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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】PCP/AP通信装置および通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/06 20060101AFI20230612BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20230612BHJP
   H04W 84/12 20090101ALI20230612BHJP
【FI】
H04B7/06 952
H04W16/28
H04W84/12
H04B7/06 958
H04B7/06 960
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022035488
(22)【出願日】2022-03-08
(62)【分割の表示】P 2017088864の分割
【原出願日】2017-04-27
(65)【公開番号】P2022081595
(43)【公開日】2022-05-31
【審査請求日】2022-03-08
(31)【優先権主張番号】P 2016215408
(32)【優先日】2016-11-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017031029
(32)【優先日】2017-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】514136668
【氏名又は名称】パナソニック インテレクチュアル プロパティ コーポレーション オブ アメリカ
【氏名又は名称原語表記】Panasonic Intellectual Property Corporation of America
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウィー ヤオ ハン ガイアス
(72)【発明者】
【氏名】本塚 裕幸
(72)【発明者】
【氏名】ホァン レイ
(72)【発明者】
【氏名】漆原 伴哉
(72)【発明者】
【氏名】入江 誠隆
【審査官】北村 智彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-096852(JP,A)
【文献】特表2015-527026(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0255660(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0244432(US,A1)
【文献】Alexander Maltsev et al.,"Near-far" self-classification capabilities of EDMG STAs[online],IEEE802.11-17/0762r5,2017年05月08日,slides 1-10,[検索日:2023.02.17],インターネット<URL:https://mentor.ieee.org/802.11/dcn/17/11-17-0762-05-00ay-near-far-self-classification-capabilities-of-edmg-stas.pptx>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/06
H04W 16/28
H04W 84/12
IEEE Xplore
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セクタスイープ(SSW)フィールドを含むDirectional Multi-Gigabit Beacon(DMG Beacon)フレームを生成し、前記SSWフィールドは、自装置のTX EIRP(Transmission Equivalent Isotropic Radiated Power)の値と前記自装置の受信アンテナゲインの値とを用いて得られる差分の値を示すDifferential Gainサブフィールドを含前記Differential Gainサブフィールドの値は、前記DMG Beaconフレームを受信した通信相手装置において、ビームフォーミングトレーニング(BFT)のためのフレームを送信するか否かを判断するのに用いられる、信号生成部と、
前記生成されたDMG Beaconフレームを送信する送信部と、
を備えるPCP/AP(personal basic service point / access point)通信装置。
【請求項2】
前記差分の値は、前記TX EIRPの値から、前記自装置の前記受信アンテナゲインの値を除算することによって得られる、
請求項1に記載のPCP/AP通信装置。
【請求項3】
PCP/AP通信装置における通信方法であって、
セクタスイープ(SSW)フィールドを含むDirectional Multi-Gigabit Beacon(DMG Beacon)フレームを生成し、前記SSWフィールドは、自装置のTX EIRP(Transmission Equivalent Isotropic Radiated Power)の値と前記自装置の受信アンテナゲインの値とを用いて得られる差分の値を示すDifferential Gainサブフィールドを含み、前記Differential Gainサブフィールドの値は、前記DMG Beaconフレームを受信した通信相手装置において、ビームフォーミングトレーニング(BFT)のためのフレームを送信するか否かを判断するのに用いられるものであり、
前記生成されたDMG Beaconフレームを送信する、
通信方法。
【請求項4】
前記差分の値は、前記TX EIRPの値から、前記自装置の前記受信アンテナゲインの値を除算することによって得られる、
請求項に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、PCP/AP通信装置および通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
IEEE 802.11は、無線LAN関連規格の一つであり、その中に、例えば、IEEE802.11ad規格(以下、「11ad規格」という)がある(例えば、非特許文献1を参照)。
【0003】
11ad規格ではビームフォーミング(BF)技術が用いられている。ビームフォーミングとは、無線端末に含まれる送信部及び受信部の1つ以上のアンテナの指向性をそれぞれ変化させて、通信品質、例えば受信強度が最適になるように、アンテナの指向性を設定して通信を行う方式である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第8,521,158号明細書
【非特許文献】
【0005】
【文献】IEEE 802.11adTM -2012 278~314頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、各無線端末の通信エリアを考慮していないため、第1の無線端末が第2の無線端末からのビームフォーミングのトレーニングに用いるフレームを受信可能な場合でも、第2の無線端末が第1の無線端末からのビームフォーミングのトレーニングに用いるフレームの受信が困難な場合があり、各無線端末が無線リンクを確立することが困難となる。
【0007】
本開示の一態様に係る通信装置は、通信装置(STA)においてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)に到達するか否かを判定することができ、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)の消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる通信装置および通信方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る通信装置は、DMG Beaconフレームを受信する受信部と、DMG Beaconフレームに含まれる通信相手の受信アンテナゲインと、DMG Beaconフレームの受信電力とを用いて、SSWフレームの送信をするか否かを判断する判断部と、前記判断部が前記SSWフレームの送信をすると判断した場合、前記SSWフレームを送信する送信部と、を含む。
【0009】
本開示の一態様に係る通信方法は、DMG Beaconフレームを受信し、DMG Beaconフレームに含まれる通信相手の受信アンテナゲインと、DMG Beaconフレームの受信電力とを用いて、SSWフレームの送信をするか否かを判断し、前記SSWフレームの送信をすると判断した場合、前記SSWフレームを送信する、を含む。
【0010】
なお、これらの包括的または具体的な態様は、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラム、または、記録媒体で実現されてもよく、システム、装置、方法、集積回路、コンピュータプログラムおよび記録媒体の任意な組み合わせで実現されてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一態様によれば、通信装置(STA)においてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)に到達するか否かを判定することができ、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)の消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる通信装置および通信方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係るSLSの手順の一例を示す図である。
図2】本開示に係るPCP/APとnon-AP STAが無線リンクを確立する方法の一例を示す図である。
図3A】本開示に係るnon-PCP/AP STAに対する下りリンクセクタスイープにおける、PCP/APの動作の一例を示す図である。
図3B】本開示に係るPCP/APに対する上りリンクセクタスイープにおける、non-PCP/AP STAの動作の一例を示す図である。
図3C】本開示に係るnon-PCP/AP STAに対する下りリンクデータ送信における、PCP/APの動作の一例を示す図である。
図3D】本開示に係るPCP/APに対する上りリンクデータ送信において、non-PCP/AP STAの動作の一例を示す図である。
図4】本開示の実施の形態1に係る通信装置の構成の一例を示す図である。
図5】本開示の実施の形態1に係る通信装置(AP)が送信するDMB Beaconフレームの一例を示す図である。
図6】本開示の実施の形態1に係るTX EIRPフィールドの値と、EIRPの値との対応の一例を示す図である。
図7】本開示の実施の形態1に係るTX EIRPフィールドの値と、EIRPの値との対応を示す別の例を示す図である。
図8】本開示の実施の形態1に係るA-BFT RX Antenna Gainフィールドの値と、A-BFTにおける通信装置(AP)の受信アンテナゲインの値との対応の一例を示す図である。
図9】本開示の実施の形態1に係るA-BFT RX Antenna Gainフィールドの値と、受信アンテナゲインの値との対応を示す別の例を示す図である。
図10】本開示の実施の形態1に係る通信装置(STA)による図5のDMG Beaconフレームの受信処理の一例を示すフロー図である。
図11】本開示の実施の形態1に係る通信装置(STA)による図5のDMG Beaconフレームの受信処理の別の例を示すフロー図である。
図12A】本開示の実施の形態1に係る11ad規格におけるMCSに対する受信感度点の値の一例を示す図である。
図12B】本開示の実施の形態1に係る11ad規格におけるMCSに対する最大スループットの値の一例を示す図である。
図13】本開示の実施の形態2に係る通信装置(AP)と通信装置(STA)が通信を行う手順の一例を示す図である。
図14】本開示の実施の形態2に係るDMG Beaconフレームのフォーマットの一例を示す図である。
図15】本開示の実施の形態2に係るTX EIRPフィールドの値の一例を示す図である。
図16】本開示の実施の形態2に係るA-BFT RX Antenna Gainフィールドの値の一例を示す図である。
図17】本開示の実施の形態2に係るProbe Requestフレームの一例を示す図である。
図18】本開示の実施の形態2の変形例に係るDMG Beaconフレームのフォーマットの別の例を示す図である。
図19】本開示の実施の形態2の変形例に係るDifferential Gainフィールドの値の一例を示す図である。
図20】本開示の実施の形態2の変形例に係るProbe Responseフレームのフォーマットの別の例を示す図である。
図21】本開示の実施の形態2の変形例に係るRelative Beamed TX EIRPフィールドの値の例を示す図である。
図22】本開示の実施の形態3に係る通信装置(AP)と通信装置(STA)が通信を行う手順の一例を示す図である。
図23】本開示の実施の形態3に係るDMG Beaconフレームのフォーマットの一例を示す図である。
図24】本開示の実施の形態3に係るDMG Beaconフレームの別の例を示す図である。
図25】本開示の実施の形態3に係るAP1が、AP2に関するEDMG TX RX Infoフィールドを、Neighbor Report Responseフレームに含めて送信する手順の一例を示す図である。
図26】本開示の実施の形態3に係るNeighbor Report Responseフレームの一例を示す図である。
図27】本開示の実施の形態4に係る通信装置(AP)と通信装置(STA)が通信を行う手順の一例を示す図である。
図28】本開示の実施の形態4に係るFeedback frameの一例を示す図である。
図29】本開示の実施の形態4に係る11ad規格におけるRTSフレームのフォーマットを示す図である。
図30】本開示の実施の形態4に係る11ad規格におけるESEのフォーマットを示す図である。
図31】本開示の実施の形態1、2の変形例に係るDMG Beaconフレームのフォーマットの別の一例を示す図である。
図32】本開示の実施の形態1、2の変形例に係るDifferential Gainフィールドの値と(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値との関係の一例を示す図である。
図33】本開示の実施の形態5に係るDMG Beaconフレームの一例を示す図である。
図34】本開示の実施の形態5に係るAP Selection Parameterフィールドの値の一例を示す図である。
図35】本開示の実施の形態5に係る通信装置(STA)100bによる図33のDMG Beaconフレームの受信処理を示すフローチャートである。
図36】本開示の実施の形態5に係るAsymmetric Beamforming Trainingの処理手順の一例を示す図である。
図37】本開示の実施の形態5に係るDMG Beaconパケットのフォーマットの一例を示す図である。
図38】本開示の実施の形態5に係るSSWフィールドのフォーマットの一例を示す図である。
図39】本開示の実施の形態5に係るEDMG ESEのフォーマットの一例を示す図である。
図40】本開示の実施の形態6に係る通信装置(AP)100aが送信するDMG Beaconフレームの一例を示す図である。
図41】本開示の実施の形態6に係る通信装置(STA)100bによる図40のDMG Beaconフレームの受信処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
11ad規格では、複数のアンテナの指向性の設定(以下、「セクタ」と呼ぶ)の中から最適なセクタを選択するために、SLS(Sector Level Sweep)と呼ばれる手順が定められている。図1は、SLSの手順の一例を示す図である。SLSは、2台の端末(以下、Stationを意味する「STA」と呼ぶ)の間で行われる。なお、以後、一方のSTAをInitiator、他方をResponderと呼ぶ。
【0014】
まず、Initiatorが、セクタを変更し、セクタ番号をSSW(Sector Sweep)フレームにふくめ、複数のSSWフレームを送信する。この送信処理はISS(Initiator Sector Sweep)と呼ばれる。ISSでは、Responderは、各SSWフレームの受信品質を測定すし、最も受信品質が良かったSSWフレームに含まれるセクタ番号を特定する。このセクタ番号に対応するInitiatorにおけるセクタを、Initiatorのベストセクタと呼ぶ。
【0015】
次に、Responderが、セクタを変更し、複数のSSW(Sector Sweep)フレームを送信する。この送信処理はRSS(Responder Sector Sweep)と呼ばれる。Responderは、RSSにおいて、ISSにおいて特定したInitiatorのベストセクタの番号をSSWフレームに含めて送信する。RSSでは、Initiatorは、各SSWフレームの受信品質を測定し、最も受信品質が良かったSSWフレームに含まれるセクタ番号を特定する。このセクタ番号に対応するResponderにおけるセクタを、Responderのベストセクタと呼ぶ。
【0016】
最後に、Initiatorは、RSSにおいて特定したResponderのベストセクタの番号を、SSW-FB(SSW Feedback)フレームに含めて送信する。SSW-FBを受信したResponderは、SSW-FBを受信したことを示すSSW-ACK(SSW Acknowledgement)を送信してもよい。
【0017】
なお、送信のビームフォーミングトレーニング(TXSS, Transmitter Sector Sweep)を行うためのSLSについて説明したが、受信のビームフォーミングトレーニング(RXSS, Receiver Sector Sweep)を行うためにSLSを用いてもよい。SSWフレームを送信するSTAは、複数のSSWフレームを単一のセクタで順次送信し、SSWフレームを受信するSTAは、SSWフレーム毎に受信アンテナのセクタを切り替えて、受信する。
【0018】
11ad規格では、一部のSTAは、PCP(Personal basic service point)及びAP(Access point)(以下、PCP/APと呼ぶ)と呼ばれるSTAである。また、PCP/APではないSTAを、non-PCP/AP STAと呼ぶ。non-PCP/AP STAは、通信を開始する場合、まずPCP/APと無線リンクを確立する。
【0019】
図2は、PCP/APとnon-AP STAが無線リンクを確立する方法の一例を示す。PCP/APは、セクタを変更し、複数のDMG Beacon(Directional Multi-Gigabit Beacon)フレームを送信する。
【0020】
11ad規格では、PCP/APがDMG Beaconを送信する期間は、BTI(Beacon Transmission Interval)と呼ばれる。BTIに続き、A-BFT(Association Beamforming Training)と呼ばれる期間が設定されてもよい。
【0021】
A-BFTでは、STA1(non-PCP/AP STA)は、セクタを変更し、複数のSSWフレームを送信する。PCP/APは、A-BFTにおいてSSWフレームを受信した場合、受信品質が良かったSSWフレームを特定する情報を、SSW-FB(SSW Feedback)フレームに含めてSTA1へ送信する。
【0022】
以上のように、non-PCP/AP STAは、DMG Beaconを受信した場合に、A-BFTにおいてSSWフレームを送信し、PCP/APとの無線リンクを確立する。
【0023】
しかしながら、PCP/AP及びnon-PCP/AP STAのアンテナにおいて、それぞれアンテナの通信エリアを考慮していないため、non-PCP/AP STAがDMG Beaconフレームを受信可能な場合でも、PCP/APがA-BFTにおけるSSWフレームの受信が困難な場合があり、PCP/APとnon-AP STAが無線リンクを確立することが困難となる。また、PCP/APとnon-AP STAが無線リンクを確立することが困難であるにも関わらず、non-AP STAは不要なSSWフレームを送信するため、消費電力が増加し、他のSTAへの不要な干渉を与える。
【0024】
図3Aは、non-PCP/AP STA(以下、通信装置(STA)100b)に対する下りリンクセクタスイープにおける、PCP/AP(以下、通信装置(AP)100a)の動作の一例を示す。下りリンクセクタスイープは、例えば図2においてPCP/APがDMG Beaconフレームを送信する処理である。また、下りリンクセクタスイープは、図1におけるISSであってもよい。
【0025】
通信装置(AP)100aは、送信アレイアンテナ106(図4参照)を用いて、セクタを変えてDMG Beaconフレームを送信する。通信装置(STA)100bは、ベストセクタが未知であるため、つまり、通信装置(AP)100aと通信するために最適な受信アレイアンテナ116(図4参照)の設定が未知であるため、受信q-omniアンテナ115(図4参照)を用いてDMG Beaconを受信する。
【0026】
図3Bは、PCP/AP(通信装置(AP)100a)に対する上りリンクセクタスイープにおける、non-PCP/AP STA(通信装置(STA)100b)の動作の一例を示す。上りリンクセクタスイープは、例えば図2のA-BFTにおいてnon-PCP-AP STAがSSWフレームを送信する処理である。なお、図3Bでは、通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bのSSWフレームを受信しない状態を示す。
【0027】
通信装置(STA)100bは、送信アレイアンテナ106を用いて、セクタを変えてSSWフレームを送信する。通信装置(AP)100aは、ベストセクタが未知であるため、つまり、通信装置(STA)100bと通信するために最適な受信アレイアンテナ116の設定が未知であるため、受信q-omniアンテナ115を用いてSSWフレームを受信する。
