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特許7293501被加工物の外径切削加工のための装置および方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-09
(45)【発行日】2023-06-19
(54)【発明の名称】被加工物の外径切削加工のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 41/06 20120101AFI20230612BHJP
   B24B 33/04 20060101ALI20230612BHJP
   B24B 19/06 20060101ALI20230612BHJP
【FI】
B24B41/06 J
B24B33/04
B24B19/06
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022513395
(86)(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-02
(86)【国際出願番号】 DE2020100585
(87)【国際公開番号】W WO2021037299
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
(31)【優先権主張番号】102019123338.0
(32)【優先日】2019-08-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴォイヴォーデ
(72)【発明者】
【氏名】トルステン ロート
【審査官】城野 祐希
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-149259(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第104607682(CN,A)
【文献】特開2006-026831(JP,A)
【文献】特開2001-212701(JP,A)
【文献】特開2000-246504(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 41/06
B24B 33/04
B24B 19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
幾何学的に未定義の切れ刃による被加工物(4)の外径切削加工のための装置であって、回転対称の被加工物(4)をドライバ(7)に対して押圧するように構成されているシュー(1)を備え、前記シュー(1)は、前記被加工物(4)へと差し込まれる回転要素(3)が転がり軸受(14)を使用して支承されている保持要素(2)を有し、前記回転要素(3)は、前記被加工物(4)との接触のために設けられたプラスチックキャップ(28)を有する、装置。
【請求項2】
前記プラスチックキャップ(28)は、前記転がり軸受(14)によって回転可能な金属容器(13)の上に載置されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記金属容器(13)は、前記被加工物(4)との接触のために設けられた前記プラスチックキャップ(28)のつば(32)が当接するつば(26)を有することを特徴とする、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記転がり軸受(14)は、複数列の玉軸受として構成されていることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記転がり軸受(14)は、4つの深溝玉軸受(15、16、17、18)を含むことを特徴とする、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
幾何学的に未定義の切れ刃による被加工物(4)の外径切削加工のための方法であって、
保持要素(2)と、前記保持要素(2)の上に転がり軸受で支承された回転要素(3)と、を含むシュー(1)を提供する工程であって、前記回転要素(3)は、金属容器(13)と、前記金属容器(13)の上に載置されたプラスチックキャップ(28)と、を有する、工程と、
加工対象の被加工物(4)を提供する工程であって、前記被加工物(4)は、前記プラスチックキャップ(28)の外径と適合する直径を有するボアを有する、工程と、
加工機械を提供する工程であって、前記加工機械は、回転駆動部として構成されたドライバ(7)と、幾何学的に未定義の切れ刃を有する非回転工具(8、9)と、を含む、工程と、
前記シュー(1)を前記被加工物(4)の前記ボア内に、前記被加工物(4)が前記シュー(1)上に保持され、かつ同時に前記ドライバ(7)に対して押圧されるように設置する工程と、
回転する記被加工物(4)の外周面を前記非回転工具(8、9)により切削加工する工程と、
を有する、方法。
【請求項7】
前記切削加工は、工具としてホーニング砥石(9)を使用して力を制御して行われることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幾何学的に未定義の切れ刃による被加工物の外径切削加工のための方法に関する。更に、本発明は、そのような加工方法を実行するために構成された装置に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第102009040062(A1)号から、リング形状の被加工物、特に軸受リングの超仕上げのための装置が公知である。その公知の装置は、ホーニング砥石ホルダの往復運動を生成するための往復駆動部を有する、ショートストロークホーニングのための装置を含む。更に、硬質回転工具を収容するために装備されている工具収容部が存在する。
