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特許7293489可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャ
(51)【国際特許分類】
   F02B 37/24 20060101AFI20230612BHJP
   F01D 17/16 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
F02B37/24
F01D17/16 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2022501399
(86)(22)【出願日】2020-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2020005989
(87)【国際公開番号】W WO2021166021
(87)【国際公開日】2021-08-26
【審査請求日】2022-08-08
(73)【特許権者】
【識別番号】316015888
【氏名又は名称】三菱重工エンジン&ターボチャージャ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】グプタ ビピン
(72)【発明者】
【氏名】吉田 豊隆
(72)【発明者】
【氏名】中原 優也
(72)【発明者】
【氏名】段本 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】秋山 洋二
【審査官】津田 真吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-8013(JP,A)
【文献】特公昭41-11484(JP,B1)
【文献】実開昭62-180634(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2008/0223039(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02B 37/24
F02B 39/00
F01D 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可変容量型のターボチャージャの可変ノズル装置であって、
ノズルマウントと、
前記ノズルマウントと対向して配置され、前記ノズルマウントとの間に環状のノズル流路を形成するノズルプレートと、
前記ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーンと、を備え、
前記ノズルプレートは、前記ノズルマウントに対向する第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを貫通する少なくとも一つの貫通孔を含み、
前記少なくとも一つの貫通孔は、前記第1面において前記支軸よりも径方向の内側に形成された第1開口と、前記第2面において前記第1開口よりも前記径方向の外側又は前記第1開口と前記径方向の同位置に形成された第2開口と、を有するとともに、
前記少なくとも一つの貫通孔は、前記周方向に沿って延在する一つの環状流路を含む、
可変ノズル装置。
【請求項2】
前記少なくとも一つの貫通孔は、前記周方向に間隔をあけて設けられた複数の貫通孔を含む、
請求項1に記載の可変ノズル装置。
【請求項3】
前記少なくとも一つの貫通孔は、前記ノズルプレートの前記第2開口の開口面積よりも前記第1開口の開口面積を小にして形成されている、
請求項1又は2に記載の可変ノズル装置。
【請求項4】
可変容量型のターボチャージャの可変ノズル装置であって、
ノズルマウントと、
前記ノズルマウントと対向して配置され、前記ノズルマウントとの間に環状のノズル流路を形成するノズルプレートと、
前記ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーンと、を備え、
前記ノズルプレートは、前記ノズルマウントに対向する第1面と、前記第1面から前記ノズル流路に対して進退可能に構成されたスライド部材と、を含み、
前記スライド部材は、前記ノズル流路に面する一面と、前記一面と反対側の他面とを含むとともに、前記一面に作用する圧力と、前記他面に作用する圧力との圧力差に応じて進退するように構成されている、
可変ノズル装置。
【請求項5】
前記スライド部材の前記一面は、前記径方向の内側に向かうに連れて前記ノズルマウントとの距離が小さくなるように構成されたテーパ面を有する、
請求項に記載の可変ノズル装置。
【請求項6】
一端側が前記スライド部材の前記他面に固定され、他端側が静止部材に固定されたバネ部材をさらに備える、
請求項又はに記載の可変ノズル装置。
【請求項7】
前記スライド部材の進退量を規定するストッパをさらに備える、
請求項乃至の何れか1項に記載の可変ノズル装置。
【請求項8】
回転軸と、
前記回転軸の一端側に設けられたタービンホイールと、
請求項1乃至の何れか1項に記載の可変ノズル装置と、を備える、
タービン。
【請求項9】
請求項に記載のタービンを備える、
ターボチャージャ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャに関する。
【背景技術】
【0002】
