IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日立工機株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-打込機 図1
  • 特許-打込機 図2
  • 特許-打込機 図3
  • 特許-打込機 図4
  • 特許-打込機 図5
  • 特許-打込機 図6
  • 特許-打込機 図7
  • 特許-打込機 図8
  • 特許-打込機 図9
  • 特許-打込機 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】打込機
(51)【国際特許分類】
   B25C 1/00 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B25C1/00 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019102653
(22)【出願日】2019-05-31
(65)【公開番号】P2020196073
(43)【公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大野 章
(72)【発明者】
【氏名】李 彦廷
【審査官】大光 太朗
(56)【参考文献】
【文献】実開昭52-133386(JP,U)
【文献】特開2006-21303(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25C 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
留具を保持するマガジンと、
前記マガジンに対して作動可能であり、かつ、前記マガジンが保持している前記留具を第1の向きで送るフィーダと、
前記フィーダを前記第1の向きで付勢する付勢部材と、
前記フィーダによって送られる前記留具が進入する射出部と、
前記第1の向きに対して交差する方向に作動可能であり、かつ、前記射出部に進入した前記留具を打撃する打撃部と、
を有する打込機であって、
前記付勢部材は、前記第1の向きに窪んだ形状であって前記マガジンに係合する係合部を有する第1端部と、前記フィーダに接続される第2端部とを有し、前記第1端部に対して前記第2端部を近づけるように付勢することで前記フィーダを前記第1の向きに付勢し、
前記マガジンは、板状部と、前記板状部の端部に設けられ、前記第1の向きと直交する厚み方向に前記板状部よりも突出し、前記第1の向きに前記係合部の内部へ進入することで前記係合部と係合する突起部と、
を備えている、打込機。
【請求項2】
前記マガジンは、
前記留具を収容する本体と、
前記本体に取り付けられるカバーと、
を有し、
前記板状部および前記突起部は、前記カバーに設けられている、請求項1記載の打込機。
【請求項3】
前記マガジンは、前記打撃部の作動方向に対して垂直な平面内で複数の前記留具を1列に並べて保持する、請求項1または2記載の打込機。
【請求項4】
前記突起部は、屈曲部を含む、請求項2記載の打込機。
【請求項5】
前記突起部は、前記カバーとは別部材であり、かつ、前記別部材が前記カバーに固定されている、請求項2記載の打込機。
【請求項6】
前記留具を打撃するように前記打撃部を作動させる付勢機構と、
前記付勢機構を有するハウジングと、
を備えている、請求項1乃至5の何れか1項記載の打込機。
【請求項7】
前記係合部は、前記打撃部の作動方向に間隔をおいて配置されて間に前記突起部が進入する凹部を形成する第1構成部及び第2構成部を備え、
前記屈曲部は、前記第1構成部と前記第2構成部との間に配置されている、請求項4記載の打込機。
【請求項8】
前記突起部は、前記マガジンから前記打撃部の作動方向に突出している、請求項1乃至7の何れか1項記載の打込機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、留具を打撃する打撃部と、打撃部により打撃される前の留具が供給される射出部と、射出部へ供給する留具を保持するマガジンと、を有する打込機に関する。
【背景技術】
【0002】
