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特許7294125車両用外装品及び車両用外装品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】車両用外装品及び車両用外装品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 13/04 20060101AFI20230613BHJP
   B60R 13/00 20060101ALI20230613BHJP
   B29C 45/26 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60R13/04 Z
B60R13/00
B29C45/26
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019236336
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104717
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2021-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】千田 真樹
(72)【発明者】
【氏名】飯村 公浩
(72)【発明者】
【氏名】高尾 和希
【審査官】川口 真一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-150497(JP,A)
【文献】特開2004-338184(JP,A)
【文献】特開2011-051109(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 13/04
B60R 13/00
B29C 45/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な樹脂材料により形成された外基材と、樹脂材料により前記外基材の車内側に形成された内基材と、前記外基材及び前記内基材の間に形成され、かつ車両の内外方向に凹凸状をなす加飾層とを備える車両用外装品であり、
前記外基材の車外側の面である外面又は車内側の面である内面には、同外基材の樹脂成形に際し形成されたゲート痕が位置しており、
さらに、前記ゲート痕に対し前記内外方向に隣接する箇所には、同ゲート痕を隠す隠蔽層が形成されている車両用外装品。
【請求項2】
前記ゲート痕は、前記外基材の前記外面に位置しており、
前記隠蔽層は、透明な樹脂材料又は透明な塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の前記外面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されている請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項3】
前記ゲート痕は、前記外基材の前記内面に位置しており、
前記隠蔽層は、透明な樹脂材料又は透明な塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の前記内面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されている請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項4】
前記隠蔽層は、前記外基材と同一の屈折率を有している請求項2又は3に記載の車両用外装品。
【請求項5】
前記ゲート痕は、前記外基材の前記内面に位置しており、
前記隠蔽層は、有色の樹脂材料又は有色の塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の前記内面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されている請求項1に記載の車両用外装品。
【請求項6】
前記ゲート痕を第1ゲート痕とした場合において、
前記内基材の前記内面であって、前記隠蔽層の内方となる箇所には、同内基材の樹脂成形に際し形成された第2ゲート痕が位置している請求項5に記載の車両用外装品。
【請求項7】
前記ゲート痕は、前記外基材の前記外面又は前記内面に設けられた凹凸部に形成されている請求項1~6のいずれか1項に記載の車両用外装品。
【請求項8】
前記凹凸部は、前記外基材の前記外面又は前記内面に設けられた凹所内に形成され、
前記隠蔽層は前記凹所に充填された状態で形成されており、
前記隠蔽層と、前記外基材における前記隠蔽層の周辺部分とは滑らかに繋がっている請求項7に記載の車両用外装品。
【請求項9】
透明な樹脂材料により形成された外基材と、樹脂材料により前記外基材の車内側に形成された内基材と、前記外基材及び前記内基材の間に形成され、かつ車両の内外方向に凹凸状をなす加飾層とを備える車両用外装品を製造する方法であり、
外基材成形金型を用い、溶融状態の樹脂材料を、同樹脂材料の供給路と、前記外基材の車外側の面である外面又は車内側の面である内面を形成する箇所に設けたゲートとを経由して、外基材形成用キャビティに供給して中間成形体を成形し、前記ゲートで硬化したゲート硬化部を切断して、前記供給路で硬化した硬化体を前記中間成形体から分離することで前記外基材を形成する外基材形成工程と、
前記切断により前記外基材に形成されたゲート痕を隠す隠蔽層を、前記ゲート痕に対し前記内外方向に隣接する箇所に形成する隠蔽層形成工程とを備える車両用外装品の製造方法。
【請求項10】
前記ゲートを第1ゲートとした場合において、
前記外基材形成工程では、前記外基材成形金型として、前記外基材の前記内面を形成する箇所に前記第1ゲートが設けられたものが用いられ、
前記隠蔽層形成工程では、前記外基材の前記内面に形成された前記ゲート痕を内側から被覆する有色の隠蔽層が、前記ゲート痕に対し内側に隣接する箇所に形成され、
前記隠蔽層形成工程の後には、前記外基材及び前記隠蔽層のそれぞれの内側に前記加飾層を形成する加飾層形成工程が行なわれ、
前記加飾層形成工程の後には、前記加飾層の内側に前記内基材を形成する内基材形成工程が行なわれ、
前記内基材形成工程では、前記外基材の内側に前記隠蔽層及び前記加飾層が形成された中間成形体がインサートとして内基材成形金型内に配置され、溶融状態の樹脂材料が、前記隠蔽層の内方となる箇所に設けられた第2ゲートを介して、前記内基材成形金型内で前記中間成形体よりも内側の内基材形成用キャビティに供給されて、同中間成形体の内側に前記内基材が形成される請求項9に記載の車両用外装品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンブレム、オーナメント、マーク等の車両用外装品、及びその車両用外装品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の車両用外装品の一形態として、外基材、加飾層及び内基材を備えるものが知られている。図13及び図14は、車両の前端部に取付けられるエンブレム80を車両用外装品の一例として示している。このエンブレム80は、車両を装飾する部品としての機能を有するほかに、ミリ波等の電磁波を送信及び受信する車載センサが搭載された車両において、電磁波の送信方向における車載センサの前方に配置される車載センサカバーとしての機能も有している。
【0003】
エンブレム80の外基材81は透明な樹脂材料によって形成されている。内基材85は、樹脂材料によって、外基材81の内側(後側)に形成されている。加飾層86は、エンブレム80を装飾するためのものであり、外基材81及び内基材85の間に形成され、内外方向(前後方向)に凹凸状をなしている。
【0004】
上記エンブレム80に対し車両の前方から可視光が照射されると、その可視光は外基材81を透過し、加飾層86で反射される。そのため、車両の前方からエンブレム80を見ると、外基材81を通して、その外基材81の後側(奥側)に加飾層86が位置するように見える。加飾層86によってエンブレム80が装飾され、外観が向上する。また、加飾層86が、内外方向(前後方向)に凹凸状をなしているため、車両の前方からは、加飾層86が立体的に見える。従って、エンブレム80及びその周辺部分の外観がさらに向上する。