【0028】
通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bの送信アレイアンテナ106(図4参照)及び受信q-omniアンテナ115のゲインが異なるため、図3Aにおいて通信装置(STA)100bはDMG Beaconを受信し、図3Bにおいて通信装置(AP)100aはSSWフレームを受信しない。
【0029】
例えば、通信装置(AP)100aは多くの素子数を含む送信アレイアンテナ106を備え、通信装置(STA)100bの送信アレイアンテナ106は、通信装置(AP)100aに比べ少ないアンテナ素子数を含む。この場合、通信装置(AP)100aの送信アンテナゲインが大きく、また、送信アレイアンテナへの入力電力が大きい。つまり、通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bに比べ、EIRP(Equivalent Isotropic Radiated Power、等価等方輻射電力)が大きい。
【0030】
図3Aの下りリンクセクタスイープにおいて、通信装置(STA)100bがDMG BeaconまたはSSWフレームを1個以上受信し、図示しない上りリンクセクタスイープにおいて、通信装置(AP)100aがSSWフレームを1個以上受信した場合、通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bの通信が確立される。このとき、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、ベストセクタが既知である。
【0031】
なお、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、セクタスイープの後、11ad規格に定められるBRP(Beam Refinement Protocol)の手順を実施し、さらに高精度のビームフォーミングトレーニングを行ってもよい。BRPにより、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、ベストセクタの指向性を強め、ゲインを高めることができる。
【0032】
しかし、通信装置(AP)100aは、図3Aの下りセクタスイープによりゲインを高めたベストセクタを決定することは困難である。なぜなら、ゲインを高めたセクタは指向性が強くビーム幅が細いため、DMG Beacon及びSSWフレームを通信装置(STA)100bに到達させるためには、セクタスイープにおいて多数のDMG Beacon及びSSWフレームを送信する必要があり、セクタスイープに要する時間が長くなる。
【0033】
一方、通信装置(AP)100aは、セクタスイープを完了する前にBRPを行うことは困難である。なぜなら、通信装置(AP)100aは、ベストセクタが未知であるため、BRPを行うためのBRPパケットを通信装置(STA)100bに受信させることが困難である。
【0034】
つまり、通信装置(AP)100aは、図3Aに示す中程度の指向性、つまり、図3Cのビーム幅を広げることにより、セクタスイープの時間短縮を行い、ベストセクタを決定した後、BRPを用いてゲインを高めたベストセクタを決定することができる。
【0035】
また、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、セクタスイープにより送信アレイアンテナ106のベストセクタを決定した後、BRPの手順を実施し、受信アレイアンテナ116のトレーニングを行ってもよい。これにより、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、受信アレイアンテナ116のベストセクタを決定する。
【0036】
なお、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bは、送信アレイアンテナ106のベストセクタを決定した後、SLS(例えば図1)を用いて受信アレイアンテナ116のベストセクタを決定してもよく、SLSとBRPを組み合わせて実施しても良い。
【0037】
送信アレイアンテナ106のベストセクタと、受信アレイアンテナ116のベストセクタは、異なる場合がある。
【0038】
図3Cは、通信装置(STA)100bに対する下りリンクデータ送信における、通信装置(AP)100aの動作の一例を示す。
【0039】
通信装置(AP)100aは、送信アレイアンテナ106を、BRPによりゲインを高めたベストセクタに設定して、データフレームの送信を行う。つまり、図3Cでは、通信装置(AP)100aが図3Aで用いるビームよりも幅の狭いビームを用いるため、通信装置(AP)100aが用いるベストセクタは、図3Aで用いるセクタに比べ、ゲインが高く指向性が強い。
【0040】
図3Cでは、通信装置(STA)100bは、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定して、データフレームの受信を行う。
【0041】
図3Dは、通信装置(AP)100aに対する上りリンクデータ送信において、通信装置(STA)100bの動作の一例を示す。
【0042】
通信装置(STA)100bは、送信アレイアンテナ106を、BRPによりゲインを高めたベストセクタに設定して、データフレームの送信を行う。図3Dでは、通信装置(STA)100bが図3Bで用いるビームよりも幅の狭いビームを用いるため、通信装置(STA)100bが用いるベストセクタは、図3Bで用いるセクタに比べ、ゲインが高く指向性が高い。
【0043】
図3Dでは、通信装置(AP)100aは、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定して、データフレームの受信を行う。
【0044】
このように、通信装置(AP)100aがDMG Beaconを送信する場合(例えば図3A)、通信装置(STA)100bがDMG Beaconに対する応答を送信する場合(例えば図3B)、通信装置(AP)100aがデータパケットを送信する場合(例えば図3C)、及び通信装置(STA)100bがデータパケットを送信する場合(例えば図3D)のそれぞれにおいて、送信アンテナゲイン及び受信アンテナゲインが変化するため、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aに対して無線リンクを確立できるか否かをDMG Beaconの受信電力に基づき判断することは困難である。また、通信装置(STA)100bは、所望のデータスループットを実現できるか否かをDMG Beaconの受信電力に基づき判断することは困難である。
【0045】
参考特許文献1(米国特許第8,521,158号明細書)では、BeaconフレームにEIRPと受信電力のThreshold valueを含めて送信する方法が開示されている。これにより、AP及びSTAが無指向性である場合に、STAはAPに対して無線リンクを確立できるか否かを判定することができる。
【0046】
しかしながら、参考特許文献1では、通信装置(STA)100bがセクタスイープを行う場合に通信装置(AP)100aが受信q-omniアンテナ115に切り替えることが考慮されておらず、図3Bにおいて、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aに対して無線リンクを確立できるか否かを判定することが困難である。
【0047】
また、参考特許文献1では、通信装置(AP)100aが下りデータ送信を行う場合に、通信装置(STA)100bが受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定することが考慮されていない。このため、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが下りリンクデータ送信を行う場合、所望のデータスループットを実現できるか否かをDMG Beaconの受信電力に基づき判断することは困難である。
【0048】
また、参考特許文献1では、通信装置(STA)がデータ送信を行う場合に通信装置(AP)が受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定することが考慮されていない。このため、通信装置(STA)は、上りリンクデータ送信を行う際に所望のデータスループットを実現できるか否かをDMG Beaconの受信電力に基づき判断することは困難である。
【0049】
つまり、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aに無線リンクを確立することが困難であっても、A-BFTにおけるSSWフレームの送信を行うため、消費電力が増大し、他のSTAへの不要な干渉を与える。
【0050】
また、通信装置(STA)は、下り及び上りリンクデータ送信を行う際に所望のデータスループットの実現が困難でもあっても、A-BFTにおけるSSWフレームの送信を行うため、消費電力が増大し、他のSTAへの不要な干渉を与える。
【0051】
以上のことから、以下説明する本開示の各実施の形態に係る通信装置は、A-BFTにおけるSSWフレームが通信相手の通信装置に到達するか否かを判定することを目的とするものである。
【0052】
(実施の形態1)
実施の形態1では、下りリンクセクタスイープにおいて、通信装置(STA)100bが、DMG Beaconの受信電力と、DMG Beaconに含まれる上りリンクセクタスイープ時に使用される通信装置(AP)100aの擬似無指向性(quasi-omni)アンテナの受信ゲインとを用いて、上りリンクスイープにおけるSSWフレームが、通信装置(AP)100aによって受信可能であるか否かを判断する方法について説明する。
【0053】
図4は、本開示に係る通信装置100の構成の一例を示す図である。
【0054】
通信装置100は、MAC制御部101、PHY送信回路102、D/Aコンバータ103、送信RF回路104、送信q-omniアンテナ105、送信アレイアンテナ106、PHY受信回路112、A/Dコンバータ113、受信RF回路114、受信q-omniアンテナ115、受信アレイアンテナ116を含む。
【0055】
MAC制御部101は、送信MACフレームデータを生成する。例えば、MAC制御部101は、SLS手順のISSにおいて、SSWフレームのデータを生成し、PHY送信回路102に出力する。また、MAC制御部101は、生成した送信MACフレームが適切に符号化及び変調されるための制御情報(PHYフレームのヘッダ情報、および送信タイミングに関する情報を含む)をPHY送信回路102に出力する。
【0056】
PHY送信回路102は、MAC制御部101から入力された送信MACフレームデータおよび制御情報に基づき、符号化処理及び変調処理を行い、PHYフレームデータを生成する。生成されたPHYフレームは、D/Aコンバータ103でアナログ信号に変換され、送信RF回路104で無線信号に変換される。
【0057】
PHY送信回路102は、送信RF回路104を制御する。具体的には、PHY送信回路102は、指定されたチャネルに応じた中心周波数の設定、送信電力の制御、および指向性の制御を送信RF回路104に対して行う。
【0058】
送信q-omniアンテナ105は、送信RF回路104から入力される無線信号を、擬似無指向性の無線信号として、送信する。ここで、q-omniは擬似無指向性(quasi-omni)の略である。
【0059】
送信アレイアンテナ106は、送信RF回路104から入力される無線信号を、指向性を有する無線信号として送信する。送信アレイアンテナ106は、アレイ構成でなくても良いが、指向性が制御されることを明示するため、アレイアンテナと呼ぶ。
【0060】
送信q-omniアンテナ105は、送信アレイアンテナ106に比べ、広いビーム幅を持つ。一方、送信アレイアンテナ106は、指向性の制御に応じて、特定の方向において、他の方向よりも大きなゲインを持つ。また、送信アレイアンテナ106の特定の方向のゲインは、送信q-omniアンテナ105のゲインに比べ、大きくてもよい。
【0061】
また、送信アレイアンテナ106は、送信q-omniアンテナ105に比べ、送信RF回路104からの入力電力が大きくてもよい。例えば、送信RF回路104が、送信q-omniアンテナ105及び送信アレイアンテナ106を構成するアンテナ素子毎に送信アンプを備える場合、アンテナ素子数を多数備える送信アレイアンテナ106は、アンテナ素子数が少ない送信q-omniアンテナ105に比べ、入力電力が大きい。
【0062】
なお、通信装置100は、送信アレイアンテナ106を用いて擬似無指向性の無線信号を送信しても良い。つまり、送信アレイアンテナ106は、送信q-omniアンテナ105を含んでも良い。
【0063】
例えば、通信装置100は、送信アレイアンテナ106が複数のアンテナ素子を備え、複数のアンテナ素子に電力を入力するように送信RF回路104を制御することによって、送信アレイアンテナ106は指向性の無線信号を送信する。また、通信装置100は、送信アレイアンテナ106の複数のアンテナ素子の1つ以上の素子に電力を入力するように送信RF回路104を制御することによって、送信アレイアンテナ106は擬似無指向性の無線信号を送信する。なお、擬似無指向性の無線信号は、指向性の無線信号のときよりも少ないアンテナ素子を使用していればよい。
【0064】
受信q-omniアンテナ115は、通信相手である通信装置から受信した無線信号を、受信RF回路114に出力する。受信q-omniアンテナ115は、無線信号の到来方向とゲインとの関係において擬似無指向性を有する。
【0065】
受信アレイアンテナ116は、受信RF回路114と組み合わせて、無線信号を受信RF回路114に出力する。受信アレイアンテナ116は、無線信号の到来方向とゲインとの関係において、受信q-omniアンテナ115より強い指向性を有する。受信アレイアンテナ116は、アレイ構成でなくても良いが、指向性が制御されることを明示するため、アレイアンテナと呼ぶ。
【0066】
受信q-omniアンテナ115は、受信アレイアンテナ116に比べ、広いビーム幅を持つ。一方、受信アレイアンテナ116は、指向性の制御に応じて、特定の方向において、他の方向よりも大きなゲインを持つ。受信アレイアンテナ116の特定の方向におけるゲインは、受信q-omniアンテナ115に比べ大きくてもよい。
【0067】
受信RF回路114は、受信q-omniアンテナ115及び受信アレイアンテナ116が受信した無線信号をベースバンド信号に変換する。また、A/Dコンバータ113は、ベースバンド信号をアナログ信号からデジタル信号に変換する。
【0068】
PHY受信回路112は、受信されたデジタルベースバンド信号に対し、例えば、同期、チャネル推定、等化、復調を行い、受信PHYフレームを得る。さらに、PHY受信回路112は、受信PHYフレームに対しヘッダ信号の解析、誤り訂正復号を行い、受信MACフレームデータを生成する。
【0069】
受信MACフレームデータは、MAC制御部101に入力される。MAC制御部101は、受信MACフレームデータの内容を解析し、上位レイヤ(図示しない)にデータを転送し、受信MACフレームデータに応じた応答を行うための送信MACフレームデータを生成する。例えば、MAC制御部101は、SLS手順のISSの最終のSSWフレームを受信したと判断した場合、適切なSSWフィードバック情報を含むRSSのためのSSWフレームを生成し、送信MACフレームデータとしてPHY送信回路に入力する。
【0070】
PHY受信回路112は、受信RF回路114を制御する。具体的には、PHY受信回路112は、指定されたチャネルに応じた中心周波数の設定、AGC(Automatic Gain Control)を含む受信電力の制御、および指向性の制御を受信RF回路114に対して行う。
【0071】
また、MAC制御部101はPHY受信回路112の制御を行う。具体的には、MAC制御部101は、受信の起動または停止、キャリアセンスの起動または停止を、PHY受信回路112に対して行う。
【0072】
図5は、通信装置(AP)100aが送信するDMB Beaconフレームの一例を示す。DMB Beaconフレームは、Frame Bodyフィールドを含む。また、Frame Bodyフィールドは、EDMG TX RX Infoエレメントを含む。また、EDMG TX RX Infoエレメントは、Element IDフィールド、Lengthフィールド、TX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含む。通信装置(STA)100bは、EDMG TX RX Infoエレメントを用いて、上りリンクセクタスイープを行うか否かを判断する。
【0073】
EDMG TX RX Infoエレメントが含むフィールドの詳細について説明する。
【0074】
Element IDフィールドは、EDMG TX RX Infoエレメントに固有のIDを含む。つまり、Frame BodyフィールドがEDMG TX RX Infoエレメントを含むことを示すためのフィールドである。
【0075】
Lengthフィールドは、EDMG TX RX Infoエレメントの長さをオクテット単位で示す。図5では、EDMG TX RX Infoエレメントは6オクテットにより構成されるため、Lengthフィールドの値は6である。
【0076】
TX EIRPフィールドは、通信装置(AP)100aがDMG Beaconを送信する場合、EIRPを含む。図6は、TX EIRPフィールドの値と、EIRPの値との対応の一例を示す。
【0077】
通信装置(AP)100aが送信するDMG BeaconにおけるEIRPの値(以下、EIPR)が、0 dBm以下の場合、通信装置(AP)100aは、TX EIRPフィールドの値を0に設定する。EIRPが0 dBmを超え127 dBm未満の場合、通信装置(AP)100aは、EIRPの値を2倍し、最も近い整数値をTX EIRPフィールドに設定する。また、EIRPが127 dBm以上の場合、通信装置(AP)100aは、TX EIRPフィールドの値を254に設定する。また、通信装置(AP)100aは、EIRPの値を通信装置(STA)100bに通知しない場合、TX EIRPフィールドの値を255に設定する。
【0078】
通信装置(AP)100aは、各DMG Beaconを同じEIRPで送信してもよい。また、通信装置(AP)100aは、各DMG Beaconを異なるEIRPで送信してもよい。例えば、通信装置(AP)100aは、送信アレイアンテナ106の指向性を制御することによって、指向性パターンに応じてEIRPが変化する。通信装置(AP)100aは、各DMG BeaconのEIRPの値を、各DMG BeaconのTX EIRPフィールドに含める。
【0079】
また、通信装置(AP)100aは、DMG Beaconの一部を送信q-omniアンテナ105で送信し、他のDMG Beaconを送信アレイアンテナ106で送信しても良い。通信装置(AP)100aは、DMG Beaconを送信q-omniアンテナ105で送信する場合、TX EIRPフィールドに送信q-omniアンテナ105のEIRPの値を含める。送信q-omniアンテナ105のEIRPは送信アレイアンテナ106のEIRPより小さいため、通信装置(STA)100bは、受信したTX EIRPフィールドの値を参照し、受信したDMG Beaconが擬似無指向性の無線信号か指向性の無線信号かを判別しても良い。
【0080】
また、通信装置(AP)100aは、DMG Beacon毎に送信電力及びゲインを変えて送信してもよい。通信装置(AP)100aは、各DMG BeaconのTX EIRPフィールドに、各DMG Beaconの送信電力及びゲインに応じたEIRPの値を設定して送信しても良い。例えば、通信装置(AP)100aは、正面方向に指向性を制御した場合に最大のゲインを持ち、正面方向と異なる方向に指向性を制御した場合に最大のゲインに比べ数dB小さいゲインを持つと設定してもよい。
【0081】
図7は、TX EIRPフィールドの値と、EIRPの値との対応を示す別の例を示す。通信装置(AP)100aのEIRPの精度が1 dBである場合、通信装置(AP)100aは、TX EIRPフィールドの値を0から127のいずれかに設定する。例えば、EIRPの精度が1 dBであり、EIRPの値が3 dBmである場合、TX EIRPフィールドの値を3に設定する。
【0082】
また、通信装置(AP)100aのEIRPの精度が3 dBである場合、通信装置(AP)100aは、TX EIRPフィールドの値を128から171のいずれかに設定する。例えば、EIRPが6 dBmであれば、TX EIRPフィールドの値を130に設定する。
【0083】
A-BFT RX Antenna Gainフィールドは、A-BFTにおける通信装置(AP)100aの受信アンテナゲイン、つまり、受信q-omniアンテナ115の受信アンテナゲインを含む。
【0084】
図8は、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値と、A-BFTにおける通信装置(AP)100aの受信アンテナゲインの値との対応の一例を示す。
【0085】
A-BFTにおける通信装置(AP)100aの受信アンテナゲインの値(以下、受信アンテナゲイン)が、0 dBi以下の場合、通信装置(AP)100aは、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を0に設定する。受信アンテナゲインが0 dBiを超え63.5 dBim未満の場合、通信装置(AP)100aは、受信アンテナゲインの値を2倍し、最も近い整数値をA-BFT RX Antenna Gainフィールドに設定する。また、受信アンテナゲインが63.5 dBi以上の場合、通信装置(AP)100aは、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を254に設定する。また、通信装置(AP)100aは、受信アンテナゲインの値を通信装置(STA)100bに通知しない場合、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を255に設定する。
