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特許7293326車両、車両サスペンションの制御方法、及び関連する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】車両、車両サスペンションの制御方法、及び関連する装置
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20230612BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B60G17/015 A
F16F9/46
【請求項の数】 15
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021206681
(22)【出願日】2021-12-21
(65)【公開番号】P2022099304
(43)【公開日】2022-07-04
【審査請求日】2022-01-14
(31)【優先権主張番号】202011530881.X
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521531171
【氏名又は名称】ファーウェイ デジタル パワー テクノロジーズ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,ファンチョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,カイ
(72)【発明者】
【氏名】リィウ,ユンフォン
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-195232(JP,A)
【文献】特開2002-321513(JP,A)
【文献】特開2006-273224(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60G 1/00-99/00
F16F 9/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、当該車両は、第1の構成要素、第2の構成要素、及び車両サスペンションを含み、該車両サスペンションは、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間に配置され、
前記第1の構成要素は、前記車両サスペンションが支える構成要素であり、前記第2の構成要素は、前記車両サスペンション及び前記第1の構成要素を支えるように構成され、前記車両サスペンションは、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含み、
前記可変ダンパーは、前記第1の構成要素の第1の加速度に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えて、当該車両の高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の変位を制御するように構成され、
前記第1の加速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の加速度であり、
前記可変ダンパーは、前記第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるように構成され、前記第1のプリセット制御パラメータは加速度について予め設定された前記可変ダンパーに関する出力特性パラメータであり、
前記可変ダンパーは、前記第1の積及び第2の積に基づいて前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるように構成され、前記第2の積は、第1の速度と第2のプリセット制御パラメータとの積であり、前記第1の速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の速度であり、前記第2のプリセット制御パラメータは速度について予め設定された前記可変ダンパーに関する出力特性パラメータである、
車両。
【請求項2】
前記可変ダンパーは、前記第1の積、前記第2の積、及び第3の積に基づいて前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるように構成され、前記第3の積は、相対速度と前記可変ダンパーの第1の減衰係数との積であり、前記相対速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度である、請求項に記載の車両。
【請求項3】
前記可変ダンパーは、前記第1の積及び第4の積に基づいて前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるように構成され、前記第4の積は、基準加速度と前記第1のプリセット制御パラメータとの積である、請求項1又は2に記載の車両。
【請求項4】
当該車両は、駆動回路をさらに含み、該駆動回路は、前記可変ダンパーに接続されており、
前記駆動回路は、駆動信号を受信し、該駆動信号に基づいて、その値が目標駆動電流値となる目標駆動電流を前記可変ダンパーに出力するように構成され、前記目標駆動電流値は、前記第1の力及び相対速度に基づいて決定され、該相対速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両。
【請求項5】
前記可変ダンパーは、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい場合に、前記第1の構成要素の前記第1の加速度に基づいて前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるようにさらに構成され、前記相対速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度であり、前記第1の速度は、当該車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の速度である、請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両。
【請求項6】
前記可変ダンパーは、前記相対速度と前記第1の速度との前記積がゼロ以下である場合に、前記相対速度と前記可変ダンパーの第2の減衰係数とに基づいて、前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるようにさらに構成される、請求項に記載の車両。
【請求項7】
前記第1の力が前記可変ダンパーの最大減衰力よりも大きい場合に、前記可変ダンパーは、該可変ダンパーの前記最大減衰力を前記第1の力として使用し、前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるように構成される、請求項1乃至のいずれか一項に記載の車両。
【請求項8】
車両サスペンションの制御方法であって、前記車両サスペンションは第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、前記第1の構成要素は前記車両サスペンションが支える構成要素であり、前記第2の構成要素は前記車両サスペンション及び前記第1の構成要素を支えるように構成され、前記車両サスペンションは、前記第1の構成要素と前記第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含み、当該制御方法は、
前記第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える第1の力を決定して、車両の高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の変位を制御するステップを含
前記第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、第1の力を前記第1の構成要素に与えるステップが、
前記第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップであって、前記第1の加速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の加速度であり、前記第1のプリセット制御パラメータは加速度について予め設定された前記可変ダンパーに関する出力特性パラメータである、ステップを含み、
前記第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップは、
前記第1の積及び第2の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップであって、前記第2の積は、第1の速度と第2のプリセット制御パラメータとの積であり、前記第1の速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の速度であり、前記第2のプリセット制御パラメータは速度について予め設定された前記可変ダンパーに関する出力特性パラメータである、
制御方法。
【請求項9】
前記第1の積及び第2の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップは、前記第1の積、前記第2の積、及び第3の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップを含み、前記第3の積は、相対速度と前記可変ダンパーの第1の減衰係数との積であり、前記相対速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度である、請求項に記載の制御方法。
