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特許7293451回転表面に基づく光学的セキュリティデバイス
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】回転表面に基づく光学的セキュリティデバイス
(51)【国際特許分類】
   B42D 25/369 20140101AFI20230612BHJP
   B41M 3/14 20060101ALI20230612BHJP
   G02B 5/26 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B42D25/369
B41M3/14
G02B5/26
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022066250
(22)【出願日】2022-04-13
(62)【分割の表示】P 2021171641の分割
【原出願日】2019-08-09
(65)【公開番号】P2022115860
(43)【公開日】2022-08-09
【審査請求日】2022-05-11
(31)【優先権主張番号】16/102,250
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502151820
【氏名又は名称】ヴァイアヴィ・ソリューションズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Viavi Solutions Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100147692
【弁理士】
【氏名又は名称】下地 健一
(72)【発明者】
【氏名】ウラジミール ピー ラクシャ
(72)【発明者】
【氏名】コルネリス ジャン デルスト
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-293358(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0189454(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0187546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42D 25/369
B41M 3/14
G02B 5/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に印刷した光学的物品であって、
複数の反射性磁気小板を備え、
前記複数の反射性磁気小板は、前記基板を軸線周りに回転しない正面図で漏斗状反射を呈するように整列され、
前記複数の反射性磁気小板は、異なるビューで異なる反射効果を生じるように整列され、
前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射と異なり、
前記異なるビューは、前記基板を前記軸線周りに回転しない前記正面図とは異なる、
光学的物品。
【請求項2】
請求項1に記載の光学的物品において、前記異なるビューは、前記基板を前記軸線周りに回転したとき生ずる、光学的物品。
【請求項3】
請求項1に記載の光学的物品において、前記軸線は垂直軸線である、光学的物品。
【請求項4】
請求項1に記載の光学的物品において、前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射の第2部分の第2側方移動よりも大きい前記漏斗状反射の第1部分の第1側方移動を含む、光学的物品。
【請求項5】
請求項4に記載の光学的物品において、
前記第1部分は、前記漏斗状反射の頂部であり、
前記第2部分は、前記漏斗状反射の底部である、
光学的物品。
【請求項6】
請求項1に記載の光学的物品において、前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射の第1部分の、前記漏斗状反射の第2部分に対する拡大化を含む、光学的物品。
【請求項7】
請求項5に記載の光学的物品において、前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射の前記底部の、前記漏斗状反射の他の部分に対する狭小化を含む、光学的物品。