【0005】
上記エンブレム80における外基材81は、射出成形等の樹脂成形法によって成形される。この樹脂成形法では、外基材成形金型が型締めされることにより、外基材81を成形するための空間であるキャビティが形成される。溶融状態の樹脂材料が、供給路及びゲートを通ってキャビティに供給される。供給された溶融状態の樹脂材料が硬化することで、キャビティでは外基材81が形成される。図13において二点鎖線で示すように、ゲートではゲート硬化部87が形成され、供給路では硬化体88が形成される。外基材81は、これにゲート硬化部87を介して硬化体88が繋がった状態で形成される。ゲート硬化部87が切断されて、外基材81が硬化体88から分離される。この際、外基材81にはゲート硬化部87の切断の跡であるゲート痕Gが残る。車両の前方からゲート痕Gが見えると、エンブレム80の外観が低下する。そのため、一般には、図13に示すようにゲート痕Gが、外基材81のうち意匠面から外れていて、目立たない箇所である外周面に形成されるように、金型におけるゲートの位置が設定される。
【0006】
なお、特許文献1には、車載センサカバー(レーダカバー)と、その車載センサカバーを射出成形によって形成する技術とが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第6574751号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記外基材81の内面(後面)は、上述したように内外方向(前後方向)へ凹凸状をなしている。外基材81は、厚みの大きな部分81aと、それよりも厚みの小さな部分81bとを有している。
【0009】
溶融状態の樹脂材料A1は、キャビティにおいて、上記厚みの大きな部分81aを形成する空間を、上記厚みの小さな部分81bを形成する空間よりも速い速度で流れる。図13中の二点鎖線は、溶融状態の樹脂材料A1がゲートからキャビティ内に流れる様子を示している。同図13において二点鎖線の矢印D1で示すように、キャビティのうち、厚みの大きな部分81aを形成する空間を速い速度で流れる樹脂材料A1は、最終的には、異なる方向から互いに接近して、厚みの小さな部分81bを形成する空間で合流する。この合流により、外基材81の厚みの小さな部分81bの前面に、ウェルドライン84と呼ばれる線が発生する。
【0010】
外基材81のゲート痕Gが、同外基材81の内面(後面)又は外面(前面)であって厚みの大きな部分81a又は厚みの小さな部分81bに位置するように、ゲートが設定されれば、樹脂材料A1の流動速度の差に起因するウェルドライン84の発生を抑制することができる。反面、車両の前方からは、ゲート痕Gが見えてしまい、上述したように、エンブレム80の外観低下の問題が発生する。
【0011】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ウェルドライン及びゲート痕による外観低下を抑制することのできる車両用外装品及び車両用外装品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決する車両用外装品は、透明な樹脂材料により形成された外基材と、樹脂材料により前記外基材の車内側に形成された内基材と、前記外基材及び前記内基材の間に形成され、かつ車両の内外方向に凹凸状をなす加飾層とを備える車両用外装品であり、前記外基材の外面又は内面には、同外基材の樹脂成形に際し形成されたゲート痕が位置しており、さらに、前記ゲート痕に対し前記内外方向に隣接する箇所には、同ゲート痕を隠す隠蔽層が形成されている。
【0013】
上記の構成を有する車両用外装品では、外基材が、射出成形等の樹脂成形法によって成形される。この樹脂成形法では、溶融状態の樹脂材料が、外基材成形金型における樹脂材料の供給路を流れた後、外基材形成用キャビティのうち、外基材の外面を形成する箇所、又は内面を形成する箇所に設けられたゲートから、同外基材形成用キャビティ内に流入される。
【0014】
ここで、外基材の内面は凹凸状をなしている。外基材は、内外方向の厚みの大きな部分とそれよりも厚みの小さな部分とを有している。
上記のように供給路及びゲートを経由して外基材形成用キャビティへ流入した樹脂材料は、ゲートを中心として同心円状に拡がるように、すなわち、径方向におけるどの方向にも略等速で流れようとする。従って、速い速度で流れる樹脂材料が、異なる方向から互いに接近し、外基材形成用キャビティのうち、厚みの小さな箇所を形成する空間で合流して、ウェルドラインが発生する現象が起りにくい。
【0015】
また、供給された溶融状態の樹脂材料が硬化することで、外基材形成用キャビティでは外基材が形成され、ゲートではゲート硬化部が形成され、供給路では硬化体が形成される。外基材にゲート硬化部を介して硬化体が繋がった形態の中間成形体が形成される。ゲート硬化部が切断されて、中間成形体から硬化体が分離されることで、外基材が得られる。
【0016】
上記切断に伴い、外基材の外面又は内面には、ゲート硬化部の切断の跡であるゲート痕が形成される。車両の外部から車両用外装品を見ると、上記のゲート痕は、視線上に位置する。
【0017】
しかし、車両用外装品において、ゲート痕に対し内外方向に隣接する箇所に形成された隠蔽層が、同ゲート痕を隠す機能を発揮する。そのため、ゲート痕が見えることが抑制される。
【0018】
このようにして、ウェルドライン及びゲート痕による外観低下が抑制される。
上記車両用外装品において、前記ゲート痕は、前記外基材の外面に位置しており、前記隠蔽層は、透明な樹脂材料又は透明な塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の外面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されていることが好ましい。
【0019】
上記の構成によれば、車両の外部から車両用外装品に可視光が照射されると、その可視光の一部は、隠蔽層では、外基材と同様の態様で屈折して透過する。こうした隠蔽層での可視光の透過により、ゲート痕が目立たなくなる。車両の外部から車両用外装品を見た場合に、隠蔽層が形成されない場合に比べ、ゲート痕が見えにくくなる。
【0020】
上記車両用外装品において、前記ゲート痕は、前記外基材の内面に位置しており、前記隠蔽層は、透明な樹脂材料又は透明な塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の内面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されていることが好ましい。
【0021】
上記の構成によれば、車両の外部から車両用外装品に可視光が照射されると、その可視光の一部は、隠蔽層では、外基材と同様の態様で屈折して透過する。こうした隠蔽層での可視光の透過により、ゲート痕が目立たなくなる。車両の外部から車両用外装品を見た場合に、隠蔽層が形成されない場合に比べ、ゲート痕が見えにくくなる。
【0022】
上記車両用外装品において、前記隠蔽層は、前記外基材と同一の屈折率を有していることが好ましい。
上記の構成によれば、車両の外部から車両用外装品に可視光が照射されると、その可視光の一部は、隠蔽層では、外基材と同一の屈折率で屈折して透過する。こうした隠蔽層での可視光の透過により、ゲート痕がより目立たなくなる。そのため、車両の外部から車両用外装品を見た場合に、隠蔽層の屈折率が外基材の屈折率と大きく異なる場合に比べ、ゲート痕が見えにくくなる。
【0023】
上記車両用外装品において、前記ゲート痕は、前記外基材の内面に位置しており、前記隠蔽層は、有色の樹脂材料又は有色の塗料により、前記ゲート痕上と、前記外基材の内面のうち少なくとも前記ゲート痕の周辺部分とに形成されていることが好ましい。
【0024】
上記の構成によれば、車両の外部から車両用外装品に可視光が照射されると、その可視光の一部は、外基材及びゲート痕を透過した後、有色の樹脂材料又は有色の塗料によって形成された隠蔽層で反射される。そのため、車両の外部から車両用外装品を見た場合に、隠蔽層が有する色によってゲート痕が目立たなくなる。
