(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】回転体の支持構造
(51)【国際特許分類】
F16F 1/12 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
F16F1/12 K
F16F1/12 A
(21)【出願番号】P 2019204784
(22)【出願日】2019-11-12
【審査請求日】2022-08-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000148896
【氏名又は名称】三井金属アクト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大川 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】山本 直司
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-132519(JP,A)
【文献】特開2010-196836(JP,A)
【文献】特開昭61-055072(JP,A)
【文献】実開昭60-063675(JP,U)
【文献】特開2016-204994(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00- 6/00
E05B 1/00- 85/28
B60J 5/00- 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースに対して回転可能に配設された回転体と、
前記回転体及び前記ベースの間に介在されたねじりコイルバネとを備え、
前記ねじりコイルバネの弾性力により、前記ベースに対して前記回転体を中立位置に維持するようにした回転体の支持構造であって、
前記ねじりコイルバネは、一方のバネ端部がコイル部の内周側に設けられる一方、他方のバネ端部が前記コイル部の外周側に設けられ、
前記回転体には、前記ねじりコイルバネの一方のバネ端部に当接される第1押圧部及び前記ねじりコイルバネの他方のバネ端部に当接される第2押圧部が設けられ、
前記ベースには、前記ねじりコイルバネの一方のバネ端部において前記第1押圧部が当接した縁部に係止される第1係止部及び前記ねじりコイルバネの他方のバネ端部において前記第2押圧部が当接した縁部に係止される第2係止部が設けられている
ことを特徴とする回転体の支持構造。
【請求項2】
前記ベースに設けた係止部には、前記ねじりコイルバネのバネ端部に係合することにより前記ベースに対する前記ねじりコイルバネの軸方向に沿った移動を制限する係合突部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の支持構造。
【請求項3】
前記ベースに設けた第1係止部には、前記コイル部の内周に沿って延在する円弧状の突出部が一体に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の支持構造。
【請求項4】
前記ベースと前記回転体との間には、互いに当接することにより相対回転角度を規定する回転規制部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の回転体の支持構造。
【請求項5】
前記回転規制部には、消音材が配設されていることを特徴とする請求項4に記載の回転体の支持構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベースと回転体との間にねじりコイルバネを介在させることによって回転体を中立位置に維持するようにした回転体の支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ベースに対して回転体を中立位置に維持する構造としては、ベースに係止部を設け、かつ回転体に押圧部を設けるとともに、両バネ端部がそれぞれ係止部及び押圧部に係合するようにねじりコイルバネを設けるものが提供されている。この支持構造では、例えば回転体に外力を加えて回転させると、ベースの係止部に対して回転体の押圧部が相対回転し、ねじりコイルバネが撓んだ状態となる。この状態から回転体に加えていた外力を除去すると、ねじりコイルバネの弾性力によって回転体が反転し、元の中立位置に復帰する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転体の中立位置を正確に規定するためには、中立位置に配置されている状態において、回転体の押圧部及びベースの係止部に対してねじりコイルバネのバネ端部が隙間無く当接されている必要がある。しかしながら、中立位置に配置されている状態でねじりコイルバネのバネ端部と、回転体の押圧部及びベースの係止部との間に隙間が無い支持構造にあっては、ベースに対して回転体を取り付ける作業がきわめて煩雑となる。例えば、予め回転体にねじりコイルバネを取り付けた状態でベースに対して回転体を配設するには、同時にベースの係止部をねじりコイルバネのバネ端部の間に挿入する必要がある。上述したようにベースの係止部とねじりコイルバネのバネ端部との間に隙間が生じないようにするには、ねじりコイルバネのバネ端部相互間に係止部の幅を超えた隙間を確保することができないため、係止部を挿入する作業が困難となる。しかも、係止部の挿入状態は外部から視認することができないため、上述の問題が一層顕著となる。なお、予めベースにねじりコイルバネを取り付けてベースに回転体を配設する場合にも同様の問題が生じ得るのはいうまでもない。