の平均ドーピング密度を有し得、一般的には、下側半導体層104とは反対の導電型を有する。埋め込み層106の頂部境界112が、基板102の頂部表面102aより少なくとも2ミクロン下にあり、基板102の頂部表面102aより5ミクロンから10ミクロン下に延在し得る。埋め込み層106は、
図1に示すように半導体デバイス100を横方向に横断して延在し得、或いは代替として、埋め込み層は、基板102と同一平面上である有限の横方向領域内につくられ得又は形成され得る。
【0014】
半導体デバイス100は、上側半導体層108内であり、埋め込み層106より上に位置する、トランジスタウェル領域101を含む。トランジスタウェル領域101は、一つ又は複数の能動回路を形成するためのトランジスタを含む。トランジスタウェル領域101が低電圧回路(例えば、10V以下で動作する回路)を含む場合、トランジスタウェル領域101は、トランジスタウェル領域101の外に形成される高電圧回路(例えば、50V以上で動作する回路)から隔離及び保護される。代替として、トランジスタウェル領域101が高電圧回路を含む場合、トランジスタウェル領域101は、トランジスタウェル領域101の外に形成される低電圧回路を保護するために隔離される。
【0015】
高電圧回路を低電圧回路から隔離するため、半導体デバイス100は、トランジスタウェル領域101を横方向に囲むように、及び、埋め込み層106を交差するように配置される、一つ又は複数のディープトレンチ構造114を含む。より具体的には、ディープトレンチ構造114は、埋め込み層106を貫通し、それにより、下側半導体層104に達するように、頂部表面102aから延在する。ディープトレンチ構造114は、6μm未満のトレンチ幅120を有し得る。一例の実装において、トレンチ幅120は、1ミクロンから4ミクロンまでわたり得る。ディープトレンチ構造114は、内部側壁に沿って配置される誘電体ライナー116を含む。誘電体ライナー116は熱酸化シリコンを含み得る。ディープトレンチ構造114は、基板102の下側半導体層104にアクセスするための底部開口を画定する。アクセスポイントは、下側半導体層104と同じ導電型のドーパントでドープされて、ドープされた領域117を形成する。一実装において、ドープされた領域117は、下側半導体層104より高いドーピング濃度を有し得る。
【0016】
ディープトレンチ構造114は、誘電体ライナー116上に配置されるトレンチ充填材料118を含む。トレンチ充填材料118は導電性であり、上側半導体層108及び埋め込み層106から絶縁される。一例の実装において、トレンチ充填材料118は、ポリシリコンと一般的に呼ばれる多結晶シリコンを含む。トレンチ充填材料(すなわち、トレンチ導体)118は、底部開口及びドープされた領域117を介して、基板102の下側半導体層104とのオーミック接触を確立する。このオーミック接触を介して、トレンチ導体118は、基板102の下側半導体層104をバイアスするために用いられ得る。一例の実装において、トレンチ導体118は、基板102の下側半導体層104をバイアスするために接地供給電圧VGNDを受け取るように構成され得る。
【0017】
高電圧回路の動作電圧範囲に対応する電圧VBIASでバイアスされるとき、埋め込み層106は隔離構造としても用いられ得る。例えば、高電圧回路の動作電圧範囲が80V~100Vの間である場合、埋め込み層106のバイアス電圧VBIASは100V~170Vの範囲であり得る。埋め込み層106をバイアスするために、半導体デバイス100は、頂部表面102aから延在して埋め込み層106に達する、垂直のドープされた構造(シンカーとも呼ばれる)122を含む。シンカー122は、埋め込み層106に電気接続を提供するように、埋め込み層106と同じ導電型のドーパントでドープされる。一例の実装において、シンカー122はN型材料でドープされ、埋め込み層106もNドープされる。
【0018】
自己整合の目的で、シンカー122は、ディープトレンチ構造114と並行に形成され得る。シンカー122は、厚さ124を有するようにディープトレンチ構造114から横方向に延在し、シンカー122は、頂部表面102aと埋め込み層106との間に導電経路を提供するために、ディープトレンチ構造114と同一の広がりを有する。一実装において、シンカーの厚さ124は2.5ミクロン未満であり、これにより、自己整合シンカーを有さない半導体デバイスと比較して、半導体デバイス100のサイズを有利に縮小され得る。
【0019】
図1Aに示すように、トレンチ構造114及びシンカー122は、トランジスタウェル領域101を取り囲む連続したリングを形成する。代替の実装において、トレンチ構造114及びシンカー122は、トランジスタウェル領域101を隔離するための連続したリングに近接するように、非接続で個別のセグメントとして配置され得る。
【0020】