タービン回転数、タービン出力を可変とすることができ、あるいはエンジンの出力変化に対する高い応答性能を確保できるなどの大きな利点を有することから、自動車用エンジンに搭載されるターボチャージャや、発電用エンジンに用いられるエキスパンションタービン、小型ガスタービンなどに、タービンに導入する排ガスの流量調整装置を備えたラジアルタービンや斜流タービンが多用されている。
【0003】
ラジアルタービンや斜流タービンを備えたターボチャージャは、例えば、エンジンからの排ガス(作動流体)によってタービンを回転駆動させるとともに、タービンと同軸で連結したコンプレッサを回転駆動させて吸気を圧縮し、この圧縮した吸気をエンジンに供給するように構成されている。
【0004】
一方、排ガスの流量調整装置は、タービンハウジングによってタービンホイールの外周側に画定された環状のノズル流路に、周方向に複数のノズルベーンを並設して構成されている。
【0005】
また、排ガスの流量調整装置には、アクチュエータの駆動によって回動し、閉動時に隣り合う一方のノズルベーンの前縁と他方のノズルベーンの後縁とが重なって流路を閉じるように設けられた複数の可変ノズルベーンを備え、各可変ノズルベーンの回動量によって排ガスの流路の大きさ、すなわち、排ガスの流量を任意に調整できるように構成した可変ノズル装置を備えたものがある。
【0006】
このような可変ノズル装置を有する可変容量型のターボチャージャ/タービンは、エンジンの負荷変動に合わせた運転が可能であり、特に、低負荷時のレスポンス性能に優れる。
【0007】
しかしながら、可変容量ターボチャージャは、可変ノズル(可変ノズルベーン)の開度が小さいとき、タービン効率がピーク点、すなわち、ノズル開度が中開度域付近のときと比べて低下することが知られている。ノズル開度が小開度域のときのタービン効率は、レスポンス性能に大きく影響するため、小開度域でタービン効率を向上させることが求められている。
【0008】
ここで、可変ノズル6が小開度域のとき、タービン動翼13に流れ込む排ガス(作動流体G)は、ノズル開度が小さいために強い旋回成分をもつ一方、径方向内側に向かう流速成分は小さい(図11)。このため、図11に示すように、従来の可変容量ターボチャージャ(可変ノズル装置100)では、可変ノズル6の小開度域において、動翼13に流入する排ガスGがもつ旋回成分に起因した遠心力により、排ガスGがシュラウド(シュラウド部30)側の内面31側に押し付けられやすい。そして、排ガスGがシュラウド側に押し付けられると、動翼13の出口において、排ガスGの流れはシュラウド側に偏り、シュラウド側で流速が大きく、ハブ(タービンハブ12)側の内面32側で流速が小さくなり、結果、動翼13の下流側で流速不均衡を解消するように排ガスGの流れが広がり、混合損失が起こりやすくなってしまう。
【0009】
これに対し、特許文献1には、排ガスの流れのシュラウド側への偏りを抑制するためにシュラウド側の内面にハブ側の内面に向けて突出する突出部を設けたタービン、ターボチャージャが開示されている。
【0010】
このように突出部を備えて構成した特許文献1のタービン、ターボチャージャにおいては、排ガスが突出部に沿って流れることでハブ側の内面側に寄せられ、シュラウド側への排ガスの偏り、すなわち、排ガスの偏流が抑制される。これにより、動翼出口での不均衡な流れが緩和され、混合損失が低減し、タービン効率を向上することが可能になる。よって、可変ノズルの大開度域における最大流量確保というメリットに加え、可変ノズルが小開度域のときのタービン効率向上というメリットも享受できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2016/031017号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示されたタービン、ターボチャージャでは、前述の通り、突出部を備えることによって、可変ノズルが小開度域のとき、排ガスの流れをハブ側に寄せ、シュラウド側への排ガスの偏流を抑制できるが、可変ノズルが大開度域のときには、突出部が抵抗となって排ガスの流体エネルギー損失が生じ、タービン効率が低下するおそれがあり、この点で改善の余地が残されていた。
【0013】
本開示は、上記事情に鑑み、可変ノズルが小開度域、大開度域の全域において、作動流体の流体エネルギー損失を低減し、より効果的にタービン効率の向上を図ることを可能にする可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本開示の一態様の可変ノズル装置は、可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、ノズルマウントと、前記ノズルマウントと対向して配置され、前記ノズルマウントとの間に環状のノズル流路を形成するノズルプレートと、前記ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーンと、を備え、前記ノズルプレートは、前記ノズルマウントに対向する第1面と、前記第1面と反対側の第2面とを貫通する少なくとも一つの貫通孔を含み、前記少なくとも一つの貫通孔は、前記第1面において前記支軸よりも径方向の内側に形成された第1開口と、前記第2面において前記第1開口よりも前記径方向の外側又は前記第1開口と前記径方向の同位置に形成された第2開口と、を有する。
【0015】