【請求項8】
請求項1に記載の光学的物品において、前記軸線は水平軸線である、光学的物品。
【請求項9】
請求項1に記載の光学的物品において、前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射の他の部分に対する前記漏斗状反射の頂部の拡大化を含む、光学的物品。
【請求項10】
請求項1に記載の光学的物品において、
前記正面図は第1ビューであり、
前記異なるビューは、第2ビューであり、
前記異なる反射効果は、第1反射効果であり、
前記複数の反射性磁気小板は、第3ビューで第2反射効果を生じるように整列される
光学的物品。
【請求項11】
請求項10に記載の光学的物品において、
前記軸線は第1軸線であり、
前記第2ビューは、前記基板が前記第1軸線周りに回転したとき生じ、
前記第3ビューは、前記基板が前記第1軸線に直交する第2軸線周りに回転したとき生ずる、
光学的物品。
【請求項12】
基板上に印刷した光学的物品であって、
複数の反射性磁気小板を備え、
前記複数の反射性磁気小板は、前記基板を軸線周りに回転しない正面図で第1反射効果を呈するように整列され、
前記複数の反射性磁気小板は、異なるビューで第2反射効果を生ずるように整列され、
前記第2反射効果は、前記第1反射効果の反射の第1部分の第1側方移動を含み、該第1側方移動は、漏斗状反射の第2部分の第2側方移動よりも大きく、
前記異なるビューは、前記基板を前記軸線周りに回転しない前記正面図とは異なる、
光学的物品。
【請求項13】
請求項12に記載の光学的物品において、前記第2反射効果は、前記基板を垂直軸線周りに回転させたとき生じる、光学的物品。
【請求項14】
請求項12に記載の光学的物品において、前記第1反射効果は、前記反射の一部分が他の部分よりも広い、光学的物品。
【請求項15】
請求項14に記載の光学的物品において、前記反射の前記部分は、前記反射の頂部である、光学的物品。
【請求項16】
請求項12に記載の光学的物品において、前記第1反射効果は、前記反射の一部分が他の部分よりも狭い、光学的物品。
【請求項17】
請求項16に記載の光学的物品において、前記反射の前記部分は、前記反射の底部である、光学的物品。
【請求項18】
光学的物品であって、
複数の反射性磁気小板を備え、
前記複数の反射性磁気小板は、第1ビューで漏斗状反射を呈するように整列され、
前記複数の反射性磁気小板は、第2ビューで異なる反射効果を生じるように整列され、
前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射と異なる
光学的物品。
【請求項19】
請求項18に記載の光学的物品において、前記異なる反射効果は、前記漏斗状反射の第2部分の第2側方移動よりも大きい、前記漏斗状反射の第1部分の第1側方移動を含む、
光学的物品。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
通貨代替物、証明書等々のような幾つかの文書は、偽造に対抗するため若干の光学的物
品を使用することがあり得る。このような光学的物品の一例は、見る角度に基づいて可変
の光学的特性(例えば、色、反射性)を有するインクである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0002】
可能な幾つかの実施形態において、基板上に印刷した光学的物品は、有機結合剤と、及
び前記有機結合剤内に設けられた複数の反射性磁気小板であって、前記複数の反射性磁気
小板は、回転面の少なくとも一部分にほぼ一致するよう整列させられ、かつ前記複数の反
射性磁気小板は、前記基板が第1軸線の周りに回転するとき前記光学的物品の第1反射効
果を生ずるよう、また前記基板が第2軸線の周りに回転するとき前記光学的物品の第2反
射効果を生ずるよう整列させられ、前記第1反射効果は前記第2反射効果とは異なるもの
であるような、該複数の反射性磁気小板と、を備えることができる。
【0003】
可能な幾つかの実施形態において、基板上に印刷した光学的物品を形成する方法は、複
数の反射性磁気小板を含んでいる有機結合剤を前記基板上に設けるステップと、1つ又は
それ以上の磁石を用いて有機結合剤に対して磁場を印加する磁場印加ステップであって、
前記磁場は、前記複数の反射性磁気小板を回転面の少なくとも一部分にほぼ一致するよう
