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特許7293552地盤改良体及び埋設物の測定装置、地盤改良体の造成装置及び地盤改良体の造成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】地盤改良体及び埋設物の測定装置、地盤改良体の造成装置及び地盤改良体の造成方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/12 20060101AFI20230613BHJP
   E02D 1/00 20060101ALI20230613BHJP
   G01B 17/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
E02D3/12 102
E02D1/00
G01B17/00 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019209643
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021080755
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000150110
【氏名又は名称】株式会社竹中土木
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】濱名 正泰
(72)【発明者】
【氏名】植松 佑太
(72)【発明者】
【氏名】小西 一生
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-196595(JP,A)
【文献】特開平05-223923(JP,A)
【文献】特開2012-172329(JP,A)
【文献】特開平06-158638(JP,A)
【文献】米国特許第04640649(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 3/12
E02D 1/00
G01B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化前の地盤改良体に挿入される軸部材と、
前記軸部材に設けられ、異なる周波数の超音波を同一音源から同一方向に同時に発信する発信部と、
前記軸部材に設けられ、前記発信部から発信された異なる周波数の前記超音波の相互作用によって発生する差周波数の音波が前記地盤改良体の地盤との境界及び地盤に埋設されている埋設物で反射した反射波を受信する受信部と、
前記発信部の前記超音波の発信と前記受信部の前記反射波の受信との時間差によって前記地盤改良体の地盤との境界位置及び前記埋設物の埋設位置を検出する検出部と、
を備えた地盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項2】
前記発信部が発信する超音波の周波数は、85kHz以上であり、
前記差周波数は、10kHz以下である、
請求項1に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項3】
前記発信部が発信する超音波の周波数は、100kHz以上である、
請求項2に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項4】
前記差周波数は、5kHz以下である、
請求項3に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項5】
前記発信部が発信する異なる超音波の周波数は、100kHzと105kHzである、
請求項4に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項6】
前記検出部では、前記反射波に対して、ノイズ除去、増幅処理、時間変動利得調整及びエッジ検出を行って、前記反射波の強度の強弱を処理前よりも明確にし、前記境界位置及び前記埋設位置を検出する、
請求項1~請求項5のいずれか1項に記載の盤改良体及び埋設物の測定装置。
【請求項7】
地盤に挿入した軸部材を引き上げながら先端部の噴出ノズルから硬化材を噴出して地盤改良体を造成する造成部と、
造成中の前記地盤改良体に挿入された請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置と、
前記造成部を制御し、前記地盤改良体及び埋設物の測定装置で検出した前記境界位置及び前記埋設位置に応じて、前記噴出ノズルから噴出する前記硬化材の噴出量を調整する制御部と、