【請求項10】
前記第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップは、前記第1の積及び第4の積に基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップを含み、前記第4の積は、基準加速度と前記第1のプリセット制御パラメータとの積である、請求項8又は9に記載の制御方法。
【請求項11】
当該制御方法は、
前記第1の力及び相対速度に基づいて目標駆動電流値を決定するステップであって、前記相対速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度である、ステップと、
前記目標駆動電流値に基づいて駆動信号を生成し、該駆動信号を前記可変ダンパーの駆動回路に送信することにより、前記可変ダンパーの前記駆動回路は、前記駆動信号に基づいて、その値が前記目標駆動電流値となる目標駆動電流を前記可変ダンパーに出力するステップと、をさらに含む、請求項乃至10のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項12】
前記可変ダンパーは、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい場合に、前記第1の構成要素の前記第1の加速度に基づいて前記第1の構成要素に前記第1の力を与えるようにさられに構成され、前記相対速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第2の構成要素に対する前記第1の構成要素の速度であり、前記第1の速度は、前記車両の前記高さ方向における前記第1の構成要素の速度である、請求項乃至11のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項13】
当該制御方法は、
前記相対速度と前記第1の速度との前記積がゼロ以下である場合に、前記相対速度と前記可変ダンパーの第2の減衰係数とに基づいて、前記可変ダンパーが前記第1の構成要素に与える前記第1の力を決定するステップをさらに含む、請求項12に記載の制御方法。
【請求項14】
当該制御方法は、
前記第1の力が前記可変ダンパーの最大減衰力よりも大きい場合に、前記可変ダンパーの前記最大減衰力を前記第1の力として使用するステップをさらに含む、請求項乃至13のいずれか一項に記載の制御方法。
【請求項15】
車両サスペンションの制御装置であって、当該制御装置は、トランシーバ、プロセッサ、及びメモリを含み、前記トランシーバ、前記プロセッサ、及び前記メモリはバスシステムを使用して接続されており、
前記メモリは命令を格納するように構成されており、
前記プロセッサは、前記メモリに格納された前記命令を呼び出して、請求項乃至14のいずれか一項に記載の前記制御方法を実行するように構成される、
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、車両技術の分野に関連し、特に、車両、車両サスペンションの制御方法、及び関連する装置に関連する。
【背景技術】
【0002】
車両の運転プロセスにおける不必要な衝突(bump)を回避するために、車両サスペンションが車両内に配置される。図1に示されるように、車両サスペンションは、フレームとホイールとの間に配置される機器である。車両サスペンションには、弾性要素及び可変減衰ショックアブソーバー(すなわち、可変ダンパー)等の複数の構成要素が含まれる。車両サスペンションの特定の構造図については、図2を参照されたい。図2に示されるように、可変ダンパーは弾性要素の周りに配置される。弾性要素及び可変ダンパーが、フレームをホイールに接続する。車両が地面に衝突すると、弾性要素が衝撃を軽減することができる、又は可変ダンパーが衝撃による振動を軽減するためにフレームに逆方向の力を与えることができる。弾性要素は、可変ダンパーと一緒に機能して、車両のスムーズな運転を保証する。弾性要素の剛性部は通常固定されている。車両サスペンションの可変ダンパーがフレームに与えるのに必要な力は、実際の道路状況によって異なるようにすべきである。可変ダンパーがフレームに与える力を調整して車両の振動を低減する方法が、現在研究されている課題の1つである。
【0003】
従来技術では、可変ダンパーの減衰力を調整するために、通常、2状態スカイフック制御方法が使用される。可変ダンパーの2つの減衰係数のうちの1つが、車両サスペンションの両端の相対運動傾向とフレームの運動速度とに基づいて選択される。可変ダンパーの減衰力は可変ダンパーの減衰係数に関連しており、異なる減衰係数は異なる減衰力に対応する。換言すれば、従来技術では、可変ダンパーの減衰力は、可変ダンパーの減衰係数を選択することによって調整される。この制御ポリシーの調整によって得られる減衰力は、十分に正確ではない。
【発明の概要】
【0004】
本願の実施形態は、車両の運転プロセスにおける衝突を効果的に低減し、車両の乗り心地を向上させるための、車両、車両サスペンションの制御方法、及び関連する装置を提供する。
【0005】
第1の態様によれば、本願の一実施形態は、車両を提供する。車両は、第1の構成要素、第2の構成要素、及び車両サスペンションを含み、車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置される。第1の構成要素は、車両サスペンションが支える構成要素であり、第2の構成要素は、車両サスペンション及び第1の構成要素を支えるように構成され、車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含み、可変ダンパーは、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えて、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の変位を制御するように構成される。
【0006】
本願のこの実施形態では、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力は直接制御され、第1の構成要素の第1の加速度は、閉ループ制御を実行するために第1の力の制御プロセスに導入され、第1の構成要素の第1の加速度に対する正確な制御を実施する。本願のこの実施形態では、車両の運転プロセスにおける衝突を効果的に低減することができ、それによって、車両の乗り心地が向上する。
【0007】
第1の態様に関して、第1の可能な実施態様では、第1の加速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の加速度である。
【0008】
可変ダンパーは、第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。
【0009】
第1の態様の第1の可能な実施態様に関して、第2の可能な実施態様では、可変ダンパーは、第1の積及び第2の積に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。第2の積は、第1の速度と第2のプリセット制御パラメータとの積であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0010】
本願のこの実施形態では、第1の構成要素の第1の加速度を第1の力の制御プロセスに導入することに加えて、第1の構成要素の第1の加速度をより正確に制御できるように、第1の構成要素の第1の速度が導入され、それにより、車両の乗り心地をさらに向上させる。
【0011】
第1の態様の第2の可能な実施態様に関して、第3の可能な実施態様では、可変ダンパーは、第1の積、第2の積、及び第3の積に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。第3の積は、相対速度と可変ダンパーの第1の減衰係数との積であり、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である。
【0012】
本願のこの実施形態では、可変ダンパーの減衰力が考慮される。第1の構成要素の第1の加速度及び第1の構成要素の第1の速度を第1の力の制御プロセスに導入することに加えて、第1の構成要素の第1の加速度をより正確に制御できるように、可変ダンパーの減衰力が導入され、それにより、車両の乗り心地をさらに向上させる。
【0013】
第1の態様の第1の可能な実施態様から第3の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第4の可能な実施態様では、可変ダンパーは、第1の積及び第4の積に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。第4の積は、基準加速度と第1のプリセット制御パラメータとの積である。
【0014】
第1の態様及び第1の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第5の可能な実施態様では、車両は駆動回路をさらに含み、駆動回路は可変ダンパーに接続される。駆動回路は、駆動信号を受信し、駆動信号に基づいて、その値が目標駆動電流値となる目標駆動電流を可変ダンパーに出力するように構成される。目標駆動電流値は、第1の力及び相対速度に基づいて決定され、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である。
