(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】位相結合されたレーザ装置、および位相結合されたレーザ装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
H01S 5/42 20060101AFI20230612BHJP
H01S 5/026 20060101ALI20230612BHJP
G02F 1/025 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
H01S5/42
H01S5/026 616
H01S5/026 618
G02F1/025
(21)【出願番号】P 2021515630
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2019071464
(87)【国際公開番号】W WO2020057856
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2021-05-12
(31)【優先権主張番号】102018123320.5
(32)【優先日】2018-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】514272140
【氏名又は名称】オスラム オーエルイーディー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】OSRAM OLED GmbH
【住所又は居所原語表記】Leibnizstrasse 4, 93055 Regensburg, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ブルーノ イェンチュ
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ベーレス
(72)【発明者】
【氏名】ハンス-ユルゲン ルーガウアー
【審査官】百瀬 正之
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-281473(JP,A)
【文献】特開2006-286810(JP,A)
【文献】特開平09-246639(JP,A)
【文献】特開平11-284283(JP,A)
【文献】米国特許第06959027(US,B1)
【文献】特開平02-054981(JP,A)
【文献】特開平02-031477(JP,A)
【文献】特開2000-151014(JP,A)
【文献】国際公開第02/089272(WO,A1)
【文献】特開2001-284732(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0067774(US,A1)
【文献】米国特許第8615028(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 5/00-5/50
G02F 1/025
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つの共通の導波路層(1)と、1つの共通の支持体(9)と、複数のレーザ本体(2)とを有するレーザ装置(10)であって、
前記レーザ本体は、コヒーレントな電磁放射を生成するように構成されたそれぞれ1つの活性ゾーン(23)を有し、
前記複数のレーザ本体は、前記共通の導波路層上に隣り合って配置されており、
前記レーザ本体は、前記共通の導波路層に直接的に隣接しており、
前記複数のレーザ本体は、前記レーザ装置の動作中に、前記導波路層を介して互いに位相結合されるように構成されており、
前記共通の導波路層(1)は、垂直方向において前記共通の支持体(9)と前記レーザ本体(2)との間に配置されており、
前記導波路層(1)は、第1の部分層(11)、第2の部分層(12)、および前記第1の部分層(11)と前記第2の部分層(12)との間に位置する活性領域(13)を有し、
前記活性領域は、前記導波路層の結合経路に配置されて
おり、
前記活性領域(13)は、電磁放射を生成するように構成されており、
前記共通の導波路層(1)は、追加的に光増幅器として使用され、
前記レーザ装置(10)は、第1の電極(61)、第3の電極(63)、および前記第1の電極と前記第3の電極との間に配置された第2の電極(62)を有し、
前記第1の電極および前記第3の電極は、前記レーザ装置の第1の電気極性に対応付けられており、
前記第2の電極は、前記第1の電気極性とは異なる第2の電気極性に対応付けられており、
前記第1の電極および前記第2の電極は、前記レーザ本体(2)の電気的なコンタクトのために構成されており、
前記第2の電極および前記第3の電極は、前記共通の導波路層(1)の電気的なコンタクトのために構成されている、
レーザ装置(10)。
【請求項2】
前記レーザ本体(2)と前記共通の導波路層(1)とは、モノリシックに構成されている、
請求項1記載のレーザ装置(10)。
【請求項3】
前記レーザ本体(2)は、それぞれ1つの部分層(24)を有し、前記部分層(24)は、前記共通の導波路層(1)に直接的に隣接しており、
前記部分層と前記共通の導波路層とは、少なくとも当該部分層と当該共通の導波路層の移行領域では、同一の材料から形成されている、
請求項1または2記載のレーザ装置(10)。
【請求項4】
前記レーザ装置(10)は、複数の結合構造部(30)を有する結合層(3)を有し、
前記結合層は、前記共通の導波路層(1)のうちの、前記レーザ本体(2)とは反対側を向いた背面(1R)上に配置されており、
前記結合構造部は、前記共通の導波路層の平面図で見て、前記レーザ本体によって覆われている、
請求項1から3までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項5】
前記結合構造部(30)は、前記共通の導波路層(1)内へと延在しており、前記レーザ装置の動作中に前記レーザ本体(2)によって生成された電磁放射に対して放射反射性に構成されている、
請求項4記載のレーザ装置(10)。
【請求項6】
前記レーザ装置の動作中、隣り合うレーザ本体(2)同士の間の横方向距離(L)は、m・λ/nであり、
なお、mは、整数であり、λは、前記共通の導波路層(1)に入射された放射の波長であり、nは、前記共通の導波路層の屈折率である、
請求項1から5までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項7】
前記共通の導波路層(1)内に、電気的に制御可能な活性要素(1A)が組み込まれており、または形成されており、
前記活性要素は、前記共通の導波路層の屈折率を局所的に適合させるように構成されている、
請求項1から6までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項8】
