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特許7293344教師なし機械学習による道路オブジェクトの位置特定のためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】教師なし機械学習による道路オブジェクトの位置特定のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G06T 7/00 20170101AFI20230612BHJP
【FI】
G06T7/00 650A
G06T7/00 350B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021513423
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-04
(86)【国際出願番号】 EP2019074125
(87)【国際公開番号】W WO2020053221
(87)【国際公開日】2020-03-19
【審査請求日】2022-03-28
(31)【優先権主張番号】1858120
(32)【優先日】2018-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】398050939
【氏名又は名称】コンティネンタル オートモーティヴ フランス
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive France
【住所又は居所原語表記】1, Avenue Paul Ourliac, F-31100 Toulouse, France
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
【住所又は居所原語表記】Vahrenwalder Strasse 9, D-30165 Hannover, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シルヴィア ジル カサルス
【審査官】伊知地 和之
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0189601(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0004210(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第102997926(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00 - 7/90
G06V 10/00 - 20/90
G06V 30/418
G06V 40/16
G06V 40/20
G08G 1/00 - 99/00
CSDB(日本国特許庁)
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路網の一部に関連付けられた、少なくとも1つの道路オブジェクト(110)の位置を特定するためのシステムであって、前記システムは、道路情報受信ユニット(210)、道路情報処理ユニット(220)、および計算ユニット(230)を備え、
・前記道路情報受信ユニット(210)が、前記道路オブジェクト(110)に関する複数のジオロケーション道路情報項目を受信するように構成されており、前記複数の道路情報項目が、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた少なくとも1つのセンサから取得され、
・前記道路情報処理ユニット(220)が、前記複数の道路情報項目から前記道路オブジェクト(110)のタイプを識別し、前記道路オブジェクト(110)に関連付けられた複数の地理的座標を計算するように構成されており、各地理的座標が、前記複数の道路車両のうちの1つに関連付けられた前記複数の道路情報項目から計算され、
・前記計算ユニット(230)が、
‐第1の作成ステップ(310)において、道路オブジェクト(110)のタイプごとに、前記道路オブジェクト(110)の前記タイプと、関連付けられた前記複数の地理的座標とを含む、第1の特徴ベクトルを作成し、
‐第1の分割ステップ(320)において、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第1の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のクラスに分割する
ように構成されており、
前記計算ユニット(230)が、さらに、前記分割ステップで決定されたクラスごとに、
・第2の作成ステップ(330)において、前記クラスの各地理的座標ごとに少なくとも1つの成分を含む第2の特徴ベクトルを作成し、各成分は、対応する地理的座標に関連付けられた前記道路オブジェクト(110)の観測方向の方位角を表し、
・第2の分割ステップ(340)において、分布密度に基づく前記教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第2の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のサブクラスに分割し、