【0015】
第1の態様及び第1の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第6の可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい。相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0016】
第1の態様の第6の可能な実施態様に関して、第7の可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロ以下である場合に、可変ダンパーは、相対速度と可変ダンパーの第2の減衰係数とに基づいて、第1の構成要素に第1の力を与えるようにさらに構成される。
【0017】
第1の態様及び第1の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第8の可能な実施態様では、第1の力が可変ダンパーの最大減衰力よりも大きい場合に、可変ダンパーは、可変ダンパーの最大減衰力を第1の力として使用し、第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。
【0018】
第2の態様によれば、本願の一実施形態は、車両サスペンションの制御方法を提供する。車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、第1の構成要素は、車両サスペンションが支える構成要素であり、第2の構成要素は、車両サスペンション及び第1の構成要素を支えるように構成され、車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含み、制御方法は、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定して、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の変位を制御するステップを含む。
【0019】
第2の態様に関して、第1の可能な実施態様では、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えるステップは、具体的には、第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップであり、第1の加速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の加速度である。
【0020】
第2の態様の第1の可能な実施態様に関して、第2の可能な実施態様では、第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップは、具体的には、第1の積及び第2の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップであり、第2の積は、第1の速度と第2のプリセット制御パラメータとの積であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0021】
第2の態様の第2の可能な実施態様に関して、第3の可能な実施態様では、第1の積及び第2の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップは、具体的には、第1の積、第2の積、及び第3の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップを含み、第3の積は、相対速度と可変ダンパーの第1の減衰係数との積であり、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である。
【0022】
第2の態様の第1の可能な実施態様から第3の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第4の可能な実施態様では、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップは、具体的には、第1の積及び第4の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップであり、第4の積は、基準加速度と第1のプリセット制御パラメータとの積である。
【0023】
第2の態様及び第2の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第5の可能な実施態様では、この方法は、第1の力及び相対速度に基づいて目標駆動電流値を決定するステップであって、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である、決定するステップと;目標駆動電流値に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号を可変ダンパーの駆動回路に送信することにより、可変ダンパーの駆動回路は、駆動信号に基づいて、その値が目標駆動電流値となる目標駆動電流を可変ダンパーに出力するステップと;をさらに含む。
【0024】
第2の態様及び第2の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第6の可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい。相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0025】
第2の態様の第6の可能な実施態様に関して、第7の可能な実施態様では、この方法は、相対速度と第1の速度との積がゼロ以下である場合に、相対速度と可変ダンパーの第2の減衰係数とに基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定するステップをさらに含む。
【0026】
第2の態様及び第2の態様の前述の可能な実施態様のいずれか1つに関して、第8の可能な実施態様では、この方法は、第1の力が可変ダンパーの最大減衰力よりも大きい場合に、可変ダンパーの最大減衰力を第1の力として使用するステップをさらに含む。
【0027】
第3の態様によれば、本願の一実施形態は、車両サスペンションを提供する。車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、第1の構成要素は、車両サスペンションが支える構成要素であり、第2の構成要素は、車両サスペンション及び第1の構成要素を支えるように構成され、車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含む。可変ダンパーは、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて第1の構成要素に第1の力を与えるように構成される。
【0028】
第4の態様によれば、本願の一実施形態は、車両サスペンションの制御装置を提供する。制御装置は、トランシーバ、プロセッサ、及びメモリを含み、トランシーバ、プロセッサ、及びメモリは、バスシステムを使用して接続される。
【0029】
メモリは、命令を格納するように構成される。
【0030】
プロセッサは、メモリに格納された命令を呼び出して、第2の態様又は第2の態様の任意の可能な実施態様の方法ステップを実行するように構成される。
【0031】
第5の態様によれば、本願の一実施形態は、コンピュータ可読命令を含むコンピュータプログラム製品を提供する。コンピュータ可読命令が1つ又は複数のプロセッサ上で実行されると、第2の態様の又は第2の態様の任意の可能な実施態様の方法ステップが実行される。
【0032】
第6の態様によれば、本願の一実施形態は、コンピュータ可読命令を含むコンピュータ記憶媒体をさらに提供する。コンピュータ可読命令が1つ又は複数のプロセッサ上で実行されると、第2の態様又は第2の態様の任意の可能な実施態様の方法ステップが実行される。
【0033】
本願の複数の態様の実施態様及び有利な効果は、互いに参照され得ることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】車両の概略構造図である。
図2】車両サスペンションの概略構造図である。
図3】本願の一実施形態による車両サスペンションの制御システムの概略図である。
図4】本願の一実施形態による車両サスペンションの等価モデルの概略図である。
図5】本願の一実施形態による車両サスペンションの制御方法のモデルの概略図である。
図6】本願の一実施形態による車両サスペンションの出力特性の概略図である。
図7】本願の一実施形態による車両サスペンションの制御方法の別のモデルの概略図である。
図8】本願の一実施形態による第1の加速度の波形の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下では、添付の図面を参照して、本願の技術的解決策の実施態様についてさらに詳細に説明する。
【0036】
図3は、本願の一実施形態による車両サスペンションの制御システムの概略図である。図3に示されるように、車両サスペンションの制御システムは、第1の構成要素310、第2の構成要素302、車両サスペンション303、センサ304、プロセッサ305、及び駆動回路306を含むが、これらに限定されるものではない。車両サスペンション303は、第1の構成要素310と第2の構成要素302との間に配置される。
