(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】モジュール式保守点検ステーション及びインクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検する方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/165 20060101AFI20230613BHJP
B41J 2/17 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/17 203
B41J2/165 303
(21)【出願番号】P 2021505291
(86)(22)【出願日】2019-07-18
(86)【国際出願番号】 EP2019069414
(87)【国際公開番号】W WO2020025347
(87)【国際公開日】2020-02-06
【審査請求日】2022-06-20
(32)【優先日】2018-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】311007051
【氏名又は名称】シクパ ホルディング ソシエテ アノニム
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH-1008 Prilly, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】カッペロ, パオロ
【審査官】亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-121260(JP,A)
【文献】特開2009-285982(JP,A)
【文献】特開2015-066761(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0081053(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッド(19)を保守点検するためのモジュール式保守点検システムであって、前記インクジェット印字ヘッド(19)は、支持体(18)上に配置された少なくとも2つのマルチチップモジュール(MCM)アセンブリ(17)を備え、前記保守点検システムは、
前記インクジェット印字ヘッド(19)の前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち対応するMCMアセンブリ(17)をキャッピングするためのキャッピング要素(32)と、前記インクジェット印字ヘッド(19)を拭き取るための少なくとも2つの拭き取り要素(34)とが、少なくとも2つのフレーム(33)のそれぞれの上に搭載される、少なくとも2つのフレーム(33)と、
印刷位置と保守点検位置との間での前記インクジェット印字ヘッド(19)の水平移動手段(23)と、
前記インクジェット印字ヘッド(19)の垂直移動手段(25)であって、前記インクジェット印字ヘッド(19)に関してキャッピングプロセス、目詰まり除去プロセス、又は、パージプロセスを可能にするように構成される、垂直移動手段(25)と、
前記キャッピング要素(32)のそれぞれと密閉連通する廃インクタンクと、
を備え、
前記水平移動手段(23)は、前記インクジェット印字ヘッド(19)の前後の水平移動中に前記インクジェット印字ヘッド(19)の表面と前記拭き取り要素(34)とを接触させることによって拭き取りプロセスを可能にするように構成され、
前記少なくとも2つのフレーム(33)のそれぞれについて、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち対応するMCMアセンブリ(17)における一列のチップ(I)の一端に対応する前記フレーム(33)の一端に、前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)の1つが配置され、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち前記対応するMCMアセンブリ(17)における隣の列のチップ(II)の一端に対応する前記フレーム(33)の反対端に、前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)の他の1つが配置され、その結果、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)の1つのMCMアセンブリ(17)における前記一列のチップ(I)が、前記少なくとも2つのフレーム(33)の対応するフレーム(33)上に搭載された前記少なくとも2つの拭き取り要素の1つによって拭き取られる時に、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)の前記1つのMCMアセンブリ(17)における前記隣の列のチップ(II)が、前記少なくとも2つのフレーム(33)の隣のフレーム(33)上に搭載された前記少なくとも2つの拭き取り要素の1つによって拭き取られ
、
前記インクジェット印字ヘッドの前記水平移動手段(23)及び前記インクジェット印字ヘッドの前記垂直移動手段(25)が、それぞれ水平移動可能電動スレッド及び垂直移動可能電動スレッドであり、
前記保守点検システムは、機器フレームワークを更に備え、
前記水平移動可能電動スレッドが前記機器フレームワークに固定され、前記垂直移動可能電動スレッドが前記水平移動可能電動スレッドに固定されるか、又は、前記垂直移動可能電動スレッドが前記機器フレームワークに固定され、前記水平移動可能電動スレッドが前記垂直移動可能電動スレッドに固定される、モジュール式保守点検システム。
【請求項2】
前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)が拭き取りブレードである、請求項1に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項3】
前記キャッピング要素(32)が、前記キャッピング要素(32)の外輪郭の周囲で延びるシールリング(28)を備える、請求項1
又は2に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項4】
前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)の高さが、前記キャッピング要素(32)の前記シールリング(28)の高さよりも大きい、請求項
3に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項5】
前記キャッピング要素(32)が、傾斜底部を有する中空槽(26)と、前記キャッピング要素(32)を前記廃インクタンクと接続するパイプ(29)とを更に備える、請求項1~
4のいずれか一項に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項6】