動作の間、上側半導体層108は、比較的高電圧を受ける可能性があり、この場合、トランジスタウェル領域101は、一つ又は複数の高電圧回路を含む。例えば、上側半導体層108は、80V~100Vの電圧範囲を受け得る。電流が(例えば、順方向バイアスが原因で)第2のPN接合107を横切ることを防ぐために、埋め込み層106は、上側半導体層108が受ける電圧より高い電圧VBIASでバイアスされる。一例の実装において、バイアス電圧VBIASは、100V~170Vの範囲であり得る。別の例示の実装において、バイアス電圧VBIASは、140V~170Vの範囲であり得る。さらに別の例示の実装において、バイアス電圧VBIASは145V~155Vの範囲であり得る。
【0021】
下側半導体層104が接地供給電圧VGNDでバイアスされるとき、埋め込み層106と下側半導体層104との電位差は、著しく大きくなり得る。この電位差が第1のPN接合105の降伏電圧(例えば、80V以下)より大きくなるとき、半導体デバイス100は、相当量の電流漏れを経験し得る。この電位差は、高電界ラインV1及び低電界ラインV2にわたって広がる電界密度によって図示され得る。概して、高電界ラインV1は、バイアス電圧VBIASに一層近い電位分布を表し、低電界ラインV2は、接地供給電圧VGNDに一層近い電位分布を表す。第1のPN接合105で降伏を有する可能性は、V1とV2との電位差に正比例し、V1とV2との距離に反比例する。
【0022】
例示の実施形態の或る態様によれば、誘電体ライナー116を厚くすると、トレンチ導体118によって運ばれる接地電位が下側半導体層104の近隣P領域に対して一層少ない容量性結合を及ぼすので、低電界ラインV2が増大することを助け得る。低電界ラインV2を増大させることによって、V1とV2の電位差が、第1のPN接合105に沿って降伏を有する可能性を下げるように低減され得る。このアプローチは、V1がV2より実質的に高く(例えば、V1-V2≧100V)、誘電体ライナー116の最大厚さが一つ又は複数の処理パラメータによって制限される場合、あまり効果的でないことがある。
【0023】
例示の実施形態の別の態様によれば、埋め込み層106の厚さを増加させると(例えば、埋め込み層の厚さ≧12μm)、V1とV2との間の電界密度が低減するのを助けて、電界が第1のPN接合105に沿って密集するのを避け得る。電界密度を低減させることによって、第1のPN接合105における電位勾配は、第1のPN接合105に沿って降伏を有する可能性を下げるように低減され得る。このアプローチは、V1がV2より実質的に高い場合(例えば、V1-V2≧100V)、コストがかかるものとなり得る。というのも、厚くされた埋め込み層106は、通常、つくるために材料及び時間を一層必要とし、また、ディープトレンチ構造114を形成する際にエッチングすることが一層困難であり得るからである。
【0024】
例示の実施形態のさらに別の態様によれば、埋め込み層106は、第1のドーピング濃度を有する上側埋め込み層106a、及び、第1のドーピング濃度より低い第2のドーピング濃度を有する下側埋め込み層106bを含み得る。例えば、上側埋め込み層106aは、5×1018cm-3より高いドーピング濃度を有し得、下側埋め込み層106bは、l×1016cm-3からl×1017cm-3までわたるドーピング濃度を有し得る。埋め込み層106内のドーピングプロファイルを調整することによって、第1のPN接合105にわたる電位勾配は、降伏を有する可能性を下げるように低減され得る。このアプローチは、V1がV2より実質的に高く(例えば、V1-V2≧100V)、埋め込み層106の最大厚さが制限される場合(例えば、最大厚さ≦12μm)、あまり効果的でないことがある。
【0025】
上述の制約に対処するために、例示の実施形態は、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の辺りに密集する電界を減少させるデュアルトレンチ構成を導入する。
図1Cは、例示の実施形態の或る態様に従って、デュアルトレンチ構成を備える半導体デバイス100Aの上面図を示し、
図1Dは、半導体デバイス100Aの断面図を示す。半導体デバイス100Aは、半導体デバイス100と、これらの二つのデバイスが同じ数値標示により識別される構成要素を含む点で類似する。半導体デバイス100Aは、半導体デバイス100Aが第2のディープトレンチ構造174を含む点で半導体デバイス100と異なる。
【0026】
第2のディープトレンチ構造174は、トランジスタウェル領域101を横方向に囲み、埋め込み層106を交差するように配置される。より具体的には、第2のディープトレンチ構造174は、埋め込み層106を貫通するように頂部表面102aから延在する。一例の実装において、第2のディープトレンチ構造174は、埋め込み層106を貫通して、基板102の下側半導体層104に達し得る。別の例示の実装において、第2のディープトレンチ構造174は、埋め込み層106を部分的に貫通し、埋め込み層106内で終端し得る。第2のディープトレンチ構造174は、第1のディープトレンチ構造114とトランジスタウェル領域101との間に置かれる。
