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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】成型用樹脂組成物および成形体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20230613BHJP
   C08L 33/14 20060101ALI20230613BHJP
   C08L 33/06 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L33/14
C08L33/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019048496
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2020147719
(43)【公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591183153
【氏名又は名称】トーヨーカラー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】日水 秋生
(72)【発明者】
【氏名】三上 譲司
(72)【発明者】
【氏名】増子 啓介
(72)【発明者】
【氏名】田中 基貴
【審査官】内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-313888(JP,A)
【文献】特開2018-177976(JP,A)
【文献】特開2018-168278(JP,A)
【文献】特開2003-129033(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L
C08F20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)と、下記一般式(1)で示す単量体、下記一般式(2)で示す単量体および芳香族ビニル単量体を含む不飽和単量体の重合体である紫外線吸収性ポリマー(B)とを含み、
熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィンである、成形用樹脂組成物。
一般式(1)
【化1】

(一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、または炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、
、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル、または炭素数1~20のアルコキシ基を表し、
は、炭素数1~20のアルキレン基もしくは炭素数3~5のヒドロキシアルキレン基を表す
【化2】

(一般式(2)中、R16は、水素原子又はメチル基を表す。Zは、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、2-メチル-2-アダマンチル基、または2-エチル-2-アダマンチル基の多環式炭化水素基を表す。)
【請求項2】
紫外線吸収性ポリマー(B)は、全不飽和単量体100質量%中、一般式(2)で示す単量体を合計30~97質量%含む、請求項1に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項3】
一般式(2)のZは、ジシクロペンタニル基である、請求項1または2に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項4】
不飽和単量体は、さらに、下記一般式(3)で示す単量体を含む、請求項1~3いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
一般式(3)
【化3】

(式中、R9は水素原子またはシアノ基を表し、R10、及びR11は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R12は水素原子または炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【請求項5】
紫外線吸収性ポリマー(B)は、全不飽和単量体100質量%中、一般式(1)で示す単量体を合計2~50質量%含む、請求項1~4いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5いずれか1項に記載の成形用樹脂組成物を成形してなる成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線吸収性ポリマーを含有する成形用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塗料、ウインドウフィルムなどの樹脂成形体(以下、成形体という)は、紫外線による劣化を防止するため紫外線吸収剤が配合されていた。しかし、紫外線吸収剤は、マイグレーションにより塗料または成形体内の凝集、表面への析出、または内容物への移行が起こる場合が多かった。
上記用途の中での成形体は、洗剤、飲料、医薬用薬剤、化粧品等の包装材料として使用されていた。特に飲料、医薬用薬剤、化粧品等の用途は、内容物を視認しつつ、その紫外線劣化を防止する必要があったが、紫外線吸収剤がマイグレーションすると内容物の品質に悪影響を与えていた。
【0003】
紫外線吸収化合物のマイグレーションを抑制する方法として、特許文献1および2には、エチレン性不飽和結合を有するベンゾトリアゾール系化合物を重合した重合体を使用した樹脂組成物が開示されている。
しかし、従来の樹脂組成物は、可視光に近い360nm付近の紫外線を遮断できるものの、可視光に含まれるより長波長領域の光を遮断できなかった。そのため、例えば、410nm付近の光で劣化する医薬品を包装する成形体は、視認性と医薬品のセルフライフとを同時に満たすことは難しかった。
また、特許文献3~5には、エチレン性不飽和結合を有するベンゾトリアゾール系化合物が開示されている。しかしながら、紫外線吸収化合物のマイグレーションを抑制する方法については、課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2001-72722号公報
【文献】特開2001-114842号公報
