(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】尿酸性疾患を予防又は治療するための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 38/47 20060101AFI20230612BHJP
A61P 19/06 20060101ALI20230612BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/30 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/56 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20230612BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
A61K38/47
A61P19/06
A61P13/12
A61K9/72
A61K9/30
A61K9/56
A61K9/16
A61K9/48
(21)【出願番号】P 2022505322
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(86)【国際出願番号】 CN2020102823
(87)【国際公開番号】W WO2021036572
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】201910809138.9
(32)【優先日】2019-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521387833
【氏名又は名称】広州新創憶薬物臨床研究有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】521387844
【氏名又は名称】広州新創意生物医薬有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519144495
【氏名又は名称】広州威爾曼新薬研発有限公司
【氏名又は名称原語表記】GUANGZHOU WELMAN NEW DRUG R&D CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Room 1608,No.116,TiYuDong Road,Tianhe District,Guangzhou,Guangdong 510620,China
(73)【特許権者】
【識別番号】520253328
【氏名又は名称】湘北威爾曼制薬股▲ふん▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519144509
【氏名又は名称】南京康福順薬業有限公司
【氏名又は名称原語表記】NANJING KANGFUSHUN PHARMACEUTICAL CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】E3 Building,No.9,Weidi Road,Xianlin Street,Qixia District Nanjing,Jiangsu 210046,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】孫明傑
(72)【発明者】
【氏名】孫天宇
(72)【発明者】
【氏名】蒋娟艶
【審査官】伊藤 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-056199(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105688197(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0086184(KR,A)
【文献】国際公開第2018/127532(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246262(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107899006(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第103316333(CN,A)
【文献】日本腎臓学会誌,2011年,Vol.53, No.2,p.142-145
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リゾチームを含有する、尿酸性疾患を治療又は予防するための医薬組成物
であって、前記尿酸性疾患は生体内の尿酸値が高すぎる疾患である、医薬組成物。
【請求項2】