前記キャッピング要素(32)、前記シールリング(28)、及び、前記パイプ(29)が、成形によっ
て一体部品として形成される、
請求項3を引用する請求項
5に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項7】
前記キャッピング要素(32)、前記シールリング(28)、及び、前記パイプ(29)が、ダブルショット成形によって一体部品として形成される、請求項6に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項8】
前記少なくとも2つのフレーム(33)のそれぞれの前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)が、キャッピング形態において、前記インクジェット印字ヘッドの前記支持体(18)内に実現される適切なキャビティ(54)内に収容されるように構成される、請求項1~
7のいずれか一項に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項9】
前記モジュール式保守点検システムの前記拭き取り要素(34)及び/又は前記キャッピング要素(32)に直接に搭載される取り外し可能なシールシステムを更に備える、請求項1~
8のいずれか一項に記載のモジュール式保守点検システム。
【請求項10】
インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検する方法であって、前記インクジェット印字ヘッド(19)は、支持体(18)上に配置された少なくとも2つのマルチチップモジュール(MCM)アセンブリ(17)を備え、前記方法は、
前記インクジェット印字ヘッド(19)の水平移動手段(23)を用いて、前記インクジェット印字ヘッド(19)を印刷位置から保守点検位置に向けて水平に移動させるステップと、
前記印字ヘッド(19)の前後の水平移動中に前記インクジェット印字ヘッド(19)の表面と複数の拭き取り要素(34)とを接触させることによって拭き取りプロセスを可能にするステップであり、前記複数の拭き取り要素(34)が少なくとも2つのフレーム(33)上に搭載され、前記少なくとも2つのフレーム(33)のそれぞれは、少なくとも2つの拭き取り要素(34)と、前記インクジェット印字ヘッド(19)の前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち対応するMCMアセンブリ(17)をキャッピングするためのキャッピング要素(32)と、を備える、ステップと、
前記インクジェット印字ヘッド(19)の垂直移動手段(25)を用いて、前記インクジェット印字ヘッド(19)の垂直移動によって前記インクジェット印字ヘッドに関してキャッピングプロセス、目詰まり除去プロセス、又は、パージプロセスを可能にするステップと、
を含み、
前記少なくとも2つのフレーム(33)のそれぞれについて、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち対応するMCMアセンブリ(17)における一列のチップ(I)の一端に対応する前記フレーム(33)の一端に、前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)の1つが配置され、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)のうち前記対応するMCMアセンブリ(17)における隣の列のチップ(II)の一端に対応する前記フレーム(33)の反対端に、前記少なくとも2つの拭き取り要素(34)の他の1つが配置され、その結果、前記拭き取りプロセス中に、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)の1つのMCMアセンブリ(17)における一列のチップ(I)が、前記少なくとも2つのフレーム(33)の対応するフレーム(33)上に搭載された前記少なくとも2つの拭き取り要素の1つによって拭き取られる時に、前記少なくとも2つのMCMアセンブリ(17)の前記1つのMCMアセンブリ(17)における前記隣の列のチップ(II)が、前記少なくとも2つのフレーム(33)の隣のフレーム(33)上に搭載された前記少なくとも2つの拭き取り要素の1つによって拭き取られ
、
前記インクジェット印字ヘッドの前記水平移動手段(23)及び前記インクジェット印字ヘッドの前記垂直移動手段(25)が、それぞれ水平移動可能電動スレッド及び垂直移動可能電動スレッドであり、
前記インクジェット印字ヘッド(19)を保守点検するための保守点検システムは、機器フレームワークを更に備え、
前記水平移動可能電動スレッドが前記機器フレームワークに固定され、前記垂直移動可能電動スレッドが前記水平移動可能電動スレッドに固定されるか、又は、前記垂直移動可能電動スレッドが前記機器フレームワークに固定され、前記水平移動可能電動スレッドが前記垂直移動可能電動スレッドに固定される、方法。
【請求項11】
前記キャッピングプロセス中、前記目詰まり除去プロセス中、又は、前記パージプロセス中にノズルによって放出されるインクを、前記キャッピング要素(32)と密閉連通する廃インクタンクに搬送するステップを更に含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記キャッピングプロセス中に垂直軸線に沿って前記インクジェット印字ヘッド(19)を下降させてキャッピング要素(32)と係合させるステップを更に含む、請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[01]本発明は、印刷技術の技術分野に関し、特に、インクジェット印刷システムの少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを保守点検するためのモジュール式保守点検ステーション、及び、インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[02]従来技術から知られているプリンタは、通常、プリンタ機器の一体部分として形成されて必要な場合に容易に交換するのに適していない保守点検ステーションを有する。また、それらのプリンタを特定の保守点検動作のためにカスタマイズすることもできない。更に、それらを個別に購入できたとしても、それらは、独占的なものではなく、受け入れられない何らかの極秘技術情報の暴露を引き起こす可能性がある。
【0003】
[03]したがって、幾つかの従来技術の解決策は、保守点検ステーションの適応性及び交換可能性を向上させる試みを行ない、それにより、異なるプリンタ用途での保守点検ステーションの使用を可能にした。
【0004】
