(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】蓋体及びこれを用いた包装容器
(51)【国際特許分類】
B65D 43/16 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B65D43/16 200
(21)【出願番号】P 2019026686
(22)【出願日】2019-02-18
【審査請求日】2022-01-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001276
【氏名又は名称】弁理士法人小笠原特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】的場 智加
(72)【発明者】
【氏名】和田 潔
(72)【発明者】
【氏名】佐野川 達也
(72)【発明者】
【氏名】服部 久志
【審査官】植前 津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-347804(JP,A)
【文献】特開2018-167852(JP,A)
【文献】特開平10-305860(JP,A)
【文献】特開2014-114017(JP,A)
【文献】特開2017-056947(JP,A)
【文献】特開2014-133567(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/00-55/16
B65D 83/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体の開口へ取り付け可能であり、前記容器本体の内容物の取り出し口が形成された枠部と、
前記枠部に取り付けられ、前記取り出し口を閉塞した閉状態と、閉塞しない開状態との間でヒンジ機構によって搖動可能な開閉蓋と、
前記開閉蓋の閉状態において、前記ヒンジ機構の近傍において前記開閉蓋と前記枠部の間で前記ヒンジ機構に向かって屈曲部が突出するように折り曲げられて取り付けられた板ゴムとを含む蓋体であって、
前記枠部は、前記板ゴムの移動を規制する規制部を備え、
前記開閉蓋は、前記閉状態において、折り曲げられた前記板ゴムの一端縁に所定の押圧で当接するように、前記板ゴムに対向する面から突出する当接部を備え、
前記板ゴムは、前記開閉蓋が閉状態から開状態になる際に、折り曲げられた状態から平坦に伸ばされた状態に向かって変形しながら
前記開閉蓋を押すとともに、前記当接部を前記開閉蓋の面方向に押すことで、前記開閉蓋を前記開状態となる方向に付勢することができる、
蓋体。
【請求項2】
前記開閉蓋は、
前記板ゴムに対向する面から突出し、前記板ゴムに形成された孔に挿通される柱状の突出部を備え、
前記突出部は、
前記開閉蓋が前記閉状態となる際に、前記板ゴムの前記屈曲部が前記ヒンジ機構に向かって突出するように折り曲げられるように、前記板ゴムの折り曲げられる方向を規制する、
請求項1に記載の蓋体。
【請求項3】
前記枠部の前記容器本体とは反対側の面上に搖動可能に取り付けられた押しボタンをさらに備え、
前記押しボタンは、
板状の押圧部と、
前記開閉蓋に設けられた爪部を嵌め込むことができる開口と、
前記押圧部の前記枠部に対向する面に設けられ、前記押圧部を前記枠部から離れる方向に付勢するバネ部とを含み、
前記開口に前記開閉蓋の前記爪部を嵌め込むことにより前記開閉蓋を前記閉状態に維持し、前記押圧部を前記枠部に近づくように押圧して前記爪部を前記開口から外すことにより前記開閉蓋を前記開状態にすることができる、
請求項1または2に記載の蓋体。
【請求項4】
前記容器本体の前記開口は、一平面上にあり、外周からフランジが延出し、
前記枠部は、前記枠部を前記容器本体の前記開口に被せ、外縁に設けた係合爪を前記フランジに当接させながら乗り越えさせることにより、前記平面に垂直な方向に係合させることができ、
前記係合爪は、前記フランジに対向する面が、前記平面と平行である、
請求項1から3のいずれかに記載の蓋体。
【請求項5】
開口を有する容器本体と、
前記容器本体の開口に取り付けられた請求項1から4のいずれかに記載の蓋体とを含む、包装容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の取り出し口をワンタッチで開閉できる蓋体およびこれを用いた包装容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
