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特許7293295メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスの除去方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウスの除去方法
(51)【国際特許分類】
   A61L 2/10 20060101AFI20230612BHJP
   C03C 3/064 20060101ALI20230612BHJP
   H01L 33/00 20100101ALI20230612BHJP
【FI】
A61L2/10 ZAB
C03C3/064
H01L33/00 L
【請求項の数】 17
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021135578
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2022089142
(43)【公開日】2022-06-15
【審査請求日】2021-08-23
(31)【優先権主張番号】20211681
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20211687
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20 2020 107 534.9
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】20 2020 107 535.7
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ ペータースハンス
(72)【発明者】
【氏名】クラウス メッゲス
(72)【発明者】
【氏名】ズザンネ クリューガー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス プファイファー
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-517488(JP,A)
【文献】特開2011-032162(JP,A)
【文献】国際公開第2017/163963(WO,A1)
【文献】特開昭60-046946(JP,A)
【文献】特開2001-064038(JP,A)
【文献】特開平02-141438(JP,A)
【文献】特開2004-315279(JP,A)
【文献】登録実用新案第3233968(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61L 2/00
C02F 1/30-32
A61L 9/00
C03C 3/00
H01L 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を除去する方法であって、前記方法は、207nm~222nmの波長範囲内の殺菌性UV光に前記MRSAを曝露することを含み、前記UV光は、3.5ppm未満の総白金含有量、およびPt、TiOおよびFeの含有量の合計13.5ppm未満を有するホウケイ酸ガラスで製造されたランプカバーを備えたUVランプによって照射される、方法。
【請求項2】
前記曝露されたMRSAが、222nmを超えるUV放射に感受性を有するUV感受性材料上に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記UV感受性材料が、動物の眼または皮膚などの生物学的組織表面であり、前記動物が、昆虫、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳類および/またはヒトから選択される、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記MRSAの、BS ISO 22196:2011-08-31に従って処理した後の除去が、99%超である、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記MRSAの前記UV曝露が、少なくとも2,000~8,000マイクロワット秒毎平方センチメートル(μW・s/cm)の範囲である、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記UVランプの前記カバーの全てまたは一部が、レンズの形態に成形されている、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
207nm~222nmの波長範囲にわたって少なくとも60%(1mmの厚さで測定)の透過率を有する、UVカバー用ガラスであって、3.5ppm未満の総白金含有量とISO 719に従って決定されるガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量が250μg/g以下であることにより特徴付けられる耐加水分解性と、13.5ppm未満であるPt、TiO、およびFeの含有量の合計とを有するホウケイ酸ガラスである、前記UVカバー用ガラス。
【請求項8】
- 200nmで少なくとも60%の透過率を有し、かつ/または260nm、280nmおよび/または310nmの波長[λ]で少なくとも85%の透過率を有し(1mmの厚さで測定)、
- ±0.1mm未満の波面偏差(山から谷)を有し、かつ/または
- 1.450~1.580の屈折率nを有する、請求項7記載のガラス。
【請求項9】
- 1種以上のUV遮断性不純物の総含有量が10ppm未満であり、
- 任意選択的に、UV遮断性不純物が、鉛、カドミウム、水銀、ロジウム、六価クロム、鉄、チタン、およびこれらの任意の組み合わせから選択される、請求項7または8記載のガラス。
【請求項10】
前記総白金含有量が、1.0ppm未満である、請求項7から9までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項11】
前記ガラスが、以下の成分を、示された量(mol%):
【表1】
で含む、請求項7から10までのいずれか1項記載のガラス。
【請求項12】
少なくとも0.3mm、特に少なくとも3mmおよび/または最大20mmの厚さを有する、請求項7から11までのいずれか1項記載のガラスで製造された、UVカバー用ガラス物品。
【請求項13】
前記物品が、熱的または化学的に強化され、特に少なくとも1つの表面において少なくとも50MPaの圧縮応力を有する、請求項12記載のガラス物品。
【請求項14】
DIN EN 12150-1に従って決定される、40mm×40mmの領域が25片以上に砕けることにより特徴付けられる破壊パターンを有する、請求項12または13記載のガラス物品。
【請求項15】
UV-LEDモジュール用の、例えば水の消毒、分析機器(HPLC、分光計、水監視センサー)、空気浄化、空気消毒、表面消毒(例えばキーボード消毒、エスカレーターの手すりのUV滅菌装置)、サイトメトリー、分子同定、タンパク質分析、バイオフィルム処理、硬化、リソグラフィー、植物成長、皮膚治療(乾癬、白斑、かゆみ、神経皮膚炎、にきび、光線性皮膚炎、光線療法、バラ色粃糠疹)、細菌検出、創薬、タンパク質分析、皮膚ビタミンD3産生の誘導、および/または滅菌の群から選択される用途での、気密封止レンズキャップとしての請求項12から14までのいずれか1項記載のガラス物品の使用。
【請求項16】
請求項15記載のガラス物品の使用であって、前記ガラス物品の厚さおよび前記ガラス物品のUV透過率は、光源に対して前記ガラス物品の反対側に配置されかつ前記物品から70mm離れた作用部位を、120W/cmかつアーク長4cmの中圧水銀ランプを用いて17.27mW/cmのUVC出力密度で20℃の周囲温度で5秒間照射した場合に、前記作用部位に面する前記ガラス物品の表面の温度が45℃を超えないように選択される、前記使用
【請求項17】
請求項12から14までのいずれか1項記載のガラス物品であって、前記ガラス物品の厚さおよび前記ガラス物品のUV透過率は、光源に対して前記ガラス物品の反対側に配置されかつ前記物品から70mm離れた作用部位を、120W/cmかつアーク長4cmの中圧水銀ランプを用いて17.27mW/cm のUVC出力密度で20℃の周囲温度で5秒間照射した場合に、前記作用部位に面する前記ガラス物品の表面の温度が45℃を超えないように選択される、前記ガラス物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(Staphylococcus aureus)(MRSA)を除去するための方法、特にUV感受性表面からMRSAを除去するための方法に関する。本方法は、207nm~222nmの波長範囲内の殺菌性UV光を使用することを含み、その際、UV光は、特定のUV透過性ホウケイ酸ガラスから製造されたランプカバーを備えたUVランプによって放出される。本発明は、UV透過性ガラス、かかるUV透過性ガラスの使用、およびその製造方法を含む。
【0002】
発明の背景
メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)とは、スタフィロコッカス・アウレウスの他の菌株と遺伝的に異なるグラム陽性菌の群を指す。MRSAは、治療が困難なヒトの複数の感染症の原因である。MRSAは、遺伝子の水平伝播および/または自然選択によりβ-ラクタム系抗生物質に対する多剤耐性を獲得したスタフィロコッカス・アウレウス(S. aureus)のいずれかの菌株である。β-ラクタム系抗生物質は、いくつかのペナム(メチシリンやオキサシリンなどのペニシリン誘導体)およびセフェム、例えばセファロスポリンを含む広スペクトル性の群である。
【0003】
MRSAは、病院、刑務所および養護施設で一般的であり、開放創、カテーテルなどの侵襲的装置、および弱まった免疫系を有している人々は、院内感染のリスクが高くなる。MRSAは院内感染として始まったものの、市中感染型だけでなく家畜感染型にもなっている。
【0004】
近年の研究では、MRSAは川や湖などの多くの地表水で確認できており、MRSAが飲用水源を汚染し、保育園、学校、病院、特別養護施設、老人ホーム、およびその他の医療施設などの影響を受けやすいあらゆる種類の領域に容易に伝搬し得る機会が増えてきている。
【0005】
下水および下水処理プラントの一般的な洗浄システムは、現在、水から多剤耐性菌をろ過または除去するのに十分な設備を備えているとは限らないため、これは特に危険である。
【0006】
MRSAにまだ苦しめられていない数少ない国の1つはオランダである。オランダの戦略の成功の重要な部分は、退院する前の患者のMRSAを除去する試みであった。
【0007】
したがって、使用が容易であり、かつMRSA、特に従来の滅菌方法に対して感受性を有する表面に存在するMRSAに対して効果的である除去方法が大いに必要とされている。
【0008】
光によるMRSAの除去方法が当該技術分野で報告されている。いわゆる「光増感剤法」は、高いMRSAリスク(または他の細菌汚染)を有する病院や他の領域で広く使用されている。この方法では、光を当てると励起される光増感剤、主に色素分子が利用される。光によって励起されると、これらの分子は反応性の酸素種を生成し、次いでそれがバクテリアを除去する。
【0009】
しかしながら、光増感剤を使用する報告された全ての方法が、感染を効果的に防ぐのに十分な微生物を除去するほどに十分なわけではない。これは、光増感剤が有意なダメージを与えるほど十分に濃縮されていない場合があるためである。さらに、多くの光増感剤は、疎水性である。このため、微生物が通常存在する水性環境(例えばバイオフィルム)に光増感剤を分散させることは困難である。
【0010】
当該技術分野における別の方法は、「紫外線殺菌照射」(UVGI)と呼ばれ、これは、短波長紫外(UVC)光を使用して核酸を破壊し、それらのDNAを壊すことによって微生物を殺滅または不活化させ、生命に重要な細胞機能を実行できないようにするものである。UVGIは、食品、空気、および水の浄化など、様々な用途で使用されている。
【0011】
UVGIデバイスは、空気または水の循環システムにおいて十分に強力なUVC光を生成して、細菌、ウイルス、カビ、およびその他の病原体などの微生物にとって住みにくい環境にすることができる。空気と水を消毒するために、UVGIをろ過システムと組み合わせることができる。消毒へのUVGIの利用は、20世紀半ばから受け入れられている慣行である。これは主に医療衛生および無菌作業施設で使用されてきた。
【0012】
収容設備は閉じられており、循環させてより多く確実にUV曝露させることができるため、飲用水および廃水の殺菌にますます使用されてきている。近年、UVGIは空気清浄機において新たな用途が見出されている。既存のUVGI法では、約250nmの波長のUV光が使用されており、例えば水銀蒸気ランプをベースとする従来の殺菌性UVランプは254nmの波長で放射する。
【0013】