前記活性領域(13)は、前記レーザ装置の動作中に、印加された電場に基づいて前記共通の導波路層(1)の屈折率の変化をもたらすワニエ・シュタルク変調器の活性量子井戸層として構成されている、
請求項1から
7までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項9】
前記複数のレーザ本体(2)は、前記共通の導波路層(1)上に少なくとも1つの行で配置されており、
前記行は、縁部側に配置されたガイドレーザ本体(2L)を有し、
前記ガイドレーザ本体(2L)は、当該ガイドレーザ本体から放出された電磁放射(S)が、前記共通の導波路層の方向にのみ、前記ガイドレーザ本体から出射され、前記共通の導波路層に沿って伝播し、位相結合された電磁放射を放出するために他のレーザ本体(2)を励起するように構成されている、
請求項1から
8までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項10】
前記縁部側に配置されたガイドレーザ本体(2L)は、同一の行または列のレーザ本体(2)によって放出される放射の位相を規定し、
前記ガイドレーザ本体は、当該ガイドレーザ本体のうちの、前記共通の導波路層(1)とは反対側を向いた表面上において、放射透過性のアパーチャ(60)を有していない、
請求項
9記載のレーザ装置(10)。
【請求項11】
前記複数のレーザ本体(2)は、前記共通の導波路層(1)上において当該複数のレーザ本体の複数の行および列を形成し、
同一の行または列の前記レーザ本体は、多くとも縁部側に配置されたレーザ本体(2L)を除いて、前記共通の導波路層とは反対側を向いたそれぞれ1つの放射透過性のアパーチャ(60)を有する、
請求項1から
10までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項12】
前記共通の導波路層(1)は、放射反射性のミラー層(41)が設けられた少なくとも1つの側面(1S)を有する、
請求項1から
11までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項13】
前記共通の導波路層(1)は、放射吸収性の吸収体層(42)が設けられた少なくとも1つの側面(1S)を有する、
請求項1から
12までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)。
【請求項14】
請求項1から
13までのいずれか1項記載のレーザ装置(10)を製造するための方法であって、
共通の導波路層(1)が用意され、
前記共通の導波路層上に直接的に、1つの切れ目なく連続したレーザ本体複合体が形成され、
前記1つの切れ目なく連続したレーザ本体複合体は、前記共通の導波路層上において横方向に離間された複数のレーザ本体(2)へと構造化される、
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
とりわけ位相結合されるように構成されたレーザ装置が提供される。さらに、レーザ装置、とりわけ位相結合されたレーザ装置を製造するための方法が提供される。
【0002】
回折画像の形態の構造化された遠方場を生成するために、一般に、結像光学系を有するエミッタアレイが使用される。複雑な光学系を有する複数のシングルエミッタの使用は、通常、手間およびコストがかかる。回折画像の方向を変化させるためには、可動の光学素子または複雑なハウジングを使用することが多い。
【0003】
1つの課題は、とりわけ点格子の構造化された遠方場を生成するための、簡単に製造可能でコンパクトなレーザ装置を提供することである。さらなる課題は、レーザ装置、とりわけ本明細書で説明するレーザ装置を製造するための低コストの方法を提供することである。
【0004】
上記の課題は、独立請求項に記載のレーザ装置と、レーザ装置を製造するための方法とによって解決される。レーザ装置またはレーザ装置を製造するための方法のさらなる実施形態は、さらなる請求項の対象である。
【0005】
1つの共通の導波路層を有するレーザ装置が提供される。レーザ装置は、共通の導波路層上に配置された複数のレーザ本体を有する。とりわけ、レーザ本体は、共通の導波路層に直接的に隣接している。レーザ本体と導波路層とを一体的に構成することが可能である。特に好ましくは、共通の導波路層とレーザ本体とが、またはレーザ本体の少なくとも一部と共通の導波路層とが1つの部材から形成されている。この意味において、共通の導波路層と複数のレーザ本体とを有するレーザ装置は、とりわけモノリシックに構成されている。例えば、共通の導波路層とレーザ本体との間には、滑らかな移行が存在する。
【0006】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ本体は、とりわけコヒーレントな電磁放射を生成するように構成されたそれぞれ1つの活性ゾーンを有する。例えば、それぞれのレーザ本体の活性ゾーンは、赤外線、可視光線、または紫外線のスペクトル範囲内の電磁放射を生成するために設けられている。レーザ本体は、III-VまたはII-VI化合物半導体材料をベースにすることができる。例えば、レーザ本体は、活性ゾーンを有するそれぞれ1つの半導体本体を有し、この半導体本体は、上記のような化合物半導体材料をベースにしている。複数のレーザ本体の半導体本体は、それぞれ同じ化合物半導体材料をベースにすることができる。
【0007】
複数の異なる半導体層または本体は、これらの層または本体が、例えば主族IIまたはIIIからの少なくとも1種類の同じ元素と、例えばVI族またはV族からのさらなる同じ元素とを有する場合には、同じ化合物半導体材料をベースにしている。半導体層または本体は、これらの2種類の同じ元素に加えて、2元、3元、または4元の化合物を形成するために、とりわけ同一の族または他の族からの追加的な元素を有することができる。例えば、レーザ本体の層と、共通の導波路層の層とは、ヒ化物、窒化物、リン化物、硫化物、またはセレン化物の化合物半導体、例えば、GaN、InP、ZnS、またはZnSe化合物半導体をベースにしている。半導体本体は、活性ゾーンに加えて第1の半導体層および第2の半導体層を有することができ、活性ゾーンは、これらの半導体層の間に配置されている。とりわけ、活性ゾーンは、半導体本体またはレーザ本体のpn接合部である。
【0008】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、複数のレーザ本体は、共通の導波路層上に隣り合って配置されている。複数のレーザ本体は、横方向において互いに空間的に離間可能である。例えば、レーザ本体は、共通の導波路層上で成長されており、とりわけエピタキシャル成長されている。複数のレーザ本体は、同様の構造を有することができる。製造公差の範囲内で、複数のレーザ本体は、同じ波長の電磁放射を生成するように構成可能である。レーザ本体は、とりわけモノモードの放射を生成するように構成されている。