容器本体の開口部に取り付けられ、押しボタンを押すことにより、開方向に付勢された開閉蓋をワンタッチで開くことができるようにした蓋体が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、支持軸を介して開閉自在に取り付けられた開閉蓋を備えた、容器本体の上端開口部に嵌合、固定される蓋体が開示されている。開閉蓋は、閉状態において、金属製の捻じりバネにより開方向に付勢される。また、開閉蓋は前端部に設けた係止片により蓋体と係合する。蓋体の使用者は、開閉蓋の係止片周辺を指先等で押圧することで蓋体の係止状態を解除して、開閉蓋を片手で開くことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の蓋体のように付勢部材に金属製のバネを用いた場合には、付勢力が大きくなりすぎることにより、開閉蓋が勢いよく開いてしまうという問題があった。また、開閉蓋が勢いよく開くことを防ぐために、折り曲げた板ゴムにより付勢力を発生させる構造が知られている。しかしながら、このような構造の場合、折り曲げた板ゴムは、開閉蓋がある程度開いた状態になると付勢力が低下してしまう。このため、蓋体の係止状態を解除しても、開閉蓋が開く勢いが途中で低下してしまうという問題があった。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、開閉蓋を好適な勢いで開かせることができる蓋体及びこれを用いた包装容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の一局面は、容器本体の開口へ取り付け可能であり、容器本体の内容物の取り出し口が形成された枠部と、枠部に取り付けられ、取り出し口を閉塞した閉状態と、閉塞しない開状態との間でヒンジ機構によって搖動可能な開閉蓋と、開閉蓋の閉状態において、ヒンジ機構の近傍において開閉蓋と枠部の間でヒンジ機構に向かって屈曲部が突出するように折り曲げられて取り付けられた板ゴムとを含む蓋体であって、枠部は、板ゴムの移動を規制する規制部を備え、開閉蓋は、閉状態において、折り曲げられた板ゴムの一端縁に所定の押圧で当接するように、板ゴムに対向する面から突出する当接部を備え、板ゴムは、開閉蓋が閉状態から開状態になる際に、折り曲げられた状態から平坦に伸ばされた状態に向かって変形しながら、開閉蓋を押すとともに、当接部を開閉蓋の面方向に押すことで、開閉蓋を開状態となる方向に付勢することができる、蓋体である。
【0008】
また、本発明の他の局面は、開口を有する容器本体と、容器本体の開口に取り付けられた上記の蓋体とを含む、包装容器である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、開閉蓋を好適な勢いで開かせることができる蓋体及びこれを用いた包装容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態に係る包装容器の平面図及び正面図
【
図2】本発明の一実施形態に係る蓋体(開状態)の三面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
図を参照して本発明の一実施形態に係る蓋体300及びこれを用いた包装容器100について説明をする。
図1は、本発明の一実施形態に係る容器本体200と、容器本体200に取り付けられた閉状態の蓋体300とを含む包装容器100を示す平面図(
図1の(a))及び正面図(
図1の(b))である。
図2は、開状態の蓋体300の平面図(
図2の(a))、正面図(
図2の(b))及び側面図(
図2の(c))である。
図3は、
図1の点線で囲んだA部拡大図である。
【0012】
なお、以下では、
図1に矢印で示すように、前後左右上下の各方向は、閉状態の蓋体300を取り付けた正立状態にある包装容器100における前後左右上下の各方向として予め定義し、この定義に従って説明する。また、
図1、
図2では、要部の形状を明確にするため、適宜部材の一部を透過して示す。また、蓋体300の閉状態とは、後述する取り出し口318を開閉蓋320により閉塞した状態をいい、開状態とは、取り出し口318が閉塞されていない、すなわち開放された状態をいう。