算ステップ(350)において、サブクラスごとに、前記サブクラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算し、中心傾向の前記尺度が、前記道路オブジェクト(110)の観測方向における前記道路オブジェクト(110)の位置を表す、
ように構成されている、システム。
【請求項2】
前記計算ユニット(230)が、前記第1の作成ステップ(310)の第1の分離ステップにおいて、各地理的座標を、緯度に関する位置成分と経度に関する位置成分とに分離するようにさらに構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記計算ユニット(230)が、前記第2の作成ステップ(330)の第2の分離ステップ(331)において、各方位角を、正弦に関する角度成分と余弦に関する角度成分とに分離するようにさらに構成されている、請求項1または2記載のシステム。
【請求項4】
道路網(120)の一部に関連付けられた、少なくとも1つの道路オブジェクト(110)の位置を特定するための方法であって、道路オブジェクト(110)のタイプが、前記道路オブジェクト(110)に関する複数のジオロケーション道路情報項目から識別され、前記複数の道路情報項目が、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた少なくとも1つのセンサから取得され、前記道路オブジェクト(110)が、複数の地理的座標にさらに関連付けられており、各地理的座標が、前記複数の道路車両のうちの1つに関連付けられた前記複数の道路情報項目から計算され、前記方法が、
・道路オブジェクト(110)のタイプごとに、前記道路オブジェクト(110)の前記タイプと、関連付けられた前記複数の地理的座標とを含む、第1の特徴ベクトルを作成する、第1の作成ステップ(310)と、
・分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、前記第1の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のクラスに分割する、第1の分割ステップ(320)と、
を含み、
前記方法が、さらに、決定されたクラスごとに、前記分割ステップにおいて、
・前記クラスの地理的座標ごとに少なくとも1つの成分を含む第2の特徴ベクトルを作成し、各成分が、対応する地理的座標に関連付けられた前記道路オブジェクト(110)の観測方向の方位角を表す、第2の作成ステップ(330)と、
・分布密度に基づく前記教師なし分類アルゴリズムに基づいて、前記第2の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のサブクラスに分割する、第2の分割ステップ(340)と
ブクラスごとに、前記サブクラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度をさらに計算し、中心傾向の前記尺度が、前記道路オブジェクト(110)の観測方向における前記道路オブジェクト(110)の位置を表す、計算ステップ(350)と、
を含む、方法。
【請求項5】
前記第1の作成ステップ(310)が、各地理的座標を緯度に関する位置成分と経度に関する位置成分とに分離する第1の分離ステップ(311)をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記第2の作成ステップ(330)が、各方位角を正弦に関する角度成分と余弦に関する角度成分とに分離する第2の分離ステップ(331)をさらに含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
分布密度に基づく前記教師なし分類アルゴリズムが、DBSCAN、OPTICS、CLARANS、DENCLUEおよびCLIQUEから選択されるタイプである、請求項から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
サブクラスの中心傾向の前記尺度が、前記サブクラスの全ての要素の平均ベクトルであるセントロイドおよび前記サブクラスの最も中心的な要素であるメドイドから選択される、請求項から7までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路網の一部に関連付けられた道路オブジェクトを特定する分野に関する。より具体的には、道路網の一部に関連付けられた少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を正確に特定するためのシステム、方法、および一連のコンピュータプログラムに関する。
【0002】
多くのアプリケーションでは、垂直方向の道路標識オブジェクト(例えば、交通標識)および水平方向の道路標識オブジェクト(例えば、道路標示)の正確な位置特定を必要とする。例えば、運転支援、道路資産管理、交通安全、または3Dの地理的ナビゲーションのためのマルチメディアツールの開発を挙げることができる。
【0003】