留具を打撃する打撃部と、打撃部により打撃される前の留具が供給される射出部と、射出部へ供給する留具を保持するマガジンと、を有する打込機の一例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された打込機は、ハウジング、ハンドル、蓄圧室、打撃部、トリガ、プッシュレバー、射出部及びマガジンを有する。フィーダ及び付勢部材が、マガジンに設けられている。付勢部材はスプリングであり、スプリングの第1端部は、マガジンに係合され、スプリングの第2端部は、軸によってフィーダに接続されている。フィーダは、スプリングの付勢力で射出部に向けて第1の向きに付勢される。フィーダは、マガジンが保持している釘を射出部へ送る。トリガが操作され、かつ、プッシュレバーが相手材に押し付けられると、蓄圧室の空気圧で打撃部が作動し、打撃部は射出部の留具を打撃する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-21303号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本願発明者は、付勢部材がマガジンに対して打撃部の作動方向に移動すると、フィーダが第1の向きに作動する状態が不安定になる、という課題を認識した。
【0005】
本発明の目的は、フィーダが留具を射出部に送るため第1の向きに作動する状態を安定させることの可能な打込機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態の打込機は、留具を保持するマガジンと、前記マガジンに対して作動可能であり、かつ、前記マガジンが保持している前記留具を第1の向きで送るフィーダと、前記フィーダを前記第1の向きで付勢する付勢部材と、前記フィーダによって送られる前記留具が進入する射出部と、前記第1の向きに対して交差する方向に作動可能であり、かつ、前記射出部に進入した前記留具を打撃する打撃部と、を有する打込機であって、前記付勢部材は、前記第1の向きに窪んだ形状であって前記マガジンに係合する係合部を有する第1端部と、前記フィーダに接続される第2端部とを有し、前記第1端部に対して前記第2端部を近づけるように付勢することで前記フィーダを前記第1の向きに付勢し、前記マガジンは、板状部と、前記板状部の端部に設けられ、前記第1の向きと直交する厚み方向に前記板状部よりも突出し、前記第1の向きに前記係合部の内部へ進入することで前記係合部と係合する突起部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
一実施形態の打込機は、フィーダが第1の向きに作動する状態を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明に含まれる打込機の実施形態を示す右側面断面図である。
図2】打込機の実施形態を示す正面図である。
図3図1に示す打込機の部分的な右側面断面図である。
図4図1の打込機に設けられたトリガバルブ及びプッシュレバーの右側面断面図である。
図5図1に示す打込機に設けたマガジンの構造を示す左側面図である。
図6図1に示す打込機の分解斜視図である。
図7】打込機において、スプリングをマガジンに位置決めする具体例1の断面図である。
図8】打込機において、スプリングをマガジンに位置決めする具体例2の断面図である。
図9】打込機において、スプリングをマガジンに位置決めする具体例3の断面図である。
図10】打込機において、スプリングをマガジンに位置決めする具体例4の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本発明の打込機に含まれるいくつかの実施形態のうち、代表的な打込機を図面を参照して説明する。
【0010】
図1及び図2に示す打込機10は、ハウジング11、射出部12、打撃部13、トリガ14、プッシュレバー15、トリガバルブ16及びプッシュレバーバルブ17を有する。ハウジング11は、胴部18、ハンドル19及びヘッドカバー20を有する。胴部18は筒形状あり、ハンドル19は胴部18に接続されている。ヘッドカバー20は、胴部18の長手方向で第1端部に固定されており、ヘッドカバー20は、胴部18の開口部を塞いでいる。また、射出部12は、胴部18の長手方向で第2端部に、固定要素としてのねじ部材110を用いて固定されている。プラグ21がハンドル19に設けられ、プラグ21にエアホースが接続される。
【0011】