【0013】
(包装容器及び容器本体)
包装容器100は、
図1に示すように、開口を有した容器本体200と、容器本体200の開口に取り付けられる蓋体300とを備える。容器本体200は、一例として略直方形の箱状に形成され、開口面は正立状態で水平となる。また、
図3に示すように、開口の外周端縁から外方に向かって水平に伸びる頂面211と、外方に拡がる外周面212と、さらに水平方向に延出した端縁213とを含むフランジ210を有する。容器本体200は、例えば、樹脂や紙等の材質を用いて、真空成型や射出成形等の周知の技術により形成することができる。
【0014】
なお、容器本体200の開口の外周縁に形成するフランジの形状は限定されず、例えば
図4に示す変形例のように、開口の外周縁から水平に延伸する平面状に形成してもよい(フラットフランジ)。このようなフランジは、容器本体200を紙やポリエチレンテレフタレート(PET)を用いて形成した場合には、
図4の(a)に示すように、材料の端縁を折り曲げて形成できる。また、射出成形や真空成形で形成する場合には、
図4の(b)に示すように、端縁を折り曲げずに形成してもよい。
【0015】
(蓋体)
蓋体300は、枠部310と、開閉蓋320と、押しボタン330と、板ゴム340とを含んで構成される。
図1に示すように、蓋体300は枠部310により容器本体200に固定される。開閉蓋320は、閉状態と、開状態との間でヒンジ機構350によって搖動可能に枠部310に取り付けられている。ヒンジ機構350は、一例として開閉蓋320から突出する2つの軸部と、枠部310に形成され開閉蓋320の軸部を挿入可能な凹部とにより構成される。なお、蓋体300では、枠部310と開閉蓋320とを別体に形成したが一体に成形してもよい。また、ヒンジ機構350は、開閉蓋320を枠部310に搖動可能に取り付けることができれば形態は限定されず、枠部310と開閉蓋320とが一体に成形される場合には、枠部310と開閉蓋320とを連接する薄肉部により構成してもよい。枠部310及び開閉蓋320の材質としては、ポリプロピレン又は高密度ポリエチレン等の樹脂を用いることができ、押しボタン330の材質としてはポリプロピレン、高密度ポリエチレン又はABS等の樹脂を用いることができる。
【0016】
<枠部>
枠部310は、容器本体200の開口に蓋体300を固定するための部材である。枠部310は、天面部311と、外周壁312aと、コンタクトリング312bと、インナーリング312cと、内周壁312dと、後方側凹部313と、前方側凹部314と、係合爪315と、取外し用つまみ316とを備える。
【0017】
天面部311は、
図1、
図2に示すように、平面視において、略中央に矩形状の開口である取り出し口318を有する額縁形状の板状部材である。天面部311には、
図3に示すように、外縁から内縁に向かって順に、外周壁312aと、コンタクトリング312bと、インナーリング312cと、内周壁312dとが垂設されている。コンタクトリング312bは、蓋体300を容器本体200に取り付けた状態で、先端が容器本体200のフランジ210の頂面211に当接するように形成されている。また、インナーリング312cは、蓋体300を容器本体200に取り付けた状態で、外周面の少なくとも一部が容器本体200の開口内周面と対向するように形成されている。
【0018】
後方側凹部313は、枠部310に板ゴム340を固定する面であり、枠部310の後方側において天面部311の一部を所定長さにわたって凹ませて形成される。板ゴム340を取り付けた箇所周辺の平面図(a)、正面図(b)及び側面図(c)を
図5に示す。なお、
図5では、要部の形状を明確にするため、適宜部材の一部を透過して示す。
図5に示すように、後方側凹部313の上面には、板ゴム340の移動を規制する板ゴム保持軸313a(請求項の規制部に相当)が形成されている。板ゴム保持軸313aは、円柱形状の軸部313bと、軸部313bの先端に設けられた鍔状の抜け防止部313cとを含む。後方側凹部313の左右両端のそれぞれにおいて上方に向かって延設され天面部311と連接する側壁面には、開閉蓋320に設けられた軸部を挿入してヒンジ機構350を構成する凹部(軸受け部)が形成されている。
【0019】