本開示の一態様の可変ノズル装置は、可変容量型ターボチャージャの可変ノズル装置であって、ノズルマウントと、前記ノズルマウントと対向して配置され、前記ノズルマウントとの間に環状のノズル流路を形成するノズルプレートと、前記ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーンと、を備え、前記ノズルプレートは、前記ノズルマウントに対向する第1面と、前記第1面から前記ノズル流路に対して進退可能に構成されたスライド部材と、を含み、前記スライド部材は、前記ノズル流路に面する一面と、前記一面と反対側の他面とを含むとともに、前記一面に作用する圧力と、前記他面に作用する圧力との圧力差に応じて進退するように構成されている。
【0016】
本開示の一態様のタービンは、回転軸と、回転軸の一端側に設けられたタービンホイールと、上記の何れかの可変ノズル装置と、を備える。
【0017】
本開示の一態様のターボチャージャは、上記のタービンを備える。
【発明の効果】
【0018】
本開示の一態様の可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャによれば、可変ノズル(可変ノズルベーン)が小開度域、大開度域の全域において、作動流体の流体エネルギー損失を低減し、より効果的にタービン効率の向上を図ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1実施形態、第2実施形態のタービン、ターボチャージャを示す断面図である。
図2】第1実施形態の可変ノズル装置、タービン、ターボチャージャを示す軸線方向(作動流体の流れ方向下流側)から見た断面図である。
図3】第1実施形態の可変ノズル装置を示す断面図である。
図4】第1実施形態の可変ノズル装置を示す断面図である。
図5】第1実施形態の可変ノズル装置、タービン、ターボチャージャの変更例を示す軸線方向(作動流体の流れ方向下流側)から見た断面図である。
図6】第2実施形態の可変ノズル装置の位置を示す断面図である。
図7】第2実施形態の可変ノズル装置を示す断面図である。
図8】第2実施形態の可変ノズル装置の変更例を示す断面図である。
図9】第2実施形態の可変ノズル装置のノズルプレート(ノズルプレート本体部)の変更例を示す軸線方向(作動流体の流れ方向下流側)から見た図である。
図10】第2実施形態の可変ノズル装置のスライド部材の変更例を示す軸線方向(作動流体の流れ方向下流側)から見た図である。
図11】従来の可変ノズル装置(タービン、ターボチャージャ)を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(第1実施形態)
以下、図1から図5図11を参照し、第1実施形態に係る可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャについて説明する。
【0021】
(ターボチャージャ)
本実施形態のターボチャージャは、エンジンから排出される作動流体(排ガス)のエネルギーを利用してエンジンの出力を向上させるターボ装置であり、エンジンから排出される排ガスによってタービンを回転駆動させ、これにより、タービンと同軸で連結されているコンプレッサを回転駆動させて吸気を圧縮し、この圧縮した吸気をエンジンに供給するものである。
【0022】
具体的に、本実施形態のターボチャージャ1は、図1に示すように、ラジアルタービン2あるいは斜流タービン(以下、タービンという)を備えている。
【0023】
(タービン)
タービン2は、図1図2に示すように、ターボチャージャ1の軸線О1周りに回転するタービンホイール3と、タービンホイール3を収容しつつ、タービンホイール3の軸線О1中心の外周側に環状のノズル流路4を形成するタービンハウジング5と、タービンホイール3の径方向外側のノズル流路4内に設けられ、タービンホイール3の周方向に所定の間隔をあけて配された複数の可変ノズルベーン6を含む流量調整装置(作動流体(本実施形態では排ガスG)の流量調整機構)7と、を備えている。
【0024】
タービンホイール3は、ベアリングハウジング8に収容したジャーナル軸受9,10によって回転可能に軸支された回転軸11の一端側に、互いの軸線О1を同軸上に配して一体に設けられた截頭錐状で略円錐台状のタービンハブ12と、タービンハブ12の周面に軸線О1中心の周方向に所定の間隔をあけて設けられた複数のタービン動翼13と、を備えている。
【0025】
回転軸11の他端側には、截頭錐状で略円錐台状のコンプレッサハブ14が一体に設けられ、このコンプレッサハブ14の周面には、周方向に所定の間隔をあけて複数のコンプレッサ動翼15が設けられている。
【0026】
これらコンプレッサハブ14とコンプレッサ動翼15とによってコンプレッサホイール16が構成され、このコンプレッサホイール16は、コンプレッサハウジング17に軸線О1周りに回転可能に収容されている。
【0027】
本実施形態において、タービンハウジング5の内部には、ノズル流路4に連通し、タービンハウジング5の外部から導入された作動流体Gをノズル流路4に向けて流通させるスクロール流路18と、ノズル流路4に連通しつつ軸線О1に沿って延在し、タービンホイール3を駆動させた作動流体Gを流通させてタービンハウジング5の外部に導出するための管状の排気流路19と、が設けられている。
【0028】
(可変ノズル装置)
一方、本実施形態のターボチャージャ1は、可変容量型のターボチャージャであり、流量調整装置7が可変ノズル装置20を備えて構成されている。
【0029】
