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特許7293788乾燥藻類製造装置および乾燥藻類製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】乾燥藻類製造装置および乾燥藻類製造方法
(51)【国際特許分類】
   F26B 9/06 20060101AFI20230613BHJP
   F26B 3/28 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F26B9/06 K
F26B3/28
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019057709
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020159600
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年から平成28年度 独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構/バイオマスエネルギー技術研究開発/戦略的次世代バイオマスエネルギー利用技術開発事業(次世代技術開発)/微細藻類の改良による高速培養と藻体濃縮の一体化方法の研究開発委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】110000936
【氏名又は名称】弁理士法人青海国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 浩
(72)【発明者】
【氏名】武藤 潤
(72)【発明者】
【氏名】松澤 克明
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-174881(JP,A)
【文献】実開平01-136895(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 9/06
F26B 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
藻類のスラリーを乾燥させて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造装置であって、
本体と、
前記本体の一端から他端に亘って形成され、前記藻類のスラリーを収容する複数の溝部と、
を備える乾燥藻類製造装置。
【請求項2】
前記溝部の一端および他端のうちいずれか一方または両方を封止する蓋部を備える請求項1に記載の乾燥藻類製造装置。
【請求項3】
前記溝部は、深い位置ほど溝幅が小さい請求項1または2に記載の乾燥藻類製造装置。
【請求項4】
前記本体における前記スラリーの接触面は、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の乾燥藻類製造装置。
【請求項5】
前記溝部において乾燥された乾燥藻類の端部を固定する固定部と、略円筒形状の胴部と、を有する回収部を備える請求項1から4のいずれか1項に記載の乾燥藻類製造装置。
【請求項6】
本体と、前記本体の一端から他端に亘って形成された複数の溝部と、前記溝部の一端および他端のうちいずれか一方または両方を封止する蓋部と、前記溝部に藻類のスラリーを供給する供給部と、前記蓋部によって前記溝部が封止される封止状態と、前記溝部から前記蓋部が取り外された開放状態とに前記蓋部を移動させる開閉部と、を備える乾燥藻類製造装置を用いて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造方法であって
前記供給部は、前記開閉部によって前記蓋部が封止状態に移動された後に、前記溝部に前記スラリーを供給する乾燥藻類製造方法
【請求項7】
本体と、前記本体の一端から他端に亘って形成された複数の溝部と、前記溝部に藻類のスラリーを供給する供給部と、前記溝部の延在方向と交差する方向における前記本体の一方の端部を、他方の端部より上方に移動させ、前記本体を傾斜させる移動部と、を備える乾燥藻類製造装置を用いて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造方法であって
前記溝部は、前記移動部によって傾斜された状態の鉛直断面が、略二等辺三角形状となるように、前記本体に形成され、
前記供給部は、前記移動部によって前記本体の前記一方の端部が前記他方の端部の上方に移動された後に、前記溝部に前記スラリーを供給する乾燥藻類製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、乾燥藻類製造装置および乾燥藻類製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイオ燃料(炭化水素やバイオディーゼル)や、アスタキサンチン等の生理活性物質を産生することができる藻類(特に、微細藻類)が注目されている。このような藻類を大量に培養し、石油に代わるエネルギーとして利用したり、薬品、飲料、食品、化成品等に利用したりすることが検討されている。