【0025】
上記車両用外装品において、前記ゲート痕を第1ゲート痕とした場合において、前記内基材の内面であって、前記隠蔽層の内方となる箇所には、同内基材の樹脂成形に際し形成された第2ゲート痕が位置していることが好ましい。
【0026】
上記の構成によれば、内基材は、射出成形等の樹脂成形法によって成形される。この際、例えば、外基材の内面に有色の隠蔽層が形成され、さらに、外基材及び隠蔽層の内側に加飾層が形成された中間成形体がインサートとして、内基材成形金型内に配置される。内基材成形金型内の中間成形体よりも内側に内基材形成用キャビティが形成される。
【0027】
溶融状態の樹脂材料が、内基材成形金型における樹脂材料の供給路内と、内基材形成用キャビティのうち、内基材の内面を形成する箇所であって隠蔽層の内方となる箇所に設けられたゲートとを通って、上記内基材形成用キャビティに供給される。ゲートから内基材形成用キャビティに流入した樹脂材料の一部は、加飾層に接触する。加飾層のうちゲートの外方となる箇所には、溶融状態の樹脂材料の熱が特に多く伝わり、加飾層を貫通する溶融痕が生ずるおそれがある。しかし、溶融痕の外方には有色の隠蔽層が位置している。この隠蔽層が、溶融痕を隠す機能を発揮する。そのため、車両の外部から車両用外装品を見た場合に、透明な外基材を介して溶融痕が見えることが抑制される。従って、車両用外装品の外観低下が一層抑制される。
【0028】
なお、内基材形成用キャビティ内の樹脂材料が硬化すると、内基材が中間成形体における加飾層の内側に形成される。ゲートではゲート硬化部が形成され、供給路では硬化体が形成される。内基材にゲート硬化部を介して硬化体が繋がった形態の中間成形体が得られる。ゲート硬化部が切断されると、中間成形体から硬化体が分離される。上記切断に伴い、内基材の内面であって、隠蔽層の内方となる箇所には、ゲート硬化部の切断の後である第2ゲート痕が形成される。
【0029】
上記車両用外装品において、前記ゲート痕は、前記外基材の外面又は内面に設けられた凹凸部に形成されていることが好ましい。
上記の構成によれば、凹凸部が凹み部によって構成され、その凹み部の内底面にゲート痕が形成されていて、ゲート痕上及びその周辺部分にのみ隠蔽層を形成する場合には、凹み部が埋まるように隠蔽層を形成する。このようにすると、ゲート痕が平らな箇所に形成されている場合に比べ、ゲート痕上及びその周辺部分に隠蔽層を容易に形成することが可能である。
【0030】
また、上記凹凸部が突起部によって構成され、その突起部の先端面にゲート痕が形成されていて、ゲート痕上及びその周辺部分にのみ隠蔽層を形成する場合には、突起部を覆うように隠蔽層を形成する。このようにすると、ゲート痕が平らな箇所に形成されている場合に比べ、ゲート痕上及びその周辺部分に隠蔽層を容易に形成することが可能である。
【0031】
上記車両用外装品において、前記凹凸部は、前記外基材の外面又は内面に設けられた凹所内に形成され、前記隠蔽層は前記凹所に充填された状態で形成されており、前記隠蔽層と、前記外基材における前記隠蔽層の周辺部分とは滑らかに繋がっていることが好ましい。
【0032】
上記の構成によれば、凹所が外基材の外面に設けられる場合、隠蔽層と外基材の外面における隠蔽層の周辺部分との間は、段差がない、又は段差が小さな状態となる。そのため、隠蔽層と外基材の外面における隠蔽層の周辺部分とが滑らかに繋がっておらず、両者の間に大きな段差が生じている場合に比べ、段差による外観低下が生じにくい。また、隠蔽層及び外基材の外側に、ハードコート層のような別の透明な層を追加しようとした場合、上記と同様の理由により、隠蔽層及び外基材を外側から覆う透明な層を形成しやすい。
【0033】
これに対し、凹所が外基材の内面に設けられる場合、隠蔽層と外基材の内面における隠蔽層の周辺部分との間は、段差がない、又は段差が小さな状態となる。そのため、隠蔽層と外基材の内面における隠蔽層の周辺部分とが滑らかに繋がっておらず、両者の間に大きな段差が生じている場合に比べ、隠蔽層及び外基材の内側に加飾層を形成しやすい。
【0034】
上記課題を解決する車両用外装品の製造方法は、透明な樹脂材料により形成された外基材と、樹脂材料により前記外基材の車内側に形成された内基材と、前記外基材及び前記内基材の間に形成され、かつ車両の内外方向に凹凸状をなす加飾層とを備える車両用外装品を製造する方法であり、外基材成形金型を用い、溶融状態の樹脂材料を、同樹脂材料の供給路と、前記外基材の外面又は内面を形成する箇所に設けたゲートとを経由して、外基材形成用キャビティに供給して中間成形体を成形し、前記ゲートで硬化したゲート硬化部を切断して、前記供給路で硬化した硬化体を前記中間成形体から分離することで前記外基材を形成する外基材形成工程と、前記切断により前記外基材に形成されたゲート痕を隠す隠蔽層を、前記ゲート痕に対し前記内外方向に隣接する箇所に形成する隠蔽層形成工程とを備える。
【0035】
上記の方法によれば、車両用外装品の製造に際し、外基材形成工程及び隠蔽層形成工程が行なわれる。
外基材形成工程では、溶融状態の樹脂材料が、外基材成形金型における樹脂材料の供給路を流れた後、外基材の外面を形成する箇所、又は内面を形成する箇所に設けられたゲートから、外基材形成用キャビティ内に流入される。樹脂材料は、ゲートを中心として同心円状に拡がるように、すなわち、径方向におけるどの方向にも略等速で流れようとする。従って、速い速度で流れる樹脂材料が、外基材形成用キャビティのうち、異なる方向から互いに接近し、厚みの小さな部分を形成する空間で合流する現象が起りにくい。外基材において厚みの小さな部分の外面にウェルドラインが発生しにくい。
【0036】
供給された溶融状態の樹脂材料が硬化することで、外基材形成用キャビティでは外基材が形成され、ゲートではゲート硬化部が形成され、供給路では硬化体が形成される。外基材にゲート硬化部を介して硬化体が繋がった形態の中間成形体が形成される。
【0037】
さらに、ゲート硬化部が切断されて、中間成形体から硬化体が分離されることで、外基材が得られる。この際、外基材の外面又は内面には、ゲート硬化部の切断の跡であるゲート痕が形成される。
【0038】
隠蔽層形成工程では、外基材に形成されたゲート痕を隠す隠蔽層が、そのゲート痕に対し内外方向に隣接する箇所に形成される。この隠蔽層がゲート痕を隠す機能を発揮するため、車両の外部から車両用外装品を見た場合に、ゲート痕が見えることが抑制される。
【0039】
このようにして、ウェルドライン及びゲート痕による外観低下が抑制される。
上記車両用外装品の製造方法において、前記ゲートを第1ゲートとした場合において、前記外基材形成工程では、前記外基材成形金型として、前記外基材の内面を形成する箇所に前記第1ゲートが設けられたものが用いられ、前記隠蔽層形成工程では、前記外基材の内面に形成された前記ゲート痕を内側から被覆する有色の隠蔽層が、前記ゲート痕に対し内側に隣接する箇所に形成され、前記隠蔽層形成工程の後には、前記外基材及び前記隠蔽層のそれぞれの内側に前記加飾層を形成する加飾層形成工程が行なわれ、前記加飾層形成工程の後には、前記加飾層の内側に前記内基材を形成する内基材形成工程が行なわれ、前記内基材形成工程では、前記外基材の内側に前記隠蔽層及び前記加飾層が形成された中間成形体がインサートとして内基材成形金型内に配置され、溶融状態の樹脂材料が、前記隠蔽層の内方となる箇所に設けられた第2ゲートを介して、前記内基材成形金型内で前記中間成形体よりも内側の内基材形成用キャビティに供給されて同中間成形体の内側に前記内基材が形成されることが好ましい。
【0040】
上記の方法によれば、外基材形成工程では、溶融状態の樹脂材料が、外基材成形金型における樹脂材料の供給路を流れた後、外基材の内面を形成する箇所に設けられた第1ゲートから、外基材形成用キャビティに供給される。
【0041】
供給された溶融状態の樹脂材料が硬化することで、中間成形体が形成される。ゲート硬化部が切断されて、中間成形体から硬化体が分離されることで、外基材が得られる。この際、外基材の内面には、ゲート硬化部の切断の跡であるゲート痕が形成される。
【0042】
隠蔽層形成工程では、上記切断により外基材に形成されたゲート痕を内側から被覆する有色の隠蔽層が、ゲート痕に対し内側に隣接する箇所に形成される。