こうした文脈において、リアルタイムで地図システムを更新することは、「コネクテッド」自動運転道路車両のナビゲーションにとって重要な特徴の1つである。ますます多くの道路車両に、例えば、道路の交通標識または標示の検出のためのカメラ、減速バンプまたは穴の検出のためのサスペンションセンサ、緊急制動または回避による事故の検出、道路上の氷、砂利またはオブジェクトの存在の検出などの、道路からの情報の検出を可能にするカメラ、レーダー、LIDARおよび様々なセンサが装備されている。道路車両の地理的位置(例えば、GPSの位置)と組み合わされた、これらのセンサからの情報の伝送により、地図システムをリアルタイムで更新することが可能になる。
【0004】
しかし、GPSタイプのジオロケーションシステムが依然として不正確であること、また幾つかの検出が偽陽性でありうること、という2つの問題のために、直截の実装が妨げられている。
【0005】
そのため、道路オブジェクトの実際の位置について、幾らかの不確実性があり、これは上述したアプリケーションでは許容されない。
【0006】
発明の概要
したがって、本発明は、上述した欠点を少なくとも部分的に解消することを目的とする。そのために、本発明の第1の態様では、本発明は、道路網の一部に関連付けられた、少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を特定するためのシステムを提案する。
【0007】
最後に、本発明の第2の態様では、少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を特定するための方法が提案されており、当該方法は、本発明の第1の態様のシステムで使用可能である。
【0008】
そのために、本発明は、道路網の一部に関連付けられた、少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を特定するためのシステムに関する。システムは、道路情報受信ユニットと、道路情報処理ユニットと、計算ユニットとを備える。道路情報受信ユニットは、道路オブジェクトに関する複数のジオロケーション道路情報項目を受信するように構成されており、複数の道路情報項目は、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた少なくとも1つのセンサから取得される。道路情報処理ユニットは、複数の道路情報項目から道路オブジェクトのタイプを識別し、道路オブジェクトに関連付けられた複数の地理的座標を計算するように構成されており、各地理的座標は、複数の道路車両のうちの1つに関連付けられた複数の道路情報項目から計算される。計算ユニットは、
・第1の作成ステップにおいて、道路オブジェクトのタイプごとに、道路オブジェクトのタイプと、関連する複数の地理的座標とを含む第1の特徴ベクトルを作成し、
・第1の分割ステップにおいて、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第1の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を、複数のクラスに分割し、
・計算ステップにおいて、クラスごとに、クラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算し、当該中心傾向の尺度は、道路オブジェクトの位置を表す、
ように構成されている。
【0009】
本発明の1つの特定の実現形態では、計算ユニットは、クラスごとに、
・第2の作成ステップにおいて、クラスの地理的座標ごとに少なくとも1つの成分を含む第2の特徴ベクトルを作成し、各成分は、対応する地理的座標に関連付けられた道路オブジェクトの観測方向の方位角を表し、
・第2の分割ステップにおいて、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第2の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のサブクラスに分割し、
・計算ステップにおいて、サブクラスごとに、サブクラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算し、中心傾向の尺度は、道路オブジェクトの観測方向における道路オブジェクトの位置を表す、
ように構成されている。
【0010】
第1の実施形態によれば、計算ユニットは、第1の作成ステップの第1の分離ステップにおいて、各地理的座標を、緯度に関する位置成分と経度に関する位置成分とに分離するようにさらに構成される。
【0011】
第2の実施形態によれば、計算ユニットは、第2の作成ステップの第2の分離ステップにおいて、各方位角を、正弦に関する角度成分と余弦に関する角度成分とに分離するようにさらに構成される。
【0012】
本発明はまた、道路網の一部に関連付けられた少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を特定するための方法もカバーする。道路オブジェクトのタイプは、道路オブジェクトに関する複数のジオロケーション道路情報項目から識別され、複数の道路情報項目は、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた少なくとも1つのセンサから取得される。道路オブジェクトは、複数の地理的座標にさらに関連付けられており、各地理的座標は、複数の道路車両のうちの1つに関連付けられた複数の道路情報項目から計算される。方法は、
