(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】収納部の設置構造及び建物ユニット
(51)【国際特許分類】
E04B 1/348 20060101AFI20230613BHJP
E04H 1/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
E04B1/348 L
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2019059411
(22)【出願日】2019-03-26
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】504093467
【氏名又は名称】トヨタホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】吉田 憲司
【審査官】兼丸 弘道
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-266594(JP,A)
【文献】特開平08-205986(JP,A)
【文献】実開昭62-197978(JP,U)
【文献】実開平04-091899(JP,U)
【文献】特開2018-201643(JP,A)
【文献】特開2016-186152(JP,A)
【文献】特開平10-299271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/02
E04B 1/348
A47G 29/00
E04F 19/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の1階に設けられる玄関部と当該玄関部に隣接して設けられるガレージ開口部と有する建物ユニットに設置される収納部の設置構造であって、
前記建物ユニットは、
互いに直交する第1床梁と第2床梁を含んで直方体状をなす躯体フレームと、
前記第2床梁の一部を取り除き、前記ガレージ開口部を形成する床梁除去部と、
前記躯体フレームの内部において、前記第2床梁と平行するように延在する第1外壁と、
前記第1外壁の一側に接続され、前記第1床梁に沿って延在する第2外壁と、
前記第2外壁の外端部から
前記第2床梁に沿って延在し、前記床梁除去部に隣接して設けられた第3外壁と、
前記第1外壁に設けられる玄関扉と、を備え、
前記第1外壁と前記第2外壁と前記第3外壁とによって平面視で三方を囲まれた空間内に前記収納部を形成し、当該収納部が前記第1外壁に設けられた玄関扉に隣接して設けられる、
収納部の設置構造。
【請求項2】
前記第1外壁と前記第2外壁と前記第3外壁は、前記収納部の内部の意匠面を構成する外装材と、建物高さ方向の所定の領域に配置され、前記外装材に裏張りされると共に、前記収納部に固定される設置部材が固定可能な裏張材と、
を有する、
請求項1に記載の収納部の設置構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、収納部の設置構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、建物の玄関部(玄関戸)の横に収納部(宅配ボックス)を設けた収納部の設置構造が開示されている。この収納部は、外壁を貫通する開口部を介して建物の内部(室内)と外部を連通させ、当該外壁の内部空間を利用して構成されている。
【0003】
また、特許文献2には、集合住宅において、隣り合った玄関部(玄関扉)の間に配置される外壁(玄関外壁)に収納部(宅配ボックス装置)が設けられた収納部の設置構造が開示されている。この収納部は、外壁に形成された枠状のフレーム(縦枠部、縦桟部、横桟部)に支持された筐体状に形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2003-038336号公報
【文献】特開2014-046137号公報
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載された技術では、収容部を設置する為に建物の外壁を貫通する開口部を設ける必要があるため、施工に手間が掛かる。
【0006】
