(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
B66F 9/24 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B66F9/24 L
(21)【出願番号】P 2020064543
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2022-06-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構生物系特定産業技術研究支援センター「革新的技術開発・緊急展開事業(うち人工知能未来農業創造プロジェクト)」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】三田 達也
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-279297(JP,A)
【文献】特開2001-301986(JP,A)
【文献】特開2018-058679(JP,A)
【文献】特開平02-175599(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0090284(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0070804(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66F 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
昇降可能に構成されたフォークと、を備え、
前記フォークに積載された荷を荷台の載置面に積むフォークリフトであって、
前記フォークの揚高を検出する揚高センサと、
前記フォークとともに昇降するように設けられており、かつ、前記フォークよりも前方に存在する物体までの距離を測定する1次元の距離計と、
前記フォークを上昇させる過程で前記距離計によって測定される距離の変化に基づき、基準位置から前記載置面までの高さを検出する検出部と、を備え、
前記距離計は、前記フォークからの高さが異なる複数箇所に設けられており、
前記検出部は、前記基準位置から各距離計までの高さを導出可能である導出部と、前記距離計により測定される距離が閾値以上長くなる高さのうち前記基準位置から最も高い最高点を抽出する抽出部と、前記最高点の高さに基づき前記基準位置から前記載置面までの高さを導出する高さ導出部と、を備えるフォークリフト。
【請求項2】
前記距離計は、上下方向に並んで複数配置されている請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記距離計は、車幅方向に離間して複数配置されている請求項1又は請求項2に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
荷台への荷積み作業を行うフォークリフトは、フォークに積載した荷を荷台まで搬送し、荷台の上面である載置面に荷を積む。荷台に荷を積む際には、載置面よりも高い位置にフォークを上昇させる必要がある。載置面の高さが一定ではない荷台に荷を積む場合、フォークの上昇量が不足したり、フォークの上昇量が過剰になる場合がある。特許文献1に記載のフォークリフトは、光電センサと、フォークの昇降を制御する制御装置と、を備える。荷台となる棚には予め反射板が配置されている。光電センサにより反射板が検出されると、制御装置は、フォークを規定量上昇させる。これにより、載置面の高さが一定ではない場合であっても、載置面よりも高い位置にフォークを上昇させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では荷台に反射板を配置することで、反射板の位置を載置面の高さとして検出することができる。換言すれば、反射板が設けられていない荷台に荷を積む場合には載置面の高さを検出することができない。
【0005】
本発明の目的は、基準位置から荷台の載置面までの高さを検出することができるフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するフォークリフトは、車体と、昇降可能に構成されたフォークと、を備え、前記フォークに積載された荷を荷台の載置面に積むフォークリフトであって、前記フォークの揚高を検出する揚高センサと、前記フォークとともに昇降するように設けられており、かつ、前記フォークよりも前方に存在する物体までの距離を測定する1次元の距離計と、前記フォークを上昇させる過程で前記距離計によって測定される距離の変化に基づき、基準位置から前記載置面までの高さを検出する検出部と、を備え、前記距離計は、前記フォークからの高さが異なる複数箇所に設けられており、前記検出部は、前記基準位置から各距離計までの高さを導出可能である導出部と、前記距離計により測定される距離が閾値以上長くなる高さのうち前記基準位置から最も高い最高点を抽出する抽出部と、前記最高点の高さに基づき前記基準位置から前記載置面までの高さを導出する高さ導出部と、を備える。
【0007】
フォークを上昇させると、距離計もフォークとともに上昇する。フォークが上昇する過程で、距離計が載置面よりも下方の位置までの距離を測定している状態から、距離計が載置面よりも上方の位置までの距離を測定している状態に切り替わると、距離計によって測定される距離が長くなる。従って、距離計により測定される距離が閾値以上長くなる高さのうち基準位置から最も高い最高点は、基準位置から距離計までの高さが載置面よりも下方から載置面よりも上方に切り替わった高さと捉えることができる。そして、高さ導出部は、最高点に基づき、基準位置から荷台の載置面までの高さを導出することができる。
【0008】
上記フォークリフトについて、前記距離計は、上下方向に並んで複数配置されていてもよい。
上記フォークリフトについて、前記距離計は、車幅方向に離間して複数配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基準位置から荷台の載置面までの高さを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】バックレストに取り付けられた距離計を示す斜視図。
