(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】無人フォークリフト
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230613BHJP
G05D 1/02 20200101ALI20230613BHJP
G01S 17/89 20200101ALI20230613BHJP
【FI】
B66F9/24 A
B66F9/24 L
B66F9/24 D
G05D1/02 H
G01S17/89
(21)【出願番号】P 2020008358
(22)【出願日】2020-01-22
【審査請求日】2022-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】小川 透
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-179497(JP,A)
【文献】特開2018-005709(JP,A)
【文献】特開2017-182502(JP,A)
【文献】特開2002-029234(JP,A)
【文献】特開2011-240838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0323431(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
B65G 1/00
G05D 1/02
G01S 17/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に上下動するフォークを備える車体と、
前記車体に設置され、前記車体の周囲に存在する物体までの距離を検出する距離センサと、
前記距離センサによる前記物体までの距離に基づいて自己位置を推定しながら走行を制御する制御部と、を備える無人フォークリフトであって、
前後方向における前記車体の高さの変化量を検出する車体高さ変化量検出手段と、
前記車体高さ変化量検出手段による前記車体の高さの変化量に基づいて前記距離センサによる物体までの距離を補正する補正手段と、を備え
、
前記車体に対して後輪を支持する後輪支持部材が前記後輪を接地側に付勢する状態で上下に揺動可能に支持されるとともに前記車体と前記後輪支持部材との間に伸縮可能なシリンダが介装されており、
前記車体高さ変化量検出手段は、前記シリンダの伸縮量を測定する伸縮量センサを含み、前記伸縮量センサによる前記シリンダの伸縮量の変化に基づいて前後方向における前記車体の高さの変化量を検出することを特徴とする無人フォークリフト。
【請求項2】
前部に上下動するフォークを備える車体と、
前記車体に設置され、前記車体の周囲に存在する物体までの距離を検出する距離センサと、
前記距離センサによる前記物体までの距離に基づいて自己位置を推定しながら走行を制御する制御部と、を備える無人フォークリフトであって、
前後方向における前記車体の高さの変化量を検出する車体高さ変化量検出手段と、
前記車体高さ変化量検出手段による前記車体の高さの変化量に基づいて前記距離センサによる物体までの距離を補正する補正手段と、を備え
、
前記車体高さ変化量検出手段は、前記車体の底面部に設けられ、床面との距離を測定する床面距離センサを含み、前記床面距離センサによる床面との距離の変化に基づいて前後方向における前記車体の高さの変化量を検出することを特徴とする無人フォークリフト。
【請求項3】
前記距離センサは、レーザレンジファインダであることを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の無人フォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無人フォークリフトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
無人フォークリフトの誘導方式として、床面に埋め込まれた例えば磁気棒をガイドセンサで検知しながら走行する方式に対し、ガイドレス誘導方式においては、車体に搭載したセンサにより自己位置を推定しながら走行する(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ガイドレス誘導方式の無人フォークリフトの構成例として、
図11(a)に示すように、無人フォークリフト100は前輪101と後輪102を有し、車体103の前部には上下動可能なフォーク104を備える。さらに、車体103の上部に設置した環境センサ(距離センサ)105により建物の壁106や設備等の障害物との距離αを測定することで、自己位置の推定を行いながら走行する。
【0005】
この場合、
図11(a)に示すフォーク104に荷Wを搭載していない状態に対して
図11(b)に示すフォーク104に荷Wを搭載している状態では荷Wの重量が車体103に加わる。そのため、前輪101を軸に車体103の高さが高くなり、前方へ傾くことで実際の位置に対してずれが発生してしまう。即ち、車体103の高さSが変化することにより壁106までの距離αにずれ量Yが生じ、自己位置を推定する際に位置がずれる。