また、上記特許文献2に記載された技術では、収容部を構成する筐体が外壁から露出しているため、建物の屋外側から目につきやすく、防犯上好ましくない。よって、上記先行技術は、これらの点において改善の余地がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事実を考慮し、建物の外部に収納部が形成される場合において、容易に施工でき、かつ、防犯性に優れた収納部の設置構造及び建物ユニットを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様に係る収納部の設置構造は、建物の屋外部に面して設けられた第1外壁と、前記第1外壁に略直交して配置された第2外壁と、前記第2外壁の外端部から前記第1外壁側へ延在すると共に、前記第1外壁と前記第2外壁との間に荷物の出し入れが可能な収納部を形成する第3外壁と、を有している。
【0009】
第1の態様に係る収納部の設置構造では、建物の第1外壁、第2外壁、第3外壁に囲まれた空間に収納部が形成される構造であるため、施工が容易である。また、当該収納部は平面視で三方が外壁で囲まれているため、建物の屋外側から視認されにくく、防犯性に優れる。
【0010】
第2の態様に係る収納部の設置構造は、第1の態様に記載の構成において、前記収納部は、前記建物の玄関部に隣接して設けられると共に、前記第1外壁と前記第2外壁と前記第3外壁は、平面視で前記玄関部側に向かって一方が開放された空間を形成形している。
【0011】
第2の態様に係る収納部の設置構造では、収納部が玄関部側に隣接して設けられており、収納部が形成される空間は、第1外壁、第2外壁、第3外壁によって三方が囲まれると共に、玄関部側の一方のみが開放されている。このため、玄関部の正面側からは、収納部が外壁部に囲われているため視認されない。これにより、玄関部の正面側から収納部の存在がわかり難いので、防犯性に優れる。また、玄関部を出入りする際に収納部から荷物の出し入れが可能であるため、利便性が高まる。
【0012】
第3の態様に係る収納部の設置構造は、第1の態様又は第2の態様に記載の構成において、前記第1外壁と前記第2外壁と前記第3外壁は、前記収納部の内部の意匠面を構成する外装材と、建物高さ方向の所定の領域に配置され、前記外装材に裏張りされると共に、前記収納部に固定される設置部材が固定可能な裏張材と、を有している。
【0013】
第3の態様に係る収納部の設置構造では、第1外壁、第2外壁、第3外壁において、収納部の内部の意匠面を構成する外装材に裏張材が裏張りされている。この裏張材は、建物高さ方向の所定の領域に設定されている。このため、第1外壁、第2外壁、第3外壁の施工が完了した後に、裏張材の設定領域を利用して、収納部に棚板や固定具等の設置部材を居住者の好みに合わせて容易に設置することができる。
【0014】
第4の態様に係る収納部の設置構造は、第1の態様~第3の態様の何れか1態様に記載の構成において、前記収納部には、宅配ボックスが配置されている。
【0015】
第4の態様に係る収納部の設置構造では、収納部に宅配ボックスが配置されている。このため、不在時に配達された荷物を収納部で受け取ることができ、かつ、宅配ボックスが建物の屋外側から視認されにくいため、防犯性に優れる。
【0016】
第5の態様に係る収納部の設置構造は、第4の態様に記載の構成において、前記宅配ボックスは、施錠システムと連動しており、前記施錠システムは、前記宅配ボックス及び前記収納部に隣接した玄関扉の使用状態を検知する検知部と、前記検知部の検知結果に基づいて、前記宅配ボックスの扉が解錠状態の時に、前記玄関扉を開くことができないように制御する制御部と、を備えている。
【0017】
第5の態様に係る収納部の設置構造では、宅配ボックスが施錠システムと連動しており、宅配ボックスの扉が解錠状態の時に、玄関扉を開くことができないように制御されている。これにより、例えば、収納部と玄関扉を省スペース内に収める造りの建物でも、宅配ボックスの利用時に玄関扉が開放されて、宅配ボックスの利用者が玄関扉に干渉してしまうといった事態を防止することができる。その結果、省スペース内に収納部と玄関扉を設けることができ、かつ、宅配ボックスの利用者の安全性を向上することができる。
【0018】
第6の態様に係る収納部の設置構造は、第5の態様に記載の構成において、前記制御部は、前記検知部からの検知結果に基づいて、前記玄関扉が解錠状態でありかつ、前記宅配ボックスに荷物が存在することを検知することを条件に、前記玄関扉を解錠状態にした者に前記荷物の存在を通知するように制御する構成とされている。
【0019】
第6の態様に係る収納部の設置構造では、宅配ボックス内に荷物が存在し、かつ、玄関扉が解錠状態であることが検知されることを条件に、玄関扉を解錠した者に荷物の存在を通知するように制御されている。このため、宅配ボックスに配達された荷物を忘れずに取り出すことができる。また、宅配ボックスから荷物を取り出した後に玄関扉を解錠する必要がなくなり、建物内への荷物の運搬が容易になる。
