IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社豊田自動織機の特許一覧

<>
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図1
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図2
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図3
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図4
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図5
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図6
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図7
  • 特許-サイドデフロスタ吹出口構造 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】サイドデフロスタ吹出口構造
(51)【国際特許分類】
   B60H 1/34 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B60H1/34 651C
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019126640
(22)【出願日】2019-07-08
(65)【公開番号】P2021011197
(43)【公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-10-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(72)【発明者】
【氏名】宮下 竜一
【審査官】大野 明良
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-301313(JP,A)
【文献】特開2005-212746(JP,A)
【文献】実開昭60-124368(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102013010637(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60H 1/34
B60S 1/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室の一部を構成するインストルメントパネルと、
前記インストルメントパネルに覆われ、空調機からの空気を通し、前方から上方および後方へ向けて傾斜して延在するサイドデフロスタダクトと、
前記インストルメントパネルに設けられ、前記サイドデフロスタダクトと連通するサイドデフロスタ吹出口と、を有するサイドデフロスタ吹出口構造において、
前記サイドデフロスタ吹出口の後縁を形成する後縁部は、少なくとも前記サイドデフロスタダクトにおける下側のダクト内壁面の延長線上より上方に位置するとともに、前方を臨む端面を有し、
前記端面は、前記車室の前後方向に対し、垂直に立設するとともに、立設方向において前記サイドデフロスタ吹出口から吹き出される吹出空気流に対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さを有し、前記下側のダクト内壁面に沿って流れる空気の向きを上方へ変更し、前記サイドデフロスタダクトにおける主空気流と交差する上向きの交差空気流を発生させ
前記サイドデフロスタダクトは、前記サイドデフロスタ吹出口側の端部の前方において前記下側のダクト内壁面の傾斜角度が小さくなるように屈曲され、前記端部を含む屈曲部位を有し、
前記下側のダクト内壁面は、前記屈曲部位の始まりとなる屈曲始端を有し、
前記屈曲始端と前記端面とは離間していることを特徴とするサイドデフロスタ吹出口構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、サイドドアのドアガラスのガラス面に向けてエアを吹き付けるサイドデフロスタ吹出口構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサイドデフロスタ吹出口構造は、例えば、図7に示すように、インストルメントパネル41にサイドデフロスタ吹出口42が設けられている。サイドデフロスタ吹出口42には空調装置からのサイドデフロスタダクト43が接続され、サイドデフロスタ吹出口42から空調装置からの空気が吹き出される。サイドデフロスタ吹出口42からの吹き出しによる空気流はサイドウインドウに当たり、サイドウインドウの結露が解消される。