【0037】
第1の構成要素310は、車両サスペンション303の一端に接続され、車両サスペンション303は、第1の構成要素310を支える(換言すれば、第1の構成要素310は、車両サスペンション303が支える構成要素である)。オプションとして、第1の構成要素310は、フレーム(すなわち、本体)、エンジン、トランスミッション等を含む、ばね上質量とも呼ばれ得る。
【0038】
第2の構成要素302は、車両サスペンション303の他端に接続され、第2の構成要素302は、車両サスペンション303及び第1の構成要素310を支えるように構成される。オプションとして、第2の構成要素302は、ばね下質量とも呼ばれ得る。ばね下質量とは、車両のばね上質量体以外の、ホイール(すなわち、タイヤ)、ホイールリム、ブレーキディスク、キャリパー、スイングアーム、ドライブハーフシャフト等を含む部分を指す。
【0039】
車両サスペンション303は、第1の構成要素310と第2の構成要素302との間に接続された可変ダンパー303a(可変減衰ショックアブソーバーとも呼ばれ得る)を含む。可変ダンパー303aの特定の構造については、図2を参照されたい。可変ダンパー303aは、例えば、磁気レオロジーダンパー又は電気レオロジーダンパーであり得、異なる電流値に基づいて、第1の構成要素310に異なる第1の力を与え得る。
【0040】
本願のこの実施形態における車両は、電気自動車、燃料車両、オートバイ等であり得ることに留意されたい。例えば、車両は電気自動車である。電気自動車は4つの車輪を含み、各車輪に対応して1つの車両サスペンションが配置され、車両サスペンションは互いに独立していてもよい。この場合に、本願のこの実施形態で提供される車両サスペンションは、車両に配置された全ての車両サスペンションのいずれか1つとして理解され得る。
【0041】
センサ304は、第1の構成要素310及び/又は第2の構成要素302の1つ又は複数の状態変数、例えば、第1の構成要素310及び/又は速度第2の構成要素302の速度及び/又は加速度を感知するように構成される。
【0042】
いくつかの実行可能な実施態様では、センサ304は、第1の速度センサ及び第2の速度センサを含む。第1の速度センサは、車両の高さ方向における第1の構成要素310の速度を感知し、車両の高さ方向における第1の構成要素310の速度をプロセッサ305又は微分(differential:差動)回路の入力端部に送信するように構成される。この場合に、プロセッサ305又は微分回路は、車両の高さ方向における第1の構成要素310の速度に基づいて、車両の高さ方向における第1の構成要素310の加速度(すなわち、第1の加速度)を計算することができる。例えば、第1の速度センサは、第1の構成要素310と車両サスペンション303との間の接続部に配置され得る。第2の速度センサは、車両の高さ方向における第2の構成要素302の速度を感知し、車両の高さ方向における第2の構成要素302の速度をプロセッサ305に送信するように構成される。例えば、第2の速度センサは、車両サスペンション303と第2の構成要素302との間の接続部に配置され得る。
【0043】
さらに、センサ304は、加速度センサをさらに含み、加速度センサは、第1の構成要素310の第1の加速度を感知し、第1の加速度をプロセッサ305に送信するように構成される。例えば、加速度センサは、第1の構成要素310と車両サスペンション303との間の接続部に配置され得る。
【0044】
本願の実施形態で提供される車両サスペンションの制御方法は、プロセッサ305によって実行され得る。例えば、プロセッサ305はセンサ304に接続され、プロセッサ305は、センサ304によって送信された信号、例えば第1の構成要素310及び第2の構成要素302の状態変数を受信し、センサ304によって送信された受信信号に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素310に与える第1の力を決定することができる。さらに、プロセッサ305は、第1の力に基づいて、可変ダンパーの目標駆動電流値をリアルタイムで計算し、目標駆動電流値に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号を駆動回路306に送信する。
【0045】
プロセッサ305は、中央処理装置(CPU)、別の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、別のプログラマブル論理装置、ディスクリートゲート、トランジスタ論理装置、ディスクリートハードウェアコンポーネント等であり得る。
【0046】
駆動回路306の入力端部は、プロセッサ305に接続され、駆動回路306の出力端部は、車両サスペンション303の可変ダンパー303aに接続される。駆動回路306は、プロセッサ305によって送信された駆動信号を受信し、駆動信号に基づいて、目標駆動電流を可変ダンパー303aに出力することができる。目標駆動電流値は、可変ダンパー303aが第1の力を出力するために対応して必要とされる電流値として理解され得る。
【0047】
駆動回路306は、電子素子を含むことができ、例えば、線形電源又はスイッチモード電源であり得る。駆動回路306がスイッチモード電源の降圧回路である例では、駆動信号はパルス幅変調(PWM)波であり得、PWM波は、降圧回路の各スイッチングトランジスタの導通期間を制御するために使用され、それによって、駆動回路306は、目標駆動電流を出力する。
【0048】
図4は、本願の一実施形態による車両サスペンションの等価モデルの概略図である。図4に示されるように、K2は車両サスペンションの弾性要素を表し、D2は車両サスペンションの可変ダンパーを表し、K1は車輪を表す。車両の高さ方向における第1の構成要素401の変位がZとして表され、車両の高さ方向における第2の構成要素402の変位がZとして表される。
【0049】
弾性要素K2及び可変ダンパーD2のそれぞれの両端は、第1の構成要素401及び第2の構成要素402に別々に接続される。弾性要素K2及び可変ダンパーD2は、第1の構成要素401を支えるように構成される。車輪K1は、第2の構成要素402の一部であり、構成要素、例えば車輪以外の第1の構成要素401、弾性要素K2、及び可変ダンパーD2を支えるように構成される。
【0050】
理解を容易にするために、スカイフックダンパーが、第1の構成要素401と固定位置のスカイフックとの間に配置されると想定する。図5は、本願の実施形態による車両サスペンションの制御方法のモデルの概略図である。図5に示されるように、スカイフックもスカイフックダンパーも本物ではなく、スカイフック及びスカイフックダンパーは、第1の構成要素401とスカイフックとの間の相対運動を抑制する方法を理解するのを助けるために使用され得る。換言すれば、スカイフック及びスカイフックダンパーは、第1の構成要素401のスイング(揺れ)度合い(swing degree)を測定すると想定される。例えば、第1の構成要素401は、スカイフックに接近している(すなわち、車両の高さ方向に上向きにスイングする)。第1の構成要素401のスイングを制限するために、スカイフックダンパーは、第1の構成要素401に押し力を与えて、第1の構成要素401がスカイフックに接近するのを防ぐことができると想定される。しかしながら、スカイフックダンパーは仮想であるため、特定の実施態様では、可変ダンパーD2は、第1の構成要素401に引張り力を与えて、第1の構成要素401がスカイフックに接近するのを防ぐ。別の例では、第1の構成要素401は、スカイフックから離れている(換言すれば、車両の高さ方向において下向きにスイングする)。第1の構成要素401のスイングを制限するために、スカイフックダンパーは、第1の構成要素401に引張り力を与えて、第1の構成要素401がスカイフックから離れるのを防ぐことができると想定される。特定の実施態様では、可変ダンパーD2は、第1の構成要素401に押し力を与えて、第1の構成要素401がスカイフックから離れるのを防ぐ。しかしながら、可変ダンパーD2は押し力を与えることができず、第1の構成要素401がスカイフックから離れるのを防ぐために可変ダンパーD2の既存の剛性を維持することしかできないことが理解され得る。
【0051】
プロセッサは、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度及び第1の速度を取得し、相対速度と第1の速度との積と、ゼロとの間の大きさの関係を決定することができる。本願のこの実施形態における相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度であることに留意されたい。
【0052】
いくつかの実行可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい場合に、可変ダンパーD2は、第1の構成要素401の第1の加速度に基づいて、第1の構成要素401に第1の力を与えることができる。
【0053】
特定の実施態様では、可変ダンパーD2はプロセッサに接続され、プロセッサは、第1の構成要素401の第1の加速度に基づいて、可変ダンパーD2が第1の構成要素401に与える第1の力を計算する。例えば、プロセッサは、第1の加速度に第1のプリセット制御パラメータを乗算して、第1の積(すなわち、可変ダンパーD2が第1の構成要素401に与える第1の力)を求める。式の表現は次の通りである。
【数1】

