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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】X線遮蔽具及びX線遮蔽セット
(51)【国際特許分類】
   G21F 3/00 20060101AFI20230612BHJP
   G21F 1/06 20060101ALI20230612BHJP
   A61B 6/10 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
G21F3/00 G
G21F1/06
A61B6/10 303
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022157164
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2023-02-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522385957
【氏名又は名称】重光 芳政
(74)【代理人】
【識別番号】100195051
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 海幹
(72)【発明者】
【氏名】重光 芳政
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-190775(JP,A)
【文献】特開2013-210360(JP,A)
【文献】特開2013-130456(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167330(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21F 3/00
G21F 1/06
G21K 3/00
A61B 6/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線発生装置の射出口と前記射出口に重置されるX線カットフィルターとの間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、
前記X線カットフィルターの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体と、
前記射出口を有する前記X線発生装置の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体と、からなり、
前記上シート体は、前記射出口を挿通する上挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、前記下シート体は、前記射出口を挿通する下挿通孔を穿設した前記X線遮蔽材で形成し、
前記上挿通孔と前記下挿通孔とが連通するように、前記上シート体と前記下シート体とを一体に形成したことを特徴とするX線遮蔽具。
【請求項2】
前記上シート体には、前記上シート体で前記X線カットフィルターの外周面を囲繞して固定自在とする固定部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具。
【請求項3】
記上シート体に前記X線カットフィルターから水平方向に突出するベルト取付け部を挿通自在とする係合孔を二箇所穿設したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具。
【請求項4】
前記射出口の外径に近似した内径の基台孔を形成した前記X線遮蔽材からなる円環状のリング体を、前記上挿通孔と前記下挿通孔と前記基台孔とが連通するように、前記上シート体と前記下シート体との間隙、若しくは前記下シート体の下部、又は前記上シート体の上部に連設して一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具。
【請求項5】
上下に分割自在の円筒状の外形をなす筐体の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスを重設して外端面を全周に渡り前記X線遮蔽材で一体に囲繞して配設した前記X線カットフィルターと、請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線遮蔽具と、からなるX線遮蔽セット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療現場等で用いられるX線発生装置から照射される不要なX線を外部に放射させないX線遮蔽具及びX線遮蔽セットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療現場では検査や治療のためにX線発生装置が用いられているが、射出口から照射されるX線は対象の患者のみならず周辺の医師や看護師等にも放射されてしまうという問題を有している。
【0003】
また、射出口から漏洩して放射されるX線の強度が低くても、医師や看護師等は複数回の作業で累積の被爆線量も膨大となり健康被害が懸念されている。
【0004】
