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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】光モジュール
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/42 20060101AFI20230613BHJP
   H01L 31/0232 20140101ALI20230613BHJP
   G02B 6/32 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
G02B6/42
H01L31/02 D
G02B6/32
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019014374
(22)【出願日】2019-01-30
(65)【公開番号】P2020122864
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2021-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100182006
【弁理士】
【氏名又は名称】湯本 譲司
(72)【発明者】
【氏名】原 弘
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-090586(JP,A)
【文献】特開2017-032731(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0198478(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0099820(US,A1)
【文献】特開2015-102760(JP,A)
【文献】特開2013-171161(JP,A)
【文献】特開2004-286835(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/27
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面状の実装面を有する基板と、
光を伝搬する光導波路、及び前記光導波路を通る光を平行光として出射する反射面を有する光回路素子と、
前記実装面上に前記光回路素子を支持する支持部材と、
前記実装面に実装されており、前記反射面から出射した前記平行光を集光するレンズ、
及び前記レンズによって集光された光を受光する受光層を有する受光素子と、
を備え、
前記平行光は、前記レンズの頂点の接平面に対して垂直に入射し、
前記平行光を出射する前記光回路素子の反射面と前記レンズの頂点との距離は、前記平行光のレイリー長より短く設定されており、
前記実装面の法線方向から見たときに、前記平行光の光軸と前記レンズの頂点との距離は前記平行光のビーム径以上のオフセット量に設定されている、
光モジュール。
【請求項2】
前記光回路素子の反射面と前記レンズの頂点との距離は、前記支持部材の高さによって定められている、
請求項1に記載の光モジュール
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の一側面は、光モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、波長多重光受信モジュールが記載されている。波長多重光受信モジュールは、互いに波長が異なる複数の信号光を含む波長多重光を単一の信号光に分割してそれぞれの信号光に含まれる信号を再生させる。波長多重光受信モジュールは、外部ファイバが接続される光レセプタクルと、受光素子が収容されるパッケージとを備える。パッケージの内部には、光レセプタクルの内部に配置されたコリメートレンズから出射した波長多重光を互いに異なる波長を有する複数の信号光に分波する光分波器と、分波された信号光を反射するミラーとが収容される。パッケージの内部には、ミラーにおいて反射した光を集光するレンズアレイと、レンズアレイにおいて集光された光を受光するPD(Photo Diode)とが配置される。PDは、レンズアレイからの光を受光するモノリシックレンズと、モノリシックレンズを透過した光を受光する受光層と、受光層の下部に位置する反射層とを有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-32731号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、光を反射する反射面、及び反射面において反射した光を集光するレンズと、レンズによって集光された光を受光するPD等の受光素子とを備える光モジュールでは、光の受信経路を遡る戻り光は信号ノイズとなり誤り率特性を劣化させる場合があるために光反射減衰量(ORL;Optical Return Loss)を低減させることが求められる。しかしながら、上記の光モジュールにおいて、レンズの入射部の形状は曲面状とされており、曲面状とされたレンズに反射面からの光が入射する。レンズに入射する光のうちレンズの曲面に対して垂直に入射する成分である垂直入射光は、当該曲面において180°反射されて戻り光となる。従って、ORLを低減して受光感度を高めることが求められる。
【0005】