[04]米国特許第5455609号は、保守点検作業の実行をもたらすべく印字ヘッド保守点検スレッドが垂直に駆動される改良されたモジュール式保守点検ステーション形態を開示する。時間及びスペースを節約するために、印字ヘッドとワイパー及びキャップなどの保守点検機構との両方を移動させて、それらを作業の実行に適した相対位置に配置する。印字ヘッドの保守点検は、印字ヘッド及び保守点検機構の両方の垂直移動によって行なわれるため、目詰まりを取り除くため又は流体回路内の想定し得る障害物を排除するためのノズルの繰り返し作動が印刷媒体に望ましくないドットや汚れをもたらす何らかのインクの放出を引き起こすリスクがある。更に、前記構造は、印字ヘッド及び保守点検機構の両方の駆動、並びに、それらの適切な位置合わせを確保する必要があるとともに、組み付けのためのより多くの時間、より高い製造コスト及び設計コストを要し、したがって、より高い最終購入価格をもたらすため、依然としてかなり複雑である。
【0005】
[05]米国特許第6174041号は、自己完結型の電動部品を有するモジュール式印字ヘッド保守点検ステーションを開示し、この保守点検ステーションにおいて、インクジェットプリンタ保守点検キャリッジは、キャリッジが保守点検されるべき印字ヘッドカートリッジから離れている第1の位置と、印字ヘッドを保守点検するべく保守点検キャリッジが印字ヘッドキャリッジと当接する第2の位置との間で移動するとともに、2つの独立した電動アクチュエータを含み、そのうちの第1の電動アクチュエータは、保守点検キャリッジを水平x軸方向に直線的に移動させ、第2の電動アクチュエータは、キャリッジをx軸方向に対して垂直な垂直z軸平面内で弓状に移動させる。保守点検キャリッジは印字ヘッドに対して移動できるにすぎないため、目詰まりを取り除くため又は流体回路内の想定し得る障害物を排除するためのノズルの繰り返し作動が印刷媒体に望ましくないドットや汚れをもたらす何らかのインクの放出を引き起こすリスクがある。更に、開示された構造は、保守点検キャリッジを直線的な水平方向に及び垂直の弓状平面内で移動させる2つの独立した電動アクチュエータを必要とするため、製造がかなり複雑であり、それにより、必要な部品の複雑さ及び関連する製造コストが増大する。
【0006】
[06]したがって、本発明の目的は、従来技術の欠点を克服するとともに、保守点検動作中の印刷媒体への望ましくないドット又は汚れを回避できるようにし、印字ヘッドの拭き取り、パージ、及び、キャッピングを効率的に実行することができるとともに、印字ヘッドの任意の長さに適合できる、インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検するための、単純で、コンパクトで、効率的で、カスタマイズ可能で、費用効果の高いモジュール式保守点検ステーションを提供することである。本発明の他の目的は、前述の有利な効果の達成を確保する、インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検するそれぞれの方法を提供することである。
【発明の概要】
【0007】
[07]1つの態様によれば、本発明は、インクジェット印刷システムの少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを保守点検するためのモジュール式保守点検ステーションであって、
少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドをキャッピングするための少なくとも1つのキャッピング要素と、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを拭き取るための少なくとも1つの拭き取り要素、好ましくは拭き取りブレードとがその上に搭載されるフレームと、
印刷位置と保守点検位置との間での少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの水平移動手段であって、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの前後の水平移動中に少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの表面と少なくとも1つの拭き取り要素とを接触させることによって拭き取りプロセスを可能にするように構成される、水平移動手段と、
少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの垂直移動手段であって、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドに関してキャッピングプロセス、目詰まり除去プロセス、又は、パージプロセスを可能にするように構成される、垂直移動手段と、
少なくとも1つのキャッピング要素と密閉連通する廃インクタンクと、
を備えるモジュール式保守点検ステーションに関する。
【0008】
[08]本発明の1つの態様では、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの水平移動手段及び少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの垂直移動手段が、それぞれ水平移動可能電動スレッド及び垂直移動可能電動スレッドである。
【0009】
[09]水平移動可能電動スレッドがフレームに固定され、また、垂直移動可能電動スレッドが水平移動可能電動スレッドに固定される。
【0010】
[010]別の実施形態では、垂直移動可能電動スレッドがフレームに固定され、また、水平移動可能電動スレッドが垂直移動可能電動スレッドに固定される。いずれにせよ、電動スレッドのおかげにより、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドは、垂直及び水平の両方で、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを(印字ヘッドの垂直移動中に)キャッピングするための少なくとも1つのキャッピング要素と少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドを(印字ヘッドの前後の水平移動中に)拭き取るための少なくとも1つの拭き取り要素とがその上に搭載された保守点検ステーションの固定フレームに向けて移動できる。
【0011】
[011]本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つのキャッピング要素が、少なくとも1つのキャッピング要素の外輪郭の周囲で延びるシールリングを備える。少なくとも1つの拭き取り要素の高さは、少なくとも1つのキャッピング要素のシールリングの高さよりも大きい。
【0012】
[012]本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つのキャッピング要素は、傾斜底部を有する中空槽と、少なくとも1つのキャッピング要素を廃インクタンクと接続するパイプとを更に備える。
【0013】
