(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】非常に耐久性のあるペースト状充填および仕上げ材料のための組成物、ペースト状充填および仕上げ材料、ならびにそれを生成するための方法
(51)【国際特許分類】
C08L 31/04 20060101AFI20230612BHJP
C08L 1/08 20060101ALI20230612BHJP
C08L 23/08 20060101ALI20230612BHJP
C08L 33/04 20060101ALI20230612BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20230612BHJP
C08K 3/26 20060101ALI20230612BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20230612BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20230612BHJP
C09D 101/08 20060101ALI20230612BHJP
C09D 123/08 20060101ALI20230612BHJP
C09D 131/04 20060101ALI20230612BHJP
C09D 133/04 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
C08L31/04 S
C08L1/08
C08L23/08
C08L31/04 B
C08L33/04
C08K3/34
C08K3/26
C09D5/00 D
C09D7/61
C09D101/08
C09D123/08
C09D131/04
C09D133/04
(21)【出願番号】P 2021524259
(86)(22)【出願日】2018-11-06
(86)【国際出願番号】 EP2018000500
(87)【国際公開番号】W WO2020094206
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2021-11-08
(73)【特許権者】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィングス、ノルベルト
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン スローン、クラウディア
(72)【発明者】
【氏名】ハインリヒ、エリーナ
(72)【発明者】
【氏名】ミシュク、セバスティアン
【審査官】櫛引 智子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-004876(JP,A)
【文献】特開平10-060368(JP,A)
【文献】特表2003-510401(JP,A)
【文献】特開昭48-034940(JP,A)
【文献】特公昭49-024157(JP,B1)
【文献】特表2010-529261(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L,C08K,C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの充填剤と、少なくとも1つの結合剤と、添加剤と、を含む、ペースト状充填および仕上げ材料のための組成物であって、前記少なくとも1つの結合剤が、有機ポリマーおよびヒドロキ
シエチルセルロースを含み、
前記ヒドロキシエチルセルロースが、前記結合剤を安定化するための保護コロイドとして使用され、前記少なくとも1つの充填剤が、
アタパルジャイトおよびセピオライトからなる群から選択される層状ケイ酸塩材料である、組成物。
【請求項2】
前記有機ポリマーが、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記有機ポリマーは、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物が、全組成物の0.1~20重量%の前記少なくとも1つの結合剤を含む、請求項1~請求項3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記組成物が、全組成物の3~15重量%の前記少なくとも1つの結合剤を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が、全組成物の5.0~8.0重量%の前記少なくとも1つの結合剤を含む、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの結合剤が、全組成物の0.001~0.20重量%の前記ヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1つの結合剤が、全組成物の0.001~0.10重量%の前記ヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1つの結合剤が、全組成物の0.0015~0.09重量%の前記ヒドロキシエチルセルロースを含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記層状ケイ酸塩材料が、セピオライトである、請求項
1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、全組成物の0.01~1.00重量%の前記層状ケイ酸塩材料を含む、請求項1~