【文献】特開2018-168089号公報
【文献】特開2018-168148号公報
【文献】特開2018-177696号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、紫外線、および可視光の短波長領域を遮断しつつ、紫外線吸収剤のマイグレーションを抑制する成形用樹脂組成物及び成形体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、熱可塑性樹脂(A)、下記一般式(1)で示す単量体を含む不飽和単量体の重合体である紫外線吸収性ポリマー(B)を含む、成形用樹脂組成物に関する。
【0007】
一般式(1)
【化1】
【0008】
(一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、及び炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、
、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル、及び炭素数1~20のアルコキシ基を表し、
は、炭素数1~20のアルキレン基もしくは炭素数3~5のヒドロキシアルキレン基を表し、R は、水素もしくはメチル基を表す。)
【0009】
また、本発明は、熱可塑性樹脂(A)が、ポリオレフィンである、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、不飽和単量体が、さらに、下記一般式(2)で示す単量体を含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0011】
【化2】
【0012】
(一般式(2)中、R16は、水素原子又はメチル基を表す。Zは、炭素数が10以上の炭化水素基を表す。)
【0013】
また、本発明は、紫外線吸収性ポリマー(B)は、全不飽和単量体100質量%中、一般式(2)で示す単量体を合計30~97質量%含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0014】
また、本発明は、一般式(2)のZは、分岐構造の炭化水素基である、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0015】
また、本発明は、一般式(2)のZは、多環式炭化水素基である、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0016】
また、本発明は、一般式(2)のZは、ジシクロペンタニル基である、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0017】
また、本発明は、不飽和単量体は、さらに、芳香族ビニル単量体を含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0018】
また、本発明は、不飽和単量体は、さらに、下記一般式(3)で示す単量体を含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
一般式(3)
【0019】
【化3】
【0020】
(式中、R9は水素原子またはシアノ基を表し、R10、及びR11は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R12は水素原子または炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0021】
また、本発明は、紫外線吸収性ポリマー(B)は、全不飽和単量体100質量%中、一般式(1)で示す単量体を合計2~50質量%含む、上記成形用樹脂組成物に関する。
【0022】
また、本発明は、上記成形用樹脂組成物を成形してなる成形体に関する。
【発明の効果】
【0023】
上記の本発明によれば、紫外線、および可視光の短波長領域を遮断しつつ、紫外線吸収剤のマイグレーションを抑制する成型用樹脂組成物及び成型体を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書の用語を定義する。本明細書において、「(メタ)アクリル」、「(メタ)アクリレート」「(メタ)アクリロイル」等は、「アクリル又はメタクリル」、「アクリレート又はメタクリレート」「アクリロイル又はメタクリロイル」等を意味するものとし、例えば「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味する。また、不飽和単量体または単量体は、それぞれ、エチレン性不飽和基含有化合物を意味する。
【0025】
本発明の成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収性ポリマー(B)とを含む。紫外線吸収性ポリマー(B)は、不飽和単量体を重合してなり、不飽和単量体は、少なくとも、下記一般式(1)で示す単量体を含む。
【0026】
<熱可塑性樹脂(A)>
熱可塑性樹脂(A)は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリアセタール、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタアクリレート等のポリアクリル、およびポリエーテルイミドが挙げられる。これらの中でも成形性および成形品の機械強度を考慮するとポリオレフィンが好ましい。
【0027】
ポリオレフィンは、例えば結晶性または非晶性ポリプロピレン、ポリブテン-1、ポリ-4-メチルペンテン、低密度または高密度ポリエチレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体、α-オレフィンとエチレンあるいはプロピレンの共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸メチル共重合体、エチレン-アクリル酸エチル共重合体およびエチレン-アクリル酸共重合体等が挙げられる。これらの中でも結晶性または非晶性ポリプロピレン、エチレン-プロピレンのランダム、ブロックあるいはグラフト共重合体が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体がより好ましい。また安価で、比重が小さいために成形品を軽量化できる観点からはポリプロピレンが好ましい。
【0028】
