IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジーの特許一覧 ▶ シティ・オブ・ホープの特許一覧

特許7293418高密度細胞増殖と代謝産物交換のための基材
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】高密度細胞増殖と代謝産物交換のための基材
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/04 20060101AFI20230612BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20230612BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20230612BHJP
   C12N 5/07 20100101ALI20230612BHJP
   C12N 7/00 20060101ALI20230612BHJP
   B29D 22/00 20060101ALN20230612BHJP
【FI】
C12M1/04
C12M1/00 D
C12M3/00 A
C12N5/07
C12N7/00
B29D22/00
【請求項の数】 10
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022014949
(22)【出願日】2022-02-02
(62)【分割の表示】P 2018558347の分割
【原出願日】2017-07-11
(65)【公開番号】P2022068206
(43)【公開日】2022-05-09
【審査請求日】2022-03-02
(31)【優先権主張番号】62/361,390
(32)【優先日】2016-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508032284
【氏名又は名称】カリフォルニア インスティチュート オブ テクノロジー
(73)【特許権者】
【識別番号】598004424
【氏名又は名称】シティ・オブ・ホープ
【氏名又は名称原語表記】City of Hope
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100179866
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】ユツォン タイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン リュウ
(72)【発明者】
【氏名】コリン エー クック
(72)【発明者】
【氏名】ユマン フォン
(72)【発明者】
【氏名】ナンハイ ジー チェン
【審査官】山▲崎▼ 真奈
(56)【参考文献】
【文献】特表2001-521370(JP,A)
【文献】特開平5-184351(JP,A)
【文献】国際公開第2016/027800(WO,A1)
【文献】特開平3-010675(JP,A)
【文献】特開2005-323588(JP,A)
【文献】特開2012-040033(JP,A)
【文献】国際公開第1997/021347(WO,A1)
【文献】特開昭62-228269(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0227769(US,A1)
【文献】特表2009-502165(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0725134(EP,A2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0040453(US,A1)
【文献】国際公開第2012/170878(WO,A2)
【文献】特表2011-521641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
つの対向する面上に気体透過性スキンシートを有するポリマー連続気泡発泡体と;
前記気体透過性スキンシートの周囲を一緒に結合して、前記連続気泡発泡体を前記気体透過性スキンシート間の内部空洞に封入して耐膨張性耐崩壊性バッグを形成している、密閉された端部と;
前記内部空洞と流体接続された、前記バッグへの入口と;
前記気体透過性スキンシートの少なくとも1つの外側を覆う気体透過性の生体適合性コーティングであって、0.01μm~1000μmの厚さを有する気体透過性の生体適合性コーティングとを含む、細胞増殖基材装置。
【請求項2】
前記ポリマー連続気泡発泡体のシートが、厚さ0.1mm~1.5mmである、請求項に記載の装置。
【請求項3】
水密容器と;
前記容器内の生体適合性材料でコーティングされた平坦で耐膨張性の気体透過性バッグのスタックであって、各バッグは当該バッグの内部空洞に結合した入口を有する、スタックと;
前記耐膨張性気体透過性バッグの間のスペーサーとを含む、コンパクト細胞増殖装置。
【請求項4】
前記気体透過性バッグが、垂直面内に積み重ねられている、請求項に記載の装置。
【請求項5】
前記スタックは、前記バッグそれ自体の上に折り畳まれた少なくとも1つの気体透過性バッグを含む、請求項に記載の装置。
【請求項6】
前記スタックは、前記バッグそれ自体の周りに巻かれた少なくとも1つの気体透過性バッグを含む、請求項に記載の装置。
【請求項7】