10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、全組成物の0.03~0.50重量%の前記層状ケイ酸塩材料を含む、請求項
11に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が、全組成物の0.05~0.20重量%の前記層状ケイ酸塩材料を含む、請求項
12に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、セルロースをさらに含む、請求項1~
13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、修飾セルロースを含む、請求項
14に記載の組成物。
【請求項16】
前記組成物が、2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
15に記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物が、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項
16に記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物が、全組成物の0.1~2.0重量%のセルロースを含む、請求項
14~
17のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物が、全組成物の0.1~1.0重量%のセルロースを含む、請求項
18に記載の組成物。
【請求項20】
前記組成物が、全組成物の0.01~0.2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、全組成物の0.35~0.6重量%のヒドロキシエチルセルロースと、を含む、請求項
18または請求項
19に記載の組成物。
【請求項21】
前記組成物が、少なくとも2つの充填剤を含み、第1の前記充填剤が、
アタパルジャイトおよびセピオライトからなる群から選択される層状ケイ酸塩材料であり、さらなる第2の充填剤が、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~
20のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項22】
前記第2の充填剤が、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項
21に記載の組成物。
【請求項23】
前記第2の充填剤が、炭酸カルシウムマグネシウムである、請求項
22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が、少なくとも第3の充填剤を含み、前記第3の充填剤が、雲母鉱物である、請求項
21~請求項
23のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項25】
前記第3の充填剤が、白雲母である、請求項
24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、殺生物剤をさらに含む、請求項1~
25のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項27】
前記殺生物剤が、2-メチル-1,2H-チアゾール-3(2H)-オンおよび/または1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンである、請求項
26に記載の組成物。
【請求項28】
請求項1~
27のいずれか1項に記載の組成物から調製された、ペースト状充填および仕上げ材料。
【請求項29】
前記ペースト状充填および仕上げ材料が、物理的に乾燥するスプレー可能な充填および仕上げ材料である、請求項
28に記載のペースト状充填および仕上げ材料。
【請求項30】
請求項
28に記載のペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法であって、前記方法が、2段階プロセスに基づき、前記方法によれば、第1のステップでは、乾燥構成成分が均質化され、第2のステップでは、前記均質化された乾燥構成成分が、水性のまたは水で希釈可能な構成成分に添加される、方法。
【請求項31】
請求項
29に記載のペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法であって、前記方法が、2段階プロセスに基づき、前記方法によれば、第1のステップでは、乾燥構成成分が均質化され、第2のステップでは、前記均質化された乾燥構成成分が、水性のまたは水で希釈可能な構成成分に添加される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それぞれの独立請求項によるペースト状充填および仕上げ材料のための組成物、ペースト状充填および仕上げ材料、ならびにペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術では、接合部を充填するための、または壁などの表面に適用して凹凸を滑らかにし、加えてその上に適用される別の層のプライマー層として機能するための、基本的に2つの種類の充填材料が知られている。すなわち、一方は粉末状充填材料であり、他方はペースト状充填材料である。ペースト状充填材料はすぐに使用できるという利点を有するが、粉末状充填材料は使用前に水と混合する必要がある。ペースト状充填材料は、処理特徴が変化または劣化することなく、数か月にわたって貯蔵可能である必要がある。