【0086】
図9は、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値と、受信アンテナゲインの値との対応を示す別の例を示す。通信装置(AP)100aの受信アンテナゲインの精度が1 dBである場合、通信装置(AP)100aは、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を0から63のいずれかに設定する。例えば、受信アンテナゲインの精度が1 dBであり、受信アンテナゲインが3 dBiであれば、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を3に設定する。
【0087】
また、通信装置(AP)100aの受信アンテナゲインの精度が3 dBである場合、通信装置(AP)100aは、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を64から85のいずれかに設定する。例えば、受信アンテナゲインの精度が3 dBであり、受信アンテナゲインが6 dBiであれば、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を66に設定する。
【0088】
なお、A-BFTにおいて通信装置(AP)100aはビーム幅が最も広いアンテナを使用してSSWフレームを受信するため、A-BFT RX Antenna Gainフィールドは、Wide RX Antenna Gainフィールドと呼ぶ場合がある。
【0089】
Beamed TX EIRPフィールドは、通信装置(AP)100aによるデータパケットの送信における、EIRPの値を含む。つまり、通信装置(AP)100aが送信アレイアンテナ106を制御してビームフォーミングによる送信を行う場合に用いるアンテナゲインである。通信装置(AP)100aは、Beamed TX EIRPフィールドの値を図6または図7と同様に設定する。
【0090】
Beamed RX Gainフィールドは、通信装置(AP)100aによるデータパケットの受信における、受信アンテナゲインの値を含む。つまり、通信装置(AP)100aが受信アレイアンテナ116を制御してビームフォーミングによる受信を行う場合に用いるアンテナゲインである。通信装置(AP)100aは、Beamed RX Gainフィールドの値を図8または図9と同様に設定する。
【0091】
図10は、通信装置(STA)100bによる図5のDMG Beaconフレームの受信処理の一例を示す。通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームの受信処理することで、上りリンクセクタスイープにおいて、通信装置(AP)100aと接続可能か否かを判断する。
【0092】
ステップS101において、通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームを受信し、受信電力を測定する。通信装置(STA)100bは、受信電力をRSSI(Receive signal strength indicator)に換算してもよい。以下、換算した受信電力を、RSSI_Beacon(単位はdBm)と表す。
【0093】
なお、ステップS101において、通信装置(STA)100bが複数のDMG Beaconフレームを受信した場合、最も受信品質が良いDMG Beaconフレームの受信電力をRSSI_Beaconと定める。
【0094】
また、通信装置(STA)100bが受信したDMG BeaconフレームのTX EIRPフィールドの値を図6または図7を用いて換算したEIRPの値をEIRP_Beacon(単位はdBm)と定める。
【0095】
また、通信装置(STA)100bが受信したDMG BeaconフレームのA-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を図8または図9を用いて換算した受信アンテナゲインの値をRxGain_ABFT(単位はdBi)と定める。
【0096】
また、通信装置(STA)100bが受信したDMG BeaconフレームのBeamed TX EIRPフィールドの値を図6または図7を用いて換算したEIRPの値をEIRP_AP_Data(単位はdBm)と定める。
【0097】
また、通信装置(STA)100bが受信したDMG BeaconフレームのBeamed RX Gainフィールドの値を図8または図9を用いて換算した受信アンテナゲインの値をRxGain_AP_Data(単位はdBm)と定める。
【0098】
ステップS102において、通信装置(STA)100bは式1を用いて、図3Aの伝搬路における損失(以下、PathLoss_Beacon(単位はdB)という)を算出する。
PathLoss_Beacon = EIRP_Beacon + RxGain_Beacon - RSSI_Beacon (式1)
【0099】
式1において、RxGain_Beaconは、通信装置(STA)100bの図3Aにおける受信アンテナゲイン(つまり、受信q-omniアンテナのゲイン)である。
【0100】
ステップS103において、通信装置(STA)100bは、式2を用いて、図3B(つまり、A-BFT)において通信装置(AP)100aがSSWフレームを受信する電力(RSSI_ABFTという。単位はdBm)を推定する。
RSSI_ABFT = EIRP_ABFT - PathLoss_Beacon + RxGain_ABFT (式2)
【0101】
ここで、EIRP_ABFT(単位はdBm)は、通信装置(STA)100bがA-BFTにおいてSSWフレームを送信するEIRPである。また、通信装置(STA)100bは、図3A図3Bの伝搬路の損失は等しいと仮定する。
【0102】
通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値が感度点の値を越える場合、A-BFTにおいてSSWフレームを送信する(ステップS104)。感度点の値は、A-BFTのSSWフレームの送信に用いるMCS(Modulation and Coding Scheme)に対応して定められる受信電力の要求仕様である。例えば、11ad規格では、MCS0の感度点は-78 dBmである。
【0103】
通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値が感度点の値を越ない場合(ステップS104のNo)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信せず、処理を終了する。この場合、通信装置(STA)100bは、他の通信装置(AP)100cからのDMG Beaconフレームを受信するために、待ち受け状態に移行してもよいし、ステップS101に移行してもよい。
【0104】
なお、通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値に推定誤差を加算した値が感度点の値を越える場合(ステップS104のYes)、ステップS105において、A-BFTにおいてSSWフレームを送信してもよい。通信装置(STA)100bは、推定誤差を、ステップS101においての受信電力の測定において発生する誤差に応じて定めても良い。推定誤差は、例えば3 dBである。
【0105】
また、通信装置(STA)100bは、図7に示すEIRP_Beaconの精度と、図9に示すRxGain_ABFTの精度を、ステップS101における受信電力の測定精度に加算して、推定誤差を定めても良い。例えば、受信電力の測定精度が3 dB、DMG BeaconのTX EIRPフィールドの値が131(つまり、EIRPの値の精度が3dB)、DMG BeaconのA-BFT RX Antenna Gainフィールドの値が40(つまり、ゲインの値の精度が1 dB)である場合、測定誤差を7 dB(3 dB + 3 dB + 1 dB)と定めても良い。
【0106】
また、通信装置(STA)100bは、ステップS101からステップS103を複数のAP(通信装置(AP)100a、通信装置(AP)100c)に対し繰り返し、AP毎にステップS103の受信電力を推定しても良い。通信装置(STA)100bは、推定した受信電力が最も大きいAPに対し、ステップS104、S105の処理を行ってもよい。
【0107】
また、通信装置(STA)100bは、ステップS101においてDMG Beaconを送信した通信装置(AP)100aとは異なるPCP/AP(通信装置(AP)100c)と無線リンクをすでに確立している場合、ステップS101において測定したDMG Beaconの電力が、通信装置(AP)100cから受信したDMG Beaconの受信電力より大きい場合に、通信装置(AP)100aに対し、ステップの処理を行ってもよい。
【0108】
通信装置(STA)100bは、ステップS104においてNoと判断した場合、通信装置(STA)100bが送信するSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達しないため、通信装置(AP)100aに対するSSWフレームの送信(ステップS105)を行わず、通信装置(AP)100cとの接続を維持する。
【0109】
通信装置(STA)100bは、ステップS104においてYesと判断した場合、通信装置(STA)100bが送信するSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するため、通信装置(AP)100aに対するSSWフレームの送信(ステップS105)を行う。
【0110】
この場合、ステップS105の後、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100cに対し切断を通知するフレーム(例えば、Disassociationフレーム)を送信し、通信装置(AP)100aに対し接続を通知するフレーム(例えば、Associationフレーム)を送信しても良い。これにより、通信装置(STA)100bは、より受信品質のよいAPを選択して接続することができる。
【0111】
図11は、通信装置(STA)100bによる図5のDMG Beaconフレームの受信処理の別の例を示す。図10と同一のステップには同一の番号を付与し、説明を省略する。
【0112】
ステップS104において、通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値が感度点の値を越ない場合(ステップS104のNo)、A-BFTにおけるSSWフレームの送信(ステップS108)を行わずに、処理を終了する。
【0113】
ステップS104において、通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値が感度点の値を越える場合(ステップS104のYes)、式3を用いて図3Cにおける通信装置(STA)100bが受信するデータパケットの受信電力の推定値(RSSI_STA_Dataと呼ぶ)を算出する(ステップS106)。
RSSI_STA_Data = EIRP_AP_Data - PathLoss_Beacon + RxGain_STA_Data (式3)
【0114】
式3において、RxGain_STA_Dataは、通信装置(STA)100bの図3Cにおける受信アンテナゲイン、つまり、通信装置(STA)100bが受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定した場合の受信アンテナゲインである。
【0115】
また、式3において、通信装置(STA)100bは、図3A図3Cの伝搬路の損失は同等であると仮定する。
【0116】
ステップS107において、通信装置(STA)100bは、RxGain_STA_Dataの値に基づき、下りデータ通信において所望のスループットが得られるか否かを判定する。
【0117】
図12Aは、11ad規格におけるMCSに対する受信感度点(Receive sensitivity)の値の一例を示す。図12Bは、11ad規格におけるMCSに対する最大スループットの値の一例を示す。
【0118】
例えば、通信装置(STA)100bは、RxGain_STA_Dataの値と、図12Aに示す、11ad規格におけるMCSに対する受信感度点の値を比較し、受信可能な最大のMCSを決定する。例えば、RxGain_STA_Dataの値が-60 dBmである場合、RxGain_STA_Dataの値より小さい受信感度点を持つMCSは、MCS8である。つまり、図3Cにおいて通信装置(STA)100bが受信可能な最大のMCSは8である。
【0119】
また、通信装置(STA)100bは、図12Bに示す、11ad規格におけるMCSに対する最大スループットの値に基づき、受信可能な最大のスループットを算出しても良い。例えば、RxGain_STA_Dataの値が-60 dBmである場合、通信装置(STA)100bが受信可能な最大のMCSは8であるから、最大スループットは2310 Mbpsである。
【0120】
通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された受信可能な最大のMCSが、あらかじめ定められた値以上である場合(ステップS107のYes)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信する(ステップS108)。一方、通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された受信可能な最大のMCSが、あらかじめ定められた値未満である場合(ステップS107のNo)、A-BFTにおけるSSWフレームの送信(ステップS108)を行わずに、処理を終了する。
【0121】
また、通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された受信可能な最大のスループットが、あらかじめ定められた値以上である場合(ステップS107のYes)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信する(ステップS108)。一方、通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された受信可能な最大のスループットが、あらかじめ定められた値未満である場合(ステップS107のNo)、A-BFTにおけるSSWフレームの送信(ステップS108)を行わずに、処理を終了する。
【0122】
また、通信装置(STA)100bは、ステップS101においてDMG Beaconを送信した通信装置(AP)100aとは異なるPCP/AP(以下、別のPCP/APと呼ぶ)と無線リンクをすでに確立している場合、ステップS106において算出された受信可能な最大のMCSが、別のPCP/APとの間で利用可能なMCSより大きい場合(ステップS107のYes)、ステップS108において、SSWフレームを送信する。一方、通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された受信可能な最大のMCSが、別のPCP/APとの間で利用可能なMCS以下である場合(ステップS107のNo)、A-BFTにおけるSSWフレームの送信(ステップS108)を行わずに、処理を終了する。
【0123】
この場合、ステップS108の後、通信装置(STA)100bは、別のPCP/APに対し切断を通知するフレーム(例えば、Disassociationフレーム)を送信し、通信装置(AP)100aに対し接続を通知するフレーム(例えば、Associationフレーム)を送信しても良い。これにより、通信装置(STA)100bは、より高いスループットを実現するPCP/APを選択して接続することができる。
【0124】
また、通信装置(STA)100bは、RxGain_STA_Dataの値から推定誤差を減じた値と、図12Aの受信感度点の値を比較しても良い。これにより、通信装置(STA)100bは、スループットが同等である複数のPCP/AP間で接続断と接続を繰り返すことを避けることができる。
【0125】
また、通信装置(STA)100bは、11ad規格とは異なる別の通信手段(例えば、5GHz帯Wi-Fi通信、IEEE802.11ac規格など)を備えている場合、ステップS106において算出された受信可能な最大のスループットが、別の通信手段におけるスループットを上回る場合、A-BFTにおいてSSWフレームを送信してもよい。
【0126】
なお、通信装置(STA)100bは、ステップS103において算出したRSSI_ABFTの値が感度点の値を越える場合(ステップS104のYes)、式4を用いて図3Dにおける通信装置(AP)100aが受信するデータパケットの受信電力の推定値(RSSI_AP_Dataと呼ぶ)を算出してもよい。
RSSI_AP_Data = EIRP_STA_Data - PathLoss_Beacon + RxGain_AP_Data (式4)
【0127】
式4において、EIRP_STA_Dataは、通信装置(STA)100bの図3Dにおける送信アンテナゲイン、つまり、通信装置(STA)100bが送信アレイアンテナ106をベストセクタに設定した場合の受信アンテナゲインである。
【0128】
また、式4において、通信装置(STA)100bは、図3A図3Dの伝搬路の損失は同等であると仮定する。
【0129】
ステップS107において、通信装置(STA)100bは、RxGain_AP_Dataの値に基づき、上りデータ通信において所望のスループットが得られるか否かを判定する。下りデータ通信について説明したように、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが受信可能な最大のMCSを算出し、実現可能なスループットを算出しても良い。
【0130】
通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された通信装置(AP)100aが受信可能な最大のMCSが、あらかじめ定められた値以上である場合(ステップS107のYes)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信する(ステップS108)。
【0131】
また、通信装置(STA)100bは、ステップS106において算出された上りデータ通信において実現可能なスループットが、あらかじめ定められた値以上である場合(ステップS107のYes)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信する(ステップS108)。
【0132】
なお、通信装置(STA)100bは、下り及び上りデータ通信の両方において、実現可能なスループットが、あらかじめ定められた値以上である場合(ステップS107のYes)、A-BFTにおいてSSWフレームを送信してもよい(ステップS108)。
【0133】
なお、通信装置(AP)100aは、EDMG TX RX Infoエレメントに関する情報をミリ波通信(11ad及び11ay)以外の通信方式を用いて通知しても良い。
【0134】
なお、通信装置(AP)100aは、図11のステップS101において、MIMOストリーム数の情報をDMG Beaconに含めて送信しても良い。通信装置(STA)100bは、DMG Beaconに含まれる通信装置(AP)100aのMIMOストリーム数の情報と、通信装置(STA)100bのMIMOストリーム数の情報から、実現可能なMIMOストリームを算出する。例えば、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bとMIMOストリームのうち小さい数字を選択しても良い。
【0135】
通信装置(STA)100bは、図11のステップS107において、算出した実現可能なスループットに実現可能なMIMOストリームの値を乗算して、MIMOにおける実現可能なスループットを算出しても良い。通信装置(STA)100bは、MIMOにおける実現可能なスループットの値を用いて、所望の下りスループットが得られるか否かを判定しても良い。
【0136】
なお、通信装置(STA)100bは、MIMOにおける実現可能なスループットを算出する場合、図11のステップS106において、式3を用いて算出したデータフレームの受信電力から、MIMOストリーム数に応じた値を減じても良い。例えば、通信装置(STA)100bは、MIMOストリーム数が2の場合、2ストリームに電力が分散されるとみなし、算出した受信電力から3 dBを減じても良い。
【0137】
なお、通信装置(AP)100aは、図11のステップS101において、チャネルボンディング及びチャネルアグリゲーションのチャネル数の情報をDMG Beaconに含めて送信しても良い。
【0138】
通信装置(STA)100bは、MIMOの場合と同様に、チャネルボンディング及びチャネルアグリゲーションにおける実現可能なスループットを算出しても良い。つまり、通信装置(STA)100bは、実現可能なスループットの値にチャネル数を乗算しても良い。また、算出した受信電力をチャネル数に応じて調整しても良い。例えば、2チャネルの場合3 dBを減じ、4チャネルの場合6 dBを減じても良い。
【0139】
なお、本実施の形態では、通信装置(AP)100aがDMG Beaconを送信し、通信装置(STA)100bがA-BFTにおいてSSWフレームを送信する場合を一例として説明したが、通信装置(STA)100bがDMG Beaconを送信し、通信装置(AP)100aがA-BFTにおいてSSWフレームを送信してもよい。
【0140】
以上のように、実施の形態1では、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができ、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【0141】