各バッグを離間させ、前記バッグの入口を互いにシールするOリングをさらに含む、請求項に記載の装置。
【請求項8】
耐膨張性気体透過性ポリマーバッグのスタックを準備することと、ここで各バッグは、マニホールドに接続された入口を有し、各バッグは気体透過性の生体適合性コーティングを有し、前記バッグは球状ビーズによって互いに離間している;
前記ビーズと前記バッグとの間隙に細胞を供給することと;
前記間隙に栄養素の液体培養物を流すことと;
分子酸素ガスを前記マニホールドを通して前記耐膨張性バッグ内に加圧することと;
前記細胞が増殖するのを待つことと、ここで前記栄養素および前記分子酸素ガスが前記細胞の増殖をサポートする;
トリプシンを前記細胞に適用することと;
前記ビーズから前記細胞を洗い流すこととを含む、細胞を増殖および回収する方法。
【請求項9】
前記バッグを前記ビーズから除去することをさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞をウイルスで感染させることと、ここで前記細胞の増殖がウイルスの複製に役立つ;
複製されたウイルスを洗い流された前記細胞から分離することとをさらに含む、請求項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2016年7月12日に出願された米国仮出願第62/361,390号の利
益を主張するものであり、その全体があらゆる目的のために組み込まれる。
【0002】
(連邦支援の研究開発の下でなされた発明に関する権利に関する声明)
適用なし
【背景技術】
【0003】
1.技術分野
【0004】
本発明の実施形態は、概して、微細加工された特徴およびコーティングを有する気体透
過性の非崩壊性および/または非膨張性のバッグを含む、微生物および増殖細胞を培養す
るためのバイオリアクター装置、ならびに製造および使用方法に関する。
【0005】
2.関連技術の説明
【0006】
大規模な高密度細胞培養は、特定の分子、タンパク質、ウイルス、または他の産物を産
生するために細胞が使用される多くのバイオテクノロジー用途にとって重要である。細胞
密度を高めることで、単位体積あたりの生産量を増やすことができ、省スペースとより集
中した産物によってコストを削減することに役立つ。
【0007】
高密度細胞増殖の課題は、特に酸素、栄養素および廃棄物に関する物質輸送の制限に起
因する。低密度細胞培養系では、代謝産物の受動的拡散がしばしば細胞の代謝要求を満た
すのに十分である。しかし、高密度細胞培養系では、細胞の代謝要求が拡散単独からの供
給を上回り、対流などのさらなる物質輸送機構を必要とする。
【0008】
高密度細胞培養のさらなる要件は、特に付着細胞集団の場合、表面積対容積比が高いこ
とである。これは、多くの細胞が単層で増殖し、コンフルエントに達すると増殖が阻害さ
れるためである。
【0009】
細胞工場システム、マイクロキャリアを有する波/撹拌バイオリアクター、および灌流
透析膜システムを含む細胞密度を高めるためのいくつかの技術が開発されている。
【0010】
細胞工場システムは、細胞工場システムが単一のフラスコ内に増殖基材の複数の層を含
むことを除いて、従来のフラスコ培養システムと最も類似している。達成可能な細胞密度
は、層間の大きな間隔のためそれほど高くなく、表面対体積比が低く、すべての代謝産物
の拡散輸送に依存する。
【0011】
ウェーブおよび撹拌式バイオリアクターシステムは、培地の容器内で細胞の接着および
増殖に適した表面化学を有する小さな中性浮遊粒子である細胞マイクロキャリアを静かに
混合することによって物質移動を促進する対流を加える。マイクロキャリアによってもた
らされる高い表面積と対流混合との組み合わせは、細胞工場システムと比較してより高い
細胞密度の達成を可能にする。しかし、対流混合はまた、細胞に、細胞死を引き起こし得
るせん断力を生じ、それによって、達成され得る細胞への混合および物質輸送の程度を制
限する。このようなシステムは、表面積が限られているのではなく、混合による物質移動
を強化する必要があるため、しばしばせん断限界になる。
【0012】
灌流透析膜システムは、密に充填された半透過性透析チューブを通して気体を灌流し、
拡散が細胞に酸素を送達することを可能にすることによって、せん断問題を克服する。し
かしながら、透析チューブの幾何学的形状は、非常に高い表面積対容積比が達成されるこ
とを防止する。さらに、細胞が増殖する高度に多孔性の膜から細胞を除去することには困
難が伴う。
【0013】
要約すると、高密度細胞成長のいくつかの課題には、1)高表面積対体積比を達成する
こと;2)システム内の適切な代謝産物輸送を維持すること;および3)細胞が経験する
せん断力を致死レベル以下に維持することが、挙げられる。いくつかの既存の技術がこれ
らの課題を克服しようと試みてきたが、技術の改良の余地がまだ残っている。
【発明の概要】
【0014】
一般に、拡張を防止するための微細加工溶接点および/または崩壊を防止する内部スペ
ーサーなどの、内部接続点のアレイを有する非常に薄い気体透過性プラスチックバッグが
提示される。バッグは、透過性を制御し、細胞が接着するための表面を提供するために、
パリレンなどの薄い(例えば、2μmおよび10μmの厚さの)生体適合性コーティング
でコーティングされている。生体適合性コーティングは、酸素プラズマおよび/またはア
ンモニアプラズマ処理を受けてもよく、細胞接着をさらに改善するために、アガロースな
