(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】ヒートポンプ式給湯装置および制御装置
(51)【国際特許分類】
F24H 4/02 20220101AFI20230613BHJP
F24H 15/212 20220101ALI20230613BHJP
F24H 15/227 20220101ALI20230613BHJP
F24H 15/258 20220101ALI20230613BHJP
F24H 15/325 20220101ALI20230613BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20230613BHJP
F25B 49/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F24H4/02 A
F24H15/212
F24H15/227
F24H15/258
F24H15/325
F25B1/00 101Z
F25B1/00 331Z
F25B49/02 510C
(21)【出願番号】P 2019007224
(22)【出願日】2019-01-18
【審査請求日】2021-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100144211
【氏名又は名称】日比野 幸信
(72)【発明者】
【氏名】工藤 康浩
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】深谷 昌春
(72)【発明者】
【氏名】井上 和宏
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-001754(JP,A)
【文献】特開2008-261557(JP,A)
【文献】特開2002-340453(JP,A)
【文献】特開2009-180406(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 1/00 - 15/493
F25B 1/00 - 7/00
F25B 43/00 - 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒と水を熱交換させる給湯用熱交換器と、前記給湯用熱交換器から流出した冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器から流出した冷媒と外気を熱交換させる室外熱交換器と、前記給湯用熱交換器から前記減圧器へ供給される冷媒と前記室外熱交換器から前記圧縮機へ供給される冷媒を熱交換させる内部熱交換器と、を有する冷媒回路と、
前記給湯用熱交換器の冷媒流出口と前記内部熱交換器の冷媒流入口との間に配置された第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁の冷媒流入口と前記内部熱交換器の冷媒流出口との間に接続されたバイパス流路部と、前記バイパス流路部に配置された第2の開閉弁と、を有するバイパス回路と、
前記給湯用熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する高圧側冷媒温度を検出する第1の温度検出部と、
前記室外熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する低圧側冷媒温度を検出する第2の温度検出部と、
前記第1の温度検出部の出力および前記第2の温度検出部の出力に基づいて、前記第1の開閉弁および前記第2の開閉弁を開閉制御する制御部であって、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度以上のときは、前記第1の開閉弁を開、かつ前記第2の開閉弁を閉とする第1の制御モードを実行し、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いときは、前記第1の開閉弁を閉、かつ前記第2の開閉弁を開とする第2の制御モードを実行する制御部と
を備えたヒートポンプ式給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記第1の温度検出部は、前記給湯用熱交換器と前記第1の開閉弁との間を接続する配管の温度を検出するセンサである
ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項3】
請求項1に記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記第1の温度検出部は、前記給湯用熱交換器を流入する水の温度を検出するセンサである
ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記第2の温度検出部は、前記室外熱交換器と前記内部熱交換器との間を接続する配管の温度を検出するセンサである
ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1つに記載のヒートポンプ式給湯装置であって、
前記第2の温度検出部は、外気温度を検出するセンサである
ヒートポンプ式給湯装置。
【請求項6】
冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒と水を熱交換させる給湯用熱交換器と、前記給湯用熱交換器から流出した冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器から流出した冷媒と外気を熱交換させる室外熱交換器と、前記給湯用熱交換器から前記減圧器へ供給される冷媒と前記室外熱交換器から前記圧縮機へ供給される冷媒を熱交換させる内部熱交換器と、を有する冷媒回路と、