図1Cに示すように、第2のディープトレンチ構造174はトランジスタウェル領域101を取り囲む一方、第1のディープトレンチ構造114によって取り囲まれる。デュアルトレンチ114及び174は共に、トランジスタウェル領域101を隔離するための二つの連続したリングを確立する。代替の実装において、第1及び第2のディープトレンチ構造114及び174の各々は、トランジスタウェル領域101を隔離するための連続したリングに近似するように、切断された別個のセグメントに分割され得る。
【0027】
効率的エッチングプロセス及び効率的誘電体充填プロセスを促進するために、第2のディープトレンチ構造174は、第1のディープトレンチ構造114と同時に形成され得る。その目的のために、第2のディープトレンチ構造174は、第1のディープトレンチ構造114の第1のトレンチ幅(すなわち、第1のトレンチ開口)120より狭い第2のトレンチ幅(すなわち、第2のトレンチ開口)180を有し得る。一例の実装において、第2のトレンチ幅180は1.5μm~1.8μmの範囲であり、第1のトレンチ幅120は約2.65μm(例えば、+/-10%のマージン)である。別の例示の実装において、第2のトレンチ幅180は約1.7μm(例えば、+/-10%のマージン)であり、第1のトレンチ幅120は約2.65μm(例えば、+/-10%のマージン)である。
【0028】
第1のディープトレンチ構造114及び第2のディープトレンチ構造174が、同じ時間量の間、同時にエッチングされる場合、トレンチ幅の違いに因り、第1のディープトレンチ構造114は、第2のディープトレンチ構造174の第2のトレンチ深さTD2より深い第1のトレンチ深さTD1を有する。一例の実装において、第1のトレンチ深さTD1は20μm~28μmの範囲であり、第2のトレンチ深さTD2は8μm~16μmの範囲である。別の例示の実装において、第1のトレンチ深さTD1は23μm~27μmの範囲であり、第2のトレンチ深さTD2は13μm~15μmの範囲である。さらに別の例示の実装において、第1のトレンチ深さTD1は約24μm(例えば、+/-10%のマージン)であり、第2のトレンチ深さTD2は約14μm(例えば、+/-10%のマージン)である。
【0029】
代替として、第2のディープトレンチ構造174は、第1のディープトレンチ構造114の第1のトレンチ幅120と実質的に同じ(例えば、+/-5%のマージン)である第2のトレンチ幅180を有し得る。この特定の構成の下で、第1のトレンチ深さTD1は第2のトレンチ深さTD2と実質的に同じ(例えば、+/-5%のマージン)であり得る。一例の実装において、第1及び第2のトレンチ深さTD1及びTD2の各々は20μm~28μmの範囲である。別の例示の実装において、第1及び第2のトレンチ深さTD1及びTD2の各々は、23μm~27μmの範囲である。さらに別の例示の実装において、第1及び第2のトレンチ深さTD1及びTD2の各々は、約24μm(例えば、+/-10%のマージン)である。
【0030】
第1のディープトレンチ構造114と同様に、第2のディープトレンチ構造174は、その側壁及び底部に沿って配置される誘電体ライナー176を含む。誘電体ライナー176は熱二酸化シリコンを含み得る。誘電体ライナー176は、基板102の下側半導体層104に対する如何なるアクセスをも防ぐために、第2のディープトレンチ構造174を封止する。第2のトレンチ幅180が第1のトレンチ幅120より小さい場合、同時誘電体形成プロセスによって、誘電体ライナー176は、軽く傾斜を付けられ得、第2のディープトレンチ構造174の底部辺りにおいて一層厚くされ得る。
【0031】
第2のディープトレンチ構造174は、誘電体ライナー176上に配置されるトレンチ充填材料178を含む。第2のディープトレンチ構造174がトレンチバイアス電圧VTRを受け取るように構成される場合、トレンチ充填材料178は導電性である。代替として、第2のディープトレンチ構造174が浮遊状態に構成される場合、トレンチ充填材料178は導電性であっても非導電性であってもよい。トレンチ充填材料178が導電性である構成では、トレンチ導体178は、上側半導体層108、埋め込み層106、及び下側半導体層104から絶縁される。一例の実装において、トレンチ充填材料178は、ポリシリコンと一般的に呼ばれる多結晶シリコンを含む。トレンチ充填導体118とは異なり、トレンチ充填導体178は、基板102の下側半導体層104との如何なるオーミック接触をも確立しない。むしろ、トレンチ充填導体178は、埋め込み層106及び下側半導体層104との容量性結合を確立する。この容量性結合を介して、トレンチ導体178は、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との電界密度に影響を及ぼすために用いられ得る。一例の実装において、トレンチ導体178は、埋め込み層106と下側半導体層104との間の第1のPN接合105の辺りの電界密度を低減させるために、トレンチバイアス電圧VTRを受け取るように構成され得る。