胴部18内にシリンダ22が設けられている。シリンダ22は、ハウジング11に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。中心線A1は、シリンダ22の中心線である。打撃部13は、シリンダ22の内部及び外部に亘って配置されている。打撃部13は、シリンダ22に対して中心線A1に沿った方向に作動可能である。蓄圧室23が、ハンドル19内、胴部18内、ヘッドカバー20内に亘って設けられている。エアホースから供給される圧縮空気は、蓄圧室23に溜められる。
【0012】
ヘッドカバー20は、図3のようにエキゾーストバルブ室26を有する。マウント部27が、ヘッドカバー20に取り付けられている。マウント部27は、通路28および通路29を有する。通路28は、ハウジング11の外部B1につながっている。マウント部27はエキゾーストバルブ30を支持している。エキゾーストバルブ30は、マウント部27に対して中心線A1に沿った方向に移動可能である。エキゾーストバルブ30が作動すると、通路29が開閉される。つまり、通路28と通路29とが接続及び遮断される。
【0013】
バルブシート31がマウント部27に取り付けられている。バルブシート31は、合成ゴム製であり、バルブシート31はピストン上室32を有する。ピストン上室32は、通路29につながっている。
【0014】
打撃部13は、ピストン33及びドライバブレード34を有する。ピストン33及びドライバブレード34は、一体成型品でもよい。ピストン33とドライバブレード34とは、別部品を固定したものでもよい。ピストン33はシリンダ22内に設けられ、ピストン33は、シリンダ22に対して中心線A1に沿った方向に作動可能である。ピストン33は、ピストン上室32の圧力により、中心線A1に沿った方向でバルブシート31から離間する向きで付勢される。ピストン33の外周面にシール部材97が取り付けられている。シール部材97は、シリンダ22の内周面に接触する。
【0015】
図1のように、シリンダ22内における中心線A1に沿った方向で、ピストン33と射出部12との間に、ピストン下室35が設けられている。シール部材97は、ピストン下室35をシールする。戻し空気室36が、胴部18とシリンダ22との間に設けられている。図4のように、シリンダ22を径方向に貫通する通路37,38が設けられている。逆止弁98がシリンダ22の外周面に設けられている。逆止弁98は、シリンダ22内の圧力で作動し、かつ、通路37を開閉する。通路38は、ピストン下室35と戻し空気室36とを、常に接続する。通路38は、中心線A1に沿った方向で通路37と射出部12との間に配置されている。
【0016】
さらに、バンパ39が、胴部18内に設けられている。バンパ39の一部は、シリンダ22内に配置され、かつ、射出部12に接触している。バンパ39は、合成ゴム製である。バンパ39は、軸孔40を有する。さらに、図3に示す通路42が、シリンダ22の端部とバルブシート31との間に形成される。
【0017】
図1のように、射出部12は、射出路43を有する。射出路43は、軸孔40につながっている。ドライバブレード34は、軸孔40及び射出路43内で中心線A1に沿った方向に移動可能である。図3のように、ホルダ44が胴部18の内部に設けられている。ホルダ44は環状であり、ホルダ44は、シリンダ22の径方向で、シリンダ22の外に配置されている。ホルダ44は通路45を有し、胴部18は、通路25を有する。通路45は、通路25によって蓄圧室23につながっている。フランジ46が、シリンダ22の外周面に設けられている。制御室48が、シリンダ22とホルダ44との間に設けられている。制御室48は、通路45によって蓄圧室23につながっている。
【0018】
ヘッドカバー20内と胴部18内とを隔てる隔壁99が設けられている。隔壁99とフランジ46との間に制御室50が形成されている。ハウジング11は、通路51を有し、制御室50は通路51につながっている。フランジ46は、制御室48,50の圧力を受ける。制御室48に対応するフランジ46の受圧面積は、制御室50に対応するフランジ46の受圧面積よりも狭い。シリンダ22は、制御室48の圧力により、バルブシート31に近づく向きで常時、付勢されている。
【0019】