【0003】
藻類から燃料等を取り出したり、藻類自体を薬品等に利用したりするには、培養装置で藻類を大量に培養し、培養した藻類を培養液から分離する。その後、分離した藻類自体を乾燥させて乾燥体(以下、「乾燥藻類」と称する)を得る必要がある。そこで、藻類を乾燥装置で加熱して乾燥させる技術が開発されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-224616号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の技術では、藻類の加熱に要するランニングコストや乾燥装置自体のイニシャルコストがかかるという問題がある。また、藻類を加熱すると、藻類に内包された目的物質が藻類外に流出してしまい、夾雑物が増加するという問題がある。
【0006】
そこで、屋外のコンクリート製の平らな床上に藻類のスラリーを載置して自然乾燥させることが考えられる。しかし、この場合、乾燥藻類が床に固着し、床から乾燥藻類を回収するのが困難になるという問題がある。
【0007】
本開示は、このような課題に鑑み、乾燥藻類を容易に回収することが可能な乾燥藻類製造装置および乾燥藻類製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る乾燥藻類製造装置は、藻類のスラリーを乾燥させて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造装置であって、本体と、本体の一端から他端に亘って形成され、藻類のスラリーを収容する複数の溝部と、を備える。
【0009】
また、溝部の一端および他端のうちいずれか一方または両方を封止する蓋部を備えてもよい。
また、溝部は、深い位置ほど溝幅が小さくてもよい。
また、本体におけるスラリーの接触面は、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成されてもよい。
また、溝部において乾燥された乾燥藻類の端部を固定する固定部と、略円筒形状の胴部と、を有する回収部を備えてもよい。
【0010】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る乾燥藻類製造方法は、本体と、本体の一端から他端に亘って形成された複数の溝部と、溝部の一端および他端のうちいずれか一方または両方を封止する蓋部と、溝部に藻類のスラリーを供給する供給部と蓋部によって溝部が封止される封止状態と、溝部から蓋部が取り外された開放状態とに蓋部を移動させる開閉部と、を備える乾燥藻類製造装置を用いて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造方法であって、供給部は、開閉部によって蓋部が封止状態に移動された後に、溝部にスラリーを供給す
【0011】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る他の乾燥藻類製造方法は、本体と、本体の一端から他端に亘って形成された複数の溝部と、溝部に藻類のスラリーを供給する供給部と溝部の延在方向と交差する方向における本体の一方の端部を、他方の端部より上方に移動させ、本体を傾斜させる移動部と、を備える乾燥藻類製造装置を用いて、乾燥藻類を製造する乾燥藻類製造方法であって溝部は、移動部によって傾斜された状態の鉛直断面が、略二等辺三角形状となるように、本体に形成され、供給部は、移動部によって本体の一方の端部が他方の端部の上方に移動された後に、溝部にスラリーを供給す
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、乾燥藻類を容易に回収することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施形態の乾燥藻類製造装置を説明するための図である。
図2】乾燥板を説明する図である。図2(a)は、乾燥板の斜視図である。図2(b)は、図2(a)のIIb線断面図である。
図3】蓋部の斜視図である。
図4】第1の実施形態の乾燥藻類の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。
図5】第2の実施形態の乾燥藻類製造装置を説明する図である。図5(a)は、乾燥板をY軸方向から見た図である。図5(b)は、移動部による乾燥板の移動を説明する第1の図である。図5(c)は、移動部による乾燥板の移動を説明する第2の図である。
図6】変形例の蓋部を説明する図である。