どのコーティングをさらに適用してもよい。
【0015】
膜を有する連続気泡フォームはまた、耐膨張性崩壊耐性バッグに形成されてもよい。外
側の膜は生体適合性のコーティングで層状にされ、透過性を制御し、細胞増殖のための清
潔な表面を提供し、端部を封止してバッグを形成する。入口は、空気、酸素、または他の
気体をバッグの内部に流入させる。
【0016】
使用時には、バッグは、栄養豊富な液体水培養物中に浸漬され、細胞増殖のための基材
として作用するために気体状酸素が供給されるか、そうでなければ気体状酸素で膨らまさ
れる。バッグに取り付けられるセルには、バッグの気体透過性膜を通して気体状酸素の穏
やかな流れが供給され、バッグを通して気体状の二酸化炭素または他の廃ガスを放出する
ことができる。一方、周囲の液体は細胞に栄養素を与え、その廃棄物を運び去る。
【0017】
そのような気体透過性バッグの多くは、一緒に積み重ねられ、その入口は、Oリングに
よって接続され、便利なマニホールドを形成する。そのスタックは、バッグをスタック内
にしっかりと保持する水槽のような囲いの中に沈めることができる。O-リングは、ビー
ズまたは他のスペーサーと同様に、バッグを分離した状態に保ち、細胞増殖のために大量
の表面積が存在するように働く。バッグから離れるほど酸素が低下するが、バッグ間の距
離は、2つのバッグ間の中心点が細胞増殖に十分な酸素を有するように最適化されてもよ
い。
【0018】
本発明のいくつかの実施形態は、細胞増殖基材装置に関する。この装置は、一対の気体
透過性ポリマーシートと、ポリマーシートの面間の接続点のアレイであって、2000μ
m以下の中心間間隔を有する接続点のアレイと、シートの周囲を一緒に結合してシート間
の内部空洞内に接続点を封入して耐膨張性バッグを形成する密閉された端部と、内部空洞
に流体接続されたバッグへの入口と、気体透過性シートの少なくとも1つの外側を覆う生
体適合性コーティングであって、その生体適合性コーティングは、0.01μm~100
0μmの厚さを有する生体適合性コーティングを含む。
【0019】
接続点の中心間間隔は、100μm~1000μmであり得る。この装置は、接続点で
シートを接続するスペーサーのアレイをさらに含み、スペーサーは、耐膨張性バッグを崩
壊耐性にするのに十分な高さを有する。スペーサーの高さは、接続点の中心間間隔の5分
の1以上にすることができる。スペーサーは、気体透過性シートの1つと一体的に形成す
ることができる。この装置は、耐膨張性バッグの外側に隣接する複数の外側スペーサーを
含むことができる。外側スペーサーは、生体適合性コーティングで被覆された多孔性チュ
ーブまたは球体であり得る。外側スペーサーは、気体透過性シートの1つと一体的に形成
することができる。
【0020】
生体適合性コーティングは、パリレンN、パリレンC、パリレンDおよびパリレンAF
-4を含む群から選択されるパリレンコーティングを含むことができる。パリレンコーテ
ィングの厚さは、2μm~10μmであり得る。パリレンコーティングの厚さは、好まし
くは5μm~6μmであり得る。生体適合性コーティング上の表面処理領域は、細胞接着
を改善するように構成することができる。表面処理領域は、酸素プラズマ処理、アンモニ
アプラズマ処理、または酸素プラズマ処理とアンモニアプラズマ処理の両方の生成物であ
ってもよい。アガロース、コラーゲン、乳酸、ラミニン、ポリ-d-リジン、またはポリ
-l-リジンのコーティングは、細胞増殖をさらに増強するために表面処理領域に存在し
得る。
【0021】
気体透過性ポリマーシートの材料は、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリエチ
レン、およびポリウレタンを含む群から選択されるポリマーであり得る。気体透過性ポリ
マーシートは、200μm未満の厚さであり得る。バッグからの出口は、内部空洞と流体
接続することができる。バッグへの入口またはバッグからの出口と流体接続された内腔を
有するチューブをバッグに取り付けることができる。入口は、バッグの密閉された端部の
穴を通過することができる。アレイ内の接続点は、互いに、幾何学的に規則的に間隔を置
いて配置されてもよく、または不規則に間隔をおいて配置されてもよい。
【0022】
いくつかの実施形態は、2つの対向する面上に気体透過性スキンシートを有するポリマ
ー連続気泡発泡体、気体透過性スキンシートの周囲を一緒に結合して、連続気泡発泡体を
気体透過性スキンシート間の内部空洞に封入して耐膨張性耐崩壊性バッグを形成する密閉
された端部、内部空洞と流体接続された、バッグへの入口、および気体透過性スキンシー
トの少なくとも1つの外側の生体適合性コーティングであって、0.01μm~1000
μmの厚さを有する生体適合性コーティングを含む、細胞増殖基材装置に関する。ポリマ
ー連続気泡発泡体のシートは、0.1mm~1.5mmの厚さとすることができる。
【0023】
いくつかの実施形態は、水密容器、容器内の生体適合性材料でコーティングされた平坦
で耐膨張性の気体透過性バッグのスタックであって、各バッグはバッグの内部空洞に結合
した入口を有するスタック、および耐膨張性気体透過性バッグの間のスペーサーを含む、
細胞増殖基材装置に関する。
【0024】
気体透過性バッグは、垂直面内に積み重ねることができる。スタックは、バッグそれ自
体の上に折り畳まれた少なくとも1つの気体透過性バッグを含むことができる。スタック
