(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ワーク搬送用ハンド
(51)【国際特許分類】
H01L 21/677 20060101AFI20230613BHJP
B25J 15/06 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L21/68 B
B25J15/06 A
(21)【出願番号】P 2019057942
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-10-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(72)【発明者】
【氏名】井浦 惇
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-200712(JP,A)
【文献】特開2002-310330(JP,A)
【文献】特開2007-313607(JP,A)
【文献】特開2003-158169(JP,A)
【文献】特開平10-316242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/677
B25J 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークを支持する支持プレートと、
上記支持プレートに互いに離間して配置され、上記ワークを真空吸着するための4つ以上の複数の吸着パッドと、
一方端が上記複数の上記吸着パッドそれぞれに各別に連通し、他方端が真空発生源に連通させられる、複数の通気流路と、
上記複数の通気流路それぞれに対応して設けられ、上記真空発生源の負圧によって上記吸着パッドが上記ワークを吸着する吸着状態において開き、かつ上記吸着パッドが上記ワークを吸着しない非吸着状態において閉じる、複数の負圧作動弁と、を備え
、
上記支持プレートは、厚さ方向である第1方向の一方側を向く第1面と、上記第1方向の他方側を向く第2面と、を有し、
上記支持プレートには、上記第1面から凹み、上記吸着パッドを装着するための吸着用凹部が形成されており、
上記吸着パッドは、吸着用凹部に配置され、弾性を有するとともに上記第1方向の一方側を向く吸着面を有するパッド部と、上記パッド部の外周部につながり、かつ上記第1方向の一方側に向かうにつれて拡がるように傾斜し、可撓性を有する環状のスカート部と、を有し、
上記吸着面は上記第1面よりも上記第1方向の一方側に位置し、上記スカート部の先端は、上記吸着面よりも上記第1方向の一方側に位置しており、
上記支持プレートには、各々が上記第1面よりも上記第1方向の一方側に突出し、弾性を有する4以上の複数の弾性パッドが配置されており、
上記弾性パッドの先端は、上記第1方向において上記吸着面と同じ位置、または上記吸着面よりも上記第1方向の一方側にある、ワーク搬送用ハンド。
【請求項2】
上記各弾性パッドは、上記第1方向に見て上記複数の吸着パッドにより囲まれた領域の外側に配置される、請求項
1に記載のワーク搬送用ハンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板等の薄板状のワークを搬送するのに用いられる、ワーク搬送用ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
基板等の薄板状のワークを搬送ロボットにより高速搬送する際、ワークが支持するハンドからずれないように当該ワークを把持することが求められる。ワークを把持する一般的な手法として、負圧を利用した真空吸着の機能を備えたワーク搬送用ハンドが知られている(たとえば特許文献1を参照)。
【0003】
同文献にも示されるように、真空吸着の機能を備えたワーク搬送用ハンドには複数の吸着パッドが設けられており、これら吸着パッドそれぞれに分岐状の通気流路の一方端が連通している。分岐状の流路の他方端は共通の真空ポンプ(真空発生源)に連通しており、真空ポンプの吸引力によって複数の吸着パッドにおいてワークが吸着把持される。基板等のワークは平面サイズが大型化し、かつ薄型化が進んでおり、重力や所定の処理の影響により、一方向に反ることがある。上記特許文献1に開示されたワーク搬送用ハンドにおいては、吸着パッドがワークの反りに追従することが可能に構成されている。
【0004】