次の加飾層形成工程では、外基材及び隠蔽層のそれぞれの内側に加飾層が形成される。
【0043】
次の内基材形成工程では、外基材の内側に隠蔽層及び加飾層が形成された中間成形体がインサートとして、内基材成形金型内に配置されることで、内基材成形金型内の上記中間成形体の内側に内基材形成用キャビティが形成される。
【0044】
溶融状態の樹脂材料が、内基材成形金型における樹脂材料の供給路内と、内基材形成用キャビティのうち、内基材の内面を形成する箇所であって隠蔽層の内方となる箇所に設けられた第2ゲートとを通って、内基材形成用キャビティに供給される。第2ゲートから内基材形成用キャビティに流入した樹脂材料の一部は、加飾層に接触する。加飾層のうち第2ゲートの外方となる箇所には、溶融状態の樹脂材料の熱が特に多く伝わり、加飾層を貫通する溶融痕が生ずるおそれがある。しかし、溶融痕の外方に位置する有色の隠蔽層が、溶融痕を隠す機能を発揮する。そのため、車両の外部から車両用外装品を見た場合に、溶融痕が見えることが抑制され、車両用外装品の外観低下が一層抑制される。
【発明の効果】
【0045】
上記車両用外装品及び車両用外装品の製造方法によれば、ウェルドライン及びゲート痕による外観低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】車両用外装品を、車両用センサカバーとしても機能するエンブレムに具体化した第1実施形態を示す図であり、そのエンブレムの正面図。
図2】(a)は図1の2a-2a線断面図、(b)は図2(a)の一部を拡大して示す部分断面図。
図3】(a)~(d)は、第1実施形態のエンブレムの製造方法を説明する部分断面図。
図4】(a)は、上記製造方法の続きを説明する部分断面図、(b)は図4(a)の一部を拡大して示す部分断面図。
図5】上記製造方法の続きを説明する部分断面図。
図6】第2実施形態におけるエンブレムの部分断面図。
図7】(a),(b)は、第2実施形態のエンブレムの製造方法を説明する部分断面図。
図8】(a),(b)は、上記製造方法の続きを説明する部分断面図。
図9】第1実施形態のエンブレムの変形例を示す部分断面図。
図10】第1実施形態のエンブレムの変形例を示す部分断面図。
図11】第2実施形態のエンブレムの変形例を示す部分断面図。
図12】第2実施形態のエンブレムの変形例を示す部分断面図。
図13】従来の車両用エンブレムにおける外基材の正面図。
図14】従来の車両用エンブレムの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(第1実施形態)
以下、車両用外装品を車両用のエンブレムに具体化した第1実施形態について、図1図5を参照して説明する。
【0048】
なお、以下の記載に関し、車両の前進方向を前方とし、後進方向を後方として説明する。また、上下方向は車両の上下方向を意味し、左右方向は車幅方向であって車両の前進時の左右方向と一致するものとする。また、一部の図では、エンブレムにおける各部を認識可能な大きさとするために、各部の縮尺を適宜変更して図示している。
【0049】
図2(a)に示すように、車両10の前部の左右方向における中央部分であって、図示しないフロントグリルの後方には、前方監視用のミリ波レーダ装置11が車載センサとして搭載されている。ミリ波レーダ装置11は、電磁波の一形態であるミリ波12を車外のうち、車両10の前方における所定の角度範囲へ向けて送信し、先行車両、歩行者等を含む車外の物体に当たって反射されたミリ波12を受信するセンサ機能を有する。ミリ波12とは、波長が1mm~10mmであり、かつ周波数が30GHz~300GHzである電波をいう。
【0050】
ミリ波レーダ装置11は、送信したミリ波12と受信したミリ波12との時間差や、受信波の強度等から、車外の上記物体を認識する。また、ミリ波レーダ装置11は、車両10と上記物体との距離や相対速度を検出する。ミリ波レーダ装置11は、雨や霧、雪といった悪天候に強く、他の方式と比較して検出可能距離が長いといった特徴を有している。
【0051】
上記フロントグリルにおいて、ミリ波レーダ装置11のミリ波12の経路となる箇所、具体的には、フロントグリルにおいて、ミリ波12の送信方向におけるミリ波レーダ装置11の前方となる箇所には、図示しない窓部が設けられ、エンブレム13が、車両用外装品、この場合、車載センサカバーとしてこの窓部に配置されている。
【0052】
特許請求の範囲では、車両用外装品における方向を特定するために、車両における「内」及び「外」という表現を使っているが、エンブレム13がミリ波レーダ装置11との関係で上記の位置(ミリ波レーダ装置11の前方位置)に配置されていることから、第1実施形態では、「外」を「前」と記載し、「内」を「後」と記載するものとする。後述する第2実施形態及び各変形例についても同様である。
【0053】
エンブレム13は、外基材15、加飾層41及び内基材35を備えている。図1及び図2(a)に示すように、エンブレム13は、全体として横長の略楕円の板状をなしている。なお、図2(a)では、エンブレム13の厚みが、中央部分と周辺部分とで大きく異なるように誇張して描かれているが、実際には、ミリ波が透過する領域では厚みが略均一となるようにエンブレム13が形成されている。
【0054】
図1及び図2(a)に示すように、外基材15は、エンブレム13の前側部分を構成する部材であり、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメタクリル酸メチル)等の透明な樹脂材料によって形成されていて、ミリ波の透過性を有している。なお、ここでの透明には、無色透明のほかにも着色透明(有色透明)も含まれる。
【0055】
外基材15の前面16は、前後方向に対し略直交する単一の平坦な面によって構成されている。ここでの平坦な面とは、凹凸を有していない面を指し、平面に限らず、全体として緩やかに湾曲した面も含まれる。前面16には、樹脂に対する公知の表面処理剤を塗布することにより、ミリ波透過性を有する透明なハードコート層14が形成されている。
【0056】
表面処理剤としては、例えば、アクリレート系、オキセタン系、シリコーン系等の有機系ハードコート剤、無機系ハードコート剤、有機無機ハイブリッド系ハードコート剤等が挙げられる。このようなハードコート剤により形成されるハードコート層14は、外基材15の前面16に対して、傷付き防止作用、汚れ防止作用、紫外線カットによる耐光性及び耐候性の向上作用、撥水作用等の有用な作用をもたらす。なお、ハードコート層14は、必要に応じて、ミリ波12が透過できることを条件に着色されてもよい。
【0057】
外基材15の後部には、前後方向に対し略直交する平坦な一般部17と、その一般部17よりも前方へ凹む凹部18とが形成されている。一般部17は、図1におけるエンブレム13の背景領域13aに対応し、凹部18はエンブレム13の模様領域13bに対応している。ここでは、文字(I)部分とその周りの環状部分とにより模様領域13bが構成されている。一般部17は、文字(I)部分と環状部分とによって囲まれている。文字(I)部分の左右両側に位置する各一般部17は、前方から見て略半円状をなしている。両一般部17は、文字(I)部分を挟んで互いに対称の関係にある。凹部18が設けられた箇所での外基材15の厚みは、一般部17が設けられた箇所での外基材15の厚みよりも小さくなっている。
【0058】
図2(a),(b)に示すように、外基材15の後面19には、凹凸部として、後面19において開口された凹み部21が形成されている。凹み部21は、第1実施形態では、一方(左方)の一般部17における略中央部分に形成されている。凹み部21の内底面には、外基材15の樹脂成形に際し形成された第1ゲート痕G1が位置している。
【0059】
第1ゲート痕G1に対し、後側に隣接する箇所には、同第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30が形成されている。隠蔽層30は、ミリ波12の透過性を有し、かつ加飾層41よりも耐熱性が高い有色の樹脂材料又は有色の塗料によって形成されている。隠蔽層30は、第1ゲート痕G1上と、外基材15の後面19のうち凹み部21の周辺部分とに形成されている。第1実施形態では、隠蔽層30は、凹み部21に充填されることによって形成された主隠蔽部31と、上記後面19であって、凹み部21の開口よりも大きな略円板状に形成された補助隠蔽部32とによって構成されている(図1参照)。