しかしながら、従来の殺菌性UVランプは眼に有害であり、ヒトの皮膚にUVに付随する前変異原性のDNA病変を生じ、曝露した哺乳類の皮膚に対して細胞毒性があることが報告されている。
【0014】
そのため、癌や他の変異原性疾患の誘発さえも含む有害な影響の危険性により、例えば患者、医療従事者、または家畜の皮膚などの哺乳類の皮膚にMRSAの除去のための一般的なUVGI法を直接使用することが妨げられている。
【0015】
発明の詳細な説明
近年、遠UVC光は、薬剤耐性の能力に関わらず細菌を効率的に殺滅するものの、従来の殺菌性のUVへの曝露に付随する皮膚または眼への損傷の影響がないことが報告されている。
【0016】
しかしながら、通常は透過性であるカバーにおいて、約200nm~約250nmの波長でのUV光のUV吸収性が非常に大きい。例えば、UV光は320nmを超える波長では従来のガラスをあまり透過しない。従来のホウケイ酸ガラスは、290nm未満の波長の光を透過しない。したがって、これらのカバーは、これらが遠UV光に対して許容されないか、または処理される表面、例えば処理される皮膚の十分なUVへの曝露を保証するために少なくとも大量のエネルギーが必要とされるという欠点を有している。この高い運転エネルギーはまた、大きなエネルギー散逸を招き、カバーだけでなくデバイス全体への熱応力を増加させる。その結果、デバイスの寿命が短くなり、メンテナンスコストが増加する。
【0017】
したがって、従来技術の方法を評価する際の課題は、哺乳類の皮膚、または特定の気体および/もしくは液体のようなUVに感受性を有する他の材料などの、感受性を有する表面に直接MRSA処理を行いやすくするために遠UVC光のUVを適用できる、新規なUVGI方法を提供することであった。
【0018】
この課題は、本明細書に開示の方法によって解決される。
【0019】
本発明は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を除去する方法であって、207~222nmの波長範囲内の殺菌性UV光にMRSAを曝露することを含み、該UV光は、3.5ppm未満の総白金含有量を有するホウケイ酸ガラスから製造されたランプカバーを備えたUVランプによって照射される。いくつかの実施形態では、このガラスは、さらに、それぞれ5ppm未満である鉄、チタン、および他の重金属の低い含有量を有し得る。
【0020】
UV放射は、有機結合を解裂し得る。よって、生体物質が破壊されることにより、これは生命に好ましくない。さらに、多くのプラスチックは、紫外線により、ヘイズ、脆化、および/または崩壊に起因する損傷を受ける。したがって、UV光は、特定の気体および/または液体などの、UVの影響を受けやすい可能性がある多数の感受性表面または他の材料に有害である場合がある。
【0021】
ヒトの場合、UV放射に過度にさらされると、眼の屈折光学系と網膜に急性および慢性の有害な影響を受ける場合がある。皮膚、概日リズム、および免疫系も影響を受ける可能性がある。皮膚と眼は、265~275nmのUVによる損傷に最も敏感である。
【0022】
例えば水銀蒸気ランプなどの例えば従来のUVGIランプによって放射されるような約250nmの波長の人工UVC光は、例えばヒトの皮膚モデルでUVに付随する前変異原性のDNA病変を生じ、曝露された哺乳類の皮膚に対して細胞毒性を有する。眼は、265nm~275nmの低いUVC帯域のUVによる損傷に最も敏感である。この波長の放射は太陽光にはほとんどないものの、溶接機のアーク光やその他の人工光源でみられる。これらへの曝露は、「電気性眼炎」または「アークアイ」(雪眼炎)を引き起こす可能性があり、また白内障、翼状片、および瞼裂斑の形成を引き起こす可能性がある。
【0023】
したがって、本発明の方法に従って適用される波長は、207nm~222nmの範囲である。約207nmの紫外(UV)光は、典型的な殺菌性UV光(254nm)と同様の抗菌特性を有しているものの、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、またはヒトの皮膚などの高等動物の外部組織被覆に損傷を与えることはない。しかしながら、別の実施形態では、これは軟体動物(殻)および/または節足動物(外骨格)の外表面からMRSAを除去するために使用される場合もある。
【0024】
254nmの光と比較して、生物学的サンプル(例えば角質層)における207nmの光の透過距離は限定されていることから、処理表面、特に哺乳類またはヒトの皮膚、例えば患者や医療従事者の皮膚に害を与えることなく、選択的な抗菌処理を行うことが可能である。
【0025】
眼に関して、UVリスクの観点から最も重要な対象はレンズである。レンズは角膜の遠位に配置されており、角膜は十分に厚い(500μm)ことから、角膜からレンズへの200nmの光の透過は、実質的にゼロである。雪眼炎の観点から角膜への影響を考慮しても、現在外科スタッフの間でほぼ一般的である眼の曝露に対する保護デバイスは、207nmのUV曝露から角膜を完全に保護するものと予想される。
【0026】
ヒトの存在下での207nmのUV光の提案された殺菌用途は、約200nmの波長のUV光がタンパク質(特にペプチド結合を介して)および他の生体分子によって非常に強く吸収されるという事実に基づいているため、生体物質に浸透する能力は非常に限定的である。したがって、例えば、200nmのUV光の強度は、250nmにおける約3mmおよびより大きいUV波長についてのはるかに長い距離と比較して、わずか約0.3mmの組織で半分に減少する。対照的に、200nmのUV光は水に最小限しか吸収されない。
【0027】
細胞レベルでは、細菌はほとんどあらゆるヒトの細胞よりもはるかに小さい。典型的な細菌細胞の直径は1μm未満であるが、典型的な真核細胞の直径は約10~25μmの範囲である。
【0028】
したがって、200nmのUV光は、典型的な細菌細胞全体に浸透できるものの、ヒト細胞などの典型的な真核細胞の細胞質の外周を大幅に超えて浸透することはできず、真核細胞の核に到達する前に大幅に消衰する。
【0029】
対照的に、従来の殺菌灯からのより長波長の光は、大きく消衰することなくヒト細胞核に到達し得る。これらの生物物理学的考察に基づくと、従来のUVCランプからの放射は細菌とヒト細胞の双方に対して細胞毒性と変異原性を有しているが、一方で200nmのUV光は、細菌に対しては細胞毒性があるもののヒト細胞に対しては細胞毒性または変異原性がはるかに少ない。
【0030】
しかしながら、200nmより大幅に短い波長のUV光は、これらの波長ではMRSAの十分な除去をもはや達成できないため、有用ではない。さらに、200nm未満の波長では、UVは酸素と反応してオゾンを形成し、これは望ましくない効果である。
【0031】
約207~222nmの範囲のUVC光は、薬剤耐性の獲得に関わらず細菌を効率的に除去するものの、従来の殺菌性UVへの曝露に付随する皮膚や眼に損傷を与える影響はない。
【0032】
「除去」という用語は、本明細書では、ISO 22196:2011-08-31による、処理後に90%超、95%超、99%超、99.9%超、または99.99%超のMRSAの減少について用いられる。
【0033】
そのような除去を達成するために、一実施形態では、本発明は、MRSAおよび/または処理される表面のUV曝露が2,000~8,000μW・s/cm、2,100~7,000μW・s/cm、2,200~5,000μW・s/cm、または2,300~3,000μW・s/cmの範囲である方法に関する。一実施形態では、少なくとも約2,500μW・s/cmのUV曝露は、MRSAの90%の減少をもたらす。
【0034】
本発明の方法は、222nmを超える波長の従来のUV放射に感受性を有するあらゆる種類のUV感受性材料上のMRSAを除去するために使用することができる。そのような「UV感受性材料」は、222nmを超える、250nmを超える、および/または最大295nmまでの波長のUVが有機結合または無機結合を解裂し得る任意の材料とすることができる。そのようなUV感受性材料としては、222nm~295nmおよび/または最大295nmまでの紫外線放射により、ヘイズ、脆化、および/または崩壊に起因する損傷を受ける任意のプラスチックを挙げることができる。
【0035】
別の実施形態では、UV感受性材料は、222nmを超える、または250nmを超える、および/または最大295nmまでのUV放射によって特定のポリマーを製造するために、モノマーの架橋に感受性を有することができる。さらに別の実施形態では、UV感受性材料は、222nmを超える、または250nmを超える、および/または最大295nmまでのUVに対して感受性を有する気体または液体とすることができる。
【0036】
さらに別の実施形態では、UV感受性材料は、222nmを超える、または250nmを超える、および/または最大295nmまでのUVに感受性を有する医薬組成物とすることができる。
【0037】
さらに別の実施形態では、UV感受性材料は、昆虫、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳類またはヒト(例えば軟体動物、魚類、両生類、爬虫類、鳥類、哺乳類、および/もしくはヒトの皮膚、またはロブスターや昆虫などの節足動物由来のキチン質の外骨格)などの生物学的組織表面とすることができる。
【0038】
したがって、本発明の定義による「生物学的組織表面」という用語は、222nmを超える、または250nmを超える、および/または最大295nmまでのUV放射によって害を受ける可能性があるあらゆる生物学的表面を包含する。一実施形態では、本発明は、207~222nmの波長範囲外のUV放射によって害を受ける可能性がある生物学的表面、および207~222nmの波長範囲内のUV放射によって害を受けない生物学的表面を含む。
【0039】
本発明において、「組織」という用語は、細胞と完全な臓器との間の任意の細胞組織レベルに使用される。組織は、一体となって特定の機能を実行する同じ起源の類似した細胞とそれらの細胞外基質との集合体である。その後、複数の組織が一緒に機能的にグループ化することによって臓器が形成される。
【0040】
当然、特にMRSAの除去方法中にUV放射にさらされ得る組織が含まれるべきである。ほとんどの場合、これらの組織は、皮膚の表面、気道、生殖管、消化管の内壁などの、臓器表面を覆う細胞によって形成される上皮組織である。上皮層を構成する細胞は、半透膜の密着結合を介して結合している。したがって、この組織は、それが覆う臓器と外部環境との間に障壁を与える。この保護機能に加えて、上皮組織は、分泌、排泄、および吸収における機能に特化されている場合もある。上皮組織は、微生物、怪我、および体液の喪失から臓器を保護するのに役立つ。
【0041】
したがって、本発明の方法は、好ましくは、例えば皮膚組織やUVへの眼の曝露が避けられない場所などのUV感受性表面に存在するMRSAの例えばUV処理など、従来のUVGI方法が適用可能でないか適切ではない場合がある方法を含む。
【0042】
「哺乳類」という用語は、本明細書では、哺乳綱を構成し、かつ雌におけるその子供に栄養補給(授乳)するための乳を産生する乳腺、新皮質(脳の領域)、毛皮または毛髪、および3つの中小耳の骨の存在によって特徴付けられる、あらゆる脊椎動物を指す。これらの特徴は、2億100万年前から2億2700万年前の三畳紀後期に分岐した爬虫類や鳥類とは異なる。哺乳類は約5,450種存在する。最大の目は、げっ歯目、コウモリ目、およびトガリネズミ目(Soricomorpha)(トガリネズミなど)である。次の3つは、霊長目(類人猿、サルなど)、鯨偶蹄目(Cetartiodactyla)(陸生クジラおよび偶蹄)、および食肉目(Carnivora)(猫、犬、アザラシなど)である。この哺乳類の定義には、ヒトも含まれる。
【0043】
したがって、「哺乳類の皮膚」という用語は、家畜の皮膚を含む哺乳類のあらゆる皮膚を指し、「家畜」という用語は、一般に、例えば牛、山羊、馬、豚、および羊などの労働力および商品、例えば肉、卵、牛乳、毛皮、皮革、および毛を生産するために農業環境で飼育される家畜として定義される。
【0044】
さらに、「哺乳類の皮膚」という用語には、例えば、患者、医療従事者、免疫系が弱いかまたは欠如している人々(高齢者、小児、術後、臓器移植後、HIV陽性者など)、MRSAへの潜在的な曝露が多い人などの、ヒトの皮膚も含まれる。
【0045】
従来技術のUVランプカバーは、サファイア、合成石英、または石英ガラス(溶融シリカガラス)製である。しかしながら、サファイアは他の透過性材料と比較して非常に高価であり、またガラスや金属のように曲げたり、成形したり、延伸したり、融着結合させたりすることができない。加えて、UVC波長でのUV吸収性が非常に高く、250nm未満の波長ではほとんど透過しない。
【0046】
一実施形態では、ガラスは、200nmで少なくとも50%、より良好には少なくとも60%、もしくは少なくとも70%、ならびに/または260nm、280nm、および/もしくは310nmの波長[λ]で少なくとも85%の透過率(1mmの厚さで測定)を有する。
【0047】