本開示の一側面は、ORLを低減させて受光感度を高めることができる光モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る光モジュールは、平面状の実装面を有する基板と、光を伝搬する光導波路、及び光導波路を通る光を平行光として出射する反射面を有する光回路素子と、実装面上に光回路素子を支持する支持部材と、実装面に実装されており、反射面から出射した平行光を集光するレンズ、及びレンズによって集光された光を受光する受光層を有する受光素子と、を備え、平行光は、レンズの頂点の接平面に対して垂直に入射し、平行光を出射する光回路素子の反射面とレンズの頂点との距離は、所定値より短く設定されており、実装面の法線方向から見たときに、平行光の光軸とレンズの頂点との距離は所定のオフセット量に設定されている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一側面によれば、ORLを低減させて受光感度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の実施形態に係る光モジュールを示す斜視図である。
図2図2は、図1の光モジュールの側面図である。
図3図3は、図1の光モジュールの光回路素子を示す図である。
図4図4は、図1の光モジュールの基板、受光素子及び光回路素子を拡大した側面図である。
図5図5は、図4の受光素子のレンズを拡大した側面図である。
図6図6は、図4の受光素子のレンズと光回路素子からのビームとを示す平面図である。
図7図7は、図3の光回路素子から出射した光を模式的に示す図である。
図8図8は、比較例の光モジュールの受光素子及び光回路素子を示す側面図である。
図9図9は、図8とは異なる比較例の光モジュールの受光素子及び光回路素子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本願発明の実施形態の説明]
最初に、本願発明の実施形態の内容を列記して説明する。本願発明の一実施形態に係る光モジュールは、平面状の実装面を有する基板と、光を伝搬する光導波路、及び光導波路を通る光を平行光として出射する反射面を有する光回路素子と、実装面上に光回路素子を支持する支持部材と、実装面に実装されており、反射面から出射した平行光を集光するレンズ、及びレンズによって集光された光を受光する受光層を有する受光素子と、を備え、平行光は、レンズの頂点の接平面に対して垂直に入射し、平行光を出射する光回路素子の反射面とレンズの頂点との距離は、所定値より短く設定されており、実装面の法線方向から見たときに、平行光の光軸とレンズの頂点との距離は所定のオフセット量に設定されている。
【0010】
この光モジュールでは、基板の平面状の実装面に支持部材を介して光回路素子が支持されており、光回路素子は、光が伝搬する光導波路と、光導波路を通る光を反射する反射面とを有する。反射面からは平行光が出射し、反射面から出射した平行光はレンズに入射する。この反射面とレンズの頂点との距離は所定値よりも短く設定されている。平行光は遠方に伝搬する場合に拡がることがあり、レンズに入射する平行光が拡がると光の損失が生じる可能性がある。これに対し、この光モジュールでは、平行光を出射する光回路素子の反射面とレンズの頂点との距離が所定値よりも短く設定されている。よって、反射面からの平行光が拡がることなくレンズに入射する。従って、光の損失が生じる可能性を低減できるので、受光感度を高めることができる。また、この光モジュールでは、反射面からの平行光はレンズの頂点の接平面に対して垂直に入射し、実装面の法線方向から見たときにレンズの頂点の位置と平行光の光軸との距離が所定のオフセット量に設定されている。従って、レンズに入射する平行光はレンズの曲面に対して垂直に入射しないので、当該曲面から反射する戻り光を抑制することができる。よって、戻り光の発生を抑制することができるので、ORLを低減させて受光感度を高めることができる。
【0011】
また、当該所定値は、支持部材の高さによって定められていてもよい。この場合、基板と光回路素子の間に介在する支持部材の高さによって反射面とレンズの頂点との距離が定められている。従って、高さが調整された支持部材が基板に載せられていることによって反射面とレンズの頂点との距離を定めることが可能となるので、反射面とレンズの頂点との距離を容易に且つ正確に設定することができる。
【0012】
また、オフセット量が光のビーム径以上であってもよい。この場合、レンズの頂点からの平行光の光軸のオフセット量がビーム径以上であるため、平行光がレンズの頂点に確実に入射しないようにすることができる。従って、平行光がレンズの頂点に入射しないようにすることができるので、ORLをより効果的に低減させることができる。
【0013】
また、前述した所定値は、光のレイリー長より短くてもよい。この場合、反射面とレンズの頂点との距離がレイリー長より短いので、反射面からの平行光が拡がる前に平行光をレンズに入射させることができる。従って、レンズの曲面への垂直入射光の発生をより確実に抑制することができるので、ORLを更に効果的に低減させることができる。
【0014】
[本願発明の実施形態の詳細]