を備えた地盤改良体の造成装置。
【請求項8】
造成部が地盤に挿入した軸部材を引き上げながら先端部の噴出ノズルから硬化材を噴出して地盤改良体を造成する造成工程と、
造成中の前記地盤改良体に挿入された請求項1~請求項6のいずれか1項に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置で、前記地盤改良体の地盤との境界位置及び地盤に埋設されている埋設物の埋設位置を検出する検出工程と、
前記検出工程で検出した前記境界位置及び前記埋設位置に応じて、前記造成部を制御部が制御し、前記噴出ノズルから噴出する前記硬化材の噴出量を調整する調整工程と、
を備えた地盤改良体の造成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤改良体及び埋設物の測定装置、地盤改良体の造成装置及び地盤改良体の造成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、未固結深層混合処理地盤改良体の形状測定方法、セメント系深層混合処理工法用の噴射ロッド、及び攪拌ロッドに関する技術が開示されている。この先行技術では、ロッドに音波発振機及び受振機を設け、音波発振機から発振された音波が地盤と地盤改良体との境界面で反射した反射波を受振機が連続的に受振することによって、地盤改良体の造成形状を測定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-172329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のように音波を用いて地盤改良体の造成形状を測定する場合、高い周波数の超音波を用いると指向性が高く分解能が高い測定を行うことができるが、音波の減衰が大きく、反射波の測定は困難である。よって、減衰の少ない10kHz付近の低い周波数の音波を用いることが多い。
【0005】
しかし、減衰の少ない10kHz付近の低い周波数の音波は、指向性が低く分解能が低いので、地盤改良体の造成形状の測定精度が低い。また、10kHz付近の低い周波数の音波は、指向性が低く分解能が低いので、地盤に埋設された埋設物を検出することは困難である。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑み、地盤改良体の造成形状の測定精度の向上及び埋設物の検出を可能にすることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第一態様は、硬化前の地盤改良体に挿入される軸部材と、前記軸部材に設けられ、異なる周波数の超音波を同一音源から同一方向に同時に発信する発信部と、前記軸部材に設けられ、前記発信部から発信された異なる周波数の前記超音波の相互作用によって発生する差周波数の音波が前記地盤改良体の地盤との境界及び地盤に埋設されている埋設物で反射した反射波を受信する受信部と、前記発信部の前記超音波の発信と前記受信部の前記反射波の受信との時間差によって前記地盤改良体の地盤との境界位置及び前記埋設物の埋設位置を検出する検出部と、を備えた地盤改良体及び埋設物の測定装置である。
【0008】
第一態様の地盤改良体及び埋設物の測定装置では、発信部から発信された異なる周波数の超音波の相互作用によって発生する差周波数の音波の反射波を用いて地盤改良体の地盤との境界位置及び埋設物の埋設位置を検出する。よって、発信部から指向性が高く分解能が高い周波数の高い超音波を発信しても、発信した超音波よりも周波数が低い差周波数の音波の反射波を用いることで減衰が小さくなり、測定が可能となる。また、差周波数の音波は、発信部から発信された高い周波数の超音波と同じ指向性を有するので、分解能が高い。したがって、地盤改良体の造成形状の測定精度が向上すると共に埋設物の検出が可能となる。
【0009】
第二態様は、前記発信部が発信する超音波の周波数は、85kHz以上であり、前記差周波数は、10kHz以下である、第一態様に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置である。
【0010】
第二態様の地盤改良体及び埋設物の測定装置では、発信部が発信する超音波の周波数は85kHz以上であるので、指向性が高く分解能が高い。また、差周波数が10kHz以下であるので、減衰が少ない。したがって、発信部が発信する超音波の周波数が85kHz未満で差周波数が10kHzよりも大きい場合と比較し、地盤改良体の造成形状の測定精度が更に向上すると共に埋設物の検出精度が更に向上する。