【0006】
本発明の目的は、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる無人フォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための無人フォークリフトは、前部に上下動するフォークを備える車体と、前記車体に設置され、前記車体の周囲に存在する物体までの距離を検出する距離センサと、前記距離センサによる前記物体までの距離に基づいて自己位置を推定しながら走行を制御する制御部と、を備える無人フォークリフトであって、前後方向における前記車体の高さの変化量を検出する車体高さ変化量検出手段と、前記車体高さ変化量検出手段による前記車体の高さの変化量に基づいて前記距離センサによる物体までの距離を補正する補正手段と、を備えたことを要旨とする。
【0008】
これによれば、補正手段により、前後方向における車体の高さの変化量を検出する車体高さ変化量検出手段による車体の高さの変化量に基づいて距離センサによる物体までの距離が補正されることにより、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる。
【0009】
また、無人フォークリフトにおいて、前記車体高さ変化量検出手段は、前記車体に対して後輪を支持する後輪支持部材が前記後輪を接地側に付勢する状態で上下に揺動可能に支持されるとともに前記車体と前記後輪支持部材との間に伸縮可能なシリンダが介装されており、前記車体高さ変化量検出手段は、前記シリンダの伸縮量を測定する伸縮量センサを含み、前記伸縮量センサによる前記シリンダの伸縮量の変化に基づいて前後方向における前記車体の高さの変化量を検出するとよい。
【0010】
また、無人フォークリフトにおいて、前記車体高さ変化量検出手段は、前記車体の底面部に設けられ、床面との距離を測定する床面距離センサを含み、前記床面距離センサによる床面との距離の変化に基づいて前後方向における前記車体の高さの変化量を検出するとよい。
【0011】
また、無人フォークリフトにおいて、前記距離センサは、レーザレンジファインダであるとよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施形態における無人フォークリフトの側面図。
【
図3】無人フォークリフトのドライブユニットを後方から見た図。
【
図4】無人フォークリフトのドライブユニットを側方から見た図。
【
図5】無人フォークリフトの電気的構成を示すブロック図。
【
図6】無人フォークリフトのドライブユニットを側方から見た図。
【
図7】(a)は荷を搭載していない状態でのドライブユニットを側方から見た図、(b)は荷を搭載している状態でのドライブユニットを側方から見た図。
【
図8】(a)は荷を搭載していない状態での無人フォークリフトの側面図、(b)は荷を搭載している状態での無人フォークリフトの側面図。
【
図9】(a)は荷を搭載していない状態での無人フォークリフトの側面図、(b)は荷を搭載している状態での無人フォークリフトの側面図。
【
図10】(a)は別例を説明するための無人フォークリフトの斜視図、(b)は別例の無人フォークリフトを後方から見た図。
【
図11】(a),(b)は課題を説明するための無人フォークリフトの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に従って説明する。
本実施形態では、無人フォークリフトとしてリーチ型フォークリフトに適用しており、地図情報と自己位置に基づいて走行する。自己位置はセンサを用いて周囲の物体を検出して地図情報と比較して推定する。
【0015】
図1、
図2に示すように、無人フォークリフト10の車体11の前部には、左右一対のリーチレグ12が設けられている。各リーチレグ12の先端部には、前輪13がそれぞれ支持されている。
【0016】
無人フォークリフト10は、車体11の前部に、荷役装置14を備える。荷役装置14は、リーチシリンダの駆動により、各リーチレグ12に沿って前後動作する左右一対のマスト15を備える。マスト15の前方には、左右一対のフォーク16がリフトブラケット17を介して設けられている。フォーク16は、マスト15に沿って昇降することができる。上下動可能な左右一対のフォーク16はリフトシリンダにより昇降する。
【0017】
図3に示すように、車体11における後部の左側には駆動操舵輪18が設けられている。また、車体11における後部の右側にはキャスタ輪19が設けられている。
図1、
図2に示すように、車体11の後部右側には立席式の運転席20が設けられており、無人フォークリフト10は運転者が操作することが可能に構成されている。なお、運転席が無い無人フォークリフトであってもよい。運転席20は、車体11に立設された複数本のピラー21と、ピラー21の上端に固定されたヘッドガード22とにより囲まれている。ヘッドガード22は、水平に配置されている。運転席20には操作部材としてのステアリングホイール23、各種の操作レバー24等が配置されている。