可変ノズル装置20は、図11に示した従来の可変ノズル装置100と同様、ノズルマウント21と、ノズルマウント21と対向して配置され、ノズルマウント21との間に環状のノズル流路4を形成するノズルプレート22と、ノズル流路4の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸O2を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーン6と、複数の可変ノズルベーン6を回動させるノズル回動機構23と、備えている。
【0030】
ノズルプレート22は、図3図4図1図11参照)に示すように、ノズルマウント21に対向する第1面33を有するノズルプレート本体部34と、ハブ側の内面32と対向する内面31を有するシュラウド部30とを備えて形成されている。
【0031】
そして、本実施形態の可変ノズル装置20は、ノズルプレート本体部34の第1面33と、第1面33と反対側の第2面35とを貫通する貫通孔36を備えて構成されている。
【0032】
また、本実施形態の貫通孔36は、ノズルプレート本体部34の第1面33に開口する第1開口36aが可変ノズルベーン6の支軸O2よりも径方向の内側に形成され、第2面35に開口する第2開口36bが第1開口36aよりも径方向の外側に形成されている。これにより、この貫通孔36は、ノズルプレート本体部34の第2面35側から第1面33側に向けて斜めに穿設されている。
なお、第2開口36bは第1開口36aと径方向の同位置に形成されていてもよい。
【0033】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、複数の貫通孔36が、軸線O1中心の周方向に間隔をあけて設けられている。複数の貫通孔36はそれぞれ、複数の可変ノズルベーン6のそれぞれと一対で、各可変ノズルベーン6の径方向内側に位置するように設けられている。
【0034】
さらに、貫通孔36は、第2開口36bの開口面積よりも第1開口36aの開口面積を小にして形成されていてもよい。
【0035】
そして、本実施形態の可変ノズル装置20及びタービン2、並びにターボチャージャ1では、ノズル回動機構23の駆動によって複数の可変ノズルベーン6を回動させ、ノズル開度を変えることにより、エンジンから排出され、スクロール流路18からノズル流路4に流れてタービンホイール3に供給される作動流体Gの流量を変えることを調節することができる。
【0036】
このとき、可変ノズルベーン6の開度が小さい小開度域であるほど、可変ノズルベーン6を間に、高圧側で作動流体Gの流れ方向上流側(スクロール流路18側)と、低圧側で作動流体Gの流れ方向下流側との圧力差が大きくなる(図11参照)。
【0037】
これに対し、本実施形態の可変ノズル装置20及びタービン2、並びにターボチャージャ1は、ノズルプレート本体部34の第1面33から第2面35に貫通する貫通孔36が設けられ、この貫通孔36が第1面33に開口する第1開口36aを可変ノズルベーン6の支軸O2よりも径方向の内側に、第2面35に開口する第2開口36bを第1開口36aよりも径方向の外側に配置して形成されている。
【0038】
これにより、本実施形態の可変ノズル装置20及びタービン2、並びにターボチャージャ1においては、図4図11参照)に示すように、高圧(High pressure)側で作動流体Gの流れ方向上流側(スクロール流路18側)と、低圧(Low pressure)側で作動流体Gの流れ方向下流側との圧力差によって、貫通孔36を作動流体g(G)が流れ、スクロール流路18の作動流体g(G)が貫通孔36の第1開口36aから可変ノズルベーン6の支軸O2よりも径方向の内側のノズル流路4に噴射される。
【0039】
そして、複数の可変ノズルベーン6を通じてノズル流路4をタービンホイール3に向けて流れる作動流体Gに貫通孔36から噴射した作動流体gが合流することで、従来の可変ノズル装置100のように第1面33に突出部を設けなくても、作動流体Gの流れがハブ側の内面32側に寄せられ、シュラウド側への作動流体Gの偏り、すなわち、作動流体Gの偏流を抑制することができる。
【0040】
また、可変ノズルベーン6の開度が小さい小開度域であるほど、高圧側で作動流体Gの流れ方向上流側と、低圧側で作動流体Gの流れ方向下流側との圧力差が大きくなるため、言い換えれば、可変ノズルベーン6の大開度域よりも中開度域、中開度域よりも小開度域の方が前記圧力差が大きくなるため、可変ノズルベーン6の開度が小さくなるほど、貫通孔36から噴射される作動流体gの噴出力(噴射速度)を大きくすることができる。
【0041】
これにより、シュラウド側への作動流体Gの大きな偏流が発生する可変ノズルベーン6の小開度域では、効果的に作動流体Gの偏流を抑制することができ、偏流が生じない可変ノズルベーン6の大開度域では、貫通孔36から出た作動流体gが作動流体Gの流れを阻害することなく、流体エネルギー損失が生じることを抑制できる。
【0042】
したがって、本実施形態の可変ノズル装置20及びタービン2、並びにターボチャージャ1によれば、ノズルプレート本体部34の第1面33から第2面35に貫通する貫通孔36が設けられ、この貫通孔36が第1開口36aを可変ノズルベーン6の支軸O2よりも径方向の内側に、第2面35に開口する第2開口36bを第1開口36aよりも径方向の外側に配置して形成されていることによって、タービン動翼13の出口での作動流体Gの不均衡な流れが緩和され、混合損失が低減し、タービン効率を向上することが可能になる。