整列させ、前記複数の反射性磁気小板は、前記基板が第1軸線の周りに回転するとき光学
的物品の第1反射効果を生ずるよう、また前記基板が第2軸線の周りに回転するとき光学
的物品の第2反射効果を生ずるよう整列させられ、第1反射効果は第2反射効果とは異な
るものであるようにされる、該磁場印加ステップと、及び前記有機結合剤を固化又は硬化
させるステップと、を備えることができる。
【0004】
可能な幾つかの実施形態において、文書は、複数の反射性磁気小板を有する光学的物品
であって、前記複数の反射性磁気小板は、回転面の少なくとも一部分にほぼ一致するよう
整列させられ、かつ複数の反射性磁気小板は、前記光学的物品が第1軸線の周りに回転す
るとき前記光学的物品の第1反射効果を生ずるよう、また前記光学的物品が第2軸線の周
りに回転するとき前記光学的物品の第2反射効果を生ずるよう整列させられ、前記第1反
射効果は前記第2反射効果とは異なるものである、該光学的物品を備えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図1B】漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図1C】漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図1D】漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図1E】漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図2A】漏斗状回転面に基づいて形成された他の光学的物品の説明図である。
図2B】漏斗状回転面に基づいて形成された他の光学的物品の説明図である。
図3A】鞍(サドル)状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図3B】鞍状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図3C】鞍状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図3D】鞍状回転面に基づいて形成された光学的物品の説明図である。
図4】回転面に基づいて光学的物品を形成するプロセスの実施例におけるフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
例示的実施形態を添付図面につき以下に詳細に説明する。異なる図面における同一参照
符号は、同一又は類似の要素を特定することができる。
【0007】
光学的物品は、光の角度又は見る角度に基づいて反射効果を発生することができる。幾
つかの光学的物品は、このような反射効果を生ずるよう反射性磁気小板を使用することが
できる。例えば、磁気小板は、有機結合剤内に分散させ、また可撓性基板(例えば、文書
、通貨、証明書、取引カード)のような、基板上にコーティングすることができる。磁気
小板は、磁気小板に整形した3次元ミラーの反射特性を呈せしめ得る磁場に従って(例え
ば、磁場を使用することによって)整列させることができる。このことは、フレネル様反
射効果と称することができる。有機結合剤は、固化又は硬化することができる(例えば、
養生、紫外線、熱、エポキシ、等々を使用して)。とくに、光学的物品は、薄く(例えば
、基板よりも厚さがそれほど厚くないものであり得る)、通貨及び他のこのような用途に
有用な光学的物品をなし得る可撓性を有するものであり得る。
【0008】
本明細書記載の幾つかの実施形態は、回転面に基づく光学的物品を提供する。回転面は
、軸線周りに2次元曲線を回転させることにより生ずる3次元表面である。回転面は方位
対称性を有することができる。本明細書記載の幾つかの実施形態は、回転面に基づく反射
効果を生ずるよう回転面に基づいて発生する磁場を使用することができる。例えば、本明
細書記載の幾つかの実施形態は、漏斗状回転面に基づくものとし、また幾つかの方位で漏
斗に類似する反射効果を付与できる。本明細書記載の他の実施形態は、鞍状回転面に基づ
くものとし、また幾つかの方位で鞍(サドル)に類似する反射効果を付与できる。
【0009】
上述の光学的物品は、基板(又は光学的物品)が第1軸線の周りに回転するとき光学的
物品の第1反射効果を生ずるよう、また複数の反射性磁気小板は、基板又は光学的物品が