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、組立作業の容易化を図ることのできる回転体の支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る回転体の支持構造は、ベースに対して回転可能に配設された回転体と、前記回転体及び前記ベースの間に介在されたねじりコイルバネとを備え、前記ねじりコイルバネの弾性力により、前記ベースに対して前記回転体を中立位置に維持するようにした回転体の支持構造であって、前記ねじりコイルバネは、一方のバネ端部がコイル部の内周側に設けられる一方、他方のバネ端部が前記コイル部の外周側に設けられ、前記回転体には、前記ねじりコイルバネの一方のバネ端部に当接される第1押圧部及び前記ねじりコイルバネの他方のバネ端部に当接される第2押圧部が設けられ、前記ベースには、前記ねじりコイルバネの一方のバネ端部において前記第1押圧部が当接した縁部に係止される第1係止部及び前記ねじりコイルバネの他方のバネ端部において前記第2押圧部が当接した縁部に係止される第2係止部が設けられていることを特徴とする。
【0007】
また本発明は、上述した回転体の支持構造において、前記ベースに設けた係止部には、前記ねじりコイルバネのバネ端部に係合することにより前記ベースに対する前記ねじりコイルバネの軸方向に沿った移動を制限する係合突部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
また本発明は、上述した回転体の支持構造において、前記ベースに設けた第1係止部には、前記コイル部の内周に沿って延在する円弧状の突出部が一体に設けられていることを特徴とする。
【0009】
また本発明は、上述した回転体の支持構造において、前記ベースと前記回転体との間には、互いに当接することにより相対回転角度を規定する回転規制部が設けられていることを特徴とする。
【0010】
また本発明は、上述した回転体の支持構造において、前記回転規制部には、消音材が配設されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ベースの係止部及び回転体の押圧部がそれぞれコイル部の内周側と外周側とに分離されるため、例えばベースに取り付けられたねじりコイルバネに対して回転体の一方の押圧部を先に一方のバネ端部に当接させた状態でベースに対して回転体を回転させれば、ねじりコイルバネが撓むことによって一方のバネ端部と他方のバネ端部との相互間隔が一時的に拡大されることになる。従って、ベースに対して回転体を取り付ける作業を容易に行うことが可能となる。その後、回転体に加えていた外力を除去すると、ねじりコイルバネの弾性力によってねじりコイルバネの2つのバネ端部がそれぞれ回転体の押圧部に当接した状態となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である回転体の支持構造を適用したドアラッチ装置を車両外側の斜め後方から見た斜視図である。
【
図2】
図2は、ドアラッチ装置を車両外側の斜め前方から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、ドアラッチ装置の内部を示す側面図である。
【
図5】
図5は、ロック機構を斜め内側後方から見た斜視図である。
【
図6】
図6は、ロック機構を斜め外側前方から見た斜視図である。
【
図7】
図7は、カムホイールが正転するときのロック機構の動作を車両内方側から示す図であり、(a)はカムホイールが基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカムホイールが基準位置からわずかに正転した状態を示す図であり、(c)はカムホイールが基準位置からほぼ40°正転した状態を示す図であり、(d)はカムホイールが基準位置からほぼ90°正転した状態を示す図であり、(e)はカムホイールが基準位置からほぼ190°正転した状態を示す図であり、(f)はカムホイールが基準位置からほぼ250°正転した状態を示す図である。
【
図8】
図8は、カムホイールが反転及び正転するときのロック機構の動作を車両外方側から示す図であり、(a)はカムホイールが基準位置にある基本状態を示す図であり、(b)はカムホイールが基準位置からほぼ40°反転した状態を示す図であり、(c)は(b)の状態からカムホイールがほぼ40°正転した状態を示す図であり、(d)は(c)の状態からカムホイールがほぼ40°正転した状態を示す図である。
【
図9】
図9は、ドアラッチ装置のケースとねじりコイルバネとを示す要部分解斜視図である。
【
図10】
図10は、
図9に示したケースにねじりコイルバネが取り付けられた状態の要部斜視図である。
【
図11】
図11は、ドアラッチ装置のケースにねじりコイルバネが取り付けられた状態を内表面側から見た図である。
【
図12】
図12は、ドアラッチ装置のカムホイールの詳細構造を示す斜視図である。
【
図13】
図13は、ドアラッチ装置のカムホイールの詳細構造をカムホイールの裏面側から見た図である。
【
図14】
図14は、ねじりコイルバネがケースに取り付けられた状態でカムホイールを取り付ける手順を例示したもので、(a)はカムホイールを回転させてねじりコイルバネを撓めた状態の図、(b)はカムホイールに加えていた回転操作力を除去した状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る回転体の支持構造の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である回転体の支持構造を適用したドアラッチ装置を示すものである。図には明示していないが、ここで例示するドアラッチ装置は、四輪自動車の右側に配置されたサイドドアに搭載され、ドアハンドルによる開閉操作やキーによる施解錠操作に従って車両本体に設けられたストライカとの係合状態を変更することにより、サイドドアの開閉制御を行うものである。