【0003】
しかしながら、この種のサイドデフロスタ吹出口構造では、サイドデフロスタ吹出口42から空気流の吹き出し角度によっては、サイドデフロスタ吹出口42からの吹き出しによる空気流の一部(図7において矢印fにより示す)がインストルメントパネル41に沿って流れる。このため、サイドデフロスタ吹出口42からの吹き出される吹出空気流Fがインストルメントパネル41の表面に引き付けられるというコアンダ効果により、サイドウインドウに対して空気を狙い通りに十分に吹き付けられない。なお、図7に示すサイドデフロスタダクト43内の白抜き矢印は、サイドデフロスタダクト43の主空気流Fmである。また、図7ではコアンダ効果を受けた実際の吹出方向はハッチングの矢印にて示し、狙いの吹出方向は二点鎖線の矢印にて示す。
【0004】
そこで、コアンダ効果を打ち消すため、例えば、図8に示すように、インストルメントパネル41のサイドデフロスタ吹出口42にフィンを備える枠状のベゼル部材44を取り付けたサイドデフロスタ吹出口構造が知られている。このサイドデフロスタ吹出口構造では、ベゼル部材44の垂直な内壁面44Aによって一部の空気流の向きを上方に変え、コアンダ効果が生じないサイドデフロスタ吹出口42からの空気流の流れを実現している。
【0005】
また、サイドデフロスタ吹出口構造ではないが、コアンダ効果を打ち消すための技術として、例えば、特許文献1に開示された吹出方向可変装置が知られている。特許文献1に開示された吹出方向可変装置は、気体を吹き出す吹出口と、吹出口の開口の大半を占めて所定方向に気体を吹き出す主流吹出口と、吹出口の所定方向側に隣接して設けられた壁面部と、を備えている。また、空調装置は、交差噴流吹出口と、交差噴流吹出口への気体の流通を開閉する交差噴流開閉手段とを備えている。交差噴流吹出口は、吹出口の開口の一部として主流吹出口と壁面部との間に設けられ、吹出口に供給される気体の一部を一旦主流から分離して主流吹出口から吹き出される主流と交差するように吹き出す。
【0006】
特許文献1に開示された吹出方向可変装置は、コアンダ効果とそれの有無による気流のスイッチング効果とを吹出口からの吹出方向可変に応用したものである。交差噴流吹出口への気体の流通を開閉することにより、所定方向へ流れる気流と、吹出口の所定方向側に隣接して設けられた壁面部に沿って流れる気流とを切り換える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-212746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、図8に示すベゼル部材を用いた従来技術は、コアンダ効果を解消することはできるものの、ベゼル部材を用意する必要があり、製作コストが増大するという問題がある。一方、特許文献1に開示された吹出方向可変装置をサイドデフロスタ吹出口構造へ適用することも考えられる。しかしながら、特許文献1に開示された吹出方向可変装置は、気流の切り換え操作が必要であり、切り換え操作が不要であるサイドデフロスタ吹出口構造への適用は現実的ではない。また、気流の切り換えのための部材が必要であり、製作コストが嵩むという問題がある。
【0009】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、コアンダ効果を防止でき、サイドウインドウへ空気流を適切に吹き付けることが可能なサイドデフロスタ吹出口構造の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明は、車室の一部を構成するインストルメントパネルと、前記インストルメントパネルに覆われ、空調機からの空気を通し、前方から上方および後方へ向けて傾斜して延在するサイドデフロスタダクトと、前記インストルメントパネルに設けられ、前記サイドデフロスタダクトと連通するサイドデフロスタ吹出口と、を有するサイドデフロスタ吹出口構造において、前記サイドデフロスタ吹出口の後縁を形成する後縁部は、少なくとも前記サイドデフロスタダクトにおける下側のダクト内壁面の延長線上より上方に位置するとともに、前方を臨む端面を有し、前記端面は、前記車室の前後方向に対し、垂直に立設するとともに、立設方向において前記サイドデフロスタ吹出口から吹き出される吹出空気流に対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さを有し、前記下側のダクト内壁面に沿って流れる空気の向きを上方へ変更し、前記サイドデフロスタダクトにおける主空気流と交差する上向きの交差空気流を発生させ、前記サイドデフロスタダクトは、前記サイドデフロスタ吹出口側の端部の前方において前記下側のダクト内壁面の傾斜角度が小さくなるように屈曲され、前記端部を含む屈曲部位を有し、前記下側のダクト内壁面は、前記屈曲部位の始まりとなる屈曲始端を有し、前記屈曲始端と前記端面とは離間していることを特徴とする。
