(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】モノオキシゲナーゼ突然変異体及びその応用
(51)【国際特許分類】
C12N 15/53 20060101AFI20230612BHJP
C12N 9/02 20060101ALI20230612BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20230612BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20230612BHJP
C12P 11/00 20060101ALI20230612BHJP
C12N 9/04 20060101ALN20230612BHJP
C12N 11/00 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
C12N15/53
C12N9/02 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12P11/00
C12N9/04 D
C12N11/00
(21)【出願番号】P 2021523213
(86)(22)【出願日】2018-11-05
(86)【国際出願番号】 CN2018113938
(87)【国際公開番号】W WO2020093191
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】516336828
【氏名又は名称】凱菜英医藥集團(天津)股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】ASYMCHEM LABORATORIES (TIANJIN) CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】洪 浩
(72)【発明者】
【氏名】ジェイムズ,ゲイジ
(72)【発明者】
【氏名】盧 江平
(72)【発明者】
【氏名】焦 学成
(72)【発明者】
【氏名】張 娜
(72)【発明者】
【氏名】張 克倹
(72)【発明者】
【氏名】李 瑞
(72)【発明者】
【氏名】張 瑜
(72)【発明者】
【氏名】楊 益明
【審査官】小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-512514(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108300707(CN,A)
【文献】J. Bacteriol.,2001年11月,Vol.183, No.21,pp.6478-6486
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノオキシゲナーゼ突然変異体であって、
前記モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が生じたアミノ酸配列であり、
前記突然変異は
、第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第95位のバリンのイソロイシンへの突然変異、第106位のシステインのセリンへの突然変異、第108位のトレオニンのセリンへの突然変異、第114位のメチオニンのロイシンへの突然変異、第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異、第190位のプロリンのフェニルアラニン又はロイシンへの突然変異、第191位のロイシンのバリンへの突然変異、第249位のシステインのバリンへの突然変異、第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第393位のシステインのバリンへの突然変異、第436位のシステインのセリンへの突然変異、第499位のロイシンのアラニンへの突然変異、第500位のグリシンのロイシンへの突然変異、第501位のセリンのトレオニンへの突然変異、第503位のイソロイシンのアラニンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニン、ロイシン又はアラニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニン、ロイシン又はアラニンへの突然変異、第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアルギニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギン酸への突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグリシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアルギニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアスパラギンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのフェニルアラニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミン酸への突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのバリンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのトレオニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのイソロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのヒスチジンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのチロシンへの突然変異、第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのヒスチジンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのグリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第503位のアスパラギンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、又は、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異であることを特徴とするモノオキシゲナーゼ突然変異体。
【請求項2】