前記尿酸性疾患
は高尿酸血症、尿酸腎症、痛風のうちの少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記尿酸性疾患に罹患している対象は正常な腎機能を有するか、又は腎機能障害が存在することを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬剤形は経口製剤、注射製剤、吸入製剤のいずれか1つで
あることを特徴とする、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記経口製剤は経口腸溶性製剤であることを特徴とする、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記経口製剤の投与量は0.1~20g/日であることを特徴とする、請求項5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
リゾチームを含有する、尿酸低下又は尿酸排泄促進のための医薬組成物。
【請求項8】
前記尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸であり、前記哺乳動物は血中尿酸レベルが高す
ぎることを特徴とする、請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記哺乳動物は正常な腎機能を有するか、又は腎機能障害が存在することを特徴とする、請求項8に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬組成物は医薬剤形の形態であ
り、前記経口製剤は経口腸溶性製剤であり、腸溶錠、腸溶性カプセル、腸溶性ソフトカプセル、腸溶性丸剤、腸溶性ペレット、腸溶性滴丸剤、腸溶性粒子、腸溶性ナノ粒子、腸溶性徐放製剤、腸溶性放出制御製剤から選択されることを特徴とする、請求項
8に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記経口腸溶性製剤は、結腸、回腸又は空腸でリゾチームを放出する製剤であり
、前記経口製剤の投与量は0.1~20g/日であることを特徴とする、請求項
10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記排泄は腎臓及び/又は腸管を介した排泄であることを特徴とする、請求項
7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬の分野に関し、具体的にはリゾチームの、尿酸性疾患を予防又は治療するための医薬品、尿酸を低下させるための医薬品及び尿酸排泄を促進するための医薬品の調製における使用に関し、また、尿酸性疾患を予防又は治療するための医薬組成物、尿酸を低下させるための医薬組成物及び尿酸排泄を促進するための医薬組成物、並びに尿酸性疾患の予防又は治療、尿酸低下及び尿酸排泄促進のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
尿酸は生体内の代謝産物である。その前駆体はプリン類物質であり、内因性と外因性に分けられる。内因性は細胞が代謝分解した核酸とそのほかのプリン類化合物(例えばアデニンとグアニンなど)を含み、外因性は食品から摂取したプリンを含む。ヒポキサンチンとキサンチンは尿酸の直接前駆体であり、キサンチンオキシダーゼの作用により、ヒポキサンチンはキサンチンに、キサンチンは尿酸に酸化される。
【0003】
人体には尿酸をさらに代謝する酵素(尿酸オキシダーゼ)が不足しているため、尿酸は最終生成物として体外に排出される。尿酸の約3分の2は腎臓から尿を経て、約3分の1は腸管から便を経て排泄される。
【0004】
正常な人体の血中尿酸レベルは男性が420μmol/Lより低く、女性が360μmol/Lより低いである。体内のプリン代謝異常又は尿酸排泄異常時、血中尿酸レベルは正常範囲を超え、高尿酸血症などの病的状態を呈することが多い。持続的な高尿酸はまたその他の代謝疾患、心脳血管疾患、炎症性疾患又は実質的な臓器損傷を引き起こすことがある。
【0005】
現在、尿酸を低下させる方法は主に尿酸生成を減少させ、尿酸排泄を増加させることである。尿酸生成を減少させる既存の医薬品は主にアロプリノール、フェブキソスタットなどのキサンチンオキシダーゼ阻害剤があり、尿酸排泄を増加させる医薬品は主にプロベネシド、ベンズブロマロン、Lesinuradなどの尿細管再吸収阻害剤がある。
【0006】
既存の方法は尿酸レベルを効果的に下げることができるが、副作用が懸念される。例えば、アロプリノールの肝腎毒性、フェブキソスタットの心臓毒性、Lesinuradの腎毒性などである。加えて、高尿酸群の多くは臓器機能が衰退期にある中高齢者であり、これらの群の副作用に対する耐性は通常低い。そのため、既存の尿酸を低下させる方法は非常に限られている。安全性の高い尿酸低下方法の模索が急務である。
