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特許7293687情報処理方法、プログラム、取水制御システム及び学習済みモデルの生成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】情報処理方法、プログラム、取水制御システム及び学習済みモデルの生成方法
(51)【国際特許分類】
   E02B 7/20 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E02B7/20 107
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019018042
(22)【出願日】2019-02-04
(65)【公開番号】P2020125618
(43)【公開日】2020-08-20
【審査請求日】2021-12-10
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】徳永 悟
(72)【発明者】
【氏名】浜 宜和
【審査官】亀谷 英樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-346426(JP,A)
【文献】特開平05-172728(JP,A)
【文献】特開平05-332915(JP,A)
【文献】特開平06-027014(JP,A)
【文献】特開2018-096088(JP,A)
【文献】特開2003-044127(JP,A)
【文献】特開2003-204544(JP,A)
【文献】特開2004-094050(JP,A)
【文献】特開平05-263411(JP,A)
【文献】特開2019-192017(JP,A)
【文献】特開2018-108041(JP,A)
【文献】国際公開第2018/235266(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第109281295(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 7/20-7/54
E02B 8/02-8/04
E02B 9/00-13/02
G01N 33/00-33/46
G05B 23/00-23/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水力発電所において河川から水を取水する取水口付近を含むように撮像した画像を取得し、
前記取水口付近を含む画像を入力した場合に取水に適するか否かの良否を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの学習済みモデルに、取得した前記取水口付近を含む画像を入力し、
前記学習済みモデルから前記判定結果を取得し、
前記河川の水流を堰き止めて貯水する堰堤を含むように撮像した画像を取得し、
前記堰堤を含む画像を入力した場合に、前記堰堤に設けられた排砂門における異物又は堆積土砂の有無を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの第2学習済みモデルに、取得した前記排砂門を含む画像を入力し、
前記第2学習済みモデルから、前記排砂門における異物又は堆積土砂の有無に係る判定結果を取得し、
前記取水口付近を含む画像の撮像条件に応じて、前記取水口付近を含む画像を異なる前記学習済みモデルに入力して判定結果を取得し、
前記撮像条件は、撮像時期及び撮像時刻を含み、
前記撮像条件が撮像時期である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された撮像時期に応じて、撮像時期に応じて異なる画像によって学習された前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力し、
前記撮像条件が撮像時刻である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された時間帯に応じて可視光画像又は赤外線画像を取得し、
取得した前記可視光画像又は前記赤外線画像の別に応じて前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理方法。
【請求項2】
前記水力発電所は貯水式の水力発電所であって、
前記学習済みモデルから、貯水した水の濁り度合いを判定した前記判定結果を取得する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記第2学習済みモデルは、前記堰堤を含む画像を入力した場合に更に、前記堰堤に設けられた越流部における人間の有無を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みであり、
前記第2学習済みモデルから、前記堰堤に設けられた越流部における人間の有無を判定した判定結果を取得する
ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
水力発電所において河川から水を取水する取水口付近を含むように撮像した画像を取得し、
前記取水口付近を含む画像を入力した場合に取水に適するか否かの良否を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの学習済みモデルに、取得した前記取水口付近を含む画像を入力し、
前記学習済みモデルから前記判定結果を取得し、
前記河川の水流を堰き止めて貯水する堰堤を含むように撮像した画像を取得し、
前記堰堤を含む画像を入力した場合に、前記堰堤に設けられた排砂門における異物又は堆積土砂の有無を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの第2学習済みモデルに、取得した前記排砂門を含む画像を入力し、
前記第2学習済みモデルから、前記排砂門における異物又は堆積土砂の有無に係る判定結果を取得し、
前記取水口付近を含む画像の撮像条件に応じて、前記取水口付近を含む画像を異なる前記学習済みモデルに入力して判定結果を取得し、
前記撮像条件は、撮像時期及び撮像時刻を含み、
前記撮像条件が撮像時期である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された撮像時期に応じて、撮像時期に応じて異なる画像によって学習された前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力し、
前記撮像条件が撮像時刻である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された時間帯に応じて可視光画像又は赤外線画像を取得し、
取得した前記可視光画像又は前記赤外線画像の別に応じて前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力する
処理をコンピュータに実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項5】
河川の水を取水口から取水する貯水式の水力発電所の取水制御システムであって、
前記取水口付近及び前記河川の水流を堰き止めて貯水する堰堤を含むように撮像する撮像部と、