請求項1に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体をコードすることを特徴とするDNA分子。
【請求項3】
請求項2に記載のDNA分子を含むことを特徴とする組換えプラスミド。
【請求項4】
pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19であることを特徴とする請求項3に記載の組換えプラスミド。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の組換えプラスミドを含むことを特徴とする宿主細胞。
【請求項6】
前記宿主細胞は、原核細胞、及び真核細胞を含むことを特徴とする請求項5に記載の宿主細胞。
【請求項7】
前記原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞であり、前記真核細胞は、酵母であることを特徴とする請求項6に記載の宿主細胞。
【請求項8】
モノオキシゲナーゼによって触媒されてチオエーテル類化合物に一原子酸素添加反応を行わせるステップを含むキラルスルホキシド生産方法であって、
前記モノオキシゲナーゼは請求項1に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体であり、
前記チオエーテル類化合物は
【化1】
であり、ただし、R
1、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
8アルキル基、C
5~C
10シクロアルキル基、C
5~C
10アリール基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基であり、又はR
1と、R
2とがカルボニル基上の炭素とともにC
5~C
10複素環基、C
5~C
10炭素環基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基を形成し、前記C
5~C
10複素環基及びC
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子はそれぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から少なくとも一つが選ばれ、前記C
5~C
10アリール基におけるアリール基、C
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロアリール基、C
5~C
10炭素環基における炭素環基もしくはC
5~C
10複素環基における複素環基はそれぞれ独立して、置換されず又はハロゲン、アルコキシ基もしくはアルキル基のうちの少なくとも一つによって置換されていることを特徴とするキラルスルホキシド生産方法。
【請求項9】
前記チオエーテル類化合物は
【化2】
であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記モノオキシゲナーゼは請求項1に記載のモノオキシゲナーゼ突然変異体の酵素破砕液、全細胞、凍結乾燥酵素粉末、凍結乾燥細胞、固定化酵素又は固定化細胞であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記一原子酸素添加反応の反応系にはさらにNAD/NADH及び/又はNADP/NADPHである補因子が含まれ、補因子循環系はグルコース及びグルコース脱水素酵素、ギ酸塩及びギ酸脱水素酵素、グルコース-6-リン酸及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素、又は第二級アルコール及び第二級アルコール脱水素酵素を含むことを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記一原子酸素添加反応の反応系において前記モノオキシゲナーゼの添加量は基質の質量の0.1倍~10倍であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記一原子酸素添加反応の温度は10~50℃であることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記一原子酸素添加反応の温度は30℃であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記一原子酸素添加反応はpHが7~10である条件下で行われることを特徴とする請求項8に記載の方法。
【請求項16】
前記一原子酸素添加反応はpHが9である条件下で行われることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生物工学分野に関し、より詳しく言えば、モノオキシゲナーゼ突然変異体及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
キラルスルホキシドは、自然界に幅広く存在し、多くの重要な生物活性分子の構造単位であるとともに、合成天然物及びキラル薬物の重要な中間体でもある。キラルスルホキシドの多くは、1つ以上のキラル中心を含み、異なるキラル薬物は、薬理活性、代謝経路、代謝速度及び毒性に大きな差があり、一方のエナンチオマーが効果的であり、他方のエナンチオマーは効果が薄くあるいは無効で、毒性があることも少なくない。したがって、キラル中心を含む化合物を高立体選択的に構築することが、医薬品の研究及び開発において重要な意義を有する。
【0003】
Baeyer Villigerモノオキシゲナーゼ(BVMOs)はフラビン類モノオキシゲナーゼに属し、一般には鎖状又は環状ケトンを立体選択的に酸化して、対応のエステル又はラクトンを生成させるために用いられる。BVMOsは硫黄、窒素及びリンの求電子性酸化反応を触媒でき、他にもケトンとボロンの求核性酸化反応をも触媒できる。キラル薬物合成分野でBVMOsは大きな応用があり、例えば硫黄を含むキラル前駆体の酸化を触媒して、キラル薬物モダフィニル及びオメプラゾールの合成に利用される(CN105695425A)。
【0004】
