(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60R 21/207 20060101AFI20230613BHJP
B60N 2/42 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60R21/207
B60N2/42
(21)【出願番号】P 2019188888
(22)【出願日】2019-10-15
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 徹
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 一人
(72)【発明者】
【氏名】吉賀 謙祐
(72)【発明者】
【氏名】三木田 幸謙
(72)【発明者】
【氏名】中島 将太
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-051700(JP,A)
【文献】特開2017-128334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B60N 2/427
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部において、シート幅方向の外側の表面を覆う外側表皮と、
前記シートバックの前記側部におけるシート幅方向の内側の表面を覆い、シート幅方向の一端部が前記外側表皮のシート幅方向の一端部と結合部で結合された内側表皮と、
前記シートバックの前記側部の内部に
おいてシート上下方向に沿って収容され、ガスの供給を受けて前記結合部へ向けて膨張展開するサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグモジュールと、
前記シートバックの前記側部においてシート上下方向に沿って延在され、前記サイドエアバッグモジュールが固定部で固定されたサイドフレームと、
前記サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の外側を覆い、シート前後方向の一端部が前記サイドフレームに固定されると共にシート前後方向の他端部は前記結合部において前記外側表皮に結合され、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記結合部に張力を伝達する外側補強布と、
前記サイドフレームと前記サイドエアバッグモジュールの間に配置されて当該サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の内側を覆い、シート前後方向の一端部はシート上下に離間し前記固定部を回避して前記サイドフレームに固定され、シート前後方向の他端部は前記結合部において前記内側表皮に結合され、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記結合部に張力を伝達する内側補強布と、
を備え、
前記サイドフレームには、当該サイドフレームに前記サイドエアバッグモジュールが固定された状態で、前記固定部の上方側及び下方側へ向かって開放されかつ当該サイドフレームとの間に少なくとも前記内側補強布の厚み分の隙間を形成する凹み部が設けられ、
前記内側補強布のシート前後方向の一端部に形成され、前記サイドエアバッグモジュールが前記サイドフレームに固定された前記固定部を回避する切欠き部と、
前記切欠き部の上方側を構成し、前記隙間内に配置される上辺部と、
前記切欠き部の下方側を構成し、前記隙間内に配置される下辺部と、
を有する車両用シート。
【請求項2】
前記サイドフレームには、前記外側補強布のシート前後方向の一端部及び前記内側補強布のシート前後方向の一端部が樹脂製のクリップを介して共に固定されている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記外側補強布のシート前後方向の一端部に設けられ、当該外側補強布のシート前後方向の一端部と前記内側補強布のシート前後方向の一端部が重なった状態で前記切欠き部内に配置され把持可能な把持
部をさらに有する請求項1又は請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記内側補強布のシート前後方向の一端部及び前記外側補強布のシート前後方向の一端部には、前記サイドフレームに係止可能なフックがそれぞれ設けられている請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1には、サイドエアバッグを備えた車両用シートに関する技術が開示されている。この先行技術では、サイドエアバッグの膨出方向を安定させるため、補強布が用いられており、補強布は、エアバッグユニットのシート幅方向の内側に配置された内側側面及び前面側を覆うシート状の前面側補強布と、エアバッグユニットのシート幅方向の外側に配置された外側側面を覆うシート状の側面側補強布と、で構成されている。
【0003】
当該前面側補強布は前面側補強布ブラケットに取り付けられており、側面側補強布は側面側補強布ブラケットに取り付けられている。エアバッグユニットの内側側面には、上下に離間して一対のネジが設けられており、当該一対のネジの間に前面側補強布のシート前後方向の一端側が配置された状態で、エアバッグブラケットがエアバッグユニットに固定されている。
【0004】
当該エアバッグブラケットは、水平方向に沿って切断した断面形状がL字状を成しており、エアバッグブラケットの一方側がエアバッグユニットに固定されている。そして、エアバッグブラケットの他方側に前面側補強布ブラケット及び側面側補強布ブラケットが取り付けられた状態で、車両用シートの背部を構成するシートバックの骨格を成すシートバックフレームの側部に設けられたサイドフレームに当該エアバッグブラケットの他方側が固定されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記先行技術では、前面側補強布(以下、「内側補強布」という)のシート前後方向の一端側がエアバッグブラケットとエアバッグユニット(以下、「サイドエアバッグモジュール」という)の間に挟まった状態で、当該サイドエアバッグモジュールに固定されたエアバッグブラケットを車両用シートのサイドフレームに固定するようになっている。このため、サイドエアバッグモジュールが車両用シートのサイドフレームに固定された状態で、後から前面側補強布、側面側補強布(以下、「外側補強布」という)を取り付けることは困難である。
【0007】