図7】変形例の乾燥板を説明する図である。図7(a)は、第1の変形例の乾燥板を説明する図である。図7(b)は、第2の変形例の乾燥板を説明する図である。図7(c)は、第3の変形例の乾燥板を説明する図である。図7(d)は、第4の変形例の乾燥板を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照しながら、本開示の実施形態について詳細に説明する。実施形態に示す寸法、材料、その他具体的な数値等は、理解を容易とするための例示にすぎず、特に断る場合を除き、本開示を限定するものではない。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。また本開示に直接関係のない要素は図示を省略する。
【0018】
[第1の実施形態]
図1は、第1の実施形態の乾燥藻類製造装置100を説明するための図である。なお、図1をはじめとする以下の図では、垂直に交わるX軸(水平方向)、Y軸(水平方向)、Z軸(鉛直方向)を図示の通り定義している。
【0019】
乾燥藻類製造装置100は、藻類のスラリー(藻類と液体(培養液)との混合物)を乾燥させて、乾燥藻類を製造する装置である。ここで、藻類のスラリーは、例えば、藻類10質量%、液体90質量%の混合物である。また、藻類は、油を産生する微生物であり、例えば、ボツリオコッカス、ナンノクロロプシス、ユーグレナ、シュードコリシスチス等の微細藻類である。
【0020】
乾燥藻類製造装置100は、太陽光を受光可能な屋外に設けられる。本実施形態において、乾燥藻類製造装置100は、地面10上に建設された屋根構造体20内に設けられる。
【0021】
屋根構造体20は、後述する乾燥藻類製造装置100の乾燥板110を収容可能な建物である。屋根構造体20は、複数(ここでは4本)の支柱22と、天井部24とを含んで構成される。支柱22は、下端が地面10から立設しており、鉛直方向(図1中Z軸方向)に延在する。天井部24は、支柱22の上端に接続される。
【0022】
天井部24は、フレーム26と、防水シート28とを含んで構成される。フレーム26は、枠体26aと、棟26bと、垂木26cとを含んで構成される。枠体26aは、支柱22に接続され、隣接する支柱22間に亘って延在した枠部材である。枠体26aのうち、短手方向(図1中X軸方向)に延在する部分26abは、中央が鉛直上方に突出するように屈曲している。棟26bは、枠体26aの部分26abの中央に接続され、図1中Y軸方向に延在した棒部材である。垂木26cは、枠体26aの長手方向の部分26acと棟26bとを接続する。防水シート28は、フレーム26上に展張される。防水シート28は、太陽光を透過可能であり、雨、雪、雹等の降水物が透過不可能な部材、例えば、プラスチック(例えば、ポリエチレン)やガラス等で構成される。
【0023】
乾燥藻類製造装置100は、乾燥板110と、蓋部120と、開閉部130と、供給部140と、回収部150とを含む。なお、図1中、理解を容易にするために、2つの蓋部120のうち、一方の蓋部120を開閉する開閉部130の図示を省略する。また、理解を容易にするために、図1をはじめとする以下の図では、本体112に対して溝部114を大きく図示する。
【0024】
本実施形態において、乾燥藻類製造装置100は、複数の乾燥板110を含む。複数の乾燥板110は、屋根構造体20内の地面10上に敷設される。本実施形態では、例えば、6個の乾燥板110が、図1中X軸方向に2個、Y軸方向に3個敷設される。乾燥板110は、本体112と、溝部114とを含む。
【0025】
図2は、乾燥板110を説明する図である。図2(a)は、乾燥板110の斜視図である。図2(b)は、図2(a)のIIb線断面図である。
【0026】
図2(a)に示すように、本体112は、例えば、矩形形状の平板である。本体112の寸法は、例えば、X軸方向の幅が2mであり、Y軸方向の長さが2mである。本体112は、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成される。ポリエチレンは、例えば、HDPE(高密度ポリエチレン)、LLDPE(直鎖状低密度ポリエチレン)である。フッ素樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン(登録商標))である。
【0027】
また、本体112は、太陽光の反射率が40%以下の色である。本体112の色は、例えば、黒色、紺色、焦げ茶色、深緑色である。
【0028】
溝部114は、本体112に複数形成される。複数の溝部114は、本体112の一端から他端に亘って形成される。つまり、複数の溝部114は、図2(a)中Y軸方向に延在し、図2(a)中X軸方向に並列するように形成される。
【0029】
図2(a)、図2(b)に示すように、溝部114は、V溝(V字形状の溝)である。つまり、溝部114は、深さ方向(図2(b)中Z軸方向)に向かうに従って溝幅Wが漸減する形状である。溝幅Wは、水平面(図2(b)中XY平面)における溝壁116a、116b間の距離(図2(b)中X軸方向の距離)である。本実施形態において、溝部114は、鉛直断面(図2(b)中XZ断面)が、二等辺三角形形状である。溝部114の深さDは、0cmを上回り1cm以下であり、好ましくは5mmである。