【0015】
図1及び
図2に示すように、ドアラッチ装置10には、ストライカをラッチするラッチ部材12がストライカ進入溝14の奥に設けられている。ラッチ部材12は後述するラッチ機構44の一部である。ストライカ進入溝14はカバープレート16の一部として形成されている。カバープレート16の周囲にはボディ18が設けられている。ラッチ機構44の車両内方側及び車両後方側はカバープレート16及びボディ18によって覆われている。
【0016】
ドアラッチ装置10は、カバープレート16及びボディ18の他に、ケース(ベース)20、第1カバー22及び第2カバー24によって覆われている。ケース20は主に車両外方側を覆い、第1カバー22は主に車両内方側を覆い、第2カバー24はケース20における車両内方側の前方上部をさらに覆っている。カバープレート16、ボディ18、ケース20、第1カバー22及び第2カバー24は、ドアラッチ装置10の筐体を形成するものである。
【0017】
ドアラッチ装置10は、さらに、上部を覆う防水カバー26と、車両内方側下方のケーブルカバー28と、車両内方側上部に設けられたカプラー30と、車両外方側上部に設けられたキーシリンダ連結部32とを備える。防水カバー26はケース20と第1カバー22との境界部を覆い、水の浸入を防止する。ケーブルカバー28はケーブル35との接続部分を覆うものである。ケーブル35は、図示しないインナーハンドルとの間を連係するものである。カプラー30は図示しないハーネスコネクタに接続されるものである。キーシリンダ連結部32はキーが差し込まれて操作される部分である。ドアラッチ装置10の車両外方側に位置する部分には、図示しないアウターハンドルに接続されるアウターレバー34の端部が外部に突出するように設けられている。
【0018】
図3に示すように、ドアラッチ装置10の車両内方側には収容空間36が形成されている。収容空間36は車両外方側がケース20で覆われ、車両内方側が主に第1カバー22で覆われる領域である。収容空間36の車両内方側は第1カバー22以外にも、カバープレート16、ボディ18及びケーブルカバー28によって覆われている。
【0019】
収容空間36は、概略的に機械機構38が配置される機構領域40と、電気部品が配置される電気部品領域42とを有している。電気部品領域42は車両前方側上方部を占め、機構領域40はその残余の部分を占める。機械機構38には、ラッチ部材12によってストライカをラッチ及びアンラッチするラッチ機構44と、ロック状態及びアンロック状態に切り替わるロック機構46とが収容されている。ラッチ機構44は、収容空間36において車両後方側に配置されており、カバープレート16及びボディ18で覆われている。
【0020】
また、機械機構38にはラッチ機構44によるストライカのラッチ状態をモータ94の動力によって解除可能な電動リリース手段と、ラッチ機構44によるストライカのラッチ状態を手動操作により解除可能な手動リリース手段とが収容されている。電動リリース手段は、後述するモータ94及びカムホイール(回転体)76等を有してストライカをアンラッチさせるものである。手動リリース手段は、人手の操作に機械的に連動するアウターレバー34及び後述するインナーレバー59を介してストライカをアンラッチさせるものである。
【0021】
図4に示すように、ラッチ機構44は上記のラッチ部材12及びアウターレバー34に加えて、ベースブラケット50、ラチェット52、ラチェットホルダ54、ラチェットレバー56、アンチパニックレバー58、インナーレバー59を有している。ラッチ機構44の各要素はベースブラケット50に支持されている。
【0022】
ラッチ部材12はラッチ軸60を介して筐体に回転可能に支持されており、ストライカ係合溝12aと、ラチェット係合部12bとを有する。ラッチ部材12は、開扉状態からの閉扉操作に伴ってストライカがストライカ係合溝12aに進入すると、図示しないバネの弾性力に抗して回転し、ラチェット52がラチェット係合部12bに係合することによってストライカをフルラッチ位置でラッチする。
【0023】
ラチェット52は、ラチェット軸62を介して筐体に回転可能に支持されたベースレバー64と、根元軸部66aを介してベースレバー64に回転可能に支持されたポールレバー66とを有する。ベースレバー64は、ベースバネ65によって弾性付勢されている。ポールレバー66はベースレバー64に対して所定の角度範囲で屈曲している。ラチェット52は、ラチェットホルダ54によって側方から支持されることにより略直線状の姿勢が保持され、ポールレバー66の先端がラチェット係合部12bに係合し、ラッチ部材12をフルラッチ位置に保持する。
【0024】
ラチェットホルダ54は、軸部68を介して筐体に回転可能に支持されており、ホルダバネ70によって弾性付勢されることによりベースレバー64の側方を支持する。ラチェットホルダ54は、ラチェットレバー56が回転するとホルダバネ70の弾性力に抗して回転し、ベースレバー64から離間する。ラチェットホルダ54がベースレバー64から離間すると、ラチェット52のベースレバー64とポールレバー66とが根元軸部66aを中心として中折れ状態となり、ポールレバー66がラチェット係合部12bから離脱してラッチ部材12を開放する。この結果、ラッチ部材12が図示せぬバネの弾性力によって回転し、ストライカがアンラッチされる。ラチェットホルダ54を介してラチェット52を操作した場合には、ラチェット52を直接的に操作する場合に比べて軽い力での操作が可能になる。
【0025】
ラチェットレバー56はベースブラケット50に回転可能に支持されており、回転軸よりも車両内方側に突出した受動部56aと、回転軸よりも車両外方側に突出した回転作用部56bとを備える。ラチェットレバー56は、受動部56aが上方に動くことによって回転作用部56bがラチェットホルダ54を回転させる。