本発明は、上記の事実を考慮し、サイドエアバッグモジュールがサイドフレームに固定された後でも、内側補強布、外側補強布を取り付け可能な車両用シートを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の車両用シートは、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部において、シート幅方向の外側の表面を覆う外側表皮と、前記シートバックの前記側部におけるシート幅方向の内側の表面を覆い、シート幅方向の一端部が前記外側表皮のシート幅方向の一端部と結合部で結合された内側表皮と、前記シートバックの前記側部の内部に収容され、ガスの供給を受けて前記結合部へ向けて膨張展開するサイドエアバッグを備えたサイドエアバッグモジュールと、前記シートバックの前記側部においてシート上下方向に沿って延在され、前記サイドエアバッグモジュールが固定部で固定されたサイドフレームと、前記サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の外側を覆い、シート前後方向の一端部が前記サイドフレームに固定されると共にシート前後方向の他端部は前記結合部において前記外側表皮に結合され、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記結合部に張力を伝達する外側補強布と、前記サイドフレームと前記サイドエアバッグモジュールの間に配置されて当該サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の内側を覆い、シート前後方向の一端部はシート上下に離間し前記固定部を回避して前記サイドフレームに固定され、シート前後方向の他端部は前記結合部において前記内側表皮に結合され、前記サイドエアバッグの膨張展開時に前記結合部に張力を伝達する内側補強布と、を備え、前記サイドフレームには、当該サイドフレームに前記サイドエアバッグモジュールが固定された状態で、前記固定部の上方側及び下方側へ向かって開放されかつ当該サイドフレームとの間に少なくとも前記内側補強布の厚み分の隙間を形成する凹み部が設けられ、前記内側補強布のシート前後方向の一端部に形成され、前記サイドエアバッグモジュールが前記サイドフレームに固定された前記固定部を回避する切欠き部と、前記切欠き部のシート上下方向の上方側を構成し、前記隙間内に配置される上辺部と、前記切欠き部のシート上下方向の下方側を構成し、前記隙間内に配置される下辺部と、を有している。
【0009】
請求項1に記載の車両用シートでは、シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部において、シート幅方向の外側の表面は外側表皮によって覆われており、シート幅方向の内側の表面は内側表皮によって覆われている。そして、当該内側表皮のシート幅方向の一端部は、外側表皮のシート幅方向の一端部と結合部で結合されている。
【0010】
シートバックの側部の内部には、サイドエアバッグモジュールが収容されている。サイドエアバッグモジュールは、ガスの供給を受けて当該結合部へ向けて膨張展開するサイドエアバッグを備えている。また、シートバックの側部には、サイドフレームが設けられている。このサイドフレームは、シート上下方向に延びており、当該サイドフレームにはサイドエアバッグモジュールが固定されている。
【0011】
当該サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の外側は、外側補強布によって覆われている。外側補強布のシート前後方向の一端部は、サイドフレームに固定され、外側補強布のシート前後方向の他端部は、内側表皮と外側表皮が結合された結合部において外側表皮に結合されている。
【0012】
また、サイドフレームとサイドエアバッグモジュールの間には、内側補強布が配置されており、サイドエアバッグモジュールのシート幅方向の内側は、内側補強布によって覆われている。当該内側補強布のシート前後方向の一端部は、シート上下に離間しサイドエアバッグモジュールがサイドフレームに固定された固定部を回避してサイドフレームに固定されている。そして、内側補強布のシート前後方向の他端部は、当該結合部において内側表皮に結合されている。
【0013】
以上のような構成により、本発明では、サイドエアバッグがガスの供給を受けて膨張展開するとき、外側補強布及び内側補強布がサイドエアバッグの膨張圧を受けて伸張し、内側補強布が結合された内側表皮と外側補強布が結合された外側表皮との結合部に張力が伝達される。これにより、当該結合部では、引っ張り応力が集中し、当該結合部が開裂して、サイドエアバッグが車両用シートのシート前後方向の前方側へ向かって膨張展開される。
【0014】
ここで、本発明では、前述のように、内側補強布のシート前後方向の一端部は、シート上下に離間しサイドエアバッグモジュールの固定部を回避してサイドフレームに固定されている。これにより、本発明では、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定した後に当該内側補強布をサイドフレームに固定することが可能となる。
【0015】
すなわち、本発明では、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定する前に当該内側補強布をサイドフレームに固定することもできるし、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定した後に当該内側補強布をサイドフレームに固定することも可能である。
また、本発明では、サイドフレームに凹み部が設けられている。この凹み部は、サイドフレームにサイドエアバッグモジュールが固定された状態で、固定部の上方側及び下方側へ向かって開放されており、この凹み部によって、当該サイドフレームとサイドエアバッグモジュールとの間に少なくとも内側補強布の厚み分の隙間が形成される。すなわち、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定した状態で、サイドフレームとサイドエアバッグモジュールとの間に内側補強布を配置することができる。
さらに、本発明では、内側補強布のシート前後方向の一端部に切欠き部が形成されており、当該切欠き部によって、サイドエアバッグモジュールの固定部が回避される。当該切欠き部のシート上下方向の上方側を構成する上辺部及び切欠き部のシート上下方向の下方側を構成する下辺部は、サイドフレームとサイドエアバッグモジュールとの間に形成された隙間内にそれぞれ配置される。
【0016】
なお、本発明における「結合」には、例えば、縫製の他、溶着、接合等が含まれる。また、本発明における内側補強布のシート前後方向の一端部において、「シート上下に離間し」は、例えば、内側補強布のシート前後方向の他端部に対して、内側補強布のシート前後方向の一端部がシート上下に二股状に分岐された場合以外に、内側補強布がシート上下に二つに分割された場合等が含まれる。
【0017】
請求項2に記載の車両用シートは、請求項1に記載の車両用シートにおいて、前記サイドフレームには、前記外側補強布のシート前後方向の一端部及び前記内側補強布のシート前後方向の一端部が樹脂製のクリップを介して共に固定されている。
【0018】