【0011】
本発明では、空調装置から送り出される空気はサイドデフロスタダクトを通り、サイドデフロスタ吹出口からサイドウインドウへ向けて吹き出される。サイドデフロスタダクトにおける主空気流はサイドデフロスタダクトの延在方向に流れるが、サイドデフロスタダクトにおける下部側のダクト壁面に沿って流れる空気流は、インストルメントパネルの後縁部の端面に当たり、ダクト壁面に沿って流れる空気流の向きは上方へ変更される。つまり、ダクト壁面に沿って流れる空気流は、後縁部の端面に当たることにより、主空気流と交差する上向きの交差空気流となる。交差空気流は主空気流の向きを上方へ変更することを助長し、コアンダ効果の発生を防止する。したがって、サイドデフロスタ吹出口から吹き出される空気は、確実にサイドウインドウに吹き付けられ、サイドウインドウの結露を解消または結露を防止する。
【0012】
また、端面がサイドデフロスタ吹出口から吹き出される吹出空気流に対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さを有するので、サイドデフロスタ吹出口から吹き出される空気を、より確実にサイドウインドウに吹き付けることができる。端面長さを大きくにするほど、交差空気流による主気流の上方へ変更がより助長され、コアンダ効果をより回避し易くなる。
【0013】
また、サイドデフロスタダクトは、サイドデフロスタ吹出口側の端部の前方において下側のダクト内壁面の傾斜角度が小さくなるように屈曲され、端部を含む屈曲部位を有し、屈曲始端と端面とが離間している。ことため、搭乗者からサイドデフロスタの後縁部が下側のダクト下壁面に対して突出しているようには見え難くなる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コアンダ効果を防止でき、サイドウインドウへ空気流を適切に吹き付けることが可能なサイドデフロスタ吹出口構造を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係るサイドデフロスタ吹出口構造が適用されるインストルメントパネルの概略斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係るサイドデフロスタ吹出口構造を示す縦断面図である。
図3図2におけるA-A線矢視図である。
図4】サイドデフロスタ吹出口構造の要部を示す要部縦断面図である。
図5】端面長さと吹出角度の関係を示すグラフ図である。
図6】変形例に係るサイドデフロスタ吹出口構造である。
図7】従来技術に係るサイドデフロスタ吹出口構造を示す縦断面図である。
図8】別の従来技術に係るサイドデフロスタ吹出口構造を示す縦端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係るサイドデフロスタ吹出口構造について図面を参照して説明する。
【0017】
図1に示すように、自動車の車室(図示せず)の前部には、車室の一部を構成するインストルメントパネル11が備えられている。インストルメントパネル11の車幅方向の一方の端部付近には、サイド吹出口13が設けられ、他方の端部付近にはサイド吹出口14が設けられている。サイド吹出口13、14は車室内の温度を調整するための吹出口である。なお、車幅方向の一方は、左側である助手席側とし、車幅方向の他方は右側である運転席側とする。
【0018】
インストルメントパネル11におけるサイド吹出口13の前方および上方には、サイドデフロスタ吹出口15が設けられ、サイド吹出口14の前方および上方にはサイドデフロスタ吹出口16が設けられている。サイドデフロスタ吹出口15は、左のサイドウインドウパネル(図示せず)に向けて開口する吹出口であり、サイドデフロスタ吹出口16は右のサイドウインドウパネル(図示せず)に向けて開口する吹出口である。サイドデフロスタ吹出口15、16は、サイドウインドウガラスの結露を防止するための吹出口である。
【0019】
図2に示すように、インストルメントパネル11は、インストルメントパネル11の前部を形成する前部パネル部17とインストルメントパネル11の後部を形成する後部パネル部18を有している。前部パネル部17は、サイドデフロスタ吹出口15、16を含む部位であり、後部パネル部18はサイドデフロスタ吹出口15、16よりも後方に位置する。なお、図2ではサイドデフロスタ吹出口15のみが図示されている。
【0020】