前記給湯用熱交換器の冷媒流出口と前記内部熱交換器の冷媒流入口との間に配置された第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁の冷媒流入口と前記内部熱交換器の冷媒流出口との間に接続されたバイパス流路部と、前記バイパス流路部に配置された第2の開閉弁と、を有するバイパス回路と
を備えたヒートポンプ式給湯装置用の制御装置であって、
前記給湯用熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する高圧側冷媒温度と、前記室外熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する低圧側冷媒温度とを取得する取得部と、
前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いか否かを判定する判定部と、
前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度以上のときは、前記第1の開閉弁を開、かつ前記第2の開閉弁を閉とする第1の制御信号を生成し、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いときは、前記第1の開閉弁を閉、かつ前記第2の開閉弁を開とする第2の制御信号を生成する信号生成部と、を有する
制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式給湯装置およびヒートポンプ式給湯装置用の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプを利用したヒートポンプ式給湯装置は、圧縮機と、給湯用熱交換器と、膨張弁と、室外熱交換器とを有する冷媒回路を備え、圧縮機で圧縮された高温のガス冷媒を給湯用熱交換器で水と熱交換させて、冷媒の放熱する熱により水を加温する。
【0003】
さらに、上記冷媒回路に、給湯用熱交換器から流出する冷媒と室外熱交換器から流出する冷媒とを熱交換させる内部熱交換器と、当該内部熱交換器をバイパスする流路とを設置する技術が知られている(例えば、特許文献1,2参照)。この種のヒートポンプ式給湯装置は、内部熱交換器において、室外熱交換器から流出する低圧ガス冷媒を給湯用熱交換器から流出する高圧液冷媒により加熱することによって冷媒の比エンタルピー差を増加させ、これにより高温の温水を生成可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-193958号公報
【文献】特開2005-351557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、外気温度や給水温度によっては、内部熱交換器における低圧冷媒が高圧冷媒よりも高温になることがある。この場合、本来冷却されるはずの高圧冷媒が低圧冷媒によって加熱されるため、高圧冷媒中にフラッシュガスが発生するおそれがある。フラッシュガスとは、著しい圧力降下や熱の侵入により液冷媒の一部が気化し、当該液冷媒中に気泡を発生させることをいう。フラッシュガスが発生すると、室外熱交換器へ流入する冷媒の質量流量が不足するため、ヒートポンプの性能低下の要因となる。このような問題は、夏期や中間期などの外気温度が比較的高い時期であって、給湯用熱交換器に流入する水温が比較的低い場合に生じやすい。また、特殊な場合として、ヒートポンプ式給湯装置の設置直後、または、運転を長期休止していた後の運転開始時など、ヒートポンプ式給湯装置が備える貯湯タンク内の水温が低い場合にもこのような問題が生じる。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、外気温度が比較的高く、水温が比較的低い場合でも目的とする給湯制御を実現することができるヒートポンプ式給湯装置およびその制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係るヒートポンプ式給湯装置は、冷媒回路と、バイパス回路と、第1の温度検出部と、第2の温度検出部と、制御部とを備える。
前記冷媒回路は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒と水を熱交換させる給湯用熱交換器と、前記給湯用熱交換器から流出した冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器から流出した冷媒と外気を熱交換させる室外熱交換器と、前記給湯用熱交換器から前記減圧器へ供給される冷媒と前記室外熱交換器から前記圧縮機へ供給される冷媒を熱交換させる内部熱交換器と、を有する。
前記バイパス回路は、前記給湯用熱交換器の冷媒流出口と前記内部熱交換器の冷媒流入口との間に配置された第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁の冷媒流入口と前記内部熱交換器の冷媒流出口との間に接続されたバイパス流路部と、前記バイパス流路部に配置された第2の開閉弁と、を有する。
前記第1の温度検出部は、前記給湯用熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する高圧側冷媒温度を検出する。