【0018】
図3、
図4に示すように、車体11と駆動操舵輪18及びキャスタ輪19とはサスペンション装置30により連結されている。サスペンション装置30はドライブユニット31を備える。
【0019】
車体11の後部に配置されるドライブユニット31は、走行モータ32と、走行モータ32を支持する支持アーム33と、支持アーム33と連結された回動軸34と、支持アーム33の下部に設けられ、駆動操舵輪18を支持するギヤハウジング35と、を備えている。また、ドライブユニット31には、サスペンションスプリング36とスイングシリンダ37が設けられている。
【0020】
図4に示すように、支持アーム33は、略クランク形状に形成されており、前部である支持アーム33の基部には回動軸34が固定されている。
図3に示すように、回動軸34は、車体11に設けた軸受38,39により車幅方向に延びる状態で支持されており、車体11に対して回動可能である。従って、ドライブユニット31は、車体11に対して上下に変位可能である。
【0021】
走行モータ32は支持アーム33の上部に取り付けられている。走行モータ32の回転力は、ギヤハウジング35内に収容された回転伝達機構を介して駆動操舵輪18へ伝達される。走行モータ32は駆動操舵輪18を駆動し、無人フォークリフト10は駆動操舵輪18の駆動により床面Fを走行する。
【0022】
支持アーム33の下部に設けられているギヤハウジング35は、支持アーム33に対して回動可能である。ギヤハウジング35の上部にはギヤホイール40が設けられている。ギヤホイール40には操舵モータ41(
図5参照)が連結されており、操舵モータ41により駆動操舵輪18の向きが変えられて操舵される。また、
図3に示すように回動軸34に対しキャスタ輪19も連結支持されている。
【0023】
図4に示すように、サスペンションスプリング36は、車体11に対し、支持アーム33を介して駆動操舵輪18を下方に変位動作させるように付勢する。サスペンションスプリング36の上端部付近は、車体11に設けたドライブユニット31の前方のブラケット42に連結され、下端部は支持アーム33の上面に設けたブラケット43に連結されている。サスペンションスプリング36は、伸縮の軸線が支持アーム33の揺動軌跡の接線方向と平行となる斜めの姿勢で支持されている。
【0024】
スイングシリンダ37は支持アーム33の上下変位を規制する。
図4に示すように、スイングシリンダ37の一方の端部は、支持アーム33に設けられたブラケット部44に連結ピン45を介して連結され、スイングシリンダ37の他方の端部は、車体11の後部に設けられたブラケット46に連結ピン47を介して連結されている。スイングシリンダ37は、伸縮の軸線が支持アーム33の揺動軌跡の接線方向と平行となる斜めの姿勢で支持されている。
【0025】
スイングシリンダ37は、シリンダ本体48とピストンロッド49を有している。スイングシリンダ37は、シリンダ本体48に対するピストンロッド49の出没動作を許容又は規制可能なロック用電磁弁50を備えている。ロック用電磁弁50は、外部から駆動電流を供給されないときにはシリンダ本体48に対するピストンロッド49の出没動作を規制し、駆動電流が供給されるときにその出没動作を許容する。そして、走行時の横加速度や積み荷の荷重によるモーメント荷重等によって、車体11を駆動操舵輪18側に傾動させる外力が加わっても、ロック用電磁弁50が制御されスイングシリンダ37によって駆動操舵輪18の変位動作が規制されると、車体11の駆動操舵輪18側への傾動が規制される。このことにより、車両の走行安定性を確保することができる。
【0026】
このように、車体11に対して後輪である駆動操舵輪18を支持する後輪支持部材としてのドライブユニット31がサスペンションスプリング36により駆動操舵輪18を接地側に付勢する状態で上下に揺動可能に支持される。また、車体11とドライブユニット31との間に、伸縮可能なスイングシリンダ37が介装されている。
【0027】
そして、車体11の高さが上下に変位した場合、スイングシリンダ37が伸縮して後輪である駆動操舵輪18を上下させることで常に接地させている。例えば、車体11後方が上がると後輪である駆動操舵輪18及びキャスタ輪19を接地させるためスイングシリンダ37が縮む。
【0028】
また、旋回時に必要に応じてロック用電磁弁50によりスイングシリンダ37の長さを固定することによりサスペンション装置30の上下スイングをロックする。
図4に示すように、スイングシリンダ37には、スイングシリンダ37の伸縮量を測定する伸縮量センサ60が搭載されている。伸縮量センサ60は、例えば、投受光センサを用いることができる。具体的には、シリンダ本体48に投光器61を固定するとともにピストンロッド49に受光器62を投光器61と対向するようにして固定する。