【0011】
第三態様は、前記検出部では、前記反射波の音響信号に対して、ノイズ除去、増幅処理、時間変動利得調整及びエッジ検出を行い前記境界位置及び前記埋設位置を検出する、第一態様又は第二態様に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置である。
【0012】
第三態様の地盤改良体及び埋設物の測定装置では、検出部では反射波の音響信号に対して、ノイズ除去、増幅処理、時間変動利得調整及びエッジ検出を行い境界位置及び埋設位置を検出するので、反射波の音響信号をそのまま用いて検出する場合と比較し、境界位置及び埋設位置の検出精度が向上する。
【0013】
第四態様は、地盤に挿入した軸部材を引き上げながら先端部から硬化材を噴出して地盤改良体を造成する造成部と、造成中の前記地盤改良体に挿入された第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置と、前記地盤改良体及び埋設物の測定装置で検出した前記境界位置及び前記埋設位置に応じて、前記硬化材の噴出量を調整する調整部と、を備えた地盤改良体の造成装置である。
【0014】
第四態様の地盤改良体の造成装置では、高精度に検出した地盤改良体の地盤との境界位置及び埋設物の埋設位置に応じて、硬化材の噴出量を調整するので、地盤改良体を高精度に造成することができる。
【0015】
第五態様は、地盤に挿入した軸部材を引き上げながら先端部から硬化材を噴出して地盤改良体を造成する造成工程と、造成中の前記地盤改良体に挿入された第一態様~第三態様のいずれか一態様に記載の地盤改良体及び埋設物の測定装置で、前記地盤改良体の地盤との境界位置及び地盤に埋設されている埋設物の埋設位置を検出する検出工程と、前記検出工程で検出した前記境界位置及び前記埋設位置に応じて、前記硬化材の噴出量を調整する調整工程と、を備えた地盤改良体の造成方法である。
【0016】
第五態様の地盤改良体の造成方法では、高精度に検出した地盤改良体の地盤との境界位置及び埋設物の埋設位置に応じて、硬化材の噴出量を調整するので、地盤改良体を高精度に造成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、地盤改良体の造成形状の測定精度を向上させることができると共に埋設物の検出を可能にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態の測定装置及び造成装置の構成図である。
図2】測定装置を機能的に示すブロック図である。
図3】測定装置を構成する検出装置のモニターの画面の一例である。
図4】(A)は差周波数の音波による埋設物の検出を説明する説明図であり、(B)は比較例の低周波の音波で埋設物の検出を説明する説明図である。
図5】(A)は実験装置の構成図であり、(B)は収録データ図であり、(C)振幅値グラフであり、(D)は処理データ図であり、(E)はエッジ処理結果グラフである。
図6】本発明の一実施形態の変形例の測定装置及び造成装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<実施形態>
本発明の一実施形態の地盤改良体及び埋設物の測定装置、地盤改良体の造成装置及び地盤改良体の造成方法について説明する。
【0020】
[構成]
まず、測定装置及び本測定装置を備えた造成装置の構成について説明する。
【0021】
図1に示すように、造成装置10は、地盤Gを切削しながら、切削した地盤Gと高圧噴射された硬化材の一例としてのセメントミルクMとを攪拌混合して、地盤改良体50を造成する高圧噴射攪拌工法の地盤改良体の造成装置である。なお、図1及び後述する図6は、模試的に図示しているので、各装置、各機器及び各部材の大きさ等は、実際のものと異なる場合がある。
【0022】
造成装置10は、軸部材の一例としての回転ロッド30と、装置本体20と、を有している。装置本体20は、地盤G上(地上)に設置され、回転ロッド30を軸心回りに回転(矢印Y1参照)させつつ先端部の噴出ノズル32からセメントミルクMを横方向に噴出させると共に、回転ロッド30を昇降(矢印Y2参照)させる機能を有している。また、装置本体20には、図示してない作業員が、回転ロッド30の回転数、回転ロッド30の上下動及びセメントミルクMの単位時間当たりの噴出量等を操作する操作部22を有している。
【0023】
図1及び図2に示すように、測定装置100は、計測器34と、検出部の一例としての検出装置120と、を有している。
【0024】