【0003】
最新式の既知のペースト状充填材料(例えば、US2005/0235878 A1)は、ポリマー結合剤と、充填剤と、添加剤とを含む物理的に乾燥する系である。
【0004】
ポリマー結合剤として、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)(EVA)、ポリアクリレート、および/またはポリビニルアルコール(PVOH)が、水性分散液または再分散性粉末のいずれかとして用いられている。結合剤は、充填剤材料の成分を結合し、充填剤を壁などのような基材に接着結合する機能を有する。
【0005】
充填剤構成要素として、通常鉱物起源のものである、塊状および層状材料が使用されている。充填剤構成成分は、コーティングの枠組みまたは骨格を形成し、したがって添加される充填剤材料の量に応じて層厚および沈降特徴に寄与する。主な鉱物充填剤材料は、(天然)炭酸カルシウムまたは炭酸カルシウムマグネシウム(ドロマイト)である。
【0006】
添加剤として、例えば、増粘剤および殺生物剤が使用され得る。増粘剤は、充填材料の粘度を一定に維持する効果を有するヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロースとしてのセルロース系添加剤であり得、最長1年の期間にわたって貯蔵されると一定の加工性が確保される。
【0007】
殺生物剤は、細菌汚染を防ぐために添加され、最終的に、真菌蔓延を防ぐために殺菌剤が添加される。
【0008】
一方では、ペースト状充填材料は、表面の半仕上げにますます使用されており、したがって、ペースト状充填および仕上げ材料と以下称する。本文脈において、半仕上げとは、表面上にそれ以上のコーティングを必要としないことを意味する。しかしながら、その後コーティング(例えば、装飾コーティング)される可能性がある。ペースト状充填および仕上げ材料の大部分は、例えば、こてによって手動で適用される。必要に応じて、この充填および仕上げ材料を使用する人は、加工性を促進および改善するために水を添加する。
【0009】
機械化が進むにつれ、化学建築製品の用途、すなわち処理機械で使用することができるペースト状充填および仕上げ材料が開発されている。具体的には、最大3mmの層厚で表面に適用することができ、例えば壁用塗料または壁紙などのさらにその後適用される層の基材として機能する、スプレー可能な充填および仕上げ材料が開発されている。
【0010】
しかしながら、従来技術から既知の鉱物系下地上にスプレー可能な充填および仕上げ材料は、以下の欠点を有する:スプレーによってペースト状充填および仕上げ材料を適用すると、通常、水圧噴霧の方法または「エアレス塗装方法」が用いられる。エアレス塗装の重要な要件は、均質なペースト状充填および仕上げ材料がスプレー中にスプレー装置およびスプレーノズルを通って移動する際に、そのずり応力を低減する必要があることである。したがって、ペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料は、表面または接合部に適用する前に、ずり流動化を生じる機械的均質化によって入念に調製する必要がある。この追加の手順は、合計処理時間の大幅な増加をもたらす。
【0011】
さらに、従来技術から既知のペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料ならびに石膏材料では、それらの機械的作業性を確保するために、通常有機構成成分が供給される。しかしながら、有機構成成分の使用は、通常、不快な排出物および臭気を伴い、屋内用途に関してそのような製品の使用は制限される。さらに、有機構成成分は、防火の観点で危険である。
【0012】
ペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料を使用して、表面の凹凸を平らにして、さらなるコーティング、例えば装飾コーティングのための均質な表面を提供する。これらのペースト状充填および仕上げ材料がその後の装飾コーティングの基材層として使用される場合、非常に高い輝度および高い乾燥能力を有する製品を用いることができる。
【0013】
最後に、引っかきまたは跳ね返り事象を通じて機械的応力が高い用途の分野では、従来のペースト状充填および仕上げ材料は、脆すぎるおよび/または柔らかすぎるので適用することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、本発明の主要な目的は、機械によって容易に処理することができ、良好な亀裂耐性および収縮耐性を提供し、引っかきおよび跳ね返り事象に高い耐性を示す、ペースト状充填および仕上げ材料のための組成物を提供することである。また、本発明の目的は、対応するペースト状充填および仕上げ材料、ならびにそのようなペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この目的は、少なくとも1つの充填剤と、少なくとも1つの結合剤と、添加剤とを含む、ペースト状充填および仕上げ材料のための組成物によって解決され、少なくとも1つの結合剤が、有機ポリマーおよびヒドロキシルエチルセルロースを含み、少なくとも1つの充填剤が、層状ケイ酸塩材料である。本発明の好ましい実施形態は、それぞれの従属請求項において定義される。
【発明の効果】
【0016】