第2軸線の周りに回転するとき光学的物品の第2反射効果を生ずるよう整列させられる磁
気小板を有することができる。反射効果、並びに磁気小板を相応的に整列させる磁石構成
を以下により詳細に説明する。光学的物品が異なる軸線周りに回転するとき互いに異なる
反射効果を生ずるようにすることによって、単一回転軸線を使用する光学的物品に比べて
、光学的物品の複雑さを向上させる。したがって、単一回転軸線を使用する文書に比べる
と、この光学的物品を用いる文書のセキュリティは向上する。
【0010】
図1A~1Eは、漏斗状回転面に基づいて形成された光学的物品102の実施例100
の説明図である。第1ビュー(例えば、基板104を軸線周りに回転しない状態の正面図
)における光学的物品102の拡大図を図1Aの上部に示す。ここで、基板104は法定
紙幣のような文書である。幾つかの実施形態において、基板104は文書を含まないもの
とすることができる。例えば、光学的物品102は、文書に貼付される基板上に形成する
(例えば、光学的物品102を形成する前又は後に)ことができる。
【0011】
図示のように、光学的物品102は漏斗状反射を呈し、この漏斗状反射は、漏斗状回転
面に基づいた磁場による光学的物品102の磁気小板の整列に基づくものであり得る。こ
のことを、以下に図1B及び1Cにつきより詳細に説明する。
【0012】
参照符号106で示すように、基板104(又は光学的物品102)を第1軸線(水平
軸線)周りに回転させるとき、この回転は第1反射効果108を生ぜしめることができる
。ここで、第1反射効果108は、漏斗状反射の頂部の拡大化(水平方向の)及び漏斗状
反射の底部の狭小化(水平方向の)である。このことは、以下により詳細に説明するよう
に、漏斗状回転面を有する磁気小板の整列に基づくものであり得る。幾つかの実施形態に
おいて、第1反射効果は、反射の第1部分(例えば、頂部)の拡大化及び反射の第2部分
(例えば、底部)の狭小化であり得る。
【0013】
参照符号110で示すように、基板104(又は光学的物品102)を第2軸線(垂直
軸線及び/又は第1軸線に直交する軸線)周りに回転させるとき、この回転は、第1反射
効果108とは異なる第2反射効果112を生ぜしめることができる。ここで、第2反射
効果112は、漏斗状反射の頂部の左方シフトとともに、漏斗状反射の底部ポイントがほ
ぼ不動のままでいる。換言すれば、第2反射効果は、反射の第1部分の第1側方移動(例
えば、漏斗状反射の頂部の左方又は右方へのシフト)とすることができ、この第1側方移
動は、反射の第2部分の第2側方移動よりも大きい(例えば、底部ポイントがほぼ不動の
ままでいる)。
【0014】
図1Bは、図1Aに示した光学的物品102を作成するのに使用した回転面、並びに回
転面を作成するのに使用した曲線の実施例を示す。この曲線を参照符号114で示す。図
示のように、この曲線は自然対数に基づいて規定することができる。幾つかの実施形態に
おいて、この曲線は、対数及び/又はそれに類するような、他の数学的関係性に基づいて
規定することができる。参照符号116で示すように、回転面は、Y軸周りに曲線を回転
させることによって作成することができる。回転面のチェック模様表示は分かり易くする
ため参照符号118で示す。
【0015】
図1Bに示す回転面は単に説明目的で示す。磁気小板を整列させるのに使用される正確
な磁場は、磁石作製における変動、磁場整形化における困難さ、又は他の理由に起因して
図1Bに示したのとは異なることがあり得る。例えば、磁場の偏差は、約0.7937
5mm~50.8mm(0.03125インチ~2インチ)の範囲内で変動することができ
、又は設計者の選択及び磁石サイズの選択に基づいて一層変動し得る。本明細書記載の回
転面は単に例示的であり、かつ説明目的のために提示されると理解されたい。
【0016】
図1Cは、図1Bにおける参照符号116及び118によって示した回転面に近似する
磁場を提供することができる磁石120の実施例を示す。光学的物品102の平面を参照
符号122で示す。図から分かるように、このような磁石によって生ずる磁力線は、平面
122内で異なる半径を有することができる。したがって、図1Aに示した漏斗状反射効
果を生ずる光学的物品102は、図1Cに示す磁石120を用いて、図1Bに示す回転面
116、118に基づいて形成することができる。
【0017】