【0009】
横方向とは、共通の導波路層の主延在平面に対してとりわけ平行に延在する方向であると理解される。垂直方向とは、とりわけ共通の導波路層の主延在平面に対して垂直に向けられた方向であると理解される。垂直方向と横方向とは、とりわけ互いに直交している。
【0010】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、複数のレーザ本体は、レーザ装置の動作中に、導波路層を介して互いに位相結合されるように構成されている。複数のレーザ本体が互いに位相結合されるように構成されている場合には、レーザ装置の動作中に、複数のレーザ本体または半導体本体によって放出された放射の少なくとも主モード同士は、互いに一定または実質的に一定の位相関係を有する。隣り合うレーザ本体同士の間の所定の横方向距離が維持される場合には、これらのレーザ本体同士を互いに位相結合させることができ、とりわけ互いに有効に位相結合させることができる。所定の距離は、とりわけ、放出された電磁放射のピーク波長と、共通の導波路層の屈折率とに依存している。屈折率を変化させるため、とりわけ共通の導波路層の局所的な屈折率を変化させるために構成された活性要素を、導波路層内に組み込むまたは形成することが可能である。
【0011】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態では、レーザ装置は、1つの共通の導波路層と、複数のレーザ本体とを有する。レーザ本体は、コヒーレントな電磁放射を生成するように構成されたそれぞれ1つの活性ゾーンを有する。複数のレーザ本体は、共通の導波路層上に隣り合って配置されている。特に好ましくは、レーザ本体は、共通の導波路層に直接的に隣接している。レーザ本体は、レーザ装置の動作中に、とりわけ導波路層を介して互いに位相結合されるように構成されている。
【0012】
特に好ましくは、レーザ本体と共通の導波路層とは、モノリシックに構成されている。例えば、レーザ本体は、それぞれ面発光レーザダイオードの形態、例えばVCSEL(英語:vertical-cavity surface-emitting laser[垂直共振器面発光レーザ])の形態を有する。動作中に放出される放射は、対応するレーザ本体からとりわけ垂直方向に沿って垂直に放出される。とりわけ、レーザ装置は、それぞれ1つのアパーチャを有する複数のレーザ本体を有し、アパーチャは、それぞれのレーザ本体のうちの、共通の導波路層とは反対側を向いた表面上に形成されている。アパーチャとは、とりわけ、レーザ本体の動作中に放出される放射の出口開口部である。
【0013】
複数のレーザ本体と1つの共通の導波路層とからなり、複数のレーザ本体によって生成された電磁放射同士が互いに位相結合されている、一体的またはモノリシックに構成されたレーザ装置により、1次元または2次元の点格子の回折画像の形態の構造化された遠方場を生成するために特に適した、特にコンパクトなコンポーネントを提供することができる。さらに、そのようなモノリシックに集積されたコンポーネントを用いることにより、放射方向を、とりわけ電気信号によって簡単に制御することが可能となる。この場合、方向を変化させるために、可動の光学素子または複雑なハウジングは使用されない。例えば、局所的な電気的な制御によって、かつ/または共通の導波路層の屈折率の局所的な適合によって、複数のレーザ本体を所期のように位相結合させることにより、レーザ装置の方向を変化させること、または放射方向を設定することができる。
【0014】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ本体は、それぞれ1つの部分層を有し、部分層は、共通の導波路層に直接的に隣接している。レーザ本体の部分層と共通の導波路層とは、同一の材料から形成可能であるか、または少なくとも移行領域では、同一の材料から形成可能である。とりわけ、共通の導波路層とレーザ本体の部分層との間には、滑らかな移行領域が存在する。例えば、レーザ本体、とりわけレーザ本体の部分層は、共通の導波路層上に直接的に成長される。レーザ本体の部分層は、元々、共通の導波路層の構成要素であってもよく、レーザ本体を製造する過程において初めてレーザ本体に対応付けることが可能である。レーザ本体は、とりわけ共通の導波路層上の局所的な垂直方向の隆起部である。
【0015】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ装置は、1つの共通の支持体を有し、共通の導波路層は、共通の支持体上に配置されている。共通の導波路層は、とりわけ垂直方向において共通の支持体とレーザ本体との間に配置されている。好ましくは、レーザ装置は、共通の支持体によって機械的に安定されており、したがって共通の支持体によって機械的に支持されている。とりわけ、共通の支持体は、共通の導波路層よりも高い機械的な安定性を有する。共通の支持体は、電気絶縁性材料、導電性材料、または半導体材料から形成可能である。例えば、共通の支持体は、セラミック本体、半導体本体、または金属本体である。とりわけ、共通の支持体は、共通の導波路層および/または複数のレーザ本体がエピタキシャル成長された成長基板とは異なっている。しかしながら、共通の支持体を、例えばサファイア基板または半導体基板である成長基板とすることも考えられる。
【0016】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ装置は、複数の結合構造部を有する結合層を有する。結合層は、とりわけ共通の導波路層のうちの、レーザ本体とは反対側を向いた背面上に配置されている。結合構造部を、共通の導波路層の平面図で見て、レーザ本体によって覆うことができ、とりわけ完全に覆うことができる。レーザ本体から放出された放射が垂直方向に沿って共通の導波路層に入射される場合には、電磁放射を、結合構造部において横方向に偏向させることができる。横方向の伝播を介して、電磁放射は、レーザ本体同士の間の位相結合が起こることを保証することができる。例えば、共通の導波路層内に定在波場を形成することができ、この定在波場により、レーザ装置の複数のレーザ本体、とりわけ全てのレーザ本体の所定の位相結合が保証される。
【0017】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、結合構造部は、共通の導波路層内へと延在している。とりわけ、結合構造部は、レーザ装置の動作中にレーザ本体によって生成された電磁放射に対して反射性に構成されている。例えば、結合構造部にはそれぞれ反射層が設けられているか、または結合構造部は、放射反射性の材料から形成されている。結合構造部は、共通の導波路層の材料組成に鑑みて、当該結合構造部において全反射が起こるか、または促進されるように構成可能である。結合層は、電気絶縁性材料または導電性材料から形成可能である。結合層が導電性に構成されている場合には、この結合層を、レーザ装置のためのコンタクト層として、とりわけ共通の導波路層またはレーザ本体のためのコンタクト層として使用することができる。