【0029】
このように、スイングシリンダ37の伸縮量を測定する伸縮量センサ60が設置されており、伸縮量センサ60によるスイングシリンダ37の伸縮量の変化に基づいて前後方向における車体11の高さの変化量を検出することができるようになっている。
【0030】
図1、
図2に示すように、ヘッドガード22の上部にレーザレンジファインダ(LRF)63が設置されている。距離センサとしてのレーザレンジファインダ63は、車体11の周囲に存在する物体に関する情報を取得するためのものであり、照射角度を変更しながらレーザを例えば360°照射することで、レーザの照射方向に位置する物体までの距離を測定することができる。例えば、
図8(a)に示すように、周囲に存在する物体としての建物の壁90に対し、レーザレンジファインダ63により建物の壁90までの距離αを検出することができる。他にも、周囲に存在する物体としての設備等の障害物に対し、レーザレンジファインダ(LRF)63を用いて設備等の障害物までの距離を検出することができる。
【0031】
ここで、
図6において、「a」は、スイングシリンダ37における連結ピン45と連結ピン47との距離である。「b」は、回動軸34とスイングシリンダ37の連結ピン47との距離である。「c」は、スイングシリンダ37における連結ピン45と回動軸34との距離である。「d」は、回動軸34と駆動操舵輪18の中心との距離である。「β」は、スイングシリンダ37の連結ピン45と回動軸34とを結ぶ線と、回動軸34と駆動操舵輪18の中心を結ぶ線とでなす角度である。「L」は、回動軸34と連結ピン47とを結ぶ線に直交する方向での、回動軸34と連結ピン47とを結ぶ線から駆動操舵輪18の中心までの距離(車輪高さ)である。
【0032】
図6において、b値、c値、d値は、一定であるとともに、β値は一定であり、距離b,c,dと角度βは一定のため、距離(シリンダ長さ)aが変化すると、距離(車輪高さ)Lも変化することになる。そして、距離(シリンダ長さ)aが変化する前と後における距離(車輪高さ)Lの差が、
図9(a),(b)における車体11の高さSの変化量Xとなる。
【0033】
図5に示すように、コントローラ64にレーザレンジファインダ(LRF)63が接続されている。コントローラ64は、レーザレンジファインダ(LRF)63からの信号により車体11の周囲に存在する物体としての壁90までの距離を検知することができるようになっている。詳しくは、レーザレンジファインダ63は、レーザの照射角度と、当該照射角度に位置する物体までの距離との両者を対応付けてコントローラ64に出力することにより、コントローラ64は、検出範囲に存在する壁や障害物などを認識することができる。これにより、自己位置を推定しながら走行することができる。
【0034】
コントローラ64には伸縮量センサ60が接続されている。コントローラ64は、伸縮量センサ60からの信号によりスイングシリンダ37の伸縮量を検知して、そのスイングシリンダ37の伸縮量の変化に基づいて前後方向における車体11の高さSの変化量Xを検出することができるようになっている。
【0035】
コントローラ64には走行モータ32が接続されている。コントローラ64は、走行モータ32を制御して駆動操舵輪18を駆動することができるようになっている。
コントローラ64には操舵モータ41が接続されている。コントローラ64は、操舵モータ41を制御して駆動操舵輪18の向きを変えることによる操舵を行うことができるようになっている。
【0036】
本実施形態では、コントローラ64により、距離センサとしてのレーザレンジファインダ(LRF)63による物体までの距離に基づいて自己位置を推定しながら走行を制御する制御部が構成されている。伸縮量センサ60とコントローラ64とにより、前後方向における車体11の高さの変化量を検出する車体高さ変化量検出手段が構成されている。また、コントローラ64により、車体高さ変化量検出手段による車体11の高さの変化量に基づいてレーザレンジファインダ63による物体までの距離を補正する補正手段が構成されている。
【0037】
次に、作用について説明する。
図9(a)は荷Wを搭載していない状態での無人フォークリフト10を示すとともに、
図9(b)は荷Wを搭載している状態での無人フォークリフト10を示すが、「P」は、床面Fからのレーザレンジファインダ63の高さである。「Q」は、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63との距離である。「R」は、前輪13と駆動操舵輪18の距離である。「S」は、
図9(a)に示すフォーク16に荷Wを搭載していない時の床面Fからの車体11の高さである。
【0038】
図8(a)は荷Wを搭載していない状態での無人フォークリフト10を示すとともに、
図8(b)は荷Wを搭載している状態での無人フォークリフト10を示すが、「α」は、
図8(a)に示すようにレーザレンジファインダ63から壁90までの距離である。「Y」は、