近年、たとえばFOPLP(Fan-Out Panel Level Packaging)などの新しい半導体パッケージ技術が注目されている。このFOPLPの処理では、従来のFPD(Flat Panel Display)で使用されていたようなガラス基板の他に樹脂で成形された基板が使用される場合がある。樹脂で成形された基板はサイズが大きくなると、ガラス基板のような一方向の反りだけではなく、水面のように不規則な凹凸を有する形状となる。上記従来の吸着パッドを具備するハンドでは、基板に十分に密着しない吸着パッドがあると、エア漏れにより分岐流路の真空圧が低下して十分な把持力が発生しないことがある。把持力の低下は基板(ワーク)のズレ、滑落、または吸着エラーによる装置の停止を引き起こし、品質や生産性を損なう要因となる。
【0005】
その一方、たとえば特許文献2に開示されるように、複数の電磁弁により分岐させた各経路を独立して開閉操作できるワーク搬送用ハンドも知られている。しかしながら、このような電磁弁を用いた手法では、吸着可否の判断をするための流量センサや電磁弁、およびその配線や制御が必要であり、複雑なシステムとなってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-103696号公報
【文献】特開2003-158169号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、構造が複雑になるのを回避しつつ、薄板状のワークを適切に吸着把持するのに適したワーク搬送用ハンドを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0009】
本発明によって提供されるワーク搬送用ハンドは、薄板状のワークを支持する支持プレートと、上記支持プレートに互いに離間して配置され、上記ワークを真空吸着するための4つ以上の複数の吸着パッドと、一方端が上記複数の上記吸着パッドそれぞれに各別に連通し、他方端が真空発生源に連通させられる、複数の通気流路と、上記複数の通気流路それぞれに対応して設けられ、上記真空発生源の負圧によって上記吸着パッドが上記ワークを吸着する吸着状態において開き、かつ上記吸着パッドが上記ワークを吸着しない非吸着状態において閉じる、複数の負圧作動弁と、を備える。
【0010】
好ましい実施の形態においては、上記支持プレートは、厚さ方向である第1方向の一方側を第1面と、上記第1方向の他方側を向く第2面と、を有し、上記支持プレートには、上記第1面から凹み、上記吸着パッドを装着するための吸着用凹部が形成されており、上記吸着パッドは、吸着用凹部に配置され、弾性を有するとともに上記第1方向の一方側を向く吸着面を有するパッド部と、上記パッド部の外周部につながり、かつ上記第1方向の一方側に向かうにつれて拡がるように傾斜し、可撓性を有する環状のスカート部と、を有し、上記吸着面は上記第1面よりも上記第1方向の一方側に位置し、上記スカート部の先端は、上記吸着面よりも上記第1方向の一方側に位置する。
【0011】
好ましい実施の形態においては、上記支持プレートには、各々が上記第1面よりも上記第1方向の一方側に突出し、弾性を有する4以上の複数の弾性パッドが配置されており、上記弾性パッドの先端は、上記第1方向において上記吸着面と同じ位置、または上記吸着面よりも上記第1方向の一方側にある。
【0012】
好ましい実施の形態においては、上記各弾性パッドは、上記第1方向に見て上記複数の吸着パッドにより囲まれた領域の外側に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るワーク搬送用ハンドは、4つ以上の複数の吸着パッドそれぞれに各別に連通する複数の通気流路と、複数の通気流路それぞれに対応して設けられた複数の負圧作動弁とを備える。負圧作動弁は、真空発生源による負圧の作用時において、吸着パッドがワークWを吸着する吸着状態において開き、吸着パッドがワークWを吸着しない非吸着状態において閉じる。このような構成によれば、不規則な凹凸を有するワークを搬送する場合において、ワークに十分に密着しない吸着パッドが存在する場合においても、負圧作動弁の作動によって真空圧の低下が抑制される。したがって、従来のようなワークに密着しない吸着パッドからのエア漏れによる把持力低下を防止し、薄板状のワークを適切に搬送することができる。
【0014】
また、負圧作動弁は、真空発生源による負圧の作用時において、吸着状態または非吸着状態のいずれの状態であるかに応じて、自動的に開閉動作がなされる。このような負圧作動弁を用いることで、たとえば電磁弁を用いて当該電磁弁の開閉を制御する場合等と比べて、簡易な構造によって的確にワークを把持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明に係るワーク搬送用ハンドの一例を示す平面図である。