このような問題に対して最近では、本発明者が開発した放射線防護用固定式バリア(販売名:X線カットフィルターMJP、医療機器届出番号:40B1X10013000022)のようにX線発生装置の射出口に設置して高強度の一次X線を大幅に低減しつつも撮像に影響を与えないX線カットフィルターが患者だけでなく医師や看護師等への不要な被爆を最小限に抑止できるとして期待されている。
【0005】
また、このようなX線カットフィルターは、高額で膨大な数の既存のX線発生装置に後付けできる点でも有利であり早急な導入が望まれる。
【0006】
このような状況において、例えば、特許文献1にはX線装置用ハウベに係る技術が開示されており、本技術によれば、ハウベをマグネシウムが主成分の鉛合金を用いて成形することで射出口を除いてハウベの外方への不要なX線の放射を防止することができるとされている。
【0007】
また、例えば、特許文献2には医療用X線装置の照射筒に係る技術が開示されており、本技術によれば、照射筒の筒先を鉛材等で成型することで筒先周縁からの不要なX線の放射を防止することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開平05-196795号公報
【文献】実開平07-013305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
確かに、特許文献1、2に係る技術によれば、X線遮蔽材でハウベや照射筒を形成すれば射出口以外からの不要なX線の放射を防止できる点で優れている。
【0010】
しかしながら、このようなX線発生装置は、X線遮蔽材として鉛やアンチモンと言った比重が重い金属を合金として筐体に用いたとしても、高強度の一次X線が射出口から照射されてしまうという問題は解決せず、患者や医師等への被爆対策としては不十分である。
【0011】
そこで、高強度の一次X線を低減しつつ撮像に影響を与えない上述のようなX線カットフィルターを射出口に重置して設置すれば更なる被爆対策になるものの、X線カットフィルターでカットされ内部で乱反射した一次X線や他の不要なX線がX線発生装置の射出口周縁とX線カットフィルターの重置箇所から少なからず漏洩して放射されてしまうという懸念が残る。
【0012】
加えて、重量やコストを軽減させるためにX線カットフィルターの筐体を鉛等のX線の遮蔽に必ずしも適しているとは言い難い軽量なアルミニウム等の金属で形成した場合は、当該筐体から少なからずのX線の漏洩も懸念される。
【0013】
本発明は、以上のような事情に鑑みてなされたものであり、既存のX線発生装置に後付けでX線カットフィルターを設置しても不要なX線の外部への放射を遮断することができるX線遮蔽具及びX線遮蔽セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
以上のような目的を達成するために、本発明は以下のようなものを提供する。
【0015】
請求項1に係る発明では、X線発生装置の射出口と前記射出口に重置されるX線カットフィルターとの間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、前記X線カットフィルターの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体と、前記射出口を有する前記X線発生装置の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体と、からなり、前記上シート体は、前記射出口を挿通する上挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、前記下シート体は、前記射出口を挿通する下挿通孔を穿設した前記X線遮蔽材で形成し、前記上挿通孔と前記下挿通孔とが連通するように、前記上シート体と前記下シート体とを一体に形成したことを特徴とするX線遮蔽具を提供せんとする。
【0016】
請求項2に係る発明では、前記上シート体には、前記上シート体で前記X線カットフィルターの外周面を囲繞して固定自在とする固定部を形成したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具を提供せんとする。
【0017】
請求項3に係る発明では、前記上シート体に前記X線カットフィルターから水平方向に突出するベルト取付け部を挿通自在とする係合孔を二箇所穿設したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具を提供せんとする。
【0018】
請求項4に係る発明では、前記射出口の外径に近似した内径の基台孔を形成した前記X線遮蔽材からなる円環状のリング体を、前記上挿通孔と前記下挿通孔と前記基台孔とが連通するように、前記上シート体と前記下シート体との間隙、若しくは前記下シート体の下部、又は前記上シート体の上部に連設して一体に形成したことを特徴とする請求項1に記載のX線遮蔽具を提供せんとする。
【0019】
請求項5に係る発明では、上下に分割自在の円筒状の外形をなす筐体の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスを重設して外端面を全周に渡り前記X線遮蔽材で一体に囲繞して配設した前記X線カットフィルターと、請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線遮蔽具と、からなるX線遮蔽セットを提供せんとする。