トリガ14は、図4のようにハウジング11に取り付けられている。トリガ14は、支持軸52を中心として、所定角度の範囲内で作動可能である。トリガ14は、スプリングによって時計回りに付勢されている。作業者がハンドル19を手で握り、かつ、指でトリガ14に操作力を付加すると、トリガ14は、スプリングの付勢力に抗して反時計回りに作動可能である。作業者がトリガ14に対する付勢力を解除すると、トリガ14は、スプリングの付勢力で時計回りに作動し、かつ、初期位置で停止する。
【0020】
プッシュレバー15は、図1及び図2のように射出部12に取り付けられている。プッシュレバー15は、ハウジング11及び射出部12に対して、中心線A1に沿った方向に作動可能である。プッシュレバー15は、付勢部材であるスプリング54により、ハウジング11から離間する向きで付勢されている。スプリング54により付勢されるプッシュレバー15は、ストッパに接触して初期位置で停止する。プッシュレバー15の先端が相手材W1に押し付けられると、プッシュレバー15は、スプリング54の付勢力に抗してハウジング11に近づく向きで作動可能である。
【0021】
トリガバルブ16及びプッシュレバーバルブ17の構造が、図4に示されている。トリガバルブ16は、筒形状のガイド部56、ボール形状の弁部材57、プランジャ58及び通路59を有する。ガイド部56は、ハウジング11に取り付けられている。通路59は、ガイド部56に設けられている。プランジャ58は、ガイド部56に対して、中心線A2に沿った方向に作動可能である。中心線A2と中心線A1とは平行である。トリガ14に対する操作力が解除されていると、プランジャ58は初期位置で停止している。つまり、トリガバルブ16は図4のように初期状態にある。初期状態にあるトリガバルブ16は、蓄圧室23と通路59とを遮断し、通路59と外部B1とを接続している。
【0022】
トリガ14に操作力が付加されてプランジャ58が初期位置から作動すると、トリガバルブ16は、初期状態から作動状態に切り替わる。作動状態にあるトリガバルブ16は、蓄圧室23と通路59とを接続し、かつ、通路59と外部B1とを遮断している。このため、蓄圧室23の圧縮空気は、通路59へ流れ込む。
【0023】
プッシュレバーバルブ17は、圧力室60、バルブボディ61、プランジャ62、弁部材63、付勢部材としてのスプリング64を有する。圧力室60は、通路59につながっている。バルブボディ61は、胴部18に取り付けられ、プランジャ62及び弁部材63は、バルブボディ61に対して中心線A3に沿った方向にそれぞれ作動可能である。中心線A3は、バルブボディ61の中心線であり、中心線A1と中心線A3とが平行である。バルブボディ61は、排気通路65を有する。排気通路65は、外部B1につながっている。スプリング64は、弁部材63をプランジャ62に近ける向きで付勢する。また、プッシュレバー15は、アーム68を有し、アーム68とプランジャ62とが、動力伝達可能に接続されている。
【0024】
プッシュレバー15が相手材W1から離間していると、プッシュレバー15は初期位置で停止している。プッシュレバー15からプランジャ62に作動力は伝達されず、プランジャ62は、図4に示す初期位置で停止している。つまり、プッシュレバーバルブ17は、初期状態にある。プッシュレバーバルブ17が初期状態にあると、プランジャ62は排気通路65を開き、かつ、弁部材63は、圧力室60と通路51とを遮断し、かつ、通路51と排気通路65とを接続している。
【0025】
これに対して、作業者がプッシュレバー15を相手材W1に押し付け、プッシュレバー15が中心線A1に沿った方向に作動されると、プッシュレバー15の作動力は、アーム68によってプランジャ62に伝達され、プランジャ62は、初期位置から中心線A3に沿った方向で弁部材63に近づく向きで作動する。このため、プッシュレバーバルブ17は、初期状態から作動状態に切り替わる。プッシュレバーバルブ17が作動状態にあると、プランジャ62が排気通路65を遮断し、かつ、プランジャ62の作動力で弁部材63がスプリング64の付勢力に抗して作動し、圧力室60と通路51とを接続する。
【0026】