【0060】
内基材35は、エンブレム13の後側部分を構成する部材であり、AES(アクリロニトリル-エチレン-スチレン共重合)等の樹脂材料によって有色に形成されていて、ミリ波の透過性を有している。内基材35の前部は、上記外基材15の後部の形状に対応した形状に形成されている。すなわち、内基材35の前部であって、外基材15の一般部17の後方となる箇所には、前後方向に対し略直交する一般部36が形成されている。内基材35の前部であって、外基材15の凹部18の後方となる箇所には、一般部36よりも前方へ突出する凸部37が形成されている。
【0061】
なお、内基材35は、AES樹脂に代えて、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリレート共重合)、PC、PC/ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合樹脂)等の樹脂材料によって形成されてもよい。
【0062】
内基材35の後面38であって、上記隠蔽層30の後方となる箇所には、同内基材35の樹脂成形に際し形成された第2ゲート痕G2が位置している。
上記外基材15及び内基材35は、それらの周囲に設けられた図示しない連結部によって連結されている。
【0063】
加飾層41は、外基材15及び内基材35の間において、上記一般部17,36に密着し、かつ凹部18及び凸部37に密着した状態で形成されており、ミリ波透過性を有している。
【0064】
加飾層41は、例えば、黒色、青色等の有色加飾層のみによって構成されてもよいし、金属光沢を有する光輝加飾層のみによって構成されてもよいし、有色加飾層及び光輝加飾層の組合せによって構成されてもよい。第1実施形態では、加飾層41は、有色加飾層及び光輝加飾層の組合せによって構成されている。
【0065】
有色加飾層は、一般部17及び隠蔽層30のそれぞれの後面に対し、スクリーン印刷等の印刷、ホットスタンプ等が行なわれることにより形成されている。有色加飾層は、車両10の前方からは、図1における両背景領域13aに見える。
【0066】
光輝加飾層は、外基材15の例えば凹部18の壁面及び有色加飾層の後面全体に対し、インジウム(In)等の金属材料がスパッタリング又は蒸着されることにより、島構造をなすように形成されている。島構造は、金属皮膜が一面に連続しておらず、多数の微細な金属皮膜が島状に互いに僅かに離間し、又は一部接触した状態で敷き詰められてなる構造である。この構造を採用することにより、光輝加飾層は、不連続構造となり、電気抵抗が高くなり、ミリ波の透過性を有する。光輝加飾層は金属光沢を有しており、車両10の前方からは、図1における模様領域13bに見える。
【0067】
エンブレム13において、ミリ波12が透過される領域の前後方向の厚みは、ミリ波の減衰量が少なく、減衰量が許容範囲に収まる値に設定されている。
上記エンブレム13の後面の周縁部における複数箇所には、図示しない取付部が形成されている。取付部は、クリップ、ビス、係合爪等によって構成されている。そして、エンブレム13は、起立させられた状態で窓部内に配置され、取付部においてフロントグリルに取り付けられている。
【0068】
次に、上記のように構成された第1実施形態の作用について、エンブレム13を製造する方法とともに説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
エンブレム13の製造工程は、外基材形成工程、隠蔽層形成工程、加飾層形成工程、内基材形成工程及びハードコート層形成工程を備えている。
【0069】
<外基材形成工程>
図3(a)に示すように、外基材形成工程では、成形型52,61を備える外基材成形金型51が用いられる。成形型61としては、凹み部21を成形するための突起部62と、溶融状態の樹脂材料A1の供給路63とを有するものが用いられる。樹脂材料A1の流れ方向における供給路63の下流端は、第1ゲート64として突起部62の先端面において開口している。
【0070】
図3(a)に示すように、外基材成形金型51が型締めされ、両成形型52,61間に外基材形成用キャビティC1が形成される。溶融状態の樹脂材料A1が、供給路63を流れた後、第1ゲート64から外基材形成用キャビティC1内に流入される。
【0071】
ここで、図2(a)に示すように、外基材15の後面19は凹凸状をなしている。外基材15は、厚みの大きな部分15aとそれよりも厚みの小さな部分15bとを有している。部分15aは、外基材15の後部に一般部17が形成された箇所に対応し、部分15bは、外基材15の後部に凹部18が形成された箇所に対応している。
【0072】
供給路63及び第1ゲート64を経由して外基材形成用キャビティC1へ流入した樹脂材料A1は、図1において二点鎖線で示し、かつ図3(a)において矢印で示すように、第1ゲート64を中心として同心円状に拡がるように、すなわち、径方向におけるどの方向にも略等速で流れようとする。従って、速い速度で流れる樹脂材料A1が、外基材形成用キャビティC1のうち、異なる方向から互いに接近して、厚みの小さな部分15bを形成する空間で合流する現象が起りにくい。外基材15において厚みの小さな部分15bの前面にウェルドラインが発生しにくい。
【0073】
図3(a),(b)に示すように、外基材形成用キャビティC1内の樹脂材料A1が硬化されると、外基材形成用キャビティC1では、凹み部21を有する一般部17と、凹部18とを備える外基材15が形成される。また、第1ゲート64ではゲート硬化部65が形成され、供給路63では硬化体66が形成される。外基材15にゲート硬化部65を介して硬化体66が繋がった形態の中間成形体67が形成される。
【0074】
外基材成形金型51が型開きされて、上記中間成形体67が取り出される。図3(b)に示すように、ゲート硬化部65が切断されて、中間成形体67から硬化体66が分離されることで、外基材15が得られる。上記切断に伴い、凹み部21の内底部には、ゲート硬化部65の切断の跡である第1ゲート痕G1が形成される。
【0075】
<隠蔽層形成工程>
図3(c)に示すように、隠蔽層形成工程では、上記切断により外基材15に形成された第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30が、同第1ゲート痕G1に対し後側に隣接する箇所に形成される。例えば、ミリ波の透過性を有する有色の樹脂材が用いられて、射出成形が行なわれることで、又はミリ波の透過性を有する有色の塗料が塗布されることで、凹み部21を充填してなる主隠蔽部31と、外基材15の後面19であって、凹み部21の開口よりも大きな略円板状の補助隠蔽部32とが形成される(図1参照)。
【0076】
このようにして、外基材15の後面19に形成された第1ゲート痕G1を後側から被覆する有色の隠蔽層30が、外基材15の後面19のうち、第1ゲート痕G1上と、第1ゲート痕G1の周辺部分とに形成される。
【0077】
この場合には、凹み部21が埋まるように樹脂成形を行なうことで、又は塗料を塗布することで、第1ゲート痕G1上及び第1ゲート痕G1に対し後側に隣接する箇所に、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30を形成することができる。第1ゲート痕G1が平らな箇所に形成される場合に比べ、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30を、第1ゲート痕G1上及びその周辺部分に容易に形成することができる。
【0078】
<加飾層形成工程>
図3(d)に示すように、加飾層形成工程では、外基材15及び隠蔽層30のそれぞれの後側に加飾層41が形成される。隠蔽層30を含む一般部17の後面に対し、スクリーン印刷等の印刷、ホットスタンプ等が行なわれることにより、有色加飾層が形成される。また、外基材15の凹部18の壁面と有色加飾層の後面全体とに対し、インジウム(In)等の金属材料がスパッタリング又は蒸着されることにより、島構造をなす光輝加飾層が形成される。このようにして、外基材15の後面19及び隠蔽層30の後面に、加飾層41が形成されてなる中間成形体68が得られる。