・道路オブジェクトのタイプごとに、道路オブジェクトのタイプと、関連する複数の地理的座標とを含む第1の特徴ベクトルを作成する第1の作成ステップ、
・分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第1の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を、複数のクラスに分割する第1の分割ステップ、および
・クラスごとに、クラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算し、当該中心傾向の尺度は、道路オブジェクトの位置を表す計算ステップ
を含む。
【0013】
本発明の1つの特定の実現形態では、方法は、クラスごとに、
・クラスの地理的座標ごとに少なくとも1つの成分を含む第2の特徴ベクトルを作成し、各成分が、対応する地理的座標に関連付けられた道路オブジェクトの観測方向の方位角を表す第2の作成ステップ、
・分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第2の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のサブクラスに分割し、計算ステップにおいて、サブクラスごとに、サブクラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度をさらに計算し、中心傾向の尺度が、道路オブジェクトの観測方向における道路オブジェクトの位置を表す第2の分割ステップ
をさらに含む。
【0014】
第1の実施形態では、第1の作成ステップは、各地理的座標を緯度に関する位置成分と経度に関する位置成分とに分離する第1の分離ステップをさらに含む。
【0015】
第2の実施形態では、第2の作成ステップは、各方位角を正弦に関する角度成分と余弦に関する角度成分とに分離する第2の分離ステップをさらに含む。
【0016】
システムおよび方法の1つの例示的な実現形態では、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムは、DBSCAN、OPTICS、CLARANS、DENCLUEおよびCLIQUEから選択されるタイプである。
【0017】
システムおよび方法の別の実現形態では、クラスまたはサブクラスの中心傾向の尺度は、セントロイドおよびメドイドから選択される。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下の説明を読むことによりよりよく理解され、これらは、非限定的なものとして、例示の目的で与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】道路の状況を示す図である。
図2】本発明による、図1の道路状況における少なくとも1つの道路オブジェクトの位置を特定するためのシステムを示す図である。
図3図2のシステムの計算ユニットによって実施される方法を示す図である。
【0020】
詳細な説明
簡明性のために、図示している要素は、特に指示がない限り、互いに比較した同じ縮尺で必ずしも描かれていない。
【0021】
先行技術の問題点を克服するために、道路車両のフリートの全体を利用し、収集した様々な情報項目をまとめて、偽陽性を排除し、マスエフェクトによるGPSタイプのシステムの不正確さを補正することが想定されている。
【0022】
より正確には、本発明の一般的な基本方式は、教師なし機械学習を用いて、より詳細には、分布密度(密度ベースのクラスタリング)に基づく教師なし分類を用いて、道路オブジェクトの位置を特定することに基づく。道路オブジェクトとは、恒久的または一時的に道路網の一部に関連付けられた任意のオブジェクトを意味する。これは、例えば、垂直方向の標識オブジェクト(例えば、交通標識)または水平方向の標識オブジェクト(例えば、道路標示、減速バンプ、環状交差路)でありうる。また、これは、車道の異常(例えば、穴、氷の領域)、または道路網の一部に関連付けられた事象(例えば、事故)であることもある。
【0023】
本発明では、道路オブジェクトが、複数の道路情報項目から取得された複数の地理的座標に関連付けられており、複数の道路情報項目が、道路網の一部分を循環する複数の道路車両に関連付けられている、と考えられる。そのために、道路車両は、本発明によれば、道路オブジェクトに関するジオロケーション道路情報項目を取得可能な少なくとも1つのセンサを備える。例えば、センサは、道路車両の画像センサ、またはサスペンションセンサであってよい。道路車両とは、道路網上での移動を意図しており、かつ人もしくは荷物を輸送することができる、エンジンまたはモータ(一般に内燃機関または電気モータ)を装備した任意の車両(例えば、自動車、トラックまたはオートバイ)を意味する。
【0024】