また、実施の形態1では、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいて所望のデータスループットで通信可能か否かを判定することができ、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【0142】
また、実施の形態1では、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいてデータスループットを推定することができるできるため、最もデータスループットが高いPCP/AP及び通信方式を選択することができる。
【0143】
(実施の形態2)
実施の形態1では、DMG Beaconフレームに、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールド、Probe RequestフレームにBeamed TX EIRPフィールド及びBeamed RX Gainフィールドを含めて送信したが、実施の形態2は、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールドを含めて送信し、更に、Probe RequestフレームにBeamed TX EIRPフィールド及びBeamed RX Gainフィールドを含めて送信する場合について説明する。
【0144】
図13は、通信装置(AP)100a(以下、AP1)と通信装置(STA)100b(以下、STA1)が通信を行う手順の一例を示す図である。
【0145】
ステップS201では、AP1がセクタを変え、各セクタにおいて各DMG Beaconフレームを送信する。図14は、DMG Beaconフレームのフォーマットの一例を示す。図14のDMG Beaconフレームは、Frame BodyにSSW(Sector Sweep)フィールドを含む。また、SSWフィールドは、TX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールドを含む。
【0146】
図14におけるTX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールドは、図5と同様に用いるが、図5とビット数が異なる。図15は、TX EIRPフィールドの値の一例を示す。TX EIRPフィールドは4ビットであり、値は、5 dBステップと定める。また、図16は、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値の一例を示す。A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値は2ビットで表示され、A-BFT RX Antenna Gain の値は、5 dBステップと定める。なお、A-BFT RX Antenna Gainの値が未定義である場合に、AP1は、A-BFT RX Antenna Gainフィールドの値を0(つまり、A-BFT RX Antenna Gainの最小値)と設定しても良い。
【0147】
ステップS202では、STA1は、ステップS201で受信したTX EIRPの値及びA-BFT RX Antenna Gainの値を用いて、図3B(つまり、A-BFT)において通信装置(AP)100aがSSWフレームを受信する電力(RSSI_ABFT)を式1及び式2を用いて推定する。
【0148】
RSSI_ABFTの値が、A-BFTにおけるSSWフレームの感度点(例えば、11ad規格におけるMCS0の感度点である-78 dBm)以上である場合、STA1は、A-BFTにおけるSSWフレームを送信する。
【0149】
AP1は、ステップS202においてSSWフレームを受信し、ステップS203においてSSW-FBフレームを送信する。
【0150】
ステップS204では、STA1は、Probe Requestフレームを送信し、AP1からのProbe Responseフレームを要求する。
【0151】
ステップS205では、AP1は、Probe Reponseフレームを送信する。図17は、Probe Reponseフレームの一例を示す。
【0152】
Probe Responseフレームは、STA1がAP1へ接続(アソシエーション)するために必要な情報を含む。例えば、SSID(Service set identifier)フィールドやDMG Capabilitiesフィールドを含む。また、EDMG TX RX Infoフィールドを含む。
【0153】
EDMG TX RX Infoフィールドの構成は、実施の形態1(図5を参照)と同様である。
【0154】
ステップS205において、STA1は、図11のステップS106と同様の手順及び式3、式4を用いて、RSSI_STA_Data及びRSSI_AP_Dataの値を算出し、AP1に対し、所望のデータスループットが実現可能か否かを判定する。
【0155】
STA1は、所望のデータスループットが実現可能であると判定した場合、AP1に対し、Association Requestフレームを送信し、アソシエーションを行う。なお、STA1は、AP1へのアソシエーションを行った後、SLS及びBRPを用いて受信アレイアンテナのビームフォーミングトレーニングを行ってもよい。また、STA1は、AP1へのアソシエーションを行った後、SLS及びBRPを用いて送信アレイアンテナの高精度のビームフォーミングトレーニングを行ってもよい。つまり、STA1は、ステップS202(A-BFT)で用いたセクタに比べさらにビーム幅を狭くしてゲインを高め、SLS及びBRPを行う。(ステップS206)
【0156】
また、AP1は、STA1がAP1へのアソシエーションを行った後、SLS及びBRPを用いて受信アレイアンテナのトレーニング及び送信アレイアンテナの高精度のビームフォーミングトレーニングを行ってもよい。つまり、AP1は、ステップS201(DMG Beaconの送信)で用いたセクタに比べさらにビーム幅を狭くしてゲインを高め、SLS及びBRPを行う。
【0157】
なお、STA1は、所望のデータスループットが実現可能でないと判断した場合、AP1に対しAssociation Requestフレームを送信しない。この場合、他のAP(例えばAP2)からのDMG Beaconを待ちうけ、受信しても良い。(ステップS201A)
【0158】
STA1は、ステップS201Aにおいて他のAPからDMG Beaconを受信した場合、ステップS202以降の処理を他のAPに対して行ってもよい。
【0159】
このように、STA1は、所望のスループットを実現できないAP(例えばAP1)との接続を避け、所望のスループットを実現できる可能性のあるAP(例えばAP2)へのA-BFTを行うため、適切なAPへの接続を行うことができる。
【0160】
AP1は、ステップS201、S203、S205において、DMG Beaconフレーム、SSW-FBフレーム及びProbe Responseフレームを、同じEIRPで送信する。また、STA1は、ステップS201、S203、S205において、DMG Beaconフレーム、SSW-FBフレーム及びProbe Responseフレームを、受信q-omniアンテナ115を用いて受信する(図3Aを参照)。つまり、AP1のEIRP及びSTA1の受信アンテナゲインは、下りデータ通信時(図3Cを参照)と異なる。従って、STA1は、DMG Beaconフレーム、SSW-FBフレーム及びProbe Responseフレームの受信電力に基づいて、データスループットを推定することは困難である。
【0161】
一方、実施の形態2の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールドを含めて送信し、Probe RequestフレームにBeamed TX EIRPフィールド及びBeamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bは、アソシエーション前に、所望のスループットを実現できるか判断することが可能となり、適切なAPとの接続を行うことができる。
【0162】
実施の形態2の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにTX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antenna Gainフィールドを含めて送信し、Probe RequestフレームにBeamed TX EIRPフィールド及びBeamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、実施の形態1に比べDMG Beaconフレームを短くすることができる。
【0163】
通信装置(AP)100aはセクタを変えながら複数のDMG Beaconフレームを送信するため、DMG Beaconフレームを短くすることにより、STAとの接続に要する時間を短縮し、他のSTAへの干渉を減らすことができる。
【0164】
(実施の形態2の変形例)
実施の形態2は、DMG Beaconフレームにおいて、TX EIRPの値とA-BFT RX Antenna Gainの値をそれぞれ、送信したが、実施の形態2の変形例では、TX EIRPの値とA-BFT RX Antenna Gainの値の差分をDMG Beaconフレームにて送信する。
【0165】
図18は、DMG Beaconフレームのフォーマットの別の例を示す。図18のDMG Beaconフレームは、Frame BodyにSSWフィールドを含み、SSWフィールドにDifferential Gainフィールドを含む。
【0166】
図19は、Differential Gainフィールドの値の一例を示す。Differential Gainの値(DIFF_Gain_Beacon)は、TX EIRPの値とA-BFT RX Antenna Gainの値の差を表し、式5により算出される。
DIFF_Gain_Beacon = EIRP_Beacon - RxGain_ABFT (式5)
【0167】
Differential Gainの値の精度と、式4で算出された値とに応じ、AP1は、図19を用いてDifferential Gainフィールドの値を決定する。例えば、Differential Gainの値の精度が3 dBであり、式5で算出されたDifferential Gainの値が9 dBであれば、Differential Gainのフィールドの値は3である。
【0168】
なお、STA1は、図14のDMG Beaconを受信した場合、式5を用いてDIFF_Gain_Beaconの値を算出しても良い。
【0169】
図13のステップS201では、STA1は、受信したDifferential Gainの値を用いて、図3B(つまり、A-BFT)において通信装置(AP)100aがSSWフレームを受信する電力(RSSI_ABFT)を式1と式2と式5を組み合わせた式6を用いて推定する。
RSSI_ABFT
= EIRP_ABFT - PathLoss_Beacon + RxGain_ABFT
= EIRP_ABFT - (EIRP_Beacon + RxGain_Beacon - RSSI_Beacon) + RxGain_ABFT
= RSSI_Beacon + EIRP_ABFT -RxGain_Beacon - (EIRP_Beacon - RxGain_ABFT)
= RSSI_Beacon + EIRP_ABFT -RxGain_Beacon - DIFF_Gain_Beacon (式6)
【0170】
式6において、RSSI_Beaconは、STA1が図13のステップS201において測定したDMG Beaconの受信電力強度である。また、RxGain_BeaconはSTA1のDMG Beaconフレーム受信時のアンテナゲインであり、EIRP_ABFTはSTA1のA-BFT時における送信EIRPである。つまり、STA1は、図13のステップS201においてDIFF_Gain_Beaconの値を受信するので、式6を用いてRSSI_ABFTの値を算出することができる。
【0171】
これにより、STA1は、図13のステップS202におけるSSWフレームの送信を行う前に、SSWフレームがAP1へ到達可能か否かを判別できる。
【0172】
図20は、Probe Responseフレームのフォーマットの別の例を示す。図20のProbe Responseフレームは、図17と異なり、Relative Beamed TX EIRPフィールド及びRelative Beamed RX Gainフィールドを含む。
【0173】
Relative Beamed TX EIRPフィールドは、式7に定める、EIRP_AP_Dataの値とEIRP_Beaconの値の差(以下、EIRP_AP_Relativeと表記)を表す。
EIRP_AP_Relative = EIRP_AP_Data - EIRP_Beacon (式7)
【0174】
図21は、Relative Beamed TX EIRPフィールドの値の例を示す。図9図18と同様に、通信装置(AP)100aは、EIRP_AP_Relativeの値と精度に応じて、Relative Beamed TX EIRPフィールドの値を選択する。
【0175】
Relative Beamed Rx Gainフィールドは、式8に定める、RxGain_AP_Dataの値とRxGain_ABFTの値の差(以下、RxGain_AP_Relativeと表記)を表す。
RxGain_AP_Relative = RxGain_AP_Data - RxGain_ABFT (式8)
【0176】
Relative Beamed Rx Gainフィールドの値は、Relative Beamed TX EIRPフィールドと同様に、通信装置(AP)100aは、EIRP_AP_Relativeの値と精度に応じて値を選択する(図21を参照)。
【0177】
図13のステップS205において、STA1は、式9を用いてRSSI_STA_Dataの値を算出し、下りデータリンク(図3C)において所望のMCS及びデータスループットを実現できるか否かを判定する。
RSSI_STA_Data
= EIRP_AP_Data - PathLoss_Beacon + RxGain_STA_Data
= EIRP_AP_Data - (EIRP_Beacon + RxGain_Beacon -RSSI_Beacon)+RxGain_STA_Data
= RSSI_Beacon+(EIRP_AP_Data -EIRP_Beacon)+(RxGain_STA_Data - RxGain_Beacon)
= RSSI_Beacon + EIRP_AP_Relative + (RxGain_STA_Data - RxGain_Beacon)
・・・(式9)
【0178】
式9において、RSSI_Beaconは、STA1が図13のステップS201において測定したDMG Beaconの受信電力強度である。また、RxGain_BeaconはSTA1のDMG Beaconフレーム受信時のアンテナゲインであり、RxGain_STA_Dataは、STA1のデータ通信時における受信アンテナゲインである。つまり、STA1は、ステップS205においてEIRP_AP_Relativeの値を受信するので、式8を用いてRSSI_STA_Dataの値を算出することができる。
【0179】
また、図13のステップS205において、STA1は、式10を用いてRSSI_AP_Dataの値を算出し、上りデータリンク(図3D)において所望のMCS及びデータスループットを実現できるか否かを判定してもよい。
RSSI_AP_Data
= EIRP_STA_Data - PathLoss_Beacon + RxGain_AP_Data
= EIRP_STA_Data - (EIRP_Beacon + RxGain_Beacon -RSSI_Beacon)+RxGain_AP_Data
= RSSI_Beacon - (EIRP_Beacon - RxGain_AP_Data)+(EIRP_STA_Data - RSSI_Beacon)
= RSSI_Beacon + (RxGain_STA_Data - RxGain_Beacon)
- (DIFF_Gain_Beacon + RxGain_ABFT - RxGain_AP_Relative - RxGain_ABFT)
= RSSI_Beacon + (RxGain_STA_Data - RxGain_Beacon)
(DIFF_Gain_Beacon - RxGain_AP_Relative) (式10)
【0180】
式10において、RSSI_Beaconは、STA1が図13のステップS201において測定したDMG Beaconの受信電力強度である。また、RxGain_BeaconはSTA1のDMG Beaconフレーム受信時のアンテナゲインであり、RxGain_STA_Dataは、STA1のデータ通信時における受信アンテナゲインである。つまり、STA1は、図13のステップS201においてDIFF_Gain_Beaconの値を受信し、ステップS205においてRxGain_AP_Relativeの値を受信するので、式9を用いてRSSI_AP_Dataの値を算出することができる。
【0181】
なお、本実施の形態では、通信装置(AP)100aがDMG Beacon及びProbe Responseフレームにアンテナゲインに関する情報を含めて送信する場合を一例として説明したが、通信装置(STA)100bがDMG Beaconを送信する場合も同様である。この場合、図13のステップS201、S202、S203のフレームの送信方向は逆であり、ステップS201において、通信装置(STA)100bは、図14のDMG Beaconフレームを送信する。また、図13と異なり、通信装置(STA)100bは、ステップS204のProbe RequestフレームにEDMG TX RX Infoエレメント(図17を参照)を含めて送信する。
【0182】
通信装置(AP)100aは、EDMG TX RX Infoエレメントに含まれる値を用いて実現可能なスループットを計算し、所望のスループットが実現可能か否かを判定する。実現可能で無い場合、通信装置(AP)100aは、ステップS206においてAssociation Requestを受信した後に、Association Responseにアソシエーション不許可を通知するフィールド(例えばstatus code)を含めて送信する。
【0183】
また、通信装置(AP)100aは、算出した実現可能なスループットを、図示しない制御装置に通知しても良い。制御装置は、複数のAP(例えば通信装置(AP)100a、通信装置(AP)100c)から、通信装置(STA)100bに関する実現可能なスループットの値を受信し、最も高い値であるAP(例えば通信装置(AP)100a)に対して、通信装置(STA)100bとのアソシエーションを推奨する信号を送信する。また、通信装置(STA)100bとのアソシエーションを推奨するAPのアドレス(例えば通信装置(AP)100aのアドレス)を、複数のAPに通知してもよい。
【0184】
例えば通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bとのアソシエーションを推奨する信号を受信した場合、図13のステップS206においてAssociation Requestを受信したときに、Association ResponseをSTA1へ送信してSTA1のアソシエーションを許可しても良い。
【0185】
また、通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bとのアソシエーションを推奨する信号を受信しない場合、図13のステップS206においてAssociation Requestを受信したときに、Association Responseにアソシエーション不許可を通知するフィールド(例えばstatus code)を含めてSTA1へ送信してもよい。
【0186】
また、通信装置(AP)100aは、ステップS205において、制御装置により通知された、通信装置(STA)100bとのアソシエーションを推奨するAPのアドレスをProbe Responseフレームに含めて、通信装置(STA)100bへ送信しても良い。
【0187】
また、通信装置(AP)100aは、DMG Beacon毎に送信電力及びゲインを変えて送信してもよい。通信装置(AP)100aは、各DMG BeaconのDifferential Gainフィールドに、各DMG Beaconの送信電力及びゲイン、及び受信q-omniアンテナ115のゲインに応じたDifferential Gainの値を設定して送信しても良い。例えば、通信装置(AP)100aは、送信アレイアンテナ106の指向性を正面方向に制御した場合に最大のゲインを持ち、正面方向と異なる方向に指向性を制御した場合に最大のゲインに比べ数dB小さいゲインを持つと設定してもよい。
【0188】
また、通信装置(AP)100aは、受信q-omniアンテナ115のゲインは無線信号の到来方向に応じて異なるゲインを持っても良い。通信装置(AP)100aは、各DMG BeaconのDifferential Gainフィールドに、送信EIRPの値と、各DMG Beaconの送信方向に対応する受信q-omniアンテナ115のゲインの値に応じたDifferential Gainの値を設定して送信しても良い。
【0189】
以上により、通信装置(STA)100bは、通信品質の良いAPとアソシエーションすることが可能となる。
【0190】
実施の形態2の変形例の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにDIFF_Gain_Beaconフィールドを含めて送信し、Probe RequestフレームにRelative Beamed TX EIRPフィールド及びRelative Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bは、アソシエーション前に、所望のスループットを実現できるか判断することが可能となり、適切なAPとの接続を行うことができる。
【0191】