[013]本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つのキャッピング要素、シールリング、及び、パイプが、成形によって、好ましくはダブルショット成形によって一体部品として形成され得る。
【0014】
[014]本発明の更なる態様によれば、少なくとも1つの拭き取り要素は、少なくとも1つのインクジェット印字ヘッドの支持体内に実現されるキャビティに受け入れられる。
【0015】
[015]本発明の更なる態様によれば、モジュール式保守点検ステーションは、該モジュール式保守点検ステーションの拭き取り要素及び/又はキャッピング要素に直接に搭載される取り外し可能なシールシステムを更に備える。
【0016】
[016]本発明の他の態様によれば、インクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検する方法は、
インクジェット印字ヘッドを印刷位置から保守点検ステーションに向けて水平に移動させるステップと、
印字ヘッドの前後の水平移動中にインクジェット印字ヘッドの表面と少なくとも1つの拭き取り要素とを接触させることによって拭き取りプロセスを可能にするステップと、
インクジェット印字ヘッドの垂直移動によってインクジェット印字ヘッドに関してキャッピングプロセス、目詰まり除去プロセス、又は、パージプロセスを可能にするステップと、
を含む。
【0017】
[017]本発明の更なる態様によれば、方法は、キャッピングプロセス中、目詰まり除去プロセス中、又は、パージプロセス中にノズルによって放出されるインクを、少なくとも1つのキャッピング要素と密閉連通する廃インクタンクに搬送するステップを更に含む。
【0018】
[018]本発明の更なる態様によれば、方法は、キャッピングプロセス中に垂直軸線に沿ってインクジェット印字ヘッドを下降させて少なくとも1つのキャッピング要素と係合させるステップを更に含む。
【0019】
[019]以下、添付図面に関連して本発明をより十分に説明し、図面では、同じ数字が異なる図の全体にわたって同じ要素を表わし、また、本発明の顕著な態様及び特徴が示される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】基板上に適切に組み付けられたマルチチップモジュール(MCM)の概略図である。
【
図2】適切な支持体上に配置された複数の整列されたMCMモジュールを示す。
【
図3a】
図2の点線円10で囲まれた領域のより詳細な例示を上面図で与える。
【
図3b】
図2の点線円10で囲まれた領域のより詳細な例示を断面図で与える。
【
図4】グラファイト基板に突出リムを有する、
図2の点線円10で囲まれた領域の別の実施形態のより詳細な例図を与える。
【
図5a】支持体上に配置された複数のMCMアセンブリの配置の概略図を与える。
【
図5b】複数のMCMアセンブリの重複配列の概略図を与える。
【
図7】水平電動スレッドが機器フレームワークに固定されるとともに垂直電動スレッドが水平スレッドに固定された印刷機器を示す。
【
図8a】各マルチチップモジュールの全てのノズルの表面を閉鎖するために設けられるキャッピング要素を上面図で示す。
【
図8b】各マルチチップモジュールの全てのノズルの表面を閉鎖するために設けられるキャッピング要素を斜視図で示す。
【
図8c】各マルチチップモジュールの全てのノズルの表面を閉鎖するために設けられるキャッピング要素を概略図で示す。
【
図9】適切なフレームにおけるキャッピング要素の配置を示す。
【
図10a】
図9のキャッピング要素のより詳細な例示を上面図で示す。
【
図10b】
図9のキャッピング要素のより詳細な例示を側面図で示す。
【
図11】キャッピング要素の上面図、及び、キャッピング装置のシールリングに対する2つの拭き取りブレードの位置を示す。
【
図12】並べて配置された、個々のキャッピング要素及び拭き取りブレードのモジュール式アセンブリの上面図を示す。
【
図13】拭き取りブレードを収容するためのポケットを有する支持体上のMCMアセンブリを示す。
【
図14】本発明に係るモジュール式保守点検ステーション全体の斜視図を示す。
【
図15a】本発明に係るモジュール式保守点検ステーション全体の上面図を示す。
【
図15b】本発明に係るモジュール式保守点検ステーション全体の横断面図を示す。
【
図16a】キャッピング段階中の任意の液体漏れ又は蒸気漏れを防止できるようにする中間層を概略的に示す。
【
図16b】中間層の配置の横断面図を概略的に示す。
【
図17】本発明にしたがって使用される改良されたシーリングシステムを概略的に示す。
【
図18a】組み付けられたシールシステムの上面図を示す。
【
図18b】組み付けられたシールシステムの斜視図を示す。
【詳細な説明】
【0021】
[020]サーマルインクジェット印字ヘッドは、一般に、インク液滴を媒体上に放出し、このようにして印刷動作を実行するために適切に作動されるノズルの配列を備える。印字ヘッド及び印刷媒体は互いに対して相対的に移動しており、相対移動方向に対して直交する方向のノズル配列延在部は「印刷スワス」と呼ばれる。
【0022】
[021]印字ヘッドが単一のシリコンチップを有する場合、スワスは、配列内の最初のノズルと最後のノズルとの間の長さである。スワスの長さを増大させるために、有利な解決策は、複数のシリコンチップを単一の基板上に整列させ、それにより、マルチチップモジュール(MCM)を形成して、効果的なより大きい印刷スワスを得ることである。基板上に適切に組み付けられた4つのシリコンチップにより構成されるMCMの一例が
図1に示される。基板1は、基板1上に適切に整列されたシリコンチップ2を収容する。隣接するチップ2は、隣接する印字ヘッドの極端ノズルが幾らかの重なり合いを成すように、横方向に移動されて基板1上に位置決めされる。この機能は、有害な隙間を残すことなく、スワスの全長がノズルによって覆われることを保証する。重ね合わされたノズル3の相互に排他的な作動は、MCM5に電気的に接続される印字ヘッドコントローラによって管理される。基板1は、2つの陥凹領域6が反対側の角に残されるように形成され得る。すなわち、この特徴は、スワス長さを更に一層増大させるべく、水平方向4に沿う複数のモジュールの整列された位置決めを可能にする。
【0023】
[022]1つの実施形態では、
図2に記載されるように、複数の整列されたMCMモジュールが適切な支持体上に配置される。各モジュールは、開口が設けられたプリント配線基板(PWB)によって覆われ、それにより、何ら障害なく、チップの表面が露出されたままになる。PWB7には、開口8の縁部付近に配置されるボンディングパッドが設けられ、該ボンディングパッドは、シリコンチップ2上の対応するボンディングパッドと対向する。PWB7は、両面粘着テープを介して又は適切に分配された何らかの接着剤を介して下に横たわるMCMに取り付けられる。
【0024】
[023]
図2では、下に横たわるMCM基板の外輪郭が点線9により示される。PWBとシリコンチップとの間の電気的接続は、他の方法が想定し得る場合であっても、良く知られるワイヤボンディングプロセスを介して行なわれ得る。PWBは、外部コントローラ(図示せず)との更なる電気的接続部を収容する。