請求項2に記載の車両用シートでは、外側補強布のシート前後方向の一端部及び内側補強布のシート前後方向の一端部が樹脂製のクリップを介して共にサイドフレームに固定されている。例えば、金属製のボルト及びナットを介して外側補強布、内側補強布をサイドフレームに固定させた場合と比較して、取り付け作業性がよく、また、軽量化を図ることができる。
【0019】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記サイドフレームには、当該サイドフレームに前記サイドエアバッグモジュールが固定された状態で、当該サイドエアバッグモジュールとの間に少なくとも前記内側補強布の厚み分の隙間を形成する凹み部が設けられている。
【0020】
請求項3に記載の車両用シートでは、サイドフレームに凹み部が設けられている。この凹み部によって、サイドフレームにサイドエアバッグモジュールが固定された状態で、当該サイドフレームとサイドエアバッグモジュールとの間に少なくとも内側補強布の厚み分の隙間が形成される。すなわち、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定した状態で、サイドフレームとサイドエアバッグモジュールとの間に内側補強布を配置することができる。
【0021】
請求項3に記載の車両用シートは、請求項1又は請求項2に記載の車両用シートにおいて、前記外側補強布のシート前後方向の一端部に設けられ、当該外側補強布のシート前後方向の一端部と前記内側補強布のシート前後方向の一端部が重なった状態で前記切欠き部内に配置され把持可能な把持部をさらに有している。
【0022】
請求項3に記載の車両用シートでは、外側補強布のシート前後方向の一端部には、把持可能な把持部が設けられており、当該外側補強布のシート前後方向の一端部と内側補強布のシート前後方向の一端部が重なった状態で、当該把持部は内側補強布の切欠き部内に配置されるように設定されている。これにより、サイドフレームに対して、内側補強布及び外側補強布のシート上下方向の位置が分かりやすくなる。
【0023】
請求項4に記載の車両用シートは、請求項1~請求項3の何れか1項に記載の車両用シートにおいて、前記内側補強布のシート前後方向の一端部及び前記外側補強布のシート前後方向の一端部には、前記サイドフレームに係止可能なフックがそれぞれ設けられている。
【0024】
請求項4に記載の車両用シートでは、内側補強布のシート前後方向の一端部及び外側補強布のシート前後方向の一端部には、フックがそれぞれ設けられており、当該フックはサイドフレームに係止可能とされている。このように、内側補強布及び外側補強布にそれぞれフックを設けることによって、サイドフレームに内側補強布及び外側補強布を固定する際に当該サイドフレームにそれぞれフックを係止させて内側補強布及び外側補強布を仮止めすることができ、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、請求項1に記載の車両用シートによれば、サイドエアバッグモジュールがサイドフレームに固定された後でも、内側補強布、外側補強布を取り付けることができる。
【0026】
請求項2に記載の車両用シートによれば、金属製のボルト及びナットを介して外側補強布、内側補強布をサイドフレームに固定させた場合と比較して、コストダウンを図ることができる。
【0027】
請求項3に記載の車両用シートによれば、サイドエアバッグモジュールをサイドフレームに固定した後に当該内側補強布をサイドフレームに固定することができる。
【0028】
請求項3に記載の車両用シートによれば、サイドフレームに内側補強布及び外側補強布を固定するときの作業性を向上させることができる。
【0029】
請求項4に記載の車両用シートによれば、サイドフレームに内側補強布及び外側補強布を固定する際に作業性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本実施形態に係る車両用シートを車両幅方向の外側の斜め後方側から見た斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る車両用シートのシートバックサイド部側を略水平方向に沿って切断した状態を示す断面図である。
【
図3】
図2で示すA-A線に沿って切断したときの断面図である。
【
図4】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側表皮、外側表皮、内側補強布及び外側補強布の結合部が拡大された状態を示す拡大図である。
【
図5】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側補強布及び外側補強布を示す平面図である。
【
図6】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側補強布にJフックが取り付けられた状態を示す斜視図である。
【
図7】
図1の要部を拡大した要部拡大斜視図である。
【
図8】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側補強布及び外側補強布の変形例1であり、
図7に対応する要部拡大斜視図である。
【
図9】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側補強布及び外側補強布の変形例2であり、
図7に対応する要部拡大斜視図である。
【
図10】本実施形態に係る車両用シートに適用されたサイドフレームの変形例であり、
図2に対応する断面図である。
【
図11】本実施形態に係る車両用シートに適用された内側補強布及び外側補強布の変形例3であり、
図7に対応する要部拡大斜視図である。
【
図12】本実施形態に係る車両用シートに適用されたサイドフレームの変形例であり、
図3に対応する要部を拡大した要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しながら、本発明の一実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、これらの図において適宜示される矢印FRは車両用シートの前方側を示しており、矢印UPは車両用シートの上方側を示しており、矢印OUTは車両用シートの外側を示している。また、以下の説明で特記なく前後、上下、左右の方向を用いる場合は、車両用シートの前後方向の前後、上下方向の上下、左右方向(シート幅方向)の左右を示すものとする。
【0032】
<車両用シートの構成>
まず、本実施の形態に係る車両用シートの構成について説明する。
【0033】
(車両用シート)
【0034】
図1には、本実施形態に係る車両用シート10が示されている。この車両用シート10は、例えば運転席を構成するものであり、乗員が着座するシートクッション12と、シートクッション12のシート前後方向の後端部においてシート幅方向に沿って配設された軸部13を中心に回動可能に設けられ乗員の背部を支持するシートバック14と、シートバック14のシート上下方向の上端に設けられ乗員の頭部を支持するヘッドレスト(図示省略)と、を備えている。