前記第2の温度検出部は、前記室外熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する低圧側冷媒温度を検出する。
前記制御部は、前記第1の温度検出部の出力および前記第2の温度検出部の出力に基づいて、前記第1の開閉弁および前記第2の開閉弁を開閉制御する制御部であって、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度以上のときは、前記第1の開閉弁を開、かつ前記第2の開閉弁を閉とする第1の制御モードを実行し、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いときは、前記第1の開閉弁を閉、かつ前記第2の開閉弁を開とする第2の制御モードを実行する。
【0008】
前記第1の温度検出部は、前記給湯用熱交換器と前記第1の開閉弁との間を接続する配管の温度を検出するセンサであってもよい。
【0009】
前記第1の温度検出部は、前記給湯用熱交換器を流入する水の温度を検出するセンサであってもよい。
【0010】
前記第2の温度検出部は、前記室外熱交換器と前記内部熱交換器との間を接続する配管の温度を検出するセンサであってもよい。
【0011】
前記第2の温度検出部は、外気温度を検出するセンサであってもよい。
【0012】
本発明の一形態に係る制御装置は、冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機から吐出された冷媒と水を熱交換させる給湯用熱交換器と、前記給湯用熱交換器から流出した冷媒を減圧する減圧器と、前記減圧器から流出した冷媒と外気を熱交換させる室外熱交換器と、前記給湯用熱交換器から前記減圧器へ供給される冷媒と前記室外熱交換器から前記圧縮機へ供給される冷媒を熱交換させる内部熱交換器と、を有する冷媒回路と、
前記給湯用熱交換器の冷媒流出口と前記内部熱交換器の冷媒流入口との間に配置された第1の開閉弁と、前記第1の開閉弁の冷媒流入口と前記内部熱交換器の冷媒流出口との間に接続されたバイパス流路部と、前記バイパス流路部に配置された第2の開閉弁と、を有するバイパス回路と
を備えたヒートポンプ式給湯装置用の制御装置であって、取得部と、判定部と、信号生成部とを有する。
前記取得部は、前記給湯用熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する高圧側冷媒温度と、前記室外熱交換器から流出する冷媒の温度に関連する低圧側冷媒温度とを取得する。
前記判定部は、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いか否かを判定する。
前記信号生成部は、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度以上のときは、前記第1の開閉弁を開、かつ前記第2の開閉弁を閉とする第1の制御信号を生成し、前記高圧側冷媒温度が前記低圧側冷媒温度よりも低いときは、前記第1の開閉弁を閉、かつ前記第2の開閉弁を開とする第2の制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、外気温度が比較的高く、水温が比較的低い場合でも目的とする給湯制御を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るヒートポンプ式給湯装置を示す系統図である。
【
図2】上記ヒートポンプ式給湯装置における給湯回路の一構成例を示す系統図である。
【
図3】上記ヒートポンプ式給湯装置における制御部の構成を示す機能ブロック図である。
【
図4】上記ヒートポンプ式給湯装置におけるバイパス回路が第1の状態であって、高圧側冷媒温度が低圧側冷媒温度よりも高いときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。
【
図5】上記ヒートポンプ式給湯装置におけるバイパス回路が第1の状態であって、高圧側冷媒温度が低圧側冷媒温度よりも低いときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。
【
図6】上記制御部の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【
図7】上記ヒートポンプ式給湯装置におけるバイパス回路が第2の状態のときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係るヒートポンプ式給湯装置100を示す系統図、
図2は、給湯回路500の一構成例を示す系統図である。
【0017】
[全体構成]
本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100は、
図1に示す冷媒回路110と、
図2に示す給湯回路500を備える。冷媒回路110は、圧縮機11、給湯用熱交換器12、内部熱交換器13、減圧器14および室外熱交換器15を備える。
ヒートポンプ式給湯装置100はさらに、内部熱交換器13をバイパスするバイパス回路20、第1の温度検出部31、第2の温度検出部32および制御部40を備える。
【0018】
圧縮機11は、低温低圧の冷媒を圧縮して高温高圧の冷媒を吐出する。圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒は、配管91を介して給湯用熱交換器12へ供給される。
【0019】