【0025】
[024]
図2の点線円10で囲まれた領域は、上面図(
図3a)及び断面図(
図3b)の両方で
図3に拡大される。
【0026】
[025]
図3aを参照すると、PWB開口8付近のボンディングパッド11は、ワイヤボンディングプロセスによって実現される導線13を介してシリコンチップ2上の対応するボンディングパッド12に電気的に接続される。
【0027】
[026]
図3bは、チップ2とPWB7との間のキャビティ内のワイヤボンディング後に塗布されるシール接着剤14の更なるセグメントを描く。シール接着剤は、電気的及び機械的な保護の両方を与えるために、パッド11,12並びに接続ワイヤ13を組み込む。
【0028】
[027]
図3bにおいて、ボンディングパッド11は、配線13及びシール接着剤14を低い高さレベルに保つために、適切な陥凹領域15内に配置されるが、別の実施形態(
図3bに示されない)では、ボンディングパッド11がPWBの上に配置され得る。
【0029】
[028]
図4に示される他の実施形態において、グラファイト基板1は、シリコンチップが配置されなければならない領域に突出リム16が生成されるように形成され、それにより、シリコンチップの上面が持ち上がって表面洗浄が容易になる。
【0030】
[029]
図5を参照すると、長いスワス印字ヘッドをもたらすべく、単一のMCMアセンブリ又は複数の相互に位置合わせされたMCMアセンブリ17を適切な支持体18上に固定することができる。分かり易くするために、
図5aは、MCMアセンブリが2つしかない部分を描く。また、支持体18は、複数の印字ヘッドにインクを供給するための流体接続部及び外部コントローラへの電気接続部も収容する。支持体18上に配置される複数のMCMアセンブリ17は印字ヘッド19を形成し、該印字ヘッドは、ある意味では、長スワス印字ヘッドと見なされ得るとともに、印刷媒体の幅にまたがる単一の印刷装置と想定され得る。
【0031】
[030]更なる実施形態では、
図5aに示される配置を複製することができ、それにより、横方向に同様な適切に位置合わせされたMCMアセンブリを付加することができる。これが
図5bに示される。この実施形態は、より高い印刷速度が追求される場合に特に効果的である。
【0032】
[031]
図6は、印刷機器の基本部品を示す。印字ヘッド19は、ノズルを下に向けて、印刷媒体20に向けて水平に配置され、印刷媒体20は、印刷中に機器フレームワークに対して静止したままである印字ヘッドの長手方向軸線に対して横方向に矢印の方向に沿って移動する。
【0033】
[032]しかしながら、印字ヘッドは垂直軸線に沿って制御された態様で正確に移動され得る。実際に、印字ヘッドは電動スレッドに対して強固に固定され、電動スレッドは、
図6aに示されるように、いずれも水平方向に延びる長手方向印字ヘッド軸線Y及び媒体摺動軸線Xの両方に対して垂直であるZ軸に沿う垂直移動を可能にする。流体接続部及び電気接続部21は、それらがパイプ又はケーブルのような可撓性要素から成るため、印字ヘッドのある程度の移動を可能にする。液滴22は、矢印に沿って、媒体20に向かって垂直に放出される。各液滴は、媒体上にドットをもたらす。電動スレッド(図示せず)による印字ヘッド19の前面と印刷媒体20との間の距離の垂直方向の調整は、
図6bの側面図に示されるように、最高の印刷品質を目指して、隙間高さ35の最適化を可能にする。
【0034】
[033]ノズルからの目詰まりしたインクの排除は、熱機械的な作用による目詰まり除去を引き起こすようにノズルを繰り返し作動させて効果的に行なわれ得る。ソフトブレードによるノズル表面の拭き取りが行なわれれば、動作がより一層効果的である。ノズル付近に不可避的に存在する幾らかのインク液滴がブレードを湿らせ、それにより、ブレードが印字ヘッドの前面を横切って移動するときに薄い液膜がノズル表面全体にわたって広げられる。すなわち、これにより、おそらく毛管効果に起因して、ノズルからの目詰まりの排除が容易になり、装置の機能が回復される。
【0035】
[034]他の状況では、例えば空の印刷装置に初めてインクが充填されるとき又は何らかの技術的介入後の流体回路の想定し得る障害に起因する何らかの予期しない問題を排除するためにノズルのパージが必要となり得る。通常、印刷機器のインク送出システムは、インク充填が何ら問題なく定期的に行なわれるように設計されるが、ノズルの繰り返し作動により流体回路をパージする可能性は、偶然に起こる問題を解決するための更なる手段である。
【0036】
[035]目詰まりを取り除くため又は流体回路内の想定し得る障害物を排除するためのノズルの繰り返し作動は、幾らかのインクの放出を引き起こす場合があり、それにより、印刷媒体上に望ましくないドット又は汚れが生じ、既存の解決策の重大な欠点になる。
【0037】
[036]本発明によれば、前述の問題は、印字ヘッドを媒体から遠ざけて、放出されたインクを収集できるように印字ヘッドを適切な保守点検ステーションへ移動させることによって解決される。この動作は、
図7に示されるように、印字ヘッドを、例えばY軸に沿って、媒体20から離れるように保守点検ステーションに向けて水平に移動させる他の電動スレッドを付加することによって達成され得る。
【0038】
[037]
図7を参照すると、水平電動スレッド23は、機器フレームワークに固定されて、Y軸に沿って前後に移動する。水平電動スレッド23は、正のY方向で前方に進むと、印字ヘッド19を媒体20の上方の印刷位置に移動させ、一方、後方に進むと、印字ヘッド19を保守点検ステーション24の上方で負の方向に運ぶ。
【0039】
[038]次に、垂直電動スレッド25は、水平電動スレッド23に固定されて、印字ヘッド19が印刷媒体20の上方の印刷位置にあるときにZ軸に沿って上下に移動する。垂直電動スレッド25は、最適な印刷品質のために、印字ヘッドの前面と媒体との間の距離の正確な調整を可能にする。
【0040】
[039]別の実施形態(図示せず)では、前述の動作様式から逸脱することなく、垂直電動スレッド25が機器フレームワークに固定され、一方、水平電動スレッド23が垂直電動スレッドに固定される。
【0041】
[040]前述のように、ノズルがしばらくインクを放出しない場合、ノズル表面からの液体の蒸発がノズルの目詰まりを引き起こす可能性がある。この目詰まりのリスクは、長期間にわたって、例えば一晩中又は印刷動作を長時間中断しなければならないときに印字ヘッドがアイドル状態のままである場合に特に顕著である。実用的な解決策は、
図8に示されるように、適切なキャッピング要素を使用して、各マルチチップモジュールの全てのノズルの表面を閉じられた小さい体積で閉鎖するためのキャッピング要素である。
【0042】
[041]特に、
図8a及び