【0043】
よって、可変ノズルベーン6の大開度域における最大流量確保というメリットに加え、可変ノズルベーン6が小開度域のときのタービン効率向上というメリットを確実に享受できる。言い換えれば、可変ノズルベーン6が小開度域、大開度域の全域において、作動流体Gの流体エネルギー損失を低減し、より効果的にタービン効率の向上を図ることが可能になる。
【0044】
なお、貫通孔36の第2開口36bが第1開口36aと径方向の同位置に形成されていても、上記と同様の作用効果を得ることが可能である。
【0045】
また、図2に示すように、複数の貫通孔36が、軸線O1中心の周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれの貫通孔36から作動流体gが噴射されることで、可変ノズルベーン6の小開度域において、タービンホイール3に流れる周方向全体の作動流体Gの偏流を効果的に抑制することが可能になる。このとき、複数の貫通孔36がそれぞれ、複数の可変ノズルベーン6のそれぞれと一対で、各可変ノズルベーン6の径方向内側に配置されていれば、より効果的に、タービンホイール3に流れる周方向全体の作動流体Gの偏流を抑制することができる。
【0046】
さらに、貫通孔36が、その第2開口36bの開口面積よりも第1開口36aの開口面積を小にして形成されていれば、第1開口36aから噴射される作動流体gの噴出力(噴射速度)を高めることができ、可変ノズルベーン6の小開度域において、タービンホイール3に流れる作動流体Gの偏流を、より一層効果的に抑制することが可能になる。
【0047】
以上、本開示の可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャの第1実施形態について説明したが、上記の第1実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0048】
例えば、図5に示すように、貫通孔36は、周方向に沿って延在する一つの環状流路を備えて形成されていてもよい。この場合には、周方向全体に延びる第1開口36aから作動流体gが噴射されるため、可変ノズルベーン6の小開度域において、タービンホイール3に流れる周方向全体の作動流体Gの偏流を、好適に抑制することが可能になる。
【0049】
また、第1実施形態の構成、変更例と、後述の第2実施形態の構成、変更例とを組み合わせるなどして、相乗的な作用効果を奏功できるようにしてもよい。
【0050】
(第2実施形態)
次に、図1図6から図10図11を参照し、第2実施形態に係る可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャについて説明する。ここで、本実施形態の可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャは、第1実施形態の可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャに対して可変ノズル装置の構成が異なり、他の構成は同様である。よって、本実施形態では、第1実施形態と同様の構成に対して同一符号を付すなどし、その詳細な説明を省略する。
【0051】
(可変ノズル装置)
本実施形態の可変ノズル装置40は、図6図7図1図11参照)に示すように、第1実施形態と同様、ノズルマウント21と、ノズルプレート本体部34及びシュラウド部30を有してなるノズルプレート22と、複数の可変ノズルベーン6と、を備えている。
【0052】
一方、可変ノズル装置40は、第1実施形態と異なり、例えば図6のS部で示す部位に、スライド部材42を備えて構成されている。
【0053】
具体的に、本実施形態の可変ノズル装置40は、図7に示すように、ノズルプレート22のノズルプレート本体部34が、ノズルマウント21に対向する第1面33と、第1面33からノズル流路4に対して進退可能に構成されたスライド部材42と、を備えている。そして、スライド部材42は、ノズル流路4に面する一面42aと、一面42aと反対側の他面42bとを備え、一面42aに作用する圧力と、他面42bに作用する圧力との圧力差に応じて進退するように構成されている。
【0054】
また、本実施形態の可変ノズル装置40は、ノズルプレート本体部34に、スライド部材42と第2面35との間に、第2面35に開口する貫通孔43で第2面35の側のスクロール流路18に連通する連通空間44が設けられている。連通空間44には、一端をノズルプレート本体部34などの静止部材41に、他端をスライド部材42の他面42bにそれぞれ接続し、スライド部材42を連通空間44の内部側、すなわち、ノズルプレート本体部34の第2面35の側に付勢するバネ部材などの付勢部材45が配設されている。
【0055】
これにより、本実施形態の可変ノズル装置40においては、図7図11参照)に示すように、高圧(High pressure)側で作動流体Gの流れ方向上流側(スクロール流路18側)の圧力が貫通孔43を通じて連通空間44に伝達され、スライド部材42の他面42bに作用し、低圧(Low pressure)側で作動流体Gの流れ方向下流側(ノズル流路4側)の圧力がスライド部材42の一面42aに作用する。また、スライド部材42には、付勢部材45の付勢力が作用する。
【0056】