【
図4】フォークリフトが用いられる作業場の模式図。
【
図6】荷積み作業を行う際のトラックとフォークリフトとの位置関係を示す図。
【
図8】載置面の高さの検出を行う際のフォークの動きを示す図。
【
図9】フォークを上昇させたときの第1距離計の基準位置からの高さと、第1距離計により測定される距離との対応関係を示す図。
【
図10】フォークを上昇させたときの第2距離計の基準位置からの高さと、第2距離計により測定される距離との対応関係を示す図。
【
図11】フォークを上昇させたときの各距離計の基準位置からの高さと、各距離計により測定される距離との対応関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、フォークリフトの一実施形態について説明する。以下の説明において、上下とは鉛直方向での上下を示す。また、左右とはフォークリフトの前進方向を前とした場合の左右である。
【0012】
図1及び
図2に示すように、フォークリフト10は、車体11と、車体11の前下部に配置された駆動輪12と、車体11の後下部に配置された操舵輪13と、車体11の前方に設けられた荷役装置14と、2つのセンサ群31L,31Rと、を備える。荷役装置14は、車体11の前部に設けられたマスト15と、バックレスト18と、バックレスト18に固定された一対のフォーク19と、リフトシリンダ20と、ティルトシリンダ21と、を備える。
【0013】
マスト15は、車体11に対して前後に傾動可能に支持されたアウタマスト16と、アウタマスト16に対して昇降可能なインナマスト17と、を備える。バックレスト18は、インナマスト17に固定されている。バックレスト18及びフォーク19は、インナマスト17とともに昇降する。リフトシリンダ20は、インナマスト17を昇降動作させる。ティルトシリンダ21は、マスト15を傾動動作させる。リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21は、油圧シリンダである。
【0014】
フォーク19には、荷としてのパレットPが積載される。パレットPは、搬送物を収容する四角箱状の収容部Sと、収容部Sの四隅に設けられた脚部Lと、を備える。本実施形態のパレットPは、メッシュパレットである。フォーク19は、脚部L同士の間に差し込まれ、収容部Sの底を支持する。
【0015】
一対のセンサ群31L,31R同士は、フォークリフト10の車幅方向に離間して配置されている。一対のセンサ群31L,31Rは、バックレスト18に取り付けられている。センサ群31L,31Rは、フォーク19にパレットPが積載された状態で、センサ群31L,31RとパレットPとがフォークリフト10の前後方向に向かい合わない位置に取り付けられている。本実施形態において、一対のセンサ群31L,31Rは、同一構成である。
【0016】
センサ群31L,31Rは、フォーク19からの高さが異なる複数箇所に設けられた距離計32,33を備える。本実施形態のセンサ群31L,31Rは、2つの距離計32,33を備える。2つの距離計32,33のうち下方に配置される距離計32を第1距離計32とし、上方に配置される距離計33を第2距離計33とする。第1距離計32と第2距離計33とは上下方向に並んで設けられている。言い換えれば、第1距離計32と第2距離計33とは、上下方向に向かい合うように配置されている。フォーク19から第1距離計32までの高さを第1取付高H1、フォーク19から第2距離計33までの高さを第2取付高H2とする。
【0017】
センサ群31L,31Rは、フォーク19の昇降とともに昇降するため、フォーク19の昇降とともに路面から各距離計32,33までの高さは変化する。一方で、フォーク19が昇降したとしても、フォーク19から各距離計32,33までの高さは一定である。路面を基準位置=0とした高さであっても第1距離計32は、第2距離計33よりも低い位置に取り付けられているといえる。
【0018】
一対のセンサ群31L,31R同士で、第1距離計32の高さ、及び第2距離計33の高さは同一である。同一とは、取付精度などに起因する若干の誤差を許容するものである。2つのセンサ群31L,31R同士で、第1距離計32同士は互いに車幅方向に並んでおり、第2距離計33同士は互いに車幅方向に並んでいるといえる。
【0019】
距離計32,33は、フォーク19よりも前方に位置する物体までの距離を測定できるように取り付けられている。詳細にいえば、フォーク19にパレットPが積載されている場合であっても、パレットPよりも前方に位置する物体までの距離を測定できるように距離計32,33は設けられている。距離計32,33は、レーザーを照射可能であり、レーザーが当たった箇所からの反射光を受光することでレーザーが当たった箇所までの距離を測定するレーザー距離計である。レーザーがフォークリフト10の前方に照射されるように取り付けられることで、距離計32,33はフォーク19よりも前方に位置する物体までの距離を測定可能である。距離計32,33は、レーザーを照射したにも関わらず、反射光を受光できない場合、無限遠を測定値とする。無限遠とは、距離計32,33の測定可能距離内にはレーザーが当たる箇所がないことを意味する。本実施形態の距離計32,33は、一方向への距離のみを測定可能な1次元の距離計である。
【0020】
距離計32,33は、マスト15が傾動していない状態で、水平方向への距離を測定できるように取り付けられている。即ち、マスト15が傾動していない場合の距離計32,33の測定値には、上下方向成分が含まれず、距離計32,33により測定される距離はフォークリフト10の前方に位置する物体までの最短距離となる。
【0021】
以下の説明において、適宜、一対のセンサ群31L,31Rの一方を第1センサ群31L、他方を第2センサ群31Rとして説明を行う。第1センサ群31Lは、フォーク19にパレットPが積載されている状態で、パレットPよりも左方に位置することを想定して設けられたセンサ群である。第2センサ群31Rは、フォーク19にパレットPが積載されている状態で、パレットPよりも右方に位置することを想定して設けられたセンサ群である。
【0022】
図3に示すように、フォークリフト10は、駆動機構41と、油圧機構42と、制御装置43と、補助記憶装置46と、揚高センサ47と、環境センサ48と、を備える。