前方側凹部314は、枠部310に押しボタン330を取り付ける箇所であり、枠部310の前方側において天面部311の一部を所定長さにわたって凹ませて形成される。前方側凹部314の左右両端のそれぞれにおいて上方に向かって延設され天面部311と連接する側壁面には、後述する押しボタン330に設けられた軸部335を嵌め込み可能な凹部(軸受け部)314aが形成されている。
【0020】
係合爪315は、蓋体300を容器本体200に固定するために設けられる。
図2に示すように、係合爪315は、外周壁312aの左右の下端縁に取り出し口318側へ向かって突出するように、前後方向へ所定幅にわたって形成される。
図3に示すように、係合爪315の上方側の面は、容器本体200への取り付け時に容器本体200の開口面と平行になるように、すなわち取り付け時に水平になるように形成される。これにより、容器本体200に固定された蓋体300を、容器本体200の鉛直上方に向かって引き離そうとしても、枠部310の外周壁312aが拡がることで、フランジ210を容器本体200の内方(開口側)に押し付けて(なでつけて)しまうことにより枠部310が外れてしまう方向に力が作用しにくい。このため枠部310が容器本体200から容易に外れてしまうことを抑制できる。
【0021】
係合爪315の下方側の面は、上方に向かって傾斜するテーパー形状に形成される。これにより、枠部310を容器本体200の上方から被せて取り付ける際に、テーパー形状で容器本体210のフランジ210を内方に向かって押し付ける(なでつける)ことができるため、蓋体300のスムーズな取り付けが可能になる。テーパー形状の角度は、例えば3°~5°程度とすることができる。係合爪315をこのような構造にすることで、比較的剛性の低い真空成型により製造された容器本体や紙製の容器本体にも確実に係合させて取り付けることができる。
【0022】
係合爪315は、
図2に示すように、枠部310に設けられた外周壁312aの左右端における前後方向にわたって所定の間隔を設けて2つ形成されてもよいし、1つであってもよい。係合爪315を所定の隙間を設けて2つ形成することにより、枠部310の左右方向端縁における剛性を低く抑えることができるため、容器本体200から蓋体300を取り外す際に蓋体300を容易に変形させることができる。このため、わずかな力で蓋体300を容器本体200からの取り外すことが可能になる。したがって、取り付けやすく取りはずし易い、リユースに適した蓋体300とすることができる。
【0023】
取外し用つまみ316は、容器本体200に取り付けられた蓋体300をさらに取り外し易くするために設けられる。取外し用つまみ316は、
図1、
図2に示すように、外周壁312aを挟んで係合爪315と対向するように、外周壁312aの左右の下端縁から枠部310の外方へ向かって突出するように形成される。蓋体300の使用者は、容器本体200から蓋体300を取り外す際に、取外し用つまみ316を掴んで外周壁312aを外方に向かってわずかに変形させる。外周壁312aが外方に向かって変形することにより、係合爪315のフランジ210へ当接が外れるため、蓋体300を容器本体200から容易に取り外すことができる。
【0024】
枠部310の形成に射出成形を用いる場合、係合爪315の成形を容易にするために、一例として
図2に示すように、天面部311の、係合爪315の上方に位置する箇所に開口311aを設けてもよい。開口311aを設けない場合、係合爪315はアンダーカット形状となるため、係合爪315を形成するための金型をスライド式にする等の対策が必要となり、金型が複雑な構造となるおそれがある。これに対して、開口311aを設けることで、
図6に示すように、係合爪315を形成するための金型500を上下方向へ抜くことができ、金型をシンプルな構造とすることができる。また、開口311aを設けることにより係合爪315近傍の天面部311の剛性を低く抑えることができるため、容器本体200から蓋体300を取り外す際に、係合爪315周辺が変形しやすくなり、蓋体300を取り外し易くすることができる。
【0025】
<開閉蓋>
開閉蓋320は、天板321と、周壁323と、連接部324とを備える。
【0026】
天板321は、蓋体300の閉状態において枠部310の取り出し口318に嵌まることで、取り出し口318を上方から覆って閉塞する板状部材であり、外周端縁には周壁323が垂設される。なお、