光学的物品102の実施例を図1Dにおける参照符号124によって示す。例えば、図
1Dに示す実施例は、光学的物品102の中心における光学的物品102の断面を示すこ
とができる。図示のように、光学的物品102は反射性磁気小板128が懸濁している有
機結合剤126を有することができる。さらに図示のように、光学的物品102は基板1
30上に設けられる。反射性磁気小板128は、磁力線132に整列することができる。
【0018】
図1Eは、図1Dにおける磁力線132の斜位像を示す。磁力線132によって表され
る磁場の中心軸線は、参照符号136によって特定される記号「x」で示される。図から
分かるように、磁力線132の半径は中心軸線に沿って変化する。図示のように、磁場の
中心軸線はより狭い断面の磁場では基板130の下方にあり、また磁場が拡大するにつれ
て、基板130に向って進行し、また基板130を貫通する。中心軸線の方位が異なる他
の実施形態も可能である。例えば、中心軸線は、全体的に基板の上方にある、全体的に基
板の下方にある、基板に平行である、基板に貫通する、及び/又はこれらに類する形態と
なるよう設けることができる。
【0019】
上述したように、図1A~1Eは例として提示する。他の実施例も可能であり、また図
1A~1Eにつき説明したのとは異なるものとすることができる。
【0020】
図2A及び2Bは、漏斗状回転面に基づいて形成された他の光学的物品における実施例
200の説明図である。実施例200に使用される回転面は、図1A~1Dの実施例10
0に使用されるのとほぼ類似するものとすることができ、またしたがって、図示しない。
【0021】
第1ビュー(例えば、基板204を軸線周りに回転しない状態の正面図)における光学
的物品202の拡大図を図2Aの上部に示す。図示のように、光学的物品202は漏斗状
反射を呈し、この漏斗状反射は、光学的物品202の漏斗状反射よりも、頂部が狭くまた
底部が幅広くなっている。このことは、以下に図2Bにつき説明するように、対応する磁
場を形成するのに使用される磁石の形状及び/又は方位における差に起因するものであり
得る。
【0022】
参照符号206で示すように、基板204(又は光学的物品202)を第1軸線(例え
ば水平軸線)周りに回転させるとき、この回転は第1反射効果208を生ぜしめることが
できる。ここで、第1反射効果208は、漏斗状反射の頂部の拡大化(水平方向の)及び
漏斗状反射の底部の狭小化(水平方向の)である。参照符号210で示すように、基板2
04(又は光学的物品202)を第2軸線(例えば垂直軸線及び/又は第1軸線に直交す
る軸線)周りに回転させるとき、この回転は、第1反射効果208とは異なる第2反射効
果212を生ぜしめる。ここで、第2反射効果212は、漏斗状反射の頂部の左方シフト
である。
【0023】
図2Bは、光学的物品202を作成するのに使用した回転面に近似する磁場を生ずる磁
石214のセットの実施例を示す。光学的物品202の平面を参照符号216で示す。図
示のように、磁石214のセットにおける配列は、図1Cに示す磁場と比べると細長の形
状を有する磁場を生ずる。幾つかの態様においては、2個より多い数の磁石214を使用
することができる。例えば、任意な数の磁石214を使用して図示の磁場を生成すること
ができる。したがって、図2Aに示す漏斗状反射効果を付与する光学的物品202は、図
2Bに示す磁石214のセットを使用して形成することができる。
【0024】
上述したように、図2A及び2Bは単に実施例として提示する。他の実施例も可能であ
り、また図2A及び2Bにつき説明したのとは異なるものとすることができる。
【0025】
図3A~3Dは、鞍状回転面に基づいて形成された光学的物品302の実施例300の
説明図である。第1ビュー(例えば、基板304を軸線周りに回転しない状態の正面図)
における光学的物品302の拡大図を図3Aの上部に示す。図示のように、光学的物品3
02は鞍状反射を呈する(鞍状形状の例として、以下に詳細に説明する図3Cの鞍状回転
面を参照)。
【0026】
参照符号306で示すように、光学的物品302を第1軸線(例えば水平軸線)周りに
第1方向に回転させるとき、この回転は第1反射効果を生ぜしめることができ、この第1
反射効果においては、反射は端縁が下向きに移動するとともに、中心はほぼ不動のままで
ある。例えば、反射の左側部分及び右側部分は下向きに湾曲し得る。参照符号308で示