駆動機構41は、フォークリフト10を走行動作させるための部材であり、駆動輪12を駆動させるための走行用モータや、操舵輪13を操舵させるための操舵機構を含む。
【0023】
油圧機構42は、リフトシリンダ20及びティルトシリンダ21への作動油の給排を制御するための部材であり、ポンプを駆動させるための荷役モータや、コントロールバルブを含む。リフトシリンダ20への作動油の給排によってインナマスト17は昇降する。ティルトシリンダ21への作動油の給排によってマスト15は車体11の前後方向に対して傾動する。インナマスト17の昇降とはフォーク19の昇降ともいえる。
【0024】
制御装置43は、CPUやGPU等のプロセッサ44と、RAM及びROM等からなる記憶部45と、を備える。記憶部45は、処理をプロセッサ44に実行させるように構成されたプログラムコードまたは指令を格納している。記憶部45、すなわち、コンピュータ可読媒体は、汎用または専用のコンピュータでアクセスできるあらゆる利用可能な媒体を含む。制御装置43は、ASIC:Application Specific Integrated CircuitやFPGA:Field Programmable Gate Array等のハードウェア回路によって構成されていてもよい。処理回路である制御装置43は、コンピュータプログラムに従って動作する1つ以上のプロセッサ、ASICやFPGA等の1つ以上のハードウェア回路、或いは、それらの組み合わせを含み得る。
【0025】
制御装置43は、記憶部45に記憶されたプログラムに従い、駆動機構41及び油圧機構42を制御することで、フォークリフト10を動作させる。本実施形態のフォークリフト10は、操作者による操作が行われることなく、制御装置43による制御によって自動で動作するフォークリフトである。
【0026】
制御装置43には、各センサ群31L,31Rの距離計32,33が接続されている。制御装置43は、距離計32,33によって測定された距離を認識することができる。
補助記憶装置46は、制御装置43が読み取り可能な情報を記憶している。補助記憶装置46としては、例えば、ハードディスクドライブや、ソリッドステートドライブが用いられる。記憶部45に記憶されるプログラムコードや指令は、記憶部45に代えて補助記憶装置46に記憶されてもよい。
【0027】
揚高センサ47は、路面からフォーク19までの高さである揚高を検出する。言い換えれば、フォーク19の実際の高さに関わらず、揚高センサ47により検出されるフォーク19の揚高が0の場合、フォーク19の高さは路面と同一の高さであるとみなす。制御装置43は、揚高センサ47の検出結果からフォーク19の揚高を認識可能である。
【0028】
環境センサ48は、フォークリフト10の後方に位置する物体と、フォークリフト10との相対位置を制御装置43に認識させることができるセンサである。環境センサ48としては、例えば、ミリ波レーダー、ステレオカメラ、LIDAR:Laser Imaging Detection and Rangingなどを用いることができる。
【0029】
図4に示すように、フォークリフト10は、工場、港湾、空港、商業施設などのパレットPを搬送する必要のある作業場で使用される。作業場には、パレットPが置かれる第1位置A1と、トラックTの停車位置である第2位置A2と、トラックTにパレットPを積む荷積み作業が開始される第3位置A3と、が設定されている。
【0030】
補助記憶装置46には、地図情報が記憶されている。地図情報とは、フォークリフト10の用いられる環境の形状、広さなど、フォークリフト10の周辺環境の物理的構造に関する情報である。地図情報は、フォークリフト10の用いられる環境を座標で表したデータといえる。第1位置A1、第2位置A2、第3位置A3などの位置は、地図情報中の座標として表される。地図情報は、フォークリフト10が用いられる周辺環境を予め把握できていれば、予め補助記憶装置46に記憶されていてもよい。地図情報を予め補助記憶装置46に記憶する場合、建築物の壁、柱など位置の変化しにくい物の座標を地図情報として記憶する。地図情報は、SLAM:Simultaneous Localization and Mappingによるマッピングにより作成されてもよい。マッピングは、例えば、環境センサ48によって得られた座標から局所地図を作成し、この局所地図を自己位置に応じて組み合わせることによって行われる。
【0031】
制御装置43は、地図情報上でのフォークリフト10の自己位置を推定する自己位置推定を行いながら駆動機構41を制御することで、第3位置A3にフォークリフト10を移動させることが可能である。自己位置推定は、例えば、走行用モータの回転数を用いて自己移動量を推定するオドメトリを用いて行われてもよいし、ランドマークと地図情報とのマッチング結果から行われてもよい。また、これらを組み合わせて自己位置推定をしてもよい。フォークリフト10が用いられる環境が屋外であれば、GPS:Global Positioning Systemを用いて自己位置を推定してもよい。なお、自己位置とは、車体11の一点を示す座標であり、例えば、車体11の水平方向の中央の座標である。
【0032】
図5及び
図6に示すように、トラックTは、平ボディのトラックである。トラックTは、荷台TBと、側あおりSSと、後あおりRSと、タイヤT1と、を備える。側あおりSSは、荷台TBの側部に設けられている。側あおりSSは、上下方向に回動可能である。後あおりRSは、荷台TBの後部に設けられている。後あおりRSは、上下方向に回動可能である。トラックTの走行中などには、側あおりSS及び後あおりRSによって荷台TBが囲まれている。フォークリフト10が荷積み作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、下方に回動させられており、側あおりSS及び後あおりRSはパレットPに向かい合わない。即ち、フォークリフト10が荷積み作業を行う際には、側あおりSS及び後あおりRSは、フォークリフト10による荷積み作業を阻害しないように回動させられる。
【0033】