図1に示すように、計測器34は、回転ロッド30の噴出ノズル32の下端部に取り付けられ、計測器34の下端部に掘削ビット40が取り付けられている。よって、計測器34は、回転ロッド30の回転に伴って一緒に回転する。検出装置120は、地盤G上(地上)に設置されている。計測器34と検出装置120とは、ケーブル102によって電気的に接続されている。
【0025】
図2に示すように、計測器34は、機能的には、発信部112と受信部114とを有して構成されている。発信部112は、異なる周波数の超音波を同一音源から同一方向に同時に発信する機能を有する。図1に示すように、異なる周波数の超音波の相互作用によって、差周波数の音波Sが発生し、差周波数の音波Sは、地盤改良体50の地盤Gとの境界及び地盤Gに埋設されている埋設物55で反射する。受信部114(図2参照)は、地盤改良体50の地盤Gとの境界で反射した反射波H1及び地盤Gに埋設されている埋設物55で反射した反射波H2を受信する機能を有する。
【0026】
なお、図1に示すように、本実施形態では、計測器34の周面に、発信部112と受信部114とが一体的に構成された送受信部110が設けられている(図2も参照)。
【0027】
また、図2に示す本実施形態における発信部112と受信部114とが一体的に構成された送受信部110を有する計測器34は、パラメトリック音響技術を用いた計測器である。パラメトリック音響技術は、音波伝搬の非線形性を応用した技術である。具体的には、二つ異なる周波数の1次波を同時に発信することで、二つ周波数の相互干渉により発生する差周波数の2次波を利用する技術である。
【0028】
計測器34の送受信部110から発信する二つの超音波の周波数は、それぞれ85kHz以上が望ましく、100kHz以上が更に望ましい。差周波数は、10kHz以下が望ましく、5kHz以下が更に望ましい。なお、本実施形態では、異なる周波数の超音波は、100kHzと105kHzであり、差周波数は5kHzである。
【0029】
図1に示すように、計測器34は、送受信部110で受信した反射波H1、H2を音響信号に変換し、ケーブル102を介して、検出装置120(図2も参照)に伝送する。
【0030】
図1及び図2に示すように、検出装置120は、制御部122(図2参照)と、表示装置の一例としてのモニター124と、によって構成されている。制御部122(図2参照)は、図示していないCPU(Central Processing Unit)、各処理ルーチンを実現するためのプログラム等を記憶したROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)、記憶手段としてのメモリ及びネットワークインタフェース等を含んで構成されている。
【0031】
図2に示す検出装置120を構成する制御部122は、計測器34を制御する。また、制御部122は、超音波の発信と反射波H1、H2の受信との時間差によって、図1に示す地盤改良体50の地盤Gとの境界の位置(以降「境界位置K1」とする)及び埋設物55が埋設された位置(以降、「埋設位置K2」とする)との距離を測定し、境界位置K1及び埋設位置K2を検出する。
【0032】
なお、本実施形態における埋設物55とは、岩及び土管等の人工物等である。
【0033】
本実施形態では、検出装置120の制御部122は、反射波H1、H2の音響信号に対して、ノイズ除去、増幅処理、時間変動利得調整及びエッジ検出等を行い境界位置K1及び埋設位置K2を明確にして、各位置を検出している。
【0034】
図3は、検出装置120のモニター124の画面の一例である。X[mm]は、計測された地盤改良体50の直径を示している。また、Y[mm]は地盤改良体50の鉛直方向長さを示している。
【0035】
[造成方法]
次に、地盤改良体の造成方法の一例について説明する。
【0036】
図1に示すように、地盤Gに挿入した回転ロッド30を引き上げながら先端部の噴出ノズル32からセメントミルクMを噴出し、掘削した地盤GとセメントミルクMとを攪拌混合して柱状の地盤改良体50を造成する。
【0037】
また、回転ロッド30に一体的に設けられた計測器34で、造成中の地盤改良体50の地盤Gとの境界位置K1及び地盤Gに埋設されている埋設物55の埋設位置K2を検出する。検出結果は、モニター124に表示される。モニター124には、地盤改良体50の造成形状及び埋設物55等が表示される。
【0038】
図示していない作業員は、モニター124に表示された境界位置K1及び埋設位置K2に基づいて、操作部22を操作し、回転ロッド30の回転数、回転ロッド30の引き上げ速度及びセメントミルクMの単位時間当たりの噴出量等を、地盤改良体50の造成形状が設計値に近づくように調整する。