【
図2】
図1に示すワーク搬送用ハンドの正面図である。
【
図6】吸着パッドによりワークを吸着把持する状態の一例を示す
図4と同様の断面図である。
【
図7】負圧作動弁の概略構造の一例を示す断面図であり、負圧作動弁が閉じた状態を示す。
【
図8】
図7と同様の断面図であり、負圧作動弁が開いた状態を示す。
【
図9】弾性パッドの配置を説明するための概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態につき、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0017】
図1および
図2は、本発明に係るワーク搬送用ハンドの一例を示している。本実施形態のワーク搬送用ハンドA1は、支持プレート1、中継部2、ベース部3、吸着パッド4、通気流路5、負圧作動弁6、弾性パッド7、およびセンサ8を備えている。
【0018】
詳細な図示説明は省略するが、ワーク搬送用ハンドA1は、搬送ロボットに組み付けられ、基板等の薄板状のワークWを搬送するのに使用される。搬送ロボットは、ベース部3(ワーク搬送用ハンドA1)を上下移動および垂直軸線周りに旋回移動させるとともに、所定の搬送方向Xに沿って往復移動させる。中継部2および支持プレート1は、ベース部3に支持されている。
【0019】
支持プレート1は、ワークWが載置されるプレートであり、厚さ方向である方向Zの上方側(一方側)を向く上面1A、および方向Zの下方側(他方側)を向く下面1Bを有する。支持プレート1は、基部11および一対のフォーク部12を有する。基部11は、平面視矩形状であり、ボルト締結等の適宜手段によりベース部3の端部に固定される。基部11の幅方向である方向Yの寸法は、ワークWのサイズに対応している。一対のフォーク部12は、基部11の方向Yにおける両端部から搬送方向Xに沿って長状に延びる。本実施形態において、支持プレート1(基部11およびフォーク部12)は、その厚さが薄くされている。支持プレート1は、たとえばセラミックス材料からなり、その厚さはたとえば3mm程度である。支持プレート1の詳細については後述する。
【0020】
ベース部3は、平面視略矩形の板状であり、このベース部3上に中継部2が配置される。中継部2は、たとえば断面矩形の中空状とされており、後述する樹脂チューブ51や配線81が中継部2の内部空間に通される。
【0021】
吸着パッド4は、ワークWを真空吸着するものであり、支持プレート1上に複数配置される。具体的には、4つ以上の複数の吸着パッド4が互いに離間して配置されている。本実施形態において、4つの吸着パッド4を具備しており、2つの吸着パッド4が基部11に配置され、他の2つの吸着パッド4が一対のフォーク部12の先端付近に各別に配置されている。
【0022】
図3、
図4に示すように、吸着パッド4は、弾性を有するパッド部41と、スカート部42とを有する。支持プレート1の1上面1Aには、吸着パッド4を装着するための吸着用凹部13が形成されており、吸着用凹部13にパッド部41が配置される。パッド部41は、概略円柱状とされており、中央には方向Zに貫通する貫通孔412が形成されている。
【0023】
パッド部41の先端部(上端部)は、支持プレート1の上面1Aよりも上方に突出する。パッド部41の先端面はフラットであり、ワークWを吸着把持する吸着面411とされている。吸着面411は、支持プレート1の上面1Aよりも上方(方向Zにおける一方側)に位置する。パッド部41の先端部は、部分的に切り欠かれた形状とされている。
図3においては、理解のために吸着面411の形成範囲にハッチングを付している。
【0024】
図3、
図4に示すように、スカート部42は、パッド部41の外周部につながっており、環状とされている。スカート部42は、その厚さが比較的小さくされており、可撓性を有する。スカート部42は、上方(方向Zの一方側)に向かうにつれて拡がるように傾斜している。スカート部42の先端は、吸着面411よりも上方(方向Zの一方側)に位置する。
【0025】
上記パッド部41およびスカート部42を具備する吸着パッド4は、たとえばゴム材料により一体成形されている。吸着パッド4は、接着等の適宜手段により支持プレート1(フォーク部12もしくは基部11)に固定される。
【0026】
支持プレート1の厚さが薄い場合、支持プレート1の厚さに対する吸着用凹部13の深さの比率は比較的大きくされており、当該比率は1/2以上である。支持プレート1の厚さが3mmの場合、吸着用凹部13の深さはたとえば2mmである。この場合、支持プレート1において吸着用凹部13が形成された部位の厚さは、1mmである。