熱可塑性樹脂(A)は、そのメルトフローレイト(MFR)が1~100(g/10分)が好ましい。なお、MFRはJISK-7210に準拠して求めたものである。
熱可塑性樹脂(A)は、単独または2種類以上を併用できる。
【0029】
<紫外線吸収性ポリマー(B)>
本明細書の紫外線吸収性ポリマー(B)は、その重合組成に下記一般式(1)で示す単量体を含む。
【0030】
一般式(1)
【化1】
【0031】
一般式(1)中、Rは、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、及び炭素数3~20のシクロアルキル基を表し、
及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル、炭素数1~20のアルコキシ基を表し、
は、炭素数1~20のアルキレン基もしくは炭素数3~5のヒドロキシアルキレン基を表し、R は、水素もしくはメチル基を表す。
【0032】
一般式(1)中、炭素数1~20のアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基等が挙げられる。
炭素数3~20のシクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等のシクロアルキル基等が挙げられる、
炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、ウンデシルオキシ基、ドデシルオキシ基、トリデシルオキシ基、テトラデシルオキシ基、ペンタデシルオキシ基、ヘキサデシルオキシ基、ヘプタデシルオキシ基、オクタデシルオキシ基、ノナデシルオキシ基、イコシルオキシ基等が挙げられる。
【0033】
炭素数1~20のアルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロピレン基、2-メチルトリメチレン基、2-メチルテトラメチレン基等の分枝鎖状アルキレン基等が挙げられる。
炭素数1~20のアルキレン基は、その水素原子をハロゲンで置換できる。例えば、モノブロモメチレン基、モノブロモエチレン基、モノクロロエチレン基、モノヨードエチレン基、ジブロモエチレン基、モノブロモトリメチレン基、モノブロモテトラメチレン基、モノブロモペンタメチレン基、モノブロモヘキサメチレン基、モノブロモヘプタメチレン基、モノブロモオクタメチレン基等が挙げられる。
炭素数3~5のヒドロキシアルキレン基は、例えば、2-ヒドロキシプロピレン基、1-メチル-2-ヒドロキシエチレン基、2-ヒドロキシブチレン基、2-ヒドロキシペンチレン基、1-メチル-2-ヒドロキシプロピレン基等が挙げられる。
【0034】
また、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アルキレン基、ヒドロキシアルキレン基は、その水素原子をハロゲンで置換できる。
ハロゲン置換炭素数1~20のアルキル基は、例えば、1-ブロモメチル基、2-ブロモエチル基、2-クロロエチル基、2-ヨードエチル基、3-ブロモプロピル基、4-ブロモブチル基、1-ブロモブチル基、5-ブロモペンチル基、6-ブロモヘキシル基、7-ブロモヘプチル基、8-ブロモオクチル基、9-ブロモノニル基、10-ブロモデシル基、11-ブロモウンデシル基、12-ブロモドデシル基、13-ブロモトリデシル基、14-ブロモテトラデシル基、15-ブロモペンタデシル基、16-ブロモヘキサデシル基、17-ブロモヘプタデシル基、18-ブロモオクタデシル基、19-ブロモノナデシル基、20-ブロモイコシル基等が挙げられる。
ハロゲン置換炭素数3~20のシクロアルキル基は、例えば、2-ブロモシクロプロピル基、2-ブロモシクロペンチル基、4-ブロモシクロヘキシル基等が挙げられる。
ハロゲン置換炭素数1~20のアルコキシ基は、例えば、1-ブロモメトキシ基、2-ブロモエトキシ基、3-クロロプロポキシ基等が挙げられる。
【0035】
具体的な一般式(1)で示す単量体(b-1~32)の構造は、以下の化学式が挙げられる。
【化4】
【0036】
【化5】
【0037】
【化5】
【0038】
【化5】
【0039】
【化5】
【0040】
【化5】
【0041】
【化5】
【0042】
【化5】
【0043】
本明細書の紫外線吸収性ポリマー(B)は、一般式(1)で示す単量体を含む不飽和単量体の重合体である。一般式(1)で示す単量体は、単独重合できるが、様々な用途への適用を考慮すると不飽和単量体の混合物の重合体が好ましい。
【0044】
一般式(1)で示す単量体の含有量は、全不飽和単量体中、2~50質量%が好ましく、5~40質量%がより好ましい。
【0045】
本明細書の紫外線吸収性ポリマー(B)は、紫外線吸収性基を有するため紫外線を吸収する。また、紫外線吸収性ポリマー(B)は、マイグレーションをしにくいため、紫外線吸収成分のマイグレーションを大幅抑制できる。
【0046】
不飽和単量体は、その他単量体を含有できる。不飽和単量体は、下記一般式(2)で示す不飽和単量体を含むことが好ましい。これにより、ポリオレフィンと相溶性が良好となる。
【0047】
【化2】
【0048】
(式中、R16は、水素原子又はメチル基を表す。Zは、炭素数が10以上の炭化水素基を表す。)
一般式(2)で示す単量体のZは、長鎖の疎水性ユニットである炭素数10以上の炭化水素基であることで、紫外線吸収性ポリマー(B)は、オレフィンなどの疎水性の高い熱可塑性樹脂(A)との親和性が向上し、紫外線吸収性ポリマー(B)と熱可塑性樹脂(A)両者の相溶性が向上する。
【0049】
一般式(2)中、Zの炭素数10以上の炭化水素基は、例えば、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、ヘンイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等直鎖又は分枝鎖のアルキル基;シクロドデシル基等の脂環式炭化水素基;イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、ジシクロペンテニル基、2-メチル-2-アダマンチル基、2-エチル-2-アダマンチル基等の多環式炭化水素基等が挙げられる。またZは、直鎖および分岐鎖が挙げられるところでは、分岐鎖が好ましく、イソステアリル基がより好ましい。また、多環式炭化水素基がさらに好ましく、ジシクロペンタニル基が特に好ましい。なお、直鎖および分岐鎖が挙げられるところでは、Zの炭素数の上限は、一般式(1)で示す単量体と共重合できればよく限定されないところ、強いて挙げれば22以下が好ましく、20以下がより好ましい。また、なお、Zの炭素数の下限は、14以上がより好ましい。