フォークリフト10は、荷台TBの上面である載置面B1にパレットPを積む。荷台TBにパレットPを積む際には、パレットPの搬送を繰り返し行い、順次、荷台TBにパレットPを積んでいく。本実施形態では、荷台TBに積まれた2つのパレットP同士の間にパレットPを積む場合について説明する。フォークリフト10はトラックTの車幅方向から荷台TBにパレットPを積む。即ち、フォークリフト10の前後方向とトラックTの車幅方向とが一致している状態で荷積み作業は行われる。以下、荷積み作業を行う際に制御装置43が行う制御について説明する。
【0034】
図7に示すように、ステップS1において、制御装置43は、油圧機構42を制御することでフォーク19を上昇させる。
図8に示すように、制御装置43は、フォーク19の上昇を開始させる高さである上昇開始高H11から、フォーク19の上昇を停止させる高さである上昇停止高H12までフォーク19を上昇させる。上昇開始高H11及び上昇停止高H12は、基準位置H0からの高さである。本実施形態に基準位置H0は、路面である。
【0035】
上昇開始高H11は、上昇開始高H11にフォーク19が位置している状態で、少なくとも最も下方に位置する距離計が載置面B1よりも下方に位置する高さである。本実施形態では、第1距離計32が最も下方に位置する距離計なので、第1距離計32が荷台TBの載置面B1よりも下方に位置するように上昇開始高H11は設定されている。上昇開始高H11は、例えば、フォークリフト10の走行中のフォーク19の揚高と同一である。フォークリフト10の走行中には、フォーク19の揚高が予め定められた揚高にされる。フォーク19の揚高が高くなるほどフォークリフト10の安定性は低下するため、フォークリフト10の走行中にはフォーク19の揚高を低くすることが好ましい。一方で、フォーク19やパレットPの路面への接触は抑止する必要があるため、フォークリフト10の走行中の揚高は、フォーク19やパレットPが路面に接触しないと想定される揚高であり、かつ、フォークリフト10の安定性を確保できるように設定される。なお、上昇開始高H11は、第1距離計32が載置面B1よりも低くなる高さであれば、任意に設定することができる。トラックTの種類、タイヤT1の空気圧等によって基準位置H0から載置面B1の高さHB1は異なる。これらを加味した上で、載置面B1が最も低い状態を予測し、この状態での載置面B1よりも低い高さに第1距離計32が位置するように上昇開始高H11を設定すればよい。
【0036】
上昇停止高H12は、フォーク19が上昇停止高H12に位置している状態で、少なくとも最も上方に位置する距離計が載置面B1よりも上方に位置する高さである。上昇停止高H12は、パレットPが積まれると想定される荷台TBの載置面B1の高さHB1を想定した上で、最も上方に位置する距離計が載置面B1よりも上方となるように設定されている。本実施形態では、最も上方に位置する距離計は第2距離計33なので、フォーク19を上昇停止高H12まで上昇させた場合に、第2距離計33が載置面B1よりも上方に位置するように上昇停止高H12は設定されている。なお、上昇停止高H12は、フォーク19の到達し得る最も高い高さなど、少なくとも最も上方に位置する距離計が載置面B1よりも上方に位置していればよく、任意に設定することができる。
【0037】
上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離は、上下方向に隣り合う距離計同士の高さの差分のうち最大の差分よりも大きな値に設定される。なお、上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離は、上昇開始高H11と上昇停止高H12との高さの差分といえる。本実施形態では、上下方向に隣り合う距離計32,33が2つであるため、上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離は、第1距離計32と第2距離計33との高さの差分よりも大きな値に設定されている。センサ群31L,31Rが、第1距離計32及び第2距離計33よりも高い位置に設けられた第3距離計を備えている場合、第1距離計32と第2距離計33との高さの差分、及び第2距離計33と第3距離計との差分のうち最大の差分よりも大きな値に上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離は設定される。
【0038】
制御装置43は、ステップS1で上昇開始高H11から上昇停止高H12までフォーク19を上昇させていく過程で、所定のサンプリング周期で各距離計32,33に測定される距離を取得している。
【0039】
図7に示すように、ステップS2において、制御装置43は、フォーク19を上昇させていく過程で、距離計32,33により測定される距離が閾値以上長くなった高さのうち最も高い高さである最高点を抽出する。トラックTに向けてレーザーを照射した状態でフォーク19を上昇させていき、荷台TBの載置面B1よりも下方にレーザーが照射される状態から、荷台TBの載置面B1よりも上方にレーザーが照射される状態になると、距離計32,33によって測定される距離が長くなる。荷台TBの載置面B1よりも下方では、側あおりSSや、側あおりSS以外の物体にレーザーが当たることで、レーザーが当たった箇所までの距離が測定される。一方で、荷台TBの載置面B1よりも上方ではレーザーが当たる物体が存在しない、あるいは、トラックTよりも遠方の物体にレーザーが当たる。これにより、フォーク19を上昇させていく過程で、載置面B1の高さHB1を境にして距離計32,33により測定される距離が長くなる。距離計32,33の高さが載置面B1の高さHB1より低い高さから載置面B1の高さHB1よりも高い高さに切り替わったときの距離の変化を検出できるように閾値を設定することで、基準位置H0から載置面B1までの高さHB1を検出することができる。閾値としては、例えば、トラックTの形状などを考慮した上で、トラックTの形状による距離計32,33の測定値の変動よりも大きな値になるように設定される。即ち、トラックTの形状による測定値の変動では距離計32,33により測定される距離の変化量が閾値を超えず、距離計32,33の高さが高さHB1より低い状態から高さHB1より高い状態に切り替わったことを検出できるように閾値は設定されている。前述したように、荷台TBの載置面B1よりも上方ではレーザーが当たる物体が存在しない場合がある。この場合、距離計32,33により測定される距離は無限遠となる。無限遠は、距離計32,33の測定可能距離内にレーザーを反射する物体が存在しないことを意味するため、距離計32,33により測定される距離が無限遠ではない状態=距離が測定される状態から、無限遠=距離が測定されない状態になると、距離が閾値以上長くなったと扱うことができる。