【0027】
図6は、吸着パッド4によりワークWを吸着把持する状態の一例を示す。同図から理解されるように、ワークWが吸着把持されるとき、パッド部41の吸着面411にワークWが密着する。その一方、パッド部41に形成された切欠き部を通じて、パッド部41の外部周囲と貫通孔412とが連通する。スカート部42については周縁部がワークWに密着し、スカート部42の内側空間の気密性が保持される。したがって、ワークWにおいては、スカート部42によって囲まれた領域に真空圧(負圧)による吸引力が作用する。
【0028】
図1に示した通気流路5は、真空発生源と吸着パッド4の間をつなぐ流路であり、複数の吸着パッド4それぞれに対応して複数設けられている。ベース部3にはチャンバ31が配置されており、複数の通気流路5は、それぞれが後述の負圧作動弁6を介して共通のチャンバ31に接続される。チャンバ31には、真空発生源としての真空ポンプPが連通接続される。
【0029】
通気流路5は、樹脂チューブ51、凹溝15、連絡用凹部16、および貫通孔17を含んで構成される。樹脂チューブ51は、ベース部3および中継部2にまたがって配置されている。
図3、
図4に示すように、凹溝15は、支持プレート1の下面1Bから所定の深さ凹んでおり、断面略矩形状とされている。凹溝15は、基部11における寄りのベース部3寄りの端部から各吸着パッド4の近傍まで延びている。凹溝15の幅は、たとえば2mm程度である。なお、
図1、
図2に示すように、凹溝15のベース部3寄りの端部と樹脂チューブ51の端部とは、ベンド継手52を介して連通している。
【0030】
図3~
図5に示すように、連絡用凹部16は、支持プレート1の下面1Bから所定の深さ凹んでおり、平面視(方向Z視)において吸着用凹部13と重なる部位から凹溝15と重なる部位まで形成される。連絡用凹部16の深さは、吸着用凹部13が形成された部位の支持プレート1の厚さ(1mm)よりも小さくされている。連絡用凹部16の深さは、たとえば0.5mm程度である。貫通孔17は、平面視(方向Z視)において吸着パッド4の貫通孔412と重なっている。
【0031】
図4に示すように、支持プレート1の下面1Bには、アルミシート18が貼り付けられている。アルミシート18は、凹溝15および連絡用凹部16を覆っている。このような構成により、凹溝15と吸着パッド4(貫通孔412)とは、連絡用凹部16および貫通孔17を介して連通している。
【0032】
連絡用凹部16の深さは、上記のように0.5mmと小さくされている。一方、連絡用凹部16の幅は、凹溝15の幅よりも大きくされている。これにより、深さが小さい連絡用凹部16においても所定以上の流路断面積が確保される。凹溝15の幅が2mmの場合、連絡用凹部16の幅はたとえば8mm程度である。
【0033】
図5に示すように、本実施形態において、平面視において連絡用凹部16と重なるように凸部19が設けられている。凸部19は、下面1Bと連絡用凹部16の外周縁の内側において凹まずに島状に残存する部分である。
図5においては、理解のためにアルミシート18を仮想線で表し、また、凸部19の形成範囲にハッチングを付している。
【0034】
上述のように連絡用凹部16は、凹溝15と比べて幅が大きく、かつ深さが小さい。連絡用凹部16においては、吸着パッド4によってワークWを吸着把持する際、負圧によってアルミシート18が連絡用凹部16に進入して流路が塞がるおそれがある。本実施形態では、上記凸部19が設けられることによってアルミシート18が連絡用凹部16に進入するのを防止し、上述の流路が塞がるという不都合を回避することができる。
【0035】
負圧作動弁6は、真空ポンプPによる負圧の作用時に、吸着パッド4がワークWを吸着して閉塞された状態(吸着状態)と、吸着パッド4がワークWを吸着せずに開放する状態(非吸着状態)とで作動状態が切り換わる作動弁である。本実施形態において、負圧作動弁6は、各通気流路5とチャンバ31との間に設けられている。
【0036】
図7および
図8は、負圧作動弁6の概略構造の一例を示している。負圧作動弁6は、たとえばハウジング61、可動体62、シール材63、および付勢部材64を備えて構成される。ハウジング61は、可動体62を収容しており、真空側通路611およびワーク側通路612を有する。真空側通路611は、チャンバ31に接続されており、チャンバ31を介して真空ポンプPに連通させられる。ワーク側通路612は、樹脂チューブ51(通気流路5)に接続されており、通気流路5を介して吸着パッド4に連通する。
【0037】