前記取水口の開閉及び、前記堰堤の排砂門の開閉を制御する取水制御盤と、
前記撮像部が撮像した画像に基づき信号を生成し、前記信号を前記取水制御盤に出力する情報処理装置と、
前記取水口付近を含む画像を入力した場合に取水に適するか否かの良否を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの学習済みモデルと、
前記堰堤を含む画像を入力した場合に前記排砂門における異物又は堆積土砂の有無を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの第2学習済みモデルとを備え、
前記情報処理装置は、
前記撮像部が撮像した前記取水口を含む画像及び前記堰堤を含む画像を取得し、
取得した前記取水口を含む画像を前記学習済みモデルに入力し、
取得した前記堰堤を含む画像を前記第2学習済みモデルに入力し、
前記学習済みモデルが出力した判定結果、及び前記第2学習済みモデルが出力した前記排砂門における異物又は堆積土砂の有無に係る判定結果を取得し、
前記第2学習済みモデルから取得した判定結果が、前記異物又は堆積土砂が無い場合、前記排砂門を閉める信号を前記取水制御盤に出力し、
前記学習済みモデルから取得した判定結果が、取水に適するとする良の場合、前記取水口を開く信号を前記取水制御盤に出力し、
前記取水口付近を含む画像の撮像条件に応じて、前記取水口付近を含む画像を異なる前記学習済みモデルに入力して判定結果を取得し、
前記撮像条件は、撮像時期及び撮像時刻を含み、
前記撮像条件が撮像時期である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された撮像時期に応じて、撮像時期に応じて異なる画像によって学習された前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力し、
前記撮像条件が撮像時刻である場合、
前記取水口付近を含む画像が撮像された時間帯に応じて可視光画像又は赤外線画像を取得し、
取得した前記可視光画像又は前記赤外線画像の別に応じて前記学習済みモデル及び前記第2学習済みモデルを切り換えて入力する
ことを特徴とする取水制御システム。
【請求項6】
水力発電所において河川から水を取水する取水口付近を撮像した画像に対して取水に適するか否かの良否を示す情報が対応付けられた教師データを取得し、
前記教師データに基づく深層学習を行い、前記画像を入力した場合に取水に適するか否かの良否を判定した判定結果を出力する学習済みモデルを生成し、
前記教師データは、所定の濁度となるように容器内に注いだ水を撮像した画像を問題データとして用いる
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする学習済みモデルの生成方法であって、
前記学習済みモデルは、撮像時期及び撮像時刻を含む撮像条件に応じて、別個となる複数の学習済みモデルを含み、
前記複数の学習済みモデルは、撮像時期又は撮像時刻に応じて切り換えられて画像が入力される
ことを特徴とする学習済みモデルの生成方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、プログラム、取水制御システム及び学習済みモデルの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水力発電所等において、河川からの取水を行うにあたり現在の水質の良否度合を判定する手法が提案されている。例えば特許文献1では、工業用カラーテレビカメラ(ITV)で河川画像を撮影し、この画像データ及び数値データを画像処理装置に得、このデータを水質の良否データと共にデータ蓄積部に蓄積しておき、画像処理装置に得る現在のデータとデータ蓄積部から得る過去のデータとを水質判定部で比較することにより水質の良否を判定する。そして当該判定結果と水位検出器の検出水位とから取水判定部で取水ゲートのゲート開度及び取水停止/再開を判定し、ゲート制御指令部により取水ゲートを制御する取水制御システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-346426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に係る発明は、現在の河川画像と、データ蓄積部に蓄積した河川画像との比較により、水質の良否度合を判定するものであり、水質が良な状態であるとコンピュータが判定するためのルール、すなわち判定ロジックを人手で作成する必要があった。
【0005】
一つの側面では、河川からの取水を行うにあたり水質の良否を適切に判定することができる情報処理方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一つの側面では、情報処理方法は、水力発電所において河川から水を取水する取水口付近を含むように撮像した画像を取得し、前記取水口付近を含む画像を入力した場合に取水の良否を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの学習済みモデルに、取得した前記取水口付近を含む画像を入力し、前記学習済みモデルから前記判定結果を取得する処理をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
一つの側面では、河川からの取水を行うにあたり水質の良否を適切に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態1に係る取水制御システムの構成例を示す模式図である。
図2】情報処理装置(サーバ)の構成例を示すブロック図である。
図3】学習済みモデルの生成処理に関する説明図である。
図4】学習済みモデルの教師データのサンプルに関する説明図である。
図5】第2学習済みモデルの生成処理に関する説明図である。
図6】情報処理装置(サーバ)の制御部に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。
図7】情報処理装置(サーバ)の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図8】実施形態2(撮像条件)に係る制御部に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。
図9】情報処理装置(サーバ)の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
図10】実施形態3(撮像の時間帯)に係る制御部に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。
図11】情報処理装置(サーバ)の制御部による処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る取水制御システムSの構成例を示す模式図である。貯水式の水力発電所(図示せず)を運用するにあたり、水力発電所に設けられる発電機の水車を回転するための水は、取水口4から取水した河川Rの水が用いられる。図1に示すごとく、河川Rには、当該河川Rの流れに沿うように複数の取水口4を含む設備が設けられている。取水口4よりも下流側には、河川Rの流れ(水流)を堰き止める堰堤5が設けられている。堰堤5は、土砂を排出する排砂門51及び、堰堤5の上流側基部の近傍に設けられる越流部52を含む。