図8bで述べたように、キャッピング要素は、基本的に、中空槽26が設けられた部分31から成るとともに、シールリング28を収容し、シールリング28は、キャッピング要素がMCMアセンブリの前面に押し付けられるときに全てのノズルを小さな体積内で密閉状態に保つべく、その形状を辿る全外輪郭にわたって延びる。外輪郭27は、
図8cで良く分かり、点線輪郭によって示される領域を占めるMCMに存在するチップの全てのノズルを取り囲む。
【0043】
[042]印字ヘッドが複数のMCMアセンブリから成る場合、それぞれのアセンブリには適切なキャッピング要素が設けられなければならない。ノズル表面からのインクの蒸発により、閉じられた体積内で溶媒蒸気圧が増大する。密閉シールリング28に起因して蒸気漏れが起こり得ないため、内部蒸気圧が飽和レベルに近い値に達し、それにより、一種の動的平衡が閉環境内で生じ、それにより、ノズル表面からの任意の更なる正味蒸発が防止される。したがって、印字ヘッドは、ノズルの目立った目詰まりを起こすことなく、長期間にわたってアイドル状態を保ことができる。
【0044】
[043]キャッピング要素を保守点検ステーション内に収納できる。この実施形態では、目詰まり除去中又はパージ動作中にノズルによって放出されるインクを収集して、インクをパイプ29を介して廃棄物収集タンク(図示せず)に搬送するべく、中空槽26に傾斜底部を成形することができる。パイプ29の上端は、排出孔30を通じて槽26の傾斜底部と連通している。ホース、キャップのような、パイプ29をタンクと連通させる全ての部分は、動作形態においてタンク及びパイプ29からの内部空間が外部環境と連通しないように密閉状態で締結され得る。
【0045】
[044]保守点検のために印字ヘッド19を保守点検ステーション24の上方に移動させた後、実際の必要性に応じて、電動スライド25を使用して、印字ヘッドをキャッピング要素に向けて垂直に移動させることができる、又は、印字ヘッドをキャッピング要素から特定の距離まで持ち上げることができる。目詰まり除去プロセス又はパージプロセスのみが実行される場合には、放出された液滴が印字ヘッドの前面で跳ね返らないようにするべく、印字ヘッドをキャッピング要素に近接させるがキャッピング要素と接触させないように保つべきである。
【0046】
[045]他方で、ノズルの目詰まりを防ぐためにキャッピング動作が実行されなければならない場合には、印字ヘッドをキャッピング要素と接触させて、印字ヘッドのノズルを密閉シールすることができる。廃棄物収集タンクにインクを部分的に充填できる。動作形態では、前述のように、廃棄物収集タンクがキャッピング要素とのみ流体連通する。したがって、キャッピング段階では、キャッピング要素が印字ヘッド前面とシール接触しているとき、キャッピング要素の中空槽によって、廃棄物収集タンクによって、及び、それらの間の連通パイプによって形成される内容積は、漏れを何ら伴うことなく、外部環境から密閉状態で分離されたままであり、それにより、密閉された部屋内で溶媒蒸気圧を確立することができ、ノズルの任意の更なる目詰まりを防止できる。
【0047】
[046]
図8に描かれる中空槽26を備えるキャッピング要素32を成形によって得ることができ、一方、シールリング27及びパイプ30を後に組み付けることができる。
【0048】
[047]別の実施形態では、部品のうちの2つ又は好ましくは部品の全てをダブルショット成形のようなより洗練されたプロセスにより製造することができる。特に、パイプ30を構成する部品を最初に金型の適切な挿入ポートに挿入することができ、また、中空槽26が位置する部分31を形成するために熱可塑性材料を最初のショットとしてマウンドに注入することができる。熱可塑性材料がパイプの挿入された末端を取り囲み、それを一体の本体を成して密閉状態で固定する。その後、当技術分野にしたがって金型を回転させた後、軟らかいゴム状の材料が第2のショットで注入されて、キャッピング要素のシール部が実現される。
【0049】
[048]ダブルショット成形プロセスは、硬質材料と軟質材料との接合を最適化して、界面に強力な結合をもたらす。更に、界面に残留細孔のリスクを引き起こす場合がある異なる部品を更に組み付ける必要なく、パイプ30及びシールリング28を含むキャッピング要素32を一体の本体として得ることができる。
【0050】
[049]
図9に更に示されるように、ノズルが配置される印字ヘッドの前面を効果的にシールするために、キャッピング要素32が適切なフレーム33に搭載されなければならない。また、フレーム33は拭き取りブレード34も収容する。
【0051】
[050]キャッピング要素32は、フレームに対してある程度移動できるが、完全に移動できない。フレーム構造には幾つかの制約があり、これらの制約は、キャッピング要素をフレーム外周内にとどまらせるが、キャッピング要素が、軸線α及び軸線βの周りで僅かに傾くことができるようにするとともに、垂直方向に沿って僅かに移動できるようにし、それにより、印字ヘッドの前面と正確に適合できるようにする。フレーム33はベースプレート36に固定され、ベースプレート36は、媒体平面に平行であり、それにより、機器フレームワークに強固に取り付けられる。
【0052】
[051]
図10を参照すると、一実施形態において、フレーム33は、
図10a及び
図10b(分解図)に示されるように構造化される。キャッピング要素32は、中空ベイスン26の底部にある穴39を通過するねじ38によってプレート37に固定される。ねじ38は、プレート37にしっかりと挿入されるブシュ40に締め付けられる。下部プレート側で、ブシュがシリンダの形態を成して延ばされる。実際に、ブシュは、コイルを通過するばね41と係合する。下側では、ばね41が、フレーム33の基部に接続される他のリンチピン42によって係合される。したがって、プレート37に締め付けられるキャッピング要素32は、コイルばね41によって上方に付勢されるのが分かる。
【0053】
[052]フレーム33には、垂直プレートである2つの長手方向側面43が設けられ、この長手方向側面には垂直スロット44が実現されている。更に、長手方向側面43に対して直交する2つの他の横方向側面45が存在し、この横方向側面には2つの他の垂直スロット46が形成される。垂直スロット44,46は、プレート37の移動のためのランナーのように作用する。実際に、プレート37は、長手方向に沿う2つのタブ47と、横方向に沿う2つのピン48とを備える。タブ及びピンはスロットに沿って摺動でき、それにより、プレートは、フレーム外周から出ることなく、垂直に移動できるとともに、
図9に示される長手方向軸線及び横方向軸線α,βの両方を中心に回転できる。垂直スロット44は、ねじ49を介して側面43に締結される停止プレート53によって上端が閉じられる。停止プレート53では、フィンガ50が、コイルばねにより付勢されるプレートの上向きの動きを止めるタブ47のための当接部として作用する。全体的な構造を完成させるために、2つの拭き取りブレード34を支持するべく2つの更なる部品51が付加される。支持部品51は、ねじ52によって停止プレート53に締結され、この支持体51の適切な部分には拭き取りブレードが挿入される。