【0032】
半導体デバイス100と同様に、半導体デバイス100Aは、垂直のドープされた構造(シンカーとも呼ばれる)182を含む。シンカー182は、埋め込み層106をバイアス電圧VBIASまでバイアスするためのコンジットとして働き、それによりP型上側半導体層108とN型埋め込み層106との間に逆バイアスを確立する。シンカー182は、頂部表面102aから延在して埋め込み層106に達する。シンカー182は、埋め込み層106に電気接続を提供するように、埋め込み層106と同じ導電型のドーパントでドープされる。一例の実装において、シンカー182はN型材料でドープされ、この場合、埋め込み層106もNドープされる。
【0033】
自己整合のため、シンカー182は、第2のディープトレンチ構造174と並行に形成され得る。シンカー182は、厚さ184を有するように第2のディープトレンチ構造174から横方向に延在し、シンカー182は、頂部表面102aと埋め込み層106との間の導電経路を提供するために、第2のディープトレンチ構造174と同一の広がりを有する。一実装において、シンカーの厚さ184は2.5ミクロン未満であり得、これにより、自己整合シンカーを有さない半導体デバイスと比較して、半導体デバイス100のサイズが有利に縮小され得る。第2のトレンチ幅180が第1のトレンチ幅120より狭い場合、第2のシンカー厚さ184は、第1のシンカー厚さ124より薄くし得る。
【0034】
デュアルトレンチ構成は、高動作電圧範囲に耐えることにおいて、シングルトレンチ構成よりも幾つかの利点を提供する一方で、隔離接合の辺りの降伏を防ぐ。第1の利点は、高電界ラインV
1と低電界ラインV
2との間の電界ライン分布を広げることを含む。広げられた分布は、第1のPN接合105の辺りの電位差を低減させる。例えば、
図1Dに示すように、第1のPN接合105の電位差が実質的に低減され得るように、高電界ラインV
1及び低電界ラインV
2はさらに離間される。
【0035】
電界ラインの広げられた分布は、第2のディープトレンチ構造174の構造的特徴によるものとされ得る。一態様において、基板102との如何なるオーミック接触を確立せず、それゆえ基板102をバイアスしないことによって、第2のディープトレンチ構造174は、第2のディープトレンチ構造174を囲む領域の辺りの第1のPN接合105の比較的低い電位差に耐えるのを助ける。別の態様において、第2のディープトレンチ構造174は、その底部辺りに一層厚い誘電体ライナー178を有することによって、第1のPN接合105の電位差を低減するのを助ける。さらに別の態様において、第2のディープトレンチ構造174の相対的位置は、バイアスされたシンカー182と浮遊シンカー182’及び122との間の電界ラインを広げるのを助ける。第1のディープトレンチ構造114(接地供給電圧VGND(例えば、0V)を搬送するように構成される)と埋め込み層106のバイアスされた領域(高バイアス電圧VBIAS(例えば、100V~170V)でバイアスされる)との間に置かれることによって、第2のディープトレンチ構造174は、これらの二つの領域間の電圧バッファとして働く。
【0036】
第1のディープトレンチ構造114と第2のディープトレンチ構造174との間のトレンチ間距離dTは、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の降伏電圧に関連する。概して、降伏電圧は、トレンチ間距離dTに反比例する。一例の実装において、第1のPN接合105の接合降伏を防ぐために少なくとも1μmのトレンチ間距離dTが充分であり得、この場合、降伏電圧は100V又はそれよりも低くなる。別の例示の実装において、第1のPN接合105の接合降伏を防ぐために約1.5μm(例えば、+/-10%のマージン)のトレンチ間距離dTが充分であり得、この場合、降伏電圧は約80V(例えば、+/-10%のマージン)である。
【0037】
トレンチ間距離dTは、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の電界密度閾値にも関連し得る。半導体デバイス100Aが10V/μmの電界密度を有すると想定すると、トレンチ間距離dTは、高電界ラインV1と低電界ラインV2との20Vの電位差に耐えるため、約2μm(例えば、+/-10%のマージン)である。同様に、半導体デバイス100Aが20V/μmの電界密度閾値を有すると想定すると、トレンチ間距離dTは、高電界ラインV1と低電界ラインV2との20Vの電位差に耐えるため、約1μm(例えば、+/-10%のマージン)である。これらの想定の下で、トレンチ間距離dTは、第1のPN接合105の電界密度閾値に反比例する。
【0038】