図8(b)に示すように、レーザレンジファインダ63から壁90までの距離αに対するずれ量である。
【0039】
図9(a)の荷Wを搭載していない時における、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63とを結ぶ線と床面Fでなす角度θは、床面Fからのレーザレンジファインダ63の高さP、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63との距離Qから、式(1)のように表せる。
【0040】
θ=sin
-1(P/Q)
・・・(1)
これに対し、
図9(b)の荷Wを搭載している時における前述の角度θのずれ量Φは、車体11の高さS、その変化量X、前輪13と駆動操舵輪18の距離Rを用いて、式(2)のように表せる。
【0041】
Φ=tan-1{(S+X)/R}-tan-1(S/R)
・・・(2)
荷Wを積んだ時のずれ量Yは、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63との距離Q、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63とを結ぶ線と床面Fでなす角度θ、角度θのずれ量Φから、式(3)に示すようになる。
【0042】
Y=Q×cosθ-Q×cos(θ+Φ)
・・・(3)
コントローラ64は、
図9(a)に示すフォーク16に荷Wを搭載していない時に対する
図9(b)に示すフォーク16に荷Wを搭載している時におけるレーザレンジファインダ63の前後方向での位置のずれ量Yを算出すべく、
図9(a)に示すフォーク16に荷Wを搭載していない時の車体11の高さSに対する
図9(b)に示すフォーク16に荷Wを搭載している時の車体11の高さSの変化量Xを算出する。コントローラ64は、車体11の高さSの変化量Xからレーザレンジファインダ63のずれ量Yを算出することにより、ずれ量Yを考慮して自己位置を正確に推定する。
【0043】
以下、詳しく説明する。
図8(a)、
図8(b)に示すように、車体11が上下に変位した場合、
図7(a)、
図7(b)に示すように、サスペンションスプリング36による付勢力により駆動操舵輪18を常に接地させている。このとき、スイングシリンダ37が伸縮する。
【0044】
詳しくは、荷Wを搭載していない時には、
図7(a)に示すように、スイングシリンダ37が伸長して駆動操舵輪18が接地している。荷Wを搭載することにより
図7(b)に示すように車体11の後方が上がると駆動操舵輪18を接地させるためスイングシリンダ37が収縮する。
【0045】
図4に示すように、伸縮量センサ60によりスイングシリンダ37の伸縮量が測定される。伸縮量センサ60によるスイングシリンダ37の伸縮量の測定結果に基づいて、次のようにして車体11の高さSの変化量Xが算出される。
【0046】
式(4)に示すように、
図6での回動軸34とスイングシリンダ37の連結ピン47とを結ぶ線に直交する方向での駆動操舵輪18の中心までの距離Lは、スイングシリンダ37における連結ピン45と連結ピン47との距離a、回動軸34とスイングシリンダ37の連結ピン47との距離b、回動軸34とスイングシリンダ37の連結ピン45との距離c、回動軸34と駆動操舵輪18の中心との距離d、スイングシリンダ37の連結ピン45と回動軸34とを結ぶ線と、回動軸34と駆動操舵輪18の中心を結ぶ線とでなす角度βで表される。
【0047】
L=d×sin[β-cos-1{(b2+c2+a2)/2bc}]
・・・(4)
ここで、距離b,c,dと角度βは一定のため、距離(シリンダ長さ)aが変化すると距離(車輪高さ)Lも変化する。距離(シリンダ長さ)aの変化前後の距離(車輪高さ)Lの差が高さ変化量Xとなる。
【0048】
式(4)に示す関係に基づいて、コントローラ64は、フォーク16に荷Wを搭載していない時の距離(シリンダ長さ)a1が分かるので、距離L1を、式(5)から算出する。
【0049】
L1=d×sin[β-cos-1{(b2+c2+a1
2)/2bc}]
・・・(5)
また、式(4)に示す関係に基づいて、コントローラ64は、フォーク16に荷Wを搭載している時の距離(シリンダ長さ)a2が分かるので、距離L2を、式(6)から算出する。
【0050】
L2=d×sin[β-cos-1{(b2+c2+a2
2)/2bc}]
・・・(6)
そして、コントローラ64は、フォーク16に荷Wを搭載していない時の距離L1と、フォーク16に荷Wを搭載している時の距離L2から、式(7)により、その差を求めることにより、車体11の高さSの変化量Xを算出する。
【0051】
X=L
2-L
1
・・・(7)
さらに、コントローラ64は、前述の式(2)により、車体11の高さS、車体11の高さSの変化量X、前輪13と駆動操舵輪18の距離Rから、