【0018】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ装置の動作中、隣り合うレーザ本体同士の間の横方向距離は、m・λ/nであり、なお、mは、自然整数であり、λは、共通の導波路層に入射された放射の波長であり、nは、共通の導波路層の屈折率である。換言すれば、隣り合うレーザ本体同士の間の横方向距離は、導波路層に入射された放射の、共通の導波路層で測定された波長の倍数である。横方向距離とは、とりわけ、隣り合うレーザ本体同士の間の経路長または結合経路である。mは任意の整数であるので、複数の異なる隣り合うレーザ本体同士の間の横方向距離は、同じであってもよいし、または異なっていてもよい。
【0019】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、共通の導波路層内に、電気的に制御可能な活性要素が組み込まれている、または形成されている。好ましくは、活性要素は、共通の導波路層の屈折率を局所的に適合させるように構成されている。このことは、例えば製造公差に起因して結合経路または光路長が波長の倍数でない場合に、必要となり得る。活性素子は、ワニエ・シュタルク変調器の形態で導波路層内に組み込み可能である。そのような変調器は、共通の導波路層に印加される電場に基づいて、屈折率の変化、とりわけ共通の導波路層の局所的な屈折率の変化をもたらすことができる。このようにして、隣り合うレーザ本体同士の間の結合経路または光路長を、レーザ装置の動作中に補正することができる。したがって、共通の導波路層内に組み込まれたまたは形成された活性要素は、共通の導波路層の屈折率をコントロールするため、または屈折率を適合させるために使用される。
【0020】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、共通の導波路層は、とりわけ導波路層の結合経路に配置された活性領域を有する。共通の導波路層は、第1の部分層および第2の部分層を有することができ、活性領域は、垂直方向において第1の部分層と第2の部分層との間に配置されている。例えば、共通の導波路層の活性領域は、電磁放射を生成するように構成されている。活性領域を有する導波路層は、光増幅器として使用可能である。代替的または追加的に、活性領域を、共通の導波路層の局所的な屈折率を適合させるように構成してもよい。とりわけ、活性領域は、活性要素の部分領域、または共通の導波路層内に組み込まれたまたは形成された活性要素の部分領域を形成する。
【0021】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、共通の導波路層の活性領域は、ワニエ・シュタルク変調器の活性量子井戸層として構成されている。とりわけ、変調器は、レーザ装置の動作中に、印加された電場に基づいて共通の導波路層の屈折率の変化、とりわけ屈折率の局所的な適合をもたらす。
【0022】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、複数のレーザ本体は、共通の導波路層上に少なくとも1つの行で配置されている。レーザ装置は、共通の導波路層上において、複数のレーザ本体からなる複数の行および列を有することができる。例えば、レーザ本体は、共通の導波路層上において、複数のレーザ本体からなる行列状の配列を形成する。複数のレーザ本体からなる行または列は、とりわけガイドレーザ本体として構成された、縁部側に配置されたレーザ本体を有することができる。例えば、ガイドレーザ本体は、当該ガイドレーザ本体から放出された電磁放射が、共通の導波路層の方向にのみ、当該ガイドレーザ本体から出射され得るように構成されている。共通の導波路層に入射された放射は、共通の導波路層に沿って伝播し、位相結合された電磁放射を放出するために他のレーザ本体を励起することができる。とりわけガイドレーザ本体によって励起される他のレーザ本体は、電気的にも光学的にもポンピング可能であり、例えば、ガイドレーザ本体によって生成された放射によって光学的にポンピング可能である。
【0023】
ガイドレーザ本体は、当該ガイドレーザ本体のうちの、共通の導波路層とは反対側を向いた表面上において、放射反射性の層を有することができ、この放射反射性の層は、とりわけガイドレーザ本体を完全に覆っており、したがってこの表面からの放射の出射を阻止する。放射反射性の層は、ガイドレーザ本体の放射非透過性のコンタクト層として構成可能である。ガイドレーザ本体において電磁放射が生成されると、この電磁放射は、放射反射性の層において導波路層の方向に反射され、共通の導波路層に入射される。したがって、縁部側に配置されたガイドレーザ本体は、同一の行または列のレーザ本体によって放出される放射の位相を規定することができる。ガイドレーザ本体は、当該ガイドレーザ本体のうちの、共通の導波路層とは反対側を向いた表面上において、とりわけ放射透過性のアパーチャを有していない。1つまたは複数のガイドレーザ本体を除いて、残りのレーザ本体は、共通の導波路層とは反対側を向いた各自の表面上において、それぞれ1つの放射透過性のアパーチャを有することができる。
【0024】
レーザ装置は、複数のレーザ本体を有することができ、複数のレーザ本体は、共通の導波路層上において当該複数のレーザ本体の複数の行および列を形成し、同一の行または列のレーザ本体は、多くとも縁部側に配置された1つまたは複数のレーザ本体を除いて、共通の導波路層とは反対側を向いたそれぞれ1つの放射透過性のアパーチャを有する。とりわけ、位相結合は、とりわけ放出された放射の位相を規定するガイドレーザ本体によって実施される。この場合には、共通の導波路層内に定在波場を形成しなくてもよい。
【0025】
全ての実施例において、屈折率をコントロールまたは適合させるために、共通の導波路層内に活性要素を組み込むまたは形成することができる。活性要素により、個々のレーザ本体の相互の位相関係、ひいては出射方向を、所期のように制御することができる。
【0026】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、レーザ装置は、第1の電極および第2の電極を有する。とりわけ、レーザ本体は、垂直方向において第1の電極と第2の電極との間に配置されている。第1の電極および第2の電極は、とりわけ、レーザ本体および/または共通の導波路層の電気的なコンタクトのために構成されている。第1の電極は、とりわけ複数の個々にコンタクト可能なコンタクト層を有することができ、これらのコンタクト層は、複数のレーザ本体のうちのそれぞれ1つに対応付けられている。第1の電極のコンタクト層は、外部電圧源にそれぞれ個々に接続可能である。第2の電極は、切れ目なく連続するように構成可能であり、共通の電極として使用可能である。代替的に、第2の電極が、複数の個別にコンタクト可能なコンタクト層を有するようにしてもよく、これらのコンタクト層は、レーザ本体の電気的なコンタクトのために、かつ/または共通の導波路層の局所的な電気的なコンタクトのために構成されている。