石英ガラスおよび溶融シリカガラスは、融点が高いことに起因して、他の標準的なガラスよりも溶融および吹き込みの温度および労力がはるかに大きいため、製造コストも高い。さらに、管状体以外の形態は、大きなブロックから研いだり磨いたりしなければならない。製造コストに加えて、これらのカバーは、処理される物体、気体、または液体を確実に十分にUV曝露させるために大量のエネルギーを必要とするという欠点を有している。
【0048】
しかしながら、本発明のガラスは、キャスティング、ダナー、ベロー、および/またはダウンドロープロセスによって製造されるロッド、シート、ディスク、管、およびバーの形成に適している。
【0049】
さらに、動作温度が高いことに起因して、時間の経過とともにたるみや崩れの影響が生じる場合があり、特に温度が高温でサイクルされる場合には、表面の失透がみられるようになる場合がある。しかしながら、これによりカバーの耐候性効果がさらに高まってUV吸収が増加し、処理対象、気体、または液体の十分なUV曝露を保証するために、さらに高い動作エネルギーが必要となる。これは悪循環である。
【0050】
高い動作エネルギーのため、カバーだけでなくデバイス全体への熱応力が増加し、これによりデバイスの寿命が短くなり、メンテナンスコストが増加する。
【0051】
本発明のガラスは、優れた光学特性を有し得る。一実施形態では、ガラスは、1.40~1.58の屈折率n(λ=587.6nm)を有する。屈折率は1.50未満にすることができる。
【0052】
本明細書に記載のガラスは、優れたUV透過性を有する。これらは、以下の光学特性のうちの1つ以上を有し得る:
- 少なくとも60%、一実施形態では少なくとも62.5%の200nmでのUV透過率(厚さd=1mmで測定);
- 少なくとも65%、一実施形態では少なくとも67.5%の207nmでのUV透過率(厚さd=1mmで測定);
- 少なくとも65%、一実施形態では少なくとも69%の210nmでのUV透過率(厚さd=1mmで測定);
- 少なくとも75%、一実施形態では少なくとも81%の230nmでのUV透過率(厚さd=1mmで測定);および/または
- 少なくとも82.5%、一実施形態では少なくとも85.2%の250nmでのUV透過率(厚さd=1mmで測定)。
【0053】
一実施形態では、ガラスは、207nmで少なくとも65%から222nmで少なくとも75%の範囲の、207nm~222nmの波長領域でのUV透過率(厚さd=1mmで測定)を有する。一実施形態では、UV透過率は、207nmで少なくとも67.9%から222nmで少なくとも76.8%の範囲である。
【0054】
ガラスおよび/またはガラス物品は、好ましくは、254nmの波長で少なくとも50%、好ましくは少なくとも70%、少なくとも80%、または少なくとも83%の透過率を有する。一実施形態では、254nmにおける透過率は、最大99.9%、最大95%、または最大90%である。透過率は、具体的には1mmのサンプル厚で測定される。
【0055】
明確にするために記載しておくと、透過率が特定の波長で測定されるという指示は、ガラスが指定の厚さに制限されることを意味するものではない。そうではなく、厚さは透過率を測定できる厚さを示す。測定のための厚さを指定することで、値を確実に比較することができる。当業者は、任意の適切な厚さのガラスを以下に記載のガラスカバーおよびデバイスに使用できることを理解するであろう。加えて、当業者は、1mm以外の厚さで透過率を測定可能であり、1mmでの透過率値がそのような測定から計算できることを理解するであろう。
【0056】
本発明は、低いUV吸収(すなわち高いUVC透過)を示す新規なガラスおよびガラスカバー(ランプカバー、LEDカバーガラス)を利用し、またそれらに関し、それにより、動作エネルギーを減少させ、動作温度を低下させる。さらに、本発明の新規なガラスおよびガラスカバーは、比較的安価で製造が容易であり、曲げたり、成形したり、延伸したり、融着結合したりすることで多様な形状を保証することができ、またほとんどの化学物質、および温度や物理的なストレスに対する耐性を有する。
【0057】
一実施形態では、ガラスは、207nm~222nmの波長範囲にわたって少なくとも60%(1mmの厚さで測定)の透過率を有し、このガラスは、3.5ppm以下の総白金含有量を有し、いくつかの実施形態ではそれぞれ5ppm未満の低い鉄とチタンの含有量も有し、かつISO 719に従って決定されるガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量が250μg/g以下、200μg/g以下、180μg/g以下、125μg/g以下、50μg/g以下、40μg/g以下、または25μg/g以下であることによって特徴付けられる耐加水分解性を有する、ホウケイ酸ガラスである。
【0058】
一実施形態では、ガラス中のPt汚染(すなわちPt、Pt2+、Pt4+、およびPt6+、「総白金含有量」とも呼ばれる)が、200nm~約250nmのUV透過率を低下させ得ることが見出された。理論に拘束されるものではないが、ガラス中の白金汚染は、ガラス内での核形成によって相分離を引き起こす可能性があると考えられる。本発明のガラスは、金属汚染がないか非常に低い、特にPt汚染が3.5ppm未満または2.5ppm未満であるホウケイ酸ガラスである。別の実施形態では、0~3.5ppm、0~2.5ppm、0~2.0ppm、0~1.5ppm、0~1.0ppm、0~0.75ppm、0~0.5ppm、0~0.25ppmが好ましい。さらなる実施形態では、ガラスはPt汚染を有さない。
【0059】
さらに別の実施形態では、ガラス中のTiO汚染(「チタン含有量」とも呼ばれる)も、200nm~約250nmのUV透過率をさらに低下させ得ることが見出された。したがって、一実施形態では、TiO含有量が100ppm以下、好ましくは50ppm以下のガラスが好ましい。好ましくは、TiOの量は、7ppm未満、6ppm未満、5ppm未満、または4ppm未満にすべきである。別の実施形態では、TiO含有量は、0~6.9ppm、0~5.8ppm、0~4.7ppm、0~3.8ppm、または0~2.5ppmとすることができる。任意選択的な組成物では、0~1.5ppm、0~1.0ppm、0~0.75ppm、0~0.5ppm、または0~0.25ppmの含有量が好ましい。さらなる実施形態では、ガラスはTiO汚染を有さない。
【0060】
さらに別の実施形態では、ガラス中のFe汚染も、200nm~約250nmのUV透過率をさらに低下させ得ることが見出された。本明細書では、鉄含有量は、ppm単位のFeの重量部として表される。この値は、ガラス中に存在する全ての鉄種の量を決定し、質量分率の計算のために全ての鉄がFeとして存在すると仮定することにより、当業者によく知られている方法で決定することができる。例えば、ガラス中で1mmolの鉄がみられる場合、計算で推定される質量は159.70mgのFeに相当する。この手順は、ガラス中の個々の鉄種の量を確実に決定できない、あるいは多大な労力を払ったときしか決定できないという事実を考慮に入れている。いくつかの実施形態では、ガラスは、100ppm未満、特に50ppm未満、または10ppm未満のFeを含む。鉄含有量が特に低い実施形態では、Feの含有量は、6ppm未満、5ppm未満、または4.5ppm未満である。任意選択的には、Feの含有量は、0~4.4ppm、0~4.0ppm、0~3.5ppm、0~2.0ppm、または0~1.75ppmである。いくつかの実施形態では、含有量は、0~1.5ppm、または好ましくは0~1.25ppmとすることができる。さらなる実施形態では、ガラスはFeによる汚染を有さない。
【0061】
したがって、好ましい実施形態では、Pt、TiO、および/またはFeによる全ての汚染の合計が20ppm未満、別の実施形態では18.5ppm未満、別の実施形態では13.5ppm未満、別の実施形態では10.5ppm未満、別の実施形態では8.5ppm未満のガラスが好ましい。別の実施形態では、全ての汚染の合計が0~8.2ppm、0~7.0ppm、0~6.0ppm、0~5.0ppm、0~4.0ppm、0~3.0ppm、0~2.0ppm、0~1.0ppm、0~0.5ppm、0~0.25ppmであるガラスが好ましい。さらなる実施形態では、ガラスは、Pt、TiO、および/またはFeから選択される金属のうちの少なくとも1つ、2つ、または最大3つ全てによる汚染を有さない。
【0062】
また、遷移元素ならびに/または重金属、例えば鉛、ロジウム、カドミウム、水銀、および六価クロムなどによる他の汚染は、10ppm未満、別の実施形態では8.5ppm未満に維持され得る。別の実施形態では、これらの汚染は、0~8.2ppm、0~7.0ppm、0~6.0ppm、0~5.0ppm、または0~4.0ppmで維持され得る。別の実施形態では、これらの汚染のレベルは、0~3.0ppm、0~2.0ppm、0~1.0ppm、0~0.5ppm、または0~0.25ppmとすることができる。さらなる実施形態では、ガラスは、遷移金属および/または重金属による汚染を有さない。
【0063】
本明細書において化学元素について言及されている場合、その記述は、個々の場合に別段の記載がない限り、任意の化学形態を指す。例えば、ガラスが100ppm未満のAs含有量を有するという記述は、存在するAs種(例えばAs、Asなど)の質量分率の合計が100ppmの値を超えないことを意味する。
【0064】
本明細書において、「ppm」という用語は、重量比基準(w/w)の百万分率を意味する。
【0065】
適切なUV透過率のガラスを製造するためには、製造プロセス中の金属汚染を回避する必要がある。したがって、本発明は、高いUV透過率を有するガラスの製造方法にも関する場合がある。
【0066】
一実施形態では、本発明のガラスは、高いUV透過率ならびに以下の追加の範囲の物理的および化学的パラメータを有するホウケイ酸ガラスである。
【0067】
石英とは異なり、本発明のガラスは、優れた溶融特性、例えば低い転移温度と作業点を有する。適切なガラスパラメータの例は、400℃~500℃、一実施形態では420℃~460℃、別の実施形態では450℃~480℃などの、550℃未満の転移温度T(ISO 7884-8)から選択することができる。
【0068】
ガラスは、410℃~550℃、例えば一実施形態では445℃~485℃、別の実施形態では490℃~510℃のT13温度、すなわち1013dPa・sの粘度η(ISO 7884-4)におけるガラス温度(徐冷点)を有し得る。ガラスは、650℃~750℃、例えば一実施形態では690℃~715℃、別の実施形態では700℃~725℃の軟化点、すなわち粘度が107.6dPa・sになる温度(軟化点)(ISO 7884-3)を有し得る。ガラスは、1000℃~1150℃、一実施形態では1060℃~1100℃など、別の実施形態では1090℃~1140℃の作業点、すなわち粘度が10dPa・sになる温度(作業点)(ISO 7884-2)を有し得る。これらのパラメータの1つ以上によって表される温度-粘度依存性は、引き伸ばされるかその他のUVランプカバーやUV-LEDカバーなどの任意の望まれる形状へと成形されるガラスの能力に付随する。
【0069】
したがって、一実施形態では、ガラスは、420℃~465℃のT:445℃~485℃のT13、690℃~715℃の軟化点、および1060℃~1100℃の作業点を有する。
【0070】
別の好ましい実施形態では、ガラスは、460℃~470℃のT:490℃~510℃のT13、700℃~725℃の軟化点、および1090℃~1140℃の作業点を有する。
【0071】
本発明のガラスは、25℃で2~2.5gcm-3の密度ρを有し得る。密度が低いため、ガラスは、可搬式の用途、例えば可搬式MRSA除去装置に最適である。
【0072】
本発明のガラスは、90℃で0.8~1.2Wm-1-1の熱伝導率λを特徴とすることができ、そのためランプカバーとしての使用に最適である。
【0073】
UVCガラスおよびそれから製造されたUVCガラスカバーは、以下の追加的な特徴を有する:
「ソラリゼーション」という用語は、材料が紫外光などの高エネルギー電磁放射に曝露された後に光透過率が変化する物理学における現象を指す。透明なガラスや多くのプラスチックは、X線の照射を受けると琥珀色、緑色、またはその他の色に変化し、砂漠での長期間の日光曝露後にはガラスが青色に変化する場合がある。ソラリゼーションは、材料の物理的または機械的な特性を恒久的に劣化させる場合もあり、環境内のプラスチックの分解に関与するメカニズムの1つである。
【0074】
本発明のガラスは、「ソラリゼーション」に対して非常に良好な耐性を示すことができ(実施例の項参照)、そのため、UVガラスとしての使用に非常に適している。「ソラリゼーション」は、短波長のUV光に曝露されることによって引き起こされる、様々な波長範囲の光の透過率の低下である。ソラリゼーションは、ガラスを着色させるか完全に不透明にする可能性がある。
【0075】
したがって、「耐ソラリゼーション性」とは、UV照射後であっても特定の波長で高い透過率を維持するガラスの特性である。これは、誘起吸光度α(λ)を計算することにより説明することができる:
【数1】