【0035】
当該シートバック14は、シート幅方向の中央部に配置されたシートバック本体部14Aと、シートバック本体部14Aのシート幅方向の外側の両端部にそれぞれ一体的に設けられたシートバックサイド部(側部)14Bと、を備えている。
【0036】
シートバックサイド部14Bは、シート前後方向の前方側へ向かって膨出しており、シート幅方向の外側からシートバック本体部14A側へ向かうにつれて膨出量が小さくなるように形成されている。また、左右のシートバックサイド部14Bのうち、車両幅方向の外側に配置されているシートバックサイド部14Bのシート幅方向の外側には、図示しない車両用サイドドアが配置されている。
【0037】
図2には、シートバック14のシート幅方向の外側に配置されたシートバックサイド部14B側において、略水平方向に沿って切断した状態を示す断面図が示されている。
図2に示されるように、シートバックサイド部14Bの内部には、当該シートバックサイド部14Bに沿ってシート上下方向に延びるシートバックサイドフレーム(以下、「サイドフレーム」という)18が設けられている。
【0038】
(サイドフレーム)
本実施形態では、サイドフレーム18は、水平方向に沿って切断したときの断面形状がシート幅方向の内側が開口され左右が反転された状態の略C字状とされている。なお、図示はしないが、左右のシートバックサイド部14Bのうち、車両幅方向の内側に配置されたシートバックサイド部14Bでは、サイドフレーム18の当該断面形状は略C字状とされる。
【0039】
当該サイドフレーム18は、シート前後方向に沿った外側壁部18Aと、外側壁部18Aのシート前後方向の前端からシート幅方向の内側へ屈曲された前側壁部18Bと、外側壁部18Aのシート前後方向の後端からシート幅方向の内側へ屈曲された後側壁部18Cと、を有している。
【0040】
サイドフレーム18の外側壁部18Aには、シート前後方向の中央部を含む前部18A1側にシート幅方向の内側へ向かって凹む凹部19が形成されており、シート前後方向の後部18A2側には、後述するサイドエアバッグモジュール(以下、「エアバッグモジュール」という)20が組み付けられている。
【0041】
そして、サイドフレーム18のシート幅方向の内側を含み、サイドフレーム18のシート前後方向の前方側及び後方側には、ウレタンウォーム等の緩衝部材で形成されたシートバックパッド22が設けられている。
【0042】
(シートバックパッド)
本実施形態では、シートバックパッド22は、シートバック14の前部側に設けられたパッド前部24と、シートバック14の後部側に設けられたパッド後部26と、を含んで構成されている。パッド前部24は、シートバック本体部14A及び左右のシートバックサイド部14Bに亘って設けられており、シートバック本体部14Aに設けられたパッド本体部24Aと、左右のシートバックサイド部14Bに設けられたパッドサイド部24Bと、を含んで構成されている。
【0043】
つまり、当該パッド本体部24Aによって、シートバック14のシートバック本体部14Aの形状が形成され、当該パッドサイド部24Bによって、シートバック14のシートバックサイド部14Bの形状が形成される。したがって、パッドサイド部24Bは、パッド本体部24Aよりも厚肉とされ、シート前後方向の前方側へ向かって膨出している。
【0044】
なお、パッド後部26は、サイドフレーム18よりもシート前後方向の後方側に設けられている。
【0045】
(サイドエアバッグモジュール)
一方、本実施形態では、左右のシートバックサイド部14Bのうち、車両幅方向の外側に配置されているパッドサイド部24Bのシート前後方向の後方側には、シート幅方向に沿ってサイドフレーム18の外側にエアバッグモジュール20が配置されている。
【0046】
エアバッグモジュール20は、収容ケース30と、収容ケース30に折り畳まれた状態で収容されたサイドエアバッグ(図示省略)と、収容ケース30内に収容されサイドエアバッグにガスを供給するガス供給手段としてのインフレータ32と、を備えている。当該サイドエアバッグは、布や樹脂シート等により袋状に形成されており、インフレータ32からガスの供給を受けて膨張しながら車室内35側へ向かって展開するようになっている。
【0047】
図3には、
図2で示すA-A線に沿って切断したときの断面図が示されている。
図3に示されるように、収容ケース30には、シート幅方向の内側の内側面30Aに、インフレータ32の長手方向(シート上下方向)に沿って一対のスタッドボルト33、34がシート上下方向に離間して設けられている。
【0048】
(サイドフレーム、エアバッグモジュール)
図3に示されるように、本実施形態では、サイドフレーム18の外側壁部18Aには、インフレータ32が取り付けられる取付座18A3が設けられている。取付座18A3は、シート幅方向の外側へ向かって突出しており、取付座18A3には、シート上下方向に沿って一対の貫通孔36、38が形成されている。
【0049】
この貫通孔36、38内にスタッドボルト33、34がそれぞれ挿入され、貫通孔36、38に挿入されたスタッドボルト33、34に対して、それぞれナット40、42が締結される。つまり、スタッドボルト33、34及びナット40、42を介して、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18の外側壁部18Aに固定される(固定部45)。
【0050】
このように、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された状態で、収容ケース30の内側面30Aが取付座18A3に当接する。前述のように、取付座18A3は、サイドフレーム18の外側壁部18Aにおいて、シート幅方向の外側へ向かって突出して形成されている。このため、取付座18A3を基準とすると、取付座18A3の上方側及び下方側は、シート幅方向の内側へ向かってそれぞれ凹んで形成されている(上側凹み部18A4、下側凹み部18A5)。
【0051】
したがって、本実施形態では、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定され、収容ケース30の内側面30Aがサイドフレーム18の取付座18A3に当接した状態で、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の上側凹み部18A4の間には隙間43が設けられ、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の下側凹み部18A5の間には隙間47が設けられることとなる。
【0052】
(内側表皮、外側表皮)
ところで、
図2に示されるように、本実施形態では、サイドフレーム18よりもシート幅方向の内側及び当該サイドフレーム18を含むエアバッグモジュール20よりもシート前後方向の前方側には、パッド前部24が設けられている。