本発明の組成物は、具体的にはエアレススプレー用途において、追加の処理または先行する準備ステップなしで使用することができる、ペースト状充填および仕上げ材料を提供する。そのようなペースト状充填および仕上げ材料は、手動で容易に処理することができ、良好な亀裂耐性および収縮耐性を提供することができる。さらに、これらのペースト状充填および仕上げ材料は、引っかきおよび跳ね返り事象に改善された耐性を提供する。
【0017】
層状ケイ酸塩材料の層状構造は、高いずり速度での生成物マトリックス内の鉱物粒子の滑りを促進する。
【0018】
別の利点は、そのようなペースト状充填および仕上げ材料に、層状ケイ酸塩材料としてセピオライトが使用される場合、アスベストおよび他の繊維状構成成分による汚染を排除することができることである。さらに、層状ケイ酸塩材料としてセピオライトがそのようなペースト状充填および仕上げ材料に使用される場合、必要とされる層状ケイ酸塩材料ははるかに少ない量であり、これは経済的理由から魅力的である。
【0019】
結合剤を安定化するための保護コロイドとしてヒドロキシルエチルセルロース(HEC)を使用すると、驚くべきことに、ポリビニルアルコール(PVOH)を用いる安定化よりも高い、無機材料の結合親和性がもたらされる。
【0020】
最後に、本発明による組成物は、その成分がかなりシンプルなままである。これは、スプレー可能な充填剤材料の流動特徴を改善するために、例えば、さらなる脂肪族もしくは環状の液体炭化水素、修飾脂肪酸、非イオン性乳化剤、またはシリコーンオイルを必要としないことを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の好ましい実施形態によれば、有機ポリマーは、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、またはそれらの任意の組み合わせ、好ましくはポリ(エチレン-酢酸ビニル)からなる群から選択することができる。
【0022】
組成物は、全組成物の0.1~20重量%、好ましくは全組成物の3~15重量%、より好ましくは全組成物の5~8重量%の少なくとも1つの結合剤を含み得る。
【0023】
さらに、少なくとも1つの結合剤は、全組成物の0.001~0.20重量%、好ましくは全組成物の0.001~0.10重量%、より好ましくは全組成物の0.0015~0.09重量%のヒドロキシエチルセルロースを含み得る。
【0024】
例えば、Celanese Emulsions GmbHから、例えば、MolwilithLDM 1880として、ヒドロキシルエチルセルロース(HEC)で安定化された結合剤が、市販されている。この製品では、固体含有量は、約55重量%である。
【0025】
さらに、ヒドロキシルエチルセルロース(HEC)で安定化されたポリ(エチレン-酢酸ビニル)およびセピオライトの両方を本発明による組成物に使用する場合、ペースト状充填および仕上げ材料の良好なスプレー性を達成することができる。
【0026】
さらに、層状ケイ酸塩材料は、セピオライト、アタパルジャイト、タルク、モンモリロナイト、イライト、カオリナイトまたはヘクトライト、好ましくはアタパルジャイトまたはセピオライト、より好ましくはセピオライトからなる群から選択され得る。層状の珪質材料は、好ましくは、小板状の形状を表す。
【0027】
セピオライトは、複数の利点を有する。WHOの基準によれば危険な繊維(例えば、アスベスト)による汚染が回避されるだけでなく、またセピオライトは、例えばアタパルジャイトよりもはるかに少ない量で使用することが可能である。
【0028】
したがって、組成物は、全組成物の0.01~1.00重量%、好ましくは全組成物の0.03~0.50重量%、より好ましくは全組成物の0.05~0.20重量%の層状ケイ酸塩材料を含み得る。特に好ましいのは、全組成物の0.05~0.20重量%の量のセピオライトである。
【0029】
本発明の組成物において有用である層状ケイ酸塩材料の構造は、それらの構造の構成元素としての中心原子によって形成される。それらは、マグネシウムおよび/またはアルミニウムを含み得る。構成元素として、セピオライトはマグネシウムを有し、アタパルジャイトはアルミニウムを有する。
【0030】
さらに、組成物は、増粘剤としてセルロースを含み得る。ここで、組成物は、好ましくは修飾セルロース、より好ましくは2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、またはそれらの任意の組み合わせ、最も好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメ
チルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0031】
さらに、組成物は、全組成物の0.1~2.0重量%のセルロース、好ましくは全組成物の0.1~1.0重量%のセルロースを含み得る。本発明の非常に好ましい実施形態では、全組成物の0.01~0.2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、全組成物の0.35~0.6重量%のヒドロキシエチルセルロースとが、本発明の組成物に含まれ得る。
【0032】
増粘剤として使用されるHEC(使用される場合)は、上述のように、結合剤の安定剤として使用されるHECとは異なる機能を有することに言及する必要がある。
【0033】
本発明の好ましい実施形態によれば、組成物は、少なくとも2つの充填剤を含み得、第1の充填剤が、層状ケイ酸塩材料であり、第2のさらなる充填剤が、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせ、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは炭酸カルシウムマグネシウムからなる群から選択される。