したがって、本発明は、分布密度に基づく教師なし分類を、道路オブジェクトのタイプに関連付けられた複数の地理的座標に適用することによって、道路オブジェクトの最も蓋然性の高い位置を特定することを提案する。ここでの文脈において、分布密度に基づく教師なし分類は、同じクラス(クラスタ)内の観測が類似しかつ2つの異なるクラスに属する観測が異なるように観測のセットの分割が自動的に発見される、記述タイプの機械学習モデルに相当する。
【0025】
実際には、本発明において、分布密度に基づく教師なし分類は、2段階のアプローチで適用される。
【0026】
地理的分類と称される第1の段階では、分布密度に基づく教師なし分類が、道路オブジェクトのタイプに関連付けられた複数の地理的座標に1回目に適用され、自動的に同種のクラスにグループ化される。次に、角度分類と称される第2の段階において、分布密度に基づく教師なし分類が、第1の段階で生成された各クラスに2回目に適用され、クラスの地理的座標に関連付けられた道路オブジェクトの方位角に基づいて、自動的に同種のサブクラスにグループ化される。
【0027】
図1は、本発明によれば、道路車両(図示せず)に接続された画像センサ(図示せず)によって取得された道路状況100を表す画像を示す。道路状況100は、道路網120の一部に関連付けられた道路オブジェクト110を含む。特定の一実現形態では、道路状況100は、複数の道路オブジェクト110を含む。図1では、画像は、道路車両が走行方向130に走行している間に取得されたものである。
【0028】
図2は、道路状況100における少なくとも1つの道路オブジェクト110の位置を特定するためのシステム200を示す。システム200は、互いに機能的に接続された、道路情報受信ユニット210、道路情報処理ユニット220、および計算ユニット230を備える。特定の一実現形態では、道路情報受信ユニット210、道路情報処理ユニット220、および計算ユニット230は、シングルプロセッサタイプの処理ユニットに含まれる。
【0029】
図2において、道路情報受信ユニット210は、道路状況100に関する画像タイプの複数の道路情報項目Iiを受信するように構成されている。特定の一実現形態では、道路情報受信ユニット210は、公知のタイプのプロセッサである。上述したように、複数の道路情報項目Iiは、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた少なくとも1つのセンサから取得される。図2の例では、センサは画像センサのタイプのセンサである。別の例では、センサは、サスペンションセンサ、レーダー/LIDARセンサ、または障害物センサなどの、道路車両の物理的特性を感知するタイプのセンサである。
【0030】
図2において、道路情報処理ユニット220は、複数の道路情報項目Iiから道路オブジェクト110のタイプを識別するように構成されている。特定の一実現形態では、道路情報処理ユニット220は、1つまたは複数の画像内で道路オブジェクト110を認識するための公知のアルゴリズムを実行するように構成された公知のタイプのプロセッサである。当該実現形態の一実施例では、道路オブジェクト110のタイプは、危険を示すため、禁止もしくは義務を示すため、または忠告および情報を与えるための垂直方向の標識タイプに相当する。この例では、道路状況100が、70km/hに制限された走行速度を示す道路オブジェクト110と、50km/hに制限された走行速度を示す別の道路オブジェクト110とを含むとき、道路状況100は、異なる2つのタイプの道路オブジェクト110を含むと考えられる。別の例では、道路オブジェクト110のタイプは、車道の図、矢印、線、文字などの水平方向の標識のタイプに相当する。
【0031】
特定の別の実現形態では、道路情報処理ユニット220は、道路車両の物理的特性の測定値から道路オブジェクト110を認識するための、公知のアルゴリズムを実行するように構成された公知のタイプのプロセッサである。当該実現形態の一実施例では、道路オブジェクト110のタイプは、車道上の異常、減速バンプ、または環状交差路に相当する。したがって、例えば、道路情報処理ユニット220は、道路車両のサスペンションセンサからの測定値から、穴の存在または減速バンプの存在を推定することができる。
【0032】
道路情報処理ユニット220は、道路オブジェクト110に関連付けられた複数の地理的座標を計算するようにさらに構成されており、各地理的座標は、複数の道路車両のうちの1つに関連付けられた複数の道路情報項目Iから計算される。具体的には、本発明では、各道路車両に関連付けられた複数の道路情報項目Iは、ジオロケーションによるものであると考えられる。したがって、道路情報処理ユニット220は、各道路車両からの複数の道路情報項目Iから、道路オブジェクト110の地理的位置を推測することができる。
【0033】
本発明によって対処される問題はここにある。具体的には、1つの同一の道路オブジェクト110に対して、複数の道路車両のそれぞれ1つずつに関連付けられた複数の道路情報項目Iは、実質的には異なる地理的座標を生成することが観察された。したがって、この場合、道路オブジェクト110の実際の位置について、ある程度の不確実性が存在する。
【0034】
この問題を解決するために、図2において、計算ユニット230は、図3に示された方法300を実施するように構成されている。
【0035】