BVMOsのいくつかが既に商品化されているが、BVMOsには一般に酵素活性が低い、安定性が低い、スルホン副産物が生成するなどの問題がある。一般的に、定向進化により野生型酵素を改良させ、酵素の各種の特性を高めることによって、生産に応用可能にさせられる(Chem.Rev.2011,111:4165-4222.)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、従来のモノオキシゲナーゼにおける、酵素活性が低くスルホン副産物の含有量が高いという技術上の課題を解決するために、モノオキシゲナーゼ突然変異体及びその応用を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための本発明の一態様では、モノオキシゲナーゼ突然変異体を提供する。当該モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が生じたアミノ酸配列であり、突然変異は、少なくとも第45位、第95位、第106位、第108位、第114位、第186位、第190位、第191位、第249位、第257位、第393位、第436位、第499位、第500位、第501位、第503位、第504位、第559位及び第560位のうちの1つの突然変異部位を含み、且つ突然変異は、第45位のメチオニンがトレオニンに突然変異し、第95位のアラニンがトレオニンに突然変異し、第106位のシステインがセリンに突然変異し、第108位のトレオニンがセリンに突然変異し、第114位のメチオニンがロイシンに突然変異し、第186位のメチオニンがイソロイシンに突然変異し、第190位のプロリンがグルタミン、グリシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン酸、バリン、トレオニン、イソロイシン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン又はロイシンに突然変異し、第191位のロイシンがバリンに突然変異し、第249位のシステインがバリンに突然変異し、第257位のシステインがアラニンに突然変異し、第393位のシステインがバリンに突然変異し、第436位のシステインがセリンに突然変異し、第499位のロイシンがアラニンに突然変異し、第500位のグリシンがロイシンに突然変異し、第501位のセリンがトレオニンに突然変異し、第503位のイソロイシンがアラニンに突然変異し、第504位のプロリンがトレオニン、バリン又はセリンに突然変異し、第559位のチロシンがフェニルアラニン、リシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン、セリン、アルギニン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、セリン、ロイシン又はアラニンに突然変異し、そして第560位のチロシンがフェニルアラニン、ロイシン、セリン、プロリン、メチオニン又はアラニンに突然変異することであり、又はモノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、突然変異が生じたアミノ酸配列における突然変異部位を有し、且つ突然変異が生じたアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0007】
さらに、突然変異は、少なくとも第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアルギニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギン酸への突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグリシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアルギニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアスパラギンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのフェニルアラニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミン酸への突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのバリンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのトレオニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのイソロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのヒスチジンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのチロシンへの突然変異、第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのヒスチジンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのグリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第503位のアスパラギンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異である突然変異部位の組み合わせの1つを含み、
好ましくは、突然変異は、少なくとも第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異である突然変異部位の組み合わせの1つを含む。
【0008】
本発明のもう一つの態様では、DNA分子を提供する。当該DNA分子は前記モノオキシゲナーゼ突然変異体をコードする。
【0009】
本発明のもう一つの態様では、組換えプラスミドを提供する。当該組換えプラスミドは前記DNA分子を含む。
【0010】
さらに、組換えプラスミドはpET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19である。
【0011】
本発明のもう一つの態様では、宿主細胞を提供する。当該宿主細胞は前記組換えプラスミドを含む。
【0012】
さらに、宿主細胞は原核細胞、酵母及び真核細胞を含み、原核細胞として好ましいのは大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞である。
【0013】
本発明のもう一つの態様では、キラルスルホキシド生産方法を提供する。当該方法は、モノオキシゲナーゼによって触媒されてチオエーテル類化合物に一原子酸素添加反応を行わせるステップを含み、モノオキシゲナーゼは前記モノオキシゲナーゼ突然変異体である。
さらに、チオエーテル類化合物は
【化1】
であり、ただし、R
1、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
8アルキル基、C
5~C
10シクロアルキル基、C
5~C
10アリール基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基であり、又はR
1と、R
2とがカルボニル基上の炭素とともにC
5~C
10複素環基、C
5~C
10炭素環基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基を形成し、C