可動体62は、ハウジング61の内部空間に収容されており、図中左右方向にスライド移動可能とされている。付勢部材64は、ハウジング61と可動体62間に介在している。付勢部材64は、可動体62に図中右側への付勢力を与えるものであり、たとえば圧縮コイルばねである。シール材63は、可動体62の左端部近傍に装着されており、たとえばOリングである。
【0038】
可動体62は、概略円筒状とされており、通気孔621および開口622を有する。通気孔621は、可動体62左端部に形成された小径の絞り孔である。開口622は、可動体62の周壁に形成されたエア流路である。
【0039】
真空ポンプPによる負圧の作用時において、吸着パッド4が開放する非吸着状態にあると、真空圧(負圧)の吸引力によって小径の通気孔621をエアが流れ、可動体62が
図7に示すように図中左側に移動する。ここで、シール材63がハウジング61に密着し、開口622側の流路は閉じている。可動体62は、通気孔621を流れるエア圧によって図中左側への押圧力が作用し、シール材63がハウジング61に密着する状態が維持される。このとき、負圧作動弁6は閉じた状態である。通気孔621は小径の絞り孔であるので、負圧作動弁6が閉じた状態にあるときにチャンバ31側の真空圧の低下が抑制される。
【0040】
真空ポンプPによる負圧の作用時において、ワークWが吸着パッド4に吸着されると、通気流路5からの吸込流量が減少ないし無くなる。そうすると、
図8に示すように、付勢部材64による付勢力によって可動体62が図中右側に押し付けられ、シール材63がハウジング61から離れる。このとき、開口622を介して真空側通路611とワーク側通路612とが連通しており、負圧作動弁6は開いた状態になる。
【0041】
なお、吸着把持したワークWを吸着パッド4から離す際には、開放用のエアをチャンバ31側から負圧作動弁6に供給することで、開いた状態の負圧作動弁6を介してワークW側(通気流路5および吸着パッド4)にエアが流れ、ワークWの吸着が開放される。
【0042】
図1に示すように、弾性パッド7は、支持プレート1上に複数配置されている。弾性パッド7の個数は、吸着パッド4と同数または吸着パッド4の個数よりも多くされる。本実施形態において、4つの弾性パッド7が互いに離間して配置されており、これら弾性パッド7は、それぞれが各吸着パッド4に対応して当該吸着パッド4の近傍に配置される。具体的には、2つの弾性パッド7が基部11に配置され、他の2つの弾性パッド7が一対のフォーク部12の先端付近に各別に配置されている。また、
図9に示すように、各弾性パッド7は、平面視(方向Z視)において複数の吸着パッド4により囲まれた領域S(同図においてハッチングを付す)の外側に配置される。
【0043】
図3、
図4に示すように、支持プレート1の上面1Aには、弾性パッド7を装着するための弾性パッド用凹部14が形成されており、弾性パッド用凹部14に弾性パッド7が配置される。弾性パッド7は、たとえば概略円状とされており、支持プレート1の上面1Aよりも上方に突出する。
【0044】
支持プレート1の上面1Aから弾性パッド7の先端面71(先端)までの寸法L2は、上面1Aから吸着パッド4の吸着面411までの寸法L1と同一、または当該寸法L1よりも僅かに大きくされる。即ち、弾性パッド7の先端面71は、方向Zにおいて吸着パッド4の吸着面411と同じ位置、または吸着面411よりも上方(方向Zの一方側)に僅かに偏倚した位置にある。弾性パッド7は、たとえばゴム材料からなり、接着等の適宜手段により支持プレート1(フォーク部12もしくは基部11)に固定される。
【0045】
センサ8は、ワークWの有無やワークWの位置などを検出するものであり、支持プレート1の基部11に配置されている。センサ8による検出データは、支持プレート1、中継部2ないしベース部3に配置された配線81を介して、図示しない搬送ロボットに送信可能とされる。
【0046】
次に、本実施形態の作用について説明する。
【0047】
本実施形態のワーク搬送用ハンドA1は、4つ以上の複数の吸着パッド4それぞれに各別に連通する複数の通気流路5と、複数の通気流路5それぞれに対応して設けられた複数の負圧作動弁6とを備える。
図7および