デュアルトレンチ構成の第2の利点は、高電界ラインV1及び低電界ラインV2にわたる電位スペクトルを低下させることを含む。第2のトレンチ充填材料178が導電性である実装において、第2のディープトレンチ構造174は、トレンチバイアス電圧VTRを受け取るように構成され得る。トレンチバイアス電圧VTRは、埋め込み層106に印加されるバイアス電圧VBIASに比べて高電界ラインV1の値を低下させ得る。一例において、高電界ラインV1は100Vまで低減され得、この場合、バイアス電圧VBIASが140Vに設定され、トレンチバイアス電圧VTRが40Vに設定される。同様に、高電界ラインV1は80Vまで低減され得、この場合、バイアス電圧VBIASが140Vに設定され、トレンチバイアス電圧VTRが60Vに設定される。
【0039】
接合降伏を避けるために、トレンチバイアス電圧VTRは、埋め込み層106と基板10の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の降伏電圧に関連し得る。一例の実装において、トレンチバイアス電圧VTRは40Vに設定され得、この場合、降伏電圧は80Vであり、埋め込み層バイアス電圧VBIASは120V以下である。別の例示の実装において、トレンチバイアス電圧VTRは60Vに設定され得、この場合、降伏電圧は60Vであり、埋め込み層バイアス電圧VBIASは120V以下である。これらの例の下、トレンチバイアス電圧VTRは、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の降伏電圧に反比例する。
【0040】
また、電界が密集するのを避けるため、トレンチバイアス電圧VTRも、埋め込み層106と基板102の下側半導体層104との間の第1のPN接合105の電界密度閾値に関連し得る。半導体デバイス100Aが、10V/μmの電界密度及び2μmのトレンチ間距離dTを有すると想定すると、トレンチバイアス電圧VTRは、高電界ラインV1と低電界ラインV2との80Vの電位差に耐えるために40Vに設定され得、この場合、埋め込み層バイアス電圧VBIASは140Vである。同様に、半導体デバイス100Aが、20V/μmの電界密度及び2μmのトレンチ間距離dTを有すると想定すると、トレンチバイアス電圧VTRは、高電界ラインV1と低電界ラインV2との80Vの電位差に耐えるために20Vに設定され得、この場合、埋め込み層バイアス電圧VBIASは140Vである。これらの想定の下で、トレンチバイアス電圧VTRは第1のPN接合105の電界密度閾値に反比例する。
【0041】
図2A~
図2Gは、例示の実施形態の或る態様に従ったデュアルトレンチ構成を備える半導体デバイス100Aの断面図を示して製造プロセスを示す。
図2Aを参照すると、埋め込み層106及び上側半導体層108は下側半導体層104上に形成される。埋め込み層106及び上側半導体層108は、N型ドーパントをP型下側半導体層104に注入し、その後、熱駆動及び後続のエピタキシャルプロセスが続いて、P型上側半導体層108を成長させることによって形成され得、その結果、埋め込み層106は、注入されたN型ドーパントの拡散及び活性化によって形成される。上側半導体層108が形成された後、トランジスタウェル領域101が、上側半導体層108内及び埋め込み層106より上に形成される。
【0042】
パッド酸化物層126が、熱酸化などによって基板102の頂部表面102aに形成される。パッド酸化物層126は、5ナノメートル~30ナノメートルの二酸化ケイ素を含み得る。パッド窒化物層128が、アンモニア及びシランを用いる低圧化学気相成長(LPCVD)などによってパッド酸化物層126上に形成される。パッド窒化物層128は、100ナノメートル~300ナノメートルの窒化ケイ素を含み得る。ハードマスク酸化物層130が、テトラエトキシシラン(TEOS)としても知られるテトラエチルオルソシリケートを用いるか又は高密度プラズマ(HDP)プロセスを用いるプラズマヘンハンスト化学気相成長(PECVD)などによって、パッド窒化物層128上に形成される。ハードマスク酸化物層130は、500ナノメートル~2ミクロンの二酸化ケイ素を含み得る。パッド窒化物層128は、ハードマスク酸化物層130の後続のエッチングのためのエッチングストップ層を提供する。
【0043】
図1C及び
図1Dにおいて図示及び説明したように第1のディープトレンチ構造114及び第2のディープトレンチ構造174を形成するためのエリアを露出させるように、ハードマスク酸化物層130の上にトレンチマスク132が形成される。より具体的には、トレンチマスク132は、第1の開口AP1及び第2の開口AP2を用いてパターニングされる。第1の開口AP1は第1のトレンチ幅120を画定し、第2の開口AP2は第2のトレンチ幅180を画定する。従って、第1の開口AP1は、概して、第2の開口AP2より大きい。一例の実装において、第2の開口AP2は1.5μm~1.8μmの範囲であり、第1の開口AP1は約2.65μm(例えば、+/-10%のマージン)である。別の例示の実装において、第2の開口AP2は約1.7μm(例えば、+/-10%のマージン)であり、第1の開口AP1は約2.65μm(例えば、+/-10%のマージン)である。トレンチマスク132は、フォトリソグラフィプロセスによって形成されるフォトレジスト材料を含み得、さらに、ハードマスク層及び/又は反射防止層を含み得る。