ここで、T(λ)は照射前の透過率であり、T(λ)は重水素ランプによってi時間照射した後の透過率である。α(λ)が小さいほど、ガラスはソラリゼーションに対してより耐性を有している。耐ソラリゼーション性は、本明細書では波長200nmについて記述される。耐ソラリゼーション性の規定については、本明細書では約0.70mm~0.75mmのサンプル厚が想定されている。これは、このサンプル厚で測定が行われることを意味する。実用新案登録請求されるガラス物品自体は、異なる厚さを有することができる。照射は重水素ランプを用いて行われる。重水素ランプは、非常に短波のUV範囲まで発光する。本明細書で使用されているランプのカットオフ波長は115nmである。重水素ランプの出力は約1W/mとすることができる。以下の重水素ランプ(DUV)を使用することができる:115nmまでの十分な発光のためのMgFフィルターを備えたHeraeus Noblelight GmbH, Type V04, S-Nr.: V0390 30 W。
【0076】
本発明で使用されるガラスは、非常に良好な耐加水分解性および高い気密性も示す。
【0077】
相分離係数は、相分離の結果としてISO 719で定義されている耐加水分解性を変化させるガラスの特性の尺度である。相分離は、温度の影響によりガラスが溶融する際に生じる。相分離係数が1にできるだけ近いガラスを選択することが有利なことが証明されているため、相分離したガラスのガラス特性は、耐加水分解性の点でそのままのガラスと大きく変わらない。相分離係数は、ガラスの組成だけでなく、その熱履歴(冷却状態)にも影響される。
【0078】
相分離係数Eは以下の通りに計算される。
【0079】
【数2】
【0080】
ここで、EqurohおよびEquentは、それぞれ非相分離ガラスと相分離ガラスの、ISO 719:1989-12に従って決定されたガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量である。相分離係数はガラスの特性である。この係数は、実用新案登録請求されるガラスが相分離をしたことを意味するものではないものの、相分離が発生する場合には、加水分解安定性への影響は係数で指定された範囲内にある。全てのガラスは、その相分離係数について分析することができる。この目的のために、抽出されたNaOの当量は、相分離した試験片と相分離していない試験片とで測定される。測定の目的のために、「相分離したガラス」は、ガラス転移温度(T)よりも100℃高い温度で4時間ガラス試験片を保持することによって得られる。この温度処理により、一定レベルの相分離が保証される。
【0081】
耐加水分解性は、ガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量として表すことができる。ガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量は、ISO 719:1989-12に従って決定される。これは、98℃の水の中のガラスからの塩基性化合物の抽出性の尺度である。
【0082】
一実施形態では、ガラスは、0.1~1.65、または0.2~1.65、または0.35~1.65、または0.40~1.65、または0.65~1.65、特に0.70~1.10の範囲の、その耐加水分解性に関する相分離係数を有する。特に、この係数は、少なくとも0.1、または少なくとも0.2、または少なくとも0.35、または少なくとも0.40、または少なくとも0.70である。好ましくは、この係数は1.00に近く、これは相分離後の未変化の耐加水分解性の場合に対応する。1つの変形形態では、相分離係数は最大1.40、最大1.25、または最大1.10である。
【0083】
一実施形態では、係数は、少なくとも0.70かつ最大1.6である。別の変形形態では、相分離係数は少なくとも0.30かつ最大0.5である。
【0084】
ガラスの特性のため、UVCガラスカバーは、例えばレーザーガラスフリットシーリングを使用して気密封止することができる。多くのUVGIの利用は、水性環境(例えばバイオフィルム処理や水処理)、高湿環境(例えば下水システム)、および/または高ガス圧もしくは真空下の環境で行われるため、この気密封止は重要である。さらに、気密封止により、最終的なデバイス、例えばUVC-LEDランプのオートクレーブ処理が可能になり、これにより、病院、外科手術、実験室、または高い衛生基準が必要とされるその他の環境で使用することができる。
【0085】
これは、レーザーフリットシーリングに必要な熱特性を有さずそのため気密封止できない従来のガラス、石英、および/または溶融シリカガラスとは対照的である。しかしながら、本明細書に記載のガラスは、亀裂のない密着したガラスフリット連結を達成するのに適している。
【0086】
本発明のガラスは、好ましくは、最大0.0055、より好ましくは最大0.0053、または最大0.0051のCTE[℃-1]×T[℃]を有する。前記積は、少なくとも0.0044または少なくとも0.0045とすることができる。これらのガラスは、溶融応力および溶融挙動に関して有利な特性を示すことが示された。
【0087】
「T」は、ガラスが10dPa・sの粘度を有する温度である。Tは、ガラスの粘度を決定するための当業者に公知の方法、例えばDIN ISO 7884-1:1998-02に従って測定することができる。「T13」は、ガラスが1013dPa・sの粘度を有する温度である。
【0088】
平均線熱膨張係数α(CTE)(20℃;300℃、ISO 7991に準拠)は、一実施形態では3.0~6.0×10-6-1である。熱膨張係数(CTE)は、4.5×10-6-1未満とすることができる。これは、3.5~5×10-6-1未満、より好ましくは3.75~4.75×10-6-1、より好ましくは4.1~4.6×10-6-1、さらに好ましくは4.1~4.5×10-6-1の範囲とすることができる。これにより、熱膨張特性をUVデバイスの全体的な熱膨張特性に合わせることができるため、ガラスカバー内の張力が防止される。一実施形態では、同じまたは類似のCTEが、UVCガラスカバーおよびその下にあるUVデバイス(例えばUVC-LEDパッケージ)の双方に対して選択される。
【0089】
好ましくは、ガラス転移温度は500℃未満である。これは、400℃~550℃の範囲、より好ましくは410℃~500℃、別の実施形態では420℃~480℃の範囲とすることができる。処理温度Tは、ガラスの粘度が10dPa・sになる温度である。本発明のガラスの処理温度Tは、1200℃未満、いくつかの実施形態では1125℃未満とすることができる。これは、1000℃~1200℃の範囲、より好ましくは1025℃~1175℃の範囲とすることができる。
【0090】
およびTを含む溶融特性が望まれる範囲内にあるようにするためには、SiOとAlの合計に対するBの含有量(mol%)の比率を狭い範囲に設定することが有利な場合がある。有利な実施形態では、この比率は、少なくとも0.15および/または最大0.4である。
【0091】
ガラスのもう1つの重要な特性は、材料の屈折率nの優れた空間的均一性である。任意選択的には、ガラス内の屈折率の変化は、以下の式に従って、ガラスを通過する波面の変形に対応し得る:
Δs=Δ(n d)=Δn d+Δd
ここで、Δsは波面偏差であり、dはガラスの厚さであり、Δdは厚さの変化(最大厚さと最小厚さとの差)であり、Δnはガラスの屈折率の変化(最大屈折率と最小屈折率との差)である。本発明は、さらに、所定の波面偏差を有するガラス物品を含む。
【0092】
波面偏差は、上の式に従って計算することができる。屈折率n(λ=587.6nm)および厚さは、20℃で決定することができる。一実施形態では、波面偏差は、1cmの表面積にわたって決定および/または適用される。波面偏差は、厚さが10mm以下のガラス、または1mm以下のガラスについて決定することができる。任意選択的には、厚さは少なくとも200μmにすることができる。波面偏差は、±0.1mm未満、±0.08mm未満、さらなる実施形態では±0.035mm未満、±25μm未満、±15μm未満、または±5μm未満とすることができる。任意選択的には、波面偏差は、0.1μm~250μm、または1μm~100μm、または2μm~85μmとすることができる。
【0093】
波面偏差は、例えば放電ランプで使用されるような例えばガラス管の場合では軸方向に測定することができ、あるいはUVC-LEDのレンズで使用されるような例えばロッド部分の場合では横方向に測定することができる。
【0094】
波面は、波面センサーによって測定することもできる。これは、光学系における光学品質またはその欠如を表すためにコヒーレント信号の波面収差を測定するデバイスである。特定の方法に拘束されるものではないが、非常に一般的な方法は、シャック・ハルトマン小型レンズアレイを使用することである。
【0095】
シャック・ハルトマンシステムに代わる波面センシング技術は、位相イメージングや曲率センシングなどの数学的手法である。これらのアルゴリズムは、特殊な波面光学系を必要とせずに、様々な焦点面での従来の明視野画像から波面画像を計算する。
【0096】
本発明によるガラスおよびガラス物品は、ガラス内の波面変形(脈理、気泡、縞など)の低い含有量を有し得る。一般的には、材料の屈折率の全体的なまたは長い範囲の均一性と、ガラスの均一性からの短い範囲の偏差とを区別することができる。脈理とは、ガラスにおける空間的に短い範囲の均一性の変動である。短い範囲の変動は、約0.1mm~最大2mmの距離にわたる変動であるのに対して、屈折率の空間的に長い範囲の全体的な均一性は、ガラス片全体にわたる。
【0097】
いくつかの実施形態では、紫外線透過フィルターを使用することができ、これは、特定の望ましくないUV波長、例えば207nm未満、いくつかの実施形態では200nm未満、および/または222nm超、いくつかの実施形態では250nm超の波長を除去する。
【0098】
本発明によるUVカバー用のガラスは、例えば、ターゲットへのUV光の方向集束のために、UV光線を光学的に成形するためにレンズの成形を可能にすることができる。
【0099】
10°~180°の任意のビーム角度が可能である。いくつかの実施形態では、10°~20°、20°~30°、30°~40°、40°~50°、50°~60°、60°~70°、70°~80°、80~90°を利用することができる。別の実施形態では、15°~35°、25°~45°、35°~60°、45°~90°、75°~120°、90°~145°、120°~180°を使用することができる。
【0100】
いくつかの実施形態では、例えば特定のサイズまたは特定の体積の表面または特定の直径の管を1回の処理で汚染除去する必要がある場合には、90°、120°、さらには180°などのかなり広いビーム形状が有用である。
【0101】
別の実施形態では、10°、5°、さらには1°などの狭いビーム形状が有用である。例えば、標的部位にUV曝露を集中させ、エネルギー対照射比の効率またはUV光へのUV感受性表面の曝露が低下することになる無指向性の望ましくない放射を回避するために、狭いビーム形状を使用することができる。一例は、眼の所定の領域の限定的な汚染除去とすることができる。
【0102】
さらに、複雑なMRSA除去の課題を解決するために、様々なレンズ形状およびビーム角度を使用することができる。例えば、異なる感受性レベルのUV感受性表面が互いに隣接しており、1回の処理でUV曝露する必要がある場合である。
【0103】
例えば、創傷自体が周囲の皮膚よりも少ないUVにさらされる創傷治療および/または手術中などに、隣接する領域よりもUV曝露が多い複数の領域で患者の皮膚を処理することが適切な場合がある。
【0104】
本発明は、本発明のUVC透過性ガラスから製造されたカバーを有するLEDパッケージの製造方法も含む。
【0105】
本発明によるLEDパッケージは、以下を含み得る:
・LEDチップ;
・任意選択的な、LEDチップが取り付けられている基板-例えばPCB、ポリマー、無機材料製、特にセラミック、金属製のもの;
・任意選択的な、LEDチップに接触させるための導電体用のフィードスルーを含む場合のベースプレート(金属、セラミック、ガラスセラミック、稀にポリマー);
・ベースプレートに取り付けられているか、ベースプレートを囲んでおり、ある種のキャビティを形成している、LEDチップを含むフレーム(金属、セラミック、ガラスセラミック、稀にポリマー);
・少なくとも部分的に透明でありパッケージを閉じているか、全体として透明な材料から製造されている、チップから外方を向いて離れているハウジング(カバー)の末端部分;カバーの少なくとも透明な部分は、本明細書に記載のUVC透過性ガラス製である。
【0106】
そのようなウインドウは、平坦であるかまたは光の経路を変更するための形状(すなわちレンズ形状)を有し得る。
【0107】
前述したように、UVC-LEDは、これらがオートクレーブ処理可能となり、滅菌可能となり、かつ流体に対する耐性を有するように、ある方法で(例えばレーザーフリットシーリング)パッケージングおよび封止することができる。そのようなUVC-LEDは、空気および水、表面の殺菌;ならびに医療/歯科用途で使用することができる。