【0026】
アウターレバー34は、軸部72を介して筐体に回転可能に支持されており、軸部72よりも車両外方側に突出したハンドル操作部34aと、軸部72よりも車両内方側に突出した作用部34b及びレバー受動片34cとを有する。ハンドル操作部34aはアウターハンドルによって操作される部分である。作用部34bはアンチパニックレバー58の孔58a及び後述するオープンリンク80の異形孔80bに挿入されている。レバー受動片34cは、作用部34bよりも下方に配置されており、インナーレバー59によって操作される。アウターレバー34は、ハンドル操作部34aまたはレバー受動片34cの動作により回転し、アンチパニックレバー58を押し上げる。
【0027】
インナーレバー59は軸部74を介して筐体に回転可能に支持されており、ケーブル35の操作によって回転し、操作片59aがレバー受動片34cを押し上げる。
【0028】
アンチパニックレバー58は作用部34bが挿入される孔58aと、上方で屈曲した作用片58bとを備える。アンチパニックレバー58は、後述するオープンリンク80がアンロック位置であるとき、アウターレバー34が回転することによって作用部34bによって押し上げられ、作用片58bがラチェットレバー56の受動部56aを押し上げる。これによりラチェットホルダ54及びラチェット52がアンラッチ動作を行う。アンチパニックレバー58は、アンチパニック機構のためにオープンリンク80とは別体構造となっている。
【0029】
図5及び
図6に示すように、ロック機構46は、軸部76aを介して筐体に回転可能に支持されたカムホイール76と、軸部78aを介して筐体に回転可能に支持され、カムホイール76によって駆動されるノブレバー78と、ノブレバー78によって駆動されるオープンリンク80と、オープンリンク80に連動するサブロックレバー82と、軸部84aを介して筐体に回転可能に支持され、カムホイール76によって駆動されるオープンレバー84とを備える。ロック機構46は、さらにサブロックレバー82に連動するロックレバー86及び補助レバー88と、キー操作に連動してサブロックレバー82を駆動するキーレバー90及びサブキーレバー92とを備える。各図において部品識別を容易とするためにロックレバー86を細かいドットで示し、オープンリンク80を粗いドットで示している。
【0030】
カムホイール76は、外周面に図示せぬ歯を有した円盤状を成し、外周面の歯を介してモータ94の駆動軸に設けたウォーム94aに歯合したもので、モータ94が駆動した場合に回転することが可能である。カムホイール76の歯は、図示を省略している。以下においては便宜上、カムホイール76が
図5において時計方向に回転した場合を正転、反時計方向に回転した場合を反転として説明する。
【0031】
カムホイール76には車両内方側の端面にカム部76bが設けられている。カム部76bは、カムホイール76が反時計方向に回転した場合にカムホイール76の中心から外周面までの距離が漸次増大し、その後に一定の距離となるように形成されたものである。この実施の形態では、所定の位置からほぼ270°の範囲に外周面の距離が漸次増大する部分が設けられている。
【0032】
図6に示すように、カムホイール76は車両外方側端面に補助部品(回転体)77を備えている。補助部品77は相対回転が阻止された状態でカムホイール76に取り付けられて一体化したものである。補助部品77が形成する円筒部77aの内部には、ねじりコイルバネ176が設けられている。ねじりコイルバネ176は金属細線を巻回することによって円筒状のコイル部176aを有するように構成したもので、一方のバネ端部176bがカムホイール76に係合され、かつ他方のバネ端部176cがケース20に係合されている。このねじりコイルバネ176は、カムホイール76に外力が加えられた場合にケース20に対するカムホイール76の正転及び反転を許容する一方、外力が除去された場合にカムホイール76が中立の基準位置を維持するように付勢するものである。
【0033】
補助部品77は外周近傍部で車両内方側に突出した規制突起(回転規制部)77bと、規制突起77bに対して略反対側に設けられた第1傾斜壁77cとを備える。規制突起77bは、カムホイール76が反転するとき、ケース20に設けられた回転ストッパ(回転規制部)96の弾性材(消音材)96aに当接し、カムホイール76の回転を規制するものである。第1傾斜壁77cは、円筒部77aの外周面から外周側に向けて
図6において漸次時計方向側に位置するように傾斜している。第1傾斜壁77cは、カムホイール76において車両外方側の端面との間に隙間を確保するように設けられている。
【0034】
カムホイール76はさらに第2傾斜壁76dと、保持壁76eとを備える。第2傾斜壁76dは、補助部品77における円筒部77aの外周面から外周側に向けて
図6において漸次反時計方向側に位置するように傾斜している。第1傾斜壁77c及び第2傾斜壁76dは、円筒部77aに近い位置から外周側に向けて漸次離隔するように延在している。補助部品77の第1傾斜壁77cは第2傾斜壁76dよりも車両外方側に配置されている。保持壁76eは第2傾斜壁76dの外周側に位置する部分から
図6において反時計方向に向けて延在した円弧状の壁である。
図6に示すように、保持壁76eは、時計方向側の端部が第2傾斜壁76dを構成する部分で閉じている一方、反時計方向側の端部はカムホイール76の外周面に開放する切欠76fに隣接している。
【0035】
図5に示すように、ノブレバー78にはカム部76bの周面に当接する従動面78dが設けられている。従動面78dは、カムホイール76が正転するとカム部76bによって駆動され、レバーバネ78bに抗してノブレバー78を反時計方向に回転させるように機能する。ノブレバー78の先端部にはノブ78cが設けられている。ノブ78cは、オープンリンク80に設けられた側面ガイド溝80aに係合している。ノブレバー78は、