【0007】
リゾチーム(Lysozyme)はムラミダーゼ(muramidase)とも呼ばれ、自然界に広く存在し、抗細菌、抗真菌及び抗腫瘍など多くの薬理作用を有し、生体適合性が高く、組織に対する刺激性や毒性がない特徴を有し、生体を破壊することなく病原性微生物を死滅させる性質に優れた酵素製剤として調製される。
【0008】
リゾチームは人体内の非特異免疫において重要な作用を果たし、殺菌と抗炎症、組織修復の促進及び免疫力の増強など多くの生物学的活性作用を有し、性質の優れた薬用酵素であるため、医薬領域、例えば急性慢性鼻咽喉頭炎、口腔潰瘍、水痘、帯状疱疹及び扁平疣贅などの治療に広く応用されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の1つの目的は、リゾチームの、尿酸性疾患を予防又は治療するための医薬品、尿酸を低下させるための医薬品及び尿酸排泄を促進するための医薬品の調製における使用を提供することである。
【0010】
本発明の他の目的は、尿酸性疾患を予防又は治療するための医薬組成物、尿酸を低下させるための医薬組成物及び尿酸排泄を促進するための医薬組成物を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、尿酸性疾患の予防又は治療、尿酸低下及び尿酸排泄促進のための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
具体的には、本発明は以下の技術的手段に関する。
【0013】
リゾチームの、生体内における尿酸値異常に関連する疾患である尿酸性疾患を予防又は治療するための医薬品の調製における使用である。
【0014】
いくつかの実例では、尿酸性疾患は、高尿酸血症、尿酸腎症、痛風から選択される少なくとも1つである。
【0015】
いくつかの実例では、尿酸性疾患には腎機能障害も併発している。
【0016】
リゾチームの尿酸を低下させるための医薬品の調製における使用である。
【0017】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0018】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0019】
いくつかの実例では、前記哺乳動物には腎機能障害も存在する。
【0020】
リゾチームの尿酸排泄を促進するための医薬品の調製における使用である。
【0021】
いくつかの実例では、尿酸排泄とは、尿酸が腎臓及び/又は腸管を介して排泄されることを指す。
【0022】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0023】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0024】
いくつかの実例では、前記哺乳動物には腎機能障害も存在する。
【0025】
リゾチームを含有する、尿酸性疾患を治療又は予防するための医薬組成物である。
【0026】
いくつかの実例では、尿酸性疾患は、高尿酸血症、尿酸腎症、痛風から選択される少なくとも1つである。
【0027】
リゾチームを含有する、尿酸を低下させるための医薬組成物である。
【0028】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0029】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0030】
いくつかの実例では、前記哺乳動物には腎機能障害も存在する。
【0031】
リゾチームを含有する、尿酸排泄を促進するための医薬組成物である。
【0032】
いくつかの実例では、尿酸排泄とは、尿酸が腎臓及び/又は腸管を介して排泄されることを指す。
【0033】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0034】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0035】
いくつかの実例では、前記哺乳動物には腎機能障害も存在する。
【0036】
上記3つの医薬組成物のいくつかの実例では、前記医薬組成物の剤形は、経口製剤、注射製剤、吸入製剤のいずれかの1つであってもよく、好ましくは、前記経口製剤は経口腸溶性製剤であり、腸溶錠、腸溶性カプセル、腸溶性ソフトカプセル、腸溶性丸剤、腸溶性ペレット、腸溶性滴丸剤、腸溶性粒子、腸溶性ナノ粒子、腸溶性徐放製剤、腸溶性放出制御製剤を含むが、これらに限定されない。
【0037】
いくつかの実例では、経口腸溶性製剤は、大腸でリゾチームを放出する製剤、特に結腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0038】