【0034】
好ましくは、組成物は、全組成物の60~65重量%のこの第2の充填剤を含む。
【0035】
本発明の別の好ましい実施形態によれば、組成物は、少なくとも第3の充填剤を含み得、第3の充填剤が、雲母鉱物、好ましくは白雲母である。
【0036】
本発明のさらに別のさらに好ましい実施形態によれば、組成物は、添加剤として殺生物剤をさらに含み得る。
【0037】
殺生物剤は、2-メチル-1,2H-チアゾール-3(2H)-オン(MIT)、1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オン(BIT)、および/または2-ブロモ-2-ニトロポパン-1,3-ジオール(BNPD)に基づいて組成物に添加され得る。
【0038】
また、組成物が全組成物の0.1~1重量%、好ましくは全組成物の0.1~0.4重量%の殺生物剤を含む場合が好ましい。
【0039】
本発明によれば、ペースト状充填および仕上げ材料、具体的には上の特定の組成物から作製される、物理的に乾燥するスプレー可能な充填および仕上げ材料も提供される。本発明のペースト状充填および仕上げ材料は、その組成に関連して既に上述した利点を提供する。
【0040】
好ましくは、ペースト状充填および仕上げ材料の比重は、1.0kg/l~1.9kg/lである。具体的には、1.2kg/l~1.7kg/lが好ましい。
【0041】
本発明はまた、ペースト状充填および仕上げ材料、また具体的には上の特定のペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法を提供する。方法は2段階プロセスに基づき、方法によれば、第1のステップでは、乾燥構成成分が均質化され、第2のステップでは、均質化された乾燥構成成分が、水性のまたは水で希釈可能な構成成分に添加される。
【0042】
乾燥構成成分は、充填剤、層状ケイ酸塩材料、セルロース、ならびに任意選択的に他の乾燥添加剤および/または乾燥結合剤を含み得る。
【0043】
水性のまたは水で希釈可能な構成成分は、結合剤、および任意選択的に他の液体添加剤を含み得る。本発明の方法によって、上述の利点を有するペースト状充填および仕上げ材料を提供することができる。
【0044】
好ましくは、2段階プロセスの第1および第2のステップは、処理時間のうちの80%超の間並行して実行することができる。したがって、並行処理により処理時間が節約され、したがって方法をより経済的にする。
【0045】
得られたペースト状充填および仕上げ材料は、一般に、最新式の既知のすべての方法によって、例えば、機械的工具の補助によって、または機械処理によって適用することができる。機械処理が好ましい。
【0046】
本発明のさらなる詳細および特色は、以下の実施例に示されているが、これらは、単に明確にするためのものであり、特許請求の範囲によって付与される保護の範囲を決して制限するものではない。
【0047】
表1は、パリゴルスカイト(アタパルジャイト)、およびHECで安定化されていない(がPVOHで安定化された)EVAを含む最新式の試料と、(最新式の試料のパリゴルスカイトの代わりに)セピオライト、およびHECで安定化したEVAを含む本発明の実施形態との比較を示す。しかしながら、2つの比較例のいずれも、引っかきおよび跳ね返り事象に高い耐性を示していない。
【表1】
【0048】
表1の本発明の実施例と同じ原材料(表2で言及された材料を除く)を使用した表2では、表面の硬度およびスプレー性に対する、アタパルジャイトおよび/またはPVOH安定化EVA(Mowilith LDM 1871 PVOH)と比較した、セピオライトとHEC安定化EVAとの組み合わせの影響を示す。
【0049】
セピオライトの代わりにアタパルジャイトを用いたペースト状充填および仕上げ材料は同様のたるみ(または滑り落ち)挙動を有するので、はるかに多くのアタパルジャイト(例えば、1.9重量%)が必要であることを言及する必要がある。驚いたことに、セピオライトが使用された場合には、これは当てはまらなかった。セピオライトでは、ペースト状充填および仕上げ材料の同様のたるみ(または滑り落ち)挙動に達するのに、たった0.20重量%未満(または以下)が必要であった。たるみ挙動は、試料を均質化し、気泡を生じずにシリンジに移すことによって試験する。次いで、試料を石膏ボードの特定の場所に均一に適用する。次いで、石膏ボードを室温で24時間直立させる。その後、試料の最低点から開始点までの距離を測定する。例えば、本発明の組成物および比較例(通常の重量)は両方とも、この試験において、およそ150mmの同等のたるみ挙動を有するが、層状ケイ酸塩材料の量に8倍の差がある。
【表2】
【0050】
石膏ボードの画定された一片上に、上述の組成に従って調製したペースト状充填および仕上げ材料を約2mmの厚さに重ねることによって、摩耗を試験する。一定重量になるまで(通常3日)、調製した試料を室温で乾燥させた後、計量し、摩耗試験機(Taber-Abraser Modell503)に置き、毎分60回転、およびサンドペーパーS33、および500gのチェック重量を用いて100回回転させる。その後、調製した試料の重量を再度チェックし、その差が摩耗量である。
摩耗によれば、値(g)が小さいほど、引っかき耐性が高い。これは、組成物の表面が破壊されにくいことを意味する。
【0051】