【0020】
第7の態様に係る建物ユニットは、第1の態様~第6の態様の何れか1態様に記載の収納部の設置構造が適用され、互いに直交する第1床梁と第2床梁を含み、直方体状に形成された躯体フレームと、前記第2床梁の一部を取り除いて形成された床梁除去部と、前記躯体フレームの内部に配置されると共に、第2床梁と略平行に配置された前記第1外壁と、前記第1外壁の一側に接続され、前記第1床梁に沿って延在する前記第2外壁と、前記第2外壁の前記外端部に接続され、前記第2床梁に沿って延在すると共に前記第2外壁と前記床梁除去部との間に配置される前記第3外壁と、前記第1外壁に形成された玄関扉と前記床梁除去部の建物上方側に設けられた玄関ポーチを含んで構成された玄関部と、を有している。
【0021】
第7の態様に係る建物ユニットでは、単一の建物ユニットの内部に玄関部と収納部が備えられている。すなわち、建物ユニットは、内部に第1外壁が配設された造りとなっており、第1外壁に玄関扉が配設され、躯体フレームに設けられた床梁除去部の建物上方側に玄関ポーチが形成される構成となっている。更に、玄関部に隣接した収納部が、上記第1外壁と、躯体フレームを構成する第1床梁に沿って延在する第2外壁と、第2床梁に沿って延在する第3外壁と、によって平面視で三方を囲まれた空間に形成されている。これにより、予め生産工場で建物ユニットの内部に玄関部と収納部を形成し、その後、建築現場に搬入することができる。これにより、収納部周りの組み付け品質を均一に高品質化できる。また、現場の工期が短縮されるため、収納部の施工が一層容易になる。
【0022】
また、外壁の一面を構成する第3外壁は、第2外壁と床梁除去部との間に配置されており、玄関ポーチに連続した造りとされている。このため、躯体フレームにおいて、玄関ポーチの正面側の縁に沿って配置される床梁(第2床梁)では、第3外壁という構造体が設けられることにより、床壁除去部として取り除かれる長さが短縮される。
【0023】
すなわち、例えば、単一の建物ユニットの内部に玄関部を備える造りによって現場の工期を短縮させる場合、意匠性の観点から、躯体フレームにおいて玄関ポーチの正面側の縁に沿った側面では、玄関ポーチの下方側の床梁が全て取り除かれることになる。このため、玄関部の正面側が、建物ユニットの構造上の弱点となりやすい。
【0024】
これに対して、本発明では、収納部の第3外壁が、玄関部の玄関ポーチの正面側の縁に沿って配置されるため、第3外壁の下方側に位置する床梁を残すことができるため、床梁除去部の長さが短縮される。このため、建物ユニットの正面側の剛性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、第1の態様に係る収納部の設置構造によれば、容易に施工でき、かつ、防犯性に優れるという優れた効果を有する。
【0026】
第2の態様に係る収納部の設置構造によれば、利便性のよい位置に収納部を設置でき、かつ、防犯性に優れるという優れた効果を有する。
【0027】
第3の態様に係る収納部の設置構造によれば、収容部の空間内に棚板や固定具等の設置部材を居住者の好みに合わせて自由に、かつ、容易に設置することができるという優れた効果を有する。
【0028】
第4の態様に係る収納部の設置構造によれば、収納部の利便性と防犯性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0029】
第5の態様に係る収納部の設置構造によれば、省スペース内に収納部と玄関部を設けることができ、かつ、宅配ボックスの利用者の安全性を向上することができるという優れた効果を有する。
【0030】
第6の態様に係る収納部の設置構造によれば、宅配ボックスから荷物を取り出す際の利便性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【0031】
第7の態様に係る建物ユニットによれば、収納部及び玄関部の工期を短縮させ、かつ、建物ユニットの剛性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】第1実施形態に係る収納部の設置構造が適用された建物の部分斜視図である。
【
図2】
図1の2-2線に沿って切断した状態を概略的に示す概略断面図である。
【
図3】
図1に示す建物の1階の正面側に配置された建物ユニットの躯体フレームを示す斜視図である。
【
図4】