【0044】
図2Bを参照すると、ハードマスクエッチングプロセスが、トレンチマスク132によって露出されたエリアにおけるハードマスク酸化物層130から材料を除去する。ハードマスクエッチングプロセスは、フッ素ラジカルを用いる反応性イオンエッチング(RIE)プロセスを含み得、及び/又は、フッ化水素酸の希釈緩衝水溶液を用いるウェットエッチングプロセスを含み得る。
図2Bに示すように、パッド窒化物層128の一部がハードマスクエッチングプロセスによって除去され得る。また、トレンチマスク132の一部又は全てが、ハードマスクエッチングプロセスによって浸食され得る。
【0045】
図2Cを参照すると、ストップ層エッチングプロセスが、トレンチマスク132によって露出されたエリアにおけるパッド窒化物層128及びパッド酸化物層126を除去する。ストップ層エッチングプロセスは、
図2Bに関して説明したハードマスクエッチングプロセスとは異なるガス組み合わせを用いるRIEプロセスを含み得る。トレンチマスク132は、ストップ層エッチングプロセスによってさらに浸食され得る。
【0046】
ストップ層エッチングは第1のトレンチエッチングプロセスを含み、第1のトレンチエッチングプロセスは、第1の部分的ディープトレンチ134及び第2の部分的ディープトレンチ138を同時に形成するために、トレンチマスク132によって露出されたエリアにおける基板102から材料を取り除く。第1の開口AP1が第2の開口AP2より幅広である場合、第1の部分的ディープトレンチ134は、第2の部分的ディープトレンチ138より深く埋め込み層106に延在する。第1のトレンチエッチングプロセスは連続エッチングプロセスを含み得、連続エッチングプロセスは、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の底部から材料を同時に除去し、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の側壁を不動態化する。代替として、第1のディープトレンチエッチングプロセスは、ツーステッププロセスを含み得る。第1のステップの間、第1のディープトレンチエッチングプロセスは、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の底部から材料を除去する。第2のステップの間、第1のディープトレンチエッチングプロセスは、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の側壁を不動態化する。トレンチマスク132は、第1のトレンチエッチングプロセスによってさらに浸食され得る。
【0047】
図2Dを参照すると、第1のN型シンカー注入層140を形成するために第1の部分的ディープトレンチ134の側壁に沿って、及び、第2のN型シンカー注入層141を形成するために第2の部分的ディープトレンチ138の側壁に沿って、N型ドーパント139が基板102に注入される。N型ドーパント139は、傾斜角で、複数のサブドーズで注入され得る。一例の実装において、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138のそれぞれの側壁に沿って第1及び第2のシンカー注入層140及び141の連続的適用範囲を提供するために、傾斜角は10度~30度の範囲である。
【0048】
また、N型ドーパント139は、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の底部表面に注入されるN型ドーパント139の量を低減するため、約45度のツイスト角度で注入され得る。例示の注入プロセスが、10度~30度の傾斜角及び45度のツイスト角度で、90度離れて回転された、4つのサブドーズを含み得る。第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の底部表面に注入されるN型ドーパント139の量を低減すると、第1のトレンチエッチングプロセスに続く第2のトレンチエッチングプロセスのプロセスマージンが有利にも改善され得る。
【0049】
N型ドーパント139は、後に形成されるシンカーの好ましく低い抵抗を提供するように、1×1014cm-2~2×1015cm-2の総ドーズで注入され得る。N型ドーパント139はリン及び/又はヒ素を含み得る。パッド酸化物層(図示せず)が、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の側壁上に形成され得る。N型ドーパント139がヒ素を含む場合、TEOSを用いるPECVDプロセスによって形成される二酸化ケイ素の30ナノメートルのパッド酸化物層が、第1及び第2のシンカー注入層140及び141における注入されたヒ素の保持を改善し得る。代替として、N型ドーパント139がヒ素を含まない場合、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138の側壁上のパッド酸化物が省かれ得る。というのも、パッド酸化物は、基板102における応力を増大させ得、これが、半導体デバイス100A性能の低下につながるおそれがあるからである。