【0108】
本明細書に記載のUVC透過性ガラスを有するUVC-LEDは、従来のUVGIランプまたはデバイス(水銀蒸気ランプなど)と比較して、例えば以下のような他の利点を有する:
・エネルギーを無駄にすることなく「オンデマンド消毒」を可能にする即時のオン/オフ機能;
・単純な設計で「対象を絞った消毒」を可能にする、(特にビーム角度の制御を可能にするレンズの使用による)指向性放射;
・頑丈で携帯可能なデバイスにおける使用を可能にする半導体の耐久性;
・エネルギー効率を向上させ、かつ単純で安価な電気駆動装置をもたらす低DC電力要件;
・設計の柔軟性を最大化させるコンパクトなパッケージング;
・有害な水銀への曝露なしでの容易な廃棄を可能にすることによる、環境に優しい構造;
・高い光学性能;
・規定された波長での高い放射出力;
・AlNとのCTEマッチング;
・比較的低い製造価格;
・小型サイズ。
【0109】
従来、低圧と中圧の水銀ランプの双方が消毒システムで利用されてきた。しかしながら、これらの光源を、例えばUVC-LEDなどの高出力かつ高エネルギー効率のUV光に置き換えることが必要とされている。本発明に基づくUVランプおよびUVデバイスは、従来のUVGIランプまたは装置と比較して、より大きいエネルギー効率を有する。これは、本発明のガラスが200nmで60%を超えるUV光を透過させることができ、そのためエネルギー入力と放射出力との間の比率が大幅に改善されるためである。
【0110】
これは、これらのガラスをUVC-LEDランプのカバーとして使用する場合に重要になる。従来の水銀蒸気UVランプのエネルギー要件を100%に設定する場合、本明細書に記載のUVC-LEDで同じUV放射を生成するために必要とされるエネルギーは約10~30%である。言い換えると、従来のUVランプが10Wのエネルギーを使用して特定のUV強度を放出する場合に、本明細書のデバイスはわずか1~3Wしか使用し得ない。
【0111】
前述したように、本明細書に記載のUVC透過性ガラスの別の利点は、その高い熱伝導率(λ)であり、これは、90℃で0.75~1.25W・m-1-1、別の実施形態では約1.0W・m-1-1とすることができる。この優れた熱伝導率は、デバイスの他の部分に害を及ぼす前に過剰な熱を簡単に逃がすことができるため、デバイスの寿命を増加させる。これは、例えば通常は低い最適熱伝導率を有する石英ガラスとは対照的である。
【0112】
したがって、一実施形態では、本発明による方法は、無指向性UVランプの場合の規則(EU)No 874/2012によるエネルギー効率指数(EEI)が0.11以下であり、かつ指向性UVランプの場合の規則(EU)No 874/2012によるエネルギー効率指数(EEI)が0.13以下であるUVランプを含み得る。
【0113】
本明細書に記載の方法は、UV感受性表面、UV感受性液体、および/またはUV感受性気体を含むあらゆる種類の表面からMRSAを除去するために使用することができる。
【0114】
当然、本明細書に記載の方法は、ウイルス(例えばインフルエンザまたはコロナウイルス科、例えばSARS-CoV-2、特に例えばSARS-CoV2-D614Gのような耐性ウイルス変異種など)、細菌(胞子を含む)、病原性酵母、カビなどの他のUV感受性病原性生物の除去のためにも使用することができる。
【0115】
考えられる用途は、手指消毒剤(例えば個人用および公衆トイレ)、医療環境での室内消毒剤、手術準備中または手術中または手術後におけるMRSA除去、創傷治療、眼科治療、食品消毒(例えば食品製造中、および/またはスーパーマーケットの肉、乳製品もしくは野菜のカウンター)、家畜の消毒(特に、例えばバッテリーが敷設されるなどの集中的な動物飼育の場合)、医薬化合物の製造および/または食品製造プロセス、保管設備および/または多くの異なる使用者と接触することが多いUV感受性表面、例えば、キーボード、ハンドル、手すり、歯ブラシ、ヘアブラシ、装飾品、タッチデバイス、シェービングカミソリ、または子供のおもちゃの消毒を含む用途のリストから選択することができる。
【0116】
本発明で開示されるUVCデバイスは、例えば以下のものなどの、「分析機器」として広範囲の用途に使用することもできる:
・HPLC(高速液体クロマトグラフィー):ライフサイエンスにおいて化学物質や化合物を検出するための分析で使用される;
・分光計:バイオテクノロジー、ライフサイエンス、および環境モニタリングにまたがる試験および分析の複数の用途で使用される;
・水質監視センサー:水中の化学物質を検出するために使用される(例えば、フラッキングの過程で、一般的な水の安全性の場合、または処理された廃水を処分する前に)。
【0117】
別の実施形態では、本発明に開示のUVCデバイスは、「水の消毒」のためのデバイスを含み得る。この点で、UVC LEDは、必要な殺菌強度に到達するまでに長いウォームアップ時間(50秒から10分の範囲)を必要とする従来の水銀ランプと比較して有利である。加えて、頻繁なオン/オフサイクルは、寿命を50%以上短くする可能性がある。
【0118】
結果として、これらの用途の水銀ランプは一日中維持する必要があり、ランプの交換頻度が高くなり、消費電力が増加する。対照的に、UVC LEDの即時オンオフ性能はオンデマンドの消毒を可能にし、これにより消費電力が大幅に削減される。
【0119】
さらに、頻繁なオン/オフサイクルはLEDの寿命を縮めず、運転およびメンテナンスコストの削減に役立つ。
【0120】
本発明に開示のUVCデバイスのさらなる使用は、特にUV感受性表面、液体、または気体の場合、以下を含み得る:
・タンパク質分析、すなわち、データベース検索、配列比較、構造的および機能的予測を使用するタンパク質の構造および機能のバイオインフォマティクス研究。
・分子同定、すなわち生物間で特定のDNA断片を比較するプロセス。
・サイトメトリー、すなわちバイオテクノロジーにおいて、フローサイトメトリーは、細胞を液体の流れに懸濁させてこれらを電子検出装置に通すことにより、細胞カウント、セルソーティング、バイオマーカー検出、およびタンパク質工学で使用される、レーザーまたはインピーダンスに基づいた生物物理学的手法である。
・バイオフィルム処理システム、すなわち周囲の液体から有機および無機物質を除去するために細菌、真菌、藻類、および原生動物の使用を採用するシステム。
・通常約230nmの波長で行われる硝酸塩および/またはNOx測定。
・通常約245nmの波長で行われるパラセタモール濃度測定;および/または
・皮膚の状態を改善するための皮膚の治療(例えば乾癬、白斑、かゆみ、神経皮膚炎、にきび、光線性皮膚炎、光線療法、バラ色粃糠疹等)。
【0121】
したがって、一実施形態では、本発明のUV-LEDモジュールの使用は、水の消毒、分析機器(HPLC、分光計、水監視センサー)、空気浄化、空気消毒、表面消毒(例えばキーボード消毒、エスカレーターの手すりのUV滅菌装置)、サイトメトリー、分子同定、タンパク質分析、バイオフィルム処理、硬化、リソグラフィー、植物成長、皮膚治療、細菌検出、創薬、タンパク質分析、皮膚ビタミンD3産生の誘導、および/または滅菌の群から選択することができる。
【0122】
したがって、一態様では、本発明は、UV-LEDモジュール用の、例えば水の消毒、分析機器(HPLC、分光計、水監視センサー)、空気浄化、空気消毒、表面消毒(例えばキーボード消毒、エスカレーターの手すりのUV滅菌装置)、サイトメトリー、分子同定、タンパク質分析、バイオフィルム処理、硬化、リソグラフィー、植物成長、皮膚治療(乾癬、白斑、かゆみ、神経皮膚炎、にきび、光線性皮膚炎、光線療法、バラ色粃糠疹)、細菌検出、創薬、タンパク質分析、皮膚ビタミンD3産生の誘導、および/または滅菌の群から選択される用途での、気密封止レンズキャップとしての本発明によるガラスの使用に関する。
【0123】
ガラスは、好ましくはホウケイ酸ガラスである。
【0124】
一実施形態では、ホウケイ酸ガラスは、以下の成分(酸化物ベースのmol%)を含む:
【表1】
【0125】
別の実施形態では、ホウケイ酸ガラスは、以下の成分(酸化物ベースのmol%)を含む:
【表2】
ここで、「RO」はアルカリ金属酸化物LiO、NaO、およびKOを指し、「RO」はアルカリ土類金属酸化物MgO、CaO、BaO、およびSrOを指す。
【0126】
本発明のガラスは、少なくとも40mol%、または少なくとも60mol%の割合でSiOを含み得る。SiOは、ガラスの耐加水分解性および透過性に寄与する。SiO含有量が過度に多い場合、ガラスの融点が過度に高くなる。温度TおよびTも急激に増加する。したがって、SiOの含有量は最大78mol%、または最大85%に制限すべきである。
【0127】
好ましくは、SiOの含有量は、少なくとも61mol%、少なくとも63mol%、または少なくとも65mol%、少なくとも68mol%、少なくとも69mol%、または少なくとも70mol%である。含有量は、最大75mol%または最大73mol%、または最大72mol%に制限することができる。
【0128】
本発明のガラスは、最大10mol%の割合でAlを含有する。Alは、ガラスの相分離安定性に寄与するが、比率が大きくなると耐酸性が低下する。さらに、Alは溶融温度とTを上昇させる。したがって、この成分の含有量は、最大25mol%、または最大9mol%、または最大8mol%、または最大7mol%、または最大5mol%、または最大4.5mol%に制限すべきである。いくつかの実施形態では、Alは、少なくとも2mol%、少なくとも2.5mol%、または少なくとも3mol%、または少なくとも3.25mol%の少ない割合で使用される。いくつかの実施形態では、ガラスはAlを含まなくてよい。
【0129】
本発明のガラスは、少なくとも12mol%の割合でBを含み得る。Bは、ガラスの溶融特性に有益な効果を有する。特に、溶融温度が低下し、ガラスを他の材料と低温で融着させることができる。しかしながら、Bの量は過度に多くならないようにすべきであり、そうでない場合には、ガラスは相分離する強い傾向を有する。加えて、過度に多いBは耐加水分解性に悪影響を及ぼし、ガラスは製造中に大きい蒸発損失を有する傾向があり、ノットのあるガラスになる。したがって、Bは最大24mol%、最大22mol%、または最大20mol%に制限すべきである。Bの含有量は、少なくとも5mol%、少なくとも12mol%、または少なくとも14mol%であってよい。
【0130】
好ましい設計では、SiOとAlの含有量の合計(mol%)に対するBとROとROの含有量の合計(mol%)の比率は、最大0.4、特に最大0.35、より好ましくは最大0.34である。一実施形態では、この値は、少なくとも0.1、好ましくは少なくとも0.2、または少なくとも0.26である。上記の比率のガラスは、耐加水分解性と相分離係数の点で優れた特性を有しており、低度の誘起減光しか示さず、これは特にUV透過性材料として使用する場合に多くの利点を有する。
【0131】
本発明のガラスは、最大10.0mol%、または最大3.0mol%、または最大2.8mol%、または最大2.5mol%の割合でLiOを含み得る。LiOはガラスの融着性を高め、UV端をより短い波長に有益にシフトさせる。しかしながら、酸化リチウムは蒸発する傾向があり、相分離の傾向が増加し、混合物の価格も増加する。好ましい設計では、ガラスはLiOを少量のみ、例えば最大3.0mol%、最大2.8mol%、最大2.5mol%、最大2.0mol%、または最大1.9mol%含むか、ガラスはLiOを含まない。特定の実施形態では、LiOの含有量は1mol%~2mol%である。
【0132】
本発明のガラスは、最大18mol%、または最大6mol%の割合でNaOを含有する。NaOはガラスの融着性を増加させる。しかしながら、酸化ナトリウムは、UV透過率の低下と、熱膨張係数(CTE)の増加ももたらす。ガラスは、少なくとも1mol%、または少なくとも2mol%の割合でNaOを含み得る。一変形形態では、NaOの含有量は最大5mol%、または最大4mol%である。いくつかの実施形態では、ガラスはNaOを含まなくてよい。
【0133】
本発明のガラスは、最大4mol%の割合でKOを含む。KOはガラスの融着性を高め、UV端をより短い波長に有益にシフトさせる。その含有量は、少なくとも0.3mol%、または少なくとも0.75mol%とすることができる。ただし、酸化カリウムの含有量が過度に多いと、その同位体40Kの放射特性により、光電子増倍管で使用された場合に妨害効果のあるガラスになる。したがって、この成分の含有量は、最大15mol%、最大10mol%、最大5mol%、最大3mol%、または最大2molに制限しなければならない。いくつかの実施形態では、ガラスはKOを含まなくてよい。
【0134】
本発明の実施形態では、mol%単位でのKOに対するNaOの含有量の比率は、少なくとも1.5、特に少なくとも2である。本発明の一実施形態では、前記比率は最大4、特に最大3である。双方の酸化物は、ガラスの融着性を改善する役割を果たす。ただし、使用されるNaOが過度に多いと、UV透過率が低下する。KOが過度に多いと、熱膨張係数が増加する。示されている比率が最も良い結果を達成すること、すなわちUV透過率および熱膨張係数を有利な範囲にすることが見出された。特定の実施形態では、比率は1.85~3である。