図1に示す建物の玄関部を建物の正面側から見た正面図である。
【
図5】
図4の5-5線に沿って切断した状態を概略的に示す概略断面図である。
【
図6】
図4の6-6線に沿って切断した状態を概略的に示す概略断面図である。
【
図7】第2実施形態に係る収納部の設置構造が適用された建物を示す
図5に対応する概略断面図である。
【
図8】施錠システムにおける制御部の概略構成を示すブロック図である。
【
図9】第2実施形態に係る施錠システムの動作の一例を示したフローチャートである。
【
図10】比較例としての建物を示す
図2に対応する概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
〔第1実施形態〕
以下、
図1~
図6を用いて、第1実施形態に係る収納部の設置構造が適用された建物10について説明する。
【0034】
(建物10の全体構造)
図1には、本実施形態に係る建物10を建物の正面側から見た斜視図が示されている。また、
図2では、建物10の一階部分10Aの正面側が、平断面図で示されている。また、
図3では、建物10の一階部分10Aの正面側に配置された建物ユニット12の躯体フレーム14が斜視図で示されている。
【0035】
これらの図に示されるように、建物10は、所謂ユニット建物とされており、複数の建物ユニット12を相互に連結することにより構成されている。建物ユニット12は、四隅に立設された4本の柱16と、柱16の上端部に接合された天井フレーム18と、柱16の下端部に接合された床フレーム26と、によって構成された直方体状の躯体フレーム14を備えている。天井フレーム18は、長短二種類の天井梁22、24と、長辺側の天井梁24間に所定間隔で架け渡された複数本の図示しない天井小梁と、を含んで構成されている。同様に、床フレーム26は、長短二種類の床梁28、30と、長辺側の床梁30間に所定間隔で架け渡された図示しない複数本の床小梁と、を含んで構成されている。なお、床フレーム26の短辺側の床梁28が、本発明における「第1床梁」に相当し、長辺側の床梁30が、本発明における「第2床梁」に相当する。
【0036】
図1に示されるように、建物10の一階部分10Aの正面側には、妻方向に沿ってインナガレージ32のガレージ開口部32A、玄関部34、収納部50が隣接して設けられている。また、これらは、一階部分10Aの正面側において、妻方向を長手方向として配置された単一の建物ユニット12(以下、建物ユニット12Aと称する。)に備えられている。また、当該建物ユニット12Aの建物上方側には他の建物ユニット12が載置され、内部に建物10の二階部分10Bの居室33が設けられている。このように、インナガレージ32、玄関部34、収納部50の上方には、上階の室内空間が設けられている。
【0037】
(玄関部)
図2に示されるように、玄関部34は、建物10の主たる出入口となる玄関扉36と、玄関扉36の屋外側に設けられた玄関ポーチ38と、玄関扉36の屋内側に設けられた土間40と、を含んでいる。玄関扉36は、建物10の正面側(屋外側)に面して配置された玄関壁42に矩形状のドア開口部42Aを設け、当該ドア開口部42Aに図示しないヒンジ等の固定具を介して開閉可能に取り付けられている。この玄関壁42は、構造的には上述した建物ユニット12A(躯体フレーム14)の内部に配置され、建物上方側に立設すると共に、建物10の妻方向に沿って延在している。
【0038】
玄関ポーチは、玄関扉36の屋外側、かつ、建物ユニット12Aの天井フレーム18に支持された天井部44(
図5参照)の下方側に設けられている。この天井部44は、玄関部34に隣接して配置されたインナガレージ32の天井部の一部、及び収納部50の天井部と連続している。このため、例えば外出先から車で帰宅した居住者は、インナガレージ32から玄関ポーチ38へ移動する際に、天井部44の下を通って移動することができ、降雨時に雨に濡れることなく建物10内へ入ることができる。
【0039】
また、
図2及び
図3に示されるように、玄関ポーチ38は、建物ユニット12の正面側の妻側面に沿って形成された床梁除去部46の建物上方側に設けられている。床梁除去部46は、建物ユニット12Aの正面側の妻側面に沿って配置された長辺側の床梁30の一部を取り除いて形成されている。本実施形態では、
図2及び
図3に示されるように、床梁30の左側端部30Lを除く部位が取り除かれて、床梁除去部46とされている。玄関ポーチ38の床高は、この床梁除去部46の上方に形成されることにより、建物10の一階部分10Aの床高よりも低い位置に設定されている。また、これに伴って、玄関ポーチ38に連続して形成される土間40の床高も、建物10の一階部分10Aの床高よりも低い位置に設定されている。