は、バッグそれ自体の周りに巻かれた少なくとも1つの気体透過性バッグを含むことがで
きる。装置は、各バッグを離間させ、バッグの入口を互いにシールするOリングをさらに
含むことができる。
【0025】
いくつかの実施形態は、細胞増殖装置の製造方法に関する。この方法は、一面にスペー
サーを有するピラー化気体透過性シートを鋳造することであって、気体透過性シートは気
体状分子酸素を透過させるのに十分な厚さを有するが、標準的な室温および大気圧で液体
水が透過するのを防止し、第2の気体透過性シートを製造すること、スペーサーを介して
第2の気体透過性シートをピラー化気体透過性シートに結合すること、気体透過性シート
の周囲を一緒に密閉して耐膨張性バッグを形成すること、耐膨張性バッグの少なくとも一
方の面に生体適合性コーティングを堆積させることであって、生体適合性コーティングは
0.1μm~1000μmの厚さを有し、および細胞接着を改善するために生体適合性コ
ーティングを処理することを含む。
【0026】
ピラー化気体透過性シートおよび第2の気体透過性シートは、ポリマーから構成するこ
とができ、各シートは、200μm未満の厚さを有することができる。この方法は、耐膨
張性バッグに入口を形成することおよび/または第2の気体透過性シートに接着剤を塗布
することをさらに含むことができる。
【0027】
いくつかの実施形態は、細胞増殖装置の製造方法に関する。この方法は、一対の気体透
過性ポリマーシートを密接に接触させること、貫通穴のアレイを有する断熱性マスクをポ
リマーシートに対して配置することであって、貫通穴は2000μm以下の中心間間隔を
有し、加熱された鉄をポリマーシートの反対側の断熱性マスクに対してプレスすることで
あって、加熱された鉄の温度とプレスの時間はマスクの貫通穴によって露出したポリマー
シート間に溶接部のアレイを形成するのに十分であり、ポリマーシートの周囲を一緒に密
閉して内部部分を有するバッグを形成すること、バッグの少なくとも一面に生体適合性コ
ーティングを堆積させることであって、生体適合性コーティングが0.1μm~1000
μmの厚さを有し、および細胞接着を改善するために生体適合性コーティングを処理する
ことを含む。
【0028】
貫通穴は、フォトリソグラフィーによってマスク内に形成して、小さくすることができ
る。ポリマーシートはポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができ、断熱性マ
スクはシリコーンゴムを含む。
【0029】
いくつかの実施形態は、細胞を増殖および回収する方法に関する。この方法は、耐膨張
性気体透過性ポリマーバッグのスタックを準備することであって、各バッグは、マニホー
ルドに接続された入口を有し、各バッグは生体適合性コーティングを有し、各バッグは球
状ビーズによって互いに間隔を空けられ、バッグ間の間隙に細胞を供給すること、間隙に
栄養素の液体培養物を流すこと、分子酸素ガスをマニホールドを通して耐膨張性バッグ内
に加圧すること、細胞が増殖するのを待つことであって、栄養素および分子酸素ガスが細
胞の増殖をサポートし、トリプシンを細胞に適用し、バッグまたはビーズ上でそれらの保
持を切断すること、および、ビーズから細胞を洗い流すことを含む。
【0030】
この方法は、バッグをビーズから取り除くことをさらに含むことができる。本方法は、
細胞をウイルスで感染させることであって、ここで細胞の増殖がウイルスの複製に役立ち
、および複製されたウイルスを洗い流された細胞から分離することをさらに含むことがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1A図1Aは、一実施形態の気体透過性耐膨張性耐崩壊性バッグの等角図である。
図1B図1Bは、図1AのB-B断面を示す。
図1C図1Cは、図1AのC-C断面を示す。
図2A図2Aは、一実施形態のスペーサーチューブを備える気体透過性バッグの等角図である。
図2B図2Bは、図2Aの気体透過性バッグの分解図である。
図3A図3Aは、一実施形態の気体透過性微細加工アレイ溶接バッグの等角図である。
図3B図3Bは、図3AのB-B断面を示す。
図4図4は、一実施形態の連続気泡発泡体気体透過性バッグの等角分解図である。
図5図5は、一実施形態のスペーサーチューブによって分離された複数のバッグを示す。
図6図6は、一実施形態のビーズによって分離された複数のバッグを示す。
図7図7は、一実施形態の積み重ねられた気体透過性バッグを有するバイオリアクター容器の等角図である。
図8図8は、一実施形態の櫛形栄養素および気体送達バッグを有するバイオリアクターの等角図である。
図9A図9Aは、一実施形態の微細加工バッグ製造プロセスの一部を示す断面図である。
図9B図9Bは、図9Aの製造プロセスの一部を示す。
図9C図9Cは、図9Aの製造プロセスの一部を示す。
図9D図9Dは、図9Aの製造プロセスの一部を示す。
図9E図9Eは、図9Aの製造プロセスの一部を示す。
図9F図9Fは、図9Aの製造プロセスの一部を示す。
図10A図10Aは、一実施形態のプロトタイプの耐膨張性耐崩壊バッグの写真である。
図10B図10Bは、図10Aのプロトタイプの耐膨張性耐崩壊バッグの角部の写真である。
図11図11は、一実施形態のプロセスのフローチャートである。
図12図12は、一実施形態のプロセスのフローチャートである。