冷媒の種類は特に限定されず、本実施形態では、自然冷媒である二酸化炭素が用いられるが、これに限られず、フロン系の冷媒(R410A、R32など)が採用されてもよい。圧縮機11の種類も特に限定されず、例えば、インバータにより回転数が制御される図示しないモータによって駆動される能力可変の圧縮機が採用される。
【0020】
給湯用熱交換器12は、圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒を、給湯回路500を循環する水(水道水などの市水)との熱交換をする放熱器である。給湯用熱交換器12は、冷媒回路110と給湯回路500で共用される。
【0021】
給湯回路500は、貯湯タンク501と、貯湯タンク501へ市水を導入する水道管502と、貯湯タンク501と給湯用熱交換器12の間で水を循環させるポンプPを含む水循環回路503と、貯湯タンク501内の温水を外部へ供給する給湯管504とを有する。給湯管504には、貯湯タンク501から導出した温水を水道管502内の水と混合するための混合弁Vが設けられる。
【0022】
給湯用熱交換器12は水と冷媒の間の熱交換ができる、例えばプレート型熱交換器、二重管式熱交換器や多管式熱交換器などの種々の型式の熱交換器が採用できる。給湯用熱交換器12において水と熱交換した冷媒は、配管92を介して内部熱交換器13へ供給される。
【0023】
内部熱交換器13は、給湯用熱交換器12から減圧器14へ供給される冷媒(高圧冷媒)が通る配管と、室外熱交換器15から圧縮機11へ供給される冷媒(低圧冷媒)が通る配管とを有し、上記高圧冷媒と上記低圧冷媒とを熱交換させる。内部熱交換器13は、上記高圧冷媒と低圧冷媒の間の熱交換ができる、例えばプレート型熱交換器、二重管式熱交換器や多管式熱交換器などの種々の型式の熱交換器が採用できる。内部熱交換器13において室外熱交換器15からの流出冷媒と熱交換した冷媒は、配管93を介して減圧器14および室外熱交換器15へ順次供給される。
【0024】
減圧器14は、給湯用熱交換器12あるいは内部熱交換器13から流出した冷媒を減圧するためのものであり、典型的には、制御部40からの指令に基づいて開度を制御できる電子膨張弁である。なおこれに限られず、減圧器14にはキャピラリーチューブ等の固定絞り装置が採用されてもよい。
【0025】
室外熱交換器15は、減圧器14から流出した冷媒を外気との熱交換をする蒸発器である。室外熱交換器15の種類は特に限定されず、例えば空気と冷媒の間の熱交換ができるパラレルフロー型熱交換器、フィンチューブ型熱交換器、プレートフィン型熱交換器などの種々の型式の熱交換器が採用できる。室外熱交換器15の近傍には図示せずとも送風用のファンが配置されてもよい。
【0026】
室外熱交換器15において外気と熱交換した冷媒は、配管94を介して内部熱交換器13へ供給される。内部熱交換器13において給湯用熱交換器12からの流出冷媒と熱交換した冷媒は、配管95を介して圧縮機11へ戻される。
【0027】
バイパス回路20は、給湯用熱交換器12から流出した冷媒を、内部熱交換器13を介さずに減圧器14へ供給するためのものである。バイパス回路20は、第1の開閉弁21と、第2の開閉弁22と、バイパス流路部23とを有する。
【0028】
バイパス流路部23は、内部熱交換器13とは並列的に、給湯用熱交換器12と減圧器14との間に接続された配管であり、その一端は配管92との分岐部B1に、他端は配管93との合流部B2にそれぞれ接続される。
【0029】
第1の開閉弁21および第2の開閉弁22は、制御部40からの指令に基づいて開閉する弁である。第1の開閉弁21は、分岐部B1と内部熱交換器13との間に配置され、第2の開閉弁22は、バイパス流路部23に配置される。バイパス回路20は、制御部40からの指令に基づいて、第1の開閉弁21が開であり、かつ、第2の開閉弁22が閉である第1の状態と、第1の開閉弁21が閉であり、かつ、第2の開閉弁22が開である第2の状態とを選択的に切り替えられる。
【0030】
第1の温度検出部31は、給湯用熱交換器12から流出する冷媒の温度に関連する高圧側冷媒温度を検出する。本実施形態において第1の温度検出部31は、給湯用熱交換器12と第1の開閉弁21との間を接続する配管92の温度を検出する温度センサであり、当該配管92の温度を給湯用熱交換器12の出口の冷媒温度として検出する。第1の温度検出部31は、配管92の給湯用熱交換器12側の端部とバイパス流路部23との分岐部B1との間の任意の位置に配置される。
【0031】
第2の温度検出部32は、室外熱交換器15から流出する冷媒の温度に関連する低圧側冷媒温度を検出する。本実施形態において第2の温度検出部32は、室外熱交換器15と内部熱交換器13との間を接続する配管94の温度を検出する温度センサであり、当該配管94の温度を室外熱交換器15の出口の冷媒温度として検出する。第2の温度検出部32は、配管94の任意の位置に配置される。
【0032】
[制御部]
制御部40は、CPUと、メモリ等を含むマイクロコンピュータであり、冷媒回路110およびバイパス回路20、さらには給湯回路500を制御する制御装置である。制御部40は、第1の温度検出部31の出力および第2の温度検出部32の出力に基づいて、第1の開閉弁21および第2の開閉弁22を開閉制御する。
【0033】