図2に示すように、天板321の下面(内面)に、内容物を計量できる計量スプーンを固定するためのスプーン取り付け部322を設けてもよい。
【0027】
周壁323の前方側であって押しボタン330に対向する面には、左右方向の中央部に周壁323から突出する爪部323aが所定幅にわたって設けられている。また、爪部323aの左右方向両側には、周壁323から突出する1対の突出部323bが所定幅にわたって設けられている。なお、突出部323bの数は1個であってもよい。
図7に、
図2の点線で囲んだB部の拡大図と、爪部323a及び突出部323bをそれぞれC-C’及びD-D’で切断した断面図を示す。
図7に示すように、爪部323aは、周壁323の上方から下方に向かって突出量が減少するように形成されている。また、突出部323bは、周壁323の上方から下方に向かって突出量が増加するように形成されている。詳細は後述するが、爪部323aが、後述する押しボタン330に形成された開口333に嵌ることにより、開閉蓋320は開方向への動きが規制される。また、押しボタン330が押された際に押しボタン330の一部が、突出部323bに当接することで開閉蓋320の開方向への動きが促される。
【0028】
連接部324は、枠部310に対して開閉蓋320を連接するとともに、板ゴム340を固定する部分でもある。
図2、
図5に示すように、連接部324は、枠部310の後方側凹部313に嵌め込むことができる板状の部材である。連接部324の後方の左右方向における端部にはそれぞれ、軸部が設けられ、軸部を後方側凹部313の側壁面に形成した凹部(軸受け部)に嵌め込むことにより、ヒンジ機構350が構成される。
【0029】
図2、
図5に示すように、連接部324は、板ゴム340に対向する面に、板ゴム340の動きを規制するための部材である、柱状の突出部324a及び左右方向に延設された壁面である当接部324bを備える。当接部324bは、少なくとも開閉蓋320の閉状態において、折り曲げられた板ゴム340の一端縁に所定の押圧で当接するように形成される。当接部324bの連接部324の表面からの高さは、板ゴム340が当接部324bを乗り越えて当接できないことを防ぐために、板ゴム340の厚みの2倍以上であることが好ましい。突出部324aは、一例として左右方向に2つ並べて形成される。
【0030】
<板ゴム>
板ゴム340は、閉状態から開状態にするための付勢力を開閉蓋320に加えるための部材である。板ゴム340は、
図2、
図5に示すように、ヒンジ機構350の近傍において開閉蓋320と枠部310の間でヒンジ機構350に向かって屈曲部が突出するように折り曲げられて取り付けられる。
図8に、枠部310及び開閉蓋320に取り付ける前の状態の板ゴム340の平面図を示す。
図8に示すように、板ゴム340は、一例として左右方向の長さが前後方向の長さよりも長いほぼ矩形状の板状部材であり、突出部324aを挿通するための2つの第1の孔341と、板ゴム保持軸313aを挿通するための第2の孔342とが形成されている。板ゴム340の材質には、シリコンゴム等を用いることができる。板ゴム340の材質にシリコンゴムを用いることで、食品向けの包装容器に好適に用いることができる。
【0031】
板ゴム340は、枠部310及び開閉蓋320に取り付けられる際には、
図5に示すように、一端縁が当接部324bに対向するように取り付けられる。この際、板ゴム340は、第1の孔341に突出部324aを挿通し、第2の孔342に板ゴム保持軸313aを挿通することにより開閉蓋320及び枠部310に対して固定される。このように、板ゴム340は、第1の孔341及び第2の孔342へ突出部324a及び板ゴム保持軸313aをそれぞれ挿通することにより枠部310及び開閉蓋320への取り付けることができるため、シンプルな作業で容易な取り付けが可能である。なお、第2の孔342に板ゴム保持軸313aを挿通する際には、第2の孔342に抜け防止部313cを通すために、板ゴム340を左右方向へ伸ばしながら(第2の孔342を拡げながら)取り付け作業を行ってもよい。
【0032】