すように、光学的物品302を第1軸線周りに第2方向に回転させるとき、反射は端縁が
上向きに移動するとともに、中心はほぼ不動のままである。例えば、反射の左側部分及び
右側部分は上向きに湾曲し得る。図から分かるように、光学的物品302が第1軸線周り
に回転するとき、光学的物品302の反射光帯域によって占められていない領域(例えば
、光学的物品302の頂部中心及び底部中心における三角形区域)は暗いままである。
【0027】
図3Bに参照符号310で示すように、光学的物品302を第2軸線(例えば垂直軸線
及び/又は第1軸線に直交する軸線)周りに第1方向に回転させるとき、この回転は、第
2反射効果を生ぜしめることができる。ここで、第2反射効果は、光学的物品302の左
側半部(例えば第1ハーフ)を明るくし、また光学的物品302の右側半部(例えば第2
ハーフ)を暗くすることである。同様に、参照符号312で示すように、光学的物品30
2を第2軸線周りに第2方向に回転させるとき、この第2反射効果は光学的物品302の
右側半部の明輝度化である。
【0028】
図3Cは、鞍状回転面316、318を作成するのに使用し得る曲線314の実施例を
示す。幾つかの実施形態において、この曲線314は、放物線(例えば、方程式x=b・
+cによって規定される(図3Cには、b及びcは示さない))、又は双曲線とする
ことができ、また鞍状回転面316、318は、放物面又は断片又は双曲放物面とするこ
とができる。
【0029】
図3Dは、光学的物品302を形成するため、鞍状回転面316、318に基づく磁場
を生成するのに使用できる磁石構成の実施例を示す。参照符号320で示すように、磁石
の第1構成は、光学的物品302の平面322に直交する平面と同一平面状にして設けた
ほぼ三角形の磁石を有することができる。例えば、ほぼ三角形の2個の磁石における第1
側面324が平面322に平行かつ平面322から遠位側となるように設け、ほぼ三角形
の2個の磁石における第2側面326が有機結合剤に対して直交する平面内にあり、互い
に接触(又は近接離間)するように設けることができる。参照符号328で示すように、
第2構成は三角形の切欠き330が付いた磁石を有する。幾つかの実施形態において、こ
の第2構成は、中心ポイント334で合体する2個の三角形磁石を使用することができ、
長方形部分332は中心ポイント334から遠位にある。
【0030】
上述したように、図3A~3Dは単なる例として提示する。他の実施例も可能であり、
また図3A~3Dにつき説明したのとは異なるものとすることができる。
【0031】
図4は、本明細書記載の様々な実施形態による光学的物品を形成する例示的プロセス4
00のフローチャートである。図4に記載される操作のうち1つ又はそれ以上は、反射性
磁気小板を含む有機結合剤を設けることができるシステムのようなシステムが有機結合剤
に対して磁場を印加し、また有機結合剤を固化又は硬化することによって実施することが
できる。
【0032】
図4に示すように、プロセス400は、複数の反射性磁気小板を含む有機結合剤を基板
上に設けるステップ(ブロック410)を備える。例えば、有機結合剤は基板上に設ける
ことができる。有機結合剤は、化学反応によって固化又は硬化でき、かつ少なくとも部分
的に透明であるインク又は他の物質とすることができる。幾つかの実施形態において、有
機結合剤は、枚葉送りオフセット印刷機及び輪転オフセット印刷機のための、UVランプ
技術を用いて硬化する高反応性UVインク、例えば、UV硬化性インク(例えば、フリン
トグループ社によるXCURA EVO、フリントグループ社によるUltraking 6100 FAST CURE、
等々)とすることができる。例えば、UV硬化性インクは、4つの成分、すなわち、モノ
マー(単量体)、オリゴマー、顔料、及び光開始剤を含むことができる。モノマーは、イ
ンクの基礎的要素をなすことができ、また硬化したときインクの柔らかさ又は硬さ、並び
に可撓性又は用途タイプを変化させるためのインクの伸び特性のような若干の特性に関与
することができる。インク調合におけるオリゴマーは、広範囲にわたる異なる基板に印刷
するための反応性樹脂及び独自に調合された接着剤成分を含む。顔料は色を付与する。光
開始剤がUV光に被曝するとき、オリゴマー及びモノマーを架橋又は重合化する。
【0033】
有機結合剤は複数の反射性磁気小板を含むことができる。この磁気小板は、約10μm