【0010】
水力発電を行わない場合、堰堤5の排砂門51は開かれ(開門)、取水口4は閉められた(閉門)状態となっており、河川Rの水は、堰堤5を通過して下流に流れる。水力発電を行う場合、堰堤5の排砂門51は閉じられ(閉門)、取水口4は開けられた(開門)状態となっており、取水口4付近の河川Rの水は、取水口4を通過し、取水口4の下流側に位置する水力発電所に流れる。
【0011】
取水制御システムは、堰堤5の排砂門51における異物等の有無及び、取水口4付近の河川Rの水の状態に基づき、排砂門51及び取水口4の開閉制御を行うものであり、情報処理装置1、撮像部2及び取水口制御盤3を含む。情報処理装置1と、撮像部2及び取水口制御盤3とは、通信可能に接続されている。
【0012】
撮像部2は、例えばITV(industrial television/工業用テレビ)又はカメラによって構成され、動画を撮像し、又は周期的に静止画を撮像し、撮像した画像(動画又は静止画)を情報処理装置1に出力する。撮像部2は、取水口4付近の河川R及び排砂門51を含むように(フレーム内に納めるように)撮像する。すなわち撮像部2によって撮像された画像において、取水口4付近の河川R及び排砂門51が被写体として納められている。又は、撮像部2は複数台のITVにより構成されており、撮像部2は取水口4を含むように(フレーム内に納めるように)撮像するITV、及び排砂門51を含むように(フレーム内に納めるように)撮像するITVを含むものであってもよい。これらITV夫々は、撮像した画像夫々を情報処理装置1に出力する。
【0013】
情報処理装置1は、種々の情報処理、情報の送受信が可能な情報処理装置1であり、例えばサーバ装置、パーソナルコンピュータ等である。サーバ装置は、単体のサーバ装置のみならず、複数台のコンピュータによって構成されるクラウドサーバ装置、又は仮想サーバ装置を含む。本実施の形態では情報処理装置1がサーバ装置であるものとし、以下の説明では簡潔のためサーバ1と読み替える。サーバ1は、撮像部2が撮像した画像を取得し、当該画像から取水口4付近の河川Rの水の良否、及び堰堤5の排砂門51における異物等の有無を判定する処理を行う。サーバ1は、これら判定を行うにあたり、後述する学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を用いる。サーバ1は、これら判定結果に基づき、取水を開始するための信号を生成し、生成した信号を取水口制御盤3に出力する。
【0014】
取水口制御盤3は、排砂門51を開閉するための排砂門駆動部(図示せず)、及び取水口4を開閉するための取水口駆動部(図示せず)と通信可能に接続してあり、排砂門駆動部及び取水口駆動部に駆動制御信号を出力することにより、排砂門51及び取水口4の開閉制御する。取水口制御盤3は、排砂門51及び取水口4の開閉制御を行いにあたり、情報処理装置1から出力された信号に基づき、駆動制御信号を出力する。
【0015】
図2は、情報処理装置(サーバ1)の構成例を示すブロック図である。サーバ1は、制御部10、記憶部11及び通信部12を含む。
【0016】
制御部10は、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理装置を有し、記憶部11に記憶されたプログラムPを読み出して実行することにより、サーバ1に係る種々の情報処理、制御処理等を行う。又は、制御部10は量子コンピュータ用チップで構成されており、サーバ1は量子コンピュータであってもよい。
【0017】
記憶部11は、SRAM(Static Random Access Memory)、DRAM(Dynamic Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の揮発性記憶領域及び、EEPROM又はハードディスク等の不揮発性記憶領域を含む。記憶部11には、プログラムP及び処理時に参照するデータがあらかじめ記憶してある。記憶部11に記憶されたプログラムPは、サーバ1が読み取り可能な記録媒体(図示せず)から読み出された制御プログラムPを記憶したものであってもよい。また、図示しない通信網に接続されている図示しない外部コンピュータからプログラムPをダウンロードし、記憶部11に記憶させたものであってもよい。記憶部11には、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を構成する実体ファイルが保存されている。これら実体ファイルは、プログラムPの一部位として構成されるものであってもよい。
【0018】
通信部12は、有線又は無線により撮像部2及び取水口制御盤3と通信するための通信モジュール又は通信インターフェイスである。制御部10は、通信部12を介して、撮像部2から出力された画像を取得(受信)し、取水口制御盤3に対し信号を出力(送信)する。
【0019】
図3は、学習済みモデルの生成処理に関する説明図である。サーバ1は、取水口4付近の河川Rを撮像した画像内における当該河川Rの水の濁度、色調、濃淡等に関する画像特徴量を学習するディープラーニング(深層学習)を行うことで、撮像画像を入力とし、当該河川Rの水が取水に適するか否かの良否を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)する。又は、当該撮像画像を入力とし、当該河川Rの水の濁度に関する数値情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)するものであってもよい。例えばニューラルネットワークはCNN(Convolution Neural Network)であり、撮像画像の入力を受け付ける入力層と、河川Rの水の良否を示す情報(識別結果)を出力する出力層と、撮像画像の画像特徴量を抽出する中間層とを有する。
【0020】
入力層は、撮像画像に含まれる各画素の画素値の入力を受け付ける複数のニューロンを有し、入力された画素値を中間層に受け渡す。中間層は、撮像画像の画像特徴量を抽出する複数のニューロンを有し、抽出した画像特徴量を出力層に受け渡す。例えば学習済みモデル101がCNNである場合、中間層は、入力層から入力された各画素の画素値を畳み込むコンボリューション層と、コンボリューション層で畳み込んだ画素値をマッピングするプーリング層とが交互に連結された構成を有し、撮像画像の画素情報を圧縮しながら最終的に画像の特徴量を抽出する。出力層は、取水口4付近の河川Rの水の良否等を判定した判定結果を出力する一又は複数のニューロンを有し、中間層から出力された画像特徴量に基づいて、当該水の良否等すなわち取水口4付近の河川Rの水が取水に適するか否かを判定する。すなわち、学習済みモデル101は、取水口4付近の河川Rの水が取水に適するか否かを判定するものであり、取水口4の開制御を行うために用いられる。
【0021】
なお、本実施の形態では学習済みモデル101がCNNであるものとして説明するが、学習済みモデル101はCNNに限定されず、CNN以外のニューラルネットワーク、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、回帰木など、他の学習アルゴリズムで構築された学習済みモデル101であってよい。