【0053】
このパッド前部24のパッドサイド部24Bの前面(サイドフレーム18におけるシート幅方向の内側の表面)24B1及びパッド本体部24Aの前面24A1は、内側表皮44によって覆われている。
【0054】
また、パッドサイド部24Bの外面(サイドフレーム18におけるシート幅方向の外側の表面)24B2、エアバッグモジュール20のシート幅方向の外側及びパッド後部26の後面26Aは、外側表皮46によって覆われている。
【0055】
そして、
図4に示されるように、内側表皮44のシート幅方向の一端部44A(以下、単に「内側表皮44の一端部44A」という)と外側表皮46のシート幅方向の一端部46A(以下、単に「外側表皮46の一端部46A」という)は、互いに折り返された状態で結合されている(結合部48)。この結合部48は、パッドサイド部24Bの外面24B2におけるパッドサイド部24Bの前面24B1側に配置される。
【0056】
なお、
図4は、内側表皮44、外側表皮46、後述する内側補強布50及び外側補強布52が結合された結合部48が拡大された状態を示す拡大図である。また、本実施形態における「結合」には、例えば、縫製の他、溶着、接合等が含まれる。結合部48以外の結合においてもこれと同じである。
【0057】
(内側補強布、外側補強布)
図2に示されるように、本実施形態では、当該エアバッグモジュール20を外側から包むようにして、エアバッグモジュール20のシート幅方向の内側は内側補強布50によって覆われ、エアバッグモジュール20のシート幅方向の外側は外側補強布52によって覆われている。
【0058】
つまり、本実施形態では、内側補強布50は、エアバッグモジュール20とサイドフレーム18の間に設けられている。なお、内側補強布50及び外側補強布52は、内側表皮44、外側表皮46よりも伸び難い布や樹脂シート等によって帯状に形成されている。
【0059】
図2、
図4に示されるように、内側補強布50のシート前後方向の一端部50A(以下、単に「内側補強布50の一端部50A」という)は、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定され(後述する)、内側補強布50のシート前後方向の他端部50B(以下、単に「内側補強布50の他端部50B」という)は、折り返された状態で内側表皮44の一端部44Aと結合されている(結合部54)。
【0060】
また、外側補強布52のシート前後方向の一端部52A(以下、単に「外側補強布52の一端部52A」という)は、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定され(後述する)、外側補強布52のシート前後方向の他端部52B(以下、単に「外側補強布52の他端部52B」という)は、折り返された状態で外側表皮46の一端部46Aと結合されている(結合部56)。
【0061】
そして、内側補強布50と内側表皮44が結合部54において結合され、外側補強布52と外側表皮46が結合部56において結合された状態で、内側補強布50、内側表皮44、外側表皮46、及び外側補強布52が結合部48において結合されている。
【0062】
ここで、内側補強布50は、前述のように、エアバッグモジュール20とサイドフレーム18の間に設けられている。さらに具体的に説明すると、内側補強布50は、エアバッグモジュール20の内側面30Aとサイドフレーム18の外側壁部18Aの間に設けられている。
【0063】
当該サイドフレーム18及びエアバッグモジュール20は、パッドサイド部24Bよりもシート前後方向の後方側に配置されている。言い換えると、エアバッグモジュール20におけるシート前後方向の前方側にはパッドサイド部24Bが配置されている。
【0064】
このため、内側補強布50は、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定されると共に、サイドフレーム18の外側壁部18Aとエアバッグモジュール20の収容ケース30の内側面30Aとの間に設けられ、かつ、収容ケース30の前面30Bとパッドサイド部24Bの後面24B3の間を通って、パッドサイド部24Bの外面24B2を回り込んだ状態で、結合部48において折り返された状態で外側補強布52等と結合されている。
【0065】
一方、外側補強布52は、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定されると共に、エアバッグモジュール20の収容ケース30の外側面30C側を回り込み、パッドサイド部24Bの外面24B2側を通って、結合部48において折り返された状態で内側補強布50等と結合されている。
【0066】
そして、内側補強布50と外側補強布52の間は、サイドエアバッグが展開するときに、当該サイドエアバッグを車室内35側へ放出させるための放出路58とされる。この放出路58の出口が結合部48となる。
【0067】
このため、エアバッグモジュール20のインフレータ32が作動されると、サイドエアバッグの内部にガスが供給され、サイドエアバッグが放出路58へ向けて膨張する。サイドエアバッグが膨張すると、内側補強布50及び外側補強布52がサイドエアバッグの膨張圧を受けて伸張し、内側補強布50の他端部50B及び外側補強布52の他端部52Bに応力が集中する。
【0068】
これにより、内側補強布50及び外側補強布52を含み内側表皮44と外側表皮46とが縫い合わされた結合部48が開裂され、放出路58の出口からサイドエアバッグがシートバックサイド部14Bのシート前後方向の前側へ展開される。つまり、サイドエアバッグが車両用シート10に着座した乗員と図示しない車両用サイドドアとの間へ展開される。
【0069】
(サイドフレーム、内側補強布)
ところで、本実施形態では、
図2に示されるように、サイドフレーム18の後側壁部18Cの先端からは、シート前後方向の前方側かつシート幅方向の内側へ向かって係止片31が張り出している。なお、この係止片31は、後述するJフック62等が係止可能な長さとされている。
【0070】
一方、
図5には、内側補強布50及び外側補強布52の平面図が示されている。
図5に示されるように、内側補強布50の一端部50A側には、シート上下方向の中央部にシート幅方向の一端側を開口とする略C字状に形成された切欠き部60が形成されている。
【0071】
図2、
図3に示されるように、この切欠き部60は、サイドフレーム18の外側壁部18Aに設けられた、インフレータ32用の取付座18A3と重ならない寸法となるように設定されている。そして、内側補強布50の一端部50A側は、当該切欠き部60によって、シート上下に離間し、上辺部50A1と下辺部50A2とで二股状に形成されている。
【0072】