図5において反時計方向に回転すると、ノブ78cが側面ガイド溝80aに沿って上方に移動し、傾斜しているオープンリンク80を正立させる一方、
図5において時計方向に回転すると、ノブ78cが側面ガイド溝80aに沿って下方に移動し、正立しているオープンリンク80を車両前方側に向けて傾斜させるように機能する。
【0036】
オープンリンク80は、下端部に異形孔80bを有したもので、下端部を中心として回転することにより、上述したように正立した姿勢(アンロック位置)と傾斜した姿勢(ロック位置)とに切り替わる。オープンリンク80が
図5に示すロック位置に配置された場合にはロック機構46がロック状態となり、アンロック位置に配置された場合にはロック機構46がアンロック状態となる。すなわち、オープンリンク80がロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられた場合にもアンチパニックレバー58がオープンリンク80とともに傾斜していることからラチェットレバー56に当接しない。従ってラチェットレバー56は動作せず、ドアが閉扉されたままのロック状態となる。一方、オープンリンク80がアンロック位置のときには、アウターレバー34によって持ち上げられると、アンチパニックレバー58もオープンリンク80とともに正立していることからラチェットレバー56に当接してこれを押し上げる。従ってラチェットレバー56が動作して、ドアが開扉可能なアンロック状態となる。
【0037】
またオープンリンク80の異形孔80bにはアウターレバー34の作用部34bが挿入されている。アウターレバー34が動作した場合には、オープンリンク80が上下方向に沿って移動することになる。オープンリンク80の下端部にはアンチパニックレバー58が組み付けられている。アンチパニックレバー58は、オープンリンク80と一体的に移動する。
【0038】
サブロックレバー82は軸部82aを介して筐体に回転可能に支持されており、ロックレバー86の外ノブ86cを介してロックレバー86に係合され、かつロック位置に配置されたオープンリンク80に対して内ノブ86iを介して係合されている。すなわち、サブロックレバー82がキーレバー90及びサブキーレバー92の回転により
図5において反時計方向に回転すると、外ノブ86cを介してロックレバー86が
図5において時計方向に回転し、さらに内ノブ86iによって押し出されてオープンリンク80がアンロック位置となる。サブロックレバー82が時計方向に回転して元の位置に復帰した場合には、レバーバネ78bの弾性力により
図5において時計方向に回転するノブレバー78によってオープンリンク80がロック位置に復帰することになる。
【0039】
オープンレバー84は電動リリース手段の構成要素である。すなわち、オープンレバー84は運転者のスイッチ操作等によってモータ94が駆動した場合にドアを開扉させるために動作するもので、軸部84aから車両前方側に延在するカム従動部84bと、車両後方に延在するラチェット操作部84cとを有している。オープンレバー84には、筐体との間にオープンバネ84dが設けられている。オープンバネ84dは、カム従動部84bがカムホイール76のカム部76bに当接するように
図5において時計方向に付勢するものである。カムホイール76が
図5において正転した場合には、カム部76bがカム従動部84bを押し下げ、オープンレバー84がオープンバネ84dに抗して軸部84aを中心に反時計方向に回転し、ラチェット操作部84cが上昇する。ラチェット操作部84cが上昇すると、ラチェットレバー56の受動部56aが押し上げられてラッチ機構44がアンラッチとなりドアが開扉される。カムホイール76が中立の基準位置に戻ると、オープンレバー84もオープンバネ84dによって基準姿勢に復帰する。
【0040】
オープンレバー84は、オープンリンク80とは独立的にラチェットレバー56を操作することが可能である。従って、オープンレバー84を備えるドアラッチ装置10では、ロック機構46がロック状態(つまり、オープンリンク80がロック位置)であっても電動リリース手段によってドアを開扉させることができる。
【0041】
ロックレバー86は、
図6に示すように、軸部86aを介して筐体に回転可能に支持されており、上方に延在するアーム86bと、アーム86bの先端から車両外方側に突出する外ノブ86cと、下方に延在する下方延在部86dと、下方延在部86dから車両前方側に突出する第1突起86eと、アーム86bにおいて軸部86aの近傍から車両前方側に突出する第2突起86fと、下方延在部86dから車両外方側に突出するバネ受部86gと、下方延在部86dにおいて車両内方側となる面から車両内方に向けて突出した2つの押出部86hとを有している。外ノブ86cはサブロックレバー82の下端に形成されたガイド孔82bに嵌め込まれることで、サブロックレバー82に係合されている。ロックレバー86はサブロックレバー82が回転することにより、外ノブ86cを介して回転され、オープンリンク80をロック位置からアンロック位置に切り替える作用位置と、オープンリンク80に対して作用しない非作用位置とに変位可能である。
【0042】
バネ受部86gはロックバネ100の屈曲部100aに当接している。ロックバネ100は、バネ受部86gを介してサブロックレバー82の姿勢を規定するものである。
【0043】
第1突起86eはカムホイール76が
図6において反時計方向に回転した場合に第1傾斜壁77cに当接するものである。第1傾斜壁77cが第1突起86eに当接した状態でカムホイール76が反時計方向に回転を継続すると、ロックレバー86が
図6において時計方向に回転する。第2突起86fはカムホイール76が