【0022】
サーバ1は、取水口4付近の河川Rを撮像した複数の画像と、各画像における河川Rの水の良否、当該水の濁度又は、当該水の良否及び濁度を示す情報とが、対応付けられた教師データを用いて学習を行う。河川Rの水の良否とは、当該河川Rの水が、水力発電のための取水として適するか否かを示す情報である。河川Rの水の濁度とは、例えばJIS K0101(工業用水試験方法)の規定に基づき決定される水の濁り度を示す値である。
【0023】
水力発電を行うにあたり、水車を回転させる水の濁度が高い場合、当該水に含まれる砂等の不純物との摩擦により、水車が摩耗等により劣化することが懸念される。そこで、取水として適するか否(河川Rの水の良否)の判定は、水の色調、濃淡又は濁度等により行われる。すなわち、濁度が低く透明度の高い水は取水として適しており、濁度が高く透明度の低い水は取水として適していない。このような観点に基づき、教師データは、取水口4付近の河川Rを撮像した画像(問題データ)に対し、取水の良否又は/及び濁度の値(回答データ)が、ラベル付け(関連付けられた)されたデータセットとして構成される。
【0024】
図4は、学習済みモデルの教師データのサンプルに関する説明図である。取水口4付近の河川Rを撮像した画像(問題データ)は、例えば図4に示すようなメスシリンダ等の容器に注いだ水を濁らせ、当該メスシリンダ内の水を撮像した画像に基づき生成するものであってもよい。
【0025】
例えば、取水が否判定となるような濁度(濁度値の大きい)となるように濁らせた水を注いだメスシリンダを用意し、当該メスシリンダ内の水(図4A)を撮像する。又、同じ濁度であっても、ライトを照射することにより照度を変更して、メスシリンダ内の水(図4B)を撮像する。このように照度を異ならせて、取水が否判定となるような濁度の水を撮像し、撮像した画像に対し、取水に適さない(取水:否判定)とする結果をラベル付け(関連付けられた)されたデータセットとして、教師データに用いる。同様に、取水が良判定となるような濁度(濁度値が小さい)の水を注いだメスシリンダを用意し、当該メスシリンダ内の水(図4C)を撮像する。又、同じ濁度であっても、ライトを照射することにより照度を変更して、メスシリンダ内の水(図4D)を撮像する。このように照度を異ならせて、取水が良判定となるような濁度の水を撮像し、撮像した画像に対し、取水に適する(取水:良判定)とする結果をラベル付け(関連付けられた)されたデータセットとして、教師データに用いる。撮像したメスシリンダ内の水の画像を細分化し、細分化した画像を取水口4付近の河川Rに合成することにより、当該濁度となる取水口4付近の河川Rの画像を生成するものであってもよい。サーバ1の制御部10は、入力されたメスシリンダの画像から、メスシリンダ内の水の画像を抽出し、抽出した画像を細分化して所定のサイズからなる複数の画像単位を生成する。制御部10は、生成した画像単位夫々を複製して、画像単位の個数を増加させる共に、増加させた画像単位夫々を取水口4付近の河川Rに合成することにより、当該画像単位、すなわちメスシリンダ内の水の画像を用いた取水口4付近の河川Rの画像を生成する。制御部10は、増加させた画像単位夫々を取水口4付近の河川Rに合成するにあたり、当該画像単位夫々の配置を異ならせることにより、複数パターンの取水口4付近の河川Rの画像を生成するものであってもよい。教師データの生成は、サーバ1が行うとしてあるが、これに限定されない。上記のメスシリンダ内の水の画像による合成を含め、教師データは、サーバ1以外のコンピュータが行うものであってもよい。サーバ1は、他のコンピュータによって生成された教師データを用いて学習するものであってもよい。
【0026】
上述の方法を用いることにより、取水口4付近の河川Rを撮像した教師データが少ない場合であっても、教師データを増加させることができる。例えば、年間を通して、河川Rの水の濁度が高くなる頻度が低い場合であっても、取水として適さない水(否の水)となる教師データを効率的に生成することができる。
【0027】
サーバ1は、教師データに含まれる取水口4付近の河川Rを撮像した画像を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から取水の良否又は濁度の値を示す判定結果(識別結果)を取得する。なお、出力層から出力される識別結果は良否又は濁度の値を離散的に示す値(例えば「0」又は「1」の値)であってもよく、連続的な確率値(例えば「0」から「1」までの範囲の値)であってもよい。
【0028】
サーバ1は、出力層から出力された識別結果を、教師データにおいて画像(問題データ)に対しラベル付けされた情報、すなわち正解値(回答データ)と比較し、出力層からの出力値が正解値に近づくように、中間層での演算処理に用いるパラメータを最適化する。当該パラメータは、例えばニューロン間の重み(結合係数)、各ニューロンで用いられる活性化関数の係数などである。パラメータの最適化の方法は特に限定されないが、例えばサーバ1は誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。サーバ1は、教師データに含まれる各画像について上記の処理を行い、学習済みモデル101を生成する。
【0029】
図5は、第2学習済みモデル102の生成処理に関する説明図である。サーバ1は、排砂門51を撮像した画像内(撮像画像内)における異物等に関する画像特徴量を学習するディープラーニングを行うことで、撮像画像を入力とし、排砂門51における異物等の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)する。排砂門51における異物等とは、排砂門51を閉める際の排砂門51の移動経路上に位置する異物のみならず、堰堤5の越流部52における人間を含むものであってもよい。
【0030】
サーバ1は、排砂門51を撮像した画像内において、排砂門51の移動経路上に体積した土砂等、堰堤5の越流部52における人間に関する画像特徴量を学習するディープラーニングを行う。当該ディープラーニングにより、排砂門51における異物又は堆積した土砂の有無、及び堰堤5の越流部52における人間の有無を示す情報を出力とするニューラルネットワークを構築(生成)することができる。当該異物は、例えば流木、廃棄物を含む。学習済みモデル101と同様に、当該ニューラルネットワークは、例えばCNNであり、排砂門51を撮像した画像の入力を受け付ける入力層と、異物等の有無を示す情報(識別結果)を出力する出力層と、撮像画像の画像特徴量を抽出する中間層とを有する。出力層は、排砂門51における異物又は堆積した土砂の有無、及び堰堤5の越流部52における人間の有無を判定した判定結果を出力する一又は複数のニューロンを有し、中間層から出力された画像特徴量に基づいて、排砂門51における異物又は堆積した土砂の有無、及び堰堤5の越流部52における人間の有無を判定する。すなわち、第2学習済みモデルは、排砂門51における異物等の有無を判定するものであり、排砂門51の閉制御を行うために用いられる。
【0031】
サーバ1は、排砂門51を撮像した複数の画像と、各画像における排砂門51の移動経路上における異物の有無、及び堰堤5の越流部52における人間の有無を示す情報とが対応付けられた教師データを用いて学習を行う。