【0030】
また、溝部114の溝幅Wのうち最も大きい箇所の長さ(つまり、本体112において隣り合う溝部114同士の間に形成される頂部116と、当該頂部116と隣り合う頂部116との間の長さ)は、0cmを上回り5cm以下であり、好ましくは、深さDと等しい(例えば、5mm)。
【0031】
図1に戻って説明すると、複数の乾燥板110は、自体の溝部114と、Y軸方向に隣接する乾燥板110の溝部114との少なくとも一部が連続するように敷設される。
【0032】
蓋部120は、複数の乾燥板110のうち、Y軸方向の両端部に配される乾燥板110の溝部114を封止する。図3は、蓋部120の斜視図である。図3に示すように、蓋部120は、例えば、矩形形状の平板である。蓋部120の高さ(図3中Z軸方向の長さ)Hfは、乾燥板110の下面110aから頂部116までの高さHkよりも大きい。蓋部120の幅(図3中X軸方向の幅)は、X軸方向に並列された複数の乾燥板110の幅(X軸方向の幅)の合計以上である。蓋部120は、開閉部130(図1参照)によって、鉛直方向(図3中Z軸方向、上下方向)に移動される。
【0033】
図1に戻って説明すると、開閉部130は、蓋部120を鉛直方向(図1中Z軸方向)に往復動させる。本実施形態において、開閉部130は、ワイヤ132と、プーリ134と、ウインチ136(巻き揚げ機)とを含む。ワイヤ132は、蓋部120に固定される。ワイヤ132は、プーリ134に張架される。ワイヤ132は、ウインチ136によって、鉛直上方向に巻回されたり、鉛直下方向に巻回されたりする。これにより、蓋部120が鉛直上方向に移動したり、鉛直下方向に移動したりする。
【0034】
なお、蓋部120は、地面10に載置された状態で、乾燥板110の溝部114を封止するように配される。以下、蓋部120が地面10に載置された状態、つまり、蓋部120によって溝部114が封止される状態を封止状態という。また、開閉部130は、封止状態の蓋部120を鉛直上方向に移動させ、溝部114から蓋部120が取り外された開放状態にする。開閉部130は、開放状態の蓋部120を鉛直下方向に移動させ、封止状態にする。
【0035】
供給部140は、乾燥板110の溝部114にスラリーを供給する。供給部140は、例えば、ポンプ142と、ホース144とを含む。
【0036】
回収部150は、例えば、リール(ボビン)である。回収部150は、胴部152と、2つの鍔部154と、固定部156とを含む。胴部152は、略円筒形状である。鍔部154は、略円板形状である。鍔部154は、胴部152の両端に固定される。固定部156は、溝部114において乾燥された乾燥藻類の端部を固定する。固定部156は、例えば、胴部152または鍔部154に設けられた切り欠きである。
【0037】
[乾燥藻類の製造方法]
続いて、乾燥藻類製造装置100を用いた乾燥藻類の製造方法について説明する。図4は、第1の実施形態の乾燥藻類の製造方法の処理の流れを示すフローチャートである。図4に示すように、第1の実施形態の乾燥藻類の製造方法は、封止工程S110、供給工程S120、乾燥工程S130、開放工程S140、回収工程S150を含む。以下、各工程について説明する。
【0038】
[封止工程S110]
封止工程S110は、開閉部130が蓋部120を封止状態に移動させる工程である。
【0039】
[供給工程S120]
供給工程S120は、供給部140が乾燥板110の溝部114にスラリーを供給する工程である。
【0040】
[乾燥工程S130]
乾燥工程S130は、スラリーを所定の乾燥時間放置する工程である。なお、乾燥時間は、所望される乾燥藻類の含水率に基づいて決定される。乾燥工程S130を遂行することにより、スラリーを乾燥させることができ、これにより、乾燥藻類が生成される。
【0041】
[開放工程S140]
開放工程S140は、開閉部130が蓋部120を開放状態に移動させる工程である。
【0042】
[回収工程S150]
回収工程S150は、回収部150によって溝部114から乾燥藻類を回収する工程である。具体的に説明すると、まず、乾燥藻類の端部を回収部150の固定部156に固定させる。続いて、不図示の巻き取り機によって、胴部152を回転させ、胴部152に乾燥藻類を巻回す。こうして、回収された乾燥藻類は、後段の油抽出設備に搬送される。
【0043】
以上説明したように、本実施形態にかかる乾燥藻類製造装置100およびこれを用いた乾燥藻類の製造方法によれば、側面が開放された屋根構造体20内に設けられた乾燥板110にスラリーを載置することにより、スラリーを自然乾燥(風乾)させることができる。また、天井部24を備える構成により、太陽光による乾燥(天日干し)を行うことができ、また、降水物によってスラリーが濡れてしまう事態を回避することが可能となる。
【0044】