本願発明の実施形態に係る光モジュールの具体例を、以下で図面を参照しながら説明する。本発明は、以降の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示され、特許請求の範囲と均等の範囲内における全ての変更が含まれることが意図される。図面の説明において、同一又は相当する要素には同一の符号を付し、重複する説明を適宜省略する。また、図面は、理解の容易のため、一部を簡略化又は誇張している場合があり、寸法比率及び角度は図面に記載のものに限定されない。
【0015】
図1は、実施形態に係る光モジュール1を示す斜視図である。図2は、光モジュール1を示す側面図である。図1及び図2に示されるように、光モジュール1は、電気信号を処理する回路を搭載すると共に平面状の実装面2bを有する基板2と、実装面2bに搭載される支持部材3と、多重化された多重光信号を分波する光回路素子4と、光回路素子4によって分波された各光Lを受光する複数の受光素子5とを備える。受光素子5は、例えば、PD(Photo Diode)である。光モジュール1は、例えば、光ファイバから多重化された入射光L0を受光する光受信器であり、多重化された入射光L0を光回路素子4によって各光Lに分波する光受信モジュールである。なお、基板2は、光信号を送信するための回路と発光素子(不図示)が搭載されていてもよく、光モジュール1は、光信号の送信及び受信を行う光送受信器であってもよい。複数の受光素子5のそれぞれは、基板2の実装面2bに搭載されたPDキャリア6に実装されている。また、基板2の実装面2bにはTIA(Trans-Impedance Amplifier)7が実装されており、TIA7は複数のワイヤ8のそれぞれを介して各受光素子5と電気的に接続されている。以下では、基板2から見て光回路素子4が設けられる方向を「上」、その反対方向を「下」と称することがある。但し、これらの方向は説明の便宜上のものであり、各部の方向を限定するものではない。
【0016】
図3は、光回路素子4を下方から見た底面図である。図3に例示される光回路素子4は、アレイ導波路型回折格子素子(AWG;Arrayed Waveguide Grating)を有する。光回路素子4は、例えば、光ファイバからの光が伝搬する光導波路として、4波長の波長多重光が入力される入力導波路4bと、入力側スラブ導波路4cと、アレー導波路4dと、出力側スラブ導波路4fと、4本の出力導波路4gとを備える。入力導波路4b、入力側スラブ導波路4c、アレー導波路4d、出力側スラブ導波路4f及び出力導波路4gは、光回路素子4の実装面2bに対向する下面4hに形成されている。光ファイバから入力導波路4bに入力された入射光L0は、入力側スラブ導波路4cを介してアレー導波路4dに入力され、アレー導波路4dによって波長が互いに異なる4つの光L1,L2,L3,L4に分波される。分波された光L1,L2,L3,L4のそれぞれは、出力側スラブ導波路4f及び4本の出力導波路4gのそれぞれを介して光回路素子4の外部に出射する。なお、本実施形態では、光L1,L2,L3,L4のそれぞれを纏めて光Lと称している。
【0017】
図4は、光回路素子4の光Lの出射部分と、基板2、受光素子5、PDキャリア6、TIA7及びワイヤ8を示す側面図である。図4に示されるように、例えば、光回路素子4の端部には反射面4jが形成されている。反射面4jは、光回路素子4の下面4hが上下方向に対して90°であるときに、上下方向に対して45°の角度を成すテーパが形成されたカット面とされており、下面4hに形成された光導波路を伝搬してきた光Lの進行方向を90°曲げる。すなわち、反射面4jは、光回路素子4の下面4hに沿って伝搬する光Lを下方に反射する。反射面4jは光回路素子4の各出力導波路4gを通る光Lを平行光として下方に出射し、反射面4jから下方に出射する光Lは受光素子5に入射する。支持部材3は、例えば直方体状の形状をしており、光回路素子4の下面4hと面接触する上面3aと、基板2の実装面2bと面接触する下面3bとを有する(図2参照)。上面3aと下面3bとが互いに平行になるように支持部材3を成形することで、反射面4jから出射される光Lの光軸の方向を基板2の法線方向と一致させることができる。すなわち、光Lは基板2に対して垂直に出射される。
【0018】
受光素子5は、基板2の実装面2bにPDキャリア6を介して実装されている。受光素子5は、光回路素子4の反射面4jから出射した平行光である光Lを集光するレンズ5bと、レンズ5bによって集光された光Lを受光する受光層5cとを備える。例えば、受光層5cは円板状とされている。レンズ5bは、例えば、光回路素子4側に突出する凸レンズとされており、反射面4jに上下に対向する曲面(一例として球面)を有する。レンズ5bに入射した光Lはレンズ5bにおいて集光され、レンズ5bが集光した光Lは受光層5cに入射する。受光層5cに入射した光Lは電気信号(光電流)に変換されて前述したワイヤ8を介してTIA7に伝送される。反射面4jからの光Lは、レンズ5bの頂点5dの接平面Sに対して垂直に入射する。レンズ5bへの光Lの入射位置は、頂点5dから所定のオフセット量Fだけ離れており、例えば、頂点5dには光Lは入射しない。すなわち、実装面2bの法線方向から見たときに、光Lの光軸Xは頂点5dの位置からオフセット量Fだけ離間している。
【0019】