【0050】
第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138を形成した後であり、そこから一層深いフルディープトレンチを形成する前に、N型ドーパント139を注入すると、有利にも、第1及び第2のシンカー注入層140及び141が、埋め込み層106を超えて延在することを防ぎ得る。そのようなプロセスは、半導体デバイス100AにおけるPN接合の降伏電圧も改善し得る。また、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138は、第1及び第2のシンカー注入層140及び141を形成するための自己整合手段として働き、そのため、付加的なマスクが必要とされない。第1の開口AP1が第2の開口AP2より幅広であるため、第1のシンカー注入層140は、第2のシンカー注入層141より厚い横方向厚さを有する。
【0051】
図2Eを参照すると、基板102から付加的な材料を除去して、第1及び第2の部分的ディープトレンチ134及び138をさらに延在させ、それぞれ、第1及び第2のフルディープトレンチ142及び143を同時に形成するように、第2のトレンチエッチングプロセスが行われる。第1の開口AP1が第2の開口AP2より幅広いため、第1のフルトレンチ142は、第2のフルトレンチ143の第2のトレンチ深さTD
2より深い第1のトレンチ深さTD
1を有する。一例の実装において、第1のフルトレンチ142は、少なくとも17μm埋め込み層106の下に延在し、第2のフルトレンチ142は、17μmより少なく埋め込み層106の下に延在する。別の例示の実装において、第1のフルトレンチ142は埋め込み層106より下に延在し、第2のフルトレンチ142は埋め込み層106より下に延在しない。第2のトレンチエッチングプロセスの完了の際、残りのトレンチマスク132の実質的に全てが取り除かれる。
【0052】
図2Fを参照すると、それぞれ、第1及び第2のフルディープトレンチ142及び143の側部及び底部上に第1及び第2の誘電体ライナー116及び176を形成するために、誘電体堆積プロセスが行われる。一例の実装において、誘電体ライナー116及び176は、各々、100ナノメートル~800ナノメートルの範囲の厚さを有し得る。別の例示の実装において、第1及び第2の誘電体ライナー116及び176は、第1及び第2のフルディープトレンチ142及び143の側部及び底部上に、200ナノメートル~300ナノメートルの範囲の厚さを有する熱酸化物層を含み得る。さらに別の例示の実装において、300ナノメートル~500ナノメートルの範囲の厚さを有する二酸化ケイ素層が、準常圧化学気相成長(SACVD)プロセスによって熱酸化物上に形成され得る。
【0053】
第1のフルディープトレンチ142が第2のフルディープトレンチ143より広いトレンチ幅を有するので、第2の誘電体層176は、第2のフルディープトレンチ143の底部辺りにピンチオフ部177を形成し、一方、第1の誘電体層116は、第1のフルディープトレンチ142の底部辺りに比較的均一の厚さ形成する。概して、第2のフルディープトレンチ142におけるピンチオフ部177は、第1のフルディープトレンチ142の底部辺りの第1の誘電体層116より厚い。
【0054】
次に、下側半導体層104にアクセスするため第1のフルディープトレンチ142内に底部開口をつくるために、酸化物エッチングプロセスが行われる。酸化物エッチングプロセスが完了した後、一層厚いピンチオフ部177に起因して、第2のフルディープトレンチ143の底部は下側半導体層104に対して閉じたままである。第1のフルディープトレンチ142内に底部開口をつくる際、底部開口の真下にコンタクトドープされる領域117をつくるために、P型ドーピングプロセスが行われ得る。
【0055】
その後、第1及び第2の誘電体ライナー116及び176上の第1及び第2のフルディープトレンチ142及び143において、トレンチ充填材料144の層が形成される。一例の実装において、トレンチ充填材料144の層は、第1及び第2のフルディープトレンチ142及び143を充填するポリシリコン材料を含み得、ハードマスク酸化物層130を覆う。代替として、トレンチ充填材料144の層は、第2のフルディープトレンチ143を充填するための二酸化ケイ素又はその他の誘電体材料を含み得、この場合、第2のディープトレンチ174は浮遊状態に構成される。
【0056】