【0040】
センサ群31L,31Rは、2つの距離計32,33を備えるため、第1距離計32が通過する範囲と第2距離計33が通過する範囲は異なる。第1距離計32は、上昇開始高H11+第1取付高H1~上昇停止高H12+第1取付高H1の範囲を通過する。第2距離計33は、上昇開始高H11+第2取付高H2~上昇停止高H12+第2取付高H2の範囲を通過する。即ち、異なる高さに距離計32,33が設けられることで、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させたときに距離計32,33が通過する範囲を異ならせているといえる。
【0041】
制御装置43は、第1距離計32により測定された距離、及び第2距離計33により測定された距離毎に、距離が閾値以上長くなった高さを抽出する。制御装置43は、フォーク19を上昇させる過程で、所定のサンプリング周期で各距離計32,33の距離が得られる度に、前回値との比較を行う。制御装置43は、第1距離計32の距離が閾値以上長くなると、第1距離計32の距離が閾値以上長くなった際の揚高+第1取付高H1を距離が閾値以上長くなった高さとして抽出する。制御装置43は、第2距離計33の距離が閾値以上長くなると、第2距離計33の距離が閾値以上長くなった際の揚高+第2取付高H2を距離が閾値以上長くなった高さとして抽出する。距離が閾値以上長くなった高さは、基準位置H0からの高さである。第1取付高H1及び第2取付高H2は、フォーク19の揚高と各距離計32,33の高さとの差分なので、第1取付高H1及び第2取付高H2を予め把握できていれば、揚高センサ47により検出される揚高から第1距離計32の基準位置H0からの高さ、及び第2距離計33の基準位置H0からの高さを導出できる。制御装置43は、基準位置H0から各距離計32,33までの高さを導出できるといえる。なお、第1取付高H1及び第2取付高H2は、記憶部45や補助記憶装置46など、制御装置43が読み取り可能な情報を記憶できる記憶媒体に記憶される。
【0042】
図9には、基準位置H0から第1距離計32までの高さと、第1距離計32に測定される距離との関係を示す。
図9に示すように、フォーク19が上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇すると、第1距離計32によって測定される距離は、基準位置H0からの高さに応じて変化する。第1距離計32の高さが荷台TBよりも低い高さH21までの間は、第1距離計32により測定される距離は無限遠である。第1距離計32により測定される距離は、高さH21を境にして無限遠よりも短くなる。これは、高さH21まではトラックTの下方に存在する空間にレーザーが照射されており、高さH21を境にして側あおりSSなどの物体にレーザーが照射されるようになるためである。第1距離計32により測定される距離は、第1距離計32の高さが載置面B1の高さHB1より高くなると、無限遠になる。
図9から把握できるように、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させ、第1距離計32により測定された距離をプロットすると、レーザーが照射された物体の形状に倣った結果が得られる。第1距離計32の測定結果は、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させたときに第1距離計32が通過する範囲のトラックTの形状を走査したものと捉えることができる。
【0043】
図10には、基準位置H0から第2距離計33までの高さと、第2距離計33に測定される距離との関係を示す。
図10に示すように、第2距離計33によって測定される距離は、フォーク19が上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇する過程で無限遠に維持される。これは、フォーク19が上昇開始高H11に位置している状態で、第2距離計33が載置面B1よりも上方に位置しているためである。第2距離計33の測定結果は、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させたときに第2距離計33が通過する範囲のトラックTの形状を走査したものと捉えることができる。
【0044】
図11には、基準位置H0から各距離計32,33までの高さと、各距離計32,33により測定される距離との関係を示す。即ち、
図11は、
図9に示した第1距離計32により測定される距離と、
図10に示した第2距離計33により測定される距離とをマージしたものといえる。上昇開始高H11から上昇停止高H12までフォーク19を上昇させることで、上昇開始高H11+第1取付高H1~上昇停止高H12+第2取付高H2の範囲を、両距離計32,33を用いて走査することができるといえる。
図11から把握できるように、本実施形態において、距離計32,33によって測定される距離が閾値以上長くなる高さは載置面B1の存在する高さHB1のみであり、高さHB1が最高点といえる。基準位置H0から最高点までの高さは、載置面B1の高さHB1とみなすことができる。本実施形態で記載したトラックTでは、距離が閾値以上長くなる高さが1つのみであったが、トラックTの形状によっては、距離が閾値以上長くなる高さは複数存在する。この場合、距離が閾値以上長くなる高さ同士を比較し、基準位置H0から最も高い高さを最高点として抽出する。
【0045】