【0027】
レーザ装置は、とりわけ共通の導波路層の電気的なコンタクトのために構成された第3の電極を有することができる。第2の電極は、垂直方向において第1の電極と第3の電極との間に配置可能である。とりわけ、第3の電極は、切れ目なく連続するように構成されている。とりわけ横方向に離間された複数のコンタクト層を有する第2の電極と、第3の電極とを介して、共通の導波路層を、所期のように局所的に電気的にコンタクトさせることができる。例えば、第3の電極および第2の電極は、共通の導波路層内に組み込まれたまたは形成された活性要素の電気的なコンタクトのために構成されている。
【0028】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、第1の電極および第3の電極は、レーザ装置の第1の電気極性に対応付けられている。とりわけ、第2の電極は、第1の電気極性とは異なる第2の電気極性に対応付けられている。とりわけ、第1の電極および第2の電極は、レーザ本体の電気的なコンタクトのために構成されている。第2の電極および第3の電極は、例えば、共通の導波路層の電気的なコンタクトのために構成されている。したがって、第2の電極は、レーザ本体の電気的なコンタクトと、共通の導波路層の電気的なコンタクトとの両方のために構成された共通の電極である。
【0029】
レーザ装置の少なくとも1つの実施形態によれば、共通の導波路層は、とりわけ放射非透過性の層が設けられた少なくとも1つの側面を有する。放射非透過性の層は、放射反射性のミラー層または放射吸収性の吸収体層であり得る。導波路層の少なくとも2つの対向する側面、または少なくとも2つの互いに隣接する側面に、放射反射性のミラー層または放射吸収性の吸収体層を設けてもよい。さらに、共通の導波路層の全ての側面に、ミラー層または吸収体層を設けてもよい。
【0030】
導波路層の2つの相対する側面、または全ての側面にミラー層が設けられている場合には、共通の導波路層内に定在波場を形成することができ、この定在波場により、レーザ装置の複数のレーザ本体、とりわけ全てのレーザ本体の所定の位相結合が保証される。導波路層の側面に吸収体層が設けられている場合には、導波路層内に定在波場を形成することができない。この場合には、とりわけ上側が、すなわち導波路層とは反対の側がミラーリングされたガイドレーザ本体によって、位相結合を形成することが可能である。
【0031】
レーザ装置、とりわけ本明細書で説明するレーザ装置を製造するための方法が提供される。共通の導波路層が用意される。共通の導波路層上に直接的に、1つの切れ目なく連続したレーザ本体複合体を形成することができる。後続の方法ステップでは、1つの切れ目なく連続したレーザ本体複合体を、共通の導波路層上において横方向に離間された複数のレーザ本体へと構造化することができる。レーザ本体複合体を貫通して、とりわけ共通の導波路層まで、または導波路層内へと延在する中間領域が形成されるように、レーザ本体複合体の材料を除去することができる。
【0032】
レーザ本体は、とりわけ共通の導波路層上の局所的な隆起部として構成されており、レーザ本体は、横方向において中間領域によって取り囲まれている。中間領域は、後から封入材料によって、とりわけ電気絶縁性材料によって充填可能である。1つのレーザ本体複合体を複数のレーザ本体へと構造化するために、例えば材料除去による機械的なプロセス、または化学的なプロセス、例えばエッチングプロセス、またはレーザ切断プロセスを使用することができる。
【0033】
本明細書で説明する方法は、本明細書で説明するレーザ装置を製造するために特に適している。したがって、レーザ装置に関連して説明した特徴は、方法にも使用可能であり、またその逆も可能である。
【0034】
レーザ装置またはレーザ装置を製造するための方法のさらなる実施形態および発展形態は、
図1A~
図5に関連して以下に説明される実施例から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1A】遠方場における複数のレーザ本体からの1次元または2次元の点格子の回折画像の輝度分布の概略図である。
【
図1B】遠方場における複数のレーザ本体からの1次元または2次元の点格子の回折画像の輝度分布の概略図である。
【
図2A】レーザ装置のいくつかの実施例の概略断面図である。
【
図2B】レーザ装置のいくつかの実施例の概略断面図である。
【
図3A】レーザ装置のさらなる実施例の概略断面図である。
【
図3B】レーザ装置のさらなる実施例の概略断面図である。
【
図4】レーザ装置のさらなる実施例の概略断面図である。
【
図5】レーザ装置のさらなる実施例の概略平面図である。
【0036】
図面において、同じ要素、同様の要素、または同じ機能を有する要素には同じ参照符号が付されている。これらの図面は、それぞれ概略図であり、したがって、必ずしも縮尺通りであるとは限らない。むしろ、比較的小さな要素、とりわけ層の厚さは、見やすくするために誇張されて大きく図示されている場合がある。
【0037】
図1Aおよび
図1Bはそれぞれ、本明細書で説明するモノリシックに集積されたレーザ装置からの1次元または2次元の点格子の回折画像の形態の構造化された遠方場を示す。
図1Aには、正規化された輝度分布Hが分布角度Wの関数として概略的に示されている。
図1Bには、輝度分布が2次元で概略的に示されている。さらに、とりわけ
図3A、
図3B、
図4、および
図5に示されているレーザ装置を用いることにより、放射方向を電気信号によって制御することが可能となり、それにより、幾何学的パターンの動的な制御を実現することが可能となる。
【0038】
図2Aは、共通の導波路層1上に配置された複数のレーザ本体2を有するレーザ装置10を示す。とりわけ、レーザ本体2は、共通の導波路層1上の局所的な隆起部として構成されている。横方向において、これらのレーザ本体2は、中間領域Zによって互いに空間的に離間されている。レーザ本体2の各々は、アイランド状に構成されており、とりわけ中間領域Zによって全周的に取り囲まれている。中間領域Zは、空気によって、またはとりわけ電気絶縁性の固体材料によって充填可能である。
【0039】
レーザ本体2と共通の導波路層1とは、一体的またはモノリシックに構成可能である。レーザ本体2は、それぞれ部分層24を有することができ、これらの部分層24は、共通の導波路層1に直接的に隣接しており、少なくとも部分層24と導波路層1との間の移行領域では、共通の導波路層1と同じ材料を有する。例えば、レーザ本体2の部分層24と共通の導波路層1とを、1つの部材から形成することができる。とりわけ、部分層24と共通の導波路層1との間には、滑らかな移行が存在する。例えば、共通の導波路層1とレーザ本体2との間、または共通の導波路層1とレーザ本体2の部分層24との間には、明確な界面が存在せず、とりわけ明確に検出可能な界面が存在しない。