第1及び第2の誘電体ライナー116及び176並びにトレンチ充填材料144の形成の間の熱プロファイルが、第1及び第2のシンカー注入層140及び141において注入されたN型ドーパントを拡散させ、活性化させる。有利にも、第1及び第2のシンカー122及び182は、別個のアニールプロセスを必要とすることなく形成される。
【0057】
図2Gを参照すると、ハードマスク酸化物層130と、トレンチ充填材料144の層の上にある部分は、化学機械研磨(CMP)プロセスなどによってその後除去される。その結果、第1のトレンチ充填材料118が第1のディープトレンチ構造114に残され、第2のトレンチ充填材料178が第2のディープトレンチ構造174に残される。パッド窒化物層128は、ハードマスク酸化物層130の除去のためのエッチングストップ層として働く。パッド窒化物層128及びパッド酸化物層126はその後除去されて、
図1C及び
図1Dに示すような構造になる。
【0058】
この説明において、或る集積回路の特徴に適用される用語、「に実質的に等しい(substantially equal to),(substantially equal)」、「実質的に同じ(substantially the same)」、及びそれらの変形は、その集積回路を形成するための製造公差内で等しいことを意味する。より具体的には、用語、「に実質的に等しい」及び「実質的に等しい」は、二つの対象間の量的関係を説明する。この量的関係は、設計により二つの対象を等しくすることを所望とし得るが、製造プロセスにより一定量の変動が導入され得ることを見込んでいる。一態様において、第1のレジスタが、第2のレジスタの第2の抵抗に実質的に等しい第1の抵抗を有し得、この場合、第1及び第2のレジスタは同じ抵抗を有することが意図とされるが、それでも、製造プロセスは、第1の抵抗と第2の抵抗との間のわずかな変動を導入する。このように、製造された第1及び第2のレジスタが、抵抗のわずかな差を示す場合でも、第1の抵抗は第2の抵抗に実質的に等しくし得る。このわずかな差は設計目標の5%内とし得る。別の態様において、第1のレジスタが、第2のレジスタの第2の抵抗に実質的に等しい第1の抵抗を有し得、この場合、プロセス変動が演繹的に既知であり、そのため、第1の抵抗及び第2の抵抗が、この既知のプロセス変動を補償するためにわずかに異なる値でプリセットされ得る。このように、第1及び第2の抵抗の設計値が既知のプロセス変動を補償するためにわずかな差を含むようにプリセットされ得る場合でも、第1の抵抗は第2の抵抗に実質的に等しくし得る。このわずかな差は設計目標の5%内とし得る。
【0059】
この説明において、「~するように構成される」という用語は、一つ又は複数の有形の非一時的構成要素の構造的及び機能的特性を説明する。例えば、「~するように構成される」或る構成要素が、或る機能を行うために設計され又はそれ専用にされる、特定の構成を有する。従って、或るデバイスが、記載される或る機能を行うようにイネーブルされ、アクティベートされ、又は給電され得る有形の非一時的構成要素を含む場合に、そのデバイスはそうした記載された機能を行う「ように構成される」。「~するように構成される」という用語は、構成可能であることを含み得るが、そのような狭い定義に限定されない。このように、或るデバイスを説明するために用いられる場合、「~するために構成される」という用語は、説明されたデバイスが任意の所与の時点で構成可能であることを必要としない。
【0060】
上述の構成要素(例えば、要素、リソース等など)によって行われる種々の機能に対して、そのような構成要素を説明するために用いられる用語は、特に記載がない限り、説明された構造と構造的に同等でない場合でも、説明された構成要素(例えば、機能的に同等の構成要素)の特定の機能を行う任意の構成要素に対応する。また、幾つかの実装の一つのみに関して特定の特徴が本願で説明される場合があるが、そのような特徴は、任意の特定の応用例に所望され及び有利であるように、その他の実装の一つ又は複数のその他の特徴と組み合わされ得る。
【0061】
また、別個の実施形態の文脈において本願において説明される幾つかの特徴が、単一の実施形態において組み合わせて実装され得る。逆に、単一の実施形態の文脈において本願において説明される種々の特徴が、複数の実施形態において個別に、又は、任意の適切な部分的組み合わせで、実装され得る。また、特徴が、幾つかの組み合わせで機能するように上述される場合があるが、或る組み合わせからの一つ又は複数の特徴が、場合によってはそうした組み合わせから削除されてもよく、そうした組み合わせは、部分的組み合わせ、又は部分的組み合わせの変形を対象とし得る。
【0062】
同様に、図面において特定の順で動作を示したが、そのような順が必要であると記載されない限り、そのような動作は、所望の結果を得るために、図示される特定の順で又は順次行われる必要はない(また、図示される動作全てが行われる必要はない)。幾つかの状況において、同時の処理が、半導体デバイスの複数の構造を製造するために有利であり得る。また、上述の実施形態における種々のシステム構成要素の分離は、全ての実施形態において、そのような分離を必要としない。