×10μm×0.5μm~約100μm×100μm×10μmの範囲における寸法を有
するほぼ平坦な粒子を含むことができる。これら粒子は、異なる座標の層を含むことがで
きる。1つ又はそれ以上の層は、外部磁石の磁場内又は外部磁石で磁化することができる
。幾つかの事例において、反射性磁気小板は、多くのセキュリティ顔料粒子のうちの1つ
である。反射性磁気小板は、強磁性合金のような磁気的に軟らかい又は硬い材料から作製
した層を含むことができる。中心コアは反射体として2つ又はそれ以上のアルミニウム層
でコーティングすることができる。アルミニウム層は、MgF、SiO等々のような
透明材料でコーティングすることができる。半透明クロム層を透明材料の頂面にコーティ
ングすることができる。この特別な材料は、セキュリティ光学的可変磁気顔料(OVMP
)として知られている。顔料は、上述のUV硬化性有機結合剤と混合して、重要文書上に
おける偽造防止セキュリティ要素の印刷に使用されるセキュリティ光学的可変磁気インク
(OVMI)を形成することができる。
【0034】
幾つかの実施形態において、基板は文書とすることができる、又は文書に貼付すること
ができる。幾つかの実施形態において、有機結合剤及び小板(及び随意的に基板)は、集
合的に光学的物品と称することができる。
【0035】
さらに図4に示すように、プロセス400は、1つ又はそれ以上の磁石の使用により磁
場を有機結合剤に印加するステップであって、前記磁場は、前記複数の反射性磁気小板を
回転面の少なくとも一部分にほぼ一致するよう整列させるものである、該ステップ(ブロ
ック420)を備える。例えば、磁場は、1つ又はそれ以上の磁石の使用により磁場を有
機結合剤に印加する。幾つかの実施形態において、電場又は電磁場を使用して、複数の反
射性磁気小板を整列させるために有機結合剤に印加すべき磁場を生成することができる。
例えば、電場は、実施例100、200及び/又は300につき説明した形状をほぼ有す
ることができる。磁場は、複数の反射性磁気小板を回転面の少なくとも一部分にほぼ一致
するよう整列させることができる。例えば、磁場は、回転面の少なくとも一部分の形状を
ほぼ有することができる。幾つかの実施形態において、複数の反射性磁気小板は、基板が
第1軸線の周りに回転するとき光学的物品の第1反射効果を生ずるよう整列させることが
できる。さらに、複数の反射性磁気小板は、基板が第2軸線の周りに回転するとき光学的
物品の第2反射効果を生ずるよう整列させることができる。第1反射効果は前記第2反射
効果とは異なるものであるようにすることができる。
【0036】
さらに図4に示すように、プロセス400は、有機結合剤を固化又は硬化させるステッ
プ(ブロック430)を備えることができる。例えば、有機結合剤(例えば、インク)は
固化又は硬化することができる。このことは、磁場(電場又は電磁場)との整列状態に反
射小板をロックすることができる。幾つかの実施形態において、有機結合剤は、硬化技術
及び/又はこれに類する技術に基づいてUV光を用いて、又は熱を用いて固化又は硬化す
ることができる。
【0037】
プロセス400は、以下に説明するような任意な単独の実施形態又若しくは実施形態の
任意な組合せ及び/又は本明細書記載の1つ又はそれ以上の他のプロセスと関連する追加
の実施形態を含むことができる。
【0038】
幾つかの実施形態において、回転面は自然対数に基づいて規定される。幾つかの実施形
態において、回転面はほぼ漏斗状の形状とする。幾つかの実施形態において、回転面は放
物線又は双曲線に基づいて規定される。幾つかの実施形態において、回転面はほぼ双曲放
物面の形状とする。幾つかの実施形態において、第1軸線は水平軸線とし、また第2軸線
は垂直軸線とする。幾つかの実施形態において、第1軸線は第2軸線に対して直交する。
【0039】
幾つかの実施形態において、1つ又はそれ以上の磁石は、互いに平行に設けられた2つ
の磁石を含み、2つの磁石のコーナーは切除又は丸みを付ける。幾つかの実施形態におい
て、1つ又はそれ以上の磁石は、互いに同一平面となるよう設けられたほぼ三角形の2つ
の磁石を含む。幾つかの実施形態において、ほぼ三角形の2つの磁石の第1側面は有機結
合剤に平行かつ有機結合剤から遠位側となり、またほぼ三角形の2つの磁石の第2側面は
有機結合剤に直交しかつ互いに接触するよう設けられる。幾つかの実施形態において、1