そして、本実施形態のスライド部材42は、一面42aに作用する圧力と他面42bに作用する圧力の圧力差に応じてスライド(進出)し、この圧力差が大きい可変ノズルベーン6の小開度域において、圧力差の大きさに応じた突出量で、一面42a側が第1面33からノズル流路4の内側に突出する。
【0057】
すなわち、本実施形態のスライド部材42は、例えば、ノズルプレート本体部34の第1面33の側と第2面35の側の圧力差がある程度小さい可変ノズルベーン6の中開度域、大開度域では、付勢部材45の付勢力の作用により、一面42a側が第1面33と近い位置(同一面上を含む)に配され、この退避状態で保持される。
【0058】
よって、可変ノズルベーン6の中開度域、大開度域においては、スライド部材42が第1面33から突出せず、従来の可変ノズル装置100の突出部のように、スライド部材42が抵抗となって流体エネルギー損失が生じ、タービン効率が低下することはない。
【0059】
一方、可変ノズルベーン6の小開度域では、前記圧力差が大きくなり、連通空間44内の圧力が上昇してスライド部材42の他面42bを押圧する力が相対的に大きくなって、スライド部材42がスライド(進出)し、その一面42a側がノズルプレート本体部34の第1面33からノズル流路4内に突出する。
【0060】
これにより、可変ノズルベーン6の小開度域において、突出したスライド部材42の一面42aに沿って作動流体Gが流れ、この作動流体Gの流れがハブ側へ寄せられる。よって、シュラウド側への作動流体Gの偏流が抑制され、タービン動翼13の出口での不均衡な流れが緩和されるとともに混合損失が低減し、タービン効率を向上することが可能になる。
【0061】
したがって、本実施形態の可変ノズル装置40及びタービン2、並びにターボチャージャ1によれば、可変ノズルベーン6の大開度域における最大流量確保というメリットに加え、可変ノズルベーン6が小開度域のときのタービン効率向上というメリットも享受でき、可変ノズルベーン6の小開度域、大開度域のいずれであっても、好適に作動流体Gの流体エネルギー損失の発生を抑え、効果的にタービン効率の向上を図ることが可能になる。
【0062】
また、本実施形態の可変ノズル装置40及びタービン2、並びにターボチャージャ1においては、図7に示すように、スライド部材42の一面42aが、径方向の内側に向かうに連れてノズルマウント21との距離が小さくなるように構成されたテーパ面42cを有することが好ましい。
この場合には、可変ノズルベーン6の小開度域において、突出したスライド部材42の一面42aのテーパ面42cに沿って、作動流体Gを滑らかに流すことができ、突出したスライド部材42によって作動流体Gの流れを乱し、流体エネルギー損失が生じることを抑制できる。
【0063】
さらに、本実施形態の可変ノズル装置40及びタービン2、並びにターボチャージャ1においては、付勢部材45を設け、スライド部材42に付勢力が作用するようにしている。これにより、前記圧力差の大きさに応じた突出量でスライド部材42を突出させることができ、且つ前記圧力差が小さくなるとともにスライド部材42を付勢部材45の付勢力によって自動的で好適に退避させることができる。
【0064】
以上、本開示の可変ノズル装置及びタービン、並びにターボチャージャの第2実施形態について説明したが、上記の第1実施形態、第2実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の構成、変更例を組み合わせるなど、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0065】
例えば、第1実施形態、第2実施形態の構成、変更例を適宜選択的に組み合わせてもよい。この場合には、より一層効果的に、場合によっては相乗的に、動翼インシデンス特性の改善効果、タービン効率の向上効果を得ることが可能になる。
【0066】
さらに、例えば、図8から図10に示すように、ノズルプレート22(ノズルプレート本体部34)とスライド部材42に、互いに嵌合し、ノズルプレート22に対してスライド部材42をスライド移動可能で、且つノズルプレート22の第1面33を基準に進退可能に支持する係合部46(係合凸部46a、係合凹部46b)を設けて構成してもよい。
【0067】
この場合には、スライド部材42の一面42aと他面42bにそれぞれ、低圧の第1面33の側の圧力と高圧の第2面35の側の圧力とがそれぞれ直接的に作用し、これら圧力の圧力差に応じてスライド部材42を自動的にスライドさせることができる。これにより、本実施形態と同様の作用効果を得ることが可能になり、動翼インシデンス特性の改善、タービン効率の向上を図ることが可能になる。
【0068】
また、この場合には、係合部46をT型にするなどして形成すれば、スライド部材42が軸線O1周りの径方向及び周方向の正逆に移動しないように構成することができる。
【0069】
さらに、ストッパ47を設ければ、スライド部材42の突出量及び退避量、すなわち、スライド部材42の進退量を規制することができ、好適にスライド部材42の位置制御を行うことができる。
【0070】
さらに、本実施形態の可変ノズル装置40においては、ノズルプレート本体部34の第1面33の側の第1圧力、すなわち、可変ノズルベーン6の支軸O2よりも径方向内側部分の低圧側の第1圧力をP1、第2面35の側の高圧側の第2圧力をP2、予め設定した第1圧力P1と第2圧力P2の圧力差の閾値をP3としたとき、スライド部材42が、P2-P1>P3の状態で第1面33からノズルマウント21側(ノズル流路4内)に突出し、P2-P1≦P3の状態で第1面33から第2面35までの間に退避して収まるように構成してもよい。