【0135】
本発明のガラス中のROの量は、好ましくは10mol%以下、8mol%以下、または7mol%以下である。ガラスは、少なくとも3.5mol%、少なくとも4mol%、または少なくとも4.5mol%の量のROを含み得る。アルカリ金属酸化物はガラスの融着性を増加させるが、上述したように、より高い比率では様々な欠点をもたらす。特定の実施形態では、ROの含有量は4.5mol%~6.0mol%である。
【0136】
本発明のガラスは、最大10mol%、最大6mol%、最大4mol%、または最大2mol%の割合でMgOを含み得る。MgOは融着性に関して有利であるものの、高い比率では、望まれるUV透過率に関して問題を有しており、また相分離の傾向があることが分かっている。好ましい設計はMgOを含まない。
【0137】
本発明のガラスは、最大16mol%、最大6mol%、最大4mol%、または最大2mol%の割合でCaOを含み得る。CaOは融着性に関して有利であるものの、高い比率では、望まれるUV透過率に関して問題を有することが分かっている。好ましい形態は、CaOを含まないか、わずかなCaOのみ、例えば少なくとも0.1mol%、少なくとも0.3mol%、または少なくとも0.5mol%含有する。
【0138】
本発明のガラスは、最大4mol%、最大1mol%、または最大0.5mol%の割合でSrOを含み得る。SrOは融着性に有利であるものの、高い比率では、望まれるUV透過率に関して問題を有することが分かっている。好ましい設計はSrOを含まない。
【0139】
本発明のガラスは、最大12mol%、または最大4mol%、または最大2mol%の割合でBaOを含み得る。BaOは耐加水分解性を改善させる。ただし、酸化バリウムの含有量が過度に多いと、相分離が発生し、その結果ガラスが不安定になる。好ましい実施形態は、少なくとも0.1mol%、少なくとも0.3mol%、または少なくとも0.4mol%の量のBaOを含む。特定の実施形態では、BaOの含有量は、0.3mol%~1.5mol%である。いくつかの実施形態では、ガラスはBaOを含まなくてよい。
【0140】
アルカリ土類酸化物ROは相分離傾向に大きな影響を有することが示されている。そのため、ある設計形態では、これらの構成要素の成分とそれら互いの関係に特別な注意が払われる。したがって、mol%単位でのMgOとSrOとCaOの含有量の合計に対するmol%単位でのBaOの比率は、少なくとも0.4にすべきである。好ましくは、この値は、少なくとも0.55、または少なくとも0.7、または少なくとも1.0である。特に好ましい形態では、値は少なくとも1.5、さらには少なくとも2である。BaOは、他のアルカリ土類金属酸化物と比較して、相分離および耐加水分解性の点で最も大きい利点を与える。ただし、比率は4.0または3.0を超えるべきではない。有利な形態では、ガラスは少なくとも少量のCaOとBaOを含み、MgOとSrOを含まない。特定の実施形態では、比率は、0.7~2.2である。
【0141】
特にmol%単位でのBaOに対するガラス中のCaOの割合の比率が2.0未満の場合に有利な特性が得られる。特に、この比率は1.5未満または1.0未満にすべきである。いくつかの実施形態では、比率はさらに低く、特に0.8未満、または0.6未満であり、好ましい設計では、この比率は少なくとも0.3である。特定の実施形態では、比率は0.4~1.4である。
【0142】
1つの変形形態では、ガラスは、mol%単位でのBaOに対するBの比率が少なくとも8かつ最大45である。好ましくは、比率は少なくとも10、または少なくとも11であり、好ましい設計では、前記比率は最大42、または40、または39に制限される。別の実施形態では、比率は、最大15または14に制限され得る。特に、比率は、10以上45以下、または別の実施形態では11以上42以下であり、特定の実施形態では比率は11~16である。別の一実施形態では、比率は35~45である。
【0143】
上記の比率を有するガラスは、耐加水分解性および相分離係数に関して良好な特性を示し、また低い誘起吸光度も示す。
【0144】
本発明のガラス中のROの割合は、少なくとも0.3mol%とすることができる。アルカリ土類金属酸化物は融着性に有利であるが、高い比率では、これらは望まれるUV透過率に関して問題を有することが分かっている。一変形形態では、ガラスは最大3mol%のROを含有する。一実施形態では、ROの割合は1~3mol%である。
【0145】
mol%単位でのアルカリ土類金属酸化物とアルカリ金属酸化物の含有量の合計、RO+ROは、最大10mol%に制限することができる。有利な設計は、これらの成分を最大9mol%の量で含むことができる。好ましくは、これらの酸化物の含有量は、少なくとも4mol%、少なくとも5mol%、または少なくとも6mol%である。一実施形態では、RO+ROの割合は6~8mol%である。これらの成分は、相分離傾向を高め、ガラスの耐加水分解性を非常に高い割合で低下させる。
【0146】
mol%単位のROとROの含有量の合計に対するBのmol%単位の含有量の比率は、少なくとも1.3、少なくとも1.5、または少なくとも1.8とすることができる。比率は、最大6、最大4.5、または最大3に制限することができる。一実施形態では、B/(RO+RO)の比率は1.8~3.5である。Bに対するアルカリまたはアルカリ土類酸化物の存在が過度に多いと、ガラスの相分離中にアルカリまたはアルカリ土類ホウ酸塩が形成される可能性がある。上記の比率を調整することが有利なことが証明された。
【0147】
およびTを含む溶融特性を確実に望まれる範囲内にするためには、mol%単位でのSiOとAlの含有量の合計に対するBの含有量の比率を狭い範囲内に設定することが有利な場合がある。有利な設計では、この比率は少なくとも0.15および/または最大0.4である。一実施形態では、B/(SiO+Al)の比率は、0.17~0.3である。
【0148】
アルカリ土類金属酸化物ROの合計に対するアルカリ金属酸化物ROの合計のmol%単位での割合の比率は、好ましくは1超、特に1.1超、または2超である。この設計形態では、この比率は最大10、最大7、または最大5である。一実施形態では、比率は2~4である。
【0149】
本発明のガラスは、0~6mol%の含有量でFを含み得る。好ましくは、Fの含有量は最大4mol%である。ある設計形態では、少なくとも1mol%、または少なくとも2mol%のこの成分が使用される。成分Fはガラスの融着性を改善し、より短い波長に向けてUV端に影響を与える。
【0150】
本発明のガラスは、1mol%未満、特に0.5mol%未満、または0.3mol%未満の含有量でClを含み得る。適切な下限は0.01mol%または0.05mol%である。
【0151】
本発明のガラスは、5mol%未満、特に2.5mol%未満、または1mol%未満の含有量でZnOを含み得る。適切な下限は0.01mol%または0.05mol%である。いくつかの実施形態では、ガラスはZnOを含まなくてよい。
【0152】
本発明のガラスは、5mol%未満、2.5mol%未満、または特に1mol%未満の含有量でZrOを含み得る。適切な下限は0.01mol%または0.05mol%である。いくつかの実施形態では、ガラスはZrOを含まなくてよい。
【0153】
本発明のガラスは、3mol%未満、特に2mol%未満、または1mol%未満の含有量でSnOを含み得る。適切な下限は0.01mol%または0.05mol%である。いくつかの実施形態では、ガラスはSnOを含まなくてよい。
【0154】
本明細書において、ガラスにある成分が含まれていない、または特定の成分が含まれていないと記載されている場合には、それはこの成分が多くても不純物としてしか存在し得ないことを意味する。これは、有意な量添加されていないことを意味する。有意でない量とは、0.5ppm未満、好ましくは0.25ppm未満、好ましくは0.125ppm未満、最も好ましくは0.05ppm未満の量である。
【0155】
一実施形態では、ガラスは、10ppm未満、特に5ppm未満、または1ppm未満のFeを有する。一実施形態では、ガラスは、10ppm未満、特に5ppm未満、または1ppm未満のTiOを有する。一実施形態では、ガラスは、3.5ppm未満、特に2.5ppm未満、または1.0ppm未満のヒ素を有する。3.5ppm未満のアンチモン、2.5ppm未満のアンチモン、または1.0ppm未満のアンチモンを含むガラスが好ましい。UV透過性とソラリゼーションへの悪影響の他に、特にヒ素とアンチモンは毒性を有し環境に危険であり、回避すべきである。
【0156】
特に好ましい設計では、ホウケイ酸ガラスは、以下の成分を含む(酸化物ベースのmol%):
【表3】
【0157】
別の特に好ましい形態では、ガラスは、以下のmol%の成分を含む:
【表4】
【0158】
また別の特に好ましい形態では、ガラスは、以下のmol%の成分を含む:
【表5】
【0159】
ガラス物品は、ガラス管およびガラスロッドについて公知の延伸プロセスによって製造することができる。当業者は、望まれる形状に応じて、適切な製造プロセス、例えばバーのためのインゴットキャスティング、板状体を製造するためのフローティングまたはダウンドローなどを選択するであろう。好ましくは、プロセス中のガラスの冷却は、望まれる特性が得られるように調整される。
【0160】
一実施形態では、ガラス物品は、ダナー法またはベロー法を使用して製造される。ベロー法では、ガラス溶融物は、出口リングと針とで製造された成形ツールを通って下方に垂直に(重力の方向に)流れる。成形ツールは、ガラス管またはガラスロッドの生成された断面のメス型(鋳型)を形成する。ガラス管の製造では、成形ツールの中央に成形部品として針が配置される。
【0161】
ベロー法とダウンドロー法の違いは、まず第1にベロー法のガラス溶融物が成形ツールを離れた後に水平方向にそれること、第2にベロー法では吹き込まれた空気の流れが通る通路を針が有することである。ダナー法と同様に、吹き込まれた空気により、得られるガラス管が崩壊しないようにされる。ダウンドロー法では、固化したガラス溶融物は事前に方向を変えることなく分離される。方向転換がないため、ガラス管の製造中に吹き込まれる空気の使用を控えることもできる。
【0162】
一実施形態では、本発明は、本明細書に開示のガラスから製造されたガラス物品に関する。ガラス物品の厚さ、特にガラス管の場合の肉厚は、少なくとも0.1mmまたは少なくとも0.3mmとすることができる。厚さは、最大3mmまたは最大2mmに制限することができる。ガラス物品の外径、例えばガラス管またはガラスロッドの外径は、最大50mm、最大40mm、または最大30mmとすることができる。外径は、特に、少なくとも1mm、少なくとも2mm、または少なくとも3mmとすることができる。一実施形態では、物品は、少なくとも3mmおよび/または最大20mmの厚さを有する。任意選択的には、厚さは少なくとも5mm、少なくとも6mm、または少なくとも8mmである。厚さは、最大20mm、最大16mm、最大14mm、または最大12mmに制限される場合がある。一実施形態では、物品は長さと幅を有し、特に長さは幅よりも大きい。長さは、少なくとも20mm、少なくとも40mm、または少なくとも60mmであってよい。任意選択的には、これは最大1000mm、最大600mm、最大250mm、または最大120mmである。好ましくは、長さは、20mm~1000mm、40mm~600mm、または60mm~250mmである。幅は、少なくとも10mm、少なくとも25mm、または少なくとも35mmであってよい。任意選択的には、幅は最大575mm、最大225mm、または最大110mmである。好ましくは、幅は、10mm~575mm、25mm~225mm、または35mm~110mmである。
【0163】
以上のことから、本発明は、以下の実施形態にも関する:
一態様では、本発明は、メチシリン耐性スタフィロコッカス・アウレウス(MRSA)を除去するための方法であって、270nm~222nmの波長範囲内の殺菌性UV光にMRSAを曝露させることを含み、該UV光は、3.5ppm未満の総白金含有量を有するホウケイ酸ガラスから製造されたランプカバーを備えたUVランプによって照射される、方法に関する。
【0164】
別の態様では、殺菌性UV光に曝露された上記MRSAは、222nmを超えるUV放射に感受性を有するUV感受性材料上に存在する。
【0165】
さらに別の態様では、上記UV感受性材料は、動物の眼または皮膚などの生体組織表面であり、動物は、昆虫、無脊椎動物、脊椎動物、哺乳類、および/またはヒトから選択される。
【0166】
さらに別の態様では、BS ISO 22196:2011-08-31に準拠した、処理後のMRSAの前記除去は、99%超である。
【0167】
さらに別の態様では、MRSAの前記UV曝露は、少なくとも2,000~8,000マイクロワット秒毎平方センチメートル(μW・s/cm)の範囲である。