【発明の効果】
【0020】
請求項1記載の発明によれば、X線発生装置の射出口と射出口に重置されるX線カットフィルターとの間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、X線カットフィルターの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体と、射出口を有するX線発生装置の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体と、からなり、上シート体は、射出口を挿通する上挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、下シート体は、射出口を挿通する下挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、上挿通孔と下挿通孔とが連通するように、上シート体と下シート体とを一体に形成したことより、上シート体を上方に折曲することで射出口及びX線カットフィルターの外周面から外方に漏洩するX線を遮蔽し、下シート体を下方に折曲することで射出口から外方に漏洩するX線を遮蔽することができる。
【0021】
請求項2記載の発明によれば、上シート体には、上シート体でX線カットフィルターの外周面を囲繞して固定自在とする固定部を形成したことより、X線カットフィルターの外周面から外方に漏洩するX線を安定的に遮蔽することができる。
【0022】
請求項3記載の発明によれば、上シート体にX線カットフィルターから水平方向に突出するベルト取付け部を挿通自在とする係合孔を二箇所穿設したことより、両方のベルト取付け部を係合孔に挿通し、一方のベルト取付け部にベルトを装着しつつX線発生装置の下部を跨いで他方のベルト取付け部で締結すればX線発生装置にX線カットフィルターを安定して強固に固定することができる。
【0023】
請求項4記載の発明によれば、射出口の外径に近似した内径の基台孔を形成したX線遮蔽材からなる円環状のリング体を、上挿通孔と下挿通孔と基台孔とが連通するように、上シート体と下シート体との間隙、若しくは下シート体の下部、又は上シート体の上部に連設して一体に形成したことより、連通する上挿通孔と下挿通孔の内周強度を向上でき、更に、上挿通孔と下挿通孔を射出口に容易に案内することができる。
【0024】
請求項5記載の発明によれば、上下に分割自在の円筒状の外形をなす筐体の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスを重設して外端面を全周に渡りX線遮蔽材で一体に囲繞して配設したX線カットフィルターと、請求項1乃至4の何れか1項に記載のX線遮蔽具と、からなるX線遮蔽セットであることより、格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスの外端面からのX線の漏洩を防止でき、更に、重設した2つのガラスを上下の筐体の内部に容易に内装することができ、しかも、X線遮蔽具とセットにすることで不要なX線の外部への放射をより確実に遮断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の装着対象とする装置の一例を示す斜視図である。
図2】(a)はX線発生装置とX線カットフィルターを示し、(b)はX線カットフィルターを射出口に装着した様子を示す部分斜視図である。
図3】(a)は下シート体の平面図で、(b)は上シート体の平面図で、(c)は下シート体に接着剤を塗布した平面図で、(d)はX線遮蔽具の平面透視図と正面図と部分拡大断面図である。
図4】(a)の左図はX線遮蔽具の平面透視図で右図は90度回転させた平面透視図で、(b)の左図はX線発生装置の射出口にX線遮蔽具と簡易的なX線カットフィルターを位置させた正面図で右図はその左側面図で、(c)の左図は装着したX線遮蔽具の下シート体を下方に折曲した正面図で右図はその左側面図である。
図5】(a)は具体的なX線カットフィルターの斜視図で、(b)はX線発生装置の射出口にX線遮蔽具とX線カットフィルターを位置させた平面図で、(c)の左図は装着したX線遮蔽具の下シート体を下方に折曲した正面図で右図はその左側面図で、(d)の左図は上シート体をX線カットフィルター側に折曲した正面図で右図はその左側面図である。
図6】(a)は変形例1に係るX線遮蔽具の平面図で、(b)は固定部で上シート体をX線カットフィルターに固定する様子を示す左側面図で、(c)は固定後の左側面図である。
図7】(a)は他の変形例1に係るX線遮蔽具の平面図で、(b)は固定部で上シート体をX線カットフィルターに固定する様子を示す左側面図で、(c)は固定後の左側面図である。
図8】X線カットフィルターの斜視図と変形例2に係るX線遮蔽具の分解斜視図である。
図9】(a)の左図は変形例2に係るX線遮蔽具の平面透視図で右図はX線カットフィルターの平面図で、(b)はX線発生装置の射出口にX線遮蔽具とX線カットフィルターを位置させた平面図で、(c)の左図はX線カットフィルターをベルトでX線発生装置に固定した左側面図で右図はその正面図である。
図10】(a)は変形例3に係るX線遮蔽具の分解斜視図で、(b)は(a)のX線遮蔽具の平面透視図と正面図と部分拡大断面図である。