【0032】
排砂門51を閉めるにあたり、排砂門51の移動経路上に土砂等の異物が堆積している場合、排砂門51を完全に閉めることができないものとなる。また、堰堤5の越流部52にて、例えば釣人等が居る場合、排砂門51を閉めると堰堤5の上流側の水位が高くなるため、排砂門51を閉めることができないものとなる。このような観点に基づき、教師データは、排砂門51を撮像した画像(問題データ)に対し、異物及び人間の有無(回答データ)が、ラベル付け(関連付けられた)されたデータセットとして構成される。
【0033】
サーバ1は、教師データに含まれる、排砂門51を撮像した画像を入力層に入力し、中間層での演算処理を経て、出力層から異物及び人間の有無を示す識別結果を取得する。サーバ1は、学習済みモデル101と同様に、誤差逆伝播法を用いて各種パラメータの最適化を行う。サーバ1は、教師データに含まれる各画像について上記の処理を行い、第2学習済みモデル102を生成する。
【0034】
取水口4及び堰堤5は、全国の河川Rに複数設けられている。サーバ1は、全国の河川Rに設けられている取水口4及び堰堤5毎に、別々の学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を構築する。又は、サーバ1は、全国の河川Rに複数設けられている取水口4及び堰堤5に共通する学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を構築するものであってもよい。
【0035】
図6は、情報処理装置(サーバ1)の制御部10に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行することにより、通信部12を介して、撮像部2から受信した画像を取得する取得部103として機能する。制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行、又は学習済みモデル101を構成する実体ファイルを読み出すことにより、学習済みモデル101として機能する。制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行、又は第2学習済みモデル102を構成する実体ファイルを読み出すことにより、第2学習済みモデル102として機能する。制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行することにより、学習済みモデル101又は第2学習済みモデル102から出力された判定結果に基づき、取水口制御盤3へ出力する信号を生成する信号生成部104として機能する。上述のごとく、制御部10は、プログラムPを実行等することにより、取得部103、学習済みモデル101、第2学習済みモデル102及び信号生成部104として機能するものであり、図6においては、これら部位を機能部として示している。
【0036】
取得部103により、取水口4付近の河川Rを含む画像及び堰堤5を含む画像を取得することによって、制御部10に、これら画像が入力される。制御部10は、これら画像を、例えばプログラムPの引数として、当該プログラムPを実行することにより、取得部103として機能する。
【0037】
取得部103は、取水口4付近の河川Rを含む画像及び堰堤5を含む画像に対応するように2つとして記載しているが、これに限定されない。取得部103を1つとし、取水口4付近の河川R及び堰堤5の双方を含む画像を取得し、取得した画像を例えばフィルタ処理を行い、取水口4付近の河川Rを含む部位の画像と、堰堤5を含む部位の画像とに分割し、分割した画像夫々を対応する学習済みモデル101、第2学習済みモデル102に入力するものであってもよい。又は、取水口4付近の河川R及び堰堤5の双方を含む画像を、学習済みモデル101、第2学習済みモデル102に入力するものであってもよい。
【0038】
取得部103に入力される画像は、撮像部2が撮像した画像がそのまま入力される場合に限定されない。取得部103に入力される画像は、前処理として、撮像部2が撮像した画像における取水口4付近の河川Rの領域、又は堰堤5の領域を切り出し、当該切り出した画像であってもよい。
【0039】
取得部103が取得した取水口4付近の河川Rを含む画像は、学習済みモデル101に入力される。学習済みモデル101は、入力された取水口4付近の河川Rを含む画像に応じて、河川Rの水の良否、当該水の濁度の値又は、当該良否及び濁度の値に関する情報(判定結果)を、信号生成部104に出力する。
【0040】
取得部103が取得した堰堤5を含む画像は、第2学習済みモデル102に入力される。第2学習済みモデル102は、入力された堰堤5を含む画像に応じて、排砂門51における異物又は堆積した土砂の有無、及び堰堤5の越流部52における人間の有無に関する情報(判定結果)を、信号生成部104に出力する。
【0041】
信号生成部104は、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102から出力された情報(判定結果)に基づき、取水口制御盤3に出力(送信)する信号を生成する。信号生成部104が生成する信号は、排砂門51を閉にする信号、及び取水口4を開にする信号を含む。
【0042】
信号生成部104は、第2学習済みモデル102から出力された情報(判定結果)が排砂門51における異物等が無い及び越流部52に人間がいない場合、排砂門51を閉にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力する。信号生成部104は、複数回にわたり、第2学習済みモデル102から出力された情報(判定結果)が排砂門51における異物等が無い及び越流部52に人間がいない場合、排砂門51を閉にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力するものであってもよい。取得部は撮像部から入力される画像を周期的に取得している。そこで、連続して所定回数取得した画像により、例えば第2学習済みモデル102から出力された情報(判定結果)の全てが、排砂門51における異物等が無い及び越流部52に人間がいない場合、信号生成部104は、排砂門51を閉にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力するものであってもよい。又は、連続して所定回数取得した画像により、例えば第2学習済みモデル102から出力された情報の8割以上が、排砂門51における異物等が無い及び越流部52に人間がいない場合、信号生成部104は、排砂門51を閉にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力するものであってもよい。
【0043】