【0054】
[053]シールリング28に対する及び点線の輪郭により示されるそれぞれのMCMの4つのチップ(「I」によりラベル付けされた2つの上側チップ及び「II」によりラベル付けされた2つの下側チップ)に対する2つの拭き取りブレード34の位置が
図11に示される。拭き取りブレード34は、
図9にも明確に見えるように、シールリング28の高さを超えるように搭載される。この特徴により、拭き取りブレード34は、印字ヘッドがシールリング28と係合する前に、印字ヘッドの前面と接触することができる。
【0055】
[054]拭き取りプロセスは、長手方向Y軸に沿って印字ヘッドを水平方向に前後に移動させて実行される。印字ヘッド19は、固有の印刷スワス4を備えるべく支持体18上にモジュール式に配置される複数のMCMアセンブリから成るため、拭き取り要素及びキャッピング要素を、明確にするために2つの要素のみが存在する
図12に示されるように並べて配置される個々のキャッピング要素及び拭き取り要素のモジュール式アセンブリとして考えることもできる。
【0056】
[055]再び
図11を参照すると、右上の拭き取りブレードは、それ自体のモジュールのチップ対「I」を扱い、一方、チップ対「II」は、
図12に見える隣接するMCMの左下の拭き取りブレードによって扱われる。
【0057】
[056]
図12に戻ると、表面の洗浄を行なうべく印字ヘッドが最初に右に移動された後に元の位置に戻され、一方、拭き取りブレードを有するキャッピング要素が依然として下方にとどまる場合、上側チップがそれ自体のキャッピングフレームに搭載された拭き取りブレードによって拭き取られ、一方、下側チップが隣接するモジュールに搭載された拭き取りブレードに依存する。洗浄プロセス中に印字ヘッドが左へ移動される場合には逆のことが起こる。
【0058】
[057]キャッピング段階中、印字ヘッドは、キャッピング要素と係合するように、垂直電動スレッドによって垂直軸線に沿って下げられる。
図9及び
図10を参照すると、係合直前に、キャッピング要素は、コイルばね41によって上方に付勢されるが、プレート53のフィンガ50によって停止される。係合後、印字ヘッドの下向きの動きは、プレート37のタブ47を停止フィンガ50から引き離し、それにより、キャッピング要素を下方に引張り、キャッピング要素はばねの付勢力に抗する。プレートの引き離しは、軸線α,β周りの幾らかの動きを可能にし、それにより、シールリング28と印字ヘッドの前面との正確な一致が達成される。ノズルの効果的なシールを確保するため、印字ヘッドの動きが所定の移動後に停止される。
【0059】
[058]拭き取りブレード34はシールリング28の高さを超えるため、係合中に、拭き取りブレードは、シールリングの前に印字ヘッドの前面と接触し得る。正しい係合を妨げる又は拭き取りブレードの破損を引き起こす任意の障害を防ぐために、拭き取りブレードが適切なポケット54内に収容され、これらのポケットは、実際には、
図13に示されるように、各MCMアセンブリ7の傍にある、MCMアセンブリ支持体18内に実現されるキャビティである。ポケットの深さは、キャッピング形態において拭き取りブレードを曲げることなく収納できるような深さである。
【0060】
[059]
図14は、複数のフレーム33の配列を備えるモジュール式保守点検ステーション24全体を示し、フレーム33上にキャッピング要素32及び拭き取りブレード32が搭載される。本発明の一態様において、前記形態は、
図5bに示されるMCMアセンブリの重複配列を有する印字ヘッドの実施形態に適している。
【0061】
[060]
図15は、モジュール式保守点検ステーション24全体を上面図(
図15a)及び横断面図(
図15b)でそれぞれ更に示す。
【0062】
[061]
図15bに示されるように、保守点検ステーション24の下部には廃棄物収集ガター56がある。廃棄物収集ガターは、ベースプレート36の下方に固定される長い傾斜した収集体を構成し、該収集体で全ての排出パイプ29の下端が合流される。パイプから落下するインクは、それが出口コネクタ57に到達するまで傾斜床55を有する傾斜したガター内に進入し、出口コネクタ57は、下流側で、パイプ又は何らかの他の種類のダクトを介して、廃インクタンク(図示せず)と密閉連通状態に至らされる。
【0063】
[062]ベースプレート36は適した穴を備え、これらの穴を通じてパイプ29がベースプレートと何ら擦れることなくガター56内に入る。ガター56内へのパイプ29の緊密な挿入は、キャッピング段階中の任意の液体又は蒸気の漏れを防ぐべく、ベースプレート36とガター56との間に介挿される中間層58を通じて達成される。実際に、キャッピング要素32の一部であるパイプ29は、印字ヘッドの前面との係合及び印字ヘッドの垂直移動中に加えられる相対圧力に起因して、キャッピング動作中に移動することができる。中間層58は、可動パイプとガターとの間の密閉シールを可能にするとともにガター56をその上方のベースプレート36に対して密閉締結できるようにするガスケットとして作用する。
【0064】
[063]中間層58が
図16に示される。中間層58は複数の穴59を備え、穴の直径は、パイプの挿入後の任意のクリアランスを防ぐために、パイプ29の外径よりも僅かに小さい。中間層58の穴59の位置は、
図16aに示されるように、保守点検ステーションにおけるパイプ29の位置に対応する。各パイプ29は、中間層58の対応する穴59を通過して、ガター56に入る。中間層は適切に柔らかい材料から形成されるため、それにより、パイプが穴を前後に滑ることができ、密閉シールが保証される。中間層58の材料は、化学的に適合し、インク溶媒に対して耐性がなければならない。適した材料は、独立気泡を有するEPDM発泡体となり得るが、他の種類の材料も採用できる。
図16bに示されるように、中間層58は、ねじ60によりベースプレート29に固定され、また、介挿された中間層58は、2つの部分間の密閉固定を確保することもできる。
【0065】
[064]実際には、印字ヘッドのインク充填中に、ノズルが特定の時間にわたって密閉される動作が必要とされる。この要件を達成する方法は、適切な圧力を作用するシャッタープレートを複数の印字ヘッドの表面に対して適用して、表面上の全てのノズルを密閉状態で塞ぎ、それにより、外部環境との任意の流体連通又は漏れを防ぐことである。ノズルをシールするために使用されるプレートは、印字ヘッド表面に正確に適合すべきである。シャッタープレートの材料は、表面形態にそれを損傷させることなく適合させるべく、やや柔軟であるべきである。更に、インク成分に関する化学的適合性及び耐性も必要とされる。EPDM発泡体は用途に適した例である。しかし、材料は、僅かに高い変形能に起因してノズルを効果的にシールできるように、前述の介挿された中間層58と比べて小さい気泡サイズを有するべきである。
【0066】
[065]印字ヘッド表面はかなり拡張されるため、各MCMアセンブリのシール、或いは、より好ましくは、各シリコンチップのシールに個別に対処することが有利である。したがって、プレートとノズルとの間を密閉接触させるために必要な圧力は、印字ヘッド表面の異なる部分で独立した範囲を伴って印加される必要がある。