図11】(a)は他の変形例3に係るX線遮蔽具の分解斜視図で、(b)は(a)のX線遮蔽具の平面透視図と正面図で、(c)は他の変形例3に係るX線遮蔽具の分解斜視図で、(d)は(c)のX線遮蔽具の平面透視図と正面図である。
図12】(a)はX線カットフィルターの斜視図で、(b)は(a)の断面図である。
図13】X線カットフィルターの分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係るX線遮蔽具の要旨は、X線発生装置の射出口と射出口に重置される略円筒状の外形をなすX線カットフィルターとの間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、X線カットフィルターの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体と、射出口の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体と、からなり、上シート体は、射出口の外径に近似した上挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、下シート体は、射出口の外径に近似した下挿通孔を穿設したX線遮蔽材で形成し、上挿通孔と下挿通孔とが連通するように、上シート体と下シート体とを一体に形成したことを特徴とする。すなわち、既存のX線発生装置に後付けでX線カットフィルターを設置しても不要なX線の外部への放射を遮断することができるX線遮蔽具の提供を図ろうとするものである。
【0027】
また、本発明に係るX線遮蔽セットを構成するX線カットフィルターの要旨は、上下に分割自在の略円筒状の外形をなす筐体の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスを重設して外端面を全周に渡りX線遮蔽材で一体に囲繞して配設したことを特徴とする。すなわち、格子フィルターガラスとダメージフィルターガラスの外端面からのX線の漏洩を防止でき、更に、重設した2つのガラスを上下の筐体の内部に容易に内装することができ、しかも、X線遮蔽具とセットにすることで不要なX線の外部への放射をより確実に遮断することができるX線遮蔽セットの提供を図ろうとするものである。
【0028】
以下、本発明に係るX線遮蔽具1及びX線遮蔽セットについて図面を参照しながら説明する。また、本説明中において左右同一又は左右対称の構造や部品については、原則として同一の符号を付し、左右何れか一方のみを説明して、他方については説明を適宜省略する。
【0029】
また、本発明に係るX線発生装置Wとは、例えば、図1に示すように、X線発生部WとX線検出部Rを有し、間隙に寝台Bを備えたX線撮影装置MのX線発生部W(以下、X線発生装置Wとする)を示しており、X線撮影装置Mは、X線発生装置WとX線検出部Rを外観視C字状のCアームfの両端部に対向して配設し、Cアームfの中途部を間接アームgを介して水平軸線周りに回転自在に構成し、間接アームgは基台部hを介して垂直軸線周りに回転自在に構成されている。
【0030】
また、寝台Bは、患者が横たわるに十分な長さと幅を有する寝板jの一方の端部が間接ユニットkを介して垂直軸線周りに回転自在に構成し、間接ユニットkと連設する支柱部nは上下動自在に構成している。
【0031】
このような構成により、寝板jに横たわった患者の観察部位に対してX線発生装置Wから射出したX線が患者の身体を透過してX線検出部Rへと入射し観察部位のレントゲン画像を様々な角度から得ることができる。
【0032】
なお、本発明に係るX線発生装置Wは、X線発生装置Wは上述した構成のX線撮影装置Mに限定されず、更に、撮影装置に限らず治療装置であっても対象となり、しかも、照射対象が人であることを限定するものでもない。
【0033】
また、本発明に係るX線カットフィルターとは、本発明者が開発した放射線防護用固定式バリア(販売名:X線カットフィルターMJP、医療機器届出番号:40B1X10013000022)のようにX線発生装置Wの射出口eに設置して高強度の一次X線を大幅に低減しつつも撮像に影響を与えないよう構成したものを言う。
【0034】
X線カットフィルター100の構成の概要は、図2(a)に示すように、略円筒状の外形をなす筐体101の内部にフィルターガラス106(格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106b)を配設したもので、筐体101の下部から水平方向に突出したフランジ111を対向して二箇所形成している。
【0035】
このようなX線カットフィルター100は、図2(a)、(b)に示すように、X線発生装置Wの射出口eに重置して使用され、状況に応じて図示しない帯状体をフランジ111の上面とX線発生装置Wの下部に巻回してX線発生装置WとX線カットフィルター100が挟持固定される。
【0036】
そこで、本発明に係るX線遮蔽具1は、X線発生装置Wの射出口eに重置して使用されるX線カットフィルター100との間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものとなる。
【0037】