【0079】
<内基材形成工程>
図4(a),(b)に示すように、内基材形成工程では、成形型71,72を備える内基材成形金型70が用いられる。成形型72としては、溶融状態の樹脂材料A2の供給路73を有するものが用いられる。樹脂材料A2の流れ方向における供給路73の下流端は、第2ゲート74として、成形型72において、内基材35の後面38を形成する箇所であって、上記隠蔽層30の後方となる箇所において開口している。
【0080】
上記中間成形体68がインサートとして、成形型71に配置される。図4(a)に示すように、内基材成形金型70が型締めされて、同内基材成形金型70内の中間成形体68の後側に内基材形成用キャビティC2が形成される。
【0081】
溶融状態の樹脂材料A2が供給路73及び第2ゲート74を通って、内基材形成用キャビティC2に供給される。樹脂材料A2の一部は、第2ゲート74から前方へ真っ直ぐ流れて加飾層41に接触する。加飾層41のうち第2ゲート74の前方となる箇所には、樹脂材料A2の熱が特に多く伝わり、同加飾層41が溶けて、二点鎖線で示すように加飾層41を貫通する溶融痕B1が生ずるおそれがある。しかし、溶融痕B1の前方には有色の隠蔽層30が位置しており、この隠蔽層30が溶融痕B1を前方から隠す機能を発揮する。
【0082】
ここで、図4(a),(b)において二点鎖線で示すように、加飾層41の後面であって第2ゲート74の前方に、加飾層41よりも高い耐熱性を有するシートS1を配置することで、加飾層41を樹脂材料A2の熱から保護することが可能である。この場合には、溶融痕B1が生じにくいため、この溶融痕B1による外観低下の問題を解消可能である。反面、シートS1の準備をしたり、加飾層41の定められた箇所にシートS1を正確に配置したりする必要がある。しかし、第1実施形態では、第1ゲート痕G1を隠すために設けた隠蔽層30が溶融痕B1を隠す機能も発揮するため、溶融痕B1を見えにくくするための対策を別途講ずる必要がなく、上記のようなシートS1の準備及び配置が不要である。
【0083】
なお、内基材形成用キャビティC2内の樹脂材料A2が硬化すると、図4(b)及び図5に示すように、一般部36及び凸部37を有する内基材35が、中間成形体68における加飾層41の後側に形成される。また、第2ゲート74ではゲート硬化部75が形成され、供給路73では硬化体76が形成される。内基材35にゲート硬化部75を介して硬化体76が繋がった形態の中間成形体77が得られる。
【0084】
内基材成形金型70が型開きされて、ゲート硬化部75が切断されて、中間成形体77から硬化体76が分離される。上記切断に伴い、内基材35の後面38であって、上記隠蔽層30の後方となる箇所には、ゲート硬化部75の切断の跡である第2ゲート痕G2が形成される。
【0085】
<ハードコート層形成工程>
ハードコート層形成工程では、図5において二点鎖線で示すように、外基材15の前面16に対し表面処理剤が塗布される。この塗布により、外基材15の前面16に、透明でミリ波透過性を有するハードコート層14が形成されると、図2(a)に示す、目的とするエンブレム13が得られる。
【0086】
そして、エンブレム13は、上述したように、起立させられた状態で窓部内に配置され、取付部においてフロントグリルに取り付けられる。
ところで、図2(a)に示すように、エンブレム13が取付けられた車両10の走行中等に、ミリ波レーダ装置11からミリ波12が送信されると、そのミリ波12は、エンブレム13における内基材35、加飾層41、外基材15及びハードコート層14を順に透過する。透過したミリ波12は、先行車両、歩行者等を含む車両前方の物体に当たって反射された後、ハードコート層14、外基材15、加飾層41及び内基材35を順に透過する。上記ミリ波12は、ミリ波レーダ装置11によって受信される。加飾層41における光輝加飾層は、島構造を採っていて不連続であることから、電気抵抗が高く、ミリ波透過性を有する。ミリ波レーダ装置11では、送信及び受信されたミリ波12に基づき、上記物体の認識が行なわれる。また、ミリ波レーダ装置11では、車両10と上記物体との距離、相対速度等が検出される。
【0087】
車両10の前方からエンブレム13に可視光が照射されると、その可視光の一部は、ハードコート層14を透過した後、外基材15のうち第1ゲート痕G1及び隠蔽層30のない箇所を透過し、加飾層41で反射される。車両10の前方からエンブレム13を見ると、透明なハードコート層14及び透明な外基材15を通して、その外基材15の後側(奥側)に加飾層41が位置するように見える。このように、加飾層41によってエンブレム13が装飾され、同エンブレム13及びその周辺部分の外観が向上する。
【0088】
特に、加飾層41は、外基材15及び内基材35の間で凹凸状をなしているため、車両10の前方からは、加飾層41が立体的に見える。従って、エンブレム13及びその周辺部分の外観がさらに向上する。
【0089】
また、第1実施形態では、上述したように、成形型61における第1ゲート64の位置を、外基材15の後面19を形成する箇所に設定したことにより、外基材15において厚みの小さな部分15bの前面にウェルドラインが発生しにくい。ウェルドラインによる外観の低下を抑制することができる。
【0090】
ここで、第1ゲート痕G1は、エンブレム13を車両10の前方から見た場合に、視線上に位置する。仮に、第1ゲート痕G1を見えにくくする対策が講じられていないと、外基材15を通して第1ゲート痕G1が見えてしまう。
【0091】
しかし、第1実施形態では、エンブレム13において、第1ゲート痕G1に対し後側に隣接する箇所に形成された隠蔽層30が、同第1ゲート痕G1を隠す機能を発揮する。すなわち、車両10の前方からエンブレム13に可視光が照射されると、その可視光の一部は、ハードコート層14、外基材15及び第1ゲート痕G1を通過した後、有色の樹脂材料又は有色の塗料によって形成された隠蔽層30で反射される。そのため、車両10の前方からエンブレム13を見た場合に、隠蔽層30が有する色によって、第1ゲート痕G1が目立たなくなる。
【0092】
また、上述したように、内基材35の成形時における溶融状態の樹脂材料A2の熱により加飾層41に溶融痕B1が生じたとしても、それよりも前方の有色の隠蔽層30が、溶融痕B1を隠す機能を発揮する。そのため、車両10の前方からエンブレム13を見た場合に、透明な外基材15を介して溶融痕B1が見えることが抑制される。従って、エンブレム13の外観低下を一層抑制することができる。
【0093】
さらに、隠蔽層30及び加飾層41は、内基材35の後面38における第2ゲート痕G2を見えにくくする。そのため、この点においても、エンブレム13の外観低下を抑制することができる。
【0094】
このようにして、第1実施形態によると、ウェルドライン、第1ゲート痕G1及び第2ゲート痕G2による外観低下を抑制することができる。
第1実施形態によると、上記以外にも、次の効果が得られる。
【0095】
・可視光の加飾層41での上記反射は、ミリ波レーダ装置11よりも前側で行われる。加飾層41は、ミリ波レーダ装置11を覆い隠す機能を発揮する。そのため、車両10の前方からは、ミリ波レーダ装置11が見えにくい。従って、ミリ波レーダ装置11がエンブレム13を介して透けて見える場合に比べて意匠性が向上する。
【0096】
・フロントグリルにおいて、樹脂製基材の表面に金属めっき層が形成されている場合には、加飾層41における光輝加飾層で反射され、かつ金属のような輝きを伴う色を、上記金属めっき層の色に合わせることで、エンブレム13のフロントグリルとの一体感を得ることができ、車両10の前部の意匠性を高めることができる。
【0097】
(第2実施形態)
次に、車両用外装品を車両用のエンブレムに具体化した第2実施形態について、図6図8を参照して説明する。
【0098】