【0040】
(本発明の要部)
収納部50は、上記構成の玄関部34に隣接して設けられている。具体的には、建物10の外部に配置される玄関ポーチ38に連続して設けられ、建物10の左側部を構成する外壁部52によって平面視で三方を囲まれた空間内に形成されている。
【0041】
外壁部52は、上述した玄関壁42と、玄関壁42に直交して配置され、建物10の正面側に張り出した袖壁54と、袖壁54の外端部から玄関壁42側に延在する脇壁56と、を備えている。換言すると、外壁部52は、平面視で玄関部34及びインナガレージ32側に一方が開放されたコの字型に形成されている。袖壁54は、建物ユニット12Aにおける床フレーム26の短辺側の床梁28(第1床梁)に沿って延在している。また、脇壁56は、床梁28に対して直交する床フレーム26の長辺側の床梁30(第2床梁)の左側端部30Lに沿って延在し、袖壁54と玄関ポーチ38が設けられる床梁除去部46との間に配置されている。なお、玄関壁42が本発明における「第1外壁」に相当し、袖壁54が「第2外壁」に相当し、脇壁56が「第3外壁」に相当する。
【0042】
上記構成の外壁部52は、屋外側に面して配設され、意匠面を構成する板状の外装材58(
図6参照)と、外装材58を支持する図示しない外壁フレームとを含んで構成されている。一例として、外壁フレームは、板状、又は複数の縦桟(間柱)及び横桟を組んで形成される枠状とされており、建物ユニット12Aの躯体フレーム14に支持されている。これにより、建物ユニット12Aに外壁部52が固定されている。
【0043】
また、
図4~
図6に示されるように、外壁部52の内側面(すなわち、収納部50の側面部)は、板状の外装材58と、外装材58に裏張りされた裏張材60とを含んで構成されている。裏張材60は、外壁部52における建物高さ方向の所定の領域に配置されている。本実施形態では、玄関ポーチ38の床高から建物高さ方向で50cm~150cmの領域に裏張材60が配置されている。この領域は、後述する棚板62を組み付けた場合に、棚板62の上に荷物を載置しやすい高さ領域となっている。なお、裏張材60は、一例として、パーチクルボードや石膏ボード、合板によって構成可能とされている。
【0044】
図5に示されるように、収納部50の内部には、玄関壁42と脇壁56の間に略水平に掛け渡された棚板62と、棚板62の上方側に配置され、収納部50の天井部に固定された吊戸棚64が設けられている。棚板62は、下面に固定される複数のブラケット66によって支持されている。ブラケット66は、外装材58の外側から裏張材60へ打ち込まれるビス68によって外壁部52に固定されている。
【0045】
上記構成の棚板62の上には、一例として、宅配ボックス70が配設設されている(
図5参照)。宅配ボックス70は、下端部から建物下方側に延出されたボルトを用いて棚板に直接固定し、収納部50に設置してもよい。又は、
図6に二点鎖線で図示されるように、外壁部52に固定される固定用フック72とワイヤ74の一端を南京錠76等の錠前を用いて連結し、ワイヤ74の他端を宅配ボックス70に固定することにより、宅配ボックス70を収納部50に設置してもよい。固定用フック72は、棚板62と同様に、外装材58の外側から裏張材60へ打ち込まれるビス78によって、外壁部52に固定されている。なお、棚板62及び固定用フック72が、本発明における「設置部材」に相当する。なお、
図1では宅配ボックス70を省略して図示している。
【0046】
宅配ボックス70は、一例として、図示しない電気錠によって施錠及び解錠が可能な扉を備えており、所定の操作によって電気錠を作動させ、配達された荷物の取り置き及び取り出しを行うことができる。宅配ボックス70は、従来周知のものであるため、詳細な説明を省略する。なお、棚板62の上に宅配ボックス70を設置しない構成とし、大容量の収納空間を設ける構成としてもよい。
【0047】
(作用・効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0048】
ここで、本実施形態に係る収納部の設置構造では、建物10の外壁部52(玄関壁42、袖壁54、脇壁56)に囲まれた空間に収納部50が形成されるため、例えば、外壁部を貫通させて収納部を形成する構造に比べて施工が容易である。また、当該収納部50は、平面視で三方が外壁部52で囲まれているため、建物10の屋外側から視認されにくく、防犯性に優れる。