本発明の実施形態に係るX線遮蔽具1は、図3(a)~(d)に示すように、X線カットフィルター100の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体3と、射出口eの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体12と、からなり、上シート体3は、射出口eの外径に近似した上挿通孔4を穿設したX線遮蔽材で形成し、下シート体12は、射出口eの外径に近似した下挿通孔13を穿設したX線遮蔽材で形成し、上挿通孔4と下挿通孔13とが連通するように、上シート体3と下シート体12とを一体に形成している。
【0038】
上下シート体3,12を構成するX線遮蔽材は、X線を遮蔽するものであればゴム製や遮蔽樹脂PVC製等材料に特段の限定はないが、例えば、厚さ1mm以下の放射線遮蔽ゴムシート(株式会社十川ゴム製:RSL-070)を加工して用いることができる。
【0039】
具体的には、上シート体3は、図3(b)に示すように、中央に射出口eの外径に近似した上挿通孔4を穿設した平面視ドーナツ状の外形で、下シート体12は、図3(a)に示すように、中央に射出口eの外径に近似した下挿通孔13を穿設した平面視略十字状の外形に形成している。
【0040】
また、上シート体3の半径は、X線カットフィルター100の高さに上挿通孔4の半径を足した程度とし、上シート体3を上方に折曲した際に上シート体3がX線カットフィルター100の周面を被覆する程度に形成している。
【0041】
また、下シート体12は、図2(a)に示すように、射出口eを上方とした際に射出口e近傍を被覆自在とするために、射出口eを配設したX線発生装置Wの上面u、及び両側面s,sに下シート体12が倣うよう、図3(a)に示すように、下挿通孔13を中心として矩形状の第一突片14,14を対向配置すると共に第一突片14,14と直交する方向に矩形状の第二突片15,15を対向配置している。
【0042】
第一突片14,14はX線発生装置Wの両側面s,sを被覆し、第二突片15,15はX線発生装置Wの上面uを被覆する。
【0043】
このような上下シート体3,12は、図3(c)に示すように、下シート体12の上面の下挿通孔13周縁に円環状に接着剤20を塗布し、その上に上シート体3の下面を上挿通孔4と下挿通孔13が連通するように載置し、図3(d)に示すように、上下シート体3,12を一体に接合して形成している。
【0044】
なお、上下シート体3,12の接合方法は接着剤20に限定されるものではなく、例えば、縫合や溶着、その他の方法であっても上下挿通孔4,13の周縁で一体に接合できればよい。
【0045】
このように形成した図4(a)に示すX線遮蔽具1は、図4(b)、図5(b)の如くX線発生装置Wの射出口eの上方に上下挿通孔4,13を位置させ、更にその上方に図5(a)のようなX線カットフィルター100を位置させて、図4(c)、図5(c)の如くX線発生装置Wに順次載置する。
【0046】
そして、可撓性を有するX線遮蔽具1の下シート体12は、第一突片14がX線発生装置Wの両側面sを、第二突片15が上面uを被覆すると共に、可撓性を有するX線遮蔽具1の上シート体3は、図5(d)に示すように、上方に折曲することでX線カットフィルター100の周面を被覆する。
【0047】
この場合、上方に折曲した上シート体3がX線カットフィルター100の周面を確実に被覆するように、折曲した上シート体3の外方から図示しないゴムバンド等の締結具を囲繞するように固定してもよい。
【0048】
なお、上下シート体3,12は上述した形状に限定されるものではなく、X線発生装置WやX線カットフィルター100の形状に応じて任意に形成することができる。
【0049】
次に、上述したX線遮蔽具1の構成を基本とした変形例1~3について図面を用いて具体的に詳述する。
【0050】
[変形例1]
変形例1に係るX線遮蔽具1Aは、上シート体3でX線カットフィルター100の外周面を囲繞して固定自在とする固定部6を形成している。
【0051】
固定部6は、図6(a)~(c)に示すように、上シート体3の下面に表裏で係合自在の一対の面ファスナー7を備え、X線カットフィルター100の側に折曲した上シート体3を面ファスナー7で外方から巻回して締結自在に構成している。
【0052】
また、固定部6は、例えば、図7(a)~(c)に示すように、上シート体3の外端縁を締結紐8が挿通自在となるように縫合し、X線カットフィルター100の側に折曲した上シート体3が締結紐8を絞ることで巾着の如くX線カットフィルター100に固定されるよう構成してもよい。
【0053】
このように、固定部6は、X線カットフィルター100の側に折曲した上シート体3がX線カットフィルター100に固定される構成であれば如何なる構造であっても本発明の要旨の範囲内である。
【0054】
[変形例2]
変形例2に係るX線遮蔽具1Bは、図8図9(a)、(b)に示すように、上挿通孔4の近傍の上シート体3にX線カットフィルター100の他の仕様として備えた水平方向に突出するベルト取付け部113を挿通自在とする係合孔10を二箇所穿設している。
【0055】
本変形例に係るX線カットフィルター100は、図8図9(c)に示すように、平面視コ字状のベルト取付け部113を筐体101の外周下部に対向して配設することで、一方のベルト取付け部113にベルト114を装着しつつX線発生装置Wの下部を跨いで他方のベルト取付け部113で締結すればX線発生装置WにX線カットフィルター100を安定して強固に固定することができるものである。