【0040】
さらに、レーザ本体2がとりわけ共通の導波路層1上に直接的に被着されている場合には、レーザ本体2と共通の導波路層1とが一体的またはモノリシックに構成されていると見なされる。垂直方向においてレーザ本体2と導波路層1との間には、例えば接続層、とりわけ付着層、接着層、またはろう接層が設けられていない。このことは、例えば
図2Bに概略的に示されており、この
図2Bでは、ミラー装置72に所属する部分層24が、導波路層1上に直接的に形成されている。この場合、部分層24と導波路層1とは、共通の移行領域において、それぞれ異なる材料組成を有することができる。
【0041】
レーザ本体2は、それぞれ1つの半導体本体2Hを有する。とりわけ、半導体本体2Hは、第1の電荷担体型の第1の半導体層21、第1の電荷担体型とは異なる第2の電荷担体型の第2の半導体層22、および半導体層21と22との間に配置された活性ゾーン23を有する。活性ゾーン23は、レーザ装置10の動作中に、とりわけコヒーレントな電磁放射を生成するように構成されている。とりわけ、活性ゾーン23は、pn接合ゾーンである。第1の半導体層21は、n導電性に構成可能である。第2の半導体層は、p導電性に構成可能である。しかしながら、第1の半導体層21をp導電性に構成して、第2の半導体層22をn導電性に構成してもよい。
【0042】
レーザ本体2は、それぞれ、導波路層1とは反対側を向いた第1のミラー装置71と、導波路層1に面した第2のミラー装置72とを有する。とりわけ、第1のミラー装置71と第2のミラー装置72とは、レーザ本体2のレーザ共振器7を形成する。ミラー装置71および72は、ブラッグミラー、とりわけ導電性のブラッグミラー、または半導体材料からなるブラッグミラーであり得る。半導体本体2H、第1のミラー装置71、第2のミラー装置72、部分層24、および/または導波路層1は、同じ半導体化合物材料をベースにすることが可能である。
【0043】
垂直方向において活性ゾーン23と共通の導波路層1との間に配置された第2のミラー装置72は、とりわけ部分的に放射透過性に構成されている。とりわけ、第2のミラー装置72は、レーザ装置10の動作中に活性ゾーン23で生成された放射Sに対して少なくとも部分的に透過性に構成されており、したがって、活性ゾーン23によって生成された放射Sは、第2のミラー装置72を通過して共通の導波路層1に入射することができる。第2のミラー装置72は、第1のミラー装置71よりも低い反射率を有することが可能である。代替的または追加的に、第2のミラー装置72は、活性ゾーン23で生成された放射に対して、最大で99%、95%、90%、または最大で80%、例えば50%以上99%以下の間、60%以上95%以下の間、60%以上80%以下の間の反射率を有することが可能である。
【0044】
図2Aによれば、レーザ本体2は、それぞれ1つの放射通過領域6を有する。とりわけ、放射通過領域6は、アパーチャ60を有する。アパーチャ60は、放射透過性のコンタクト層61によって形成可能である。例えば、コンタクト層61は、透明な導電性材料から、例えば透明な導電性酸化物から形成されている。とりわけ、アパーチャ60は、横方向において絶縁層8によって、とりわけ第1の絶縁層81によって全周的に取り囲まれている。放射通過領域6は、とりわけレーザ装置10のうちの、導波路層1とは反対側を向いた前面10V上に配置されている。半導体本体2Hによって放出された放射Sは、レーザ本体2からアパーチャ60を通過して出射することができる。複数の異なるレーザ本体2のコンタクト層61は、複数のレーザ本体2のうちのそれぞれ1つに対応付けられており、互いに独立して電気的にコンタクト可能である。レーザ本体2のコンタクト層61は、とりわけレーザ装置10の第1の電極61を形成する。
【0045】
これとは違って、絶縁層8、とりわけ第1の絶縁層81を導電層によって置き換えてもよい。この場合には、電流を、まず始めにレーザ本体2に全面的に印加し、より深くに位置する層を通して中心へと導くことができる。より深くに位置する層は、電流経路を外部から狭める絞りの形態の酸化層であり得る。代替的または追加的に、より深くに位置する層は、第1のミラー装置71の上方および/または下方のドープされた、とりわけ高ドープされた電流拡散層であり得る。
【0046】
図2Aによれば、レーザ装置10は、第2の電極62を有することができる。第2の電極62は、全てのレーザ本体2のための共通の電極として構成可能である。とりわけ、第2の電極62は、共通の導波路層1のうちの、レーザ本体2とは反対側を向いた背面1R上に配置されている。導波路層1のうちの、レーザ本体2に面した前面1Vは、コンタクト層を有していなくてもよい。導波路層1の平面図で見て、前面1Vは、一部がレーザ本体2によって覆われていて、一部がレーザ本体2によって覆われていない。覆われていない領域では、導波路層1の前面1Vに自由にアクセス可能である。
【0047】
レーザ装置10は、導波路層1の背面1R上において結合層3を有する。結合層3は、複数の結合構造部30を有する。とりわけ、結合構造部30は、結合層3のうちの、共通の導波路層1内へと延在する局所的な垂直方向の隆起部である。結合構造部30は、放射反射性に構成可能である。結合構造部30の反射率を高めるために、結合構造部30にそれぞれ放射反射性のカバー層31を設けることができる。カバー層31は、高反射性の材料から、例えばアルミニウム、銀、パラジウム、または白金から形成可能である。結合層3が導電性材料から形成されている場合には、この結合層3を同時にコンタクト層として、とりわけ、レーザ装置10の第2の電極62または第3の電極63として使用することができる。
【0048】
代替的に、カバー層31を電気的なコンタクト層として構成しなくてもよい。カバー層31は、とりわけ、水平走行モードの一部をレーザ本体2またはレーザ本体2に入射させる光学的に有効な層である。カバー層31と導波路層1とは、とりわけそれぞれ異なる屈折率を有する。
【0049】
とりわけ結合層3、または第2のコンタクト層62もしくは第3の電極63は、少なくとも部分的に導波路層1に直接的に隣接している。結合構造部30の領域では、カバー層31は、垂直方向において導波路層1と関連する結合構造部30との間に配置可能である。
【0050】
カバー層31が電気的なコンタクト層として構成されている場合には、導波路層1とカバー層31との間の電気的なコンタクト抵抗を、導波路層1と結合層3との間の電気的な抵抗よりも低くすることができる。これによって電荷担体を、好ましくはカバー層31を介して導波路層1に印加すること、したがって、中央においてレーザ本体2に印加することを達成することができる。カバー層31は、例えば、導波路層1内に組み込まれたまたは形成された活性要素1Aの電気的なコンタクトのために構成可能である。