実施の形態2の変形例の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにDIFF_Gain_Beaconフィールドを含めて送信し、Probe RequestフレームにRelative Beamed TX EIRPフィールド及びRelative Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、実施の形態1に比べDMG Beaconフレームを短くすることができる。
【0192】
通信装置(AP)100aはセクタを変え、各セクタにおいて各DMG Beaconフレームを送信するため、DMG Beaconフレームを短くすることにより、STAとの接続に要する時間を短縮し、他のSTAへの干渉を減らすことができる。
【0193】
(実施の形態3)
実施の形態1及び実施の形態2では、通信装置(STA)100bは、1つの通信装置(AP)100aから受信したDMG Beaconフレームに基づいて、SSWフレームの送信の有無を判断していたが、実施の形態3は、複数の通信装置(AP)100aから受信したDMG Beaconフレームに基づいて、SSWフレームの送信の有無を判断する。
【0194】
図22は、通信装置(AP)100a(以下、AP1)と通信装置(STA)100b(以下、STA1)が通信を行う手順の一例を示す図である。
【0195】
ステップS301では、AP1はDMG BeaconフレームにNeighbor Reportエレメントを含めて送信する。なお、STA1は、ステップS301以前において、AP1のアソシエーションを完了している。
【0196】
図23は、DMG Beaconフレームのフォーマットの一例を示す。Neighbor Reportエレメントは、AP1が検出した、AP1の近くに存在するAP(例えばAP2)の情報を含む。AP1は、DMG Beaconフレームにおいて、Neighbor ReportエレメントのOptional Subelements部分にEDMG TX RX Infoフィールドを含めて送信する。
【0197】
図23のEDMG TX RX Infoフィールドは、図5(実施の形態1)のEDMG TX RX Infoエレメントの先頭のElement IDフィールドとLengthフィールドを取り除いたフィールドと同等である。つまり、EDMG TX RX Infoフィールドは、TX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含む。これらのフィールドの値の定め方は、実施の形態1に示したとおりである。
【0198】
但し、実施の形態1の図5では、EDMG TX RX Infoフィールドの値を、AP1に関する情報を含めたが、図23では、AP2に関する情報を含める。つまり、図23のTX EIRPフィールドは、AP2のEIRP_Beaconの値を含み、A-BFT RX Antenna Gainフィールドは、AP2のRxGain_ABFTの値を含む。
【0199】
AP2は、ステップS301の前に、AP2に関するTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドの値をAP1に対して通知する。
【0200】
ステップS302において、STA1は、AP2が送信したDMG Beaconフレームを受信する。なお、AP2は、DMG Beaconフレームの長さを短縮するため、EDMG TX RX InfoフィールドをDMG Beaconに含めなくてもよい。
【0201】
STA1は、ステップS301のNeighbor Reportに含まれるAP2のEDMG TX RX Infoフィールドの値を用いて、式1、式2に基づき、A-BFTにおけるSSWフレームがAP2に到達するか否かを判断する。また、STA1は、式1、式2に基づき、AP2との下り及び上りデータ通信において、所望のデータスループットを実現できるか否か、例えば、AP1とのデータ通信におけるデータスループットを上回るか否かを判断する。
【0202】
STA1は、A-BFTにおけるSSWフレームがAP2に到達可能であり、かつ、AP2との下り及び上りデータ通信において、所望のデータスループットを実現できると判断した場合に、AP2に対してA-BFTにおけるSSWフレームを送信する(ステップS303)。
【0203】
STA1は、A-BFTにおけるSSWフレームがAP2に到達可能ではない、または、AP2との下り及び上りデータ通信において、所望のデータスループットの実現が困難であると判断した場合に、AP2に対してA-BFTにおけるSSWフレームを送信しない。この場合、STA1は、AP1とのアソシエーションを継続し、AP1との通信を行ってもよい(ステップS304)。
【0204】
AP1は、一定期間毎にDMG BeaconフレームにNeighbor Reportを含めもよい。例えば、AP1は、10個のビーコンインターバルに一度、Neighbor Reportを含めてもよい。つまり、AP1は、9個のビーコンインターバルでは、DMG BeaconにNeighbor Reportを含めず、1個のビーコンインターバルでは、BTI期間中の全てのDMG BeaconにNeighbor Reportを含める。
【0205】
これにより、DMG Beaconフレームの送信に要する時間を短縮でき、他のSTAへの干渉を低減することができる。
【0206】
STA1は、AP1とアソシエーションしているため、DMG Beaconフレームを毎回受信する。従って、Neighbor Reportが一定期間毎にDMG Beaconに含まれる場合であっても、STA1は、Neighbor Reportを含むDMG Beaconを受信できる。
【0207】
STA1は、受信したNeighbor Reportを記憶しておき、必要に応じてNeighbor Reportに含まれるAP2のEDMG TX RX Infoフィールドの値を利用することができる。従って、STA2は、ステップS302においてAP2からDMG Beaconを受信した場合、式1~式4の計算を行うことができ、A-BFTの送信を行うことなく、AP2への接続可否を判断できる。
【0208】
AP2は、一定期間毎にDMG BeaconフレームにEDMG TX RX Infoエレメント(図5を参照)を含めて送信しても良い。これにより、AP2は、DMG Beaconフレームのデータ量を大きく増やすことなく、AP2におけるEDMG TX RX Infoフィールドの値をAP1に通知することができる。
【0209】
図24は、DMG Beaconフレームの別の例を示す。図23と異なり、図24のEDMG TX RX Infoフィールドは、Differential Gainフィールド(図18と同様)、Relative Beamed TX EIRPフィールド、Relative Beamed RX Gainフィールド(図20と同様)を含む。
【0210】
AP1は、図24のDMG Beaconフレームのフォーマットを用いることで、図23に比べ、DMG Beaconのフレーム長を短縮することができる。
【0211】
図25は、AP1が、AP2に関するEDMG TX RX Infoフィールドを、Neighbor Report Responseフレームに含めて送信する手順の一例を示す。
【0212】
ステップS301Aでは、STA1は、AP1に対しNeighbor Report Requestフレームを送信する。
【0213】
ステップS301Bでは、AP1は、STA1に対しNeighbor Report Responseフレームを送信する。図26は、Neighbor Report Responseフレームの一例を示す。図26のEDMG TX RX Infoフィールドの構成は、図25と同様である。
【0214】
AP1は、EDMG TX RX Infoフィールドを含むNeighbor Reportエレメントを、Association Responseフレーム、Authenticationフレーム、DMG Beaconフレーム、Neighbor Report Responseフレーム、BSS Transition Management Queryフレーム、BSS Transition Management Request及びBSS Transition Management Responseフレームに含めても良い。
【0215】
なお、AP1は、EDMG TX RX Infoフィールドを含むNeighbor Reportエレメントに関する情報をミリ波通信(11ad及び11ay)以外の通信方式を用いて通知しても良い。
【0216】
実施の形態3の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにおけるNeighbor Reportエレメントにおいて他のAPに関するTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bは、アソシエーション前に、所望のスループットを実現できるか否かを判断することが可能となり、適切なAPとの接続を行うことができる。
【0217】
実施の形態3の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにおけるNeighbor Reportエレメントにおいて、一定期間毎に、他のAPに関するTX EIRPフィールド、A-BFT RX Antenna Gainフィールド、Beamed TX EIRPフィールド、Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、DMG Beaconフレームの送信に要する時間を短くすることができる。
【0218】
実施の形態3の通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにおけるNeighbor Reportエレメントにおいて他のAPに関するDifferential Gainフィールド、Relative Beamed TX EIRPフィールド、Relative Beamed RX Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bは、アソシエーション前に、所望のスループットを実現できるか判断することが可能となり、適切なAPとの接続を行うことができる。
【0219】
(実施の形態4)
実施の形態1から3では、通信装置(STA)100bはDMG Beaconに基づいて、SSWフレームを送信するか否かを判断し、送信しないと判断した場合は、通信装置(AP)100aとの接続を中断していた。実施の形態4では、DMG Beaconに基づいて、SSWフレームを送信しないと判断した場合であっても、他の無線方式を用いて、無線リンクの確立に必要な情報を送信する方法について説明する。
【0220】
図27は、通信装置(AP)100a(以下、AP1)と通信装置(STA)100b(以下、STA1)が通信を行う手順の一例を示す図である。図27では、AP1とSTA1は、ミリ波通信(11ad及び11ay)の他に、ミリ波通信とは異なる通信方式(以下、WLANという)に対応する無線部を含む。
【0221】
WLANの例として、2.4 GHz帯及び5 GHz帯を用いるIEEE802.11n方式がある。また、WLANの別の例として、2.4 GHz帯を用いるBluetooth(登録商標)方式がある。また、WLANの代用として、セルラ通信(例えば、LTE、Long Term Evolution)を用いても良い。なお、WLANの別の例として、ミリ波通信(IEEE802.11ad, IEEE802.11ay)のマルチホップ通信(リレーとも呼ばれる)を用いてもよい。つまり、通信装置(STA)100bは、ベストセクタに関する情報をFeedback frameに含めて送信する場合、WLANを用いるかわりに、マルチホップ通信を用いてもよい。
【0222】
図27では、AP1とSTA1は、WLANを用いてデータ通信可能な状態である。つまり、AP1とSTA1は、WLANがIEEE802.11ac方式であれば、STA1はAP1にアソシエーションしている状態であり、WLANがLTEであれば、STA1はAP1にアタッチしている状態である。
【0223】
また、図27では、AP1は、受信q-omniアンテナ115を用いてパケットを受信する場合、STA1が送信するSSWフレームの受信が困難である状態を示す。つまり、AP1及びSTA1は、図3Bに示す状態に該当するため、セクタスイープによる通信が困難である。一方、AP1及びSTA1は、図3A図3C図3Dに示す状態に該当するため、ベストセクタに設定することができればデータ通信が可能である。
【0224】
AP1の送信アレイアンテナ106及び受信アレイアンテナ116のゲインが、STA1の送信アレイアンテナ106及び受信アレイアンテナ116のゲインに比べ大きい場合、図27に示す状況が発生する。例えば、AP1が多数のアンテナ素子数を備える無線基地局もしくはアクセスポイントであり、STA1が比較的少数のアンテナ素子数を備えるモバイル端末(例えば携帯電話、スマートフォン)である場合が該当する。
【0225】
また、AP1は、アンテナレシプロシティ(Antenna Reciprocity)を持つ。つまり、送信アレイアンテナ106と受信アレイアンテナ116は指向性パターンが概ね等しい。従って、送信アレイアンテナ106におけるベストセクタは、受信アレイアンテナ116におけるベストセクタである可能性が高い。また、送信アレイアンテナ106におけるベストセクタは、受信アレイアンテナ116において準ベストセクタ(つまり、ベストセクタの場合に近いゲインを持つセクタ)以上であり、受信アレイアンテナ116におけるベストセクタは、送信アレイアンテナ106において準ベストセクタ以上である。
【0226】
ステップS401では、AP1は、セクタを変え、各セクタにおいて各DMG Beaconフレームを送信する。AP1は、DMG Beaconフレームに、TX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antennaフィールドを含めて送信しても良い(図5及び図14を参照)。また、AP1は、DMG Beaconフレームに、Differential Gainフィールドを含めて送信しても良い(図18を参照)。
【0227】
また、AP1は、DMG BeaconにAntenna Reciprocityの情報を含め、AP1がアンテナレシプロシティを持つことをSTA1に通知する。
【0228】
ステップS401では、STA1は、AP1に対して図3Aに示す位置関係にあり、DMG Beaconを受信可能である。
【0229】
STA1は、DMG Beaconフレームの受信電力(RSSI_Beacon)及びDMG Beaconフレームに含まれる情報(例えば、TX EIRPフィールド及びA-BFT RX Antennaフィールドの値)を用いて、A-BFTにおけるSSWフレームがAP1へ到達可能か否かを判定する。
【0230】
STA1は、A-BFTにおけるSSWフレームがAP1へ到達困難と判定した場合、SSWフレームを送信しない。
【0231】
なお、STA1は、A-BFTにおいてSSWフレームを送信し、AP1からのSSW-FBフレームを受信したか否かにより、SSWフレームがAP1へ到達可能か否かを判定してもよい(ステップS402)。
【0232】
A-BFTにおいては、AP1は、STA1以外の別のSTAからSSWフレームを受信する場合がある。つまり、A-BFTにおいては、AP1は受信q-omniアンテナ115を用いてパケットを受信する。つまり、AP1とSTA1との関係は図3Bに該当するため、A-BFTにおいてSTA1が送信したSSWフレームはAP1へ到達困難である。
【0233】
STA1は、A-BFTにおけるSSWフレームがAP1へ到達困難であると判断した場合、WLANを用いて、AP1に対してFeedback frameを送信する。STA1は、DMG Beaconの受信において選択したベストセクタの情報を、Feedback frameに含めて送信する(ステップS403)。
【0234】
図28は、Feedback frameの一例を示す。Headerフィールドは、WLANにおいて用いられるヘッダである。例えば、Headerフィールドは、送信先アドレス(AP1のMACアドレス)、送信元アドレス(STA1のMACアドレス)、フレーム長などを含む。
【0235】
DMG Source Addressフィールドは、11adデバイスとしての送信元アドレス(STA1のMACアドレス)を含む。また、DMG Destination Addressフィールドは、11adデバイスとしての送信先アドレス(AP1のMACアドレス)を含む。つまり、AP1及びSTA1は、Headerフィールドに含むWLANとしてのMACアドレスと、11adとしてのMACアドレスが異なっていてもよい。
【0236】
DMG Capabilitiesフィールドは、STA1の11ad規格に関する属性に関する情報を含む。例えば、DMG Capabilitiesフィールドは、STA1がサポートするセクタ数、サポートするMCS(Modulation Coding Scheme)の番号等を含む。これらは、後述するステップS405及びS406においてAP1がSSWフレームの送受信を行うために必要な情報を含む。
【0237】
AP1は、図28のDMG Capabilitiesフィールドとして、11ad規格に定められるDMG Capabilitiesエレメントと同様のフォーマットを用いても良い。
【0238】
DMG SSW Feedbackフィールドは、STA1がDMG Beaconの受信において選択したベストセクタの情報を含む。STA1は、DMG SSW Feedbackフィールドとして、A-BFTにおけるSSWフレームが含むSSW Feedbackフィールドと同様のフォーマットを用いても良い。
【0239】
AP1は、WLANを用いてAckフレームをSTA1へ送信し、Feedback frameを受信したことを通知する(ステップS404)。
【0240】
AP1は、ステップS403においてFeedback frameを受信することにより、STA1へデータ送信する場合(つまり、図3C)に用いる送信アレイアンテナ106のベストセクタを知ることができる。また、AP1は、アンテナレシプロシティを持つため、STA1からデータ受信する場合(つまり、図3D)に用いる受信アレイアンテナ116のベストセクタを、送信アレイアンテナ106のベストセクタと同一であると設定する。
【0241】
ステップS405において、AP1は、Feedback frameに含まれる情報を用いて、SSWフレームをSTA1へ送信する(つまり、ISSを行う)。例えば、AP1は、SSWフレームの宛先アドレスを、Feedback frameにより取得したSTA1の11adとしてのMACアドレスに設定して送信する。また、AP1は、Feedback frameのDMG Capabilitiesフィールドに含まれる、STA1のセクタ数の情報に応じ、送信するSSWフレームの数を決定する。
【0242】
なお、AP1は、ステップS405においてセクタを変え、各セクタにおいて各SSWフレームを送信しても良い(つまり、通常のSLS)。また、AP1は、ステップS405において、Feedback frameに含まれるベストセクタを用いて1つのSSWフレームを送信しても良い。
【0243】
ステップS406において、STA1は、セクタを変え、各セクタにおいて各SSWフレームを送信する(つまり、RSSを行う)。
【0244】
ステップS406において、AP1は、受信アレイアンテナ116を、Feedback frameに含まれるベストセクタ(Best Sector)に設定する。つまり、ステップS406において、AP1とSTA1の位置関係は、図3Dと同様になるため、STA1が送信するSSWフレームがAP1へ到達可能である。
【0245】
ステップS407において、AP1は、SSW-FBフレームを送信し、SSWフレームを受信したことをSTA1へ通知する。
【0246】
ステップS408において、STA1は、SSW-ACKフレームを送信し、SSW-FBフレームを受信したことをAP1へ通知する。
【0247】
このように、通信装置(STA)100bは、ベストセクタに関する情報をFeedback frameに含め、WLANを用いて送信するため、A-BFTにおいてSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達しない場合(図3B)であっても、SLSを行うことができる。
【0248】
通信装置(AP)100aは、WLANを用いてFeedbackフレームを受信した情報に基づき、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定してSLSを行うようにしたので、A-BFTにおいて通信装置(STA)100bからSSWフレームを受信しない場合(図3B)であっても、SLSを行うことができる。つまり、通信装置(AP)100aは、距離が遠い通信装置(STA)100bと通信が可能である。
【0249】
次に、STA1がAP1と11adに関してアソシエーションを行う方法について説明する。
【0250】
AP1は、受信q-omniアンテナ115を有効に設定して待ち受けを行うため、AP1とSTA1との位置関係は図3Bであり、STA1はAssociation Requestフレームを送信することが困難である。
【0251】
そこで、AP1は、ステップS408の後、送信アレイアンテナ106をベストセクタに設定し、STA1へGrantフレームを送信する(ステップS409)。なお、以降では特に断らない限り、AP1は、STA1へパケットを送信する場合に送信アレイアンテナ106をベストセクタに設定する。
【0252】
ステップS410では、STA1は、Grantを受信したことを通知するため、AP1へGrant Ackフレームを送信する。
【0253】
STA1は、ステップS409のGrantフレームに含まれる時間期間情報の範囲において、Probe Requestフレームを送信する。AP1は、ステップS409のGrantフレームに含まれる時間期間情報の範囲において、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定する(ステップS411)。
【0254】