図9(a)の荷Wを搭載していない時における、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63とを結ぶ線と床面Fでなす角度θに対する
図9(b)でのずれ量Φを算出する。
【0052】
さらには、コントローラ64は、前述の式(3)により、
図9(b)に示すフォーク16に荷Wを搭載している時におけるレーザレンジファインダ63の前後方向での位置のずれ量Yを、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63とを結ぶ線と床面Fでなす角度θ、ずれ量Φ、前輪13の接地点とレーザレンジファインダ63との距離Qから、算出する。
【0053】
そして、コントローラ64は、レーザレンジファインダ63による距離測定結果に対しずれ量Yを減算して補正後の壁90までの距離、即ち、補正後の真の距離を得る。
このようにして、レーザレンジファインダ(LRF)63を搭載し、建物の壁90や設備等の障害物との距離を測定することで自己位置の推定を行いながら走行している無人フォークリフト10において、フォーク16に荷Wを搭載していない状態に対してフォーク16に荷Wを搭載している状態では荷Wの重量が車体11に加わるため前輪13を軸に車体11の高さSが高くなり、前方へ傾くことで実際の位置に対してずれが発生してしまう。
【0054】
これに対して本実施形態では、スイングシリンダ37の伸縮量の変化量を検知することで、車体11の高さSの変化量Xを算出し、その変化量Xから前後ずれ量Yを算出する。こうすることで、補正すべき自己位置のずれ量が分かる。
【0055】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)無人フォークリフト10の構成として、前部に上下動するフォーク16を備える車体11と、車体11に設置され、車体11の周囲に存在する物体としての壁90までの距離を検出する距離センサとしてのレーザレンジファインダ(LRF)63と、レーザレンジファインダ(LRF)63による物体としての壁90までの距離に基づいて自己位置を推定しながら走行を制御する制御部としてのコントローラ64と、を備える。前後方向における車体11の高さSの変化量Xを検出する車体高さ変化量検出手段としての伸縮量センサ60及びコントローラ64と、伸縮量センサ60及びコントローラ64による車体11の高さSの変化量Xに基づいてレーザレンジファインダ(LRF)63による物体としての壁90までの距離を補正する補正手段としてのコントローラ64を備える。よって、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる。
【0056】
(2)車体11に対して後輪である駆動操舵輪18を支持する後輪支持部材としてのドライブユニット31が駆動操舵輪18を接地側に付勢する状態で上下に揺動可能に支持されるとともに車体11とドライブユニット31との間に伸縮可能なスイングシリンダ37が介装されており、車体高さ変化量検出手段は、スイングシリンダ37の伸縮量を測定する伸縮量センサ60を含み、伸縮量センサ60によるスイングシリンダ37の伸縮量の変化に基づいて前後方向における車体11の高さSの変化量Xを検出する。よって、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる。
【0057】
(3)距離センサは、レーザレンジファインダ(LRF)63であるので、実用的である。
実施形態は前記に限定されるものではなく、例えば、次のように具体化してもよい。
【0058】
○
図10(a),(b)に示すように、車体11後部の底面部に設けられたプレート70に床面距離センサ71を取付け、床面Fとの距離を直接測定することで高さ変化量Xを検出する。具体的には、床面距離センサ71として投光センサを用いることができる。
【0059】
このように、車体高さ変化量検出手段は、車体11の底面部に設けられ、床面Fとの距離を測定する床面距離センサ71を含み、床面距離センサ71による床面Fとの距離の変化に基づいて前後方向における車体11の高さSの変化量Xを検出して、周囲に存在する物体までの距離を精度よく測定することができる。
【0060】
〇距離センサはレーザレンジファインダ(LRF)63に限ることなく、他のレーザ式センサでもよいし、超音波方式のセンサでもよい。他にも、距離センサとしてステレオカメラを用いてもよい。
【0061】
〇レーザレンジファインダ(LRF)63は、ヘッドガード22に取り付けたが、これに限ることなく、車体11の他の部位に設けてもよい。
○フォークリフトは、リーチ式フォークリフトに限ることなく、他のフォークリフト、例えばカウンタ式フォークリフトに適用してもよい。
【符号の説明】
【0062】
10…無人フォークリフト、11…車体、16…フォーク、18…駆動操舵輪、31…ドライブユニット、37…スイングシリンダ、60…伸縮量センサ、63…レーザレンジファインダ、64…コントローラ、71…床面距離センサ、90…壁、S…車体の高さ、X…変化量。