【0050】
一般式(2)で示す単量体は、例えば、ラウリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-メチルー2-アダマンチル(メタ)アクリレート、2-エチルー2-アダマンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの中でも、イソステアリル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレートが好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがさらに好ましい。
【0051】
一般式(2)で示す単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0052】
一般式(2)で示す単量体の含有量は、単量体混合物中、30~97質量%が好ましく、40~80質量%がより好ましい。適量含有することで紫外線吸収性、およびポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂(A)との相溶性を両立しやすい。
【0053】
不飽和単量体は、さらに、一般式(3)で示す単量体を含むことが好ましい。これにより紫外線吸収性ポリマー(B)の光安定性がより向上する。
【0054】
一般式(3)
【化3】
【0055】
(式中、R9は水素原子またはシアノ基を表し、R10、及びR11は、それぞれ独立して水素原子またはメチル基を表し、R12は水素原子または炭化水素基を表し、Yは酸素原子またはイミノ基を表す。)
【0056】
一般式(3)で示す単量体は、例えば、4-(メタ)アクリロイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルオキシ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-(メタ)アクリロイルアミノ-1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、4-シアノ-4-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン、4-クロトノイルアミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン等が挙げられる。
【0057】
一般式(3)で示す単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0058】
一般式(3)で示す単量体の含有量は、不飽和単量体中、3~30質量%が好ましく、5~25質量%がより好ましい。適量含有することで光安定性、およびポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂(A)との相溶性を両立しやすい。
【0059】
不飽和単量体は、さらに、芳香族ビニル単量体を含むことが好ましい。これにより、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂(A)との相溶性がより向上する。芳香族ビニル単量体は、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、安息香酸ビニル、ビニルトルエン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヒドロキシスチレン、メトキシスチレン、ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、クロロスチレン、ジクロロスチレン、ブロモスチレン、クロロメチルスチレン、酸性物質により脱保護可能な基(例えばt-Bocなど)で保護されたヒドロキシスチレン等が挙げられる。
芳香族ビニル単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0060】
芳香族ビニル単量体の含有量は、単量体混合物中、10~80質量%が好ましく、20~70質量%がより好ましい。適量含有することでポリオレフィン(A)との相溶性がより向上する。
【0061】
特に、不飽和単量体に芳香族ビニル単量体または多環式炭化水素基を有する一般式(2)で示す単量体を使用すると好ましく、両者の併用は、非常に好ましく、これにより、ポリオレフィンなどの熱可塑性樹脂(A)との相溶性がさらに向上する。
【0062】
紫外線吸収性ポリマー(B)は、不飽和単量体にその他単量体を含むことができる。その他単量体は、これまでに例示した以外の単量体である。
【0063】
その他単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸エステル、クロトン酸エステル、ビニルエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸ジエステル、イタコン酸ジエステル、(メタ)アクリルアミド、ビニルエーテル、ビニルアルコールのエステル、スチレン、(メタ)アクリロニトリル、酸性基含有モノマーが挙げられる。
【0064】
(メタ)アクリル酸エステルは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n-プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n-ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n-ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t-ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t-オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2-(2-メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3-フェノキシ-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β-フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル等が挙げられる。