つ又はそれ以上の磁石は、2又はそれ以上の三角形切欠きが付いた磁石を含む。
【0040】
幾つかの実施形態において、第1反射効果は、光学的物品からの反射の第1部分の拡大
化かつ光学的物品からの反射の第2部分の狭小化である。幾つかの実施形態において、第
2反射効果は、光学的物品からの反射の第1部分の第1側方移動であり、この第1側方移
動は光学的物品からの反射の第2部分の第2側方移動よりも大きいものである。
【0041】
幾つかの実施形態において、第1反射効果は、光学的物品からの反射の左側部分及び右
側部分の第1移動であり、この第1移動は光学的物品からの反射の中心部分の第2移動よ
りも大きいものである。幾つかの実施形態において、第2反射効果は、光学的物品からの
反射の第1半部における明輝化であり、また光学的物品からの反射の第2半部における暗
黒化である。
【0042】
図4はプロセス400の例示的ブロックを示すが、幾つかの実施形態において、プロセ
ス400は、追加のブロック、より少ないブロック、異なるブロック、又は図4に示す配
列とは異なる配列にしたブロックを含むことができる。付加的又は代案的に、プロセス4
00のブロックのうち2つ又はそれ以上を並列的に実施することができる。
【0043】
このようにして、光学的物品を異なる軸線周りに回転させるときに異なる反射効果を生
ずる。このことは光学的物品の複雑さを向上させることができる。このようにして、この
光学的物品を使用する文書のセキュリティは向上する。
【0044】
上述の開示は図解及び説明を提供するが、排他的又は実施形態を開示された通りの形態
に限定することを意図するものではない。変更及び改変は、上述の開示を考慮して可能で
あり、又は実施形態の実施から知得することができる。
【0045】
本明細書に使用されるように、用語「コンポーネント」は、ハードウェア、ファームウ
ェア並びに/又はハードウェア及びソフトウェアの組合せとして広く解されることを意図
する。
【0046】
本明細書記載のシステム及び/又は方法は、ハードウェア、ファームウェア又はハード
ウェア及びソフトウェアの組合せの異なる形態で実装することができる。これらシステム
及び/又は方法を実現するのに使用される実際の専用制御ハードウェア又はソフトウェア
コードは実施形態を限定しない。したがって、システム及び/又は方法における運用及び
挙動は特定ソフトウェアコードを参照することなく、本明細書で説明したものであり、ソ
フトウェア及びハードウェアは、本明細書記載の説明に基づいてシステム及び/又は方法
を実現するよう設計することができると理解されたい。
【0047】
特徴の特別な組合せを特許請求の範囲に記載し、及び/又は本明細書で開示したが、こ
れら組合せは可能な実施形態の開示を制限することを意図しない。実際、これら特徴の多
くは、特許請求の範囲に記載されない、及び/又は本明細書で開示されないやり方で組み
合わせることができる。特許請求の範囲で列挙される各従属請求項は、1つの請求項にの
み直接従属するが、可能な実施形態の開示は、請求項セットにおけるすべての他の請求項
と組み合わせた各従属請求項を含む。
【0048】
本明細書に使用される要素、行為又は命令のいずれも、そうであると明示しない限り、
厳密又は必須であると解すべきでない。本明細書に使用される冠詞「a」及び「an」は、
1つ又はそれ以上の項目を含むことを意図し、また「1つ又はそれ以上の(one or more
)」と互換的に使用することができる。さらに、本明細書に使用される用語「セット(se
t)」は1つ又はそれ以上の項目(例えば、関連項目、無関連項目、関連項目及び無関連
項目の組合せ、等々)を含むことを意図し、また「1つ又はそれ以上の」と互換的に使用
することができる。単に1つの項目を意図する場合、用語「1つ(one)」又は類似の言
葉遣いを使用する。さらに、本明細書に使用される用語「has」、「have」、「having」
又はそれに類する用語は、制約がない用語であることを意図する。さらに、語句「に基づ
いて(based on)」はそれ以外を明示しない限り「に少なくとも部分的に基づいて(base
d, at least in part, on)」を意味することを意図する。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図2A
図2B
図3A
図3B
図3C
図3D
図4