前部パネル部17および後部パネル部18は一体的に組み付けされている。前部パネル部17は樹脂により形成されており、前部パネル部17の前方にはフロントウインドウガラス(図示せず)が設けられている。後部パネル部18は、前部パネル部17と同じ樹脂により形成されているパネル基材18Aと、パネル基材18Aの表面を覆う表皮部材18Bとを有している。表皮部材18Bは意匠としての機能を果たす部材であり、具体的には、例えば、レザー素材である。後部パネル部18はサイドデフロスタ吹出口15付近からやや下方であって車室側へ張り出し、さらに前方へ回り込むように延在する。
【0021】
次に、サイドデフロスタ吹出口機構について説明する。本実施形態では、一方のサイドデフロスタ吹出口15を有するサイドデフロスタ吹出口機構と、他方のサイドデフロスタ吹出口16を有するサイドデフロスタ吹出口機構と、が備えられている。一方のサイドデフロスタ吹出口15を有するサイドデフロスタ吹出口機構および他方のサイドデフロスタ吹出口16を有するサイドデフロスタ吹出口機構は同じ構成である。本実施形態では、一方のサイドデフロスタ吹出口15を有するサイドデフロスタ吹出口機構について説明し、他方のサイドデフロスタ吹出口機構については、一方のサイドデフロスタ機構の説明を援用する。
【0022】
一方のサイドデフロスタ吹出口15は略方形であり、左のサイドウインドウの近傍に位置する。図1に示すように、インストルメントパネル11は、サイドデフロスタ吹出口15の前縁を形成する吹出口前縁部21と、サイドデフロスタ吹出口15の後縁を形成する後縁部としての吹出口後縁部22と、サイドデフロスタ吹出口15の左右の側縁を形成する吹出口側縁部23、24と、を有する。
【0023】
図2に示すように、サイドデフロスタ吹出口機構は、サイドデフロスタ吹出口15と連通するサイドデフロスタダクト25を有している。サイドデフロスタダクト25は、空調機(図示せず)からのサイドデフロスタのための空気を通し、前方から上方および後方へ向けて傾斜して延在する。サイドデフロスタダクト25の横断面はサイドデフロスタ吹出口15の形状に倣う形状である。本実施形態では、サイドデフロスタダクト25は、水平に対して約25°の角度で傾斜している。
【0024】
図2に示すように、サイドデフロスタダクト25は、サイドデフロスタダクト25の上側のダクト上壁部26と、サイドデフロスタダクト25の下側のダクト下壁部27と、を有している。また、図3に示すように、サイドデフロスタダクト25は、ダクト右壁部28およびダクト左壁部29を有している。ダクト上壁部26のダクト内壁面26Aとダクト下壁部27のダクト内壁面27Aは互いに平行である。図3に示すように、ダクト右壁部28のダクト内壁面28Aとダクト左壁部29のダクト内壁面29Aは互いに平行である。ダクト内壁面26A、27A、28A、29Aは、ダクト壁面に相当し、ダクト内壁面27Aは下側のダクト内壁面に相当する。
【0025】
図2に示すように、ダクト上壁部26のサイドデフロスタ吹出口15側の端部30は、前部パネル部17における吹出口前縁部21と接近している。ダクト上壁部26のサイドデフロスタ吹出口15側の端部30と前部パネル部17との間には、発泡シール材料により形成された弾性体31が介在されている。
【0026】
ダクト下壁部27のサイドデフロスタ吹出口15側の端部32は、前部パネル部17における吹出口後縁部22と接近している。ダクト下壁部27は、サイドデフロスタ吹出口15側の端部32の前方においてダクト内壁面27Aの傾斜角度が小さくなるように屈曲され、端部32を含む屈曲部位33を有している。屈曲部位33は、前部パネル部17における吹出口後縁部22の下方に位置し、端部32は吹出口後縁部22の下方においてさらに後方に位置する。ダクト下壁部27のダクト内壁面27Aは、屈曲部位33の始まりとなる屈曲始端33Aを有する。屈曲始端33Aは、吹出口後縁部22の下端よりも低い位置に設定されている。ダクト下壁部27のサイドデフロスタ吹出口15側の端部32と前部パネル部17との間には、発泡シール材料により形成された弾性体34が介在されている。屈曲部位33が設けられていることにより、ダクト下壁部27において吹出口後縁部22と屈曲部位33を除く部位の前端とは、比較的離れた距離を保っている。
【0027】
図示はされないが、ダクト右壁部28のサイドデフロスタ吹出口15側の端部は、前部パネル部17における吹出口側縁部23と接近している。また、ダクト左壁部29のサイドデフロスタ吹出口15側の端部は、前部パネル部17における吹出口側縁部23と接近している。なお、サイドデフロスタダクト25におけるサイドデフロスタ吹出口15側とは逆側の端部は、インストルメントパネル11内に搭載されている空調装置と接続されている。
【0028】
ところで、前部パネル部17における吹出口後縁部22は、前方を臨むほぼ垂直な端面35を有している。端面35は、サイドデフロスタダクト25におけるダクト下壁部27のダクト内壁面27Aの延長線上より上方に位置している。なお、図4では延長線を二点鎖線にて示す。端面35は、ダクト内壁面27Aに沿って流れる空気の向きを上方へ変更し、サイドデフロスタダクト25における主空気流Fmと交差する上向きの交差空気流Fcを発生させるために備えられている。