図6に示すように、第2実施形態のエンブレム13では、外基材15の後面19に代えて前面16に、前方へ突出する突起部22が凹凸部として形成されている。突起部22は、第2実施形態では、一方(左方)の一般部17の略中央部分の前方となる箇所に形成されている。突起部22の前端面には、外基材15の樹脂成形に際し形成された第1ゲート痕G1が位置している。
【0099】
また、第1ゲート痕G1に対し前側に隣接する箇所には、同第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層33が形成されている。隠蔽層33は、外基材15と同じくPC、PMMA等の透明な樹脂材料で形成、又は外基材15と同一の屈折率を有する材料で形成されている。第2実施形態では、隠蔽層33は、第1ゲート痕G1上及び突起部22を含め、外基材15の前面16の全面に形成されている。
【0100】
エンブレム13の上記以外の構成は、第1実施形態と同様である。そのため、第1実施形態と同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
次に、上記のように構成された第2実施形態の作用について、エンブレム13を製造する方法とともに説明する。また、作用に伴い生ずる効果についても併せて説明する。
【0101】
エンブレム13の製造に際しては、第1実施形態と同様、外基材形成工程、隠蔽層形成工程、加飾層形成工程、内基材形成工程及びハードコート層形成工程が行なわれる。
<外基材形成工程>
外基材形成工程では、図7(a)に示すように、成形型52,61を備える外基材成形金型51が用いられる。成形型52としては、上記突起部22を成形するための凹み部53と、溶融状態の樹脂材料A1の供給路54とを有するものが用いられる。樹脂材料A1の流れ方向における供給路54の下流端は、第1ゲート55として、凹み部53の内底面において開口している。
【0102】
図7(a)に示すように、外基材成形金型51が型締めされ、成形型52,61間に外基材形成用キャビティC1が形成される。溶融状態の樹脂材料A1が供給路54を流れた後、第1ゲート55から外基材形成用キャビティC1内に流入される。
【0103】
上記樹脂材料A1は、外基材形成用キャビティC1内では、第1ゲート55を中心として同心円状に拡がるように、すなわち、径方向におけるどの方向にも略等速で流れようとする。従って、速い速度で流れる樹脂材料A1が、外基材形成用キャビティC1のうち、異なる方向から互いに接近して、厚みの小さな部分15bを形成する空間で合流してウェルドラインが発生する現象が起りにくい。
【0104】
外基材形成用キャビティC1内の樹脂材料A1は硬化すると、図7(a),(b)に示すように、前面16に突起部22を有する外基材15が形成される。また、第1ゲート55ではゲート硬化部56が形成され、供給路54では硬化体57が形成される。外基材15にゲート硬化部56を介して硬化体57が繋がった形態の中間成形体58が得られる。
【0105】
外基材成形金型51が型開きされて、ゲート硬化部56が切断されて、中間成形体58から硬化体57が分離されることで、前面16に突起部22を有する外基材15が得られる。上記切断に伴い、突起部22の前端面には、ゲート硬化部56の切断の跡である第1ゲート痕G1が形成される。
【0106】
<隠蔽層形成工程>
隠蔽層形成工程では、図8(a)に示すように、上記第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層33が、第1ゲート痕G1に対し前側に隣接する箇所に形成される。外基材15と同一の屈折率を有する透明な樹脂材料が用いられて、射出成形が行なわれることで、又は外基材15と同一の屈折率を有する透明な塗料が塗布されることで、第1ゲート痕G1上及び突起部22を含め、外基材15の前面16の全面を被覆する隠蔽層33が形成される。
【0107】
<加飾層形成工程>
加飾層形成工程では、同図8(a)に示すように、第1実施形態と同様に、有色加飾層及び光輝加飾層の組合せからなる加飾層41が外基材15の後面19に形成されることにより、中間成形体59が得られる。
【0108】
<内基材形成工程>
図8(b)に示すように、内基材形成工程では、上記中間成形体59がインサートとして、成形型71に配置される。内基材成形金型70が型締めされることで、内基材成形金型70内の中間成形体59の後側に内基材形成用キャビティC2が形成される。
【0109】
図示しない溶融状態の樹脂材料が内基材形成用キャビティC2に供給され、同樹脂材料が硬化することで、一般部36及び凸部37を備える内基材35が中間成形体59の加飾層41の後側に形成される。
【0110】
<ハードコート層形成工程>
図6に示すように、ハードコート層形成工程では、第1実施形態と同様にして、外基材15の前面16に対し表面処理剤が塗布されてハードコート層14が形成される。
【0111】
そして、得られたエンブレム13は、起立させられた状態で窓部内に配置され、取付部においてフロントグリルに取り付けられる。このエンブレム13は、ミリ波レーダ装置11からミリ波12が送信されると、第1実施形態と同様、そのミリ波を透過する機能を発揮する。
【0112】
また、車両10の前方からエンブレム13に可視光が照射されると、その可視光の一部は、ハードコート層14及び隠蔽層33を透過した後、外基材15のうち第1ゲート痕G1のない箇所を透過し、加飾層41で反射される。そのため、第2実施形態でも第1実施形態と同様に、加飾層41による装飾効果が得られる。
【0113】
また、第2実施形態では、上述したように、成形型52における第1ゲート55の位置を、外基材15の前面16を形成する箇所に設定したことにより、外基材15において厚みの小さな部分15bの前面にウェルドラインが発生しにくく、外観の低下を抑制することができる。
【0114】
また、第1ゲート痕G1は、エンブレム13を車両10の前方から見た場合に、第1実施形態と同様に、視線上に位置する。しかし、第2実施形態では、エンブレム13において、第1ゲート痕G1に対し前側に隣接する箇所に形成された隠蔽層33が、同第1ゲート痕G1を隠す機能を発揮する。すなわち、車両10の前方からエンブレム13に可視光が照射されると、その可視光の一部は、隠蔽層33では外基材15と同様の態様で屈折して透過する。こうした隠蔽層33での可視光の透過により、第1ゲート痕G1が目立たなくなる。
【0115】
車両10の前方からエンブレム13を見た場合に、隠蔽層33が形成されない場合に比べ、第1ゲート痕G1が見えにくくなる。
特に、第2実施形態では、隠蔽層33が外基材15と同一の屈折率を有する。可視光は、隠蔽層33及び外基材15(第1ゲート痕G1を含む)を、同一の屈折率で屈折して透過し、第1ゲート痕G1を一層目立たなくする。車両10の前方からエンブレム13を見た場合に、隠蔽層33の屈折率が外基材15の屈折率と大きく異なる場合に比べ、第1ゲート痕G1が見えにくくなる。そのため、この点においても、エンブレム13の外観がより一層向上する。
【0116】
このようにして、第2実施形態によっても、第1実施形態と同様に、ウェルドライン及び第1ゲート痕G1による外観低下を抑制することができる。
なお、上記実施形態は、これを以下のように変更した変形例として実施することもできる。上記実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0117】
<第1実施形態に関する事項>
・第1実施形態のように、第1ゲート痕G1が外基材15の後面19に形成される場合には、隠蔽層30が透明な樹脂材料又は透明な塗料によって、第1ゲート痕G1上と、外基材15の後面19のうち少なくとも第1ゲート痕G1の周辺部分とに形成されてもよい。
【0118】
この変形例では、車両10の前方からエンブレム13に可視光が照射されると、その可視光の一部は、隠蔽層30では外基材15と同様の態様で屈折して透過する。こうした隠蔽層30での可視光の透過により、第1ゲート痕G1が目立たなくなる。車両10の前方からエンブレム13を見た場合に、隠蔽層30が形成されない場合に比べ、第1ゲート痕G1が見えにくくなる。
【0119】
特に、隠蔽層30が、第2実施形態と同様に、外基材15を形成する樹脂材料と同一の屈折率を有する透明な樹脂材料又は透明な塗料によって形成されるとさらによい。第1ゲート痕G1をより一層見えにくくし、見えることによるエンブレム13の外観低下をさらに抑制することができる。