【0049】
また、本実施形態では、収納部50が玄関部34側に隣接して設けられており、収納部50が形成される空間は、玄関壁42、袖壁54、脇壁56によって三方が囲まれると共に、玄関部34側の一方のみが開放されている。このため、玄関部34の正面側からは、収納部50が外壁部52に囲われているため視認されない(
図4参照)。これにより、玄関部34の正面側から収納部50の存在がわかり難いので、防犯性に優れる。また、玄関部34を出入りする際に収納部50から荷物の出し入れが可能であるため、居住者の利便性を高めることができる。
【0050】
また、本実施形態では、外壁部52における建物高さ方向の所定の領域に、外装材58に裏張りされた裏張材60が設定されている。このため、外壁部52の施工が完了した後に、この外壁部52を利用して、収納部50内に棚板62や固定用フック72等の設置部材を居住者の好みに合わせて自由に、かつ、容易に設置することができる。
【0051】
また、本実施形態では、収納部50に宅配ボックス70が配置されている。このため、不在時に配達された荷物を収納部50で受け取ることができ、かつ、宅配ボックス70が建物10の屋外側から視認されにくいため、防犯性に優れる。
【0052】
また、本実施形態では、単一の建物ユニット12Aの内部に玄関部34と収納部50が備えられている。具体的には、建物ユニット12は、内部に玄関壁42が配設された造りとなっており、玄関壁42に玄関扉36が配設され、躯体フレーム14に設けられた床梁除去部46の建物上方側に玄関ポーチ38が形成される構成となっている。更に、収納部50を囲う外壁部52が、玄関壁42と、躯体フレーム14を構成する床梁28に沿って延在する袖壁54と、床梁30に沿って延在する脇壁56と、によって構成されており、玄関部34に隣接している。これにより、予め生産工場で建物ユニット12Aの内部に玄関部34と収納部50を形成し、その後、建築現場に搬入することができる。これにより、収納部50周りの組み付け品質を均一に高品質化できる。また、現場の工期が短縮されるため、収納部50の施工が一層容易になる。
【0053】
また、外壁部の一面を構成する脇壁56は、袖壁54と床梁除去部46との間に配置されており、玄関ポーチ38と連続した造りとされている。このため、躯体フレーム14において、玄関ポーチ38の正面側の縁に沿って配置される床梁30では、脇壁56という構造体が設けられることにより、床梁除去部46として取り除かれる長さが短縮される。
【0054】
すなわち、
図10に示す建物300のように、単一の建物ユニット302の内部に玄関部304を備える造りによって現場の工期を短縮させる場合、意匠性の観点から、躯体フレーム306において玄関ポーチ308の正面側の縁に沿った側面では、玄関ポーチ308下方側の幅床梁が全て取り除かれて床梁除去部310が形成されることになる。このため、玄関部34の正面側が、建物ユニットの構造上の弱点となりやすい。
【0055】
これに対して、本発明では、収納部50の脇壁56が、玄関部34の玄関ポーチ38の正面側の縁に沿って配置されるため、脇壁56の下方側に位置する床梁28を残すことができるため、床梁除去部46の長さが短縮される。このため、建物ユニット12Aの正面側の剛性を向上させることができる。
【0056】
また、本実施形態では、建物ユニット12Aの上方側に他の建物ユニット12が載置されることにより、収納部50及び玄関部34の上方には上階の室内空間が設けられている。これにより、収納部50と玄関部34の間を軒下とすることができ、降雨時に雨に濡れずに宅配ボックス70から荷物を取り出すことができる。
【0057】
更に、建物10の正面側にはインナガレージ32のガレージ開口部32A、玄関部34、収納部50が隣接して配置され、これらの天井部が連続して形成されている。これにより、降雨時に、外出先から車で帰宅した居住者が、雨に濡れることなく建物10内へ入ることができ、その途中に収納部50を利用することができるため、居住者の利便性を向上させることができる。
【0058】
〔第2実施形態〕
以下、
図7~
図9を用いて、本発明に係る収納部の設置構造の第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と同一構成部分については、同一番号を付してその説明を省略する。
【0059】
これらの図に示されるように、この第2実施形態では、収納部50に宅配ボックス88が設置され、宅配ボックス88に施錠システム80を付加した点に特徴がある。
【0060】