いくつかの実例では、経口腸溶性製剤は、小腸でリゾチームを放出する製剤、特に回腸又は空腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0039】
いくつかの実例では、前記医薬組成物中のリゾチームの力価は20000U/mgより大きい。
【0040】
上記医薬組成物を調製する時、リゾチームを単独で使用してもよく、リゾチームを薬学的に許容される補助剤と共に、具体的な製剤形態に調製してもよい。これらの薬学的に許容される補助剤は、希釈剤、充填剤、滑沢剤、崩壊剤、流動促進剤、吸収促進剤、矯味剤、高分子徐放性材料、腸溶性マトリックス材料、コーティング材料などを含むが、これらに限定されない。
【0041】
有効量のリゾチームを尿酸性疾患に罹患している対象に投与するステップを含む、尿酸性疾患を予防又は治療するための方法である。
【0042】
いくつかの実例では、尿酸性疾患とは、生体内における尿酸値異常に関連する疾患を指す。
【0043】
いくつかの実例では、尿酸性疾患は、高尿酸血症、尿酸腎症、痛風から選択される少なくとも1つである。
【0044】
いくつかの実例では、前記尿酸性疾患に罹患している対象は正常な腎機能を有する。
【0045】
いくつかの実例では、前記尿酸性疾患に罹患している対象には腎機能障害も存在する。
【0046】
いくつかの実例では、前記リゾチームは経口製剤、注射製剤、吸入製剤のいずれか1つの剤形で投与され、好ましくは、前記経口製剤は経口腸溶性製剤であり、腸溶錠、腸溶性カプセル、腸溶性ソフトカプセル、腸溶性丸剤、腸溶性ペレット、腸溶性滴丸剤、腸溶性粒子、腸溶性ナノ粒子、腸溶性徐放製剤、腸溶性放出制御製剤を含むが、これらに限定されない。
【0047】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、大腸でリゾチームを放出する製剤、特に結腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0048】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、小腸でリゾチームを放出する製剤、特に回腸又は空腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0049】
いくつかの実例では、前記経口製剤中のリゾチームの力価は20000U/mgより大きい。
【0050】
いくつかの実例では、前記経口製剤の投与量は0.1~20g/日、好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.3~15g/日、より好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.5~6g/日である。
【0051】
いくつかの実例では、前記経口製剤の用量を決定した後、1日に1~3回投与する。
【0052】
有効量のリゾチームを、尿酸を低下させる必要がある対象に投与するステップを含む、尿酸を低下させるための方法である。
【0053】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0054】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0055】
いくつかの実例では、前記尿酸を低下させる必要がある対象の血中尿酸レベルが高すぎる。
【0056】
いくつかの実例では、前記尿酸を低下させる必要がある対象は正常な腎機能を有する。
【0057】
いくつかの実例では、前記尿酸を低下させる必要がある対象には、高すぎる血中尿酸レベルに加えて、腎機能障害も存在する。
【0058】
いくつかの実例では、前記リゾチームは経口製剤、注射製剤、吸入製剤のいずれか1つの剤形で投与され、好ましくは、前記経口製剤は経口腸溶性製剤であり、腸溶錠、腸溶性カプセル、腸溶性ソフトカプセル、腸溶性丸剤、腸溶性ペレット、腸溶性滴丸剤、腸溶性粒子、腸溶性ナノ粒子、腸溶性徐放製剤、腸溶性放出制御製剤を含むが、これらに限定されない。
【0059】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、大腸でリゾチームを放出する製剤、特に結腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0060】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、小腸でリゾチームを放出する製剤、特に回腸又は空腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0061】
いくつかの実例では、前記経口製剤中のリゾチームの力価は20000U/mgより大きい。