【0051】
レーザ本体2は、平面図で見て、それぞれ少なくとも1つの結合構造部30を覆うことができ、とりわけ完全に覆うことができる。結合層3が、平面図で見て、レーザ本体2のうちの1つによって覆われていない結合構造部30を有さないようにしてもよい。レーザ本体2が、平面図で見て、それぞれ単一の結合構造部30を覆うようにすることも可能である。
【0052】
図2Aによれば、共通の導波路層1は、単一の層として構成されている。とりわけ、共通の導波路層1は、至るところで同じ材料組成を有する。導波路層1はさらに、同じ材料組成を有する複数の層の積層体として構成されている場合には、単一の層として構成されている。
【0053】
図2Aによれば、レーザ装置10は、共通の支持体9を有する。共通の導波路層1は、とりわけ、垂直方向において共通の支持体9とレーザ本体2との間に配置されている。共通の支持体9は、とりわけレーザ装置10を機械的に安定させる支持体層として使用される。共通の支持体9は、電気絶縁性材料または導電性材料から形成可能である。
図2Aによれば、レーザ装置10は、支持体9の背面側の表面上に配置された背面側のカバー層90を有する。背面側のカバー層90は、電気絶縁性材料または導電性材料から形成可能である。カバー層90の存在下で、レーザ装置の背面10Rは、背面側のカバー層90の露出した表面によって形成されている。
【0054】
図2Aによれば、複数のレーザ本体2は、これらのレーザ本体2が互いに位相結合されるように、例えば互いに有意に位相結合されるように、互いに配置されている。例えば、2つの隣り合うレーザ本体2同士の間の横方向距離Lは、導波路層1に入射された放射Sの波長の倍数である。導波路層の1つの側面1Sまたは導波路層の全ての側面1Sに、放射非透過性の層4を配置することができる。放射非透過性の層4が導電性に構成されている場合には、横方向において導波路層1と層4との間に絶縁層を配置することができる。放射非透過性の層4は、ミラー層41または吸収体層42であり得る。ミラー層41が導波路層の2つの相対する側面1Sに配置されている場合には、共通の導波路層1内に定在波場を形成することができる。導波路層1内に定在波場を形成することにより、レーザ本体2の位相結合を設定することができる。
【0055】
好ましくは、結合構造部30は、当該結合構造部30に関連するレーザ本体2の下方の中央に配置されている。活性ゾーン23において電磁放射Sが生成されると、この電磁放射Sを、導波路層1に入射させて、関連する結合構造部において横方向に偏向させることができる。結合構造部30の幾何形状は、入射された電磁放射Sが所望の横方向に偏向されるように選択可能である。例えば、結合構造部30は、ピラミッドの形状または円錐の形状を有する。
図2Aによれば、結合構造部30は、関連するレーザ本体2からの垂直方向の距離が増加するにつれて増加する横断面を有する。
【0056】
図2Bに示されている実施例は、
図2Aに示されているレーザ装置10に関する実施例に実質的に対応する。
図2Aとは異なり
図2Bには、共通の導波路層1が活性領域13を有することが示されている。さらに、共通の導波路層1は、レーザ本体2に面した第1の部分層11と、レーザ本体2とは反対側を向いた第2の部分層12とを有する。とりわけ、導波路層1の第1の部分層11、第2の部分層12、および活性領域13は、半導体層である。半導体層11,12,および/または13は、それぞれ異なる材料組成を有することができる。結合構造部30は、導波路層1の背面1Rから第2の部分層12内へと延在している。とりわけ、結合構造部30は、活性領域13の前で終端している。
【0057】
共通の導波路層1は、活性領域13により、とりわけ追加的に光増幅器として使用される。とりわけ、導波路層1は、活性領域13と部分層11および12とにより、とりわけレーザ装置10の動作中に電磁放射を生成または増幅するように構成されたダイオード構造を有する。
図2Bによれば、導波路層1の2つの相対する側面1Sに、ミラー層41が配置されている。レーザ本体2からの電磁放射が導波路層1に入射されると、この電磁放射は、結合構造部30またはカバー層31においてミラー層41へと反射される。電磁放射は、ミラー層41において反射され、これにより、導波路層1内に定在波場が形成され、この定在波場により、レーザ装置10の複数のレーザ本体2、とりわけ全てのレーザ本体2の所定の位相結合が保証される。
【0058】
図3Aに示されている実施例は、
図2Bに示されている実施例に実質的に対応する。
図2Bとは異なり、レーザ装置10は、とりわけ導波路層1の前面1V上に配置された、とりわけ前面1V上に直接的に配置された電極62を有する。導波路層1の背面1R上に配置されている電極は、今や、レーザ装置10の第3の電極63として使用される。第1の電極61および第3の電極63は、とりわけレーザ装置10の同じ電気極性に対応付けられている。例えば、第1の電極61および第3の電極63は、レーザ本体2および/または導波路層1のp側コンタクトのために構成されている。第2の電極62は、例えば、レーザ本体2および導波路層1の電気的なコンタクトのために構成されている。したがって、第2の電極62は、レーザ本体2および導波路層1の共通の電極として構成されている。例えば、第2の電極62は、レーザ本体2および導波路層1のn側コンタクトのために使用される。
【0059】
第2の電極62は、とりわけレーザ本体2同士の間の自由領域Zにおいて横方向に沿って配置された、切れ目なく連続したコンタクト層62を有することができる。第2の電極62は、横方向に離間された複数のコンタクト層62を有することが可能であり、これらのコンタクト層62は、個々にコンタクト可能に構成されている。第2の電極62により、導波路層1内に形成された定在波場を電気的に増幅させることができる。代替的または追加的に、とりわけ複数の個々にコンタクト可能なコンタクト層62を有する第2の電極62に、電圧を所期のように印加することにより、導波路層1の屈折率、とりわけ局所的な屈折率を変化させることが可能である。
【0060】
図2Bとのさらなる違いとして、レーザ本体2は、それぞれ1つの側方向のパッシベーション層82または第2の絶縁層82を有する。とりわけ、第2の絶縁層82は、第2の電極62のコンタクト層の電気的な絶縁のために構成されている。第2の絶縁層82を、その材料組成に関して第1の絶縁層81とは異ならせることができる。しかしながら、第1の絶縁層81と第2の絶縁層82とを同じ材料から形成してもよい。その場合には、絶縁層81および82を1つの共通のプロセスで製造することができる。
【0061】
図3Bに示されている実施例は、レーザ装置10に関して
図3Aに示されている実施例に実質的に対応する。
図3Aとは異なり