【0168】
さらに別の態様では、前記UVランプのカバーの全部または一部は、レンズの形に成形される。
【0169】
別の態様では、本発明は、207nm~222nmの波長範囲にわたって少なくとも60%(1mmの厚さで測定)の透過率を有するガラスに関し、このガラスは、3.5ppm以下の総白金含有量を有するホウケイ酸ガラスである。いくつかの実施形態では、3ppm以下、2.5ppm以下、2ppm以下である。また、ガラスは、ISO 719に従って決定されるガラス1gあたりのμg単位での抽出されたNaO当量が250μg/g以下であることによって特徴付けられる耐加水分解性を有する。いくつかの実施形態では、180μg/g以下、120μg/g以下、50μg/g以下である。
【0170】
さらに別の態様では、前記ガラスは、200nmで少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも55%、少なくとも60%、ならびに/または210nmで少なくとも55%、少なくとも60%、少なくとも65%、ならびに/または230nmで少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも75%、ならびに/または260nm、280nm、および/もしくは310nmの波長[λ]で少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%の透過率を有する(1mmの厚さで測定)。一実施形態では、200nmにおける透過率は、最大95%、最大85%、または最大70%である。
【0171】
多くの用途では、UV範囲で可能な限り最も均一な透過率が望まれる。本発明のガラスは、少なくとも1.00かつ最大2.00、特に最大1.65、または最大1.50の、200nmにおける透過率に対する254nmにおける透過率(それぞれ1mmのサンプル厚で測定)の比率を有し得る。
【0172】
さらに別の態様では、前記ガラスは、10ppm未満の、1種以上のUV遮断性不純物の総含有量を含む。いくつかの実施形態では、8ppm未満、さらには5ppm未満である。
【0173】
さらに別の態様では、前記ガラスは、ロジウム、鉛、カドミウム、水銀、六価クロム、鉄、チタン、およびそれらの任意の組み合わせから選択される1種以上のUV遮断性不純物を含む。
【0174】
さらに別の態様では、前記ガラスは、1.0ppm未満の総白金含有量を含む。
【0175】
波面偏差は、±0.1mm未満、±0.08mm未満とすることができ、さらなる実施形態では、±0.035mm未満、±25μm未満、±15μm未満、±5μm未満とすることができる。任意選択的には、波面偏差は0.1μm~250μm、または1μm~100μm、または2μm~85μmとすることができる。
【0176】
さらに別の態様では、前記ガラスは、1.450~1.580の屈折率nを有する。
【0177】
さらに別の態様では、前記ガラスは、示されている量で以下の成分(mol%)を含む:
【表6】
【0178】
別の態様では、本発明は、UV-LEDモジュール用の、例えば水の消毒、分析機器(HPLC、分光計、水監視センサー)、空気浄化、空気消毒、表面消毒(例えばキーボード消毒、エスカレーターの手すりのUV滅菌装置)、サイトメトリー、分子同定、タンパク質分析、バイオフィルム処理、硬化、リソグラフィー、植物成長、皮膚治療(乾癬、白斑、かゆみ、神経皮膚炎、にきび、光線性皮膚炎、光線療法、バラ色粃糠疹)、細菌検出、創薬、タンパク質分析、皮膚ビタミンD3産生の誘導、および/または滅菌の群から選択される用途での、気密封止レンズキャップとしての前記ガラスの使用に関する。
【0179】
一態様では、本発明は、本明細書に記載のガラスを含むか、またはそれからなるガラス物品に関する。一実施形態では、ガラス物品は、少なくとも1つの研磨された表面を有する。任意選択的には、ガラス物品は少なくとも1つの面取りされた端部を有する。研磨された表面は、10nm未満または5nm未満の表面粗さRaを有し得る。面取りされた端部は、耐衝撃性がより大きく、特に面取りされていない端部よりもチッピングに対する耐性を有する。
【0180】
熱的および/または化学的強化
任意選択的には、製造プロセスは、ガラス物品を化学的および/または熱的に強化するステップを含む。「強化(tempering)」は「硬化」または「強化(toughening)」とも呼ばれる。
【0181】
好ましくは、ガラス物品は、少なくとも1つの表面で強化され、特に熱的および/または化学的に強化される。例えば、イオン交換によってガラス物品を化学的に強化することが可能である。このプロセスでは、物品内の小さなアルカリイオンが通常は大きなアルカリイオンによって置き換えられる。多くの場合、より小さなナトリウムがカリウムで置き換えられる。ただし、非常に小さいリチウムがナトリウムおよび/またはカリウムで置き換えられることも可能である。任意選択的には、アルカリイオンを銀イオンで置き換えることができる。別の可能性は、アルカリ土類イオンがアルカリイオンと同じ原理に従って互いに交換されることである。好ましくは、イオン交換は、物品表面と塩浴との間で溶融塩浴中で行われる。例えば溶融KNOなどの純粋な溶融塩を交換のために使用することができる。しかしながら、塩の混合物または塩と他の成分との混合物も使用することができる。選択的に調整された圧縮応力プロファイルが物品内に蓄積される場合、物品の機械的耐性をさらに高めることができる。これは、一段階または多段階のイオン交換プロセスによって実現することができる。
【0182】
小さなイオンを大きなイオンに置き換えるか、または熱的に強化を行うことにより対応するゾーンに圧縮応力が形成され、これはガラス物品の表面から中心に向かって低下する。最大圧縮応力はガラス表面のすぐ下にあり、CS(圧縮応力)とも呼ばれる。CSは応力であり、MPaの単位で表される。圧縮応力層の深さは「DoL」と略され、μm単位で示される。好ましくは、CSおよびDoLは、OriharaのFSM-60LE装置を使用して測定される。
【0183】
一実施形態では、CSは100MPaよりも大きい。さらに好ましくは、CSは、少なくとも200MPa、少なくとも250MPa、または少なくとも300MPaである。より好ましくは、CSは、最大1,000MPa、最大800MPa、最大600MPa、または最大500MPaである。好ましくは、CSは、100MPaより大きく1,000MPaまで、200MPa~800MPa、250MPa~600MPa、または300MPa~500MPaの範囲である。
【0184】
一実施形態では、ガラス物品は熱的に強化される。熱強化は、典型的には高温のガラス表面を急冷することによって行われる。熱強化は、化学的強化よりも圧縮応力層をより深く形成できる(より大きいDoL)という利点を有する。これにより、薄い圧縮応力層ほど容易には引掻き傷が圧縮応力層に入り込むことができなくなるため、ガラスに引掻き傷が付きにくくなる。
【0185】
ガラスまたはガラス物品は、例えば、溶融、成形、徐冷/冷却プロセス、および低温後処理ステップの後に熱強化プロセスを行うことができる。このプロセスでは、ガラス体(例えば、前述したガラス物品または前製品)、例えば板ガラスは、好ましくは、水平に供給されるか、または装置に吊り下げられ、転移温度Tを超える最大150℃までの温度に急激に加熱される。その後、ガラス体の表面は、例えばノズルシステムを通して冷気を吹き付けることなどによって急冷される。ガラス表面の急冷の結果としてそれらは拡張されたネットワークで凍結される一方で、ガラス体の内部はゆっくりと冷却され、さらに収縮する時間を有する。これにより、表面層に圧縮応力が形成され、内部に引張応力が形成される。圧縮応力の量は、CTEglass(Tg未満の平均線熱膨張係数)、CTEliquid(Tgを超える平均線熱膨張係数)、ひずみ点、軟化点、ヤング率、および冷却媒体とガラス表面との間の熱伝達量などの様々なガラスパラメータ、ならびにガラス体の厚さに依存する。
【0186】
好ましくは、少なくとも50MPaの圧縮応力が生成される。結果として、ガラス体の曲げ強さは、強化されていないガラスと比較して2倍から3倍とすることができる。一実施形態では、ガラスは750~800℃の温度に加熱され、冷気の流れの中で急激に強化される。任意選択的には、吹き込み圧力は1~16kPaとすることができる。本明細書に記載のガラスまたはガラス物品を用いることで、例えば50~250MPa、特に75~200MPaの圧縮応力の値が、市販のシステムで達成される。
【0187】
一実施形態では、ガラス物品は、少なくとも50MPa、特に少なくとも75MPa、少なくとも85MPaまたは少なくとも100MPaの圧縮応力を有する圧縮応力層を有する。ガラス物品は、その表面のうちの1つ、2つ、または全てに圧縮応力層を有し得る。圧縮応力層の圧縮応力は、最大250MPa、最大200MPa、最大160MPa、または最大140MPaに制限される場合がある。これらの圧縮応力値は、特に熱強化ガラス物品に存在し得る。
【0188】
一実施形態では、ガラス物品の圧縮応力層の深さは、少なくとも10μm、少なくとも20μm、少なくとも30μm、または少なくとも50μmである。特定の実施形態では、この層は、さらには少なくとも80μm、少なくとも100μm、または少なくとも150μmであってよい。任意選択的には、DoLは、最大2,000μm、最大1,500μm、最大1,250μm、または最大1,000μmに制限される場合がある。特に、DoLは、10μm~2,000μm、20μm~1,500μm、または30μm~1,250μmとすることができる。一実施形態では、ガラス物品は、少なくとも300μm、少なくとも400μm、または少なくとも500μmのDoLで熱的に強化される。任意選択的には、DoLは、最大2,000μm、最大1,500μm、または最大1,250μmであってよい。一実施形態では、DoLは、300μm~2000μm、400μm~1,500μm、または500μm~1,250μmである。
【0189】
実施形態
本発明は、複数の点で耐性を有するガラスに関する。特に耐性を有するガラスは、ガラスが特殊な要件にさらされる場合に特に有用である。これは、例えば極端な環境の場合である。極端な環境は、特に特殊な耐性、耐久性、および安全性が要求される応用分野、例えば防爆が必要とされる分野である。
【0190】
一実施形態では、本発明は、極端な環境における使用に特に適したガラス物品に関する。物品は、シート、ディスク、管、ロッド、インゴット、またはブロックであってよい。好ましい実施形態では、物品はシートまたはディスクの形態である。
【0191】
任意選択的には、ガラス物品は、207nm~222nmの波長範囲にわたって少なくとも60%の透過率(1mmの厚さで測定)を有するガラスからなり、ガラスは、3.5ppm以下の総白金含有量と、ISO719に従って決定されるガラス1gあたりのμg単位で表される抽出されたNaO当量によって特徴付けられる250μg/g以下の耐加水分解性とを有するホウケイ酸ガラスであり、さらにガラス物品は少なくとも0.3mm、特に少なくとも3mmおよび/または最大20mmの厚さを有する。
【0192】
極端な環境では、厚いガラスは薄いガラスよりも機械的に安定しているため、ガラス物品に特定の最小厚さを付与することが有用な場合がある。ただし、厚いガラスほどガラスに入るUV放射の大部分を吸収し、その結果熱が発生する。可燃性の高い材料が用いられる環境では、大きい発熱が問題になる場合がある。200nmおよび/または254nmにおける誘起減光が低いガラス物品は、長期間使用した後であっても対象の波長で透過率が高いままであり、極端な発熱が回避されるという利点を有している。
【0193】
本発明によれば、ガラス物品は、極端な環境で表面を消毒するためのUVランプにも使用することができる。一実施形態では、ガラス物品は、作用部位を消毒するために使用されるUVランプ(特にカバーとして)において使用される。作用部位は、多くの人が触れる物体、例えばハンドル、特にドアハンドルであってよい。UVランプは、例えばそれが作用部位にUV照射するように位置合わせすることができる。この場合、作用部位への一定の近接は避けられない。したがって、この点ではガラス物品が衝撃により破損するリスクがある。このため、機械的耐性が必要とされる。ガラス物品を厚くすることで機械的耐性を改善することができるものの、これにより物品の透過率が低下し、UVランプ作動中のガラスの加熱が大幅に増加することになる。過度の加熱は回避すべきであり、これは、ひいては非常に優れた透過率と低い誘起減光とによってプラスの影響を受ける。過度な高温では、使用者の火傷や爆発のリスクのため、安全性が損なわれる。基本的には、火傷のリスクは距離を離すことで低減できるものの、これはより強い放射強度で補わなければならず、同様により大きい熱の発生という欠点を伴う。
【0194】