つまり、ステップS409のGrantフレームに含まれる時間期間情報の範囲において、AP1とSTA1の位置関係は図3C及び図3Dに該当するため、STA1は、送信したパケットがAP1へ到達可能である。
【0255】
ステップS412からステップS414において、AP1はProbe Responseフレームを送信し、STA1はAssociation Requestフレームを送信し、AP1はAssociation Responseフレームを送信する。これにより、STA1は、AP1へのアソシエーションを完了する。
【0256】
このように、通信装置(STA)100bは、ベストセクタに関する情報をFeedback frameに含め、WLANを用いて送信し、Grantフレームを受信した後にAssociation Requestフレームを送信するようにしたので、A-BFTにおいてSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達しない場合であっても、ミリ波通信のアソシエーションを行うことができる。
【0257】
通信装置(AP)100aは、WLANを用いてFeedbackフレームを受信し、Grantフレームを送信し、Grantフレームの示す期間において前記Feedbackフレームの情報に基づき受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定してSLSを行うため、A-BFTにおいて通信装置(STA)100bからSSWフレームを受信しない場合であっても、ミリ波通信のアソシエーションを行うことができる。
【0258】
次に、STA1がAP1とミリ波通信(11ad及び11ay)を用いてデータ通信を行う方法について説明する。
【0259】
AP1は、受信q-omniアンテナ115を有効に設定して待ち受けを行うため、AP1とSTA1との位置関係は図3Bであり、STA1は11ad及び11ayを用いてデータフレームを送信することが困難である。
【0260】
図27は、AP1が、RTSフレームをSTA1へ送信し、STA1とのデータ通信を行う手順を示す(ステップS450からステップS454)。
【0261】
図27のステップS450では、AP1は、送信アレイアンテナ106をベストセクタに設定し、RTSフレームをSTA1へ送信する。STA1は受信q-omniアンテナ115でRTSフレームを受信してもよい(図3Aを参照)。
【0262】
図29は、11adにおけるRTSフレームのフォーマットを示す。Frame Controlフィールドは、フレームがRTSであることを示すType情報を含む。Durationフィールドは、マイクロ秒を単位とする時間期間の情報を含み、RTSフレームの後、AP1が通信を行う時間(TXOP、TX opportunity)を示す。RAフィールドは、受信アドレスを意味し、図27のステップS450では、AP1はRAフィールドをSTA1のMACアドレスに設定する。TAフィールドは、送信アドレスを意味し、図27のステップS450では、AP1はTAフィールドをTA1のMACアドレスに設定する。FCS(Frame check sequence)フィールドは、誤り検出符号を含む。
【0263】
STA1は、RAフィールドにSTA1のアドレスが設定されたRTSフレームをした場合、CTSフレームをAP1へ送信する。AP1は、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定し、CTSフレームを受信する。AP1がCTSフレームを受信したとき、TXOPは有効である(ステップS451)。
【0264】
TXOPを獲得したAP1は、STA1へデータフレームを送信しても良い。AP1は、STA1宛てのデータフレームにRDG(Reverse Direction Grant)フィールドを含めて送信し、STA1へデータ送信の許可を与える(ステップ452)。
【0265】
STA1は、RDG(STA1の送信を許可)を含むデータフレームを受信した場合、データフレームに、ステップS452で受信したデータフレームに対するBA(Block Ack、つまり受信確認)を含めてAP1宛てに送信する(ステップ453)。
【0266】
AP1は、ステップS453のデータフレームに対するBAをSTA1宛てに送信する(ステップS454)。
【0267】
以上のように、AP1は、RTSフレームをSTA1に送信してTXOPを獲得し、TXOPの期間において送信アレイアンテナ106及び受信アレイアンテナ106をベストセクタに設定し、RDGをSTA1に送信するため、STA1からの送信パケットが受信q-omniアンテナ115によって受信困難であっても、STA1からのデータフレームを受信アレイアンテナ106を用いて受信できる。
【0268】
AP1は、ステップS450において、RTSフレームの代わりにGrantフレームをSTA1へ送信し、ステップS451において、CTSフレームの代わりにGrant Ackフレームを受信して、STA1とのデータ通信を有効にしても良い。この手順は、ステップS409からS414と同様であるから、説明を省略する。
【0269】
なお、AP1は、ステップS409及びステップS450(Grantフレームを送信する場合)において、Grantフレームを送信する前にPollフレームをSTA1へ送信してもよい。Pollフレームを受信したSTA1は、SPR(Service period request)フレームをAP1宛てに送信し、AP1宛てに送るべきデータを持っているか否かを通知する。つまり、STA1は、AP1に対して、SPRを用いて送信時間の割り当て要求を行う。
【0270】
AP1は、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定し、SPRフレームを受信する。AP1は、SPRフレームの内容に応じ、STA1がAP1に対しデータ送信が必要と判断した場合に、ステップS409及びステップS450(Grantフレームを送信する場合)において、Grantフレームを送信しても良い。
【0271】
また、AP1は、DMG BeaconフレームにESE(Extended Schedule Element)を含め、STA1との通信を行う期間(例えば、図30のAllocation-1)をスケジュールしても良い(ステップS471)。
【0272】
図30は、11ad規格におけるESEのフォーマットを示す。AP1は、Allocation-1のSource AIDフィールドの値をSTA1のAID(Association ID)に設定し、Destination AIDフィールドの値をAP1のAIDに設定する。ここで、AIDとは、アソシエーション時にSTA毎に異なる値が決定され、アドレスの代用として用いられる値である。
【0273】
AP1は、Allocation Startフィールドに、Allocation-1の開始時刻を示す情報を含める。また、AP1は、Alloation Block Durationフィールドには、Allocation-1に係る時間を示す情報を含める。つまり、AP1は、Allocation Startフィールドが示す時刻に始まり、Alloation Block Durationフィールドが示す時間の間、STA1との通信を行うため、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定する。
【0274】
なお、AP1は、Number of Blocksフィールドに2以上の値を設定し、Alloation Block Durationフィールドが示す時間(time blockという)を複数回繰り返して、Allocation-1の時間を決定してもよい。AP1は、2つのtime blockの間には、Allocation Block Periodフィールドが示す時間の間隔を空ける。この場合、AP1は、time block毎に、STA1との通信を行うため、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定する。
【0275】
以上のように、実施の形態4の通信装置(STA)100bは、ベストセクタに関する情報をFeedback frameに含め、WLANを用いて送信するため、A-BFTにおいてSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達しない場合であっても、ミリ波通信のSLS、アソシエーション、データ通信を行うことができる。
【0276】
通信装置(AP)100aは、WLANを用いてFeedbackフレームを受信した情報に基づき、受信アレイアンテナ116をベストセクタに設定してSLSを行うため、A-BFTにおいて通信装置(STA)100bからSSWフレームを受信しない場合であっても、ミリ波通信のSLS及び、データ通信を行うことができ、距離が遠い通信装置(STA)100bと通信することができる。
【0277】
(実施の形態1、2の変形例)
なお、通信装置(AP)100aは、規格に示す受信感度点(図12A)に比べ高い受信性能を持つ場合、規格の値と受信性能との差分をRxGain_ABFT及びRxGain_AP_Dataに含めて送信しても良い。
【0278】
例えば、通信装置(AP)100aは、-81 dBmのMCS0のパケットの受信に対応している場合(つまり、規格に定められる感度点-78 dBmより3 dB低い信号の受信に対応しているため、受信性能が3 dB高いという)、RxGain_ABFTの値に3 dBを加算した値をA-BFT RX Antenna Gainフィールド(図5)に含めて送信しても良い。
【0279】
規格に示す受信感度点の値(図12Aを参照)をSENSE_REF、通信装置(AP)100aの受信感度をSENSE_APと表すと、追加ゲインADD_GAIN_APは式11により算出される。
ADD_GAIN_AP = SENSE_REF - SENSE_AP (式11)
【0280】
通信装置(STA)100bは、図10のステップS104において、式12を満たすか否かを判定しても良い。
RSSI_ABFT > SENSE_AP (式12)
【0281】
式12は、式1、式2、式11を用いて、次の式13A~Cのように変形できる。
EIRP_ABFT - PathLoss_Beacon + RxGain_ABFT > SENSE_REF - ADD_GAIN_AP
(式13A)
EIRP_ABFT - (EIRP_Beacon + RxGain_Beacon - RSSI_Beacon) + RxGain_ABFT > SENSE_REF - ADD_GAIN_AP (式13B)
(EIRP_ABFT - RxGain_Beacon + RSSI_Beacon) - (EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP) > SENSE_REF (式13C)
【0282】
図10のステップS104において、通信装置(STA)100bは、EIRP_ABFT、RxGain_Beacon、RSSI_Beacon、SENSE_REFの値を既知である。通信装置(STA)100bは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を通信装置(AP)100aから受信することにより、式13Cを用いて判定する。
【0283】
つまり、通信装置(STA)100bは、ADD_GAIN_APの値を含めてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定するため、通信装置(AP)100aの受信能力が規格の感度点に比べて高い場合に、SSWフレームが通信装置(AP)100aに到達すると判定できる状況が増加する。
【0284】
通信装置(AP)100aは、図10のステップS101において、EIRP_Beacon、RxGain_ABFT、ADD_GAIN_APの値をDMG Beaconフレームに含めて送信しても良い。通信装置(AP)100aがEIRP_Beacon、RxGain_ABFTの値を送信する方法を実施の形態1で説明したが、同様にADD_GAIN_APの値を示すフィールドをDMG BeaconのEDMG TX RX Infoエレメントに含めても良い(図5を参照)。
【0285】
通信装置(AP)100aは、図10のステップS101において、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値をDMG Beaconフレームに含めて送信しても良い。通信装置(AP)100aが(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT)の値をDifferential Gainフィールド(図18を参照)に含めて送信する方法を実施の形態2の変形例で説明したが、通信装置(AP)100aは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を示すフィールドをDifferential Gainフィールドに含めて送信しても良い。
【0286】
通信装置(AP)100aは、図19の「TX EIRPの値とA-BFT RX Antenna Gainの値の差」を「(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値」と読み替えてDifferential Gainの値を決定し、図18のDMG Beaconフレームに含めて送信しても良い。
【0287】
図31は、DMG Beaconフレームのフォーマットの別の一例を示す図である。図31において、Quasi-omni TXフィールドは、DMG Beaconフレームが送信q-omniアンテナ105で送信されたか否かを示すフィールドである。また、図31において、Differential Gainフィールドは、4ビットである。
【0288】
図32は、Differential Gainフィールドの値と(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値との関係の一例を示す図である。図32において、Differential Gainフィールドの値が1増加する毎に、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値は6 dB増加する。
【0289】
通信装置(AP)100aは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値に最も近い値を図32から選択してDifferential Gainフィールドの値を決定し、送信する。通信装置(AP)100aは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を通信装置(STA)100bに通知しない場合、Differential Gainフィールドの値を15(未定義)に設定し、DMG Beaconフレームに含めて送信する。
【0290】
以上のように、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにDifferential Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができる。これにより、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【0291】
また、通信装置(AP)100aは、DMG Beaconを送信するEIRPの値(EIRP_Beacon)、A-BFTにおける受信アンテナゲイン(RxGain_ABFT)、規格の感度点と受信性能との差分(ADD_GAIN)の値に基づきDifferential Gainフィールドの値を算出して送信するため、通信装置(STA)100bにおいてA-BFTにおけるSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができる。これにより、不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【0292】
(実施の形態5)
実施の形態5は、通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bが通信を行う実施の形態1から4と異なる方法について説明する。
【0293】
図33は、通信装置(AP)100aが送信するDMG Beaconフレームの一例を示す図である。図31のDMG BeaconフレームがQuasi-omni TXフィールド及びDifferential Gainフィールドを含むのに比べ、図33のDMG Beaconフレームは、AP Selection Parameterフィールドを含む。
【0294】
図34は、AP Selection Parameterフィールドの値の一例を示す図である。
【0295】
通信装置(AP)100aは、送信q-omniアンテナ105を用いてDMG Beaconフレームを送信する場合、AP Selection Parameterフィールドの値を0に設定する。
【0296】
通信装置(AP)100aは、送信アレイアンテナ(指向性アンテナ)106を用いてDMG Beaconフレームを送信する場合、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値に応じて、AP Selection Parameterフィールドの値を0以外の値に設定する。
【0297】
つまり、通信装置(AP)100aは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値に最も近い値(1~14)を図34から選択してAP Selection Parameterフィールドの値を決定し、送信する。通信装置(AP)100aは、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を通信装置(STA)100bに通知しない場合、AP Selection Parameterフィールドの値を15(未定義)に設定し、DMG Beaconフレームに含めて送信する。
【0298】
なお、図31のDifferential Gainフィールドと異なり、AP Selection Parameterフィールドの値が1増加する毎に、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値は3dB増加する。つまり、通信装置(AP)100aは、AP Selection ParameterフィールドをDMG Beaconフレームに含めて送信することにより、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を精度よく通信装置(STA)100bに通知することができる。
【0299】
通信装置(AP)100aは、DMG Beaconフレームを送信する場合、図31のQuasi-omni TXフィールドを含めて送信する代わりに、AP Selection Parameterフィールドの値が0であるか否かによって、送信q-omniアンテナ105による送信か否かを通知するようにしたので、Quasi-omni TXフィールドを省略でき、DMG BeaconフレームにおけるReservedビットを多く、例えば、図31では1ビットであるが、図33では2ビット、確保することができる。
【0300】
図35は、通信装置(STA)100bによる図33のDMG Beaconフレームの受信処理を示すフローチャートである。また、図35は、通信装置(STA)100bがアクティブスキャン、つまり通信装置(STA)100bが通信装置(AP)100aに対してProbe Requestフレームを送信し、Probe Requestフレームを受信する処理を示す。通信装置(STA)100bは、チャネル毎に図35の手順を繰り返すことにより、通信装置(STA)100bが接続可能なアクセスポイント(例えば通信装置(AP)100a)を検出する。
【0301】
ステップS501において、通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームを受信する。通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームの受信電力(RSSI_Beacon)を測定する。
【0302】
ステップS502において、通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームを解析し、AP Selection Parameterフィールドの値を抽出する。通信装置(STA)100bは、抽出したAP Selection Parameterフィールドの値が0であるか否かを判定し、値が0である場合、例えば、DMG Beaconフレームが送信q-omniアンテナ105により送信されたと判定した場合、ステップS503に進む。AP Selection Parameterフィールドの値が1である場合、DMG Beaconフレームが指向性アンテナにより送信されたと判定し、ステップS510に進む。
【0303】
ステップS503において、通信装置(STA)100bは、A-BFTにおいて、ビームフォーミングトレーニングを行わないために、以下の処理を行う。
【0304】
通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームを解析し、A-BFTがスケジュールされているか否かを判定する。通信装置(STA)100bは、A-BFTがスケジュールされていない場合、ステップS504へ進む。また、通信装置(STA)100bは、A-BFTがスケジュールされている場合、A-BFT期間が完了した後、ステップS504へ進む。
【0305】
なお、ステップS503において、A-BFTがスケジュールされている場合、通信装置(STA)100bは、ステップS513へ進んでも良い(ステップS503からステップS513への遷移は図示しない)。
【0306】
ステップS504において、通信装置(STA)100bは、送信RF回路104(図4を参照)を送信q-omniアンテナ105を用いて送信するように設定し、Probe Requestフレームを送信する。
【0307】