【0062】
いくつかの実例では、前記経口製剤の投与量は0.1~20g/日、好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.3~15g/日、より好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.5~6g/日である。
【0063】
いくつかの実例では、前記経口製剤の用量を決定した後、1日に1~3回投与する。
【0064】
有効量のリゾチームを、尿酸排泄を促進する必要がある対象に投与するステップを含む、尿酸排泄を促進するための方法である。
【0065】
いくつかの実例では、尿酸は哺乳動物の血液中の尿酸である。
【0066】
いくつかの実例では、前記哺乳動物はヒトである。
【0067】
いくつかの実例では、前記尿酸排泄を促進する必要がある対象の血中尿酸レベルが高すぎる。
【0068】
いくつかの実例では、前記尿酸排泄を促進する必要がある対象は正常な腎機能を有する。
【0069】
いくつかの実例では、前記尿酸排泄を促進する必要がある対象には、高すぎる血中尿酸レベルに加えて、腎機能障害も存在する。
【0070】
いくつかの実例では、前記リゾチームは経口製剤、注射製剤、吸入製剤のいずれか1つの剤形で投与され、好ましくは、前記経口製剤は経口腸溶性製剤であり、腸溶錠、腸溶性カプセル、腸溶性ソフトカプセル、腸溶性丸剤、腸溶性ペレット、腸溶性滴丸剤、腸溶性粒子、腸溶性ナノ粒子、腸溶性徐放製剤、腸溶性放出制御製剤を含むが、これらに限定されない。
【0071】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、大腸でリゾチームを放出する製剤、特に結腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0072】
いくつかの実例では、前記経口腸溶性製剤は、小腸でリゾチームを放出する製剤、特に回腸又は空腸でリゾチームを放出する製剤である。
【0073】
いくつかの実例では、前記経口製剤中のリゾチームの力価は20000U/mgより大きい。
【0074】
いくつかの実例では、前記経口製剤の投与量は0.1~20g/日、好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.3~15g/日、より好ましくは、前記経口製剤の投与量は0.5~6g/日である。
【0075】
いくつかの実例では、前記経口製剤の用量を決定した後、1日に1~3回投与する。
【0076】
本発明の有益な効果は以下のとおりである。
【0077】
本発明が提供する方法、医薬品及びその使用は、血中尿酸レベルを著しく低下させることができ、かつ安全性が非常に高い。特に肝腎機能が弱い人、又は乳幼児、妊婦、中高齢者など耐性が低い人に対して明らかな臨床優位性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、実施例をさらに挙げて本発明を詳しく説明する。以下の実施例は本発明をさらに説明するためにのみ使用され、本発明の保護範囲を限定するものであると理解してならず、当業者が本発明に記述された原理に基づいてなされた非実質的な改良及び調整は、いずれも本発明の保護範囲に属することを理解すべきである。以下に例示される具体的なプロセスパラメータなども、適切な範囲内の1つの例に過ぎず、即ち当業者が本明細書における説明により適切な範囲での選択をすることができ、以下に例示される具体的なデータを限定するものではない。
【0079】
定義
リゾチーム:すなわちLysozymeであり、本発明のリゾチームは、動物、植物、微生物由来のリゾチーム、または天然リゾチームの組換え体であってもよい。例えば、ニワトリ卵白リゾチーム、ヒトリゾチーム、組換えヒトリゾチーム、ファージリゾチームなどであってもよい。本発明におけるリゾチームとしては、その薬学的に許容される塩、例えば塩酸塩、塩化物、硫酸塩またはアミノ酸塩などが挙げられる。リゾチームは、最も早くは、フレミングによって発見された生体内に広く存在する内因性酵素である。リゾチームは、世界的に食用または医薬として認可されている。米国では安全に使用できる物質とされている。WHO、欧州諸国、日本及び中国は、食品添加物としての使用を許可している。中国、日本、シンガポールなどでは、鼻炎、咽頭炎、口腔潰瘍、水痘、帯状疱疹、扁平いぼなどの治療のために、薬用が認可されている。市販されている製品には、Neuzym(R)、Mucozome(R)、来索鋭(R)などが含まれる。リゾチームが抗菌作用を発揮するメカニズムは主に細菌細胞壁中のペプチドグリカンを加水分解することであり、抗ウイルス作用のメカニズムは主に負に帯電したウイルスとの電荷相互作用である。
【0080】