図1に示すマガジン85が、打込機10に取り付けられている。マガジン85は、図5に示すように釘86を収容している。釘86は軸形状であり、中心線A1に対して垂直な平面内で、マガジン85内に複数の釘86が1列に直線状に並べられている。図5では、便宜上、マガジン85に収容された1本の釘86を示している。マガジン85は、固定要素としてのねじ部材を用いて、図1に示す射出部12及びハンドル19に対して固定されている。ユーザがねじ部材を緩めると、マガジン85をハンドル19及び射出部12から取り外すことが可能である。フィーダ87がマガジン85に設けられ、フィーダ87は、第1の向きD1で作動して釘86を射出路43へ送る。
【0027】
打込機10の使用例を説明する。作業者は、第1モードまたは第2モードの何れかを選択して打込機10を使用する。第1モードは、トリガ14に操作力を付加した状態で、プッシュレバー15を相手材W1に押し付けることにより、打撃部13を作動させるものである。第2モードは、プッシュレバー15を相手材W1に押し付けた状態で、トリガ14に操作力を付加することにより、打撃部13を作動させるものである。
【0028】
作業者が、トリガ14に対する操作力を解除し、かつ、プッシュレバー15を相手材W1から離間させていると、打込機10は初期状態にある。トリガバルブ16は初期状態にあり、トリガバルブ16は、蓄圧室23と通路59とを遮断している。さらに、プッシュレバーバルブ17は初期状態にあり、プッシュレバーバルブ17は、圧力室60と通路51とを遮断し、通路51と排気通路65とを接続している。エキゾーストバルブ室26は、通路51及び排気通路65を介してハウジング11の外部B1につながっている。このため、エキゾーストバルブ30は、通路29を開き、ピストン上室32は、通路29、通路28によって外部B1につながっている。
【0029】
また、制御室50は、通路51及び排気通路65を介してハウジング11の外部B1につながっている。このため、シリンダ22は、制御室48の空気圧に応じた付勢力でバルブシート31に押し付けられ、通路42が閉じられている。したがって、蓄圧室23の圧縮空気は、ピストン上室32に供給されず、打撃部13は、図1及び図3に示す上死点で停止している。
【0030】
作業者は、プッシュレバー15を相手材W1から離間させた状態を保持し、かつ、トリガ14に操作力を付加する。すると、トリガ14の作動力がプランジャに伝達され、トリガバルブが、初期状態から作動状態に切り替わる。作業者は、次に、プッシュレバー15を相手材W1に押し付ける。すると、プッシュレバーバルブ17は、初期状態から作動状態に切り替わる。トリガバルブ16が作動状態であり、かつ、プッシュレバーバルブ17が作動状態であると、蓄圧室23の圧縮空気の一部は、通路59、圧力室60及び通路51を通ってエキゾーストバルブ室26に供給される。
【0031】
すると、エキゾーストバルブ30が作動し、通路29と通路28とが遮断される。また、蓄圧室23の圧縮空気の一部は、制御室50に供給される。そして、シリンダ22がバルブシート31から離間し、通路42が開く。すると、蓄圧室23の圧縮空気の一部が、ピストン上室32へ流れ込み、ピストン上室32の圧力が上昇する。このため、打撃部13は、上死点から下死点に向けて第1の向きC1で作動、つまり、下降する。打撃部13が下降すると、ドライバブレード34は、射出路43内の釘86を打撃し、釘86が相手材W1に打ち込まれる。
【0032】
打撃部13が下降中、シール部材97が、通路37と通路38との間へ移動すると、逆止弁98は、シリンダ22内に流れ込む圧縮空気の圧力で作動して通路37を開く。このため、シリンダ22内の圧縮空気の一部は、通路37を通って戻し空気室36へ流れ込む。打撃部13が下降してピストン33がバンパ39に衝突すると、バンパ39は打撃部13の運動エネルギの一部を吸収する。また、打撃部13は下死点で停止する。打撃部13が下死点で停止すると、ピストン33がバンパ39に押し付けられ、ピストン33は、シリンダ22内と軸孔40とを遮断する。
【0033】
打撃部13が釘86を相手材W1に打ち込んだ反動により、プッシュレバー15が相手材W1から離間すると、プッシュレバー15はスプリング54の付勢力で作動して初期位置で停止する。このため、プッシュレバーバルブ17は、作動状態から初期状態に切り替わる。
【0034】