【0029】
図4に示すように、端面35は、サイドデフロスタ吹出口15から吹き出される吹出空気流Fに対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さHは3mmに設定されている。端面35の端面長さHは、吹出空気流Fの水平に対する角度である吹出角度θに応じて設定される。図5に示すように、端面長さHを大きくすると吹出角度θが大きくなる。つまり、端面長さHと吹出角度θは相関関係がある。サイドデフロスタ吹出口15とサイドウインドウガラスとの位置関係やサイドデフロスタ吹出口15の大きさ等の条件を考慮する必要はあるが、端面長さHは2~5mmの範囲で設定されることが好ましい。
【0030】
本実施形態では、サイドデフロスタダクト25の傾斜角度が約25°であり、この25°の傾斜角度は、意図する吹出角度θが25°を意味するが、端面35の端面長さHが殆どない場合では、吹出空気流Fがインストルメントパネル11に引き付けられるコアンダ効果により吹出角度θが25°よりも小さくなる。つまり、端面35の端面長さHが殆どない場合では、サイドデフロスタ吹出口42からの吹出空気流Fの吹き出し角度とインストルメントパネル41の前部パネル部17との関係は、コアンダ効果を招く関係にある。しかしながら、本実施形態では、コアンダ効果を回避するために、端面35がサイドデフロスタ吹出口15から吹き出される吹出空気流Fに対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さHを有している。
【0031】
ダクト下壁部27において屈曲部位33の始まりとなる屈曲始端33Aと端面35とは離間している。ダクト下壁部27に端部32を含む屈曲部位33が設けられていることで、屈曲始端33Aと吹出口後縁部22との離間距離Lが設定される。離間距離Lが大きくなるほど、端面長さHが設定されても、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているようには見え難くなる。なお、屈曲始端33Aと吹出口後縁部22との離間距離Lが無かったり、小さくなったりすると、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているように見え易くなる。このため、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているようには見えないように予め離間距離Lが設定されるように、屈曲始端33Aの位置が設定されている。
【0032】
次に、本実施形態のサイドデフロスタ吹出口構造による空気の吹き出しについて説明する。空調装置からの送り出される空気はサイドデフロスタダクト25を通り、サイドデフロスタ吹出口15、16からサイドウインドウへ向けて吹き出される。
【0033】
サイドデフロスタダクト25における主空気流Fmは、サイドデフロスタダクト25の延在方向に流れるが、サイドデフロスタダクト25におけるダクト下壁部27のダクト内壁面27Aに沿って流れる空気流Fsは、インストルメントパネル11の吹出口後縁部22における端面35に当たり、空気流Fsの向きを上方へ変更する。つまり、ダクト内壁面27Aに沿って流れる空気流Fsは、端面35に当たることにより、サイドデフロスタ吹出口15において主空気流Fmと交差する上向きの交差空気流Fcとなる。交差空気流Fcは、主空気流Fmに上向きの成分を増大させることになり、主空気流Fmの向きを上方へ変更することを助長する。このため、サイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出された空気の一部がインストルメントパネル11の表面に沿って流れるというコアンダ効果を回避できる。
【0034】
端面35はサイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出される吹出空気流Fに対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さHを有する。このため、サイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出される空気は、より確実にサイドウインドウに吹き付けられる。因みに、端面長さHを大きくにするほど、交差空気流Fcによる主空気流Fmの上方へ変更がより助長される。
【0035】