本発明は、UVランプ、および特に極端な環境において消毒するための、特に作用部位、例えば多くの人が触れるものを消毒するための、UVランプにおけるガラス物品の使用にも関する。消毒される表面とガラス物品との間の最小距離を5cm、特に7.5cmまたは10cmに維持することが有利であることが証明されている。本明細書に記載のガラス物品を使用する場合、作用部位で少なくとも1.0mW/cm、少なくとも1.5mW/cm、少なくとも2.5mW/cm、少なくとも3.0mW/cm、または少なくとも3.5W/cmの出力密度に設定することができる。作用部位は消毒される表面である。任意選択的には、出力密度は最大20mW/cm、最大15mW/cm、または最大10mW/cmである。具体的には、出力密度は、UVランプによって媒介されるUV放射、特にUV-C放射として、作用部位で測定することができる出力である。好ましくは、作用部位は定期的に消毒される。これは、作用部位が連続的に照射されるのではなく、断続的にのみ照射されることを意味する。例えば、照射間隔は、使用者による接触、存在、または作動によって誘発することができる。例えば、照射間隔は、少なくとも1秒、少なくとも5秒、少なくとも10秒、または少なくとも20秒であってよい。任意選択的には、照射間隔は、最大10分、最大5分、最大2分、または最大1分継続する。
【0195】
一実施形態では、UVランプおよび/またはガラス物品は熱最適化構造を有しており、ガラス物品の厚さおよびガラス物品のUV透過率は、ガラス物品から70mm離れた(光源に対して物品の反対側に配置された)作用部位を、120W/cmかつアーク長4cmの中圧水銀ランプ(例えばPhilips HOK 4/120)を用いて17.27mW/cmのUVC出力密度で20℃の周囲温度で5秒間照射した場合に、作用部位に面するガラス物品の表面の温度が45℃を超えないように選択される。一実施形態では、放射はガラス物品を垂直に通過する。すなわち、光は光源に面する表面に対して実質的に垂直にガラス物品の中に入る、および/または光は作用部位に面するガラス物品の表面に対して実質的に垂直にガラス物品を出る。特に、温度は42.5℃、40℃、または37.5℃の値を超えない。一実施形態では、10秒、20秒、30秒、45秒、60秒、90秒、120秒、150秒、または180秒の照射後であっても、前記温度限界を超えない。この特性は、一般的に使用されるUV光源を垂直に照射した場合にガラス物品がどれだけ強く加熱されるかを表す。ガラス物品から製造されたランプカバーを備えたUVランプが危険なほど熱くならないことが実現される。UVC出力密度とは、UVC範囲(280~200nm)の放射によって与えられる出力密度を指す。中圧水銀ランプは他の波長の光も放出するものの、UVC出力密度の検討の際には本明細書では考慮しない。測定は周囲雰囲気下で行われる。明確にするために明記しておくと、記載されている特性は、UVランプまたはガラス物品の利用を中圧水銀ランプに限定するものではない。
【0196】
一実施形態では、ガラス物品は、DIN EN 12150-1:2020-07による破壊パターンの要件を満たす。物品全体または物品の一部を調べることができ、考慮される領域を超えている限り、物品は指定されている基準から逸脱してそこに示されているよりも小さくすることができる。破損パターンを考慮する領域は、具体的には40mm×40mmまたは25mm×25mmとすることができる。一実施形態では、ガラス物品は、上記条件下で、25片以上、特に30片以上または40片以上に砕ける。破片が小さいと破損した場合に怪我のリスクが低いことから、物品が多くの破片に砕けることが有利である。破壊パターンは、例えばガラス組成の選択、冷却条件(熱収縮)、ガラスの応力の調整、および/または物品の強化の影響を受ける場合がある。
【0197】
一実施形態では、本発明は、207nm~222nmの波長範囲にわたって少なくとも60%の透過率(1mmの厚さで測定)を有するガラスからなるガラス物品に関し、ここでのガラスは、3.5ppm以下の総白金含有量と、ISO719に従って決定されるガラス1gあたりのμg単位で表される抽出されたNaO当量によって特徴付けられる250μg/g以下の耐加水分解性とを有するホウケイ酸ガラスであり、さらにガラス物品は少なくとも0.3mm、特に少なくとも3mmおよび/または最大20mmの厚さを有し、さらに物品は、少なくとも1つの表面における少なくとも50MPaの圧縮応力と、DIN EN 12150-1に従って決定される40mm×40mmの領域が25片以上に砕けることを特徴とする破壊パターンとを有する。
【図面の簡単な説明】
【0198】
図1】異なる厚さ(1mmおよび0.34mm)および異なるUV波長における本発明の「ガラスno.1」の透過率曲線を示す図。
図2】様々なLEDパッケージa)~f)におけるUV透過性ガラスの考えられる使用を示す図。
図3】様々なLEDパッケージa)~e)におけるUV透過性ガラスの考えられる使用を示す図。
図4】本発明の「ガラスno.1」の透過率曲線を示す図。
図5】「比較ガラス1」の透過率曲線を示す図。
図6】「比較ガラス2」の透過率曲線を示す図。
【0199】
実施例
実施例1
いずれのガラスも、石英ガラスるつぼ内にて還元条件下で溶融し、石英ガラス攪拌機で均一にした。全ての溶融物を465℃の冷却炉に入れ、30K/hの速度で室温まで冷却した。
【0200】
溶融物「ガラスNo.1」を1610℃で溶融し、1620℃で60分間精製し、次いで同じ温度で30分間撹拌し、その後1620℃で120分間放置した。その結果、ガラスは可能な限り気泡を有していなかった。
【0201】
キャスティング後、Ptを含まない形態(「ガラスNo.1」)から透明なガラスキャストブロックが得られた。
【0202】
ガラスの化学分析に加えて、ガラスの透過率曲線を、キャストブロック上の少なくとも2つの異なる場所で記録した。同じサンプルの厚さで透過率曲線を計算できるようにするために、屈折率も波長の関数として決定した。
【0203】
次の表は、本開示による例示的なガラスをmol%で示している。
【0204】
【表7】
【0205】
「ガラスNo.1」と同じ組成でかつ以下のものを含む、2つの「比較ガラス」を製造した:
・「比較ガラス1(C1)」:7.9ppmのFeおよび8.3ppmのTiOおよび3.5ppmのPt。
・「比較ガラス2(C2)」:3.3ppmのFeおよび20.9ppmのTiOおよび3.8ppmのPt。
【0206】
【表8】
【0207】
・ガラスNo.1を用いたUV透過率試験
ガラスNo.1のUV透過率を、様々な厚さと波長で試験した。0.34mmの厚さで以下の透過率が測定された。
・200nm-73.5%
・207nm-77.5%
・222nm-83.0%
【0208】
1mmの厚さで以下の透過率が測定された。
・200nm-62.2%
・207nm-67.5%
・222nm-77.0%
【0209】
その後、ガラスNo.1を、比較ガラスC1およびC2と比較した。Pt汚染は、それぞれ3.5ppmおよび3.8ppmであった。
【0210】
200nmにおける透過率は、ガラスNo.1と比較して、60~65%から、ガラスC1では約50%に減少し、ガラスC2では約20~30%に減少した。これは、Pt汚染の影響が大きいことだけでなく、鉄やチタンなどの他の汚染物質が透過率に影響を及ぼすことも示している。
【0211】
UVランプおよび/またはUV-LEDランプの製造
LEDパッケージのカバーとしてガラスを使用することにより、UVC透過性ガラスNo.1を使用してUVC-LEDランプを製造した。LEDパッケージのパッケージサイズは3.5×3.5mmであった。
【0212】
LEDパッケージのその他の特徴:
・基板:キャビティを有するAlN(高さ約1.0mm)
・ウインドウの厚さ:0.3mm(平坦)
・はんだ材料:Au/Sn、Au/Ni
【0213】
さらに、UVC透過性の封入材料を使用して、LEDをさらに保護およびカバーした。そのような封入材料は、メチルメタクリレートとアシルオキシイミノメタクリレートエステルとのコポリマーとすることができる。本実施例では、ポリ-(メチルメタクリレート-co-3-メタクリロイル-オキシイミノ-2-ブタノン)を使用した。
【0214】
有利な熱特性のため、UVC-LEDランプを高いガス圧であってもオートクレーブ処理可能にし、高湿度または高いガス圧を含む環境で使用可能とするために、ガラスカバーをレーザーでパッケージ表面にフリットシーリングすることができる。
【0215】
・UV-LEDカバーとしてのエネルギー効率試験
LEDランプを従来のLEDランプと比較した。本発明を使用して製造したLEDは、従来のUVランプよりも約30%高いエネルギー効率を有することが判明した。
【0216】
・MRSA除去試験
MRSA-CFU(コロニー形成単位)が存在する表面に、本発明のUVC-LEDランプを照射した。200nmで2,500μW・s/cmのUVCを10分間照射した。10分間UVC処理した後、確認できたMRSA-CFUは1%未満であった。
【0217】
したがって、ガラスNo.1は、高いUV透過率と、98℃の水の中に抽出される20、25、30、50、100、180および/または250μg/g以下のNaOの当量により特徴付けられる耐加水分解性と、を備えたガラスである。
【0218】
実施例2
高いUV透過性と耐加水分解性とを有するその他の本発明のガラス組成を以下の表に示す。成分の含有量はmol%で記載されている。ガラスのその他の物理的特性も記載されている。
【0219】
【表9】
【0220】
次の表は、重水素ランプにそれぞれ48時間および96時間曝露した後の耐ソラリゼーション性(誘起吸光度)を示している。透過率は、0.7~0.75mmのガラス厚で測定したものである。
【0221】
【表10】
【0222】
次の表は、重水素ランプにそれぞれ48時間および96時間曝露した後のいくつかのガラスについてのおおよその透過値を示している。
【0223】
【表11】
【0224】
図面の詳細な説明
図1は、異なる厚さ(1mmおよび0.34mm)および異なるUV波長における本発明の「ガラスno.1」の透過率曲線を示す。
【0225】
図2は、様々なLEDパッケージa)~f)におけるUV透過性ガラスの考えられる使用を示す。ガラスレンズ[1]の形状により、具体的な用途に応じて、UV光の集束または分散が可能である。さらに、カバーガラス[1]は、UV光が横方向にも放出されるように、UV源(例えばUV-LED)[4]を取り囲むことができる(図2c)~f)参照)。ケーシング[3]の背面にある反射要素は、発光効率を改善することができる。ケーシング[3]としては、熱伝導率が高い窒化アルミニウムセラミック(AlNセラミック)を使用することができる。LED[4]とガラスカバー[1]は、ケーシング[3]に金属はんだ付け[2]することができる。
【0226】
図3において、ガラスをケーシング[3]に金属はんだ付け[2]する(図3a)参照)代わりに、本発明のUV透過性ガラス[1]をレーザーフリットシーリング[6]によりケーシングに取り付けることもできる(図3b)~e)参照)。ケーシング[3]に金属はんだ付け[2]可能なLED[4]を、透明な封入材料[5]中にさらに完全に封入することができる。そのような封入材料は、メチルメタクリレートとアシルオキシイミノメタクリレートエステルとのコポリマーであってよい。実施例では、ポリ-(メチルメタクリレート-co-3-メタクリロイル-オキシイミノ-2-ブタノン)を使用した。その場合、レーザーフリットシーリング[6]により、LED要素は環境の影響から完全に保護され、結果としてこの構成は、特に強酸性のクリーナーおよび/または消毒剤を定期的に使用する場合の過酷な環境条件に最適である。この場合も、ケーシング[3]として、熱伝導率が高い窒化アルミニウムセラミック(AlNセラミック)を使用することができる。この場合も、ケーシング[3]の背面にある反射要素により、発光効率を改善することできる。
【0227】
図4図6は、異なるガラスの透過率曲線を示す。200nmにおける透過率は、60~65%(本発明の「ガラスno.1」)から約50%(「比較ガラスno.1」)および20~30%(「比較ガラスno.2」)まで減少した。これは、白金およびその他の汚染物質によるUV透過率への大きな影響を示している。
【0228】
図4は、Ptを含まず、鉄とチタンの含有量が少ない本発明の「ガラスno.1」(実施例1に従って製造)の透過率曲線を示す。同じガラスキャストブロックの異なる場所で2回の測定を行った。同じガラスの透過率測定値の変動は、キャストブロックの不均一性によるものである。
【0229】
図5は、3.5ppmの白金、7.9ppmの鉄、および8.3ppmのチタンの含有量を有する「比較ガラス1」の透過率曲線を示す。同じガラスキャストブロックの異なる場所で2回の測定を行った。同じガラスの透過率測定値の変動は、キャストブロックの不均一性によるものである。
【0230】
図6は、3.8ppmの白金、3.3ppmの鉄、および20.9ppmのチタンの含有量を有する「比較ガラス2」の透過率曲線を示す。「比較ガラス2」について、同じガラスキャストブロックの異なる場所で3回の測定を行った。同じガラスの透過率測定値の変動は、キャストブロックの不均一性によるものである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6