5~C
10複素環基及びC
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子はそれぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から少なくとも一つが選ばれ、C
5~C
10アリール基におけるアリール基、C
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロアリール基、C
5~C
10炭素環基における炭素環基もしくはC
5~C
10複素環基における複素環基はそれぞれ独立して、置換されず又はハロゲン、アルコキシ基もしくはアルキル基のうちの少なくとも一つによって置換される。
【0014】
さらに、チオエーテル類化合物は
【化2】
である。
【0015】
さらに、モノオキシゲナーゼは、上記のモノオキシゲナーゼ突然変異体の酵素破砕液、全細胞、凍結乾燥酵素粉末、凍結乾燥細胞、固定化酵素又は固定化細胞である。
【0016】
さらに、一原子酸素添加反応の反応系にはさらにNAD/NADH及び/又はNADP/NADPHである補因子が含まれ、補因子循環系はグルコース及びグルコース脱水素酵素、ギ酸塩及びギ酸脱水素酵素、グルコース-6-リン酸及びグルコース-6-リン酸脱水素酵素、又は第二級アルコール及び第二級アルコール脱水素酵素を含む。
【0017】
さらに、一原子酸素添加反応の反応系においてモノオキシゲナーゼの添加量は基質の質量の0.1倍~10倍である。
【0018】
さらに、一原子酸素添加反応の温度は10~50℃であり、好ましくは30℃である。
【0019】
さらに、一原子酸素添加反応はpHが7~10、好ましくはpHが9である条件下で行われる。
【発明の効果】
【0020】
本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1に示すモノオキシゲナーゼをもとに、部位特異的突然変異による突然変異でそのアミノ酸配列を改変させることによって、タンパク質の構造及び機能の変化を実現し、さらに指向性スクリーニングにより前記突然変異部位を有するモノオキシゲナーゼを得たものであり、本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に高まることが利点であり、キラルスルホキシドの産業的生産のコストが大幅に低減される。
【発明を実施するための形態】
【0021】
なお、矛盾がない限り、本願の実施例及び実施例の特徴を互いに組み合わせることができる。次に実施例を用いて本発明を詳細に説明する。
【0022】
ブラキモナス・ペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)に由来するモノオキシゲナーゼは(3-クロロベンジル)ジメチルスルフィドの変換を高選択的に触媒できる。しかし、(1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィドの変換では、ブラキモナス・ペトロレオボランス(Brachymonas petroleovorans)に由来するモノオキシゲナーゼの触媒生成物のee値はわずか43.9%である。他のモノオキシゲナーゼをスクリーニングしたところ、ロドコッカス・ルーバーRhodococcus ruber-SD1に由来するモノオキシゲナーゼBVMOが、基質(1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィドの変換を高選択的に触媒でき、ee値は99%であるが、その活性は低く、反応後スルホン副産物(過酸化物)の含有量は多く、反応時多くの酵素は添加され、生成物の分離抽出は難しいことを発見した。本発明の発明者は定向進化によりBVMOの活性を高め、酵素の使用量を低減し、酵素の選択性を向上させ、スルホン副産物の含有量を減らすために様々な試みを行った。
【0023】
本発明の発明者は定向進化によりモノオキシゲナーゼSEQ ID NO:1(MTTSIDREALRRKYAEERDKRIRPDGNDQYIRLDHVDGWSHDPYMPITPREPKLDHVTFAFIGGGFSGLVTAARLRESGVESVRIIDKAGDFGGVWYWNRYPGAMCDTAAMVYMPLLEETGYMPTEKYAHGPEILEHCQRIGKHYDLYDDALFHTEVTDLVWQEHDQRWRISTNRGDHFTAQFVGMGTGPLHVAQLPGIPGIESFRGKSFHTSRWDYDYTGGDALGAPMDKLADKRVAVIGTGATAVQCVPELAKYCRELYVVQRTPSAVDERGNHPIDEKWFAQIATPGWQKRWLDSFTAIWDGVLTDPSELAIEHEDLVQDGWTALGQRMRAAVGSVPIEQYSPENVQRALEEADDEQMERIRARVDEIVTDPATAAQLKAWFRQMCKRPCFHDDYLPAFNRPNTHLVDTGGKGVERITENGVVVAGVEYEVDCIVYASGFEFLGTGYTDRAGFDPTGRDGVKLSEHWAQGTRTLHGMHTYGFPNLFVLQLMQGAALGSNIPHNFVEAARVVAAIVDHVLSTGTSSVETTKEAEQAWVQLLLDHGRPLGNPECTPGYYNNEGKPAELKDRLNVGYPAGSAAFFRMMDHWLAAGSFDGLTFR)であって、対応する塩基配列がSEQ ID NO:2(atgacaaccagtatcgatcgcgaggccctgcgccgcaaatatgccgaagagcgcgataaacgcatccgcccggatggcaacgatcagtatattcgcctggatcatgttgacggttggagccatgacccttatatgccgatcaccccgcgcgagccgaaactggaccatgttacatttgcattcatcggcggcggttttagcggtctggtgaccgccgcacgtctgcgtgaaagtggcgtggagagtgttcgcatcatcgacaaagcaggcgatttcggcggcgtttggtattggaaccgttatccgggtgccatgtgcgataccgcagcaatggtgtacatgcctctgctggaagagaccggctacatgccgacagaaaaatatgctcatggtccggagattctggagcactgtcagcgcatcggcaaacactacgacctgtatgacgatgccctgttccataccgaagttaccgacctggtgtggcaggagcatgatcagcgttggcgcatcagcacaaaccgcggtgaccatttcaccgcacagttcgttggcatgggtaccggcccgctgcacgttgcacagctgccgggtattccgggtatcgagagcttccgtggtaagagcttccataccagccgctgggactatgactatacaggtggcgacgcactgggcgcacctatggacaaactggcagacaaacgcgtggcagtgattggtaccggcgcaaccgccgttcagtgcgttccggaactggccaagtactgccgcgaactgtatgtggttcagcgcaccccgagtgccgttgatgaacgcggcaaccatccgatcgatgaaaagtggttcgcccagattgccacacctggttggcagaaacgctggctggatagctttaccgcaatctgggatggtgtgctgacagatccgagcgaactggccatcgagcatgaagacctggtgcaggatggttggacagcactgggtcagcgcatgcgtgcagccgtgggtagcgttccgattgaacagtatagcccggagaacgtgcagcgtgccctggaagaggccgacgatgaacagatggaacgcattcgcgcacgtgtggatgagattgtgaccgatcctgccaccgccgcccagctgaaagcatggtttcgccagatgtgcaagcgtccgtgcttccacgatgactatctgcctgcattcaaccgcccgaatacccatctggtggacacaggtggcaaaggcgtggagcgcattaccgaaaacggtgtggtggttgcaggtgtggaatatgaggtggactgcatcgtgtacgccagtggcttcgagttcttaggcaccggttatacagaccgtgcaggtttcgatccgaccggccgtgatggcgttaaactgagcgaacattgggcccaaggcacacgtaccctgcatggcatgcatacctacggctttccgaacctgtttgtgctgcagctgatgcagggtgcagccctgggtagcaacatcccgcacaactttgttgaagccgcccgcgtggtggccgcaattgttgatcatgtgctgagcacaggcaccagtagcgttgaaaccaccaaggaagccgaacaagcctgggtgcagctgctgctggatcacggtcgccctctgggcaacccggagtgtacacctggttattacaataatgaaggcaaaccggccgaactgaaggaccgtctgaacgttggctatccggccggtagcgccgccttttttcgtatgatggaccactggctggcagccggcagttttgatggcctgacattccgctaa)であるモノオキシゲナーゼの活性及び選択性を向上して、酵素の使用量を減らし、スルホン副産物の含有量を減らす。まず全プラスミドPCRによりモノオキシゲナーゼSEQ ID NO:1に突然変異部位を導入して、突然変異体の活性及びスルホン副産物の含有量を検出することで、活性が高められ又はスルホン副産物の含有量が低減された突然変異体を選択した。
【0024】
BVMOを鋳型として、34対の部位特異的突然変異プライマー(M45T、V95I、C106S、D107A、T108I、T108S、M114L、M186I、P190F、P190L、L191V、L191A、C249V、C257A、C393V、C436S、L499A、L499G、G500L、S501T、N502Q、I503G、I503A、I503M、P504F、G558V、G558N、Y559F、Y559L、Y559A、Y560F、Y560L、Y560A、C555S)を設計し、pET-28b(+)を発現ベクターとして部位特異的突然変異により目的遺伝子を備える突然変異プラスミドを得た。
【0025】
部位特異的突然変異とは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などの方法によって、目的DNA断片(ゲノムであってもよく、プラスミドであってもよい)に対して、塩基の添加、削除、点突然変異などを含む所望の変化を導入する(通常、好適な方向を表す変化である)ことを指す。部位特異的突然変異は、DNAで発現される目的タンパク質の性状及び特徴付けを迅速かつ効率的に向上させることができ、遺伝子研究作業において非常に有用な手段である。
【0026】
全プラスミドPCRによって部位特異的突然変異を導入する方法は、簡単かつ有効であり、現在、多く使用される手段である。その原理は、突然変異部位を含む一対のプライマー(順方向、逆方向)及び鋳型プラスミドをアニーリングし、ポリメラーゼで「循環延長」することであり、いわゆる循環伸長とは、ポリメラーゼで鋳型に応じてプライマーを伸長させ、一周した後にプライマー5'末端に戻って終了し、さらに繰り返して加熱しアニーリングし伸長するサイクルを指す。この反応は、ローリングサークル増幅とは異なり、複数のタンデムコピーを生成しない。順方向プライマーの伸長生成物と逆方向プライマーの伸長生成物は、アニーリングされてペアリングして切り欠きのある開環プラスミドとなる。伸長生成物をDpn Iで酵素切断し、元々の鋳型プラスミドが、一般的な大腸菌に由来し、damメチル化修飾されたものであり、Dpn Iに感受性があって細かく切断されるが、インビトロで合成された、突然変異配列を有するプラスミドは、メチル化されておらず切断されないため、その後の形質転換においてうまく形質転換でき、突然変異プラスミドのクローンを得ることができる。
【0027】
上記突然変異プラスミドを大腸菌細胞内に形質転換し、大腸菌に過剰発現させる。その後、超音波処理による細胞破壊で粗酵素を取得する。モノオキシゲナーゼの誘導発現に最適な条件は、25℃で、0.1mMのIPTGを用いて一晩誘導することである。
【0028】
本発明の典型的な一実施形態では、モノオキシゲナーゼ突然変異体を提供する。