【0071】
すなわち、スライド部材42をスライドさせる構成によって、動翼インシデンス特性の改善、タービン効率の向上を図ることが可能であれば、必ずしも本実施形態の構成に限定する必要はない。
【0072】
最後に、上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0073】
(1)一の態様に係る可変ノズル装置(第1実施形態の可変ノズル装置20)は、可変容量型のターボチャージャ(第1実施形態のターボチャージャ1)の可変ノズル装置であって、ノズルマウント(第1実施形態のノズルマウント21)と、ノズルマウントと対向して配置され、ノズルマウントとの間に環状のノズル流路(第1実施形態のノズル流路4)を形成するノズルプレート(第1実施形態のノズルプレート22)と、ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸(第1実施形態の支軸O2)を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーン(第1実施形態の可変ノズルベーン6)と、を備え、ノズルプレートは、ノズルマウントに対向する第1面(第1実施形態の第1面33)と、第1面と反対側の第2面(第1実施形態の第2面35)とを貫通する少なくとも一つの貫通孔(第1実施形態の貫通孔36)を含み、少なくとも一つの貫通孔は、第1面において支軸よりも径方向の内側に形成された第1開口(第1実施形態の第1開口36a)と、第2面において第1開口よりも径方向の外側又は第1開口と径方向の同位置に形成された第2開口(第1実施形態の第2開口36b)と、を有する。
【0074】
本開示の可変ノズル装置によれば、複数の可変ノズルベーンを通じてノズル流路をタービンホイールに向けて流れる作動流体に貫通孔から噴射した作動流体が合流することで、作動流体の流れがハブ側の内面側に寄せられ、シュラウド側への作動流体の偏り、すなわち、作動流体の偏流を抑制することができる。
【0075】
また、可変ノズルベーンの開度が小さい小開度域であるほど、高圧側で作動流体の流れ方向上流側と、低圧側で作動流体の流れ方向下流側との圧力差が大きくなるため、言い換えれば、可変ノズルベーンの大開度域よりも中開度域、中開度域よりも小開度域の方が前記圧力差が大きくなるため、可変ノズルベーンの開度が小さくなるほど、貫通孔から噴射される作動流体の噴出力(噴射速度)を大きくすることができる。
【0076】
これにより、シュラウド側への作動流体の大きな偏流が発生する可変ノズルベーンの小開度域では、効果的に作動流体の偏流を抑制することができ、偏流が生じない(大きな偏流が生じない)可変ノズルベーンの大開度域では、貫通孔から出た作動流体が作動流体の流れを阻害することなく、流体エネルギー損失が生じることを抑制できる。
【0077】
よって、可変ノズルベーンが小開度域、大開度域の全域において、作動流体の流体エネルギー損失を低減し、より効果的にタービン効率の向上を図ることが可能になる。
【0078】
(2)別の態様に係る可変ノズル装置は、(1)に記載の可変ノズル装置であって、少なくとも一つの貫通孔は、周方向に間隔をあけて設けられた複数の貫通孔を含む。
【0079】
本開示の可変ノズル装置によれば、複数の貫通孔が、周方向に間隔をあけて設けられ、それぞれの貫通孔から作動流体が噴射されることで、可変ノズルベーンの小開度域において、タービンホイールに流れる周方向全体の作動流体の偏流を効果的に抑制することが可能になる。
【0080】
(3)別の態様に係る可変ノズル装置は、(1)に記載の可変ノズル装置であって、少なくとも一つの貫通孔は、周方向に沿って延在する一つの環状流路を含む。
【0081】
本開示の可変ノズル装置によれば、貫通孔が周方向に沿って延在する一つの環状流路を備えて形成されているので、周方向全体に延びる第1開口から作動流体が噴射される。このため、可変ノズルベーンの小開度域において、タービンホイールに流れる周方向全体の作動流体の偏流を、好適に抑制することが可能になる。
【0082】
(4)別の態様に係る可変ノズル装置は、(1)乃至(3)の何れかに記載の可変ノズル装置であって、少なくとも一つの貫通孔は、ノズルプレートの前記第2開口の開口面積よりも第1開口の開口面積を小にして形成されている。
【0083】
本開示の可変ノズル装置によれば、貫通孔が、その第2開口の開口面積よりも第1開口の開口面積を小にして形成されているので、第1開口から噴射される作動流体の噴出力(噴射速度)を高めることができ、可変ノズルベーンの小開度域において、タービンホイールに流れる作動流体の偏流を、より一層効果的に抑制することが可能になる。
【0084】
(5)一の態様に係る可変ノズル装置(第2実施形態の可変ノズル装置40)は、可変容量型のターボチャージャ(第2実施形態のターボチャージャ1)の可変ノズル装置であって、ノズルマウント(第2実施形態のノズルマウント21)と、ノズルマウントと対向して配置され、ノズルマウントとの間に環状のノズル流路(第2実施形態のノズル流路4)を形成するノズルプレート(第2実施形態のノズルプレート22)と、ノズル流路の周方向に所定の間隔をあけてそれぞれ支軸(第2実施形態の支軸O2)を中心として回動可能に設けられた複数の可変ノズルベーン(第2実施形態の可変ノズルベーン6)と、を備え、ノズルプレートは、ノズルマウントに対向する第1面(第2実施形態の第1面33)と、第1面からノズル流路に対して進退可能に構成されたスライド部材(第2実施形態のスライド部材42)と、を含み、スライド部材は、ノズル流路に面する一面(第2実施形態の一面42a)と、一面と反対側の他面(第2実施形態の他面42b)とを含むとともに、一面に作用する圧力と、他面に作用する圧力との圧力差に応じて進退するように構成されている。