ステップS504において、通信装置(STA)100bは、11ad規格に定められるProbe Requestフレームのフォーマットを用いて送信しても良い。また、通信装置(STA)100bは、Probe Requestフレームに、送信q-omniアンテナ105を用いて送信することを示すフィールドを含めて送信しても良い。
【0308】
ステップS505において、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが送信するProbe Responseフレームを受信し、処理を終了する。
【0309】
次に、ステップS502において、AP Selection Parameterフィールドが0以外の値の場合について説明する。
【0310】
ステップS510において、通信装置(STA)100bは、受信したAP Selection Parameterフィールドの値から、図34を用いて(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を決定する。通信装置(STA)100bは、算出した(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値と、ステップS501で測定したRSSI_Beaconの値から、通信装置(AP)100aにおけるSSWフレームの受信電力の推定値(推定受信電力)を算出する。推定受信電力は、式13Cの左辺を用いて計算しても良い。
【0311】
ステップS511において、通信装置(STA)100bは、ステップS510で算出した推定受信電力が、感度点電力(SENSE_REF)を超えるか否かを判定する。つまり、式13Cの判定を行う。
【0312】
推定受信電力が感度点電力を超える場合、通信装置(STA)100bは、ステップS512へ進む。推定受信電力が感度点電力を超えない場合、通信装置(STA)100bは、ステップS520へ進む。
【0313】
ステップS512において、通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームを解析し、A-BFTがスケジュールされているか否かを判定する。A-BFTがスケジュールされていない場合、ステップS501へ戻り、次のDMG Beaconフレームを受信する。例えば、通信装置(STA)100bは、A-BFTがスケジュールされたDMG Beaconフレームを受信するまで、ステップS501からステップS512を繰り返す。(この遷移は図示しない。)
【0314】
ステップS513において、通信装置(STA)100bは、受信したDMG BeaconフレームにおいてA-BFTがスケジュールされている場合(S512のYes)、通信装置(AP)100aに対しSSWフレームを送信し、ビームフォーミング(BF)トレーニングを行う。通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが送信するSSW Feedbackフレームを受信した場合、BFトレーニングが完了したとみなす。
【0315】
また、ステップS513において、通信装置(STA)100bは、A-BFTの期間満了時にSSW Feedbackフレームを受信しない場合、BFトレーニングが未完了、またはBFトレーニングが失敗したとみなす。
【0316】
BFトレーニングの失敗の原因は、例えば、通信装置(STA)100bと、他のSTAとのSSWフレームの送信が重複した場合、SSWフレームの送信信号が競合し、通信装置(AP)100aはSSWフレームを受信せず、SSW Feedbackフレームを送信しないことがある。
【0317】
ステップS514において、通信装置(STA)100bは、BFトレーニングを完了した場合、ステップS515へ進む。また、通信装置(STA)100bは、BFトレーニングを完了しない場合、ステップS516へ進む。
【0318】
ステップS515において、通信装置(STA)100bは、ステップS513のBFトレーニングにおいて決定したベストセクタに設定した指向性アンテナを用いて、Probe Requestフレームを送信し、ステップS505へ進む。
【0319】
ステップS516において、通信装置(STA)100bは、S501で受信したDMG BeaconのAP Selection Parameterフィールドの値が0か否かを判定し、値が0であればS504へ、値が0以外であればS501へ進む。
【0320】
なお、ステップS516においてYesと判定されるのは、通信装置(STA)100bがステップS503からS513へ遷移した場合(この遷移は図示しない)である。なお、通信装置(STA)100bは、ステップS516の判定を省略して、ステップS516においてNoの場合と同様に、ステップS501へ遷移しても良い。
【0321】
次に、ステップS511において、通信装置(STA)100bが、推定受信電力が感度点を越えない(No)と判定した場合の通信装置(STA)100bの動作について説明する。
【0322】
ステップS520において、通信装置(STA)100bは、A-BFTを用いないBFトレーニングを実施する。通信装置(STA)100bは、A-BFTを用いないBFトレーニングとして、例えば、図27のステップS403からS408に示す、Wi-FiとDTIを用いたBFトレーニング方法を実施しても良い。また、通信装置(STA)100bは、A-BFTを用いないBFトレーニングとして、図36に示すAsymmetric Beamforming Training(後述)をDTI期間中に実施しても良い。
【0323】
ステップS520において、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが送信するSSW Feedbackフレーム又はSSW-ACKフレーム(後述)を受信した場合、BFトレーニングが完了したとみなす。
【0324】
次に、図35のステップS520における「A-BFTを用いないBFトレーニングを実施」に対して、図36図37図38を用いて、DMG Beaconフレームのフィールドの説明を行う。
【0325】
図36は、図35のステップS520における、通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bがA-BFTを用いないBFトレーニングの実施方法の一例を示す図である。
【0326】
まず、通信装置(AP)100aの動作について説明する。通信装置(AP)100aは、BTI(Beacon Transmission Interval)期間において、送信セクタ毎に、TRN-Rフィールドを付加したDMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dを送信する。
【0327】
図37は、DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dのフレームを含むPHYパケット(DMG Beaconパケットという)のフォーマットの一例を示す図である。DMG Beaconパケットは、11ad規格に定められており、STF(Short Training Field)、CEF(Channel Estimation Field)、Header(ヘッダ)、Payload(ペイロード)、AGC(Automatic Gain Control)及びTRN(トレーニング)フィールドを含む。
【0328】
通信装置(AP)100aは、DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dに付加されたTRNフィールドに複数のTRN-Rサブフィールドを含めて送信する。通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dのTRNフィールドのTRN-Rサブフィールド毎に受信セクタを切り替えて受信を行う。通信装置(STA)100bは、受信品質が良い受信セクタを選択し、通信装置(STA)100bのベストセクタを決定する。
【0329】
通信装置(STA)100bが受信アンテナパターンレシプロシティを持つ場合、通信装置(STA)100bは、送信アンテナのベストセクタと受信アンテナのベストセクタは同一番号であると定める。例えば、通信装置(STA)100bが受信アンテナパターンレシプロシティを持ち、通信装置(STA)100bが、受信アンテナのBFトレーニングを行った場合、受信アンテナのベストセクタに加え、送信アンテナのベストセクタも決定しても良い。
【0330】
図37のDMG Beaconパケットのペイロードは、DMG Beaconフレームを含む。DMG Beaconフレームは、Frame Controlフィールド、Durationフィールド、BSSIDフィールド、Frame Bodyフィールド、FCSフィールドを含む。
【0331】
図37のDMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dは、Timestampフィールド、SSW(Sector Sweep)フィールド、Extended Shechedule element(ESEという)、EDMG(Enhanced Directional Multi-Gigabit) Extended Schedule element(EDMG ESEという)を含む。
【0332】
図38は、DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dのSSWフィールドのフォーマットの一例を示す図である。SSWフィールドは、Directionサブフィールド、CDOWNサブフィールド、Sector IDサブフィールド、DMG Antenna IDサブフィールド、AP Selection Parameterサブフィールド、Reservedサブフィールドを含む。
【0333】
通信装置(AP)100aは、BTIにおいて、DMG Beaconフレーム毎にCDOWNサブフィールドの値を1ずつ減じたDMG Beaconフレームを、送信する。例えば、DMG Beaconフレーム5001aのCDOWNサブフィールドの値がn(nは1以上の整数)である場合、通信装置(AP)100aは、DMG Beaconフレーム5001aの次に送信するDMG Beaconフレーム5001bのCDOWNサブフィールドの値をn-1に設定する。なお、CDOWNサブフィールドの値kは、0以上の整数である。
【0334】
また、通信装置(AP)100aは、DMG Beaconフレームの送信に用いる送信アンテナの番号(セクタID)の値を、DMG BeaconフレームのSector IDサブフィールドに含めて送信する。例えば、DMG Beaconフレーム5001aのセクタIDはS(n)(S(n)は1以上64以下の整数)、DMG Beaconフレーム5001bのセクタIDはS(n-1)(S(n-1)は1以上64以下の整数)である。
【0335】
通信装置(AP)100aは、DMG Beaconフレーム5001aのAP Selection Parameterサブフィールドの値を、セクタIDがS(n)である送信EIRP、受信q-Omniアンテナのゲイン、及び追加ゲインの値に基づき定めて送信する(図34を参照)。
【0336】
DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dのESEのフォーマットの一例は、例えば図30に示した。図36において、通信装置(AP)100aは、DTI(Data Transmission Interval)期間にAsymmetric BT(Beamforming Training) allcation期間をスケジュールする、例えば、時間を割り当てるため、ESEのallocationフィールドの1つ(例えばallcation-p、pは1以上の整数)のAllocation Startサブフィールドの値を、Asymmetric BT allcationの開始時刻に設定する。また、通信装置(AP)100aは、allocation-pのAllocation Block Durationサブフィールド、Number of Blocksサブフィールド及びAllocation Block Periodサブフィールドの値を、Asymmetric BT allocationの期間を表すように設定する。
【0337】
ここで、通信装置(AP)100aは、Allocation-pのSource AIDの値を255(ブロードキャストを表す値)に設定し、Allocation-pが示すAsymmetric BT allocationの期間において、任意の通信装置が送信を開始しても良いことを通知する。また、通信装置(AP)100aは、Destination AIDの値を通信装置(AP)100aのAssociation ID(例えば0)に設定してもよい。
【0338】
図39は、DMG Beaconフレーム5001a、5001b、5001c、5001dのEDMG ESEのフォーマットの一例を示す図である。EDMG ESEは、Element IDフィールド、Lengthフィールド、Element ID Extensionフィールド、Number of Allcationsフィールド、及びM個のChannel Allocationフィールド(Mは1以上の整数であり、qは1以上M未満の整数)を含む。
【0339】
Channel Allcationフィールドは、Scheduling Typeサブフィールド、Allocation Keyサブフィールド、Channel Aggregationサブフィールド、BW(Bandwidth)サブフィールド、Asymmetric Beamforming Trainingサブフィールド、Receive Directionサブフィールド、Reservedサブフィールドを含む。
【0340】
通信装置(AP)100aは、DTIにおいて、Asymmetric BT allocationをスケジュールする場合、Channel allocationフィールドの1つ(例えばChannel allocation-q)のAsymmetric Beamforming Trainingサブフィールドの値を1に設定する。
【0341】
また、通信装置(AP)100aは、Channel allocation-qのAllocation Keyサブフィールドに、ESEのallocation-pのAllocation Controlサブフィールド(図30を参照)の一部(例えばAllocation AIDサブフィールド、図示しない)の値を含める。
【0342】
通信装置(AP)100aは、Asymmetric Beamforming Trainingサブフィールドの値を1に設定することにより、DTIにAsymmetric BT allocationが存在することを通知し、ESEのallocation-pのAllocationのAIDの値をChannel allocation-qのAllocation Keyサブフィールドに含めることにより、Asymmetric BT allocationの開始時刻と期間が、allocation-pの開始時刻と期間と同一であることを通知する。
【0343】
また、通信装置(AP)100aは、Receive Directionサブフィールドの値を、BTIにおいて最初に送信したDMG BeaconのCDOWNの値(例えば、図36のDMG Beacon5001aのCDOWNの値、n)に設定する。この値を、CDOWN初期値という。
【0344】
ここで、図36のBTIにおける通信装置(AP)100a及び通信装置(STA)100bの処理は、図35のステップS501に相当する。まず、通信装置(AP)100aは、図37のDMG Beaconパケットを送信し、Asymmetric BTのアロケーションをスケジュールする。また、通信装置(STA)100bは、DMG Beaconパケットの受信時、DMG Beaconパケットの受信電力の測定、及びTRN-Rサブフィールドを用いる受信アンテナのトレーニングを行う。さらに、通信装置(STA)100bは、アンテナパターンレシプロシティから、送信アンテナのベストセクタを決定する。
【0345】
次に、通信装置(STA)100bは、図35のステップS502及びS511において、いずれもNoと判定した場合、図36のA-BFTにおいてSSWフレームの送信を省略する。
【0346】
次に、図36のAsymmetric BT allocationの開始時刻において、通信装置(AP)100aは、BTI中の1番目に送信したDMG Beacon(例えばDMG Beacon5001a)と同じセクタ(例えばSector IDがS(n)のセクタ。第1のセクタという)に受信アンテナを設定する。
【0347】
Asymmetric BT allocationの開始時刻から一定時間(例えば、slot time)の経過後、通信装置(AP)100aは、BTI中の2番目に送信したDMG Beacon(例えばDMG Beacon5001b)と同じセクタ(例えばSector IDがS(n-1)のセクタ。第2のセクタという)に受信アンテナを切り替える。
【0348】
なお、通信装置(AP)100aが、第1のセクタに設定する期間がスロット1(slot #1)であり、第2のセクタに設定する期間がスロット2(slot #2)である。
【0349】
このように、通信装置(AP)100aは、Asymmetric BT allocationの開始時刻から、slot time毎に、受信セクタを順次切り替えて待ち受けを行う。通信装置(AP)100aは、
DMG Beaconの送信における送信セクタの切り替えと同じ順序で、Asymmetric BT allocationにおける受信セクタの切り替えを行う。
【0350】
次に、通信装置(STA)100bの動作について、説明する。通信装置(STA)100bは、BTIにおいて、DMG Beaconフレームの受信毎に、受信品質を測定し、品質の良いDMG BeaconフレームのセクタIDを、通信装置(AP)100aのベストセクタと決定する。
【0351】
例えば、通信装置(STA)100bは、BTIにおいて、受信q-omniアンテナ115を用いてDMG Beaconパケットのペイロードを受信することにより通信装置(AP)100aのベストセクタ(例えばセクタIDがS(n-2))を決定し、受信アレイアンテナ(指向性アンテナ)116を切換えて、TRN-Rフィールドを受信することにより、通信装置(STA)100bのベストセクタを決定する。
【0352】
通信装置(STA)100bは、Asymmetric BT allocationにおいて、送信セクタを通信装置(STA)100bのベストセクタに設定して、SSWフレーム5001dを送信する。
【0353】
SSWフレーム5001dが通信装置(AP)100aに到達するためには、通信装置(STA)100bは、図3Dの位置関係において、通信装置(AP)100aへSSWフレームを送信する。そこで、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aによって受信セクタがS(n-2)に設定されたスロットにおいて、SSWフレームを送信する。
【0354】
なお、通信装置(AP)100aは、通信装置(AP)100aが受信セクタをS(n-2)に設定するスロットが何れのスロットであるかを、以下のように決定する。
【0355】
BTIにおいて、通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームが、何番目のDMG Beaconフレームであるかを、受信時刻から判別することは困難である。なぜなら、DMG Beaconフレームの長さ(占有時間)は、可変であるためである。また、DMG Beaconフレームは送信アレイアンテナ(指向性アンテナ)106により送信されるため、通信装置(STA)100bは、全てのDMG Beaconフレームを受信しない場合がある。
【0356】
例えば、通信装置(STA)100bがBTIの開始時刻から300マイクロ秒経過後にDMG Beaconフレームを受信した場合、通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームが何番目のDMG Beaconフレームであるか(つまり、前述の300マイクロ秒の間に何個のDMG Beaconが送信されたか)を、時間(300マイクロ秒)を元に判別することは困難である。
【0357】
ここで、通信装置(STA)100bは、受信したDMG BeaconのReceive Directionサブフィールドに含まれるCDOWN初期値と、受信したDMG BeaconのSSWフィールドのCDOWNサブフィールドの値との差分から、受信したDMG Beaconフレームが何番目のDMG Beaconフレームであるかを判別することができる。
【0358】
例えば、図36において、図39のReceive Directionサブフィールドの値はn、ベストセクタに対応するDMG Beaconフレーム(例えばDMG Beaconフレーム5001c)のCDOWNサブフィールドの値はn-2であるから、通信装置(STA)100bは、それぞれの値の差分(n - (n-2) = 2)に1を加算し、DMG Beaconフレーム5001cは3番目に送信されたDMG Beaconフレームであると判別する。
【0359】
そこで、通信装置(STA)100bは、DTIのスロット3において、SSWフレーム5001dを送信する。通信装置(AP)100aは、スロット3において、DMG Beaconフレーム5001cを送信したセクタと同じセクタに受信セクタに設定して、SSWフレームを待ち受ける。このため、通信装置(STA)100bは、図3Dの位置関係にある通信装置(AP)100に対してSSWフレームを送信することができ、通信装置(AP)100aは、SSWフレームを受信することができる。
【0360】
ここで、通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bが送信したSSWフレームを受信した場合、BFトレーニングが成功したとみなす。なお、通信装置(AP)100aは、BFトレーニングが成功したことを通知するため、通信装置(STA)100b宛にSSW-ACK(Sector Sweep Acknoledgement)フレームを送信しても良い。
【0361】