当該モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は、SEQ ID NO:1に示すアミノ酸配列に突然変異が生じたアミノ酸配列であり、突然変異は、少なくとも第45位、第95位、第106位、第108位、第114位、第186位、第190位、第191位、第249位、第257位、第393位、第436位、第499位、第500位、第501位、第503位、第504位、第559位及び第560位のうちの1つの突然変異部位を含み、且つ前記突然変異は、前記第45位のメチオニンがトレオニンに突然変異し、第95位のアラニンがトレオニンに突然変異し、第106位のシステインがセリンに突然変異し、第108位のトレオニンがセリンに突然変異し、第114位のメチオニンがロイシンに突然変異し、第186位のメチオニンがイソロイシンに突然変異し、第190位のプロリンがグルタミン、グリシン、アルギニン、アスパラギン、グルタミン酸、バリン、トレオニン、イソロイシン、ヒスチジン、チロシン、フェニルアラニン又はロイシンに突然変異し、第191位のロイシンがバリンに突然変異し、第249位のシステインがバリンに突然変異し、第257位のシステインがアラニンに突然変異し、第393位のシステインがバリンに突然変異し、第436位のシステインがセリンに突然変異し、第499位のロイシンがアラニンに突然変異し、第500位のグリシンがロイシンに突然変異し、第501位のセリンがトレオニンに突然変異し、第503位のイソロイシンがアラニンに突然変異し、第504位のプロリンがトレオニン、バリン又はセリンに突然変異し、第559位のチロシンがフェニルアラニン、リシン、メチオニン、プロリン、グルタミン、アスパラギン、セリン、アルギニン、バリン、アスパラギン酸、イソロイシン、セリン、ロイシン又はアラニンに突然変異しそして第560位のチロシンがフェニルアラニン、ロイシン、セリン、プロリン、メチオニン又はアラニンに突然変異することであり、又は前記モノオキシゲナーゼ突然変異体のアミノ酸配列は前記突然変異が生じたアミノ酸配列における前記突然変異部位を有し、且つ前記突然変異が生じたアミノ酸配列と80%以上の相同性を有するアミノ酸配列である。
【0029】
好ましくは、突然変異は、少なくとも第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギン酸への突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアルギニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグリシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアルギニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのアスパラギンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのフェニルアラニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのグルタミン酸への突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのバリンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのトレオニンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのイソロイシンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのヒスチジンへの突然変異、第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのチロシンへの突然変異、第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのヒスチジンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのリシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのロイシンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのアスパラギンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのプロリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのセリンへの突然変異と第560位のチロシンのプロリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのグリシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのトレオニンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのフェニルアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのバリンへの突然変異と第560位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのアラニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのイソロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのグルタミンへの突然変異と第560位のチロシンのロイシンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第503位のアスパラギンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのトレオニンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのバリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異、第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第504位のプロリンのセリンへの突然変異と第190位のプロリンのロイシンへの突然変異である突然変異部位の組み合わせの1つを含む。
【0030】
好ましくは、突然変異は、少なくとも第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異、第190位のプロリンのロイシンへの突然変異と第559位のチロシンのメチオニンへの突然変異と第249位のシステインのバリンへの突然変異と第393位のシステインのバリンへの突然変異と第257位のシステインのアラニンへの突然変異と第45位のメチオニンのトレオニンへの突然変異と第186位のメチオニンのイソロイシンへの突然変異である突然変異部位の組み合わせの1つを含む。
【0031】
本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体は、SEQ ID NO:1に示すモノオキシゲナーゼをもとに、部位特異的突然変異による突然変異でそのアミノ酸配列を改変させることによって、タンパク質の構造及び機能の変化を実現し、さらに指向性スクリーニングにより前記突然変異部位を有するモノオキシゲナーゼを得たものであり、本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体は、酵素活性が大幅に高まることが利点であり、しかも酵素の選択性が大幅に向上し、スルホン副産物の含有量が大幅に減らされ、キラルスルホキシドの産業的生産のコストが大幅に減らされる。