より具体的に、制御部40は、給湯用熱交換器12から流出する高圧側冷媒温度(以下、高圧側冷媒温度T1ともいう)と、室外熱交換器15から流出する低圧側冷媒温度(以下、低圧側冷媒温度T2ともいう)を取得する。そして、制御部40は、後述するように、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2以上のときは、第1の開閉弁21を開き、かつ、第2の開閉弁22を閉じる第1の制御モードを実行する。一方、制御部40は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときは、第1の開閉弁21を閉じ、かつ、第2の開閉弁22を開く第2の制御モードを実行する。
【0034】
図3は、制御部40の構成を示す機能ブロック図である。制御部40は、取得部41と、判定部42と、信号生成部43とを有し、図示しないメモリに格納された制御プログラムを実行することで、これら各部が機能ブロックとして動作する。
【0035】
取得部41は、第1の温度検出部31および第2の温度検出部32と電気的に接続されており、第1の温度検出部31より高圧側冷媒温度T1を取得し、第2の温度検出部32より低圧側冷媒温度T2を取得する。
【0036】
判定部42は、取得部41において取得された高圧側冷媒温度T1および低圧側冷媒温度T2を比較し、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いか否かを判定する。
【0037】
信号生成部43は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2以上のときは、第1の開閉弁21を開き、かつ、第2の開閉弁22を閉じるための第1の制御信号を生成することで、バイパス回路20を第1の状態に設定する。一方、信号生成部43は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときは、第1の開閉弁21を閉じ、かつ、第2の開閉弁22を開くための第2の制御信号を生成することで、バイパス回路20を第2の状態に設定する。
【0038】
[ヒートポンプ式給湯装置の動作]
続いて、ヒートポンプ式給湯装置100の動作について説明する。
【0039】
(基本動作)
ヒートポンプ式給湯装置100の運転が開始されると、第1の開閉弁21が開き、第2の開閉弁22が閉じることで、バイパス回路20は、給湯用熱交換器12が内部熱交換器13と連通する第1の状態に設定される。この状態で、制御部40は、冷媒回路110の圧縮機11および給湯回路500のポンプPを起動させる。
【0040】
圧縮機11から吐出された高温高圧の冷媒は、給湯用熱交換器12へ流入し、貯湯タンク501からポンプPによって送出された水と熱交換して冷却される。貯湯タンク501内の水は、給湯用熱交換器12において冷媒と熱交換を繰り返して加温され、所定温度の温水となる(
図2参照)。
【0041】
給湯用熱交換器12から流出した高温高圧の冷媒は、内部熱交換器13へ流入し、室外熱交換器15から流出した低温低圧の冷媒と熱交換する。内部熱交換器13から流出した冷媒は、減圧器14で減圧されて室外熱交換器15へ流入し、外気と熱交換する。室外熱交換器15から流出した低圧の冷媒は、内部熱交換器13を介して圧縮機11へ戻る。
【0042】
ここで、外気温度が比較的低い場合、給湯用熱交換器12から流出する冷媒の温度(高圧側冷媒温度T1)は、室外熱交換器15から流出する冷媒の温度(低圧側冷媒温度T2)よりも高い。このため、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒は、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒により冷却され、上記低圧冷媒は、上記高圧冷媒により加熱される。これにより、内部熱交換器13を経由しない場合と比較して、給湯用熱交換器12から減圧器14へ供給される冷媒の比エンタルピーは小さくなり、室外熱交換器15から圧縮機11へ供給される冷媒の比エンタルピーは大きくなるため、圧縮機11から吐出される冷媒の温度が高まり、給湯用熱交換器12における水の加温能力が向上する。
【0043】
図4は、バイパス回路20が第1の状態であって、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも高いときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。図中、横軸は比エンタルピー、縦軸は圧力、二点鎖線は飽和液線および飽和蒸気線である。また図中、P1は圧縮機11から吐出された冷媒の状態、P2は給湯用熱交換器12の出口における冷媒の状態、P3は内部熱交換器13から減圧器14へ流出する冷媒の状態、P4は室外熱交換器15の入口における冷媒の状態、P5は室外熱交換器15の出口における冷媒の状態、そして、P6は内部熱交換器13から圧縮機11へ流出する冷媒の状態をそれぞれ示している。
【0044】
図4に示すように、外気温度が比較的低い場合、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒は、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒よりも高温であるため、内部熱交換器13における低圧冷媒との熱交換作用により冷却される。その結果、内部熱交換器13の高圧側入口(P2)よりも内部熱交換器13の高圧側出口(P3)での冷媒の比エンタルピーが小さくなる。一方、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒は、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒よりも低温であるため、内部熱交換器13における高圧冷媒との熱交換作用により加熱される。その結果、内部熱交換器13の低圧側入口(P5)よりも内部熱交換器13の低圧側出口(P6)での冷媒の比エンタルピーが大きくなる。