図7に示すように、ステップS3において、制御装置43は、基準位置H0から載置面B1までの高さHB1を導出する。本実施形態では、センサ群31L,31Rを2つ設けているため、制御装置43は、2つのセンサ群31L,31R毎に、個別に最高点を抽出することが可能である。2つのセンサ群31L,31R毎に、個別に最高点を抽出する場合、荷台TBの位置によって載置面B1の高さHB1が異なることを原因として、2つのセンサ群31L,31Rで、最高点の高さが異なる場合がある。これは、センサ群31L,31Rの取付態様、パレットPの配置位置、第2位置A2の傾斜など、種々の要素を原因とするものである。第1センサ群31Lと第2センサ群31Rの取付精度によっては、第1センサ群31Lと第2センサ群31Rとで第1距離計32の高さや、第2距離計33の高さが異なる場合がある。また、第1センサ群31Lと第2センサ群31Rとで第1距離計32の取付角度や、第2距離計33の取付角度が異なる場合がある。これらを原因として、2つのセンサ群31L,31R毎に抽出される最高点の高さが異なる場合がある。パレットPの配置位置によっては、トラックTの一部に偏って荷重が加わることで荷台TBが傾き、この傾きを原因として2つのセンサ群31L,31R毎に抽出される最高点の高さが異なる場合がある。第2位置A2が斜面の場合、第2位置A2の傾斜によって荷台TBも傾き、この傾きを原因として2つのセンサ群31L,31R毎に抽出される最高点の高さが異なる場合がある。
【0046】
制御装置43は、2つのセンサ群31L,31R毎に個別に最高点を抽出する場合、2つのセンサ群31L,31Rによって抽出された最高点のうち、基準位置H0からの高さが高い方を採用してもよい。そして、採用された最高点の基準位置H0からの高さを載置面B1の高さHB1とする。また、制御装置43は、2つのセンサ群31L,31Rによって抽出された最高点の高さの平均値を載置面B1の高さHB1として採用してもよい。即ち、制御装置43は、基準位置H0から最高点までの高さに基づいて、基準位置H0から最高点までの高さのうちの代表値を載置面B1の高さHB1としてもよいし、基準位置H0から最高点までの高さの平均値を載置面B1の高さHB1としてもよい。
【0047】
上記したように、ステップS1~ステップS3の処理を行うことで、制御装置43は基準位置H0から載置面B1までの高さHB1を検出する。制御装置43は、ステップS1~ステップS3の処理を行うことで、検出部として機能している。また、制御装置43は、ステップS2で基準位置H0から各距離計32,33までの高さを導出し、最高点を抽出している。制御装置43は、ステップS2の処理を行うことで、導出部及び抽出部として機能している。制御装置43は、ステップS3の処理を行うことで、基準位置H0から載置面B1までの高さHB1を導出する高さ導出部として機能している。検出部は、制御装置43がステップS1~ステップS3の処理を行うことで機能する機能要素と捉えることができる。
【0048】
載置面B1の高さHB1が導出されると、制御装置43は、油圧機構42を制御することで、フォーク19の揚高を調整する。制御装置43は、フォーク19の揚高を載置面B1の高さHB1よりも規定量高い位置にする。規定量としては、フォーク19及びフォーク19に積載されたパレットPの両方が載置面B1よりも高い位置になるように設定されている。これにより、荷台TBに既に積まれた2つのパレットP同士の間の空間と、フォーク19に積まれたパレットPとが向かい合う。
【0049】
制御装置43は、フォーク19の揚高を調整した後には、フォークリフト10を前進させたときに、荷台TBに積まれている2つのパレットPと、フォーク19に積まれたパレットPとの間に、所定の大きさの隙間が存在するか否かを判定する。所定の大きさの隙間とは、フォークリフト10の車幅方向に対する隙間であって、フォーク19に積まれたパレットPを荷台TBに積んだ際にパレットP同士が接触しないように設定された隙間である。図示は省略しているが、本実施形態のフォークリフト10は、バックレスト18をフォークリフト10の車幅方向に移動させることができるサイドシフト装置を備える。制御装置43は、バックレスト18をフォークリフト10の車幅方向の両側に移動させる。バックレスト18がフォークリフト10の車幅方向に移動することで、2つのセンサ群31L,31Rがフォークリフト10の車幅方向に移動する。センサ群31L,31Rがフォークリフト10の車幅方向に移動した際に距離計32,33から照射されたレーザーが荷台TBに積まれたパレットPに当たると、距離計32,33によって測定される距離が短くなる。これを利用することで、制御装置43は、パレットP同士の間に所定の隙間が確保されるかを認識可能である。例えば、制御装置43は、バックレスト18をフォークリフト10の車幅方向に所定量移動させても、距離計32,33によって測定される距離が短くならない場合、パレットP同士の間に所定の大きさの隙間が確保されていると認識する。
【0050】
本実施形態の作用について説明する。
制御装置43は、パレットPを載置面B1に積む際にフォーク19を上昇させる。上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離は、第1距離計32と第2距離計33との高さの差分よりも大きな値に設定される。上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離をこのように設定することで、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させたときに、2つの距離計32,33が通過する範囲の一部が重なり合う。仮に、上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離を第1距離計32と第2距離計33との高さの差分よりも小さくしたとすると、フォーク19を上昇開始高H11から上昇停止高H12まで上昇させたときに、第1距離計32が通過する範囲と第2距離計33が通過する範囲の間に、第1距離計32も第2距離計33も通過しない範囲が生じる。第1距離計32も第2距離計33も通過しない範囲については、トラックTに向けた距離の測定が行われないため、この範囲については走査が行われないことになる。上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離を、第1距離計32と第2距離計33との高さの差分よりも大きな値とすることで、走査が行われない範囲が生じることを抑制できる。
【0051】