すると、制御室50の圧縮空気、及びエキゾーストバルブ室26の圧縮空気は、通路51及び排気通路65を通って外部B1へ排出される。このため、シリンダ22はバルブシート31に近づく向きで作動し、通路42を閉じる。さらに、エキゾーストバルブ30が作動して通路29と通路28とを接続し、ピストン上室32の圧縮空気が外部B1へ排出される。ピストン上室32の圧力が低下すると、ピストン33はピストン下室35の圧力で第2の向きC2で作動、つまり、上昇する。そして、ピストン33がバルブシート31に接触し、打撃部13は上死点で停止する。
【0035】
なお、打撃部13が上昇し、ピストン33がバンパ39から離間すると、戻し空気室36の圧縮空気は、ピストン下室35及び軸孔40を通って外部B1に排出され、ピストン下室35の圧力は、外部B1の圧力と略同じになる。
【0036】
さらに、作業者が第2モードを選択して打込機10を使用する例を説明する。作業者が、プッシュレバー15を相手材W1に押し付けると、プッシュレバーバルブ17は、初期状態から作動状態に切り替わる。作業者は、プッシュレバー15を相手材W1に押し付けた状態で、トリガ14に操作力を付加すると、トリガバルブ16は初期状態から作動状態に切り替わる。したがって、打撃部13が上死点から下降し、釘86が相手材W1に打ち込まれる。打撃部13が釘86を相手材W1に打ち込んだ反動で、プッシュレバー15が相手材W1から離間し、かつ、作業者がトリガ14に対する操作力を解除すると、打込機10は作動状態から初期状態に切り替わる。
【0037】
マガジン85及びフィーダ87の構成が、図5及び図6に示されている。マガジン85は、射出部12から、中心線A1に対して交差する方向に突出して配置されている。マガジン85は、本体106及びカバー91を有する。本体106及びカバー91は、例えば金属製である。本体106は釘86を保持し、カバー91は本体106に取り付けられている。カバー91は、支軸92を中心として本体106に対して作動可能である。マガジン85が射出部及びハンドル19に取り付けられていると、カバー91は、本体106に対して固定されている。本体106はガイド部93を有し、フィーダ87は、ガイド部93に沿って作動可能である。ガイド部93は、中心線A1に対して交差する方向に直線状に配置されている。
【0038】
フィーダ87を、第1の向きD1で付勢するスプリング90が、カバー91に取り付けられている。カバー91は、中心線A1に対して交差する方向に延ばされた天板95を有する。スプリング90は、例えば、金属製の渦巻きスプリングである。つまり、スプリング90は、ベルト状のスプリングプレートが弾性復元力で巻かれることにより、ロール形状を保持している。スプリング90の第1端部にフック96が設けられ、フック96は、天板95に係合されている。フック96は、スプリング90が、マガジン85に対して、第1の向きD1とは逆の第2の向きD2で移動することを阻止する。スプリング90の第2端部は、フィーダ87に接続されている。
【0039】
さらに、マガジン85が釘86を多数保持していると、フィーダは、射出部12から離間した位置で停止する。スプリング90の一部は、天板95に沿って直線状に繰り出された状態にある。フィーダ87はスプリング90の復元力で射出部12に近づく向き、つまり、第1の向きD1で付勢される。そして、打撃部13が下降し、かつ、射出路43にある釘86を打撃した後、打撃部13が上昇してドライバブレード34が射出路43から退避すると、フィーダ87は、スプリング90により第1の向きD1で移動する。したがって、フィーダ87により送られた釘86は、射出路43へ進入する。
【0040】
スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例1が、図7に示されている。フック96は、基部100と、基部100に接続された接続部101と、接続部101に接続された折り返し部102と、を有する。基部100は、プレート状であり、基部100と折り返し部102とが、互いに平行に配置されている。第1の向きD1及び第2の向きD2に沿った仮想線E1と、基部100及び折り返し部102とが平行である。接続部101は、中心線A1に沿って配置されている。仮想線E1は、中心線A1に対して交差する。図1に示すマガジン85は、中心線A1と仮想線E1との間に形成される角度が、90度である例を示す。
【0041】