【0056】
係合孔10は、ベルト取付け部113を挿通自在とする矩形状に穿設しており、X線カットフィルター100の側に折曲した上シート体3の係合孔10にベルト取付け部113を挿通することで上シート体3の外部にベルト取付け部113が露出する。
【0057】
従って、一方のベルト取付け部113にベルト114を装着しつつX線発生装置Wの下部を跨いで他方のベルト取付け部113で締結すればX線遮蔽具1を装着した状態でX線発生装置WにX線カットフィルター100を安定して強固に固定することができる。
【0058】
[変形例3]
変形例3に係るX線遮蔽具1Cは、射出口eの外径に近似した内径の基台孔18を形成したX線遮蔽材からなる円環状のリング体17を、上挿通孔4と下挿通孔13と基台孔18とが連通するように、上シート体3と下シート体12との間隙(図10(a))、若しくは下シート体12の下部(図11(a))、又は上シート体3の上部(図11(c))に連設して一体に形成している。
【0059】
リング体17を構成するX線遮蔽材は、X線を遮蔽するものであればゴム製や遮蔽樹脂PVC製等材料に特段の限定はないが、例えば、厚さ1mm~10mmの放射線遮蔽ゴムシート(株式会社十川ゴム製:RSL-070)を加工して用いることができる。
【0060】
図10(a)、(b)に示すように、上シート体3と下シート体12との間隙にリング体17を配設する際は、リング体17の上面又は上シート体3の下面、及びリング体17の下面又は下シート体12の上面に接着剤20を塗布して各々を一体に接続することができる。
【0061】
また、図11(a)、(b)に示すように、下シート体12の下部にリング体17を配設する際は、リング体17の上面又は下シート体12の下面にも接着剤20を塗布して各々を一体に接続することができ、図11(c)、(d)に示すように、上シート体3の上部にリング体17を配設する際は、リング体17の下面又は上シート体3の上面に接着剤20を塗布して各々を一体に接続することができる。
【0062】
X線遮蔽具1Cをこのように構成することで、連通する上挿通孔4と下挿通孔13の内周強度を向上でき、更に、上挿通孔4と下挿通孔13を射出口eに容易に案内することができる。
【0063】
次に、本実施形態に係る上述したX線遮蔽具1、(1A,1B,1C)と共に用いることでX線の遮蔽をより確実とするX線カットフィルター100について図面を用いて具体的に詳述する。
【0064】
[X線カットフィルター]
X線カットフィルター100は、図12(a)、(b)、図13に示すように、上下に分割自在の略円筒状の外形をなす筐体101の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106bを重設して外端面を全周に渡りX線遮蔽材2で一体に囲繞して配設している。
【0065】
ダメージフィルターガラス106bは、ナノ金属が含まれたフィルターであり、一次X線量を大幅に低減させるものである。
【0066】
また、格子フィルターガラス106aは、ダメージフィルターガラス106bを透過したX線の散乱を抑制するフィルターである。
【0067】
筐体101は、アルミニウム材の切削により形成し、上筐体101aは中央を照射窓102として穿設した平面視円環状で、照射窓102の内径は格子フィルターガラス106aの外径よりも小さく形成し、上脱落防止片103を内周に渡り水平方向に突設し、照射窓102からの格子フィルターガラス106aの脱落を防止している。
【0068】
また、上脱落防止片103の下方の内径は、格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106bの外径よりも若干だけ大きな内径として2つのフィルターガラス106a,106bを重設して内装可能な高さに形成している。
【0069】
また、上筐体101aの周面の下半部は、切削により小径に形成した外周面に雄ネジ104を螺刻して下筐体101bと螺合するよう構成している。
【0070】
下筐体101bは、上筐体101aの直径と同径の外観視略円筒状で、下筐体101bの内周面の上部は、切削により大径に形成した内周面に雌ネジ108を螺刻して上筐体101aと螺合するよう構成している。
【0071】
また、雌ネジ108の直下の内周面には、フィルターガラス106の外径よりも小さく形成した下脱落防止片109を内周に渡り水平方向に突設し、フィルターガラス106の下方への脱落を防止している。
【0072】
また、下筐体101bの下部から水平方向に突出したフランジ111を対向して二箇所形成すると共に、2つのフランジ111の間隙には垂直方向の切削により形成した垂直面に雌ネジ孔112を隣接して2箇所形成することで平面視コ字状のベルト取付け部113をボルト115で螺着固定自在に形成している。
【0073】
また、円盤状の同径の格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106bは、重設して外端面を全周に渡りX線遮蔽材2(遮蔽テープ)で一体に囲繞して筐体101の内部に配設している。
【0074】
ここで使用されるX線遮蔽材2は、X線を遮蔽するものであればゴム製や遮蔽樹脂PVC製等材料に特段の限定はないが、例えば、厚さ0.5mmや1.0mm程度の薄い鉛テープ(ヨシザワLA株式会社製)を加工して用いることができる。