距離計32,33は、フォーク19とともに昇降可能であるため、距離計32,33もフォーク19とともに上昇する。フォーク19が上昇する過程で、距離計32,33が載置面B1よりも下方の位置までの距離を測定している状態から、距離計32,33が載置面B1よりも上方の位置までの距離を測定している状態に切り替わると、距離計32,33によって測定される距離が長くなる。距離計32,33により測定される距離が閾値以上長くなる高さのうち基準位置H0から最も高い最高点を抽出することで、載置面B1の高さHB1を検出できる。
【0052】
なお、距離計として、2次元のレーザー距離計を用いることも考えられる。2次元のレーザー距離計は、照射角度を変更しながらレーザーを照射する。この場合、レーザー距離計は、鉛直方向への照射角度を変更しながらレーザーを照射するように配置される。2次元のレーザー距離計を用いて載置面B1の高さHB1を検出する場合、レーザー距離計を用いて荷台TBの載置面B1と、この載置面B1と上下方向に向かい合う天板の下面と、を検出する。そして、載置面B1と天板の下面との間の寸法から、載置面B1の高さHB1を検出する。このように、2次元のレーザー距離計を用いて載置面B1の高さHB1を検出する場合、載置面B1と天板の下面との間の寸法を利用して載置面B1の高さHB1を検出する必要がある。従って、コンテナのように天板を備えるものにパレットPを積む際には載置面B1の高さHB1を検出できるものの、本実施形態のように天板を備えないトラックTの荷台TBにパレットPを積む場合には、載置面B1の高さHB1を検出することができない。また、天板の下面を検出するためにフォーク19の上昇量が多くなる場合があり、作業効率の低下を招くおそれがある。
【0053】
これに対し、本実施形態のフォークリフト10では、フォーク19を上昇させたときに距離計32,33によって測定される距離の変化から載置面B1の高さHB1を検出している。天板を利用して載置面B1の高さHB1を検出していないため、天板を備えていない荷台TBであっても載置面B1の高さHB1を検出することができる。
【0054】
また、本実施形態のフォークリフト10では、天板の下面を検出する必要がないため、天板の下面を検出するためにフォーク19の上昇量が多くなることはない。一方で、1次元の距離計32,33を用いる場合、距離計32,33を上昇させることで走査を行う必要があり、これを原因としてフォーク19の上昇量が多くなることが考えられる。そこで、本実施形態では、異なる高さに複数の距離計32,33を設けることで、上昇開始高H11から上昇停止高H12までフォーク19を上昇させたときに、単数の距離計を用いる場合に比べて上下方向に対して広い範囲を走査できるようにしている。仮に、フォークリフト10が第1距離計32のみを備えている場合、上昇開始高H11+第1取付高H1から上昇停止高H12+第1取付高H1までの範囲が走査される。これに対し、第1距離計32及び第2距離計33を設けることで、上昇開始高H11+第1取付高H1から上昇停止高H12+第2取付高H2の範囲が走査される。即ち、フォーク19の上昇量が同一であったとすると、第1距離計32と第2距離計33の高さの差分だけ走査される範囲が広くなる。従って、単一の距離計を用いる場合に比べて、載置面B1を検出するために必要となるフォーク19の上昇量を減らすことができる。
【0055】
本実施形態の効果について説明する。
(1)制御装置43は、第1距離計32の基準位置H0からの高さと、第2距離計33の基準位置H0からの高さを導出可能である。このため、複数の距離計32,33を用いて、基準位置H0から最も高い最高点を抽出することができる。最高点は、距離計32,33の基準位置H0からの高さが載置面B1よりも下方から載置面B1よりも上方に切り替わった高さと捉えることができる。従って、制御装置43は、最高点から載置面B1の高さHB1を導出することができる。高さの異なる位置に設けられた複数の距離計32,33を用いて載置面B1の高さHB1を検出できるため、単一の距離計を用いて載置面B1の高さHB1を検出する場合に比べて、載置面B1の高さHB1を検出するために必要となるフォーク19の上昇量を少なくすることができる。
【0056】
(2)レーザー距離計は、光源から照射されたレーザーが透過するウィンドウを備える。光源から照射されたレーザーはウィンドウを透過して照射される。1次元のレーザー距離計は、一方向にのみレーザーを照射するため、ウィンドウは一方向にのみレーザーを照射できるように設けられる。一方で、2次元のレーザー距離計は、レーザーの照射範囲を変更するため、照射範囲に合わせてウィンドウの範囲が大きくなっている。仮に、2次元のレーザー距離計を用いて載置面B1の高さHB1を検出しようとすると、ウィンドウの範囲が鉛直方向に広がるように2次元のレーザー距離計は配置される。ウィンドウに水などが付着すると、レーザーによる距離の測定を行うことができなくなる。2次元のレーザー距離計では、ウィンドウの範囲が広いため、雨天の際にはウィンドウに水が付着しやすく、載置面B1の高さHB1を検出できなくなるおそれがある。これに対し、本実施形態のように、1次元のレーザー距離計を用いることで、雨天の場合であってもウィンドウに水が付着しにくく、載置面B1の高さHB1が検出できなくなることを抑制できる。
【0057】
(3)センサ群31L,31Rは、上下方向に並んで設けられた第1距離計32と第2距離計33と、を備える。前述したように、荷台TBの位置によって載置面B1の高さHB1が異なる場合がある。第1距離計32と第2距離計33とが上下方向に隣り合っていない場合、各センサ群31L,31Rで、第1距離計32により走査される位置と第2距離計33により走査される位置とがフォークリフト10の車幅方向にずれることになる。即ち、第1距離計32により走査される範囲に載置面B1が存在するか、第2距離計33により走査される範囲に載置面B1が存在するかによって、載置面B1の高さHB1に差異が生じるおそれがある。各センサ群31L,31Rで、第1距離計32と第2距離計33とを上下方向に並んで設けることで、第1距離計32により走査される範囲に載置面B1が存在しても、第2距離計33により走査される範囲に載置面B1が存在しても、検出される載置面B1の高さHB1に差が生じにくい。このため、載置面B1の高さHB1を適切に検出することができる。
【0058】