また、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているように見え難くなるように、屈曲始端33Aの位置が設定されている。このため、離間距離Lが設定され、吹出口後縁部22において端面長さHが設定されても、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているようには見え難くなる。
【0036】
本実施形態のサイドデフロスタ吹出口構造は、以下の作用効果を奏する
(1)サイドデフロスタダクト25における主空気流Fmはサイドデフロスタダクト25の延在方向に流れるが、サイドデフロスタダクト25におけるダクト内壁面27Aに沿って流れる空気流Fsは、インストルメントパネル11の吹出口後縁部22における端面35に当たり、空気流Fsの向きを上方へ変更する。つまり、ダクト内壁面27Aに沿って流れる空気流Fsは、端面35に当たることにより、サイドデフロスタ吹出口15において主空気流Fmと交差する上向きの交差空気流Fcとなる。交差空気流Fcは主空気流Fmの向きを上方へ変更することを助長し、コアンダ効果の発生を防止する。したがって、サイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出される空気は、確実にサイドウインドウに吹き付けられ、サイドウインドウの結露を解消または結露を防止する。
【0037】
(2)端面35がサイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出される吹出空気流Fに対するコアンダ効果を回避可能とする高さ方向の端面長さHを有するので、サイドデフロスタ吹出口15、16から吹き出される空気を、より確実にサイドウインドウに吹き付けることができる。端面長さHを大きくにするほど、交差空気流Fcによる主空気流Fmの上方へ変更がより助長され、コアンダ効果をより回避し易くなる。
【0038】
(3)搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているように見え難くなるように、屈曲始端33Aの位置が設定されている。このため、離間距離Lが設定され、吹出口後縁部22において端面長さHが設定されても、搭乗者から吹出口後縁部22がダクト下壁部27に対して突出しているようには見え難くなる。
【0039】
(4)インストルメントパネル11の一部が端面35を備えていることから、コアンダ効果を回避するための手段や部材を追加することなくコアンダ効果を回避できる。したがって、サイドデフロスタ吹出構造における部品の点数削減やサイドデフロスタ吹出構造の製作コストを抑制することができる。
【0040】
(変形例)
次に、図6に示す変形例に係るサイドデフロスタ吹出構造について説明する。図6に示すように、変形例では、インストルメントパネル11の後部パネル部37は、前部パネル部17と同様に樹脂により形成されており、表皮部材を備えない。したがって、前部パネル部17と後部パネル部37は一体形成されている。変形例では、サイドデフロスタ吹出口15から吹き出される空気は、確実にサイドウインドウに吹き付けられ、サイドウインドウの結露を解消または結露を防止する。
【0041】
本発明は、上記の実施形態(変形例を含む)に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0042】
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、端面を垂直な面としたがこれに限定されない。例えば、端面の水平に対する角度は70~110°の範囲であればよい。この場合もコアンダ効果の発生を防止することができる。
○ 上記の実施形態(変形例を含む)では、サイドデフロスタ吹出口を略方形としたがこれに限らない。サイドデフロスタ吹出口は、例えば、円形や楕円形、長孔形状であってもよい。これらの形状であっても、上方へ向かう交差空気流が発生するようにインストルメントパネルの端面を設けるようにすればよい。
○ 上記の実施形態では、サイドデフロスタダクトの傾斜角度が水平に対して約25°としたが、この限りではない。サイドデフロスタの傾斜角度は、サイドデフロスタ吹出口の条件等によって適宜選択できる。
【符号の説明】
【0043】
11、41 インストルメントパネル
15、16、42 サイドデフロスタ吹出口
17 前部パネル部
18 後部パネル部
21 吹出口前縁部
22 吹出口後縁部
23、24 吹出口側縁部
25、43 サイドデフロスタダクト
26 ダクト上壁部
27 ダクト下壁部
27A ダクト内壁面
30 端部
32 端部
35 端面
37 後部パネル部
44 ベゼル部材
44A 内壁面
Fm 主空気流
Fs 空気流
Fc 交差空気流
f 空気流
H 端面長さ
L 離間距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8