前述のように、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された状態で、収容ケース30の内側面30Aはサイドフレーム18の取付座18A3に当接するが、取付座18A3の上方側には、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の上側凹み部18A4の間に隙間43が設けられる。また、取付座18A3の下方側には、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の下側凹み部18A5の間に隙間47が設けられる。
【0073】
このため、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された状態であっても、サイドフレーム18の上側凹み部18A4側の隙間43内に内側補強布50の上辺部50A1を挿入させることができ、下側凹み部18A5側の隙間47内には内側補強布50の下辺部50A2を挿入させることができる。
【0074】
一方、内側補強布50の一端部50A側には、
図5、
図6に示されるように、例えば、上辺部50A1及び下辺部50A2の先端部に、Jフック62が溶着等によりそれぞれ結合されている(溶着部65)。
【0075】
このJフック62は、
図1、
図2に示されるように、係止片31に対して係止可能とされており、上辺部50A1及び下辺部50A2のJフック62が係止片31にそれぞれ係止されることによって、内側補強布50の一端部50Aは、サイドフレーム18の後側壁部18Cに対して仮止めされる。
【0076】
また、
図7には、
図1の要部を拡大した要部拡大斜視図が示されている。
図1、
図7に示されるように、サイドフレーム18の後側壁部18Cには、シート上下方向に沿って複数の固定孔64が形成されており、固定孔64には、樹脂製のクリップ66がそれぞれ挿入可能とされている。
【0077】
図2に示されるように、クリップ66は円板状の頭部68と、ネジ部70Aが設けられた首部70と、を含んで構成されており、固定孔64内に首部70が挿入された状態で、ネジ部70Aが固定孔64に係止され抜け止めされる。
【0078】
そして、固定孔64の周辺部に頭部68が当接された状態で、当該クリップ66が、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定されるようになっている。なお、以下の説明では、クリップ66の頭部68、首部70について特定はせずに、単にクリップ66として説明を行う。
【0079】
図7に示されるように、内側補強布50の一端部50Aには、当該固定孔64に対応して固定孔72が形成されている。本実施形態では、内側補強布50の一端部50Aでは、上辺部50A1の方が下辺部50A2よりも若干シート上下方向の長さが長くなっている。
【0080】
このため、当該固定孔72は、上辺部50A1側はシート上下方向に沿って2カ所設けられているが、下辺部50A2は1カ所となっている。なお、上辺部50A1と下辺部50A2のシート上下方向の長さが略同じであって、固定孔72がそれぞれ2カ所設けられてもよい。但し、内側補強布50の取り付け作業性を考慮すると、クリップ66が設けられる箇所は少ない方が好ましい。
【0081】
また、サイドエアバッグの膨張展開時には、内側補強布50には張力が伝達される。このため、本実施形態では、固定孔72の同心円上には、当該固定孔72周りを補強するため、例えば、内側補強布50を縫製して形成された補強部74が設けられている。
【0082】
(サイドフレーム、外側補強布)
一方、
図5に示されるように、外側補強布52の一端部52Aには、シート上下方向の中央部に作業者が把持可能な矩形状の把持部76がシート前後方向に沿って突出している。この把持部76は、シート上下方向の寸法L1が、内側補強布50の切欠き部60のシート上下方向の寸法L2よりも若干小さくなるように設定されている。さらに、当該把持部76は、外側補強布52の一端部52Aと内側補強布50の一端部50Aが重なった状態で、内側補強布50の切欠き部60内に配置されるように設定されている。
【0083】
そして、外側補強布52の一端部52A側の把持部76にはJフック78が設けられ、当該Jフック78が、
図2に示すサイドフレーム18の係止片31に係止されることによって、外側補強布52の一端部52Aがサイドフレーム18の後側壁部18Cに対して仮止めされる。
【0084】
すなわち、本実施形態では、
図2、
図7に示されるように、内側補強布50の一端部50A側の上辺部50A1及び下辺部50A2に設けられたJフック62がサイドフレーム18の係止片31にそれぞれ係止され、外側補強布52の一端部52A側の把持部76に設けられたJフック78がサイドフレーム18の係止片31に係止される。
【0085】
前述のように、把持部76は、外側補強布52の一端部52Aと内側補強布50の一端部50Aが重なった状態で、内側補強布50の切欠き部60内に配置されるように設定されている。このため、本実施形態では、内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2のJフック62がサイドフレーム18の係止片31に係止された状態で、当該把持部76は上辺部50A1と下辺部50A2の間に配置され、Jフック62とJフック78は干渉することなく、シート上下方向に沿って配置されることとなる。
【0086】
また、内側補強布50同様、外側補強布52の一端部52Aには、サイドフレーム18の後側壁部18Cに形成された固定孔64に対応して、クリップ66が挿入可能な固定孔80が形成されている。さらに、サイドエアバッグの膨張展開時には、内側補強布50同様、外側補強布52に張力が伝達される。このため、本実施形態では、固定孔80の同心円上には、当該固定孔80周りを補強するため、例えば、外側補強布52を縫製して形成された補強部82が設けられている。
【0087】
そして、内側補強布50側のJフック62が係止片31に係止され、外側補強布52側のJフック78が係止片31に係止された状態で、外側補強布52の固定孔80、内側補強布50の固定孔72及びサイドフレーム18の後側壁部18Cの固定孔64が重なるように設定されている。
【0088】
これらの固定孔80、72、64が重なった状態で、当該固定孔80、72、64内へクリップ66を挿入し、当該クリップ66をサイドフレーム18の後側壁部18Cに固定させることによって、内側補強布50の一端部50A及び外側補強布52の一端部52Aが、サイドフレーム18の後側壁部18Cに固定される。
【0089】
<車両用シートの作用及び効果>
次に、本実施の形態に係る車両用シートの作用及び効果について説明する。
【0090】
図1、
図2に示されるように、本実施形態では、シートバック14のシート幅方向の外側に位置するシートバックサイド部14Bにおいて、パッド前部24のパッドサイド部24Bの前面24B1は、内側表皮44によって覆われ、パッドサイド部24Bの外面24B2は、外側表皮46によって覆われている。そして、内側表皮44の一端部44Aと外側表皮46の一端部46Aは、結合部48で結合されている。
【0091】