図6において時計方向に回転した場合に第2傾斜壁76dに当接するものである。第2傾斜壁76dが第2突起86fに当接した状態でカムホイール76が時計方向に回転を継続すると、ロックレバー86が
図6において反時計方向に回転する。第2突起86fは、第1傾斜壁77cよりも車両内方側に設けられたもので、第1傾斜壁77cとカムホイール76の端面との間の隙間に進入し、第1傾斜壁77cに当接することはない。2つの押出部86hは、ロックレバー86が
図5において時計方向に回転した場合に補助レバー88に当接するものである。
【0044】
補助レバー88は
図5に示すように、ロックレバー86の軸部86aに回転可能に支持されており、軸部86aから車両前方側に突出したアーム88aと、アーム88aの先端上方部に設けられた円弧突起88bとを備える。円弧突起88bは
図6において反時計方向に回転した場合にカムホイール76の保持壁76eに当接するものである。補助レバー88とロックレバー86との間にはロックレバー86に対して補助レバー88を
図5において反時計方向に回転させる方向に付勢する補助レバーバネ88cが介在されている。補助レバーバネ88cの弾性力により補助レバー88は下面が押出部86hに当接した状態に維持されている。
【0045】
図7(a)~
図7(f)はカムホイール76が正転(
図7において時計方向に回転)するときのロック機構46の動作を車両内方側から示す図である。以下、これらの図を適宜参照しながらロック機構46の動作について説明する。
【0046】
図7(a)に示すように、カムホイール76が基準位置にある基本状態においては、ノブレバー78の従動面78dに対してカム部76bが離隔した状態にあるとともにオープンレバー84がもっとも時計方向に回転した位置においてカム従動部84bがカム部76bに当接した状態となっている。このとき、オープンリンク80はロック位置に配置され、ノブレバー78のノブ78cが側面ガイド溝80aの下方側に位置している。
【0047】
この基本状態からモータ94の駆動によってカムホイール76が正転を開始すると、
図7(b)に示すように、カム部76bがノブレバー78の従動面78dに当接して、ノブレバー78が
図7において反時計方向に回転する。この間、カム部76bにおいてオープンレバー84のカム従動部84bが当接する部分は同一の外径となっているため、オープンレバー84が回転することはない。
【0048】
図7(c)に示すように、カムホイール76の回転がほぼ40°まで進行すると、カム部76bの半径拡大開始部76baがオープンレバー84のカム従動部84bに当接し、オープンレバー84が
図7において反時計方向に回転を開始する。
図7(d)に示すように、カムホイール76の回転がほぼ90°まで進行すると、カム部76bの最大径円弧部76bbがノブレバー78の従動面78dに達する。この結果、ノブレバー78が反時計方向にもっとも回転した状態となり、これ以後、
図7(f)に示す状態までこの状態が維持される。
【0049】
ノブレバー78が反時計方向に回転している間、オープンリンク80においてはノブ78cが側面ガイド溝80aに沿って上方に移動することにより漸次時計方向に回転し、その後、アンロック位置となる。また、オープンレバー84が反時計方向に回転すると、ラチェット操作部84cがラチェットレバー56の受動部56aに当接してこれを上方に移動させるため、ラチェットレバー56が回転軸を中心として回転を開始する。なお、サブロックレバー82、ロックレバー86及び補助レバー88についてはこの間に動作することはなく、
図7(a)の基本状態を維持している。
【0050】
図7(e)に示すように、カムホイール76の回転がほぼ190°まで進行すると、オープンレバー84によって回転されたラチェットレバー56によってラチェットホルダ54及びラチェット52のアンラッチ動作が開始される。
【0051】
その後、
図7(f)に示すように、カムホイール76の回転がほぼ250°まで進行すると、カム部76bの最大径円弧部76bbがカム従動部84bに達し、オープンレバー84は反時計方向に最大変位し、ラチェットレバー56の受動部56aが十分に押し上げられ、ラッチ機構44がストライカをアンラッチし、ドアが開扉される。
【0052】
上述した動作の間においては、ケース20とカムホイール76との間に介在されたねじりコイルバネ176が漸次撓められた状態となる。従って、この後、モータ94に対する給電を停止すると、カムホイール76がねじりコイルバネ176の弾性力によって反時計方向に回転して基準位置となり、ロック機構46が
図7(a)に示す基本状態に復帰する。
【0053】
このような電動リリース時には、
図7(a)~
図7(f)に示すように、モータ94の駆動によってオープンレバー84が回転してラッチ機構44に作用することによりストライカをアンラッチすることができる。またこの際、オープンリンク80もロック位置からアンロック位置までの間を往復する。オープンリンク80は他の部品に対して何らの作用もしないが、電動リリース時に同期して適度な時間間隔で動作することになり、グリスの経年劣化による硬化や鋼材を用いたバネやレバー等に錆が発生を防止することがで、常にロック機構46のスムーズな動作を保証されることになる。
【0054】
また、電動リリース時に同期動作するのはオープンリンク80だけであってロックレバー86が動作することはない。従って、ロックレバー86のバネ受部86gが屈曲部100aを乗り越えることがなく、音が生じることもないため、ユーザに違和感を与えることがない。
【0055】
図8(a)~
図8(d)はカムホイール76が反転(
図8において時計方向に回転)及び正転(
図8において反時計方向に回転)するときのロック機構46の動作を車両外方側から示す図である。以下、これらの図を適宜参照しながらロック機構46の動作についてさらに説明する。