【0065】
クロトン酸エステルは、例えば、クロトン酸ブチル、及びクロトン酸ヘキシル等が挙げられる。
【0066】
ビニルエステルは、例えば、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルブチレート、ビニルメトキシアセテート等が挙げられる。マレイン酸ジエステルは、例えば、マレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、及びマレイン酸ジブチル等が挙げられる。
【0067】
フマル酸ジエステルは、例えば、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、及びフマル酸ジブチル等が挙げられる。
【0068】
イタコン酸ジエステルは、例えば、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジブチル等が挙げられる。
【0069】
(メタ)アクリルアミドは、例えば、(メタ)アクリルアミド、N-メチル(メタ)アクリルアミド、N-エチル(メタ)アクリルアミド、N-プロピル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N-n-ブチルアクリル(メタ)アミド、N-t-ブチル(メタ)アクリルアミド、N-シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N-(2-メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ベンジル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルホリン、ジアセトンアクリルアミド等が挙げられる。
【0070】
ビニルエーテルは、例えば、メチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、ヘキシルビニルエーテル、及びメトキシエチルビニルエーテル等が挙げられる。
【0071】
酸性基含有モノマーは、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、α-クロルアクリル酸、けい皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸等の不飽和ジカルボン酸またはその酸無水物;3価以上の不飽和多価カルボン酸またはその酸無水物;こはく酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、こはく酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-アクリロイロキシエチル)、フタル酸モノ(2-メタクリロイロキシエチル)等の2価以上の多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイロキシアルキル〕エステル;ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノアクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトンモノメタクリレート等の両末端カルボキシポリマーのモノ(メタ)アクリレート類等を挙げられる。
【0072】
その他単量体は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0073】
紫外線吸収性ポリマー(B)は、前記不飽和単量体を、アニオン重合、リビングアニオン重合、カチオン重合、リビングカチオン重合、フリーラジカル重合、及びリビングラジカル重合等で重合して合成される。これらの中でもフリーラジカル重合、リビングラジカル重合が好ましい。
【0074】
フリーラジカル重合は、重合開始剤を使用するのが好ましい。重合開始剤は、例えば、アゾ系化合物、過酸化物が好ましい。アゾ系化合物は、例えば、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチル-4-メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオネート)、4,4’-アゾビス(4-シアノバレリック酸)、2,2’-アゾビス(2-ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、または2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]等が挙げられる。過酸化物は、例えば、過酸化ベンゾイル、t-ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ-n-プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2-エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5-トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、またはジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0075】
重合開始剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0076】
合成の反応温度は、40~150℃が好ましく、50~110℃がより好ましい。反応時間は、3~30時間が好ましく、5~20時間がより好ましい。
【0077】
リビングラジカル重合は、一般的なラジカル重合に起こる副反応が抑制され、更には、重合の成長が均一に起こる為、容易にブロックポリマーや分子量の揃った樹脂を合成できる。
【0078】
リビングラジカル重合は、有機ハロゲン化物、またはハロゲン化スルホニル化合物を開始剤とし、遷移金属錯体を触媒とする原子移動ラジカル重合法は、広範囲の単量体に適応できる点、既存の設備に適応可能な重合温度を採用できる点で好ましい。原子移動ラジカル重合法は、下記の参考文献1~8等に記載された方法で行うことができる。
(参考文献1)Fukudaら、Prog.Polym.Sci.2004,29,329;