【0039】
具体的には、境界位置K1が設計値よりも外側の場合は、セメントミルクMの噴出量を減少させたり、引き上げ速度を上げたりする。逆に境界位置K1が設計値よりも内側の場合はセメントミルクMの噴出量を増加させたり、引き上げ速度を下げたりする。
【0040】
また、埋設物55が検出された場合は、埋設物55の大きさ及び位置等に応じて、セメントミルクMの噴出量の増加、造成作業の一旦停止及び埋設物55の除去等を検討する。
【0041】
[作用及び効果]
次に、本実施形態の作用及び効果について説明する。
【0042】
測定装置100は、計測器34から発信した異なる周波数の超音波の相互作用によって発生する差周波数の音波Sを用いて地盤改良体50の地盤Gとの境界位置K1及び埋設物55の埋設位置K2を検出する。よって、指向性が高く分解能が高い周波数の高い超音波、本実施形態では100kHz及び105kHzを発信しても、発信した超音波よりも周波数が低い差周波数、本実施形態では5kHzの音波Sを用いることで減衰が小さくなり、反射波H1、H2の測定が可能となる。したがって、地盤改良体50の造成形状の測定精度が向上すると共に埋設物55の検出が可能となる。
【0043】
なお、仮に低周波の音波で測定した場合、指向性が低く分解能が低いので地盤改良体50の造成形状の測定精度が低い。また、分解能が低い低周波の音波で測定した場合、地盤Gに埋設物55が埋設されていても埋設物55を検出できない。
【0044】
具体的には、図4(A)のように、本実施形態の指向性が良く分解能が高い差周波数の音波Sでは、埋設物55の一部にのみ音波Sが照射されるので、埋設物55にのみ反射した反射波H2を検出可能である。しかし、図4(B)のように、分解能が低い低周波の音波SSでは、地盤Gに埋設物55の外側にも音波SSが照射されるので、埋設物55に反射した反射波HH2は弱く、検出することができない。よって、分解能が低い低周波の音波SSでは、地盤Gに埋設物55が埋設されていても埋設物55を検出できない。
【0045】
なお、同様の理由で、図4(A)のように、本実施形態の指向性が良く分解能が高い差周波数の音波Sでは、地盤改良体50の造成形状を正確に検出することができる。
【0046】
また、検出装置120は、反射波H1、H2の音響信号に対して、ノイズ除去、増幅処理、時間変動利得調整及びエッジ検出等を行い境界位置K1及び埋設位置K2を明確にして検出するので、検出精度が向上する。
【0047】
また、高精度に検出した地盤改良体50の地盤Gとの境界位置K1及び埋設物55の埋設位置K2に応じて、セメントミルクMの噴出量等を調整するので、地盤改良体50を高精度に造成することができる。
【0048】
また、地盤改良体50の造成に支障が生じるような埋設物55が検出された場合は、大きさ及び位置等を分析し、造成作業の一旦停止等を検討することができる。
【0049】
(実験及び実験結果)
次に、本実施形態の測定装置100を用いて地盤改良体50の地盤Gと境界位置K1及び埋設物55の埋設位置K2を検出できることを確認した実験及びその実験結果について説明する。
【0050】
図5(A)に示すように、実験装置200は、測定装置100、木板製の箱202、箱202に充填した硬化前のモルタル250、箱202に充填した飽和状態の砂210及び砂210に埋設した鋼管255を有している。なお、箱202の図における左側にモルタル250を充填し、図における右側に砂210を充填している。また、硬化前のモルタル250は地盤改良体50(図1参照)を模しており、飽和状態の砂210は地盤G(図1参照)を模しており、鋼管255は埋設物55(図1参照)を模している。
【0051】
そして、硬化前のモルタル250に測定装置100の計測器34を埋設させ、異なる周波数の超音波の相互作用によって発生する差周波数の音波Sの反射波H1、H2を受信し、検出装置120(図1参照)で検出する。なお、音速は、モルタル250における音の速度である1645m/秒を用いて計算した。
【0052】
図5(B)は、反射波H1、H2の音響信号を可視化した収録データの図である。この図は、濃いほど反射波H1、H2の強度が大きいことを表している、なお、実際には、反射波H1、H2の強度が大きいほど赤色が濃くなり、小さいほど青色が濃くなるようなグラデーションで表示される。
【0053】
図5(C)は、反射波H1、H2の振幅値をグラフ化した図である。この図5(C)の振幅値グラフでは、モルタル250と砂210との境界位置K1と、鋼管255の埋設位置K2と、箱202の壁面203(図1)の位置と、がそれぞれ階段状になっている。