図8を参照して説明したように、負圧作動弁6は、真空ポンプP(真空発生源)による負圧の作用時に、吸着パッド4がワークWを吸着する状態(吸着状態)において開き、吸着パッド4がワークWを吸着しない状態(非吸着状態)において閉じる。このような構成によれば、FOPLPなどに適用される不規則な凹凸を有する基板等のワークWを搬送する場合において、ワークWに十分に密着しない吸着パッド4が存在する場合においても、負圧作動弁6の作動によって真空圧の低下が抑制される。したがって、従来のようなワークに密着しない吸着パッドからのエア漏れによる把持力低下を防止し、薄板状のワークWを適切に搬送することができる。なお、ワーク搬送用ハンドA1は4つ以上の吸着パッド4を具備するため、少なくとも3つの吸着パッド4によってワークWが安定的に吸着把持される。
【0048】
また、上記の負圧作動弁6は、真空ポンプP(真空発生源)による負圧の作用時において、吸着状態または非吸着状態のいずれの状態であるかに応じて、自動的に開閉動作がなされる。このような負圧作動弁6を用いることで、たとえば電磁弁を用いて当該電磁弁の開閉を制御する場合等と比べて、簡易な構造によって的確にワークWを把持することが可能となる。
【0049】
吸着パッド4は、弾性を有するパッド部41と、可撓性を有するスカート部42とを有する。パッド部41は、支持プレート1の上面1Aに形成された吸着用凹部13に配置されており、スカート部42は外周部から上方に向かうにつれて傾斜する。パッド部41の吸着面411は支持プレート1の上面1Aよりも上方に位置し、スカート部42の先端は吸着面411よりも上方に位置する。このような構成の吸着パッド4は、たとえば単一部材によって構成することが可能であり、構造を簡易化し、高さ方向(方向Z)における寸法を小さくするのに適する。吸着パッド4の高さ方向における寸法を小さくすることで、厚さが薄くされた支持プレート1に配置するのにも適する。なお、吸着パッド4の高さ方向の寸法を比較的大きくする場合、吸着パッド4について硬質な支持部を有する構成としてもよく、当該支持部にパッド部41を固定すればよい。
【0050】
本実施形態において、支持プレート1には上面1Aよりも上方に突出する複数(4つ以上)の弾性パッド7が配置されている。弾性パッド7の先端面71は、第1方向において吸着パッド4の吸着面411と同じ位置、または吸着面411よりも上方に位置する。このような構成によれば、ワークWを搬送する際に弾性パッド7がワークWに当接可能であり、ワークWを支持する部位を増やすことが可能である。これにより、ワークWの搬送時に生じる振動等の影響を低減し、ワークWを安定して搬送することができる。
【0051】
図9を参照して説明したように、各弾性パッド7は、平面視(方向Z視)において複数の吸着パッド4により囲まれた領域Sの外側に配置される。このような構成によれば、弾性パッド7によってワークWの外周縁に近い部位を支持することが可能である。したがって、ワークWの平面サイズが比較的大きい場合において、搬送時の振動等によるバタつきを抑制することができる。
【0052】
また、ワークWの平面サイズが比較的大きい場合、ワークWを支持プレート1上に載置するとき、ワークWの自重により当該ワークWの中央部が周縁部よりも下がるように変形する場合がある。このような場合においても、吸着パッド4により囲まれた領域Sの外側に配置される各弾性パッド7の先端面71を吸着面411よりも適宜高くしておくことで、弾性パッド7によってワークWの外周縁に近い部位を支持することが可能になる。
【0053】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明の範囲は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に包摂される。
【0054】
上記実施形態において、支持プレート1の厚さが薄い場合について説明し、ワーク搬送用ハンドA1が中継部2と、支持プレート1を支持するベース部3とを具備する構成とされていたが、これに限定されない。たとえば支持プレート1の厚さが比較的大きい場合、中継部2やベース部3を具備しない構成としてもよい。また、支持プレート1を構成する材料についても、たとえば金属材料やCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複合材料を選択することができ、支持プレート1を中空状に構成してもよい。
【0055】
上記実施形態では、負圧作動弁6が各通気流路5の端部に設けられる場合を例に挙げて説明したが、負圧作動弁6は通気流路5の途中に設けてもよい。
【符号の説明】
【0056】
A1:ワーク搬送用ハンド、1:支持プレート、1A:上面(第1面)、1B:下面(第2面)、13:吸着用凹部、4:吸着パッド、41:パッド部、411:吸着面、42:スカート部、5:通気流路、6:負圧作動弁、7:弾性パッド、71:先端面71(弾性パッドの先端)、W:ワーク、P:真空ポンプ(真空発生源)、Z:方向(第1方向)