図13図13は、一実施形態のプロセスのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
非常に高密度の細胞培養が可能な培養システム(例えば、箱、容器、その他の部品)が
記載されている。本発明者らは、分子酸素(O)が、細胞培地中でのその低い溶解度の
ために細胞増殖にとって最も制限的な代謝産物であることを認識した。気体対流送達を他
の栄養送達から分離することにより、有害なせん断力を増大させることなく細胞への酸素
送達を有意に増大させることが可能である。
【0033】
バッグ内に形成された気体灌流可能な気体透過性膜シートは、高密度細胞増殖のために
十分な酸素および気体交換を送達しながら高い表面積を提供する。これらのバッグは、高
い表面積対体積比を達成するために折り畳まれて積み重ねられ得る。細胞は、膜の表面上
に直接、または膜の間に挟まれた基材上で増殖させることができる。
【0034】
酸素送達のための別個の膜の使用は有用であるが、他の栄養素、溶液、細胞およびウイ
ルスの送達および除去を含む他の態様がある。例えば、積み重ねられた膜の間の隙間は、
膜スタックの内部または外部への成分の送達または除去のための溶液で灌流することがで
きる。灌流の間隔および速度は、装置内の適切なせん断速度を維持するように選択するこ
とができる。別の例では、気体供給とは別に供給するために、システム全体にわたってチ
ューブまたはチャネルのネットワークを使用することができる。チューブまたはチャネル
は、分子から細胞までの範囲の様々なサイズの粒子がチューブの内外に通過することを可
能にする孔を含むことができる。これは、細胞を装置内に供給し、および/またはウイル
スを感染細胞に送達することができる手段である。別の例では、膜自体に孔を形成して、
それらの表面に垂直に積み重ねられた膜を灌流する手段を提供することができる。この構
成では、流れの方向は細胞に対して平行ではないため、流れは細胞に最小のせん断力を誘
発する;栄養素は、これらの孔から離れた拡散によって細胞に到達する。
【0035】
細胞を供給する場合、膜の両側に等しく供給することができる。これは、膜を配向させ
、重力場に平行に流れることによって達成することができる。細胞は自然に培地中に定着
するので、沈降速度と方向が反対であるが大きさは等しい培地の灌流を適用して、膜に対
する細胞の正味の速度がゼロに近くなるようにすることができる。対称性により、細胞は
膜のいずれかの面に等しく接着しやすくなり、均一な供給が行われる。
【0036】
膜材料に関しては、高い気体透過性を有するものが最も適している。これは、ポリジメ
チルシロキサン(PDMS)を含むシリコーンなどの高い気体透過性(溶解度と拡散速度
の関数)を有する材料を使用することによって達成することができる。
【0037】
あるいは、気体透過率が一般に膜の厚さに反比例するので、非常に薄い膜を使用するこ
とによってそれを達成することができる。非常に薄い寸法では、薄いパリレン(<10μ
m)で観察されるように、材料の透過性もまた著しく増大し得る。この事実を利用して、
気体に対する障壁として従来考えられているポリマーは、適切に透過性になることができ
る。小さな孔の吹き出し点は、表面を通る気体の泡立ちを引き起こさずに中空膜から駆動
される圧力を可能にするために十分に高くすることができるので、多孔質膜材料も使用す
ることができる。また、膜の所望の高い気体透過特性を達成するために、複数のアプロー
チを組み合わせて使用することもできる。
【0038】
バッグの表面処理は、細胞接着および増殖を達成することができる。広く適用可能なア
プローチは、膜をパリレンの薄層で被覆すること、酸素プラズマ処理および/またはアン
モニアプラズマ処理を使用してそれをプラズマエッチングして、それを親水性にすること
である。
【0039】
さらなる方法には、タンパク質(例えば、アガロース、コラーゲン、フィブロネクチン
、フィブリン)によるコーティングまたは他のコーティング(例えば、乳酸、ラミニン、
ポリ-D-リジンまたはポリ-L-リジン)が含まれる。
【0040】
用語
【0041】
「気体透過性」または「半透性」材料には、気体を透過させるが、液体水が浸透するの
を防止するもの、または当技術分野で適用可能で既知であるものが含まれる。透過性は、
標準室温(すなわち、25℃)および大気圧または他の適用可能な温度および圧力で測定
することができる。例えば、哺乳動物細胞の培養のための標準温度は37℃である。好熱
菌の場合、温度は122℃まで上昇することがある。圧力は、標準的な大気圧またはそれ
以下から、水没している静水圧などまで上昇することができる。気体は、分子酸素、二酸
化炭素、一酸化炭素、一般的な空気、または適用可能な別のものであってもよい。
【0042】
「ピラー」または「マイクロピラー」は、表面から垂直に延びるカラムもしくは他の構
造、または塔技術分野で公知のものを含む。「マイクロピラー」は、小型であるピラーを
含み、マイクロメートル(ミクロン)またはマイクロインチのスケールであるピラーに限
定されない。
【0043】
「スペーサーのアレイ」は、シートを互いから一定の距離に保つように構成された高さ
およびスペーサーの中心間の間隔を有するマイクロピラーまたは他のスペーサーの幾何学
的に規則的もしくは不規則なパターン、または塔技術分野で公知の他のものを含む。
【0044】
「耐崩壊性バッグ」は、対向する面の内面が通常の動作において互いに接触することが