【0054】
図5(D)は、図5(B)の収録データに対して、ノイズ除去処理、増幅処理、時間変動利得調整処理及びエッジ処理を行って、反射波H1、H2の強度の強弱を明確にした処理データの図である。図5(B)と同様に、濃いほど反射波H1、H2の強度が大きいことを表している、また、実際には、反射波H1、H2の強度が大きいほど赤色が濃くなり、小さいほど青色が濃くなるようなグラデーションで表示される。
【0055】
図5(E)は、図5(D)のエッジ処理を行ったエッジ検出処理結果のグラフである。このグラフから境界位置K1、埋設位置K2及び壁面203の位置が正確に検出されていることが分かる。
【0056】
<変形例>
次に、本実施形態の変形例について説明する。
【0057】
図1に示す上記実施形態の造成装置10では、図示していない作業員が、検出装置120のモニター124に表示された境界位置K1及び埋設位置K2に基づいて、操作部22を操作して、セメントミルクMの単位時間当たりの噴出量等を調整した。
【0058】
これに対して、図6に示す変形例の造成装置11では、検出装置120と装置本体20とがケーブル103で電気的に接続されている。また、検出装置120を構成する調整部の一例としての制御部122(図2参照)は、装置本体20を制御可能とされている。
【0059】
検出装置120の制御部122(図2参照)は、測定装置100が測定した境界位置K1及び埋設位置K2に基づいて、装置本体20を制御し、地盤改良体50の造成形状が設計値に近づくように、回転ロッド30の回転数、回転ロッド30の引き上げ速度及びセメントミルクMの単位時間当たりの噴出量等を調整する。つまり、測定装置100が測定した境界位置K1及び埋設位置K2に基づいて、自動的に回転ロッド30の引き上げ速度及びセメントミルクMの単位時間当たりの噴出量等が調整される。
【0060】
<その他>
尚、本発明は上記実施形態及び変形例に限定されない。
【0061】
例えば、上記実施形態及び変形例では、地盤改良体50を造成しながら測定装置100で境界位置K1及び埋設位置K2を測定したが、これに限定されない。造成後に硬化前の地盤改良体50に計測器34を挿入して測定してもよい。
【0062】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、回転ロッド30に計測器34を取り付けたが、これに限定されない。回転ロッド30とは別のロッド(軸部材の一例)に計測器34を取り付けて、造成中又は造成後の地盤改良体50に挿入して測定してもよい。
【0063】
また、例えば、上記実施形態及び変形例では、高圧噴射攪拌工法で造成する地盤改良体に本発明を適用したが、これに限定されない。高圧噴射攪拌工法以外の深層混合処理工法、例えば、機械攪拌工法で造成する地盤改良体に本発明を適用してもよいし、高圧噴射攪拌工法と機械攪拌工法とを併用して造成する地盤改良体に本発明を適用してもよい。
【0064】
要は、硬化前の地盤改良体に軸部材に設けられた計測器34を挿入して測定すればよい。
【0065】
また、上記実施形態及び変形例では、埋設物55は、地盤改良体50の造成領域の外側に埋設されていたが、これに限定されない。埋設物55は、地盤改良体50の造成領域内に埋設されていてもよい。
【0066】
また、上記実施形態及び変形例では、計測器34が発信する超音波の周波数は、100kHzと105kHzで、差周波数は5kHzであったが、これに限定されない。計測器34が発信する超音波の周波数及び差周波数は、適宜設定することができる。
【0067】
また、上記実施形態及び変形例では、発信部112と受信部114とが一体的に構成された送受信部110を有する計測器34を用いたが、これに限定されない。発信部と受信部とが別々の機器に設けられていてもよい。
【0068】
更に、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得る。複数の実施形態及び変形例等は、適宜、組み合わされて実施可能である。
【符号の説明】
【0069】
10 造成装置
11 造成装置
30 回転ロッド(軸部材の一例)
32 噴出ノズル
34 計測器
50 地盤改良体
55 埋設物
100 測定装置
112 発信部
114 受信部
120 検出装置
122 制御部(調整部の一例)
G 地盤
H1 反射波
H2 反射波
K1 境界位置
K2 埋設位置
M セメントミルク(硬化材の一例)
S 音波
図1
図2
図3
図4
図5
図6