【0120】
図9に示すように、外基材15の後面19に、凹凸部として、上記凹み部21に代えて、同外基材15の後面19から後方へ突出する突起部23が形成され、第1ゲート痕G1が、この突起部23の後端面に形成されてもよい。
【0121】
この場合、隠蔽層30及び突起部23と、外基材15の後面19であって突起部23の周辺部分とが、隠蔽層30によって後側から被覆される。
隠蔽層30は透明な材料が用いられて形成されてもよいし、有色の材料が用いられて形成されてもよい。この場合の材料は、樹脂材料又は塗料である。いずれの場合にも、隠蔽層30によって第1ゲート痕G1を隠し、同第1ゲート痕G1が見えることによる外観の低下を抑制することができる。
【0122】
図10に示すように、外基材15の後面19に凹所24が形成され、この凹所24の内底部に、凹凸部として、凹み部21が形成されてもよい。これらの凹み部21及び凹所24に隠蔽層30が充填された状態で形成されてもよい。そして、隠蔽層30の後面と、外基材15の後面19であって凹所24の周辺部分とが同一面上に位置するように同隠蔽層30が形成されることで、隠蔽層30と外基材15の後面19における隠蔽層30の周辺部分とが滑らかに繋げられてもよい。
【0123】
この変形例では、隠蔽層30と外基材15の上記周辺部分との間は、段差がない、又は段差が小さな状態となる。そのため、隠蔽層30と外基材15の上記周辺部分とが滑らかに繋がっておらず、両者の間に大きな段差が生じている場合に比べ、隠蔽層30及び外基材15の後側に加飾層41を形成しやすい。
【0124】
なお、図示はしないが、上記凹み部21に代えて、凹所24の内底部から後方へ突出する突起部が形成されてもよい。この場合、突起部の内底部からの突出長さは、凹所24から飛び出さない高さとする。凹所24には、隠蔽層30が充填された状態で形成される。そして、隠蔽層30の後面と、外基材15の後面19であって凹所24の周辺部分とが同一面上に位置するように同隠蔽層30が形成されることで、隠蔽層30と外基材15における隠蔽層30の周辺部分とが滑らかに繋げられてもよい。この場合にも、上記図10と同様の効果が得られる。
【0125】
上記変形例の場合には、凹所24において突起部を除く箇所が埋まるように隠蔽層30を形成することで、第1ゲート痕G1に対し後側に隣接する箇所に、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30を形成することができる。第1ゲート痕G1が平らな箇所に形成される場合に比べ、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層30を容易に形成することができる。
【0126】
<第2実施形態に関する事項>
図11に示すように、外基材15の前面16に、凹凸部として、上記突起部22に代えて、前面16において開口する凹み部25が形成されてもよい。第1ゲート痕G1は、この凹み部25の内底面に形成される。この場合、第1ゲート痕G1に対し前側に隣接する箇所には、同第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層33が形成される。透明な樹脂材料又は透明な塗料によって形成される隠蔽層33は、外基材15と同一の屈折率を有することが望ましい。図11では、第1ゲート痕G1及び凹み部25を含め、外基材15の前面16の全面に隠蔽層33が形成されている。
【0127】
この場合にも、隠蔽層33によって第1ゲート痕G1を隠し、同第1ゲート痕G1が見えることによる外観の低下を抑制することができる。
図12に示すように、外基材15の前面16に凹所26が形成され、この凹所26の内底部に、前方へ突出する突起部27が、上記凹凸部として形成されてもよい。この場合、凹所26の内底部からの突起部27の突出長さは、凹所26から飛び出さない高さとする。凹所26には、隠蔽層33が充填された状態で形成される。そして、隠蔽層33の前面と、外基材15の前面16であって凹所26の周辺部分とが同一面上に位置するように同隠蔽層33が形成されることで、隠蔽層33と外基材15における隠蔽層33の周辺部分とが滑らかに繋げられてもよい。
【0128】
この場合には、凹所26において突起部27を除く箇所が埋まるように隠蔽層33を形成することで、第1ゲート痕G1に対し前側に隣接する箇所に、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層33を形成することができる。第1ゲート痕G1が平らな箇所に形成される場合に比べ、その第1ゲート痕G1を隠す隠蔽層33を容易に形成することができる。
【0129】
上記図12の変形例では、隠蔽層33と外基材15の前面16における隠蔽層33の周辺部分との間は、段差がない、又は段差が小さな状態となる。そのため、隠蔽層33と外基材15の上記周辺部分とが滑らかに繋がっておらず、両者の間に大きな段差が生じている場合に比べ、段差による外観低下が生じにくい。
【0130】
また、上記と同様の理由により、隠蔽層33及び外基材15の前側に、ハードコート層14を形成しやすい。
なお、隠蔽層33及び外基材15のそれぞれの前側に、ハードコート層14とは異なる、別の透明な層を追加しようとした場合、上記と同様の理由により、その追加の層を形成しやすい。
【0131】
また、図示はしないが、凹所26の内底部に、突起部27に代えて凹み部が、上記凹凸部として形成されてもよい。これらの凹み部及び凹所26に隠蔽層33が充填された状態で形成されてもよい。そして、隠蔽層33の前面と、外基材15の前面16であって凹所26の周辺部分とが同一面上に位置するように同隠蔽層33が形成されることで、隠蔽層33と外基材15における隠蔽層33の周辺部分とが滑らかに繋げられてもよい。この場合にも、上記図12の変形例と同様の効果が得られる。
【0132】
<全ての実施形態に共通する事項>
・第1ゲート痕G1は、外基材15の外周面とは異なる箇所、表現を変えると、エンブレム13を車両10の外方(前方)から見た場合に視線上となる箇所であること、すなわち、前面16又は後面19であることを条件に、各実施形態とは異なる箇所に形成されてもよい。
【0133】
・エンブレム13は、楕円とは異なる形状の板状に形成されてもよい。
・エンブレム13におけるハードコート層14は適宜省略可能である。
<適用箇所について>
・上記エンブレムは、車外の物体を検出するための電磁波を送信及び受信する車載センサが搭載された車両において、電磁波の送信方向における上記車載センサの前方に配置される車載センサカバーとして機能するものであれば、車載センサの種類に拘わらず適用可能である。例えば、車載センサは、電磁波として赤外線を送信及び受信する赤外線センサであってもよい。
【0134】
また、車載センサは、前方監視用以外にも、後方監視用、前側方監視用、又は後側方監視用の車載センサであってもよい。
・上記車両用外装品は、車載センサカバーとしての機能を有さず、車両を装飾するガーニッシュとしての機能を有するエンブレムにも適用可能である。
【0135】
また、上記車両用外装品は、エンブレムのほかに、オーナメント、マーク等、ガーニッシュとして機能する車両用外装品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0136】
10…車両
13…エンブレム(車両用外装品)
15…外基材
16…前面(外基材の外面)
19…後面(外基材の内面)
21,25…凹み部(凹凸部)
22,23,27…突起部(凹凸部)
24,26…凹所
30,33…隠蔽層
35…内基材
38…後面(内基材の内面)
41…加飾層
51…外基材成形金型
54,63,73…供給路
55,64…第1ゲート(ゲート)
56,65,75…ゲート硬化部
57,66,76…硬化体
58,59,67,68,77…中間成形体
70…内基材成形金型
74…第2ゲート
A1,A2…樹脂材料
C1…外基材形成用キャビティ
C2…内基材形成用キャビティ
G1…第1ゲート痕(ゲート痕)
G2…第2ゲート痕
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14