【0032】
本発明の典型的な一実施形態では、DNA分子を提供する。当該DNA分子は前記モノオキシゲナーゼ突然変異体をコードする。前記DNAによってコードされたモノオキシゲナーゼには、酵素活性及び酵素の選択性が向上され、スルホン副産物の含有量が減らされており、キラルスルホキシドの産業的生産では酵素の添加量が低減され、分離精製後処理の難度が下がる。
【0033】
本発明に係るDNA分子は、「発現カセット」の形態で存在してもよい。「発現カセット」とは、線形又は環状の核酸分子を指し、特定のヌクレオチド配列を適切な宿主細胞で発現することを指導することができるDNA及びRNA配列を含む。一般的には、目的ヌクレオチドに有効に接続されるプロモータを含み、非強制的には、終止シグナル及び/又は他の制御要素に有効に接続されたプロモータを含む。発現カセットは、ヌクレオチド配列を正確に翻訳するに必要な配列をさらに含むことができる。コード領域は、通常、目的タンパク質をコードするが、センス又はアンチセンス方向において、例えばアンチセンスRNA又は非翻訳的RNAなどの目的機能的RNAもコードする。目的ポリヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラ型であってもよく、これは、少なくとも1つの成分と少なくとも1つの他の成分とが異種であることを意味する。発現カセットは、天然に存在するものであって、但し異種発現ための有効組換えの形で獲得されるものであってもよい。
【0034】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、組換えプラスミドを提供する。該組換えプラスミドは、上記いずれかのDNA分子を含む。上記組換えプラスミド中のDNA分子は、正確かつ円滑に複製、転写又は発現することができるように、組換えプラスミドの適切な位置に位置付けられる。
【0035】
本発明は、上記DNA分子を限定する際に用いられる限定語が「含む」であるが、DNA配列の両端にその機能には関与しない他の配列を任意に加えることができることを意味するものではない。組換え操作の要件を満たすために、DNA配列の両端に適切な制限酵素の酵素切断部位を添加したり、開始コドン、終止コドンなどを別途に追加したりする必要があるため、閉鎖式の表現で上記DNA分子を限定すれば、このような状況をカバーできないことが当業者に知られている。
【0036】
本発明で使用される用語「プラスミド」は、二本鎖又は一本鎖の線状又は環状形式の任意のプラスミド、コスミド、バクテリオファージ又はアグロバクテリウム二元核酸分子を含み、好ましくは組換え発現プラスミドであり、原核発現プラスミドであってもよく、真核発現プラスミドであってもよいが、好ましくは原核発現プラスミドである。いくつかの実施形態では、組換えプラスミドは、pET-22b(+)、pET-22b(+)、pET-3a(+)、pET-3d(+)、pET-11a(+)、pET-12a(+)、pET-14b(+)、pET-15b(+)、pET-16b(+)、pET-17b(+)、pET-19b(+)、pET-20b(+)、pET-21a(+)、pET-23a(+)、pET-23b(+)、pET-24a(+)、pET-25b(+)、pET-26b(+)、pET-27b(+)、pET-28a(+)、pET-29a(+)、pET-30a(+)、pET-31b(+)、pET-32a(+)、pET-35b(+)、pET-38b(+)、pET-39b(+)、pET-40b(+)、pET-41a(+)、pET-41b(+)、pET-42a(+)、pET-43a(+)、pET-43b(+)、pET-44a(+)、pET-49b(+)、pQE2、pQE9、pQE30、pQE31、pQE32、pQE40、pQE70、pQE80、pRSET-A、pRSET-B、pRSET-C、pGEX-5X-1、pGEX-6p-1、pGEX-6p-2、pBV220、pBV221、pBV222、pTrc99A、pTwin1、pEZZ18、pKK232-18、pUC-18又はpUC-19から選択される。より好ましくは、上記組換えプラスミドは、pET-22b(+)である。
【0037】
本発明の1つの典型的な実施形態によれば、上記いずれかの組換えプラスミドを含む宿主細胞を提供する。本発明に適用される宿主細胞は、原核細胞、酵母又は真核細胞を含むが、これらに限定されない。好ましくは、原核細胞は、真菌、例えばグラム陰性菌又はグラム陽性菌である。より好ましくは、原核細胞は、大腸菌BL21細胞又は大腸菌DH5αコンピテント細胞である。モノオキシゲナーゼ誘導発現の最適条件は、25℃、0.1mMのIPTGで16時間誘導である。突然変異プラスミドを大腸菌細胞に形質転換し、次に超音波細胞破砕法により粗酵素を得る。
【0038】
本発明の典型的な一実施形態では、キラルスルホキシド生産方法を提供する。当該方法は、モノオキシゲナーゼによって触媒されてチオエーテル類化合物に一原子酸素添加反応を行わせるステップを含み、ただし、モノオキシゲナーゼは前記いずれかのモノオキシゲナーゼ突然変異体である。本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体はより高い酵素触媒活性及び選択性を有するため、本発明のモノオキシゲナーゼ突然変異体を利用してキラルスルホキシドを製造する場合、生産コストが減らされるだけでなく、得られたキラルスルホキシドのee値は99%を超え、de値は99%を超えている。
【0039】
本発明の典型的な一実施形態では、チオエーテル類化合物は
【化3】
であり、ただし、R
1、R
2はそれぞれ独立してC
1~C
8アルキル基、C
5~C
10シクロアルキル基、C
5~C
10アリール基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基であり、又はR
1と、R
2とがカルボニル基上の炭素とともにC
5~C
10複素環基、C
5~C
10炭素環基もしくはC
5~C
10ヘテロアリール基を形成し、C
5~C
10複素環基及びC
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロ原子はそれぞれ独立して窒素、酸素及び硫黄から少なくとも一つが選ばれ、C
5~C
10アリール基におけるアリール基、C
5~C
10ヘテロアリール基におけるヘテロアリール基、C
5~C
10炭素環基における炭素環基もしくはC
5~C
10複素環基における複素環基はそれぞれ独立して、置換されず又はハロゲン、アルコキシ基もしくはアルキル基のうちの少なくとも一つによって置換される。
【0040】
典型的には、
【化4】
であり、チオエーテル類化合物は
【化5】