ここで、図8に示されるように、光回路素子104の反射面104jからの光Lが、受光素子105の頂点105dの接平面Sに対して垂直に入射すると共に、レンズ105bへの光Lが頂点105dに入射する比較例の光モジュール101について説明する。なお、光モジュール101と光モジュール1とは、レンズに対する光Lの入射位置が異なっており、それ以外の点では互いに同様である。光モジュール101の場合、レンズ105bが球形状であって頂点105dに垂直に光Lが入射する。すなわち、接平面Sは光Lに対して垂直なレンズ面となる。レンズ105bに垂直に入射した光Lは、レンズ105b(頂点105d)において180°反射するため、光回路素子104への戻り光となりうる。光モジュール101では、上記のように光Lが光回路素子104への戻り光となることにより、ORL(Optical Return Loss)が増大する問題が発生しうる。
【0020】
上記の問題への対応として、例えば図9に示されるように、光回路素子104に代えて、実装面2bに対する傾斜角度が45°でない(一例として40°)である反射面204jを有する光回路素子204を用いることにより、上下方向から光軸Xが傾くようにレンズ105bへの光Lの出射方向を変えることが考えられる。この場合、光Lは、受光素子105の頂点105dの接平面に対して垂直に入射しなくなる。しかしながら、上記のように光Lの出射方向を変えた場合であっても、レンズ105bの曲面上に光Lの出射方向と法線方向が等しい接平面が存在するため、当該成分の光Lが光回路素子204への戻り光となりうる。従って、光回路素子204を用いて光Lの出射方向を変えた場合であっても、依然としてORLが増大する問題は発生しうる。
【0021】
そこで、本実施形態では、図9とは異なる手段によってORLを低減している。図5は、本実施形態に係る光L、受光素子5のレンズ5b及び受光層5cを示す側面図である。図6は、本実施形態において、実装面2bの法線方向から見た光L及びレンズ5bを模式的に示す平面図である。図5及び図6に示されるように、光Lは一定のビーム径Rを有する平行光として反射面4jからレンズ5bに出射する。反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの上下方向の距離Dは、所定値より短く設定されており、当該所定値は、例えば後述するレイリー長よりも短い。前述したように、平行光である光Lは頂点5dの接平面Sに対して垂直にレンズ5bに入射し、且つ光Lはレンズ5bの頂点5d以外の部分に入射する。従って、レンズ5bの曲面上の光Lが入射する範囲内に、光Lの出射方向と法線方向が等しい接平面が存在しないため、光回路素子4への戻り光は発生しない。また、レンズ5bの頂点5dに対して光軸Xがオフセットする方向は、レンズ5bの同心円上、すなわち頂点5dからの距離が等しい軌跡Z上に光軸Xが位置すれば適宜変更可能である。
【0022】
一例として、レンズ5bの開口径A1は100μmであり、レンズ5bの曲率半径A2は70μmである。例えば、光Lのビーム径Rは10μmであり、レンズ5bの頂点5dからの光軸Xのオフセット量Fは10μm以上である。オフセット量Fが10μmである場合、レンズ5bに対する光Lの入射角は4.0°以上且つ12.6°以下となるので、光回路素子4への光Lの戻りは抑制される。レンズ5bへの光Lの入射の観点では、オフセット量Fの上限は45μmであることが好ましい。また、受光素子5のチップ厚A3は150μmであり、受光素子5の受光層5cの直径A4は15μmである。但し、これらの値は適宜変更可能である。
【0023】
図7は、反射面4jから出射する光Lを模式的に示す側面図である。前述したように、反射面4jからは平行光である光Lが出射する。ところで、光Lは、反射面4jの出射部付近でビームウェストWを形成し、その前後でビーム径Rの平面波(コリメート光)として進行する。光Lが反射面4jの出射部からレイリー長よりも長く離れると、光Lは緩やかに発散する。本実施形態では、光Lが平面波である光Lの光軸Xに沿った方向の長さをレイリー長としており、レイリー長はビームウェストWの半径の2乗に比例する。ビームウェストWの半径は、ビーム径よりも小さいが、近似としてビームウェストWの半径をRとしてもよい。反射面4jとレンズ5bとの距離をレイリー長よりも短くすることで、光Lをビーム径Rで進行する状態でレンズ5bに入射させることができる。
【0024】
本実施形態では、受光層11の受光径が50μmである表面入射型のPD(Photo Diode)を用いてレイリー長を見積もる実験を行った。この実験では、まず受光層11と光回路素子4の光Lの光軸Xを受光層11の受光径の中心に設定し、光回路素子4からの受光層11の距離を変化させてPDの受光感度を取得した。その結果、光回路素子4と受光層11との距離Yが75μm以上である場合にPDの受光感度が下がりはじめた。従って、75μmはレイリー長より長い値であると推定される。これに対し、光回路素子4と受光層11との距離Yが50μm以下である場合にはPDの受光感度が下がっていない。従って、50μmはレイリー長より短い値であると考えられる。
【0025】
以上の実験より、図4に示されるように、光Lを出射する光回路素子4の反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dは本実施形態のレイリー長である50μmより短い方が好ましい。すなわち、光回路素子4からの光Lの出射位置と受光素子5のレンズ5bとの距離は、平行光として出射される光Lの拡がりが検出される距離よりも短く、例えば、50μm以下である。距離Dは、例えば、実装面2bに載せられる支持部材3の高さHが調整されることによって適宜変更可能である。支持部材3の高さHは、上面3aと下面3bとの間の距離に等しい。