ここで、Cは第1のプリセット制御パラメータであり、
【数2】

は第1の構成要素401の第1の加速度である。
【数3】

はZの2次微分表現である。換言すれば、第1の加速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素401の変位Zを時間に関して2回微分することによって求められ得る。
【0054】
さらに、車両の運転プロセスにおける衝突は、主に第1の構成要素401の加速度によって測定される。第1の構成要素401の加速度を基準加速度に近くなるように制御するために、プロセッサは、第1のプリセット制御パラメータに基準加速度を乗算して、第4の積を求める。プロセッサは、第1の積及び第4の積に基づいて第1の力を決定する。式の表現は次の通りである。
【数4】

ここで、
【数5】

は基準加速度である。例えば、
【数6】

は0にプリセットされ得る。
【0055】
オプションとして、いくつかの実行可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロ以下である場合に、可変ダンパーD2は、相対速度と可変ダンパーD2の第2の減衰係数とに基づいて、第1の構成要素401に第1の力を与えることができる。この場合に、相対速度に第2の減衰係数を乗算して、第1の力を求める。式の表現は次の通りである。
【数7】

ここで、Cは、圧縮状態の可変ダンパーの固有係数(すなわち、第2の減衰係数)であり、
【数8】

は、車両の高さ方向における第1の構成要素401の速度(すなわち、第1の速度)であり、
【数9】

は、車両の高さ方向における第2の構成要素402の速度であり、
【数10】

は、車両の高さ方向における第2の構成要素402に対する第1の構成要素401の速度を表す。
【0056】
式2及び式3を組み合わせて、以下の式表現を得ることができる。
【数11】
【0057】
いくつかの実行可能な実施態様では、第1の構成要素401の第1の加速度は、加速度センサによって感知される。例えば、加速度センサは、第1の構成要素401と、可変ダンパーD2及び/又は弾性要素K2との間の接続部に配置される。加速度センサは、第1の構成要素401の第1の加速度を感知し、加速度センサが感知した第1の加速度をプロセッサに送信することができる。
【0058】
オプションとして、いくつかの実行可能な実施態様では、第1の構成要素401の第1の加速度は、速度センサが感知を実行した後に、プロセッサによって計算される。例えば、速度センサは、第1の構成要素401と、可変ダンパーD2及び/又は弾性要素K2との間の接続部に配置される。速度センサは、車両の高さ方向における第1の構成要素401の速度を感知し、この速度をプロセッサ又は微分ユニットに送信することができる。プロセッサ又は微分ユニットは、車両の高さ方向における第1の構成要素401の速度に対する微分演算を時間に関して実行して、車両の高さ方向の第1の構成要素401の第1の加速度を求める。
【0059】
さらに、プロセッサは、第1の力及び相対速度に基づいて、目標駆動電流値を決定することができる。いくつかの実行可能な実施態様では、プロセッサは、車両サスペンションの出力特性を得ることができ、車両サスペンションの出力特性は、相対速度、第1の力、及び駆動電流の間の関係として理解され得る。換言すれば、車両サスペンションについて、相対速度が異なる場合に、第1の力と駆動電流との間にマッピング関係がある。
【0060】
例えば、車両サスペンションの出力特性については、図6を参照されたい。図6は、本願の一実施形態による車両サスペンションの出力特性の概略図である。相対速度は速度センサによって感知され得る。例えば、第1の構成要素401と、可変ダンパーD2及び/又は弾性要素K2との間の接続部に第1の速度センサを配置して、第1の構成要素401の速度を感知する。第2の構成要素402と、可変ダンパーD2及び/又は弾性要素K2との間の接続部に第2の速度センサを配置して、第2の構成要素402の速度を感知する。第1の構成要素401の速度の方向を正の方向として使用して、第1の構成要素401の速度から第2の構成要素402の速度を差し引いて、第2の構成要素402に対する第1の構成要素401の速度を求める。プロセッサは、第1の力及び相対速度に対してフィッティングを実行する。例えば、図6に示される2次元座標系において第1の力と相対速度との交点(すなわち、図6に示される黒い点)が計算される。この場合に、黒い点は電流1の曲線上に正確に配置され、電流1の大きさが目標駆動電流値である。別の例では、前述の交点が図6に示されるどの曲線上にも配置されておらず、2つの曲線の間に位置している場合に、交点に近い2つの曲線に対応する電流値の合計の半分を目標駆動電流値として使用するか、又は交点に最も近い曲線に対応する電流値を目標駆動電流値として得ることができる。第1の力及び相対速度に基づいて目標駆動電流値を決定する方法の例示的な説明のみが本明細書で提供され、説明は、本願のこの実施形態を限定するものとして解釈すべきではないことが理解され得る。