((1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィド)である。
【0041】
モノオキシゲナーゼは、モノオキシゲナーゼ突然変異体の酵素破砕液、全細胞、凍結乾燥酵素粉末、凍結乾燥細胞、固定化酵素又は固定化細胞であってもよい。
【0042】
次に実施例を用いて本発明の有益な効果をさらに説明する。
【0043】
(実施例1)
10mL反応フラスコに16mgの(1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィドを加え、そして9.0mgの0.1MのTris-HCl、20mgのイソプロパノール、0.16mgのNADP+、1.6mgのアルコール脱水素酵素凍結乾燥粉末を加え、そして1.6mgのモノオキシゲナーゼBVMO凍結乾燥酵素粉末を加え、均一に混合し、総体積は1mLであり、30℃で200回転のシェーカーにおいて16時間反応させた。反応サンプル系に3mLのアセトニトリルを加え、均一に混合した後5mLのEP管に入れて、12000回転で3分間遠心分離させた。100μLの上清をサンプルボトルに入れて、90%アセトニトリルを900μL加え、HPLCより検出し、検出波長は210nmであった。結果は表1に示すとおりである。
【0044】
【表1】
SEQ ID NO:1に対する酵素活性の増加倍数では、+は1~2倍増加を、++は3~5倍増加を、+++は5~10倍増加を表す。スルホン含有量が20~30%である場合は*と、含有量が2~20%である場合は**と、含有量が2%未満である場合は***と記す。
【0045】
酵素液の調製手順:遠心分離して96ウェルプレートから上清培地を除去し、各ウェルに200μLの酵素分解溶液(リゾチーム2mg/mL、ポリミキシン0.5mg/mL、pH=7.0)を加え、37℃で保温して3時間破砕した。
【0046】
ハイスループットスクリーニング手順:250μLの活性測定系:基質の最終濃度は2mMで、NADPHの最終濃度は0.3mMであり、酵素破砕液の添加量は100μLであり、pH=9.0で、温度は30℃であった。
【0047】
スクリーニングして得た突然変異体を振盪フラスコにおいて培養した後、増幅反応を行わせた。
【0048】
モノオキシゲナーゼ誘導発現の最適条件:25℃、0.1mMのIPTGで一晩誘導する。
【0049】
(実施例2)
10mL反応フラスコに20mgの(1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィドを加え、そして9.0mgの0.1MのTris-HCl、20mgのイソプロパノール、0.2mgのNADP+、20mgのアルコール脱水素酵素を加え、そして20mgのモノオキシゲナーゼBVMOを加え、均一に混合し、総体積は1mLであり、30℃で200回転のシェーカーにおいて16時間反応させた。反応サンプル系に3mLのアセトニトリルを加え、均一に混合した後5mLのEP管に入れて、12000回転で3分間遠心分離させた。100μLの上清をサンプルボトルに入れて、90%アセトニトリルを900μL加え、HPLCより検出し、検出波長は210nmであった。
【0050】
一部位突然変異体は、原種より変換効果が優れるが、理想的な効果には至らなかった。飽和突然変異を組み合わせると複数の突然変異部位による相乗効果がある突然変異体が得られ、しかもそのアミノ酸の構成の最適化が可能である。結果は表2に示すとおりである。
【0051】
【表2-1】
【表2-2】
SEQ ID NO:1に対する酵素活性の増加倍数では、+は1~2倍増加を、++は3~5倍増加を、+++は5~10倍増加を、++++は10~20倍増加を、+++++は20倍を超える増加を表す。スルホン含有量が20~30%である場合は*と、含有量が2~20%である場合は**と、含有量が2%未満である場合は***と記す。
【0052】
突然変異部位を組み合わせるとより優れた突然変異体を得る。したがって、DNAシャッフリング(DNA shuffling)より突然変異部位をランダムに組み替えて突然変異ライブラリーを構築した後、より優れた突然変異体を得ることを図るため、スクリーニングを行った。
【0053】
DNAシャッフリング(DNA shuffling)は分子レベルにおいて行われる遺伝子の有性的組換えである。ヌクレアーゼIで一組の相同遺伝子をランダムな断片に消化し、これらのランダムな断片がライブラリーになり、一方がプライマーで他方が鋳型となってPCR増幅を行った。一方の遺伝子コピーの断片が他方の遺伝子コピーのプライマーになると、鋳型の交換及び遺伝子組換えが発生することになる。
【0054】
酵素液の調製手順:遠心分離して96ウェルプレートから上清培地を除去し、各ウェルに200μLの酵素分解溶液(リゾチーム2mg/mL、ポリミキシン0.5mg/mL、pH=7.0)を加え、37℃で保温して3時間破砕した。
【0055】
ハイスループットスクリーニング手順:250μLの活性測定系:基質の最終濃度は2mMで、NADPHの最終濃度は0.3mMであり、酵素破砕液の添加量は100μLであり、pH=9.0で、温度は30℃であった。
【0056】
スクリーニングして得た突然変異体を振盪フラスコにおいて培養した後、増幅反応を行わせた。
【0057】
モノオキシゲナーゼ誘導発現の最適条件:25℃、0.1mMのIPTGで一晩誘導する。
【0058】
(実施例3)
10mL反応フラスコに30mgの(1-(3-クロロフェニル)シクロプロピル)メチルスルフィドを加え、そして9.0mgの0.1MのTris-HCl、30mgのイソプロパノール、0.3mgのNADP+、30mgのアルコール脱水素酵素を加え、そして30mgのモノオキシゲナーゼBVMOを加え、均一に混合し、総体積は1mLであり、30℃で200回転のシェーカーにおいて16時間反応させた。反応サンプル系に3mLのアセトニトリルを加え、均一に混合した後5mLのEP管に入れて、12000回転で3分間遠心分離させた。100μLの上清をサンプルボトルに入れて、90%アセトニトリルを900μL加え、HPLCより検出し、検出波長は210nmであった。結果は表3に示すとおりである。
【0059】
【表3】
SEQ ID NO:1に対する酵素活性の増加倍数では、+は1~2倍増加を、++は3~5倍増加を、+++は5~10倍増加を、++++は10~20倍増加を、+++++は20倍を超える増加を表す。スルホン含有量が20~30%である場合は*と、含有量が2~20%である場合は**と、含有量が2%未満である場合は***と記す。
【0060】
上述したのが本発明の好ましい実施例に過ぎず、本発明はこれに限定されない。当業者は、本発明に様々な変更と変形を行うことができる。本発明の趣旨及び原理を逸脱せず行った修正、同等な置き換え、改善などは、いずれも本発明の保護範囲に含まれる。
【配列表】