以上、図35のステップS520における「A-BFTを用いないBFトレーニングを実施」に対して説明した。
【0362】
図35のステップS521において、通信装置(STA)100bは、BFトレーニングが完了した場合(Yes)、ステップS522へ進む。また、通信装置(STA)100bは、BFトレーニングが完了しない場合(No)、ステップS516へ進む。
【0363】
ステップS522において、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aへProbe Requestフレームを送信するため、指向性TXOPを取得する。指向性TXOPを獲得するため、通信装置(STA)100bは、source(宛先)アドレスが通信装置(STA)100bであるESEを含むフレーム(例えばDMG Beacon、図27のステップS471を参照)を、通信装置(AP)100aが送信するまで、受信待ち受けを行ってもよい。
【0364】
通信装置(AP)100aは、前述のESEが指定する期間(アロケーション)において、受信アレイアンテナを、通信装置(STA)100bと通信するためのベストセクタに設定する。
【0365】
なお、通信装置(AP)100aは、EDMG ESEのReceive DirectionフィールドにベストセクタのSector IDを含め、EDMG ESEが指定する期間において、受信アレイアンテナを、通信装置(STA)100bと通信するためのベストセクタに設定しても良い(この期間を、指向性のアロケーションという)。
【0366】
例えば、通信装置(AP)100aは、EDMG ESEのアロケーションの1つ(例えばallocation-p)がAsymmetric BF allocationであると指定する場合、allocation-pのAsymmetric Beamforming Trainingフィールドを1に設定し、Receive DirectionフィールドにCDOWN初期値を含める。また、通信装置(AP)100aは、EDMG ESEの別のアロケーションの1つ(例えばallocation-q)が指向性のアロケーションであると指定する場合、allocation-pのAsymmetric Beamforming Trainingフィールドを0に設定し、Receive DirectionフィールドにベストセクタのSector IDを含める。
【0367】
なお、通信装置(AP)100aは、Asymmetric BF allocationにおいてアソシエーション前の通信装置(STA)100bからSSWフレームを受信した場合、Asymmetric BF allocationより後のBTIにおけるDMG Beaconフレームを用いて、1つ以上の指向性アロケーションを割り当てても良いし、1つ以上の指向性アロケーションを複数のビーコンインターバルにわたって割り当てても良い。
【0368】
通信装置(AP)100aは、通信装置(STA)100bがアソシエーション前か後かに応じて、指向性アロケーションの割り当て方法を決定しても良い。例えば、通信装置(STA)100bがアソシエーション前である場合、通信装置(STA)100bがProbe Requestフレーム、Association Requestフレーム、Authentication Requestフレームを送信するが、これらの制御に関するフレームのデータ量は、1つのビーコンインターバルで送信できるデータ量に占める割合が小さいため、通信装置(AP)100aは、ESE又はgrantフレームを送信して、1つのビーコンインターバルに指向性アロケーションを割り当てても良い。
【0369】
また、例えば、通信装置(STA)100bがアソシエーション後である場合、通信装置(STA)100bがデータフレームを送信するが、データフレームのデータ量は、1つのビーコンインターバルで送信できるデータ量に占める割合が大きいため、通信装置(AP)100aは、ESE又はgrantフレームを送信して、複数のビーコンインターバルに指向性アロケーションを割り当てても良い。なお、通信装置(STA)100bがアソシエーション前であっても、複数のビーコンインターバルに指向性アロケーションを割り当てても良い。
【0370】
通信装置(STA)100bは、アソシエーション後であっても、Asymmetric BF allocationにおいてSSWフレームを送信し、通信装置(AP)100aが指向性アロケーションをスケジュールすることを要求することができる。これにより、通信装置(AP)100aは、適宜、指向性アロケーションをスケジュールするので、無線リソースの利用効率を向上し、スループットを向上できる。
【0371】
また、ステップS522において、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aからのGrantフレームの送信(図27のステップS409を参照)及び通信装置(AP)100aからのRTSフレームの送信(図27のステップS450を参照)を待ち受けても良い。
【0372】
通信装置(AP)100aは、前述のGrantフレームが指定する期間(アロケーション)にわたり、通信装置(STA)100bと通信するためのベストセクタに設定する。また、通信装置(AP)100aは、前述のRTSフレームが指定する期間にわたり、通信装置(AP)100aは受信アレイアンテナ116を、通信装置(STA)100bと通信するためのベストセクタに設定する。
【0373】
ステップS523において、通信装置(STA)100bは、ステップS520のBFトレーニングにおいて決定したベストセクタに設定した送信アレイアンテナ(指向性アンテナ)106を用いて、Probe Requestフレームを送信する。通信装置(AP)100aは、受信アレイアンテナ116を、通信装置(STA)100bと通信するためのベストセクタに設定しているため、ステップS511においてNoと判定した場合(例えば、A-BFTにおいてSSWフレームが通信装置(STA)100bから通信装置(AP)100aへ到達しない)であっても、通信装置(STA)100bが送信したProbe Responseフレームは通信装置(AP)100aに到達する。
【0374】
通信装置(STA)100bは、Probe Requestフレームを送信した後、ステップS505へ進む。
【0375】
なお、通信装置(STA)100bは、ステップS501において受信したDMG BeaconパケットがTRN-Rサブフィールドを含み、かつ、AP Selection Parameterフィールドの値が0である場合、TRN-Rサブフィールドを用いて通信装置(STA)100bのベストセクタのトレーニングを行い、ステップS504において、送信q-omniアンテナ105を用いる代わりに通信装置(STA)100bのベストセクタ(送信アレイアンテナ105)を用いてProbe Requestを送信しても良い。
【0376】
なお、通信装置(STA)100bは、ステップS501において受信したDMG BeaconパケットがTRN-Rサブフィールドを含み、かつ、ステップS502及びステップS511でNoと判定した場合に、ステップS520においてAsymmetric BTを行う代わりに、ステップS523へ進み、送信アレイアンテナ(指向性アンテナ)105を用いる代わりにWi-Fiを用いてProbe Requestフレームを通信装置(AP)100aへ送信しても良い。
【0377】
また、通信装置(STA)100bは、OCT(On-channel Tunneling)を用いてProbe Requestフレームを送信しても良い。通信装置(STA)100bは、11ad及び11ay規格のProbe Requestフレームフォーマットを、Wi-Fiを用いて送信しても良い。
【0378】
なお、通信装置(STA)100bは、Probe RequestフレームにSSW Feedbackフィールドを含めて送信しても良い。これにより、通信装置(STA)100bは、A-BFTを用いるBFトレーニング(ステップS513)及びA-BFTを用いないBFトレーニング(ステップS520)を行わずにベストセクタを通信装置(AP)100aに通知することができるので、BFトレーニングに要する遅延を削減し、BFトレーニングにおける他のSTAへの干渉を減らすことができる。
【0379】
以上、図35のステップについて説明した。
【0380】
なお、通信装置(STA)100bは、図35の動作を開始してから所定の時間が経過した場合、ステップS505を実施していなくても、図35の動作を終了する。
【0381】
以上より、通信装置(STA)100bは、図35のステップS502において、AP Selection Parameterフィールドの値が0か否かを判定し、値が0である場合に、送信q-omniアンテナ105を用いてProbe Requestフレームを送信するため、ステップS513及びステップS520のBFトレーニングの実施を省略して、Probe Responseフレームを受信できる。これにより、通信装置(STA)100bは、アクティブスキャンに要する時間を短縮することができ、通信装置(AP)100aとの初期接続動作を早期に完了し、データ通信を開始することができる。
【0382】
また、通信装置(STA)100bは、図35のステップS512において、AP Selection Parameterフィールドの値を利用して、A-BFTにおいてSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができる。通信装置(STA)100bは、SSWフレームが通信装置(AP)100aに到達すると判定した場合には、A-BFTを利用してBFトレーニングを行う (ステップS513)。A-BFTを用いるBFトレーニングは、A-BFTを用いないBFトレーニングに比べて遅延が短いため、通信装置(STA)100bは、早期にBFトレーニングを完了でき、早期にアクティブスキャンを完了することができる。
【0383】
また、通信装置(STA)100bは、図35のステップS511において、SSWフレームが通信装置(AP)100aに到達しないと判定した場合、A-BFTを用いないBFトレーニング(ステップS520)を行うので、A-BFTにおいてSSWフレームの送信を抑制し、通信装置(AP)100a、他のAP、他のSTAへの干渉を減らすことができる。
【0384】
また、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconにAP Selection Parameterフィールドを含めて送信するため、DMG Beaconを受信したSTA(例えば通信装置(STA)100b)は、早期にアクティブスキャンを完了し、通信装置(AP)100aとのデータ通信を開始することができる。
【0385】
以上のように、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにAP Selection Parameterフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいてQuasi-omni送信によりProbe Requestフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができる。これにより、通信装置(AP)100aは、A-BFTにおける不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【0386】
また、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにAsymmetric BT allocationをスケジュールするEDMG ESEフィールドと、CDOWN初期値を示すフィールド(Receive Directionフィールド)を含めて送信するため、通信装置(STA)100bは、ベストセクタに対応するDMG Beaconフレームの順位を判別することができ、Asymmetric BT allocationにおいてSSWフレームが通信装置(AP)100aに到達可能なtime slotを決定することができる。
【0387】
このため、通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bの送信電力が異なる場合であっても、通信装置(STA)100bはビームフォーミングトレーニングを完了することができる。これにより、通信装置(AP)100aは、広いカバレッジエリアを持つことができる。
【0388】
(実施の形態6)
実施の形態6は、通信装置(AP)100aと通信装置(STA)100bが通信を行う別の方法について説明する。
【0389】
図40は、通信装置(AP)100aが送信するDMG Beaconフレームの一例を示す図である。図31のDMG BeaconフレームがQuasi-omni TXフィールド及びDifferential Gainフィールドを含むのに比べ、図40のDMG Beaconフレームは、Differential Gainフィールドを含み、Quasi-omni TXフィールドを含まない。
【0390】
通信装置(AP)100aは、Differential Gainフィールドの値を、実施の形態1、2の変形例(図32)と同様に、(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値に対応する値(0~14)及び未定義に対応する値(15)のいずれかに設定し、Differential GainフィールドをDMG Beaconフレームに含めて送信する。
【0391】
図41は、通信装置(STA)100bによる図40のDMG Beaconフレームの受信処理を示すフローチャートである。なお、通信装置(STA)100bは、図31のDMG Beaconフレームを受信した場合に、図41の受信処理を行ってもよい。なお、図35と同じ処理のステップには、同じ符号をつけ、説明を省略する。
【0392】
ステップS601において、通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームを受信する。通信装置(STA)100bは、DMG Beaconフレームの受信電力(RSSI_Beacon)を測定する。
【0393】
ステップS602において、通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームに含まれるDifferential Gainフィールドの値から、図32を用いて(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値を決定する。
【0394】
通信装置(STA)100bは、算出した(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値と、ステップS601で測定したRSSI_Beaconの値とから、通信装置(STA)100bが送信q-omniアンテナ105を用いて送信した場合における、通信装置(AP)100aによるSSWフレームの受信電力の推定値(「Quasi-omni送信における推定受信電力」という)を算出する。
【0395】
また、通信装置(STA)100bは、算出した(EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP)の値と、ステップS601で測定したRSSI_Beaconの値から、通信装置(STA)100bが送信アレイアンテナ(指向性アンテナ)106を用いて送信した場合における、通信装置(AP)100aによるSSWフレームの受信電力の推定値(「指向性送信における推定受信電力」という)を算出する。
【0396】
ステップS603において、通信装置(STA)100bは、ステップS602で算出した、Quasi-omni送信における推定受信電力が、感度点電力(SENSE_REF)を超えるか否かを判定する。つまり、次に示す式14の判定を行う。
(EIRP_ABFT_Qomni - RxGain_Beacon + RSSI_Beacon) - (EIRP_Beacon - RxGain_ABFT - ADD_GAIN_AP) > SENSE_REF (式14)
【0397】
なお、通信装置(STA)100bは、ステップS602において式14の左辺を用いてQuasi-omni送信における推定受信電力を計算しても良い。
【0398】
Quasi-omni送信における推定受信電力が感度点電力を超える場合(S603のYes)、通信装置(STA)100bは、ステップS604へ進む。
【0399】
Quasi-omni送信における推定受信電力が感度点電力を超えない場合(S603のNo)、通信装置(STA)100bは、ステップS610へ進む。
【0400】
ステップS604において、通信装置(STA)100bは、A-BFTにおいて、ビームフォーミングトレーニングを行わないために、ために、以下の処理を行う。
【0401】
通信装置(STA)100bは、受信したDMG Beaconフレームを解析し、A-BFTがスケジュールされているか否かを判定する。通信装置(STA)100bは、A-BFTがスケジュールされていない場合、ステップS605へ進む。また、通信装置(STA)100bは、A-BFTがスケジュールされている場合、A-BFT期間が完了した後、ステップS605へ進む。
【0402】
なお、ステップS604において、A-BFTがスケジュールされている場合、通信装置(STA)100bは、ステップS513へ進んでも良い(ステップS604からステップS513への遷移は図示しない)。
【0403】
ステップS605において、通信装置(STA)100bは、送信RF回路104(図4を参照)を送信q-omniアンテナ105を用いて送信するように設定し、Probe Requestフレームを送信する。
【0404】
ステップS605において、通信装置(STA)100bは、11ad規格に定められるProbe Requestフレームのフォーマットを用いて送信しても良い。また、通信装置(STA)100bは、Probe Requestフレームに、送信q-omniアンテナ105を用いて送信することを示すフィールドを含めて送信しても良い。
【0405】
ステップS606において、通信装置(STA)100bは、通信装置(AP)100aが送信するProbe Responseフレームを受信し、処理を終了する。
【0406】
次に、ステップS603において、通信装置(STA)100bが、Quasi-omni送信における推定受信電力が感度点電力を超えないと判定した場合について説明する。
【0407】
ステップS610において、通信装置(STA)100bは、ステップS602で算出した指向性送信における推定受信電力が、感度点電力(SENSE_REF)を超えるか否かを判定する。つまり、式13Cの判定を行う。
【0408】
推定受信電力が感度点電力を超える場合(S610のYes)、通信装置(STA)100bは、ステップS513へ進む。推定受信電力が感度点電力を超えない場合(S610のNo)、通信装置(STA)100bは、ステップS520へ進む。
【0409】
また、S614では、通信装置(STA)100bは、ステップS602で算出した、Quasi-omni送信における推定受信電力が、感度点電力(SENSE_REF)を超えるか否かを判定し、超える場合(Yes)はステップS605へ進み、超えない場合(No)はステップS601へ進む。
【0410】
以上、図41のステップについて説明した。
【0411】
なお、通信装置(STA)100bは、図41の動作を開始してから所定の時間が経過した場合、ステップS606を実施していなくても、図41の動作を終了する。
【0412】
以上より、通信装置(STA)100bは、図35の受信処理では、AP Selection Parameterフィールドの値を参照し、送信q-omniアンテナ105を用いてProbe Requestを送信するか否かを判断したが、図41の受信処理では、通信装置(STA)100bは、Differential Gainフィールドの値を参照し、送信q-omniアンテナ105を用いてProbe Requestを送信するか否かを判断するようにした。
【0413】
また、通信装置(STA)100bは、図41の受信処理を行うことにより、図35の受信処理を用いた場合と同様に、送信q-omniアンテナ105を用いてProbe Requestフレームを送信した場合、ステップS513及びステップS520のBFトレーニングの実施を省略して、Probe Responseフレームを受信できる。これにより、通信装置(STA)100bは、アクティブスキャンに要する時間を短縮することができ、通信装置(AP)100aとの初期接続動作を早期に完了し、データ通信を開始することができる。
【0414】
以上のように、通信装置(AP)100aは、DMG BeaconフレームにDifferential Gainフィールドを含めて送信するため、通信装置(STA)100bにおいてQuasi-omni送信によりProbe Requestフレームが通信装置(AP)100aに到達するか否かを判定することができる。これにより、A-BFTにおける不要なSSWフレームの送信を避けることができるので、通信装置(STA)100bの消費電力を削減でき、他のSTAへの不要な干渉波の発生を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0415】
本開示の一態様は、11ay規格に準拠する通信システムに好適である。
【符号の説明】
【0416】
100 通信装置
101 MAC制御部
102 PHY送信回路
103 D/Aコンバータ
104 送信RF回路
105 送信q-omniアンテナ
106 送信アレイアンテナ
112 PHY受信回路
113 A/Dコンバータ
114 受信RF回路
115 受信q-omniアンテナ
116 受信アレイアンテナ
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
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図28
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図35
図36
図37
図38
図39
図40
図41