ベルト形状のスプリング90を、厚さ方向に貫通する孔103が設けられている。係合部111が基部100に設けられている。係合部111は、基部100の中央をカシメ加工、つまり、塑性変形させたものである。係合部111は筒形状であり、係合部111がが孔103に嵌め込まれて、スプリング90とフック96とが互いに固定されている。
【0042】
カバー91は、天板95に接続する接続部104と、接続部104に接続された係合部105とを有する。接続部104は、天板95に対して第2の向きC2で突出している。第2の向きC2は、打撃部13の作動方向の1つである。天板95及び係合部105は、仮想線E1と平行に配置されている。係合部105の少なくとも一部は、基部100と折り返し部102との間に配置されている。接続部101と係合部105の端部とが接触した状態で、スプリング90が収縮しようとする反力を、カバー91が受けている。つまり、フック96は、スプリング90が、マガジン85に対して第2の向きD2で移動することを阻止している。
【0043】
また、天板95が基部100に接触し、かつ、係合部105が折り返し部102に接触する。つまり、天板95は、中心線A1に沿った方向で見かけ上の長さL1を有する。基部100と折り返し部102とは、中心線A1に沿った方向に間隔をおいて配置されている。中心線A1に沿った方向における基部100と折り返し部102との間隔は、距離Lで表すことができる。そして、長さL1は、距離L2と略同一である。このため、カバー91は、フック96及びスプリング90を、マガジン85に対して中心線A1に沿った方向に位置決めし、かつ、フック96及びスプリング90が、マガジン85に対して中心線A1に沿った方向に移動することを阻止する。
【0044】
したがって、フィーダ87が第1の向きD1で作動する状態を安定させることが可能である。例えば、フィーダ87がスプリング90から受ける付勢力の向きと、第1の向きD1とが略平行になる。また、フィーダ87とガイド部93との接触箇所における摩擦抵抗の増加が抑制される。
【0045】
スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例2が、図8に示されている。カバー91は、天板95の端部に接続された突出部107を有する。突出部107は、天板95から中心線A1に沿った方向に突出されている。天板95及び突出部107によって、カバー91の一部がL形を成している。天板95は、基部100に接触し、かつ、突出部107の先端は、折り返し部102に接触する。つまり、天板95は、中心線A1に沿った方向で見かけ上の長さL1を有する。長さL1は、距離L2と略同一である。したがって、スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例2は、具体例1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例3が、図9に示されている。カバー91は、天板95の端部に接続された波形部108を有する。波形部108は、天板95に対して中心線A1に沿った方向に突出している。波形部108は、中心線A1に沿った方向に交互に、かつ、互いに逆向きに屈曲した形状である。天板95は、基部100に接触し、かつ、波形部108の先端は、折り返し部102に接触する。つまり、天板95は、中心線A1に沿った方向で見かけ上の長さL1を有する。長さL1は、距離L2と略同一である。したがって、スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例3は、具体例1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例4が、図10に示されている。天板95にピース109が固定されている。ピース109は鉄製であり、かつ、天板95とピース109とは、溶接によって固定されている。ピース109は、天板95に対して中心線A1に沿った方向に突出している。天板95の一部及びピース109は、基部100と折り返し部102との間に配置されている。天板95は、基部100に接触し、かつ、ピース109は、折り返し部102に接触する。つまり、天板95は、中心線A1に沿った方向で見かけ上の長さL1を有する。長さL1は、距離L2と略同一である。したがって、スプリング90をマガジン85に位置決めする具体例4は、具体例1と同様の効果を得ることができる。
【0048】