【0056】
図8(a)に示すように、カムホイール76が基準位置に配置された基本状態においては、ロックレバー86がもっとも時計方向に回転した位置にあり、第1突起86e及び第2突起86fがカムホイール76に対して非当接状態となっている。
【0057】
この基準状態からモータ94の駆動によってカムホイール76が反転を開始し、
図8(b)に示すように、カムホイール76の回転がほぼ40°まで進行すると、カムホイール76の第2傾斜壁76dが第2突起86fに当接する。これによりロックレバー86が反時計方向に回転し、バネ受部86gがロックバネ100の屈曲部100aを乗り越えるまで変位する。
【0058】
ロックレバー86が回転すると、外ノブ86cを介してサブロックレバー82が時計方向に回転し、かつ内ノブ86iを介してオープンリンク80が反時計方向に回転し、補助レバー88が押出部86hによって反時計方向に回転する。これによりサブロックレバー82及びオープンリンク80がアンロック位置となり、補助レバー88の円弧突起88bが切欠76fを介して円筒部77aに近接した位置まで変位した状態となる。
【0059】
バネ受部86gがロックバネ100の屈曲部100aを乗り越えると、モータ94の駆動によってカムホイール76が正転を開始する。
図8(c)に示すように、
図8(b)の状態からカムホイール76の正転がほぼ40°まで進行すると、カムホイール76が
図8(a)に示す基準位置に戻る。但し、バネ受部86gが屈曲部100aによって保持されていることから、ロックレバー86、サブロックレバー82及びオープンリンク80が
図8(b)に示す姿勢のまま保持される。これにより、ロック機構46がアンロック状態となる。またこのとき、カムホイール76の正転により、保持壁76eが円弧突起88bの外周側に配置され、円弧突起88bが保持壁76eの内周面に係合した状態となる。
【0060】
図8(c)に示す状態からカムホイール76の正転がさらにほぼ40°進行すると、カムホイール76の第1傾斜壁77cが第1突起86eに当接する。これによりロックレバー86が時計方向に回転し、
図8(d)に示すように、バネ受部86gがロックバネ100の屈曲部100aを乗り越えて
図8(a)に示す基準状態まで復帰する。
【0061】
ロックレバー86が時計方向に回転すると、外ノブ86cを介してサブロックレバー82が反時計方向に回転し、レバーバネ78bの弾性力により回転するノブレバー78によってオープンリンク80が時計方向に回転し、サブロックレバー82及びオープンリンク80がそれぞれ
図8(a)に示す基準状態に復帰する。
【0062】
一方、補助レバー88は、円弧突起88bがカムホイール76の保持壁76eに係合しているため、補助レバーバネ88cの弾性力に抗して反時計方向に回転した状態に維持されている。この状態からさらにカムホイール76の正転が進行すると、やがて規制突起77bが弾性材96aを介してケース20の回転ストッパ96に当接し、カムホイール76の回転が停止される。これにより、カムホイール76の過度な回転が防止できる。
【0063】
規制突起77bが回転ストッパ96に当接してカムホイール76の回転が停止した後においては、モータ94の駆動によってカムホイール76が反転を開始する。カムホイール76の反転が
図8(a)に示す位置まで進行すると、円弧突起88bと保持壁76eとの係合が解除される。これにより、補助レバーバネ88cの弾性力によって補助レバー88が時計方向に回転し、
図8(a)に示す位置まで復帰する。こうしてロック機構46は全体として
図8(a)に示す基本状態に復帰する。このように、ドアラッチ装置10では、単一のモータ94により、ラッチ機構44のアンラッチ動作、ロック機構46のロック状態及びアンロック状態への切り替えを行うことが可能となる。
【0064】
図9~
図13は、ケース20とカムホイール76との間にねじりコイルバネ176を配設するための構造について説明するための図である。図からも明らかなように、ねじりコイルバネ176は、一方のバネ端部176b(以下、単に内周側端部176bという)がコイル部176aの内周側に突出するように設けられ、かつ他方のバネ端部176c(以下、単に外周側端部176cという)がコイル部176aの外周側に突出するように設けられたものである。コイル部176aの外周側に突出する外周側端部176cは、ほぼ径方向に沿って直線状に延在する一方、コイル部176aの内周側に突出する内周側端部176bは、突出端部が鉤状に屈曲するように形成されている。
【0065】
ケース20においてカムホイール76が設けられる部分には、
図9~
図11に示すように、コイル部176aの内周側に対応する部分に内周側係止部(第1係止部)181が設けられ、コイル部176aの外周側に対応する部分に外周側係止部(第2係止部)182が設けられている。内周側係止部181は、ケース20の内表面20aから突出したもので、コイル部176aの内周に沿って延在する円弧状に構成されている。
【0066】
この内周側係止部181には一方の円弧端部181aに係合突起部(係合突部)181bが設けられている。係合突起部181bは、内周側係止部181においてケース20の内表面20aから離隔した部分に設けられたもので、内周側係止部181の円弧に沿って周方向に突出している。
図11においては内周側係止部181の反時計方向側に位置する円弧端部181aに係合突起部181bが設けられている。外周側係止部182は、ケース20の内表面20aから突出したもので、コイル部176aの外周に沿って延在する円弧状に構成されている。この外周側係止部182には、一方の円弧端部182aに係合突板部(係合突部)182bが設けられている。係合突板部182bは、内周側係止部181においてケース20の内表面20aから離隔した部分に設けられた平板状を成すもので、外周側係止部182の円弧に沿って周方向及び径方向に突出している。