【0067】
[066]本発明にしたがって使用され得るシールシステムの効果的な実施は、独立したフレームの配置に依存し、各フレームは、ばねコイルによって上向きに付勢されるプレートを収容する。説明したキャッピングシステムと同様の概念にしたがって、実際の実装が全く異なる場合であっても、印字ヘッド表面との係合及び印字ヘッドの下向きの動きがプレートをその停止当接部から引き離した時点で、プレートは平衡位置を中心に僅かに傾くことができる。
【0068】
[067]
図17の分解図に示されるシールシステム61は、保守点検ステーション24に搭載するための基準ピン63が設けられた支持ベース62を備える。印字ヘッド内のMCMアセンブリのレイアウトにしたがって、複数のフレーム64が支持ベース62上に配置される。垂直スロット67が設けられた2つの対称的な横方向の反った側面66を有する上側プレート65が、平衡位置を中心にフレーム24の上方で傾くことができる。実際に、2つの垂直シリンダ68がプレート65の下方に固定され、2つの垂直シリンダ68は、フレーム64の適切な穴69を通過し、介挿された間隔ワッシャ71を伴ってねじ70によりフレーム64の下方に固定され、間隔ワッシャ71の直径は穴69のサイズよりも大きい。
【0069】
[068]シリンダ68は2つのコイルばね72を通過し、コイルばね72は、これらのシリンダによって係合されて案内される。コイルばねの直径は穴69のサイズよりも大きく、したがって、コイルばねがフレーム64の上側に位置し、一方、シリンダ68は自由に通過できる。したがって、プレート65は、間隔ワッシャ71がストッパとして作用するフレーム64の下面に打ち当たるまで、コイルばね72によって上向きに付勢されるのが分かる。上側プレート65に対して下向きに印加される圧力は、間隔ワッシャ71をフレーム64の下面から引き離すことができ、また、プレート65は、コイルばね72による付勢力に抗して下方に移動できる。
【0070】
[069]支持体62はベースであり、このベースには、穴75を通過するねじ74によってフレーム64が固定される。支持体の穴76は、フレーム64の穴69に一致する。穴69は、固定ねじ70及びスペーサーワッシャ71によってシリンダ68の動きを妨げないように十分に大きい。プレート65の垂直側面66が自由に動いて通過できるようにするべく2つの更なるスロット77が支持体62に形成される。最後に、適切な凹部78が、側面66のスロット67内にとどまってガイド部材として作用するロッド73を収容する。ねじ74を介してフレーム64を支持体62に締結した後、これらの間でガイドロッド73が強固に挟持されたままとなる。
【0071】
[070]更なるプレート79がねじ80を介して上側プレート65に締結され得る。このプレートは、その表面上に、単一のMCMアセンブリ内のシリコンチップの数に対応するEPDMシャッタープレート81を備える。これらのシャッタープレートは、MCMアセンブリ内のシリコンチップに対して正確に位置合わせされた状態でプレート79に取り付けられる。好ましくは、シールプレート81の長手方向のサイズは、
図3及び
図4に記載されるように、導電配線13を取り囲むシール接着剤14からの任意の機械的障害を防ぐために、シリコンチップの長さよりも小さい。シールプレート81の長さは、ボンディングパッドが配置されるチップ末端と接触することなくシリコンチップ内の全てのノズルが占める表面を覆うのに十分である。プレート79に対するシールプレート81の組み付けは、物品の容易な交換を可能にする。組み付けられたシールシステム61の上面図及び全体図が
図18a及び
図18bにそれぞれ示される。
【0072】
[071]説明した解決策の利点は、シールシステム61を代わりに取り付けるためにキャッピング要素24を取り外す必要がないことである。これは、キャッピングシステムの適切な穴に挿入されるピン63を使用してシールシステム61を上端に搭載できるからである。シールシステム61は、必要に応じて、容易に挿入及び除去され得る。印字ヘッドを軸Zに沿って垂直に移動させる電動スレッドが、印字ヘッドがその最も高い位置にあるときに何ら干渉を伴わずに、キャッピング要素及びシールシステムの両方を収容するのに十分な長さを有するだけで済む。
【0073】
[072]シールシステム61を用いてノズルを密閉シールする手順は、キャッピング手順と同様である。印字ヘッドの垂直移動が十分に大きければ、シールシステム61を、保守点検ステーション24の拭き取り要素及びキャッピング要素に対して、それらを取り外す必要なく直接に搭載できる。更に、印字ヘッドを下げると、印字ヘッドの前面がシールプレート81と係合する。下向きの動きにより、間隔ワッシャ71がフレーム64の停止面から引き離される。これにより、シールプレート81を収容するプレート79を2軸を中心に傾けることができ、それにより、印字ヘッド表面との最適な接触が達成され、ノズルのシールがもたらされる。
【0074】
[073]本発明に係るインクジェット印刷システムのインクジェット印字ヘッドを保守点検するためのモジュール式保守点検ステーションのために提案された解決策は、簡単且つ効果的であることが分かる。
【0075】
[074]他の既知の保守点検ステーションと比較して、本発明は、印字ヘッドの拭き取り、パージ、及び、キャッピングを効率的に実行できる、簡単で、コンパクトで、効率的で、カスタマイズ可能で、費用効果の高いモジュール式保守点検ステーションを提供する。
【0076】
[075]これに関し、本発明は、直交方向に沿って移動する二重電動スレッドのおかげで、保守点検動作中に印刷媒体上の望ましくないドット又は汚れを回避することができ、すなわち、水平方向では、印刷領域から離れて保守点検ステーションへ至る印刷ヘッドの移送及び拭き取り動作を可能とし、また、垂直方向では、印刷領域内の媒体との距離を調整できるようにし、ノズルパージのために保守点検ステーションとの距離を調整できるようにし、キャッピング動作のためにキャップと係合してキャップを押し下げることができるようにし、更なるノズルシール物品に嵌まり込むのに必要な距離を残すことができるようにし、ノズルをシールするべくシール物品と係合してシール物品を押し下げることができるようにする。
【0077】
[076]本発明は、キャッピング要素のための高度なダブルショット成形法のおかげにより、印字ヘッド表面の密閉シールを可能にする。
【0078】
[077]本発明は、廃インクタンクがキャッピング要素と密閉連通しているおかげによりパージ及びキャッピングの両方にとって安全で簡単な統合システムであって、印字ヘッドがキャッピングされるときに液体又は蒸気の任意の漏れを防ぐ統合システムを更に提供する。
【0079】
[078]上記の開示された主題は、例示的であり、限定的ではないと見なされるべきであり、独立請求項によって規定される発明のより良い理解を与えるのに役立つ。