【0003】
回転対称の被加工物において表面の機械的仕上げ加工のための更なる装置が、独国特許第102007054879(B4)号に記載されている。加工対象の被加工物は、複列球面ころ軸受用の軸受リングである。その公知の加工装置の工具キャリアは、様々な駆動部を使用して、ショートストロークの往復運動のみならずロングストロークの往復運動もまた行うことができる。
【0004】
ホーニング工具を使用する内側表面の加工は、独国特許第102011087074(A1)号に記載されている。ホーニング工具は、砥石ストリップおよび追加の安定化ストリップを含む。
【0005】
独国特許第2826169(A1)号には、転がり軸受リングの軌道輪の加工のための研削盤またはホーニング盤が記載されており、転がり軸受リングの外周面または内周面のいずれか一方が加工される。
【0006】
軸受構成要素の製造のための完全な生産ラインは、国際公開第2017/028855(A1)号に開示されている。生産ラインは、とりわけ縦型ホーニング盤の形態のホーニング盤を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の従来技術に対して更に開発を進めた、特に信頼性の高い、幾何学的に未定義の切れ刃による被加工物の外径加工を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本課題は、本発明によれば、請求項1の特徴を有する、被加工物の外径切削加工のための装置によって解決される。同様に、本課題は、請求項6に記載の方法によって解決される。以下に加工方法に関連して説明された本発明の形態および利点は、同様に加工装置にもまた適用され、その逆でもまた適用される。
【0009】
加工装置は、シュー、すなわち被加工物ホルダを含み、シューは、回転対称の被加工物をドライバに対して押圧するように構成されており、シューは、被加工物へと差し込まれる回転要素が転がり軸受を使用して支承されている保持要素を有し、回転要素は、被加工物との接触のために設けられたプラスチックキャップを有する。
【0010】
シューを使用して、被加工物、特に転がり軸受リングは、研削加工またはホーニング加工中に保持される。一般的に、研削法またはホーニング法は、以下の、
保持要素と、保持要素の上に転がり軸受で支承された回転要素と、を含むシューを提供する工程であって、回転要素は、金属容器と、金属容器の上に載置されたプラスチックキャップと、を有する、工程と、
加工対象の被加工物を提供する工程であって、被加工物は、プラスチックキャップの外径と適合する直径を有するボアを有する、工程と、
加工機械を提供する工程であって、加工機械は、回転駆動部として構成されたドライバと、幾何学的に未定義の切れ刃を有する非回転工具と、を含む、工程と、
シューを被加工物のボア内に、被加工物がシュー上に保持され、かつ同時にドライバに対して押圧されるように設置する工程と、
非回転工具により回転被加工物の外周面を切削加工する工程と、
を有する。
【0011】
特に、切削加工は、非回転工具としてホーニング砥石を使用して力を制御して行われる。
【0012】
プラスチックキャップは、好ましくは、被加工物を遊びがなく回転要素の上に保持するように形成されている。プラスチックキャップの製造に用いられる原材料の、可撓性かつ同時に摩擦技術的に有利な特性によって、完全に金属製のホルダが被加工物に設置される解決策と比較して、シューおよび工具が互いの中に移動する際に傾けて配置するリスクが最小化されている。同時に、ドライバにおける特に均一な押圧分布は、加工工程での部品の滑り抜けまたは膠着を防止する。更に、被加工物に対するプラスチックキャップの面接触により、加工時の被加工物の変形は、本質的に排除されている。
【0013】
金属容器およびプラスチックキャップの寸法決めの観点から、またはプラスチックキャップの寸法決めの観点からのみのいずれか一方で互いに区別される、複数の様々な回転要素を提供することによって、多様な種類の被加工物、特に転がり軸受内側リングを、装置を変更する手間を最小にして、1つの同じ加工機械で仕上げることができる。
【0014】
シューの有利な形態では、シューの金属容器は、被加工物との接触のために設けられたプラスチックキャップのつばが当接するつばを有する。金属容器のつばおよびプラスチックキャップのつばを介して、軸線方向の力をリング形状の被加工物に広範囲で伝達可能である。
【0015】
シュー内に組み込まれている転がり軸受は、例えば、複数列の玉軸受、特に4つの深溝玉軸受からなるアレイである。複数の個々の軸受によって、回転要素の特に均一な回転が加工時に達成される。プラスチックキャップを含む回転要素は、加工プロセス中、ドライバの回転数にほぼ整合する、または完全に整合する。これは、加工中、特にホーニング中、回転要素と被加工物との間で滑り運動がない、またはほとんどないことを意味する。
【0016】
以下で本発明の実施例を図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】回転可能な被加工物を保持するために設けられたシューの断面斜視図である。