【0085】
本開示の可変ノズル装置によれば、第1面の側と第2面の側の圧力差がある程度小さい可変ノズルベーンの中開度域、大開度域では、一面側が第1面と近い位置(同一面上を含む)に配され、この退避状態で保持される。これにより、可変ノズルベーンの中開度域、大開度域においては、スライド部材が第1面から突出せず、スライド部材が抵抗となって流体エネルギー損失が生じ、タービン効率が低下することはない。
【0086】
一方、可変ノズルベーンの小開度域では、前記圧力差が大きくなり、スライド部材の他面を押圧する力が相対的に大きくなって、スライド部材がスライド(進出)し、その一面側が第1面からノズル流路内に突出する。これにより、可変ノズルベーンの小開度域において、突出したスライド部材の一面に沿って作動流体が流れ、この作動流体の流れがハブ側へ寄せられる。よって、シュラウド側への作動流体の偏流が抑制され、タービン動翼の出口での不均衡な流れが緩和されるとともに混合損失が低減し、タービン効率を向上することが可能になる。
【0087】
したがって、シュラウド側への作動流体の大きな偏流が発生する可変ノズルベーンの小開度域では、効果的に作動流体の偏流を抑制することができ、偏流が生じない(大きな偏流が生じない)可変ノズルベーンの大開度域では、貫通孔から出た作動流体が作動流体の流れを阻害することなく、流体エネルギー損失が生じることを抑制できる。
【0088】
よって、可変ノズルベーンが小開度域、大開度域の全域において、作動流体の流体エネルギー損失を低減し、より効果的にタービン効率の向上を図ることが可能になる。
【0089】
(6)別の態様に係る可変ノズル装置は、(5)に記載の可変ノズル装置であって、スライド部材の一面は、径方向の内側に向かうに連れてノズルマウントとの距離が小さくなるように構成されたテーパ面(第2実施形態のテーパ面42c)を有する。
【0090】
本開示の可変ノズル装置によれば、可変ノズルベーンの小開度域において、突出したスライド部材の一面のテーパ面に沿って、作動流体を滑らかに流すことができ、突出したスライド部材によって作動流体の流れを乱し、流体エネルギー損失が生じることを抑制できる。
【0091】
(7)別の態様に係る可変ノズル装置は、(5)又は(6)に記載の可変ノズル装置であって、一端側がスライド部材の他面に固定され、他端側が静止部材(第2実施形態の静止部材41(タービンハウジング5、ノズルプレート22)に固定されたバネ部材(第2実施形態の付勢部材45)をさらに備える。
【0092】
本開示の可変ノズル装置によれば、バネ部材を設け、スライド部材に付勢力が作用するようにしたので、前記圧力差の大きさに応じた突出量でスライド部材を突出させることができ、且つ前記圧力差が小さくなるとともにスライド部材をバネ部材の付勢力によって自動的で好適に退避させることができる。
【0093】
(8)別の態様に係る可変ノズル装置は、(5)乃至(7)に記載の可変ノズル装置であって、スライド部材の進退量を規定するストッパ(第2実施形態のストッパ47)をさらに備える。
【0094】
本開示の可変ノズル装置によれば、ストッパを設けることにより、スライド部材の突出量及び退避量、すなわち、スライド部材の進退量を規制することができ、好適にスライド部材の位置制御を行うことができる。
【0095】
(9)一の態様に係るタービン(第1実施形態、第2実施形態のタービン2)は、回転軸(第1実施形態、第2実施形態の回転軸11)と、回転軸の一端側に設けられたタービンホイール(第1実施形態、第2実施形態のタービンホイール3)と、(1)乃至(8)の何れかに記載の可変ノズル装置と、を備える。
【0096】
本開示のタービンによれば、(1)乃至(8)の何れかに記載の可変ノズル装置の作用効果を奏功するタービンを提供することができる。
【0097】
(10)一の態様に係るターボチャージャ(第1実施形態、第2実施形態のターボチャージャ1)は、(9)に記載のタービンを備える。
【0098】
本開示のターボチャージャによれば、(9)に記載のタービン、可変ノズル装置の作用効果を奏功するターボチャージャを提供することができる。
【符号の説明】
【0099】
1 ターボチャージャ
2 タービン
3 タービンホイール
4 ノズル流路
5 タービンハウジング(静止部材)
6 可変ノズルベーン
11 回転軸
12 タービンハブ
13 タービン動翼
20 可変ノズル装置
21 ノズルマウント
22 ノズルプレート
30 シュラウド部
33 第1面
34 ノズルプレート本体部
35 第2面
36 貫通孔
36a 第1開口
36b 第2開口
40 可変ノズル装置
42 スライド部材
41 静止部材
42a 一面
42b 他面
42c テーパ面
43 貫通孔
44 連通空間
45 付勢部材(バネ部材)
100 従来の可変ノズル装置
G、g 作動流体(排ガス)
O1 軸線
O2 支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11