(4)一対のセンサ群31L,31Rは、フォークリフト10の車幅方向に間隔を空けて設けられている。このため、載置面B1の高さHB1がフォークリフト10の車幅方向に対する位置によって異なる場合であっても、これらの位置毎に載置面B1の高さHB1を検出することができる。
【0059】
(5)センサ群31L,31RはパレットPを載置面B1に積んだ際に、パレットP同士の間に所定の隙間が確保されることを検出するための部材として用いられている。センサ群31L,31Rは、パレットP同士の間の隙間を検出するための部材と、載置面B1の高さHB1を検出するための部材として兼用されているといえる。パレットP同士の間の隙間を検出するための部材と、載置面B1の高さHB1を検出するための部材とを別々に設ける場合に比べて、必要となる距離計32,33の数が少なくなり、製造コストの低減が図られる。
【0060】
(6)フォークリフト10の走行中には、フォークリフト10の安定性を確保できるようにフォーク19の揚高は低くされており、フォーク19の揚高が載置面B1の高さHB1よりも低い状態で走行が行われている。フォーク19に積載されたパレットPを載置面B1に積む際には、フォーク19を載置面B1の高さHB1よりも上方に上昇させる必要がある。載置面B1の高さHB1の検出は、パレットPを載置面B1に積むためにフォーク19を上昇させる過程で行われる。このため、載置面B1の高さHB1を検出することによる作業効率の低下が抑制されている。
【0061】
実施形態は、以下のように変更して実施することができる。実施形態及び以下の変形例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
○センサ群31L,31Rは、3つ以上の距離計を備えていてもよい。距離計の数が増えるほど、フォーク19を上昇させたときに距離計によって走査される上下方向の範囲は広くなる。
【0062】
○センサ群31L,31Rは、フォーク19とともに昇降するように設けられていればよく、インナマスト17やフォーク19に取り付けられていてもよい。
○距離計32,33は、パレットP同士の隙間を検出するための部材として兼用されなくてもよい。即ち、距離計32,33は、載置面B1の高さHB1を検出するための専用の部材であってもよい。
【0063】
○フォークリフト10は、第1センサ群31L及び第2センサ群31Rのうちいずれかを備えていればよい。
○第1距離計32と第2距離計33とは上下方向に並んでいなくてもよい。例えば、フォークリフト10は、実施形態における第1センサ群31Lの第1距離計32と、実施形態における第2センサ群31Rの第2距離計33とを備え、実施形態における第1センサ群31Lの第2距離計33と実施形態における第2センサ群31Rの第1距離計32とを備えていなくてもよい。制御装置43は、実施形態における第1センサ群31Lの第1距離計32と、実施形態における第2センサ群31Rの第2距離計33とを用いて、載置面B1の高さHB1を検出する。
【0064】
○基準位置H0は、路面以外であってもよい。基準位置H0は、上昇開始高H11にフォーク19が位置している際の第1距離計32の高さであってもよい。この場合、第1距離計32と第2距離計33との高さの差分を記憶部45や補助記憶装置46に記憶しておくことで、第2距離計33の基準位置H0からの高さを制御装置43に認識させることができる。また、基準位置H0からのフォーク19の上昇量が第1距離計32の基準位置H0からの高さとなる。なお、基準位置H0は、上昇開始高H11にフォーク19が位置している際の第1距離計32の高さに限られず、任意の位置を設定することができる。
【0065】
○距離計32,33としては、光電センサ、超音波センサなどを用いてもよい。
○フォークリフト10は、操作者による操作によって手動で動作するフォークリフトであってもよい。なお、操作者による操作によって手動で動作するフォークリフトには、フォークリフトに搭乗した操作者による操作によって動作するフォークリフトと、遠隔地にいる操作者による遠隔操作によって動作するフォークリフトとの両方が含まれる。制御装置43は、フォークリフト10の操作者が視認可能な位置に配置された表示部に、載置面B1の高さHB1や、フォーク19と載置面B1の高さHB1との差分など、操作者がフォーク19の高さを調整するために必要となる情報を表示する。フォークリフト10の操作者は、表示部を確認しながら、フォーク19の高さを調整する。フォークリフト10では、操作者の前方にパレットPが位置する関係上、操作者がフォークリフト10の前方を視認しにくく、載置面B1とフォーク19の高さとの関係を把握しにくい場合がある。操作者がフォーク19の高さを調整するために必要となる情報を表示部に表示することで、操作者がフォーク19の高さを調整しやすい。フォークリフト10が手動で動作するフォークリフト10の場合、ステップS1の処理は、手動で行われてもよいし、自動で行われてもよい。即ち、制御装置43は、ステップS2及びステップS3の処理を行えればよい。
【0066】
○フォークリフト10は、自動での動作と手動での動作を切り替え可能なフォークリフトであってもよい。
○導出部、抽出部、及び高さ導出部は別々の装置によって構成されていてもよい。
【0067】
○フォークリフト10は、荷役装置14を前進及び後進させることができるリーチシリンダを備えるリーチ式のフォークリフトであってもよい。
○荷としては、平パレットなどのメッシュパレット以外のパレットや、パレット以外の搬送物であってもよい。
【0068】
○上昇開始高H11から上昇停止高H12までの上下方向の距離を第1距離計32と第2距離計33との高さの差分以上としてもよい。この場合であっても、距離計が単数の場合に比べて、上昇開始高H11から上昇停止高H12までフォーク19を上昇させたときに広い範囲を走査することができる、
○荷台としては、トラックTの荷台TB以外であってもよい。例えば、荷台は、トラックTに搬送されるコンテナの底部や棚の棚板であってもよい。コンテナの底部が荷台になる場合、載置面は底部の上面となる。棚板が荷台となる場合、棚板の上面が載置面となる。
【符号の説明】
【0069】
H0…基準位置、B1…載置面、P…荷としてのパレット、10…フォークリフト、11…車体、19…フォーク、32,33…距離計、43…検出部、導出部、抽出部、及び高さ導出部として機能する制御装置、47…揚高センサ。