【0061】
いくつかの実行可能な実施態様では、車両サスペンションの出力特性は、具体的に表として表され得る。この表には、複数の第1の力、複数の相対速度、及び複数の目標駆動電流値が含まれる。表の各データは、複数のテストを通じて得られる。例を表1に示す。
【表1】
【0062】
例えば、プロセッサが、計算を通じて、第1の力が20Nであり、得られた相対速度が5m/秒であることを学習した場合に、プロセッサは、表1を照会することによって、目標駆動電流値が4Aであると決定することができる。オプションとして、第1の力が15Nであり、相対速度が5m/sである場合に、プロセッサは、表1で対応する目標駆動電流を見つけることができず、プロセッサは、第1の力のプリセット範囲内で検索を実行して目標駆動電流値を決定する、又はプロセッサは、相対速度のプリセット範囲内で検索を実行して目標駆動電流値を決定することができる。本願のこの実施形態では、第1の力及び相対速度に対してデータ処理を実行する方法が制限されないことに留意されたい。
【0063】
オプションとして、いくつかの実行可能な実施態様では、車両サスペンションの出力特性は、式によって具体的に表すことができる。式は、複数のテストを通じて得られた複数の第1の力、複数の相対速度、及び複数の目標駆動電流値に対してフィッティングを実行することによって得ることができる。独立変数は第1の力及び相対速度であり、従属変数は目標駆動電流値である。プロセッサは、計算した第1の力及び得られた相対速度を式に代入して、目標駆動電流値を計算することができる。
【0064】
プロセッサは、目標駆動電流値に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号を可変ダンパーD2の駆動回路に送信する。駆動回路の入力端部がプロセッサに接続され、駆動回路の出力端部が可変ダンパーD2に接続される。駆動回路は、駆動信号に基づいて、その値が目標駆動電流値となる目標駆動電流を可変ダンパーD2に出力する。例えば、駆動回路は、具体的には、線形電源又はスイッチモード電源、例えば降圧回路であり得る。この場合に、駆動信号はPWM波であり、PWM波は、降圧回路の各スイッチングトランジスタの導通時間を制御し、それによって、降圧回路は、目標駆動電流を可変ダンパーD2に出力する。
【0065】
可変ダンパーD2は、目標駆動電流に基づいて、第1の構成要素401に第1の力を与えることができる。いくつかの実行可能な実施態様では、第1の力を計算した後に、プロセッサは、第1の力を可変ダンパーD2の最大減衰力とさらに比較する。可変ダンパーD2の最大減衰力が、可変ダンパーD2の固有の属性であり、固定値であることが理解され得る。第1の力が可変ダンパーD2の最大減衰力よりも大きい場合に、可変ダンパーD2は、可変ダンパーD2の最大減衰力を第1の力として使用し、第1の構成要素401に第1の力を与える。換言すれば、プロセッサは、可変ダンパーD2の最大減衰力を第1の力として使用して、目標駆動電流値を決定する。
【0066】
減衰力を変化させるために2つの減衰係数のうちの1つを選択する従来技術とは異なり、本願のこの実施形態では、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力が直接制御され、第1の構成要素の第1の加速度は、閉ループ制御を実行するために第1の力の制御プロセスに導入されて、第1の構成要素の第1の加速度に対する正確な制御を実施し、それにより、車両の運転プロセスにおける衝突を効果的に低減し、車両の乗り心地を向上させる。
【0067】
図7は、本願の一実施形態による車両サスペンションの制御方法の別のモデルの概略図である。図7に示されるように、K4は車両サスペンションの弾性要素を表し、D3は車両サスペンションの可変ダンパーを表し、K3は車輪を表す。車両の高さ方向における第1の構成要素701の変位はZとして表され、車両の高さ方向における第2の構成要素702の変位はZとして表される。各構成要素の機能については、図4を参照して提供される車両のモデルの前述の説明を参照されたい。詳細について、ここでは再び説明しない。
【0068】
プロセッサは、相対速度及び第1の速度を取得し、相対速度と第1の速度の積と、ゼロとの間の大きさの関係を決定する。
【0069】
いくつかの実行可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい場合に、プロセッサは、第1の加速度に第1のプリセット制御パラメータを乗算して、第1の積を求める。プロセッサは、車両の高さ方向における第1の構成要素701の速度(すなわち、第1の速度)に第2のプリセット制御パラメータを乗算して、第2の積を求める。この場合に、プロセッサは、第1の積及び第2の積に基づいて、可変ダンパーD3が第1の構成要素701に与える第1の力を決定することができる。式の表現は次の通りである。
【数12】