また、左右のシートバックサイド部14Bのうち、車両幅方向の外側に位置するシートバックサイド部14Bの内部には、エアバッグモジュール20が収容されており、エアバッグモジュール20は、ガスの供給を受けて当該結合部48へ向けて膨張展開する図示しないサイドエアバッグを備えている。また、シートバックサイド部14Bには、サイドフレーム18が設けられており、当該サイドフレーム18にはエアバッグモジュール20が固定されている。
【0092】
当該エアバッグモジュール20のシート幅方向の外側は、外側補強布52によって覆われており、外側補強布52の一端部52Aは、サイドフレーム18に固定され、外側補強布52の他端部52Bは、内側表皮44と外側表皮46が結合された結合部48において外側表皮46に結合されている。
【0093】
また、サイドフレーム18とエアバッグモジュール20の間には、内側補強布50が配置されており、エアバッグモジュール20のシート幅方向の内側は、内側補強布50によって覆われている。当該内側補強布50の一端部50Aは、シート上下に離間し、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された固定部45を回避してサイドフレーム18に固定されており、内側補強布50の他端部50Bは、当該結合部48において内側表皮44に結合されている。
【0094】
以上のような構成により、本実施形態では、サイドエアバッグがガスの供給を受けて膨張展開するとき、外側補強布52及び内側補強布50がサイドエアバッグの膨張圧を受けて伸張し、内側補強布50が結合された内側表皮44と外側補強布52が結合された外側表皮46との結合部48に張力が伝達される。
【0095】
これにより、当該結合部48では、引っ張り応力が集中し、当該結合部48が開裂して、サイドエアバッグが車両用シート10のシート前後方向の前方側(車室内35側)へ向かって膨張展開される。
【0096】
ここで、本実施形態では、エアバッグモジュール20は、外側補強布52及び内側補強布50によって覆われている。このため、例えば、図示はしないが、外側補強布52と内側補強布50の間にパッド等の緩衝部材が設けられた場合と比較して、シートバックサイド部14B内におけるサイドエアバッグの膨張を抑制することが可能となる。
【0097】
すなわち、本実施形態では、サイドエアバッグが膨張展開する際に、シートバックサイド部14B内でのサイドエアバッグの膨張を抑制することで、サイドエアバッグの展開ロスを低減させ、サイドエアバッグの開裂性能を向上させることができる。
【0098】
また、本実施形態では、内側補強布50は、サイドフレーム18とエアバッグモジュール20の間に配置されている。これにより、サイドエアバッグが膨張展開する際に、シートバックサイド部14B内において、サイドフレーム18によってサイドエアバッグのシート幅方向の内側への膨出を抑制し、サイドエアバッグの展開ロスを低減してサイドエアバッグの開裂速度を向上させることが可能となる。
【0099】
一方、本実施形態では、前述のように、内側補強布50の一端部50Aは、シート上下に離間しエアバッグモジュール20の固定部45を回避してサイドフレーム18に固定されている。これにより、エアバッグモジュール20をサイドフレーム18に固定した後に当該内側補強布50をサイドフレーム18に固定させることが可能となる。
【0100】
すなわち、本実施形態では、エアバッグモジュール20をサイドフレーム18に固定する前に当該内側補強布50をサイドフレーム18に固定することもできるし、エアバッグモジュール20をサイドフレームに固定した後に当該内側補強布50をサイドフレームに固定することも可能である。
【0101】
したがって、本実施形態では、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された後でも、内側補強布50、外側補強布52を取り付けることができるため、取り付け作業性を向上させることができる。
【0102】
ここで、内側補強布50の一端部50Aが、シート上下に離間しエアバッグモジュール20の固定部45を回避することについて具体的に説明する。本実施形態では、
図5に示されるように、内側補強布50の一端部50A側には、切欠き部60が形成されており、当該切欠き部60によって、内側補強布50の一端部50A側は、上辺部50A1と下辺部50A2とで二股状に形成されている。また、切欠き部60は、
図3に示されるインフレータ32用の取付座18A3と重ならない寸法となるように設定されており、これにより、内側補強布50の一端部50Aは、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された固定部45(
図1参照)を回避可能とされている。
【0103】
また、
図3に示されるように、サイドフレーム18には、取付座18A3の上方側に上側凹み部18A4が設けられ、取付座18A3の下方側に下側凹み部18A5が設けられている。この上側凹み部18A4、下側凹み部18A5によって、サイドフレーム18にエアバッグモジュール20が固定された状態で、当該サイドフレーム18とエアバッグモジュール20との間に少なくとも内側補強布50の厚み分の隙間43、47が形成されるように設定されている。
【0104】
これにより、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された状態であっても、サイドフレーム18の上側凹み部18A4側の隙間43内に内側補強布50の上辺部50A1を挿入させることができ、下側凹み部18A5側の隙間47内には内側補強布50の下辺部50A2を挿入させることができる。
【0105】
以上のような構成により、本実施形態では、エアバッグモジュール20をサイドフレーム18に固定した状態で、サイドフレーム18とエアバッグモジュール20との間に内側補強布50を配置することができる。
【0106】
また、本実施形態では、
図5に示されるように、外側補強布52の一端部52Aには、把持可能な把持部76が設けられており、当該外側補強布52の一端部52Aと内側補強布50の一端部50Aが重なった状態で、当該把持部76は内側補強布50の切欠き部60内に配置されるように設定されている。
【0107】
これにより、
図7に示すサイドフレーム18に対して、内側補強布50及び外側補強布52のシート上下方向の位置関係が分かりやすくなる。その結果、サイドフレーム18に内側補強布50及び外側補強布52を固定するときの作業性を向上させることができる。
【0108】
さらに、本実施形態では、
図1に示されるように、外側補強布52の一端部52A及び内側補強布50の一端部50Aが樹脂製のクリップ66を介して共にサイドフレーム18に固定されている。
【0109】
このため、例えば、図示はしないが、金属製のボルト及びナットを介して外側補強布52、内側補強布50をサイドフレーム18に固定させた場合と比較して、本実施形態では、取り付け作業性がよく、コストダウンを図ることができ、また、軽量化を図ることができる。
【0110】