発明の実施形態による組成物を有するペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料は、依然として同等の低いずり応力およびより高いずり速度を有する、均質な物質を提供する。本発明の実施形態による組成物を有するペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料はさらに、1~3mmの層厚で、任意選択的なその後の装飾コーティングのための均質な表面を提供し、引っかきおよび跳ね返り事象に高い耐性を示す。表面は非常に滑らかなので、通常は研磨を必要としない。
【0052】
さらに、HEC安定化有機ポリマー、好ましくはポリ(エチレン-酢酸ビニル)(EVA)と組み合わせてセピオライトを含む、本発明の実施形態による組成物を有するペースト状のスプレー可能な充填および仕上げ材料は、フィルム形成中のコーティングの機械的強化をもたらす。さらに、この組み合わせにより、表面を脆くするかまたは脆弱にすることなく、フィルムの硬度を強化する。安定した基材上で、それぞれの表面は、10倍の引っかき耐性および摩耗耐性の有意な増加を示す(従来技術におけるプロファイル深さの差:470μm、表1の実施例におけるプロファイル深さの差:40μm)。
(付記)
本開示に係る態様は以下の態様も含む。
<1>
少なくとも1つの充填剤と、少なくとも1つの結合剤と、添加剤と、を含む、ペースト状充填および仕上げ材料のための組成物であって、前記少なくとも1つの結合剤が、有機ポリマーおよびヒドロキシルエチルセルロースを含み、前記少なくとも1つの充填剤が、層状ケイ酸塩材料である、組成物。
<2>
前記有機ポリマーが、ポリ(エチレン-酢酸ビニル)、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、好ましくはポリ(エチレン-酢酸ビニル)である、<1>に記載の組成物。
<3>
前記組成物が、全組成物の0.1~20重量%、好ましくは全組成物の3~15重量%、より好ましくは全組成物の5.0~8.0重量%の前記少なくとも1つの結合剤を含む、<1>または<2>に記載の組成物。
<4>
前記少なくとも1つの結合剤が、全組成物の0.001~0.20重量%、好ましくは全組成物の0.001~0.10重量%、より好ましくは全組成物の0.0015~0.09重量%の前記ヒドロキシエチルセルロースを含む、<1>~<3>のいずれか1項に記載の組成物。
<5>
前記層状ケイ酸塩材料が、セピオライト、アタパルジャイト、タルク、モンモリロナイト、イライト、カオリナイトまたはヘクトライトからなる群から選択される、好ましくはアタパルジャイトまたはセピオライト、より好ましくはセピオライトである、<1>~<4>のいずれか1項に記載の組成物。
<6>
前記組成物が、全組成物の0.01~1.00重量%、好ましくは全組成物の0.03~0.50重量%、より好ましくは全組成物の0.05~0.20重量%の前記層状ケイ酸塩材料を含む、<1>~<5>のいずれか1項に記載の組成物。
<7>
前記層状ケイ酸塩材料が、マグネシウムおよび/またはアルミニウムを含有する、<1>~<6>のいずれか1項に記載の組成物。
<8>
前記組成物が、セルロース、好ましくは修飾セルロース、より好ましくは2-ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、メチルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせ、最も好ましくは、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはそれらの任意の組み合わせをさらに含む、<1>~<7>のいずれか1項に記載の組成物。
<9>
前記組成物が、全組成物の0.1~2.0重量%のセルロース、好ましくは全組成物の0.1~1.0重量%のセルロースを含む、<8>に記載の組成物。
<10>
前記組成物が、全組成物の0.01~0.2重量%のヒドロキシプロピルメチルセルロースと、全組成物の0.35~0.6重量%のヒドロキシエチルセルロースと、を含む、<9>に記載の組成物。
<11>
前記組成物が、少なくとも2つの充填剤を含み、第1の前記充填剤が、層状ケイ酸塩材料であり、第2のさらなる前記充填剤が、硫酸カルシウム二水和物、炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせ、好ましくは炭酸カルシウム、炭酸カルシウムマグネシウム、およびそれらの任意の組み合わせ、より好ましくは炭酸カルシウムマグネシウムからなる群から選択される、<1>~<10>のいずれか1項に記載の組成物。
<12>
前記組成物が、少なくとも第3の充填剤を含み、前記第3の充填剤が、雲母鉱物、好ましくは白雲母である、<11>に記載の組成物。
<13>
前記組成物が、殺生物剤、好ましくは2-メチル-1,2H-チアゾール-3(2H)-オンおよび/または1,2-ベンゾイソチアゾール-3(2H)-オンをさらに含む、<1>~<12>のいずれか1項に記載の組成物。
<14>
<1>~<13>のいずれか1項に記載の組成物から調製された、ペースト状充填および仕上げ材料、具体的には物理的に乾燥するスプレー可能な充填および仕上げ材料。
<15>
ペースト状充填および仕上げ材料、具体的には<14>に記載のペースト状充填および仕上げ材料を生成するための方法であって、前記方法が、2段階プロセスに基づき、前記方法によれば、第1のステップでは、乾燥構成成分が均質化され、第2のステップでは、前記均質化された乾燥構成成分が、水性のまたは水で希釈可能な構成成分に添加される、方法。