実際には、計算ユニット230は、第1の作成ステップ310において、道路オブジェクト110のタイプごとに、道路オブジェクト110のタイプと道路オブジェクト110に関連付けられた複数の地理的座標とを含む、第1の特徴ベクトルを作成するように構成されている。
【0036】
さらに、計算ユニット230は、第1の分割ステップ320において、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第1の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数の同種のクラスに分割するように構成されている。
【0037】
本発明の一実施例では、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムは、DBSCAN、OPTICS、CLARANS、DENCLUEおよびCLIQUEから選択されるタイプである。さらに、必要に応じて、そして使用されるアルゴリズムにより、互いに明確に区別されるクラスを取得するように、これらのアルゴリズムのハイパーパラメータを最適化することが可能である。そのために、一実施例では、ハイパーパラメータは、クラスの数を最大化することができるよう、単独でまたは組み合わせて最適化される。これは、異なっているものの物理的に近くにある道路オブジェクト110に関連付けられた地理的座標が同じクラスにマージされることを防ぐ効果がある。
【0038】
本発明の特定の一実現形態では、計算ユニット230は、第1の作成ステップ310の第1の分離ステップ311において、各地理的座標を、緯度に関する位置成分と経度に関する位置成分とに分離するように、さらに構成される。したがって、この地理的分類の段階では、道路オブジェクト110のタイプ、道路オブジェクト110の緯度および経度が考慮されるので、3次元分類が行われる。
【0039】
その後、クラスごとに、道路オブジェクト110が識別された道路車両の走行方向を考慮するために、下位分類が行われる。そのために、計算ユニット230は、第2の作成ステップ330において、クラスの地理的座標ごとに少なくとも1つの成分を含む第2の特徴ベクトルを作成するように構成され、各成分は、対応する地理的座標に関連付けられた道路オブジェクト110の観測方向の方位角を表す。方位とは、北に対する道路オブジェクト110の位置を意味する。
【0040】
本発明の特定の一実現形態では、計算ユニット230は、第2の作成ステップ330の第2の分離ステップ331において、各方位角を、正弦に関する角度成分と余弦に関する角度成分とに分離するようにさらに構成される。当該実現形態では、方位角はラジアンで表現されると考えられる。方位角が度で表現れる場合は、予めラジアンに変換しておく必要がある。したがって、この角度分類の段階では、道路オブジェクト110の地理的座標に関連付けられた方位角の正弦と余弦とが考慮されるので、2次元分類が行われる。
【0041】
さらに、計算ユニット230は、第2の分割ステップ340において、分布密度に基づく教師なし分類アルゴリズムに基づいて、第2の特徴ベクトルのセットの少なくとも一部を複数のサブクラスに分割するように構成されている。
【0042】
最後に、計算ユニット230は、計算ステップ350において、サブクラスごとに、サブクラスに関連付けられた地理的座標から、中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算するように構成されており、中心傾向の尺度は、道路オブジェクト110の観測方向における道路オブジェクト110の位置を表す。
【0043】
本発明の一実施例では、サブクラスの中心傾向の尺度は、セントロイドおよびメドイドから選択される。セントロイドとは、サブクラスの全ての要素の平均ベクトルを意味する。メドイドとは、サブクラスの最も中心的な要素を意味する。
【0044】
本発明の特定の一実施形態では、下位分類ステップは行われない。これは、道路車両の走行方向を考慮する必要がない所定のタイプの道路オブジェクトに応じて必要とされうる。例えば、これは、道路オブジェクトが、全ての走行方向において同じである車道の異常に相当する場合でありうる。当該特定の実施形態では、計算ユニット230は、計算ステップ350において、クラスごとに、クラスに関連付けられた地理的座標から中心傾向の少なくとも1つの尺度を計算するように構成され、中心傾向の尺度は、道路オブジェクト110の位置を表す。
【0045】
本発明の別の特定の実施形態では、方法300の様々なステップは、コンピュータプログラム命令によって定義される。したがって、本発明はまた、非一時的記憶媒体に記憶されたコンピュータプログラムコードを有するプログラムも対象とし、このプログラムコードは、コンピュータプログラムがコンピュータにロードされたとき、またはコンピュータ上で実行されたときに、方法300のステップを実行することが可能である。
【0046】
本発明は、本発明の詳細な説明および図によって説明および図示されている。しかし、本発明は、提示された実施形態に限定されない。したがって、本明細書を読み、添付の図面を検討した後、当業者は、他の実施形態および変形例を推定し、実施することができるであろう。
図1
図2
図3