【0026】
続いて、本実施形態に係る光モジュール1から得られる作用効果について詳細に説明する。光モジュール1では、基板2の平面状の実装面2bに支持部材3を介して光回路素子4が支持されており、光回路素子4は、入射光L0が伝搬する光導波路である入力導波路4b、入力側スラブ導波路4c、アレー導波路4d、出力側スラブ導波路4f及び出力導波路4gと、出力導波路4gを通る光Lを反射する反射面4jとを有する。反射面4jからは平行光である光Lが出射し、反射面4jから出射した光Lはレンズ5bに入射する。反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dは所定値よりも短く設定されている。平行光は遠方に伝搬する場合に拡がることがあり、レンズ5bに入射する平行光が拡がると光の損失が生じる可能性がある。これに対し、光モジュール1では、光Lを出射する光回路素子4の反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dが所定値よりも短く設定されている。よって、反射面4jからの光Lが拡がることなくレンズ5bに入射する。従って、光の損失が生じる可能性を低減できるので、受光感度を高めることができる。
【0027】
光モジュール1では、反射面4jからの光Lはレンズ5bの頂点5dの接平面Sに対して垂直に入射し、実装面2bの法線方向(すなわち上下方向)から見たときにレンズ5bの頂点5dの位置と光Lの光軸Xとの距離が所定のオフセット量Fに設定されている。従って、レンズ5bに入射する光Lはレンズ5bの曲面に対して垂直に入射しないので、当該曲面から反射する戻り光を抑制することができる。よって、戻り光の発生を抑制することができるので、ORLを低減させて受光感度を高めることができる。
【0028】
前述した所定値は、支持部材3の高さHによって定められていてもよい。この場合、基板2と光回路素子4との間に介在する支持部材3の高さHによって反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dが定められる。従って、高さHが調整された支持部材3が基板2に載せられることによって反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dを定めることが可能となるので、反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dを容易に且つ正確に設定することができる。
【0029】
オフセット量Fが光Lのビーム径R以上であってもよい。この場合、レンズ5bの頂点5dからの光Lの光軸Xのオフセット量Fがビーム径R以上であるため、光Lがレンズ5bの頂点5dに確実に入射しないようにすることができる。従って、光Lがレンズ5bの頂点5dに入射しないようにすることができるので、ORLをより効果的に低減させることができる。
【0030】
前述した所定値は、光Lのレイリー長より短くてもよい。この場合、反射面4jとレンズ5bの頂点5dとの距離Dがレイリー長より短いので、反射面4jからの光Lが拡がる前に光Lをレンズ5bに入射させることができる。従って、レンズ5bの曲面への垂直入射光の発生をより確実に抑制することができるので、ORLを更に効果的に低減させることができる。
【0031】
以上、本開示に係る光モジュールの実施形態について説明した。しかしながら、本発明は前述した実施形態に限定されない。すなわち、本発明が特許請求の範囲に記載された要旨の範囲内において種々の変形及び変更が可能であることは、当業者によって容易に認識される。例えば、前述の実施形態では、反射面4jが光回路素子4の端部に設けられる例について説明した。しかしながら、反射面の位置は適宜変更可能である。また、前述した実施形態では、AWGである光回路素子4について説明した。しかしながら、光回路素子の種類は適宜変更可能である。
【0032】
前述した実施形態では、基板2の実装面2bに、PDキャリア6を介して4個の受光素子5が搭載され、TIA7が搭載されると共に、支持部材3を介して光回路素子4が搭載される例について説明した。しかしながら、基板2の実装面2bに搭載される支持部材、光回路素子及び受光素子の搭載の態様は適宜変更可能である。更に、前述した実施形態では、光受信器である光モジュール1について説明した。しかしながら、本発明は、例えば、光送信器等、光受信器以外の光モジュールにも適用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1…光モジュール、2…基板、2b…実装面、3…支持部材、4…光回路素子、4b…入力導波路、4c…入力側スラブ導波路、4d…アレー導波路、4f…出力側スラブ導波路、4g…出力導波路、4h…下面、4j…反射面、5…受光素子、5b…レンズ、5c…受光層、5d…頂点、6…PDキャリア、7…TIA、8…ワイヤ、A1…開口径、A2…曲率半径、A3…チップ厚、A4…直径、D…距離、F…オフセット量、L…光(平行光)、L0…入射光、L1,L2,L3,L4…光、R…ビーム径、S…接平面、W…ビームウェスト、X…光軸、Y…距離。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9