防止されるように、その内部にスペーサーを有するバッグを含む。
【0045】
「耐膨張性バッグ」は、内部溶接点、接続されたスペーサー、または加圧されたときに
バッグがバルーンのようになることを防止する他の接続部を有するバッグを含む。耐膨張
性バッグは、実質的に平らに積むことができる。それは凸凹の凹みおよび湾曲を有するこ
とができる。
【0046】
「密閉されている」とは、気密に封止されているか、または少なくとも液体に対しては
透過性ではないが、おそらく気体に対して透過性であることを意味するか、または当技術
分野で公知の他のものなどを意味する。
【0047】
所定の実施形態に適合し得る連続気泡発泡体は、ASTM D3183に従うスキンを
有するAtlantic Gasket Corp. Style AG1300-Sま
たはAG1300-SM連続気泡シリコーン発泡体、およびMcMaster-Carr
シリコーン発泡体シートを含む。
【0048】
図1A図1Bは、一実施形態の気体透過性耐膨張性耐崩壊性バッグを示す。システム
100は、一対の気体透過性PDMSポリマーシート102および103を含む。シート
の外周は、それらの縁の周りを密閉されており、内部空洞113を有する耐膨張性バッグ
101を形成する。
【0049】
ボトムシート103は、その周縁部の周りに一体的に形成された端部112と、1つの
面に沿って微細加工ピラー104であるスペーサーとを有する。マイクロピラー104は
、幾何学的に規則的な列と行のアレイである。マイクロピラーの各列は距離110だけ離
れており、マイクロピラーの各行は距離111だけ離れている。いくつかの実施形態では
、距離は異なり;他では、距離は同じである。
【0050】
互い違いの行または列、円弧のピラー、サブ形状および他のパターンを有する、幾何学
的に規則的なアレイ、ならびにランダムに分布したピラーの斑点などの幾何学的に不規則
なアレイを含む他の構成が考えられる。
【0051】
製造中に、シート102またはマイクロピラーの頂部およびシート103の端部を未硬
化ポリマーでコーティングし、次にシート102を硬化前にシート103の上に置いた。
シート102,103および中間部分112は、層の耐崩壊性サンドイッチを形成する。
【0052】
シート102および103の外側にパリレン生体適合性コーティング115がある。生
体適合性コーティングは0.01μm~1000μmの厚さを有し、これは下にあるシー
トの気体透過性を制御し得る。すなわち、PDMSは、その公称厚さで液体に対して透過
性であり得る;しかしながら、パリレンの薄いコーティングは、液体がそれらを通って流
れるのを防止するが、気体を許容し、したがってシートを気体透過性にする。
【0053】
表面処理116は、生体適合性コーティング115の一部を覆う。パリレンは、細胞接
着を改善するために、酸素プラズマ処理およびアンモニアプラズマ処理を受けた。
【0054】
図1Cでは、上から下に向かって、上部生体適合性コーティング115は厚さ105を
有し、シート102は厚さ106を有し、マイクロピラー104は等しい高さ107を有
し、シート103は厚さ108を有し、底部生体適合性コーティング115は厚さ109
を有する。生体適合性コーティングの厚さは、それがパリレンN、パリレンC、パリレン
DまたはパリレンAF-4の場合、2μm~10μm、好ましくは5μm~6μmである
【0055】
マイクロピラースペーサー104の高さ107は、マイクロピラー接続点の中心間距離
の1/5以上である。この高さは、対向するシート102および103が内部空洞内で内
側に曲がり、互いにくっつくのを防止し、バッグを耐崩壊性にするのを助ける。
【0056】
入口114は、上部シート102および生体適合性層115を貫通する穴として形成さ
れている。入口114は、気体を供給するため、またはバッグ101から気体を除去する
ために使用され得る。
【0057】
図2A~2Bは、一実施形態のスペーサーチューブを有する気体透過性バッグを示す。
バッグ201は、中間層212を有するシート202および203上の生体適合性層21
5を含む。入口214は、シート202およびその生体適合性層215に形成されており
、生体適合性層215はその上に示される表面処理216を有する。また、内部を見るた
めのカッタウェイ図も示されており、そこではマイクロピラー204がバッグを崩壊させ
ないようにしている。
【0058】
バッグ201の下には、外部スペーサーチューブ217がある。各スペーサーチューブ
217は、液体、栄養分、種子細胞、および他の物質をそこから流出させる複数の穴21
8を有する。スペーサーチューブは、盲下水または庭のソーカーホースに似ている。しか
しながら、スペーサーチューブは微細加工されており、セルサイズの材料またはより小さ
な材料を比較的均一に分配することができる。したがって、バッグ201が他のバッグと
積み重ねられ、スペーサーチューブによって分離される場合、スペーサーチューブは、細
胞を均一に供給し、栄養を広げ、排出された廃棄物を集めるために使用され得る。
【0059】
図3A~3Bは、気体透過性微細加工アレイ溶接バッグを示す。システム300では、
バッグ301はシートを含み、シートを離して保持するための追加的に形成された内部ピ
ラーはない。代わりに、シートは、バッグの内部の穏やかなガス圧によって離れて保持さ
れる。
【0060】
溶接される領域のみがマスクの貫通穴によって露出される領域であるように、シートの