図3Bには、導波路層1内に活性要素1Aが組み込まれているまたは形成されていることが概略的に示されている。とりわけ導波路層1の内部の屈折率をコントロールまたは適合させるために活性要素1Aを組み込むことにより、個々のレーザ本体2の相互の位相関係、ひいては出射方向を制御することができる。活性要素1Aは、ワニエ・シュタルク変調器として構成可能である。活性要素1Aは、とりわけ結合経路における移相器として使用される。活性領域13は、例えば、活性要素1Aの少なくとも1つまたは複数の量子井戸層を形成する。とりわけ、好ましくは複数の個別に制御可能なコンタクト層62を有する第2の電極62を介して、活性要素1Aを個別に制御することができる。
【0062】
図3Aとは異なり
図3Bには、導波路層1の側面1Sに被着されたミラー層41が示されている。
図3Aとは違って、放射非透過性の層4、例えばミラー層41または吸収体層42を、側面1Sに配置することができる。
【0063】
図4に示されている実施例は、レーザ装置10に関して
図3Bに示されている実施例に実質的に対応する。
図3Bとは異なり、レーザ装置10は、少なくとも1つのガイドレーザ本体2Lを有する。ガイドレーザ本体2Lは、レーザ装置10の前面10Vにおいて放射透過性のアパーチャ60を有していない。とりわけ、ガイドレーザ本体2Lは、平面図で見て、とりわけ放射非透過性に構成された第1のコンタクト層61によって覆われており、例えば完全に覆われている。したがって、ガイドレーザ本体2Lの活性ゾーン23で生成された電磁放射Sは、もっぱら導波路層1のみに入射される。
【0064】
結合層3は、とりわけガイド結合構造部30Lを有し、このガイド結合構造部30Lは、平面図で見て、ガイドレーザ本体2Lによって覆われており、とりわけ完全に覆われている。他の結合構造部30とは異なり、ガイド結合構造部30Lは、より大きな垂直高さおよびより大きな断面を有する。とりわけ、ガイド結合構造部30Lは、導波路層1の第2の部分層12および活性領域13を貫通して延在することができる。好ましくは、ガイド結合構造部30Lは、入射された放射Sを、2つの互いに逆向きの横方向に偏向させるのではなく、一方の横方向のみに偏向させるように構成されている。例えば、ガイド結合構造部30Lは、ガイドレーザ本体2Lの下方の中央に配置されているのではなく、ガイドレーザ本体2Lによって生成された放射が、所期のように一方の横方向に偏向されるように、ガイドレーザ本体2Lの中心軸線に対してオフセットされて配置されている。
【0065】
図3Bとは異なり、
図4に示されているレーザ装置10は、導波路層1の少なくとも1つまたは複数の側面1Sに吸収体層42を有する。電磁放射は、吸収体層42において反射されるのではなく吸収される。したがって、導波路層1の内部に定在波場は生じない。その代わりに、位相結合は、上側がミラーリングされたガイドレーザ本体2Lによって形成される。活性要素1A、とりわけワニエ・シュタルク変調器を組み込むことにより、個々のレーザ本体2の相互の位相関係、ひいては出射方向または放射方向を制御することができる。
【0066】
図5には、レーザ装置10の平面図が示されている。
図5に示されている実施例は、
図4に示されている実施例に実質的に対応する。導波路層1は、第1の部分領域1Xおよび第2の部分領域1Yを有することができる。例えば、第1の部分領域1Xは、第1の横方向に沿って、例えば長手側の横方向に沿って延在している。第2の部分領域1Yは、第2の横方向に沿って、例えば横断側の横方向に沿って延在している。
図5によれば、導波路層1は、複数の第1の部分領域1Xを有する。第2の部分領域1Y上には複数のガイドレーザ本体2Lが配置されており、これらのガイドレーザ本体2Lは、とりわけ、レーザ装置10の複数のガイドレーザ本体2Lからなる1つの列を形成する。第1の部分領域1Xの各々には、それぞれ1つのアパーチャ60を有する複数のレーザ本体が配置されている。導波路層1のうちの、2つの互いに隣り合う側面1Sには、吸収体層42が配置されている。
【0067】
図5によれば、
図4に関連して説明された概念が2次元に変換される。この変換は、とりわけ2つの部分領域1Xおよび1Yによって実施され、これら2つの部分領域1Xと1Yとは、それぞれ異なるように制御可能であって、かつ屈折率に関して異なることができる。これにより、回折画像の放射方向を、2つの横方向において互いに独立して制御することができる。
【0068】
位相結合され、モノリシックに集積され、とりわけシングルモードで構成されたレーザ装置を使用することにより、レーザ装置の複数のレーザ本体からの放射方向または出射方向を電気信号によって制御することが可能となり、それにより、幾何学的パターンの動的な制御を実現することが可能となる。とりわけ、本レーザ装置は、可動の部品を使用することなく、例えば可動の光学部品を使用することなく、結像されるべきパターンの周期性の任意選択的な制御、および/またはレーザ装置の放射方向の任意選択的な制御を電気信号によって行う、光学系を有さない個々の半導体チップとして構成されている。
【0069】
本特許出願は、独国特許出願第102018123320号明細書の優先権を主張し、その開示内容を、参照により本明細書に援用するものとする。
【0070】
実施例に基づいた本発明の説明により、本発明がこれらの実施例に限定されるわけではない。むしろ、本発明は、任意の新しい特徴および任意の特徴の組み合わせを含み、とりわけ、複数の特徴の任意の組み合わせは、これらの特徴自体またはこの組み合わせ自体が特許請求の範囲または実施例に明示的に記載されていない場合でも、特許請求の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0071】
10 レーザ装置
10V レーザ装置の前面
10R レーザ装置の背面
1 共通の導波路層
11 導波路層の第1の部分層
12 導波路層の第2の部分層
13 導波路層の活性領域
1A 活性要素
1V 導波路層の前面
1R 導波路層の背面
1S 導波路層の側面
1X 導波路層の第1の部分領域
1Y 導波路層の第2の部分領域
2 レーザ本体
21 第1の半導体層
22 第2の半導体層
23 活性ゾーン
24 レーザ本体の部分層
2H レーザ本体の半導体本体
2L ガイドレーザ本体
3 結合層
30 結合構造部
30L ガイド結合構造部
31 反射性のカバー層
4 放射非透過性の層
41 ミラー層
42 吸収体層
6 放射通過領域
60 アパーチャ
61 第1の電極/第1のコンタクト層
62 第2の電極/第2のコンタクト層
63 第3の電極/第3のコンタクト層
7 レーザ共振器
71 第1のミラー装置
72 第2のミラー装置
8 絶縁層
81 第1の絶縁層
82 第2の絶縁層/パッシベーション層
9 共通の支持体
90 背面側のカバー層
H 輝度
L 隣り合うレーザ本体同士の間の横方向距離
S 放射
W 角度
Z 中間領域