ここで、Cは第1のプリセット制御パラメータであり、Cは第2のプリセット制御パラメータであり、
【数13】

は第1の構成要素701の第1の加速度であり、
【数14】

は第1の構成要素701の第1の速度である。
【0070】
さらに、車両の運転プロセスにおける衝突は、主に第1の構成要素701の加速度によって測定される。第1の構成要素701の加速度を基準加速度に近づけるように制御するために、プロセッサは、第1のプリセット制御パラメータに基準加速度を乗算して、第4の積を求める。プロセッサは、第1の積、第2の積、及び第4の積に基づいて第1の力を決定する。式の表現は次の通りである。
【数15】

ここで、
【数16】

は基準加速度である。例えば、
【数17】

は0にプリセットされ得る。
【0071】
オプションとして、いくつかの実行可能な実施態様では、相対速度と第1の速度との積がゼロ以下である場合に、可変ダンパーD3は、相対速度と可変ダンパーD3の第2の減衰係数とに基づいて、第1の構成要素701に第1の力を与え得る。この場合に、相対速度に第2の減衰係数を乗算して、第1の力を求める。式の表現は次の通りである。
【数18】

ここで、
【数19】

は、車両の高さ方向における第2の構成要素702の速度であり、
【数20】

は、車両の高さ方向における第2の構成要素702に対する第1の構成要素701の速度を表す。
【0072】
式6及び式7を組み合わせて、以下の式の表現を得ることができる。
【数21】
【0073】
第1の加速度及び第1の構成要素701の第1の速度及び/又は第2の構成要素の速度を取得し、第1の力に基づいて目標駆動電流値を決定する特定の実施態様については、図4図6に関して説明した前述の実施形態を参照すべきことが理解され得る。詳細については、ここで再び説明しない。
【0074】
本願のこの実施形態では、第1の構成要素の第1の加速度を第1の力の制御プロセスに導入することに加えて、第1の構成要素の第1の加速をより正確に制御できるように、第1の構成要素の第1の速度が導入され、それにより、車両の乗り心地をさらに向上させる。
【0075】
いくつかの実行可能な実施態様では、可変ダンパーD3の減衰力によって引き起こされる第1の力への影響がさらに考慮され得る。特定の実施態様では、プロセッサは、可変ダンパーD3の第1の減衰係数に相対速度を乗算して、第3の積を求める。プロセッサは、第1の積、第2の積、第3の積、及び第4の積に基づいて第1の力を決定する。式の表現は次の通りである。
【数22】