腸溶性製剤:腸溶性製剤とは、胃では薬剤が放出されないか、ほとんど放出されないが、腸に入り、腸のある部位では薬剤の大部分または全部が放出される製剤をいう。人体の腸管は小腸と大腸を含み、その中で小腸は十二指腸、空腸、回腸、大腸は盲腸、結腸、直腸に分けられる。消化管の異なる部位は異なるpH値を有し、例えば胃のpH値は約1~3であり、小腸のpH値は約4~7であり、大腸のpH値は約7~8である。pH依存性分解材料を製剤補助材料として用いることにより、消化管の特定部位に薬剤を指向的に放出する製剤、例えば小腸腸溶性製剤または大腸腸溶性製剤を製造することができる。具体的には、十二指腸腸溶性製剤、空腸腸溶性製剤、回腸腸溶性製剤、盲腸腸溶性製剤、結腸腸溶性製剤または直腸腸溶性製剤などを含むことができる。
【0081】
尿酸性疾患:尿酸性疾患とは、生体内において尿酸レベルの異常に関連する疾患、特に血中尿酸レベルの高すぎることに関連する疾患を指し、高尿酸血症、痛風、尿酸腎症、及び高尿酸によるその他の疾患を含むが、これらに限定されない。一般に、男性の血中尿酸レベルは約420μmol/Lより低く、女性は約360μmol/Lより低く、血中尿酸レベルが正常範囲より高い時は高尿酸状態となり、病的状態が現れ、又は尿酸性疾患を引き起こす可能性がある。
【0082】
腎機能障害:腎機能障害は、腎機能異常である。臨床では血清クレアチニンレベルの測定などの方法で腎機能の状況を把握することができ、これは当業者がよく知っていることである。
【0083】
以下では、動物実験を用いて本発明を具体的に説明する。
【0084】
注:実施例に用いられた試験用動物、試薬等はいずれも市販で入手されたものである。試験において採用された関連試験方法及び関連機器の具体的な操作方式等はいずれも当業者が熟知しているものである。
【0085】
リゾチーム粒子とリゾチーム腸溶性粒子は自製したものを採用し、調製方法は、力価が20000U/mgより高いリゾチームを原料とし、同量のデンプンを添加して均一に混合し、バインダー(水)を添加して造粒し、乾燥し、リゾチーム粒子を得た。調製されたリゾチーム粒子を腸溶性コーティング(HPMC)で包み、リゾチーム腸溶性粒子を得たことである。ベンズブロマロン細粒は市販のベンズブロマロン錠剤を用いて細粒に粉砕したものである。
【0086】
実施例1 リゾチームの高尿酸血症モデル動物の尿酸レベルに対する影響
【0087】
1.1 試験用薬品
リゾチーム粒子、リゾチーム腸溶性粒子、ベンズブロマロン細粒である。投与しやすくなるように、各試験用薬品をそれぞれ0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムで湿潤して均一に混合した。
【0088】
1.2 試験用動物
SDラットである。自由に飲水及び摂食させ、1週間馴らし飼育した後に試験を開始した。
【0089】
1.3 群分けと投与
【0090】
ブランク群以外、残りのラットを12日間モデリングしてから血清尿酸レベルを検出し、各ラットの尿酸レベルに基づいて平均に群分けし、各群の動物は8匹であった。
【0091】
ブランク群:いかなる医薬品も投与しない。
【0092】
モデル対照群:0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムを1日1回で5ml経口投与する。
【0093】
リゾチーム群、リゾチーム腸溶性群:高用量と低用量のリゾチーム粒子とリゾチーム腸溶性粒子をそれぞれ経口投与し、用量は有効成分として1日1回、10mg/kgと30mg/kgである。
【0094】
ベンズブロマロン群:ベンズブロマロン細粒を経口投与し、用量は有効成分として1日1回、30mg/kgである。
【0095】
1.4 モデリングと試験方法
【0096】
試験は計18日間行った。
【0097】
試験1日目に、ブランク群を除いた各群の動物にモデリング剤(オキソン酸カリウム1.5g/kg+尿酸0.3g/kgを0.5%のカルボキシメチルセルロースナトリウムに溶解したもの)を1回経口投与し、モデリングを開始し、その後毎日同量のモデリング剤を同時期に1回投与した。
【0098】
試験開始前(D0)及び試験12日目(D12)に、それぞれ眼窩から0.5mlの血液を採取し、遠心分離させ、血清を取り、尿酸測定キット及びマイクロプレートリーダを用いて血清尿酸レベルを測定するとともに、ラットの新鮮な中段の糞便を0.5g取り、四倍体積のリン酸塩緩衝液で希釈して混合し、遠心分離させ、超音波で均一に混合し、100℃で40分間インキュベートし、冷却してから遠心分離させ、上清を取り、尿酸測定キット及びマイクロプレートリーダを用いて糞便尿酸レベルを測定した。
【0099】