更に信号生成部104は、第2学習済みモデル102から出力された情報(判定結果)に基づき、取水口制御盤3の管理者又は越流部52に居る人間に対し報知するための信号を生成し、当該信号を報知装置(図示せず)に出力するものであってもよい。報知装置は、例えば取水口制御盤3の管理者へ報知するためのディスプレイ等の表示装置及び、越流部52に居る人間に対し報知するためのスピーカ等の音声発生装置を含む。第2学習済みモデル102は、堰堤5(排砂門51)を含むように撮像した画像が入力された場合、排砂門51における異物等の有無、及び越流部52における人間の有無に関する判定結果を信号生成部104に出力する。信号生成部104は、排砂門51における異物等が有りとする判定結果が出力された場合、取水口制御盤3の管理者へ報知するための表示装置に信号を出力する。信号生成部104は、越流部52における人間が有りとする判定結果が出力された場合、越流部52に居る人間に対し報知するための音声発生装置に信号を出力する。第2学習済みモデル102から出力される判定結果の内容に応じて異なる信号を生成し出力することにより、排砂門51を閉門するにあたり適切な対応を行うことができる。
【0044】
信号生成部104は、排砂門51が閉められた状態において、学習済みモデル101から出力された情報(判定結果)が河川Rの水の良である場合、又は学習済みモデル101から出力された当該水の濁度の値が記憶部11に予め記憶されている所定値よりも小さい場合、取水口4を開にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力する。信号生成部104は、複数回にわたり、学習済みモデル101から出力された情報(判定結果)が河川Rの水の良である場合、又は学習済みモデル101から出力された当該水の濁度の値が記憶部11に予め記憶されている所定値よりも小さい場合、取水口4を開にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力するものであってもよい。すなわち、信号生成部104は、排砂門51を閉にする信号を生成する場合と同様に、連続して所定回数取得した画像により、例えば学習済みモデル101から出力された情報(判定結果)の全てが河川Rの水の良である等の場合、又は出力された情報(判定結果)の8割以上が河川Rの水の良である等の場合、取水口4を開にする信号を生成し、当該信号を取水口制御盤3に出力するものであってもよい。
【0045】
図7は、情報処理装置(サーバ1)の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、撮像部2が撮像した排砂門51の画像を取得する(S10)。当該画像は、撮像部2によって、排砂門51を撮像、又は排砂門51を含むように取水口4付近を撮像した画像である。従って、当該画像には、被写体として排砂門51が納められている。
【0046】
制御部10は、取得した画像を第2学習済みモデル102に入力し、排砂門51における異物等の有無の判定結果を取得する(S11)。
【0047】
制御部10は、第2学習済みモデル102から取得した判定結果に基づき、排砂門51における異物等が無いかの判定処理(判定結果に基づき分岐処理)を行う(S12)。
【0048】
異物等が有る場合(S12:NO)、すなわち第2学習済みモデル102から出力された判定結果が、排砂門51における異物等がある又は越流部52に人がいる場合、制御部10は、再度S10の処理を実行すべく、ループ処理を行う。
【0049】
異物等が無い場合(S12:YES)、すなわち第2学習済みモデル102から出力された判定結果が、排砂門51における異物等がない及び越流部52に人がいない場合、制御部10は、排砂門51を閉にする信号を出力する(S13)。サーバ1の制御部10から出力された排砂門51を閉にする信号に基づき、当該信号を受信した取水口制御盤3は、排砂門51を閉にする。排砂門51が閉(閉門)にされることにより、排砂門51及び取水口4付近の河川Rの水位が上昇する。
【0050】
制御部10は、撮像部2が撮像した取水口4付近の画像を取得する(S14)。当該画像は、撮像部2によって、取水口4付近を撮像した画像である。従って、当該画像には、被写体として取水口4付近の河川Rが納められている。上述のごとく、撮像部2は1台のカメラによって構成され、当該カメラが排砂門51及び取水口4付近の河川Rを撮像するものであってもよい。この場合、単一の画像にて、排砂門51及び取水口4付近の河川Rが撮像される(フレーム内に納める)ものとなる。又は撮像部2は複数台のカメラにより構成されており、制御部10は、取水口4を含むように(フレーム内に納めるように)撮像するカメラから画像を取得するものであってもよい。
【0051】
制御部10は、取得した画像を学習済みモデル101に入力し、河川Rの水の良否の判定結果を取得する(S15)。
【0052】
制御部10は、学習済みモデル101から取得した判定結果に基づき、河川Rの水は良であるかの判定処理(判定結果に基づき分岐処理)を行う(S16)。
【0053】
河川Rの水は良でない(S16:NO)、すなわち学習済みモデル101からの判定結果が取水に適さないと判定(否判定)された場合、又は学習済みモデル101から出力された水の濁度が予め記憶部11に記憶してある所定値よりも大きい場合、制御部10は再度S14の処理を実行すべくループ処理を行う。
【0054】
河川Rの水は良である(S16:YES)、すなわちすなわち学習済みモデル101からの判定結果が取水に適すると判定(良判定)された場合、又は学習済みモデル101から出力された水の濁度が予め記憶部11に記憶してある所定値以下の場合、制御部10は、取水口4を開にする信号を出力する(S17)。
【0055】
サーバ1から出力された取水口4を開にする信号に基づき、当該信号を受信した取水口制御盤3は、取水口4を開にする。取水口4が開(開門)にされることにより、取水口4から流れでる河川Rの水によって発電機の水車が回転され、水力発電が開始される。
【0056】
本実施形態では、制御部10は、撮像部2から取得した画像に基づき、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を用いて、信号を生成し取水口制御盤3に当該信号を出力するとしたが、これに限定されない。制御部10は、撮像部2から取得した画像を用いて教師データを更に作成し、当該教師データを用いて再学習を行うものであってもよい。再学習を行うことにより、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102の判定の精度を更に向上させることができる。
【0057】
本実施形態によれば、取水口4付近を含む画像を入力した場合に取水の良否を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの学習済みモデル101を用いることにより、河川Rからの取水を行うにあたり水質の良否を適切に判定することができる。又、学習済みモデル101による取水の良否の判定を含む情報処理方法を、貯水式の水力発電所に適用することにより、貯水した水の濁り度合いを適切に判定することができる。
【0058】
本実施形態によれば、排砂門51を含む画像を入力した場合に、前記排砂門51における異物又は堆積土砂の有無を判定した判定結果を出力するよう深層学習により学習済みの第2学習済みモデル102を用いる。当該第2学習済みモデル102を用いることにより、河川Rからの取水開始の準備動作として閉動作が必要となる排砂門51において、当該排砂門51の閉動作を阻害する異物又は堆積土砂の有無を適切に判定することができる。又、堰堤5を含む画像を入力した場合に更に、前記堰堤5に設けられた越流部52における人間の有無を判定した判定結果出力するよう深層学習により学習済みの第2学習済みモデル102を用いることにより、越流部52における人間の有無を適切に判定することができる。