【0075】
このようなX線カットフィルター100と上述したX線遮蔽具1、(1A,1B,1C)とでX線遮蔽セットを構成している。
【0076】
以上、説明したように、本実施形態に係るX線遮蔽具1、(1A,1B,1C)及びX線遮蔽セットにおいて、X線遮蔽具1は、X線発生装置Wの射出口eと射出口eに重置される略円筒状の外形をなすX線カットフィルター100との間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、X線カットフィルター100の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体3と、射出口eを有するX線発生装置Wの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体12と、からなり、上シート体3は、射出口eの外径に近似した上挿通孔4を穿設したX線遮蔽材で形成し、下シート体12は、射出口eの外径に近似した下挿通孔13を穿設したX線遮蔽材で形成し、上挿通孔4と下挿通孔13とが連通するように、上シート体3と下シート体12とを一体に形成したことより、上シート体3を上方に折曲することで射出口e及びX線カットフィルター100の外周面から外方に漏洩するX線を遮蔽し、下シート体12を下方に折曲することで射出口eから外方に漏洩するX線を遮蔽することができる。
【0077】
また、上シート体3には、上シート体3でX線カットフィルター100の外周面を囲繞して固定自在とする固定部6を形成したことより、X線カットフィルター100の外周面から外方に漏洩するX線を安定的に遮蔽することができる。
【0078】
また、上挿通孔4の近傍の上シート体3にX線カットフィルター100から水平方向に突出するベルト取付け部113を挿通自在とする係合孔10を二箇所穿設したことより、両方のベルト取付け部113を係合孔10に挿通し、一方のベルト取付け部113にベルト114を装着しつつX線発生装置Wの下部を跨いで他方のベルト取付け部113で締結すればX線発生装置WにX線カットフィルター100を安定して強固に固定することができる。
【0079】
更に、射出口eの外径に近似した内径の基台孔18を形成したX線遮蔽材からなる円環状のリング体17を、上挿通孔4と下挿通孔13と基台孔18とが連通するように、上シート体3と下シート体12との間隙、若しくは下シート体12の下部、又は上シート体3の上部に連設して一体に形成したことより、連通する上挿通孔4と下挿通孔13の内周強度を向上でき、更に、上挿通孔4と下挿通孔13を射出口eに容易に案内することができる。
【0080】
しかも、上下に分割自在の略円筒状の外形をなす筐体101の内部に円盤状の同径の格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106bを重設して外端面を全周に渡りX線遮蔽材で一体に囲繞して配設したX線カットフィルター100とX線遮蔽具1からなるX線遮蔽セットにより、格子フィルターガラス106aとダメージフィルターガラス106bの外端面からのX線の漏洩を防止でき、更に、重設した2つのフィルターガラス106a,106bを上下の筐体101の内部に容易に内装することができ、しかも、X線遮蔽具1とセットにすることで不要なX線の外部への放射をより確実に遮断することができる。
【0081】
以上、本発明の本実施形態に係るX線遮蔽具1及びX線遮蔽セットの好ましい実施形態について説明したが、本発明は特定の実施形態に限定されるものではなく、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
e 射出口
W X線発生装置
1 X線遮蔽具
1A X線遮蔽具(変形例1)
1B X線遮蔽具(変形例2)
1C X線遮蔽具(変形例3)
2 X線遮蔽材
3 上シート体
4 上挿通孔
6 固定部
10 係合孔
12 下シート体
13 下挿通孔
17 リング体
18 基台孔
100 X線カットフィルター
101 筐体
106a 格子フィルターガラス
106b ダメージフィルターガラス
113 ベルト取付け部
【要約】
【課題】既存のX線発生装置に後付けでX線カットフィルターを設置しても不要なX線の外部への放射を遮断することができるX線遮蔽具及びX線遮蔽セットを提供する。
【解決手段】本発明に係るX線遮蔽具1は、X線発生装置Wの射出口eと射出口eに重置されるX線カットフィルター100との間隙に装着して不要なX線の外部への放射を遮断するものであって、X線カットフィルター100の側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の上シート体3と、射出口eを有するX線発生装置Wの側を被覆自在とする可撓性を有するシート状の下シート体12と、からなり、上シート体3は、射出口eの外径に近似した上挿通孔4を穿設したX線遮蔽材で形成し、下シート体12は、射出口eの外径に近似した下挿通孔13を穿設したX線遮蔽材で形成し、上挿通孔4と下挿通孔13とが連通するように、上シート体3と下シート体12とを一体に形成したことを特徴とする。
【選択図】図5
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図9
図10
図11
図12
図13