間に断熱性のマスクを有するシートに対して加熱された鉄をプレスすることにより、接続
点319のアレイが形成された。溶接部の周囲の領域は空気が自由に動くことができる。
これは、膨張性のプールのエアマットレスにやや似ている。しかし、本実施形態の接続点
は、互いに2000μm以下離れている。いくつかの実施形態では、接続点溶接の中心間
間隔は、100μm~1000μmである。このような小さな間隔は、フォトリソグラフ
ィーなどの微細加工技術を用いて形成することができる。さらに、ポリマーシートは、例
示的な実施形態では200μm未満の厚さである。
【0061】
周縁部312は密閉されてバッグ301を形成し、穴314は少なくとも1枚のシート
に形成されている。ここでは、穴314がシート302に形成されている。生体適合性層
315は、シート302および303の外側にある。
【0062】
酸素が入口穴314を通って供給されると、内部313が開き、膨張する。供給された
空気の圧力が十分に大きい場合、水中バッグの乾燥した内部313が開口して、気体がバ
ッグの最も遠い範囲まで自由に流れることができる。次いで、酸素は、シート302およ
び303を通って、生体適合性層315を通って、外側の消費細胞に均一に浸透する。
【0063】
図4は、連続気泡発泡体気体透過性バッグを示す。
システム400では、ポリマー連続気泡発泡体421の厚さ0.1mm~1.5mmのマ
ットは、対向する面上に気体透過性スキンシート420を有する。すなわち、発泡体の対
向する面上に自然に形成されたスキンは気体透過性である。発泡体の周縁部412(図の
中央の発泡体領域から離れて分解して示されている)は、スキンシート420を一緒に結
合し、内部空洞内に連続気泡発泡体を封入するように、密閉されている。発泡体は、バッ
グの膨張および崩壊を防止する。このようにして、耐膨張性耐崩壊性バッグが形成される
【0064】
生体適合性コーティング415は、バッグの外側スキン420上に積層され、それは0
.01μm~1000μmの厚さを有する。
【0065】
図5は、スペーサーチューブによって分離された複数のバッグを示す。各バッグ501
は断面で示され、各バッグは両方のシートを貫通する穴514を有する。断面で示される
Oリング525は、バッグを所定の間隔で離間させ、バッグの内部を互いにシールする。
空気または酸素がOリングを通して供給され、気体が各バッグに流入するようにしてもよ
い。
【0066】
Oリングの他に、チューブスペーサー517もバッグ501の間隔をあけており、これ
らは断面で示されている。チューブスペーサー517は、穴、スリット、または栄養素、
種子細胞、または他の物質が均一に分配するように送られ得る他の部分を有することがで
きる。
【0067】
いくつかの実施形態では、チューブスペーサー517は、それらが示されている(すな
わち、ページの内外に)のとは反対に上下に延びるように向けられてもよい。他の実施形
態では、チューブスペーサーは、バッグの間を蛇行することができる。
【0068】
図6は、ビーズによって分離された複数のバッグを示す。各バッグ601は断面で示さ
れ、各バッグは両方のシートを貫通する穴614を有する。断面で示されたOリング62
5は、バッグを所定の間隔で離間させ、バッグの内部を互いにシールする。
【0069】
バッグ601は、球状のビーズ626によって分離が保たれている。ビーズは、細胞増
殖のために、バッグだけよりも広い表面積を提供する。ビーズとバッグとの間の間隙62
7に細胞を供給し、そこを通じて栄養素の液体培養物を流すことができる。ビーズの外側
は、より良好な細胞接着、栄養素の保持などのために処理することができる。一方、気体
は、Oリングマニホルドを通してバッグの乾燥した内部に供給される。
【0070】
細胞が増殖した後、バッグを引き出すか、またはバッグの間からビーズを排出すること
によって、バッグをビーズから取り除くことができる。次いでビーズを処理して細胞をそ
れらから除去することができる。例えば、細胞とビーズ(およびバッグ)との間の結合を
切断するためにトリプシンを添加してもよく、またはビーズを激しく洗浄して細胞が剥が
れてもよい。
【0071】
図7は、積層された気体透過性バッグを有するバイオリアクター容器の等角図である。
システム700において、バッグ701は、所定量離間され、それらの壁が重力に対して
垂直になるように垂直面に吊り下げられている。他の構成では、長いバッグは、ペーパー
タオルロールのように、それ自体の周りに巻き付けることができる。
【0072】
水密容器730はバッグを収容し、それらを液体培養物に浸漬する。マニホールドが酸
素または空気をバッグに送達している間、液体を静かに循環させることができる。バッグ
への開口部は、図5および図6のように互いに接続されてもよいし、またはバッグの内部
に接続する内腔を有するチューブは、一般的なマニホールドと接続することができる。
【0073】
図8は、櫛形栄養素および気体送達バッグを有するバイオリアクターの等角図である。
システム800において、気体バッグ膜813の構造831は、栄養送達膜826と交互
配置されている。これは、気体と栄養素がバイオリアクター全体に提供される極めてコン
パクトな構造を形成する。
【0074】
バイオリアクターは、液体および細胞栄養素を収容するための容器(図示せず)に含ま
れていてもよい。
【0075】