【0059】
本実施形態によれば、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を備える取水制御システムにより、適切に排砂門51における異物又は堆積土砂の有無、及び取水の良否を判定することができ、効率的に取水制御を行う取水制御システムを提供することができる。
【0060】
(実施形態2)
図8は、実施形態2(撮像条件)に係る制御部10に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。本実施形態では、サーバ1は、制御部10における機能部として、撮像条件確定部106及び切換部105を含み、撮像条件として例えば撮像時期に基づき、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102夫々を切換える点で、実施形態1と異なる。なお、実施形態1と重複する内容については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0061】
制御部10は、時計機能及びカレンダー機能を備え、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行することにより、撮像条件確定部106として機能する。制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行、又は学習済みモデル101を構成する実体ファイルを読み出すことにより、実施形態1と同様に学習済みモデル101として機能する。
【0062】
学習済みモデル101は、撮像時期に応じて異なる画像によって学習された複数の学習済みモデル101を含む。当該複数の学習済みモデル101とは、例えば3月から8月に撮像された画像に基づき学習された学習済みモデル101(3月~8月)及び、9月から2月に撮像された画像に基づき学習された学習済みモデル101(9月~2月)である。
【0063】
制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行、又は第2学習済みモデル102を構成する実体ファイルを読み出すことにより、第2学習済みモデル102として機能する。
【0064】
第2学習済みモデル102は、撮像時期に応じて異なる画像によって学習された複数の第2学習済みモデル102を含む。当該複数の第2学習済みモデル102とは、例えば3月から8月に撮像された画像に基づき学習された第2学習済みモデル102(3月~8月)及び、9月から2月に撮像された画像に基づき学習された第2学習済みモデル102(9月~2月)である。
【0065】
制御部10は、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行することにより、撮像条件確定部106が確定した撮像時期(撮像条件)に基づき、取得部103が取得した画像が入力される学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102切換える切換部105として機能する。
【0066】
撮像条件確定部106は、現時点における月日に基づき、撮像条件である撮像時期を確定する。上述のごとく、制御部10はカレンダー機能を備えているので、現時点の月日又は月を取得することができる。撮像条件確定部106は、撮像時期に関する情報を、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102夫々に対応する切換部105夫々に入力する。
【0067】
切換部105は入力された撮像時期(撮像条件)に基づき、当該時期に対応した学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換える。これにより、取得部103が取得した画像は、当該切換られた学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に入力される。例えば、現時点の月が5月である場合、切換部105は、3月から8月の画像(春夏画像)により学習された学習済みモデル101(3月~8月)及び第2学習済みモデル102(3月~8月)切換える。例えば、現時点の月が12月である場合、切換部105は、9月から2月の画像(秋冬画像)により学習された学習済みモデル101(9月~2月)及び第2学習済みモデル102(9月~2月)切換える。
【0068】
撮像時期に応じ異なる画像によって学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102は、このような半期単位のものに限定されず、各月毎の画像によって学習された各月夫々に対応した学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102であってもよい。
【0069】
本実施形態によれば、画像の撮像時期(撮像条件)に応じて、当該画像を異なる学習済みモデル101に入力して判定結果を取得するため、画像の撮像条件に対応した適切な学習済みモデル101を用いて、水質の良否を精度よく判定することができる。
【0070】
図9は、情報処理装置(サーバ1)の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、撮像条件を確定し、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を切換える(S20)。制御部10は、撮像条件として現時点(撮像時点)の月又は月日を、カレンダー機能を発揮することにより取得する。現時点の月に応じて、いずれかの学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を用いるかを決定し、当該月に対応した学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に、撮像部2が撮像した画像が入力されるように切換える。このような学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に対する切換処理は、例えばケース文又はスイッチ文等を用いた条件分岐を行うプログラムPの内部処理により実行される。
【0071】
制御部10は、実施形態1の処理S10からS17と同様に、S21からS28までの処理を行う。なお、S22における第2学習済みモデル102及びS26の学習済みモデル101は、S20の処理にて切換えられた学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102であることは、言うまでもない。
【0072】
撮像時期に応じた学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換え、当該切換えた学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を用いることにより、精度よく河川Rの水の良否及び、排砂門51における異物等の有無(越流部52の人の有無を含む)の判定結果を取得することができる。本実施形態において、撮像時期に応じて学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を切換えるとしたが、これに限定されない。制御部10は、撮像時期に応じて、学習済みモデル101のみを切換えるものであってもよい。