図2】シューを用いて保持された被加工物の加工の断面概略図である。
図3】シューの金属容器の断面図である。
図4】金属容器の斜視図である。
図5】シューのプラスチックキャップの断面図である。
図6】プラスチックキャップの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1図6は、幾何学的に未定義の切れ刃による被加工物4の外径切削加工時に被加工物4を保持するための、全体としてシュー1と称する装置の全体または一部を示す。本明細書の事例では、被加工物4は、転がり軸受の内側リングである。内側リング4のへりは、6と表示され、転動体、特にローラ用の軌道輪は、5と表示されている。軌道輪5を加工するための工具8は、ホーニング砥石9を含む。
【0019】
シュー1の構成要素は、保持要素2および保持要素2の上に支承された回転要素3である。回転要素3は、リング形状の被加工物4を加工するために被加工物4内に進入し、その際、被加工物4は、ドライバ7に対して押される。ドライバ7の回転軸線は、Mと表示された回転要素3の中心軸線と同一であり、したがって、シュー1全体の中心軸線と同一である。保持要素2によって、図示していない収容部内に設置されている接続区分10、接続区分10に隣接するディスク区分11、およびディスク区分11に隣接する軸受区分12が形成されている。回転要素3は、全体として14と表示された転がり軸受を用いて、すべての区分10、11、12のうち一番小さい直径を有する軸受区分12の上に支承されている。
【0020】
回転要素3は、金属容器13および金属容器13の上に載置されたプラスチックキャップ28から構成されている。金属容器13を軸受区分12の上に支承する転がり軸受14は、4つの玉軸受15、16、17、18を含み、玉軸受の内側リングは、それぞれ19と表示され、玉軸受の外側リングは、20と表示されている。合計8つの軸受リング19、20の間で、4列の玉21が転動体として回転する。したがって、転がり軸受14は、全体として4列軸受である。
【0021】
金属容器13は、24と表示された金属容器13の底部の中心に、ねじ22の頭部が配置されているボア23を有し、ねじ22は、軸受区分12内にねじ込まれている。シュー1の規定どおりの動作では、ねじ22の頭部とボア23の壁面との間に間隙が形成されているため、金属容器13を含む回転要素3全体は、自由に回転することができる。ねじ22は、固定要素の機能を有し、固定要素は、例えば、回転要素3を被加工物4から引き出す際に、転がり軸受14の構成要素の軸受区分12からの引き抜きまたは転がり軸受14の構成要素の過負荷を防止する。
【0022】
金属容器13の底部24には、円筒形区分25が接続しており、底部24と円筒形区分25との間で金属容器13の外周面に、面取り部33が形成されている。底部24と反対側の、金属容器13の開放された前面には、金属容器13は、径方向外側に向けられたつば26、すなわちフランジを有する。27と表示されたディスク区分11の前面と、つば26との間には、シュー1の規定どおりの動作時に、間隙が形成されている。つば26の外径は、本実施例では、ディスク区分11の外径に一致する。円筒形区分25の壁厚は、図3においてWと表示されている。
【0023】
金属容器13の上に載置されたプラスチックキャップ28は、図5および図6に詳細に図示されている。プラスチックキャップ28の底部は、29と表示され、一緒に組み立てた状態で金属容器13を直接取り囲む円筒形区分は、30と表示されている。底部29と円筒形区分30との間に、面取り部31が形成されている。プラスチックキャップ28の開放された前面には、完全な取付状態で金属容器13のつば26に当接する、つば32がある。つば32の外径は、つば26の外径に一致する。プラスチックキャップ28の円筒形区分30の、Wと表示された壁厚は、金属容器13の壁厚Wの半分未満である。シュー1の動作時、軸線方向の力を回転要素3からディスク区分11への方向に作用させる場合、この力は、外側リング20から転動体21を介して内側リング19に伝達される。玉軸受15、16、17、18の個々の内側リング19は、互いに隣接している。接続区分10から最も近い玉軸受15の内側リング19の変位は、リング形状で取り囲む当接面34によって軸受区分12において阻止される。全体として、転がり軸受14は、軸線方向、すなわち中心軸線Mの長さ方向に延在し、複数部品で構築された回転要素3の同一方向で測定した長さの半分を超える。
【符号の説明】
【0024】
1 シュー
2 保持要素
3 回転要素
4 被加工物、外側リング
5 軌道輪
6 へり
7 ドライバ
8 工具
9 ホーニング砥石
10 接続区分
11 ディスク区分
12 軸受区分
13 金属容器
14 転がり軸受アレイ
15 玉軸受
16 玉軸受
17 玉軸受
18 玉軸受
19 内側リング
20 外側リング
21 玉
22 ねじ
23 ボア
24 金属容器の底部
25 金属容器の円筒形区分
26 金属容器のつば
27 ディスク区分の前面
28 プラスチックキャップ
29 プラスチックキャップの底部
30 プラスチックキャップの円筒形区分
31 プラスチックキャップの面取り部
32 プラスチックキャップのつば
33 金属容器の面取り部
34 当接面
M 中心軸線
金属容器の壁厚
プラスチックキャップの壁厚
図1
図2
図3
図4
図5
図6