図7に示されるように、収納部50の内側には、所謂ビルトインタイプの吊戸棚82、郵便ポスト84、インターフォン86、宅配ボックス88が一体的に配置され、略面一となるように形成された意匠面を備えている。宅配ボックス88は、収納部50の下部に固定されており、玄関部34に面して扉90が設けられている。扉90には、電気錠92が接続されており、電気錠92を解錠又は施錠することにより、扉90を解錠状態又は施錠状態にすることができる構成となっている。一方、建物10の玄関扉36にも、宅配ボックス88と同様の電気錠94が接続されている。そして、電気錠94を解錠又は施錠することにより、玄関扉36を解錠状態又は施錠状態にすることができる構成となっている。
【0061】
図7及び
図8に示されるように、施錠システム80は、制御部としてのHEMS(Home Energy Management System)96を備えている。HEMS96は、CPU(Central Processing Unit)98と、HDD(Hard Disk Drive)100と、RAM(Random Access Memory)102と、ネットワークI/F部104と、ROM(Read Only Memory)106とを含む。また、HEMS96は表示部108と、操作入力部110と、バス112とを含んでおり、情報を入力する端末と情報を表示する端末との機能を有している。
【0062】
HEMS96には、宅配ボックス88及び玄関扉36の電気錠92、94、各種センサを備えた検知部114、宅配ボックス88に備えられた通知部116が電気的に接続されており、検知部114からの信号に基づき、電気錠92、94、及び通知部116を制御可能とされている。
【0063】
検知部114は、図示しない施錠検知センサと、荷物検知センサとを備えている。施錠検知センサは、電気錠92、94が施錠状態にあるか、解錠状態にあるかを検知する。荷物検知センサは、宅配ボックス88の内部に荷物が存在するか否かを検知する。これにより、検知部114によって、宅配ボックス88と玄関扉36の使用状態が検知される。
【0064】
通知部116は、一例として宅配ボックス88に備えられたモニター(不図示)から構成され、HEMS96からの指令に基づき、宅配ボックスの内部に荷物が存在するか否かを表示可能とされている。なお、通知部は、宅配ボックス88に備えられたスピーカで構成してもよく、HEMS96からの指令に基づいて、宅配ボックスの内部に荷物が存在するか否かを居住者に音声で伝達してもよい。
【0065】
(作用・効果)
次に、
図9(A)及び
図9(B)に示されるフローチャートに基づいて、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0066】
図9(A)では、利用者により、宅配ボックス88の扉90が解錠状態にされた場合の施錠システム80の動作の一例を示している。HEMS96は、ステップ200において、宅配業者、又は建物10へ帰った居住者が、宅配ボックス88の電気錠92を解錠したことにより、宅配ボックス88が解錠状態にされたことを推定する。
【0067】
HEMS96は、ステップ202において、検知部114からの信号に基づいて、玄関扉36の電気錠94が解錠されているか否かを検知し、玄関扉36が解錠状態であるか否かを判定する。ステップ202で肯定されると、HEMS96は、ステップ204において電気錠94を施錠し、玄関扉36を施錠状態にする。
【0068】
HEMS96は、ステップ206において、宅配業者、又は建物10へ帰った居住者が、宅配ボックス88の電気錠92を施錠し、宅配ボックス88が施錠状態になったと判定すると、処理を終了する。なお、ステップ202で否定されると、HEMS96は、処理を終了する。
【0069】
このように、本実施形態では、宅配ボックス88が施錠システム80と連動しており、宅配ボックス88の扉90が解錠状態の時に、玄関扉36が施錠状態に制御される。これにより、例えば、収納部50と玄関部34を省スペース内に収める造りの建物でも、宅配ボックス88の利用時に玄関扉36が開放されて、宅配ボックス88の利用者が玄関扉36に干渉してしまうといった事態を防止することができる。その結果、省スペース内に収納部50と玄関部34を設けることができ、かつ、宅配ボックス88の利用者の安全性を向上することができる。
【0070】
また、
図9(B)では、建物10へ帰った居住者が、玄関扉36の電気錠94を解錠し、玄関扉36が解錠状態にされた場合の施錠システム80の動作の一例を示している。
【0071】