【0073】
(実施形態3)
図10は、実施形態3(撮像の時間帯)に係る制御部10に含まれる機能部を例示する機能ブロック図である。本実施形態では、サーバ1は、制御部10における機能部として、撮像条件確定部106及び切換部105を含み、撮像条件として例えば撮像時刻に基づき、学習済みモデル101、第2学習済みモデル102及び、これら学習済みモデル101又は第2学習済みモデル102に入力される画像を切換える点で、実施形態1と異なる。なお、実施形態1と重複する内容については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0074】
実施形態3の制御部10は、実施形態2と同様に時計機能及びカレンダー機能を備え、記憶部11に記憶してあるプログラムPを実行することにより、撮像条件確定部106及び切換部105として機能する。
【0075】
学習済みモデル101は、可視光の画像により学習された学習済みモデル101(可視光)と、赤外線の画像により学習された学習済みモデル101(赤外線)とを含む。
【0076】
第2学習済みモデル102は、可視光の画像により学習された第2学習済みモデル102(可視光)と、赤外線の画像により学習された第2学習済みモデル102(赤外線)とを含む。
【0077】
撮像部2は、可視光の画像(可視光画像)を撮像するカメラ(可視光カメラ)及び赤外線の画像(赤外線画像)を撮像するカメラ(赤外線カメラ)を含む。又は、撮像部2は、可視光画像及び赤外線画像の両画像を併せて撮像することができる複合カメラ(ハイブリットカメラ)であってもよい。従って、取得部103には、取水口4付近の河川R及び堰堤5の可視光画像及び赤外線画像が入力される。
【0078】
撮像条件確定部106は、現時点における時刻に基づき、撮像条件である撮像時刻を確定する。上述のごとく、制御部10は時計機能を備えているので、現時点の時刻を取得することができる。像条件確定部は、撮像時刻に関する情報を、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102夫々に対応する切換部105夫々に入力する。
【0079】
切換部105は入力された撮像時刻(撮像条件)に基づき、当該時刻に対応したいずれかの画像(可視光画像又は赤外線画像)及び、当該画像に対応した学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換える。例えば、撮像時刻が昼の時間帯の場合、切換部105は、可視光画像及び、可視光画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換える。撮像時刻が夜の時間帯の場合、切換部105は、赤外線画像及び、赤外線画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換える。
【0080】
撮像条件確定部106は撮像時刻を確定し、切換部105は入力された撮像時刻に基づき、画像、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換えるとしてが、これに限定されない。撮像条件確定部106は、例えば、サーバ1に通信可能に接続されている照度計からの出力値(照度)に基づき、現時点での昼夜を判定し、又は当該照度と記憶部11に予め記憶している所定値と比較し、撮像条件を確定するものであってもよい。現時点が昼、又は照度が所定値よりも大きい場合、切換部105は、可視光画像及び、可視光画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換える。現時点が夜、又は照度が所定値以下の場合、切換部105は、赤外線画像及び、赤外線画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に切換えるものであってもよい。
【0081】
図11は、情報処理装置(サーバ1)の制御部10による処理手順の一例を示すフローチャートである。制御部10は、撮像条件を確定し、入力される画像、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102を切換える(S30)。制御部10は、例えば、撮像条件として現時点(撮像時点)の時刻を、時計機能を発揮することにより取得する。又は、制御部10は、通信可能に接続された照度計からの出力値(照度)を取得する。制御部10は、例えば、取得した時刻(撮像時刻)又は照度に基づき、撮像時点の昼夜を判定し、撮像条件を確定する。撮像時点が昼の時間帯である場合、制御部10は、入力される画像を可視光画像に切換えると共に、当該可視光画像が、可視光画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に入力されるように切換える。撮像時点が夜の時間帯である場合、制御部10は、入力される画像を赤外線画像に切換えると共に、当該赤外線画像が、赤外線画像により学習された学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102に入力されるように切換える。これら切換は、実施形態2と同様に、例えばケース文又はスイッチ文等を用いた条件分岐を行うプログラムPの内部処理により実行される。
【0082】
制御部10は、実施形態1の処理S10からS17と同様に、S31からS38までの処理を行う。なお、S32における画像、第2学習済みモデル102及び、S36の画像と学習済みモデル101は、S30の処理にて切換えられた画像、学習済みモデル101及び第2学習済みモデル102であることは、言うまでもない。
【0083】
撮像条件は、例えば画像が撮像された時間帯よって異なる条件となるところ、制御部10は、取水口4付近を含む画像が撮像された時間帯に応じて可視光画像又は赤外線画像を取得する。従って、時間帯として、例えば夜間は赤外線画像を取得することにより、可視光画像では露光不足となる場合であっても、学習済みモデル101に適切に判定させるための画像を取得することができる。これら可視光画像又は赤外線画像の別に応じて学習済みモデル101を切り換えて入力するため、学習済みモデル101夫々に適切に対応した可視光画像又は赤外線画像を入力することができ、水質の良否を適切に判定することができる。
【0084】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0085】
S 取水制御システム
1 サーバ(情報処理装置)
10 制御部
101 学習済みモデル
102 第2学習済みモデル
103 取得部
104 信号生成部
105 切換部
106 撮像条件確定部
11 記憶部
12 通信部
P プログラム
2 撮像部
3 取水口制御盤
4 取水口
5 堰堤
51 排砂門
52 越流部
R 河川
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11