また、本実施形態の乾燥藻類製造装置100は、乾燥板110が溝部114を備え、溝部114上でスラリーを乾燥させる。これにより、地面10が水平でなくても、つまり、地面10が傾斜していても、スラリーを溝部114に留めることができる。したがって、乾燥板110は、スラリーが乾燥板110上から流出してしまう事態を回避することができる。これにより、スラリーが地面10に接触してしまうことを防止することができ、乾燥藻類を容易に回収することが可能となる。また、乾燥板110は、ある程度の厚みでスラリーを乾燥させることが可能となる。
【0045】
さらに、溝部114が本体112の一端から他端に亘って形成されているため、乾燥板110は、乾燥藻類を棒形状とすることができる。これにより、乾燥藻類の回収、および、後段の油抽出設備におけるハンドリングを容易にすることが可能となる。また、溝部114は、深さが1cm以下であることにより、腐敗する前にスラリーを乾燥させることができる。さらに、溝部114は、V溝である、つまり、深い位置ほど溝幅Wが小さい(狭い)形状であるため、鉛直下方に向かうに従ってスラリーの量が少なくなる。つまり、太陽光が到達し難い鉛直下方のスラリーの量を少なくすることができ、溝部114に収容されたスラリー全体の乾燥速度を向上させることが可能となる。また、溝部114がV溝であるため、重力と溝壁116a、116bの傾斜とによって、スラリーを溝部114の中央に凝縮(集約)することができる。これにより、乾燥藻類製造装置100は、高濃度かつ均一な濃度の乾燥藻類を回収することが可能となる。
【0046】
また、本体112が、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成される構成により、スラリーが乾燥される過程において、本体112(溝部114)への藻類の固着を抑制することができる。これにより、溝部114からの乾燥藻類の剥離性を向上することができ、乾燥藻類を容易に回収することが可能となる。
【0047】
さらに、本体112が、太陽光の反射率が40%以下の色、つまり、太陽光の反射率が低い色であることにより、太陽光を効率よく太陽熱に変換させることができる。これにより、スラリーの表面に直接照射される太陽光のみならず、本体112で生じた太陽熱によってスラリーを乾燥させることが可能となる。
【0048】
また、乾燥藻類製造装置100は、蓋部120を備える構成により、スラリーを供給する際、スラリーが流動性を有している間、溝部114からスラリーが流出してしまう事態を回避することができる。
【0049】
さらに、乾燥藻類製造装置100は、開閉部130を備える構成により、スラリーを供給する際に、蓋部120を封止状態とすることができる。これにより、スラリーを供給する際、溝部114からスラリーが流出してしまう事態を回避することができる。また、開閉部130は、乾燥藻類を回収する際に、蓋部120を開放状態とすることができる。これにより、乾燥藻類の端部を回収部150に固定させることが容易になる。したがって、回収部150は、乾燥藻類の回収を容易に行うことができる。
【0050】
また、乾燥藻類製造装置100は、回収部150を備える構成により、乾燥藻類の端部を固定部156に固定し、胴部152(または鍔部154)を回転させるだけで、乾燥藻類を容易に回収することが可能となる。
【0051】
[第2の実施形態]
上記第1の実施形態では、鉛直断面が二等辺三角形形状の溝部114を備える乾燥板110について説明した。つまり、頂部116から底部118までの距離が等しい溝部114について説明した。換言すれば、底部118を通る鉛直面に対して面対称である形状の溝部114について説明した。しかし、第2の実施形態の溝部214は、頂部216a、216bから底部218までの距離が異なってもよい。
【0052】
図5は、第2の実施形態の乾燥藻類製造装置200を説明する図である。図5(a)は、乾燥板210をY軸方向から見た図である。図5(b)は、移動部220による乾燥板210の移動を説明する第1の図である。図5(c)は、移動部220による乾燥板210の移動を説明する第2の図である。なお、図5(b)、図5(c)中、スラリーおよび乾燥藻類をクロスハッチングで示す。
【0053】
乾燥藻類製造装置200は、乾燥藻類製造装置100と比較して、溝部214の形状が異なる点および移動部220を備える点のみ異なる。したがって、上記乾燥藻類製造装置100と実質的に等しい構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0054】
図5(a)に示すように、本実施形態の乾燥板210は、本体112と、溝部214とを含む。溝部214は、V溝である。溝部214は、深さ方向(図5(a)中Z軸方向)に向かうに従って溝幅Wが漸減する形状である。溝部214は、底部218と本体112の頂部216aとの距離Laと、底部218と本体112の頂部216bとの距離Lbとが異なる。具体的に説明すると、距離Laは、距離Lbよりも短い。