HEMS96は、ステップ208において、建物10へ帰った居住者が、玄関扉36の電気錠94を解錠したことにより、玄関扉36が解錠状態にされたことを推定する。
【0072】
HEMS96は、ステップ210において、検知部114からの信号に基づいて、宅配ボックス88の内部に荷物が存在するか否かを判定する。ステップ210で肯定されると、HEMS96は、ステップ212において通知部116から居住者に宅配ボックス88内に荷物が存在することを通知し、処理を終了する。なお、ステップ210で否定されると、HEMS96は、処理を終了する。
【0073】
このように、本実施形態では、宅配ボックス88内に荷物が存在し、かつ、玄関扉36が解錠状態であることが検知されることを条件に、玄関扉36を解錠した者(居住者)に荷物の存在を通知するように制御されている。このため、宅配ボックス88に配達された荷物を忘れずに取り出すことができる。また、宅配ボックス88から荷物を取り出した後に玄関扉36を解錠する必要がなくなり、建物10内への荷物の運搬が容易になる。
【0074】
[補足説明]
上記各実施形態では、収納部50を玄関部34に隣接する構成としたが、本発明はこれに限らない。例えば、建物10において、インナガレージ32に隣接して収納部50を設ける構成でもよい。又は、建物10の桁方向に沿った側面が路面に面する場合、当該桁方向に沿ったに側面に外壁部を形成し、収納部を設ける構成としてもよい。
【0075】
また、上記各実施形態では、建物10の一階部分10Aにインナガレージ32を設ける構成としたが、本発明はこれに限らず、居室が設けられる構成としてもよい。
【0076】
また、上記各実施形態では、建物10をユニット建物としたが、これに限らず、鉄骨軸組工法によって建築された建物でもよい。
【0077】
また、上記第2実施形態では、居住者に宅配ボックス88内の荷物を通知する通知部が、宅配ボックス88に備えられたモニタ又はスピーカによって構成されるものとしたが、本発明はこれに限らない。例えば、検知部からの検知結果に基づいて玄関扉が解錠状態にされ、かつ、宅配ボックス内に荷物が存在することが判定されると、制御部からの指令により、クラウドサーバを介して玄関扉の解錠者(居住者)の携帯端末に荷物の存在が通知される構成としてもよい。
【0078】
また、上記第2実施形態では、施錠システム80によって、宅配ボックス88の扉90が解錠状態の時に、玄関扉36を施錠状態にすることにより、玄関扉36を開くことができないように制御されている。しかし、本発明はこれに限らない。例えば、玄関扉のラッチボルトと連動するレバーハンドルにアクチュエータを接続し、当該アクチュエータを施錠システムの制御部に電気的に接続して玄関扉の開閉を制御する構成としてもよい。具体的には、制御部は、検知部によって宅配ボックスが解錠状態であり、かつ、玄関扉が解錠状態であることが検知されると、アクチュエータを作動させる。そして、アクチュエータによってレバーハンドルの動きが規制され、ラッチボルトが玄関壁のドア開口部と係合する突出状態に固定されることにより、制御部によって玄関扉を開かないように制御する。
【0079】
また、本発明に係る施錠システムにおいては、宅配ボックスが解錠状態とされ、かつ、玄関扉が解錠状態である場合に、建物の屋内にいる居住者に宅配ボックスが解錠状態であることを通知することにより、玄関扉を開かないように制御する構成としてもよい。具体的には、
図9(A)に記載の第2実施形態に係る施錠システム80の制御フローにおいて、ステップ202で肯定されると、次のステップで建物10内にある通知部によって建物内の居住者へ宅配ボックス88が解錠状態であることが通知されるように制御してもよい。
【0080】
また、本発明に係る施錠システムの一例として、上述した
図9(A)に示す制御フローにおいて、ステップ206で宅配ボックス88が施錠状態になったと判定すると、次のステップで、建物内にある通知部によって建物10内の居住者へ宅配ボックス88が施錠状態にされたことを通知するように制御してもよい。
【符号の説明】
【0081】
10 建物
12 建物ユニット
14 躯体フレーム
28 床梁(第1床梁)
30 床梁(第2床梁)
34 玄関部
42 玄関壁(第1外壁)
50 収納部
54 袖壁(第2外壁)
56 脇壁(第3外壁)
58 外装材
60 裏張材
70 宅配ボックス
36 玄関扉
38 玄関ポーチ
62 棚板(設置部材)
72 固定用フック(設置部材)
82 施錠システム
88 宅配ボックス
90 扉
96 HEMS(制御部)
114 検知部