また、本実施形態では、内側補強布50の一端部50A及び外側補強布52の一端部52Aには、Jフック62、78がそれぞれ設けられており、当該Jフック62、78はサイドフレーム18の係止片31(
図2参照)に係止可能とされている。
【0111】
このように、内側補強布50及び外側補強布52にそれぞれJフック62、78を設けることによって、サイドフレーム18に内側補強布50及び外側補強布52を固定する際に当該サイドフレーム18にそれぞれJフック62、78を係止させて内側補強布50及び外側補強布52を仮止めすることができる。したがって、本実施形態では、作業性を向上させることができる。
【0112】
また、Jフック62、78をサイドフレーム18に係止させることによって、サイドエアバッグの膨張展開時に内側補強布50及び外側補強布52に張力が伝達された際に、クリップ66に作用するせん断力を分散させることができる。
【0113】
<本実施形態の補足事項>
次に、上記実施形態に係る車両用シートの変形例について説明する。
【0114】
(内側補強布、外側補強布)
上記実施形態では、
図7に示されるように、内側補強布50に形成された固定孔72の同心円上には補強部74が設けられ、外側補強布52に形成された固定孔80の同心円上には補強部82が設けられている。
【0115】
しかしながら、サイドエアバッグの膨張展開時に内側補強布50及び外側補強布52に張力が伝達された際に、固定孔72、80を介して、内側補強布50、外側補強布52がそれぞれ裂けなければよいため、これに限るものではない。
【0116】
例えば、変形例1として、
図8に示されるように、内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2において、固定孔72のJフック62側にシート上下方向の全体に亘って縫製部84がそれぞれ設けられてもよい。また、外側補強布52の一端部52Aにおいて、固定孔80のJフック78側にシート上下方向の全体に亘って縫製部86が設けられてもよい。
【0117】
また、上記実施形態では、
図7、
図8に示されるように、内側補強布50の一端部50A及び外側補強布52の一端部52Aには、Jフック62、78がそれぞれ設けられている。しかしながら、サイドフレーム18にJフック62、78を仮止めする必要がなければ、当該Jフック62、78は必ずしも必要ではない。
【0118】
Jフック62、78が設けられない場合、例えば、変形例2として、
図9に示されるように、内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2において、固定孔72の同心円上には補強部74が設けられ、外側補強布52において、固定孔80の同心円上には補強部82が設けられている。また、Jフック62、78(
図7参照)が設けられない場合、
図10に示されるサイドフレーム18の後側壁部18Cにおいて、係止片31は必ずしも形成される必要はない。
【0119】
また、
図9で示す構成以外にも、変形例3として、
図11に示されるように、内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2において、固定孔72よりも先端側にシート上下方向の全体に亘って縫製部84がそれぞれ設けられてもよい。また、外側補強布52の一端部52Aにおいて、固定孔80よりも先端側にシート上下方向の全体に亘って縫製部86が設けられてもよい。なお、
図7に示す補強部74、82及び
図8に示す縫製部84、86について、固定孔72、80周りの強度等が十分な場合、これらは必ずしも必要ではない。
【0120】
(シートバックサイドフレーム)
上記実施形態では、
図3に示されるように、エアバッグモジュール20がサイドフレーム18に固定された状態で当該エアバッグモジュール20の収容ケース30の内側面30Aが当接する取付座18A3が、シート幅方向の外側へ向かって突出して形成されている。
【0121】
このため、当該収容ケース30の内側面30Aがサイドフレーム18の取付座18A3に当接した状態で、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の上側凹み部18A4の間には隙間43が設けられ、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の下側凹み部18A5の間には隙間47が設けられる。これにより、本実施形態では、当該隙間43内に内側補強布50の上辺部50A1を挿入させることができ、当該隙間47内に内側補強布50の下辺部50A2を挿入させることが可能となる。
【0122】
このように、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の間に内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2を挿入させることができればよいため、本実施形態に限るものではない。つまり、必ずしも収容ケース30の内側面30Aをサイドフレーム18の取付座18A3に当接させる必要はない。
【0123】
例えば、
図12には、
図3に対応する変形例として要部が拡大された要部拡大断面図が示されている。
図12に示されるように、ボルト88の頭部88Aやワッシャー(図示省略)等を利用して、収容ケース30の内側面30Aとサイドフレーム18の取付座18A3の間に隙間90を設けるようにしてもよい。この隙間90を利用して内側補強布50の上辺部50A1及び下辺部50A2を挿入させるようにしてもよい。
【0124】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、一実施形態及び各種の変形例を適宜組み合わせて用いても良いし、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0125】
10 車両用シート
14 シートバック
14B シートバックサイド部(シートバックのシート幅方向の外側に位置する側部)
18 サイドフレーム
18A 外側壁部(サイドフレーム)
18A4 上側凹み部(凹み部)
18A5 下側凹み部(凹み部)
20 エアバッグモジュール(サイドエアバッグモジュール)
24B1 前面(サイドフレームにおけるシート幅方向の内側の表面)
24B2 外面(サイドフレームにおけるシート幅方向の外側の表面)
44 内側表皮
43 隙間
44A 一端部(内側表皮のシート幅方向の一端部)
45 固定部
47 隙間
46 外側表皮
46A 一端部(外側表皮のシート幅方向の一端部)
48 結合部
50 内側補強布
50A 一端部(内側補強布のシート前後方向の一端部)
50B 他端部(内側補強布のシート前後方向の他端部)
52 外側補強布
52A 一端部(外側補強布のシート前後方向の一端部)
52B 他端部(外側補強布のシート前後方向の他端部)
60 切欠き部
62 Jフック(フック)
66 クリップ
76 把持部
78 Jフック(フック)
90 隙間