図9A~9Fは、微細加工バッグ製造プロセスを示す。図9Aでは、平坦なシリコン基
板の上に、上昇した縁部を有する連続的なドライフィルム型がセットされる。図9Bでは
、ドライフィルムモールドをフォトリソグラフィーでエッチングして、ドライフィルムに
貫通穴を形成する。図9Cでは、型の上にPDMSを塗布し、硬化させる。その結果、マ
イクロピラーと周囲に高い縁部を有するPDMSシートが得られる。
【0076】
図9Dでは、図9Aのそれと同様の型の上にPDMSを塗布し、硬化する。その結果、
平らなPDMSのシートが得られる。次に、PDMSの2枚のシートを、第1のシートの
ピラー側をそれらの間にして、一緒にし、薄いPDMS層を用いて接着し、次いでそれを
硬化させてバッグを作る。マイクロピラーは、微細加工されたバッグの膨張を防止し、崩
壊を防止する。
【0077】
図9Eでは、バッグの側部にチューブが挿入され、チューブの内腔が、バッグの密封さ
れた端部の穴を通ってバッグの内部空洞と接続する。図9Fでは、パリレンは、化学蒸着
(CVD)を用いて、バッグの上部、底部及び側面にコーティングされる。パリレンは、
細胞のための清潔で生体適合性のある表面を提供する。パリレンはまた、シートの透過性
を制御する。パリレンは、より良好な細胞接着特性のためにプラズマ処理することができ
る。
【0078】
図10A図10Bは、プロトタイプの耐膨張性耐崩壊性のバッグの顕微鏡写真である
。バッグは透明であるため、その内部にあるマイクロピラーを見ることができる。図には
、バッグ内のマイクロピラーの幾何学的に規則的なパターン、列および行が明白に示され
ている。行と列は約100μm離れている。また、顕微鏡写真では暗く見える、バッグの
密封された端部も示されている。
【0079】
中空PDMSバッグ/膜(120μmの中央隙間を有する厚さ120μmの膜)は、細
胞接着のためのプラズマ処理されたパリレンCの薄層(0.5μmまで)でコーティング
されている。バッグの縁部にはチューブが配管され、調節された酸素の供給に接続され、
バッグの中空部分を酸素で灌流する。この隙間内の酸素はPDMS膜を通って周囲の培地
に拡散して細胞に栄養を与えることができる。細胞は、組織培養フラスコに匹敵する速度
で膜上で直接増殖させることができる。
【0080】
図11は、一実施形態のプロセス1100のフローチャートである。操作1101では
、一方の面にスペーサーを有するピラー化気体透過性シートを鋳造する。気体透過性シー
トは、ガス状の分子酸素がそれを透過するのに十分な厚さを有するが、標準的な室温およ
び大気圧では液体水がそれを透過するのを防止する。操作1102では、第2の気体透過
性シートを製造する。操作1103では、第2の気体透過性シートに接着剤を塗布する。
操作1104では、第2の気体透過性シートを、ピラー化ガス透過性シートとの間にスペ
ーサーを介して、ピラー化気体透過性シートに接合する。操作1105では、ピラー化第
1の気体透過性シートと第2の気体透過性シートの周囲を一緒に密閉して耐崩壊性バッグ
を形成する。操作1106では、耐崩壊性バッグに入口を形成する。操作1107では、
生体適合性コーティングをバッグの少なくとも1つの面に堆積し、生体適合性コーティン
グは0.1μm~1000μmの厚さを有する。操作1108では、細胞接着を改善する
ために、生体適合性コーティングを処理する。
【0081】
図12は、一実施形態のプロセス1200のフローチャートである。操作1201では
、一対の気体透過性ポリマーシートを密接に接触させる。操作1202では、貫通孔のア
レイを有する断熱性マスクをポリマーシート(一方の面)に配置し、貫通孔は中心間距離
が1000μm以下である。操作1203では、加熱された鉄をポリマーシートの反対側
の断熱性マスクにプレスする、加熱された鉄の温度、およびプレスの時間は、マスクの貫
通穴によって露出したポリマーシートの部分を一緒に溶接するのに十分である。操作12
04では、ポリマーシートの周囲を一緒に密閉してバッグを形成する。操作1205では
、生体適合性コーティングをバッグの少なくとも1つの面に堆積し、生体適合性コーティ
ングは0.1μm~1000μmの厚さを有する。操作1206では、細胞接着を改善す
るために、生体適合性コーティングを処理する。
【0082】
図13は、一実施形態のプロセス1300のフローチャートである。操作1301では
、耐膨張性気体透過性ポリマーバッグのスタックを準備し、各バッグは、マニホールドに
接続された入口を有し、各バッグは生体適合性コーティングを有し、バッグは球状ビーズ
によって互いに間隔を置かれる。操作1302では、ビーズとバッグとの間の間隙に細胞
を供給する。操作1303では、間隙に栄養素の液体培養物を流す。操作1304では、
分子酸素ガスを、マニホールドを通して耐膨張性バッグに加圧する。操作1305では、
細胞が成長し増殖するのを待って、栄養素および分子酸素ガスが細胞の増殖をサポートす
る。操作1306では、トリプシンを細胞に適用する。操作1307では、細胞をビーズ
から洗い流す。
【0083】
本発明は、様々な具体的かつ例示的な実施形態を参照して説明されている。しかしなが
ら、以下の特許請求の範囲の精神および範囲内にとどまりながら、多くの変形および修正
を行うことができることを理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図9F
図10A
図10B
図11
図12
図13