ここでCは、引き伸ばされた状態の可変ダンパーの固有の係数(すなわち、第1の減衰係数)である。
【0076】
この場合に、式9に基づいて、式8は次のように更新される。
【数23】
【0077】
本願のこの実施形態では、可変ダンパーの減衰力が考慮される。第1の構成要素の第1の加速度及び第1の構成要素の第1の速度を第1の力の制御プロセスに導入することに加えて、第1の構成要素の第1の加速度をより正確に制御できるように、可変ダンパーの減衰力が導入され、それにより、車両の乗り心地をさらに向上させる。
【0078】
本願の本実施形態で提供される車両の乗り心地が向上することを説明するために、本願の発明者は、従来技術の2状態スカイフック制御方法を使用して可変ダンパーの2つの減衰係数のうちの1つを選択することと、本願の実施形態で提供される第1の構成要素の第1の加速度、第1の構成要素の第1の速度、及び可変ダンパーの減衰力を導入することとの間の比較実験を行った。具体的な実験結果については、図8を参照されたい。図8は、本願の一実施形態による第1の加速度の波形の概略図である。図8に示されるように、点線の波形は、従来技術を使用した場合の第1の加速度の波形であり、実線の波形は、本願の実施形態を使用した場合の第1の加速度の波形である。車両の乗り心地は、第1の構成要素の第1の加速度によって測定され得ることが理解され得る。第1の加速度が小さいほど、第1の構成要素のスイング振幅がより小さくなり、車両の衝突度合いが低くなり、乗り心地が高いことを示す。逆に、第1の加速度が大きいほど、第1の構成要素のスイング振幅がより大きくなり、車両の衝突度合いが大きくなり、乗り心地が低下することを示す。これは、図8に示される波形図から、点線の波形の加速度変化振幅が実線の波形の加速度変化振幅を超えている、換言すれば、従来技術における車両衝突度合いは、本願の実施形態における車両衝突度合いよりも高いことが分かり得る。従って、本願の実施形態で提供される車両の乗り心地は高い。
【0079】
本願の一実施形態は、車両サスペンションの制御方法を提供する。この方法は、図1図7において説明した車両に適用可能である。特定の実施態様では、この方法は、プロセッサによって実行され得る。この方法には、次のステップが含まれる。
【0080】
プロセッサは、第1の構成要素の第1の加速度に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定して、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の変位を制御する。
【0081】
いくつかの実行可能な実施態様では、プロセッサは、第1の加速度と第1のプリセット制御パラメータとの第1の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定し、ここで、第1の加速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の加速度である。
【0082】
さらに、プロセッサは、第1の積及び第2の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定することができ、ここで、第2の積は、第1の速度と第2のプリセット制御パラメータとの積であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0083】
さらに、プロセッサは、第1の積、第2の積、及び第3の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定することができ、ここで、第3の積は、相対速度と可変ダンパーの第1の減衰係数との積であり、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である。
【0084】
いくつかの実行可能な実施態様では、プロセッサは、第1の積及び第4の積に基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定することができ、ここで、第4の積は、基準加速度と第1のプリセット制御パラメータとの積である。
【0085】
オプションとして、いくつかの実行可能な実施態様では、方法はさらに以下を含み得る。
【0086】
プロセッサは、第1の力及び相対速度に基づいて、目標駆動電流値を決定することができ、ここで、相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度である。
【0087】
プロセッサは、目標駆動電流値に基づいて駆動信号を生成し、駆動信号を可変ダンパーの駆動回路に送信し、それによって、可変ダンパーの駆動回路は、駆動信号に基づいて、その値が目標駆動電流値である目標駆動電流を可変ダンパーに出力する。
【0088】
例えば、相対速度と第1の速度との積がゼロより大きい。相対速度は、車両の高さ方向における第2の構成要素に対する第1の構成要素の速度であり、第1の速度は、車両の高さ方向における第1の構成要素の速度である。
【0089】
さらに、相対速度と第1の速度との積がゼロ以下である場合に、プロセッサは、相対速度と可変ダンパーの第2の減衰係数とに基づいて、可変ダンパーが第1の構成要素に与える第1の力を決定する。
【0090】
いくつかの実行可能な実施態様では、第1の力が可変ダンパーの最大減衰力よりも大きい場合に、プロセッサは、可変ダンパーの最大減衰力を第1の力として使用する。
【0091】
本願の一実施形態は、車両サスペンションをさらに提供する。車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に配置され、第1の構成要素は、車両サスペンションが支える構成要素であり、第2の構成要素は、車両サスペンション及び第1の構成要素を支えるように構成される。車両サスペンションは、第1の構成要素と第2の構成要素との間に接続された可変ダンパーを含み、可変ダンパーは、図3図8で説明した機能を実現するように構成され得る。
【0092】
本願の一実施形態は、車両サスペンションの制御装置をさらに提供する。制御装置には、トランシーバ、プロセッサ、及びメモリが含まれる。トランシーバ、プロセッサ、及びメモリは、バスシステムを使用して接続される。メモリは、命令を格納するように構成され、プロセッサは、メモリに格納された命令を呼び出して、図3図8で説明した機能実現するように構成される。
【0093】
前述の「第1の」及び「第2の」という用語は、説明の目的でのみ使用され、相対的な重要性を示す又は暗示するものとして理解することができないことに留意されたい。
【0094】
当業者は、方法の実施形態のステップの全部又は一部が、関連するハードウェアを指示するプログラムによって実施され得ることを理解し得る。プログラムは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶することができる。プログラムが実行されると、方法の実施形態のステップが実行される。前述の記憶媒体には、読み取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、磁気ディスク、又は光ディスク等のプログラムコードを記憶できる任意の媒体が含まれる。
【0095】
前述の統合ユニットがソフトウェア機能ユニットの形態で実現され、独立した製品として販売又は使用される場合に、統合ユニットは、コンピュータ可読記憶媒体に記憶され得る。そのような理解に基づいて、本発明の技術的解決策は、本質的に、又は従来技術に対する寄与する部分がソフトウェア製品の形態で実現され得る。コンピュータソフトウェア製品は、記憶媒体に記憶され、コンピュータ装置(パーソナルコンピュータ、サーバ、又はネットワーク装置であり得る)に、本発明の実施形態で提供される方法の全て又はいくつかのステップを実行するように指示するためのいくつかの命令を含む。前述の記憶媒体には、プログラムコードを記憶することができる任意の媒体、例えば、モバイル記憶装置、ROM、RAM、磁気ディスク、又は光ディスクが含まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8