図11においては外周側係止部182の時計方向側に位置する円弧端部182aに係合突板部182bが設けられている。
【0067】
カムホイール76には、
図12及び
図13に示すように、補助部品77においてコイル部176aの内周側に対応する部分に内周側押圧部(第1押圧部)191が設けられ、円筒部77aよりも外周側となる部分に外周側押圧部192が設けられている。内周側押圧部191は、カムホイール76の中心に設けられた取付用ボス部193の周囲から外周方向に向けて略扇形状に突出したもので、鉤状に屈曲したねじりコイルバネ176の内周側端部176bに係止可能となるように構成されている。外周側押圧部192は、カムホイール76からケース20に向けて突出したもので、突出端部がケース20の内表面20aに沿うように屈曲している。図からも明らかなように、内周側押圧部191は、ねじりコイルバネ176の内周側端部176bに対してケース20の内周側係止部181よりも内周側となる部分においてバネ端部176bに係止され、かつ外周側押圧部192は、外周側端部176cに対してケース20の外周側係止部182よりも内周側となる部分においてバネ端部176cに係止されるようにそれぞれの寸法が調整してある。
【0068】
上記のように構成されたケース20とカムホイール76との間にねじりコイルバネ176を配設するには、
図10及び
図11に示すように、まず、ねじりコイルバネ176をケース20に取り付ける。すなわち、鉤状に屈曲したねじりコイルバネ176の内周側端部176bを内周側係止部181の一方の円弧端部181aに係止させるとともに、外周側端部176cを外周側係止部182の一方の円弧端部182aに係止させた状態に保持する。このとき、内周側端部176bが内周側係止部181に圧接され、かつ外周側端部176cが外周側係止部182に圧接された状態となるように、予めねじりコイルバネ176の形状や内周側係止部181及び外周側係止部182の相対位置を設定しておくことが好ましい。
【0069】
この状態から、ケース20にカムホイール76を装着し、例えば
図14(a)に示すように、ケース20に取り付けられたねじりコイルバネ176に対して先に内周側押圧部191を内周側端部176bのみに係止させ、この状態からケース20に対してカムホイール76を図において反時計方向にわずかに回転させる。このとき、ねじりコイルバネ176においてコイル部176aの内周側には内周側端部176bのみが突出しているため、カムホイール76の内周側押圧部191を内周側端部176bにのみ係止させる作業を容易に行うことが可能である。
【0070】
内周側押圧部191に内周側端部176bが係止された状態でカムホイール76を反時計方向に回転させると、ケース20の外周側係止部182に係止された外周側端部176cに対して内周側端部176bのみがカムホイール76とともに回転するため、内周側端部176bと外周側端部176cとの間隔が一時的に拡大されることになる。このため、この状態からは、外周側端部176cに接触することなくカムホイール76の外周側押圧部192を外周側端部176cよりも反時計方向側となる部分に挿入することが可能となる。外周側押圧部192が外周側端部176cよりも反時計方向側となる部分に挿入された状態を維持しながらカムホイール76に加えていた回転操作力を除去すると、ねじりコイルバネ176の弾性力によってカムホイール76が図において時計方向に回転するため、
図14(b)に示すように、外周側押圧部192が外周側端部176cに係止された状態となる。
【0071】
このように、この実施の形態で示したドアラッチ装置10によれば、ケース20の係止部181,182及びカムホイール76の押圧部191,192がそれぞれコイル部176aの内周側と外周側とに分離されるため、ケース20に装着されたねじりコイルバネ176に対してカムホイール76の一方の押圧部を先に一方の端部に当接させた状態でケース20に対してカムホイール76を回転させれば、ねじりコイルバネ176が撓むことによって内周側端部176bと外周側端部176cとの相互間隔が一時的に拡大されることになる。従って、ケース20に対してカムホイール76を取り付ける作業を容易に行うことができる。これにより、例えば、上述の作業を自動化することも可能となる。
【0072】
なお、上述した実施の形態では、ドアラッチ装置10においてロック機構46をロック状態及びアンロック状態に切り替えるためのカムホイール76とケース20との間に適用したものを例示しているが、本発明はベースとベースに対して回転可能に配設された回転体との間であればその他のものにも適用することが可能である。
【0073】
また、ベースに設けた第1係止部である内周側係止部181としてコイル部176aに沿って延在する円弧状のものを例示しているため、組立作業の際にねじりコイルバネ176が位置ずれするのを防止でき、作業をより一層容易化することができるが、必ずしも第1係止部が円弧状を成している必要はない。さらに、係止部181,182にはそれぞれ係合突部181b,182bが設けてあるため、組立作業の際にねじりコイルバネ176が軸方向に位置ずれしたり脱落する事態を防止することができ、作用をより一層容易化することができるが、必ずしも係合突部181b,182bを設ける必要はない。
【符号の説明】
【0074】
20 ケース
76 カムホイール
77 補助部品
77b 規制突起
96 回転ストッパ
96a 弾性材
176 ねじりコイルバネ
176a コイル部
176b 内周側端部
176c 外周側端部
181 内周側係止部
181b 係合突起部
182 外周側係止部
182b 係合突板部
191 内周側押圧部
192 外周側押圧部