【0055】
図5(b)に示すように、移動部220は、乾燥板210の本体112における溝部214の延在方向(図5(b)中Y軸方向)と交差する方向(図5(b)中X軸方向)の一方の端部210aを、他方の端部210bより上方(図5(b)中Z軸方向)に移動させる。本実施形態において、移動部220は、ワイヤ222と、プーリ224と、ウインチ226(巻き揚げ機)とを含む。ワイヤ222は、乾燥板210の本体112における一方の端部210aに固定される。ワイヤ222は、プーリ224に張架される。ワイヤ222は、ウインチ226によって、鉛直上方向に巻回されたり、鉛直下方向に巻回されたりする。これにより、乾燥板210は、他方の端部210bの下端を回転軸として傾斜する。
【0056】
本実施形態において、移動部220は、乾燥板210の下面110aと地面10との為す角が角度θとなるように、乾燥板210を傾斜させる。乾燥板210の溝部214は、角度θ傾斜された状態で、鉛直断面(図5(b)中XZ断面)が、二等辺三角形形状となるように本体112に形成される。具体的に説明すると、角度θ傾斜された状態において、底部218と頂部216aの間に形成される溝壁と、水平面との為す角、および、底部218と頂部216bの間に形成される溝壁と、水平面との為す角をδとする。この場合、溝部214における、底部218と頂部216aの間に形成される溝壁と、底部218と頂部216bの間に形成される溝壁との為す角αは、180度-2δとなる。そして、乾燥板210が水平面に載置された状態では、溝部214における底部218と頂部216aの間に形成される溝壁、水平面との為す角βは、δ+αとなる。また、乾燥板210が水平面に載置された状態で、溝部214における底部218と頂部216bの間に形成される溝壁と、水平面との為す角γは、|δ-α|となる。
【0057】
そして、供給部140は、移動部220によって本体112の一方の端部210aが他方の端部210bの上方に移動された後に、溝部214にスラリーを供給する。そうすると、スラリーは、隣り合う溝部214に自重で流れ込むことになる。
【0058】
その後、図5(c)に示すように、移動部220は、供給部140によるスラリーの供給が終了した後、または、スラリーの乾燥が終了した後、乾燥板210の一方の端部210aを鉛直下方に移動させ、地面10に接地させる。そして、回収部150は、乾燥藻類を乾燥板210から回収する。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態の乾燥藻類製造装置200は、移動部220を備える構成により、乾燥板210の一方の端部210aから他方の端部210bにスラリーが自重で移動するため、スラリーを供給する際に、ホース144(出口)を移動させる距離を短くすることができる。これにより、乾燥藻類製造装置200は、スラリーを乾燥板210に効率よく供給することが可能となる。
【0060】
また、移動部220によって乾燥板210を傾斜させたときに、溝部214の鉛直断面形状が二等辺三角形形状となるように溝部214が構成されるため、乾燥藻類の鉛直断面形状を二等辺三角形形状とすることができる。これにより、後段の油抽出設備におけるハンドリングを容易にすることが可能となる。
【0061】
以上、添付図面を参照しながら実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本開示の技術的範囲に属するものと了解される。
【0062】
例えば、上記実施形態において、蓋部120が、複数の乾燥板110、210のうち、Y軸方向の両端部に配される乾燥板110、210の溝部114、214を封止する構成を例に挙げて説明した。しかし、蓋部120は、Y軸方向の一端部に配される乾燥板110、210の溝部114、214を封止してもよい。また、複数の乾燥板110、210が非接触で配される場合、乾燥藻類製造装置100が1の乾燥板110を備える場合、および、乾燥藻類製造装置200が1の乾燥板210を備える場合、蓋部120は、1の乾燥板110、210に形成された溝部114、214の一端および他端のうちいずれか一方または両方を封止してもよい。また、蓋部120は、着脱自在でなくてもよい。例えば、蓋部120は、乾燥板110に固定されていてもよい。また、蓋部120は、乾燥板110と一体成形されてもよい。さらに、蓋部120は、必須の構成ではなく、省略してもよい。
【0063】
また、上記実施形態において、開閉部130が蓋部120を鉛直上下方向に移動させる構成を例に挙げて説明した。しかし、開閉部130は、蓋部120を封止状態と、開放状態に移動できれば、移動方向に限定はない。例えば、開閉部130は、蓋部120を水平方向に移動させてもよいし、蓋部120を回動させてもよい。
【0064】
また、上記実施形態において、蓋部120の高さHfが、乾燥板110の高さHkよりも大きい場合を例に挙げて説明した。しかし、蓋部120の高さHfは、乾燥板110の高さHkよりも小さくてもよい。蓋部120の高さHfは、少なくとも溝部114の深さD以上であればよい。