【0045】
これに対して、外気温度が比較的高く、給湯用熱交換器12に流入する水温が比較的低い場合、給湯用熱交換器12から流出する冷媒の温度(高圧側冷媒温度T1)は、室外熱交換器15から流出する冷媒の温度(低圧側冷媒温度T2)よりも低い場合がある。この場合、上述の場合とは逆に、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒は、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒により加熱され、上記低圧冷媒は、上記高圧冷媒により冷却される。その結果、内部熱交換器13内の液配管でフラッシュガスが発生し、室外熱交換器15へ流入する冷媒の質量流量が不足し、ヒートポンプの性能を低下させるおそれがある。
【0046】
図5は、バイパス回路20が第1の状態であって、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。図中の点P1~P6は上述と同様である。
【0047】
高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときは、本来冷却されるはずの高圧冷媒は加熱され、本来加熱されるはずの低圧冷媒は冷却される。このため、
図5に示すように、室外熱交換器15に流入する冷媒の比エンタルピーは大きくなる。一方、圧縮機11に流入する冷媒の比エンタルピーは小さくなる。その結果、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いとき、減圧器14入口と圧縮機11出口との間の冷媒の比エンタルピー差Δh1は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも高いときにおける上記冷媒の比エンタルピー差Δh(
図4参照)よりも小さくなり、ヒートポンプの性能低下が顕著となる。このような問題は、夏期や中間期などの外気温度が比較的高い時期であって、給湯用熱交換器12に供給される水の温度が比較的低い場合に生じやすい。
【0048】
そこで本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100は、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒の温度(高圧側冷媒温度T1)と室外熱交換器15から流出する低圧冷媒の温度(低圧側冷媒温度T2)とを取得し、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときは、バイパス回路20を第1の状態から第2の状態に切り替えるように構成される。
【0049】
以下、その詳細について説明する。
図6は、制御部40の動作手順の一例を示すフローチャートである。
【0050】
ヒートポンプ式給湯装置100の運転が開始されると、制御部40は、第1の開閉弁21を開、第2の開閉弁22を閉とする第1の制御信号を生成し、バイパス回路20へ出力する(ST101)。これによりバイパス回路20は、給湯用熱交換器12が内部熱交換器13と連通する第1の状態に設定される。この状態で、制御部40は、冷媒回路110の圧縮機11および給湯回路500のポンプPを起動させる。
【0051】
制御部40の取得部41は、第1の温度検出部31により給湯用熱交換器12の出口における冷媒の温度(高圧側冷媒温度T1)を取得し、第2の温度検出部32により室外熱交換器15の出口における冷媒の温度(低圧側冷媒温度T2)を取得する(ST102)。続いて、制御部40の判定部42は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いか否かを判定する(ST103)。
【0052】
高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2以上の場合(ST103においてNo)、バイパス回路20を第1の状態に維持してヒートポンプ式給湯装置100の運転を継続し、上記動作を繰り返す(ST101,102)。これにより、
図4に示したモリエル線図に従って冷媒が状態変化することで、比エンタルピー差がΔhで給湯用熱交換器12を循環する水が加温される。
【0053】
一方、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2より低い場合(ST103においてYes)、制御部40の信号生成部43は、第1の開閉弁21を閉、第2の開閉弁22を開とする第2の制御信号を生成し、バイパス回路20へ出力する(ST104)。これによりバイパス回路20は、給湯用熱交換器12が内部熱交換器13をバイパスして減圧器14と連通する第2の状態に設定される。
【0054】
この状態では、給湯用熱交換器12から流出した高圧冷媒は、バイパス流路部23を介して減圧器14および室外熱交換器15へ供給される。一方、外気との熱交換を経て室外熱交換器15から流出した低圧冷媒は、内部熱交換器13において高圧冷媒と熱交換をすることなく圧縮機11へ戻される。
【0055】
図7は、バイパス回路20が第2の状態のときの冷媒の状態変化を示すモリエル線図である。図中の点P1~P6は上述と同様である。