(参考文献2)Matyjaszewskiら、Chem.Rev.2001,101,2921
(参考文献3)Matyjaszewskiら、J.Am.Chem.Soc.1995,117,5614
(参考文献4)Macromolecules 1995,28,7901,Science,1996,272,866
(参考文献5)国際公開第96/030421号
(参考文献6)国際公開第97/018247号
(参考文献7)特開平9-208616号公報
(参考文献8)特開平8-41117号公報
【0079】
紫外線吸収性ポリマー(B)の合成には、有機溶剤を用いることが好ましい。有機溶剤は、例えば、酢酸エチル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、またはジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が挙げられる。
【0080】
有機溶剤は、単独または2種類以上を併用して使用できる。
【0081】
紫外線吸収性ポリマー(B)の質量平均分子量は、1,000~500,000であることが好ましく、3,000~15,000がより好ましい。なお、質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した数値である。
【0082】
紫外線吸収性ポリマー(B)の配合量は、熱可塑性樹脂100質量部に対して、0.01~10質量部が好ましい。
【0083】
(成形用樹脂組成物の製造方法)
本発明の成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)と、紫外線吸収性ポリマー(B)からなるが、必要に応じて、着色剤、そのほかの添加剤を含んでいてもよい。
成形用樹脂組成物の好ましい一形態として、例えば、紫外線吸収性ポリマー(B)を高濃度で配合したマスターバッチが挙げられる。マスターバッチは、例えば、造塩化合物などの着色剤と熱可塑性樹脂(A)を溶融混練し、次いで任意の形状に成形することが好ましい。次いで、前記マスターバッチと希釈樹脂(例えば、マスターバッチに使用した熱可塑性樹脂(A))とを溶融混練し、所望の形状の成形体を成形できる。紫外線吸収性ポリマー(B)は、成形体材料を一括仕込みで溶融混練を行い、成形体を作製するよりも、一旦、マスターバッチを作製してからその他の成形体材料と混練して、成形体を作製する方がより高度に分散できる。
【0084】
マスターバッチの形状は、例えば、ペレット状、粉末状、板状等が挙げられる。前記溶融混練は、例えば、単軸混練押出機、二軸混練押出機、またはタンデム式二軸混練押出機等を用いるのが好ましい。溶融混錬温度は、熱可塑性樹脂(A)の種類により異なるが通常150~250℃程度である。
また、紫外線吸収性ポリマー(B)の凝集を抑制する面からら、予め、紫外線吸収性ポリマー(B)とワックスを溶融混練した予備分散体を作製した後、次いで、熱可塑性樹脂(A)と共に、溶融混錬して成形用樹脂組成物を作製することが好ましい。なお、予備分散体の作製は、例えば、ブレンドミキサーや3本ロールミルを用いることが好ましい。
【0085】
マスターバッチ作製の際、紫外線吸収性ポリマー(B)の使用量は、熱可塑性樹脂(A)100質量部に対して、1~30質量部が好ましい。マスターバッチと希釈樹脂の質量比は、1/5~1/100が好ましい。適切な比率で使用すると成形品の着色度と機械強度を高度に両立できる。希釈樹脂は、マスターバッチに使用した熱可塑性樹脂(A)に限定されず、当該樹脂と相溶性の良い熱可塑性樹脂であればよい。
【0086】
本発明の成形用樹脂組成物は、熱可塑性樹脂(A)および紫外線吸収性ポリマー(B)以外の任意成分として、酸化防止剤、光安定剤、分散剤等を含むことができる。
【0087】
本明細書の成形体は、成形用樹脂組成物を成形して作製する。
成形方法は、例えば、押出成形、射出成形、ブロー成形等が挙げられる。押出成形は、例えばコンプレッション成形、パイプ押出成形、ラミネート成形、Tダイ成形、インフレーション成形、溶融紡糸等が挙げられる。
【0088】
成形体の成形温度は、通常160~240℃程度である。
【0089】
本明細書の成形体は、通常の押出成形よりも成形速度が速い高速押出成形(成形機スクリュー回転数:150rpm程度)や、無剪断領域が長いコンプレッション成形で製造する場合にも色ムラ・色わかれが生じにくい。特に射出成形の約10倍の成形速度である高速コンプレッション成形(生産速度500個/分以上、場合によっては700~900個/分)においても成形品に色ムラ・色わかれが生じにくい優れた効果が得られる。
【0090】
本発明の成形体の製造方法の1例としてコンプレッション成形の説明をする。まず、本発明の成形用樹脂組成物を溶融混合し、圧縮成型機に投入し、当該圧縮成型機内で剪断力を加えず、圧縮による押し出す力を加えることで成型品を得る工程を含む、成型品の製造方法である。ここで剪断力を加えず、圧縮による押し出す力を加えることは、成形用樹脂組成物には混合する力が加わっていない状態、すなわち無剪断領域に成形用樹脂組成物が存在している。この成型品は、例えばPETボトルのフラスチックキャップ等が好ましい。なお、本明細書で成型品は型に樹脂を投入し物品を得るものである。また成形品は、プラスチックフィルムなど型を使用せずに得た物品と成型品を含むものである。
【0091】
本発明の成形体は、例えば、食品包装材、医薬品包装材、ディスプレイ用途に使用することが好ましい。食品包装材や医薬品包装材は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリオレフィンやポリエステル等を使用することが好ましい。これら成形体は、柔軟性および視認性が向上し、内容物の劣化を抑制できる。また、ディスプレイ用途(例えば、テレビ、パソコン、スマホ等)は、熱可塑性樹脂に、例えば、ポリアクリルやポリカーボネート、環状オレフィン、ポリエステル、セルローストリアセテート等を使用することが好ましい。これら成形体は、バックライトに含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、目への悪影響を抑制することができ、また、太陽光に含まれる紫外線や可視光の短波長領域の光を吸収することで、ディスプレイの表示素子の劣化を抑制することができ、さらにマイグレーションによる透明性低下を抑制することができる。
【実施例
【0092】