【0065】
また、上記実施形態において、蓋部120が矩形形状の平板である場合を例に挙げて説明した。しかし、蓋部120は、溝部114、214を封止できれば、形状に限定はない。図6は、変形例の蓋部320を説明する図である。図6に示すように、蓋部320は、複数の嵌合部322と、堰き止め部324とを備える。嵌合部322は、溝部114の形状と実質的に等しい。嵌合部322は、溝部114に嵌合する。堰き止め部324は、矩形形状の平板である。堰き止め部324は、複数の嵌合部322の上部に接続される。
【0066】
また、上記第2の実施形態において、乾燥板210の溝部214は、角度θ傾斜された状態で、鉛直断面が、二等辺三角形形状となるように本体112に形成される場合を例に挙げて説明した。しかし、溝部214は、移動部220によって乾燥板210が傾斜された際に、隣接する溝部214へスラリーが自重で流れるように形成されていれば、形状に限定はない。例えば、溝部214は、角度θ傾斜された状態で、乾燥板210における端部210b側の頂部216aが、端部210a側の頂部216bより鉛直下方になるように形成されればよい。
【0067】
また、上記実施形態において、溝部114、214は、深い位置ほど溝幅Wが小さい形状である場合を例に挙げて説明した。しかし、溝部114、214の形状に限定はない。図7は、変形例の乾燥板410、510、610、710を説明する図である。図7(a)は、第1の変形例の乾燥板410を説明する図である。図7(b)は、第2の変形例の乾燥板510を説明する図である。図7(c)は、第3の変形例の乾燥板610を説明する図である。図7(d)は、第4の変形例の乾燥板710を説明する図である。
【0068】
図7(a)に示すように、第1の変形例の乾燥板410は、本体112に形成された溝部414を含む。溝部414は、鉛直断面(図7(a)中XZ断面)が、サインカーブ形状である。つまり、溝部414は、底部418がX軸方向に湾曲する形状である。また、乾燥板410の本体112の頂部416は、X軸方向に湾曲する形状である。このような溝部414の形状により、回収部150によって乾燥藻類を回収する際に、溝部414に残存する乾燥藻類を低減することができる。
【0069】
図7(b)に示すように、第2の変形例の乾燥板510は、本体112に形成された溝部514を含む。溝部514は、頂部516と底部518との間の溝壁が対向する溝壁側に突出する形状である。つまり、溝部514は、溝部114と比較して、深さ方向に向かうに従い、溝幅の漸減率が大きくなる。このような溝部514の形状により、溝部514の底部518近傍におけるスラリーの乾燥速度をより向上させることができる。
【0070】
図7(c)に示すように、第3の変形例の乾燥板610は、本体112に形成された溝部614を含む。溝部614は、鉛直断面(図7(c)中XZ断面)が、矩形形状である。また、乾燥板610の本体112の頂部616は、X軸方向に延在した水平面である。このような溝部614の形状により、溝部114と比較して、大量のスラリーを溝部614に収容させることができる。
【0071】
図7(d)に示すように、第4の変形例の乾燥板710は、本体112に形成された溝部114を備える。乾燥板710の本体112の頂部716は、X軸方向に延在した水平面である。このような頂部716の形状により、供給部140および回収部150が乾燥板710上に載置された場合に、乾燥板710の破損を防止することができる。
【0072】
また、上記実施形態において、本体112がポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成される場合を例に挙げて説明した。しかし、本体112における、少なくともスラリーの接触面が、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数で形成されていればよい。つまり、本体112におけるスラリーの接触面が、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂、および、ブチルゴムのうち、いずれか1または複数でコーティングされていればよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本開示は、乾燥藻類製造装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
100 乾燥藻類製造装置
112 本体
114 溝部
120 蓋部
130 開閉部
140 供給部
150 回収部
200 乾燥藻類製造装置
214 溝部
220 移動部
320 蓋部
414 溝部
514 溝部
614 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7