板ゴム340の枠部310及び開閉蓋320への取り付けを容易にし、かつ確実に固定するために、板ゴム340と当接部324bとのクリアランス(隙間)は、0mm以上0.1mm以下であることが好ましい。また、第1の孔341と突出部324aとのクリアランスは、直径で0.2mm以上0.5mm以下であることが好ましい。また、第2の孔342と板ゴム保持軸313aの軸部313bとのクリアランスは、直径で0.05mm以上0.2mm以下であることが好ましい。また、板ゴム保持軸313aの抜け防止部313cの下面と板ゴム340の表面とのクリアランスは、0mm以上0.1mm以下であることが好ましい。
【0033】
なお、板ゴム340の厚みは一定でなくてもよく、例えば屈曲部周辺の厚みを厚くすることにより付勢力を増加させる等してもよい。
【0034】
<押しボタン>
押しボタン330は、枠部310の容器本体とは反対側の面上に搖動可能に取り付けられ、開閉蓋320の閉状態を維持する機能を有する。
図1、
図2に示すように、押しボタン330は、前方側凹部314に取り付けられる。
図9に、押しボタン330の平面図(
図9の(a))、正面図(
図9の(b))及び側面図(
図9の(c))を示す。
図9に示すように、押しボタン330は、押圧部331と、バネ部332と、開口333と、押し上げ爪部334と、軸部335とを含む。
【0035】
押圧部331は、蓋体300の閉状態を解除する際に、使用者が押圧する板状の部材である。
図9に示すように、押圧部331は、一例として矩形状に形成されている。
【0036】
バネ部332は、押圧部331の枠部310に対向する面に設けられ、前方側凹部314に当接して、押圧部331を枠部310から離れる方向に付勢する部材である。
図9に示すように、バネ部332は、一例として板状の部材の先端を、断面が滑らかに弧を描くように折り曲げて(カールさせて)形成することができる。
【0037】
開口333は、開閉蓋320が閉状態にあるときに周壁323に設けた爪部323aを嵌め込むことができる部分であり、
図9に示すように、押圧部331の前方側の端部に垂設される壁面に設けられる。
【0038】
押し上げ爪部334は、押圧部331を押圧した際に、開閉蓋320の突出部323bを下方から持ち上げるために、押圧部331の前方側の端部に垂設される壁面からさらに前方に向かって突出するように設けられる。
図9に示すように、押し上げ爪部334は、一例として開口333の左右方向両側に1個ずつ設けられる。
【0039】
軸部335は、押しボタン330を枠部310に搖動可能に軸支するために設けられる。軸部335は、柱状であり、押圧部331の前方側の端部に垂設される壁面の左右方向の両端から突出するように形成される。軸部335を、枠部310の前方側凹部314に設けた凹部314aに嵌め込むことにより押しボタン330を枠部310に取り付けることができる。
【0040】
(板ゴムの機能)
次に、
図10を参照して板ゴム340の機能を説明する。
図10に、開状態にある開閉蓋320の板ゴム340を取り付けた箇所周辺の断面図を示す。
【0041】
押しボタン330が押され、開閉蓋320が閉状態から開状態になる際には、板ゴム340は、
図10の(a)に示すように、折り曲げられた状態から平坦に伸ばされた状態に向かって変形する。この際、板ゴム340は、折り曲げられた状態から伸びるため、矢印F2の方向に向かう力により連接部324の表面を押す。さらに、これと同時に、当接部324bを押す力も矢印F1の方向に作用する。これにより、板ゴム340の延びる力を連接部324と当接部324bとの2箇所で受けることで、有効に開閉蓋320を開方向へ付勢する力に用いることができる。これにより、蓋体300では、開閉蓋320が開く勢いが途中で低下してしまうことを抑制できる。
【0042】
一方、開閉蓋320が開状態から閉状態になる際には、
図10の(b)に示すように、開閉蓋320に設けられた突出部324aが、板ゴム340の屈曲部がヒンジ機構350に向かって突出するように折り曲げられるように、板ゴム340の折り曲げられる方向を規制する。具体的には、
図10の白抜き矢印で示すように、突出部324aは、板ゴム340の第1の孔341に挿通されているため、第1の孔341の壁面をヒンジ機構350の方向へ向かって押し付ける。この結果、開閉蓋320が開状態から閉状態になる際に、板ゴム340がヒンジ機構350とは反対側の方向である前方側に向かって反転してしまうことを防止できる。板ゴム340の反転を確実に防ぐために、突出部324aの高さは板ゴム340の厚みより大きいことが好ましい。
【0043】
(押しボタンの動作)