動物血清尿酸レベルが顕著に上昇したことはモデリングに成功したことを示している。その後、各ラットの血清尿酸値に応じて群分けした。試験13日目(D13)から、試験用薬品を毎日胃内投与するとともに、モデリング剤を毎日投与し続け、試験用薬品とモデリング剤の投与間隔は1時間以上である。試験18日目(D18)の後に投与を停止し、前の方法で血清尿酸レベル及び糞便尿酸レベルを再び測定した。
【0100】
1.5 試験結果及び分析処理
【0101】
データを収集してまとめと分析を行い、主な結果を表1及び表2に示した。
【0102】
注:##ブランク群と比較すると、p<0.01、*モデル対照群と比較すると、p<0.05、**モデル対照群と比較すると、p<0.01。
【0103】
注:#ブランク群と比較すると、p<0.05、##ブランク群と比較すると、p<0.01、*モデル対照群と比較すると、p<0.05、**モデル対照群と比較すると、p<0.01。
【0104】
本試験では、外因性尿酸とウリカーゼ阻害剤を投与することにより、ラットに高尿酸血症を発症させ、尿酸排泄促進薬であるベンズブロマロンを陽性対照薬とし、リゾチームがモデル動物の尿酸レベルに与える影響を観察した。
【0105】
血清尿酸検出の結果から、12日目、モデル対照群の血清尿酸は顕著に上昇し、モデリングに成功したことを示した。18日目、リゾチーム群とリゾチーム腸溶性群の血清尿酸レベルはモデル対照群より明らかに低く、リゾチームと腸溶性リゾチームはいずれもモデル動物の血清尿酸レベルを著しく低下させることができることを示した。また、腸溶性リゾチームの血清尿酸低下効果は、陽性対照薬であるベンズブロマロンよりも優れる、ということを示した。
【0106】
糞便尿酸検出の結果から、12日目、モデル対照群の糞便尿酸レベルは顕著に上昇し、外因性尿酸の刺激作用により腸管尿酸排泄に代償的増加が現れた可能性が示唆された。18日目、リゾチーム群とリゾチーム腸溶性群の糞便尿酸レベルはモデル対照群より明らかに高く、陽性薬であるベンズブロマロン群の糞便尿酸レベルは明らかに上昇せず、それが腸管尿酸の排泄を促進できないが、リゾチーム、特に腸溶性リゾチームは腸管尿酸排泄を明らかに促進できることを示す、ということを示した。
【0107】
リゾチームが腸管尿酸排泄を促進することは血清尿酸レベルを低下させる原因の一つである可能性がある。尿酸排泄経路には2種類あり、その大部分は腎臓を通過し、小部分は腸管を通過する。尿細管中のURAT1は尿酸が血に再吸収される重要な輸送体であり、URAT1の抑制は尿酸の腎臓を通じた排泄を促進することができる。腸上皮細胞中のABCG2などの輸送体は血中の尿酸を腸管に輸送し、尿酸の腸管を通じた排泄を促進することができる。現在、例えばベンズブロマロンのような、ほとんどの排泄を促進する尿酸低下薬はいずれも腎臓排泄を促進する方式を採用しているが、腎機能障害の高尿酸血症患者にとって、医薬品は効果を発揮しにくい一方、逆に腎損傷の程度を加重する可能性がある。腸管尿酸排泄を促進する医薬品は、腎機能に制限されることなく血清尿酸レベルを低下させ、腎機能を保護することができ、安全性がより高く、そのため明らかな優位性を持つ。
【0108】
以下では、高尿酸血症患者2名によるリゾチーム腸溶性錠剤(湘北威爾曼製薬有限公司製)の使用状況を記載し、本発明を具体的に説明する。
【0109】
実施例2 リゾチーム腸溶性錠剤による、高尿酸血症と腎機能障害が併発している患者への作用
【0110】
62歳の女性、軽度肥満、この前の健康診断で血清尿酸値550μmol/L、血清クレアチニン値192μmol/Lを発見し、中度の高尿酸血症と中度の腎機能障害を示した。その後、リゾチーム腸溶性錠剤(1日朝晩各1回、1回1g)を毎日服用した。2カ月後の健康診断では、血清尿酸値は430μmol/L、血清クレアチニン値も140μmol/Lに低下した。さらに2カ月間服用を続けたところ、血清尿酸値と血清クレアチニン値の両方とも、正常値に戻った。
【0111】
実施例3 リゾチーム腸溶性錠剤による、高尿酸血症と痛風が併発している患者への作用
【0112】
51歳の男性、痛風を患い、足首と足の指に発赤と腫れ、痛みが目立ち、歩行が困難であった。止痛と尿酸低下のため、イブプロフェン、アロプリノールなどの薬物を服用したことがあるが、効果が良くなく、しかも血清尿酸値は基本的に700μmol/L以上の高いレベルを持続している。リゾチーム腸溶性錠剤(朝昼晩各1回、毎回2g)を毎日服用し、1カ月後に痛み発作頻度が低下し、歩行困難が軽減し、服用の4カ月後の診断で、血清尿酸値が580μmol/Lまで低下した。さらに3カ月服用を続けると、血清尿酸値は400μmol/L以下の正常レベルまで回復し、発赤と腫れは明らかに軽減し、痛みはほとんど発作しなくなった。
【0113】
以上は本発明について一般的な説明及び具体的な実施形態を用いて詳しく説明した。本発明に基づいて、当業者はいくつかの修正及び改良を容易に行うことができる。従って、本発明の精神から逸脱することなくなされたこれらの修正や改良は、いずれも本発明の保護範囲に属する。