なお比較のため、バイパス回路20が第1の状態であり高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2よりも低いときの状態を破線で示す。上記破線において、点P10は、圧縮機11から吐出された冷媒の状態、P20は給湯用熱交換器12の出口における冷媒の状態、P30は内部熱交換器13から減圧器14へ流出する冷媒の状態、P40は室外熱交換器15の入口における冷媒の状態、P50は室外熱交換器15の出口における冷媒の状態、そして、P60は内部熱交換器13から圧縮機11へ流出する冷媒の状態をそれぞれ示している。
【0056】
バイパス回路20が第2の状態のとき、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒は、内部熱交換器13を経由することなく減圧弁14および室外熱交換器15へ流入するため、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒により加熱されることはない。このため、高圧冷媒中にフラッシュガスが発生することを防止し、室外熱交換器15へ流入する冷媒の質量流量の低下を阻止することができる。また、室外熱交換器15から流出する低圧冷媒は、給湯用熱交換器12から流出する高圧冷媒により冷却されることがないため、内部熱交換器13において高圧冷媒により熱量を奪われることなく圧縮機11へ戻される。したがって
図7に示すように、減圧器14入口と圧縮機11出口との間の比エンタルピー差Δh2は、バイパス回路がない場合の比エンタルピー差Δh1よりも大きくなるため、ヒートポンプの性能低下が抑えられる。
【0057】
バイパス回路20は、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2以上になるまで第2の状態に維持される。給湯用熱交換器12における水の加温処理を継続することで、貯湯タンク501内の水温は徐々に高くなる。制御部40は、周期的に、高圧側冷媒温度T1および低圧側冷媒温度T2をそれぞれ第1の温度検出部31および第2の温度検出部32から取得する(ST102)。そして、高圧側冷媒温度T1が低圧側冷媒温度T2以上に達したとき(ST103においてNo)、制御部40は、第1の開閉弁21を開、第2の開閉弁22を閉とする第1の制御信号を再度生成し、バイパス回路20へ出力する(ST101)。これによりバイパス回路20は、給湯用熱交換器12が内部熱交換器13に連通する第1の状態に復帰するため、
図4に示したモリエル線図に対応する冷媒の状態変化によって、貯湯タンク501内の水を効率よく加温できる。
【0058】
以上のように本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100によれば、給湯用熱交換器12の出口の冷媒温度(高圧側冷媒温度T1)と室外熱交換器15の出口の冷媒温度(低圧側冷媒温度T2)に基づいてバイパス回路20の状態(バイパスありの状態とバイパスなしの状態)を切り替えるように構成されているため、外気温度が比較的高く、給湯用熱交換器12に供給される水の温度が比較的低い場合であっても、加温能力の低下を抑えつつ、所望とする温度の温水を生成することができる。
【0059】
給湯回路500は、典型的には、水温センサを有する。水温センサは、貯湯タンクに設置されてもよいし、ポンプPから送出される水を通す配管に設置されてもよい。水温センサの出力に基づいて、貯湯タンク501内の水温が所定温度に達したときは、圧縮機11の運転を停止させ、あるいは圧縮機11の回転数を低下させるなどの制御が実行されてもよい。これにより、圧縮機11の駆動に必要な消費電力の低減を図ることができる。
【0060】
[変形例]
高圧側冷媒温度T1を検出する第1の温度検出部31は、配管92の温度を検出するセンサに限られず、上記水温センサであってもよい。これにより、既存のセンサを用いて給湯用熱交換器12から流出する冷媒の温度に関連する情報を取得することができる。
【0061】
同様に、低圧側冷媒温度T2を検出する第2の温度検出部32は、配管94に設置される場合に限られず、外気温度を検出するセンサであってもよい。これは、室外熱交換器15出口の冷媒の温度が、外気温度と同等となるからである。これらの場合にも、室外熱交換器15から流出する冷媒の温度に関連する情報を取得することができる。
【0062】
また、以上の実施形態では、貯湯タンク501を備えた給湯回路500を例に挙げて説明したが、これに限られない。例えば、加温した水をタンクに貯留することなく、水道管502から供給された市水を給湯用熱交換器12で直接加温して、給湯管504から直接出湯する給湯装置にも、本発明は適用可能である。通常、水道管502から直接供給される市水の温度は、外気温度より低い。特に夏期や中間期などの外気温度の高い季節には、外気温度と市水の温度の温度差が大きくなることから、本実施形態のヒートポンプ式給湯装置100により得られる効果が大きい。
【0063】
さらに以上の実施形態では、給湯装置用の冷媒回路110を例に挙げて説明したが、給湯および空調の同時運転が可能なヒートポンプ式給湯空調装置にも本発明は適用可能である。
【符号の説明】
【0064】
11…圧縮機
12…給湯用熱交換器
13…内部熱交換器
14…減圧器
15…室外熱交換器
20…バイパス回路
21…第1の開閉弁
22…第2の開閉弁
23…バイパス流路部
31…第1の温度検出部
32…第2の温度検出部
40…制御部
41…取得部
42…判定部
43…信号生成部
100…ヒートポンプ式給湯装置
110…冷媒回路
500…給湯回路