以下に、本発明をさらに詳しく説明するが、本発明の技術思想を逸脱しない限り、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下「質量部」は単に「部」、「重量%」は単に「%」と記載する。
【0093】
実施例で使用した熱可塑性樹脂を以下に示す。
(A-1)ポリエチレン(サンテックLDM2270、MFR=7g/10min、旭化成ケミカルズ社製)
(A-2)ポリエチレン(ノバテックUJ790、MFR=50g/10min、日本ポリエチレン社製)
(A-3)ポリプロピレン(ノバテックPPFA3EB、MFR=10.5g/10min、日本ポリプロ社製)
(A-4)ポリプロピレン(プライムポリプロJ226T、MFR=20G/10MIN、プライムポリマー社製)
(A-5)ポリカーボネート(ユーピロンS3000、MFR=15g/10min、三菱エンジニアリングプラスチックス社製)
(A-6)ポリメタクリル樹脂(アクリペットMF、MFR=14g/10min、三菱レイヨン社製)
【0094】
実施例で使用したワックスを以下に示す。
(D-1)ポリエチレンワックス(サンワックス131-P、数平均分子量3500、融点105℃、三洋化成工業社製)
(D-2)ポリエチレンワックス(ハイワックス405MP、数平均分子量4500、融点120℃、三井化学社製)
(D-3)ポリプロピレンワックス(ハイワックスNP056、数平均分子量7200、融点130℃、三井化学社製)
【0095】
[単量体の製造例]
(単量体(b-1)~(b-4))
特開2018-168089号公報を参考にして、公知の方法で単量体(b-1)~(b-4)を製造した。
(単量体(b-5)~(b-8))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-1)~(b-4)と同様にして単量体(b-5)~(b-8)を製造した。
【0096】
【化6】
【0097】
(単量体(b-9))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-1)~(b-4)と同様にして単量体(b-9)を製造した。
【0098】
【化7】
【0099】
(単量体(b-10)~(b-13))
特開2018-177696公報を参考にして、公知の方法で単量体(b-10)~(b-13)を製造した。
【0100】
(単量体(b-14)~(b-17))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-10)~(b-13)と同様にして単量体(b-14)~(b-17)を製造した。
【0101】
【化8】
【0102】
(単量体(b-18)
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-14)~(b-17)と同様にして単量体(b-18)を製造した。
【0103】
【化9】
【0104】
(単量体(b-19)、(b-20))
以下の中間体1を特開2018-168089号公報を参考にして、公知の方法で製造した。
(中間体1)
【化10】
【0105】
次に、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、N-メチルピロリドンを100g、中間体1を28.6mmol、メチルヒドロキノンを0.01mmol仕込み、エアーをバブリングしながら120℃で撹拌した。その後、グリシジルメタクリレートを62.9mmol、N,N-ジメチルベンジルアミンを0.6mmol添加し、120℃で8時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、単量体が析出させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。40℃で減圧乾燥を行い、単量体(b-19)、(b-20)の混合物を得た。
【0106】
(単量体(b-21)、(b-22))
以下の中間体2を特開2018-177696公報を参考にして、公知の方法で製造した。
(中間体2)
【化11】
【0107】
次に、温度計、攪拌機を具備した200mL4つ口フラスコに、N-メチルピロリドンを100g、中間体2を28.6mmol、メチルヒドロキノンを0.01mmol仕込み、エアーをバブリングしながら120℃で撹拌した。その後、グリシジルメタクリレートを62.9mmol、N,N-ジメチルベンジルアミンを0.6mmol添加し、120℃で8時間撹拌した。一方、500mLビーカーに水を300g仕込み、先の反応液を少しずつ滴下し、単量体が析出させ、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。得られたウエットケーキを水300g中に戻して室温で30分リスラリーを行い、ろ過した。その後、水300gでふりかけ洗浄を行った。40℃で減圧乾燥を行い、単量体(b-21)、(b-22)の混合物を得た。
【0108】
(単量体(b-23)~(b-26))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-1)~(b-4)と同様にして単量体(b-23)~(b-26)を製造した。
【0109】
【化12】
【0110】
(単量体(b-27)、(b-28))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-1)~(b-2)と同様にして単量体(b-27)、(b-28)を製造した。
【0111】
【化13】
【0112】
(単量体(b-29)、(b-30))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-1)~(b-2)と同様にして単量体(b-29)、(b-30)を製造した。
【0113】
【化13】
【0114】
(単量体(b-31)、(b-32))
原料に以下の化合物を用いて、単量体(b-19)、(b-20)と同様にして単量体(b-31)、(b-32)の混合物を製造した。
【0115】
【化14】
【0116】
[紫外線吸収性ポリマー(B)の製造例]
(紫外線吸収性ポリマー(B-1))