次に、
図11を参照して押しボタン330の動作を説明する。
図11の(a)~(c)のそれぞれに、閉状態となる直前、閉状態、閉状態が解除された直後の押しボタン330周辺の断面図を示す。各図は、左図が爪部323aを左右方向に直交する断面で切断した断面図であり、右図が突出部323bを左右方向に直交する断面で切断した断面図である。
【0044】
図11の(a)に示すように、開閉蓋320が開状態から閉状態になる際は、開閉蓋320の爪部323a先端が、押しボタン330の後方側端部に当接しながら下方へ降りる。このとき、押しボタン330の押圧部331は、バネ部332により上方に向かって付勢されている。このため、爪部323aが押しボタン330の開口333に嵌る直前に、爪部323aが押しボタン330の後方側端部を乗り越えることによって「カチッ」という係合音が発生する。これにより、使用者は、閉状態になったことを明確に認識することができるため好ましい。
【0045】
図11の(b)に示すように、開閉蓋320の爪部323aが、開口333に嵌ることにより開閉蓋320が閉状態になる。爪部323aが開口333に嵌ることで、開閉蓋320は開方向への動きが規制され、板ゴム340により開方向へ付勢されていても、閉状態を維持することができる。また、このときも、押しボタン330の押圧部331は、バネ部332により上方に向かって付勢されている。このため、開閉蓋320をロックする機構を別途設けることなく、押圧部331が外部からの偶発的な衝撃等により下方へ下がってしまい爪部323aが開口333から抜けることで、閉状態が解除されることを防ぐことができる。
【0046】
蓋体300の使用者が押しボタン330の押圧部331を下方へ向かって押すと、
図11の(c)に示すように、押しボタン330は、バネ部332が弾性変形するため、軸部335を中心にして前方へ向かって傾く。開閉蓋320は板ゴム340により開方向へ付勢されているため、ボタン330の傾き量が所定量を超えると、爪部323aが開口333から外れる。この結果、開閉蓋320は板ゴム340の付勢力によって開状態となる。
【0047】
また、このとき同時に、右図に示すように、ボタン330の押し上げ爪部334は、ボタン330が前方へ傾くことにより下方から開閉蓋320の突出部323bを押し上げる(ジャッキアップ)。この結果、開閉蓋320は開方向への動きを促されるため、ワンタッチで確実に開くことができる。開閉蓋320の押し上げは、爪部323aが開口333から外れる動きと同時に行われるため、開閉蓋320の閉状態から開状態への動きはスムーズに行われる。また、蓋体300において、押し上げ爪部334と突出部323bとは、それぞれ2個ずつ左右方向に並べて設けられているため、開閉蓋320を傾けることなく水平に押し上げることができるため、水平方向に傾いた状態で持ち上げられた開閉蓋320が枠部310に引っ掛かる等して開方向への動作が妨げられることを防止できる。
【0048】
なお、押しボタン330のバネ部332の形態は、特に限定されないが、バネ部332のように先端を折り曲げた板状の部材で形成することにより、押圧した際及び押圧した状態から戻る際の押しボタン330の動きが滑らかになる。また、枠部310との接触部が押圧量にともない移動するため、枠部310の局部的な磨耗を抑制することができる
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、包装容器の蓋体に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
100 包装容器
200 容器本体
210 フランジ
300 蓋体
310 枠部
311 天面部
312a 外周壁
312b コンタクトリング
312c インナーリング
312d 内周壁
313 後方側凹部
313a 板ゴム保持軸
314 前方側凹部
314a 凹部(軸受け部)
315 係合爪
316 取外し用つまみ
318 取り出し口
320 開閉蓋
321 天板
322 スプーン取り付け部
323 周壁
323a 爪部
323b 突出部
324 連接部
324a 突出部
324b 当接部
330 押しボタン
331 押圧部
332 バネ部
333 開口
334 押し上げ爪部
335 軸部
340 板ゴム
341 第1の孔
342 第2の孔
350 ヒンジ機構