さらに、折り返し部102を貫通する雌ねじ穴を設け、ねじ部材を雌ねじ穴に挿入する構成でもよい。ユーザがねじ部材を締め付けると、ねじ部材の先端が天板95に押し付けられる。天板95は、ねじ部材の先端と基部100とにより挟まれる。したがって、スプリング90をマガジン85に位置決めすることが可能である。
【0049】
カバー91は、マガジン85の軽量化のために厚さが制限される。また、フック96の屈曲形状を、カバー91の天板95の厚さに一致させることは難しい。これに対して、実施形態の打込機10は、スプリング90をマガジン85に位置決めする精度を向上可能である。スプリング90をマガジン85に位置決めするとは、スプリング90をマガジン85に中心線A1に沿った方向、及び仮想線E1に沿った方向に位置決めすることである。
【0050】
実施形態で開示した構成の技術的意味の一例は、次の通りである。釘86は、留具の一例である。マガジン85は、マガジンの一例である。第1の向きD1は、第1の向きの一例である。フィーダ87は、フィーダの一例である。スプリング90は、付勢部材の一例である。射出部12は、射出部の一例である。中心線A1に沿った方向が、所定方向及び打撃部の作動方向の一例である。打撃部13は、打撃部の一例である。
【0051】
フック96は、係合部の一例である。図7に示す天板95、接続部104及び係合部105は、突起部及び屈曲部の一例である。図8に示す突出部107は、突起部の一例である。図8に示す天板95及び突出部107は、屈曲部を構成している。図9に示す波形部108は、突起部及び屈曲部の一例である。図10に示すピース109は、突起部の一例である。ピース109は、ピースの一例である。本体106は、本体の一例である。カバー91は、カバーの一例である。ピストン上室32は、付勢機構の一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。折り返し部102は、第1構成部の一例であり、基部100は、第2構成部の一例である。本実施形態で開示された突起部は、カバー91の天板95から、打撃部13の作動方向である中心線A1に沿った方向における第2の向きC2で突出している。
【0052】
本実施形態には、次のような打込機も開示されている。留具を保持するマガジンと、前記マガジンに対して作動可能であり、かつ、前記マガジンが保持している前記留具を第1の向きで送るフィーダと、前記フィーダを前記第1の向きで付勢する付勢部材と、前記フィーダによって送られる前記留具が進入する射出部と、前記第1の向きに対して交差する方向に作動可能であり、かつ、前記射出部に進入した前記留具を打撃する打撃部と、を有する打込機であって、前記付勢部材に設けられて前記マガジンに係合し、かつ、前記付勢部材の一端が前記マガジンに対して前記第1の向きとは逆の第2の向きで移動することを阻止する第1位置決め機構と、前記付勢部材が前記マガジンに対して前記打撃部の作動方向に移動することを阻止する第2位置決め機構と、を備えている、打込機。フック96は、第1位置決め機構の一例である。係合部105、突出部107、波形部108、ピース109は、第2位置決め機構の一例である。
【0053】
打込機は、開示した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、圧縮気体は、空気に代えて、不活性ガス、例えば、窒素ガスまたは希ガスを用いることも可能である。打込機は、ハウジングと射出部とが別部材で構成され、ハウジングと射出部とを固定要素で互いに固定する構成でもよい。打込機は、ハウジングと射出部とが単独部材で構成されている構成でもよい。付勢機構は、圧縮気体の圧力で打撃部を作動させるものの他、固体スプリングの弾性力で打撃部を作動させるもの、可燃性ガスの圧力で打撃部を作動させるもの、磁石の吸引力または磁石の反発力で打撃部を作動させるもの、を含む。
【符号の説明】
【0054】
10…打込機、11…ハウジング、12…射出部、13…打撃部、32…ピストン上室、85…マガジン、86…釘、87…フィーダ、90…スプリング、91…カバー、95…天板、96…フック、104…接続部、105…係合部、106…本体、107…突出部、108…波形部、109…ピース、D1…第1の向き
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10