温度計、攪拌機、滴下ロート、冷却器を具備した4つ口セパラブルフラスコに、メチルエチルケトン75.0部を仕込み窒素気流下で75℃に昇温した。別途、一般式(1)で示す単量体として単量体(b-1)を10部、一般式(2)で示す単量体としてジシクロペンタニルメタクリレート45部、スチレン45部、2.2’-アゾビス(イソ酪酸メチル)を5.0部、およびメチルエチルケトン20.0部を均一に混合した後、滴下ロートに仕込んだ。次いで滴下ロートの内容物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間反応を継続した。その後、サンプリングを行い重合収率が98%以上である事を確認し、50℃へ冷却、デュポン社製フッ素樹脂のバットに取り出した。さらに、真空乾燥機で50℃12時間乾燥し、ポリマー(B-1)を得た。
【0117】
製造例2~19(ポリマー(B-2)~(B-32)、(B-35)~(B-45))
製造例1で使用した単量体の種類およびその使用量を表1に記載した通りに変更した以外は、製造例1と同様に行いポリマー(B-2)~(B-32)、(B-35)~(B-45)をそれぞれ得た。
【0118】
【表1】
【0119】
表1中の用語の詳細は以下の通りである。
アデカスタブLA-82(ADEKA製)
【0120】
【化6】
【0121】
(実施例1)
〔マスターバッチの製造〕
ワックス(D-1)100部に対し、紫外線性吸収ポリマー(B-1)100部を混合し、3本ロールミルにて160℃にて加熱混練し、紫外線吸収性ポリマー(B-1)の分散体を得た。次いで、ポリオレフィン(A-1)100部に対し、得られた上記分散体10部をヘンシェルミキサーにて混合し、スクリュー径30mmの単軸押出機にて180℃で溶融混練し、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングして成形用樹脂組成物(マスターバッチ)を作製した。
【0122】
[フィルム成形]
希釈樹脂のポリオレフィン(A-1)100部に対して、得られた成形用樹脂組成物10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度180℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルムを成形した。
【0123】
(実施例2~37、40~50、比較例1)
実施例2~37、40~50、および比較例1は、実施例1の材料を表2に記載された通りに変更した以外は、実施例1と同様に行い、それぞれマスターバッチを作製し、次いでT-ダイフィルムを作製した。
【0124】
(実施例51)
[マスターバッチの製造]
ポリカーボネート(A-5)100部と紫外線吸収性ポリマー(B-1)5部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、280℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングして成形用樹脂組成物(マスターバッチ)を作製した。
【0125】
[フィルム成形]
希釈樹脂のポリカーボネート(A-5)100部に対して、得られた成形用樹脂組成物10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度280℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルムを成形した。
【0126】
(実施例52~82、比較例2)
実施例52~82、および比較例2は、実施例51の材料を表3に記載された通りに変更した以外は、実施例51と同様に行い、それぞれマスターバッチを作製し、次いでT-ダイフィルムを作製した。なお、本明細書で実施例40~45は、参考例である。
【0127】
(実施例85)
[マスターバッチの製造]
ポリメタクリル樹脂(A-6)100部と紫外線吸収性ポリマー(B-1)5部とを同じ供給口からスクリュー径30mmの二軸押出機(日本製鋼所社製)に投入し、240℃で溶融混錬した上で、ペレタイザーを用いてペレット状にカッティングして成形用樹脂組成物(マスターバッチ)を作製した。
【0128】
[フィルム成形]
希釈樹脂のポリメタクリル樹脂(A-6)100部に対して、得られた成形用樹脂組成物10部を混合し、T-ダイ成形機(東洋精機製)を用いて、温度280℃で溶融混合し、厚さ250μmのフィルムを成形した。
【0129】
(実施例86~116、比較例3)
実施例86~116、および比較例3は、実施例85の材料を表4に記載された通りに変更した以外は、実施例85と同様に行い、それぞれマスターバッチを作製し、次いでT-ダイフィルムを作製した。
【0130】
[紫外線吸収性]
得られたフィルムの透過率を、紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて測定した。透過率は白色標準板に対しての分光透過率を測定した。
以下の条件を満たすか否かを評価した。
〇:波長280~420nmの光透過率が全領域にわたって2%以下:良好
△:波長280~420mの光透過率が一部2%以上:実用域
×:波長280~420nmの光透過率が全領域にわたって2%以上:実用不可
【0131】
[透明性]
得られたフィルムの透明性を目視評価した。
◎:濁りが全く認められない。非常に良好
〇:濁りがほとんど認められない。良好
△:濁りがわずかに認められる。実用域
×:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0132】
[耐光性試験]
得られたフィルムをキセノンウェザーメーターで、300~400nmが60W/mの照度で1500時間暴露した。
◎:濁りが全く認められない。非常に良好
〇:濁りがほとんど認められない。良好
△:濁りが若干認められる。実用域
×:明らかに濁りが認められる。実用不可
【0133】
[マイグレーション評価]
得られたフィルムを2枚の酸化チタンを配合した軟質塩化ビニルシートで挟み、熱プレス機を使用して圧力100g/cm・温度170℃30秒間の条件で加熱圧着した。次いで、直ちにフィルムを外して酸化チタンを配合した軟質塩化ビニルシートへのマイグレーションを紫外可視近赤外分光光度計(島津製作所社製)を用いて評価した。評価は、上記の処理を行った軟質塩化ビニルシート上の場所5点を選び、紫外領域の吸光度を測定し、その平均を算出することで行った。
○:280~400nmにおける吸光度が検出されない(0.05以下)。
△:280~400nmにおける吸光度が0.05以上0.2以下。
×:280~400nmにおける吸光度が0.2以上。
【0134】
【表2】
【0135】
【表3】
【0136】
【表4】