(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 25/07 20060101AFI20230613BHJP
H01L 25/18 20230101ALI20230613BHJP
H01L 23/40 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01L23/40 F
(21)【出願番号】P 2021504994
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009454
(87)【国際公開番号】W WO2020184383
(87)【国際公開日】2020-09-17
【審査請求日】2022-10-21
(31)【優先権主張番号】P 2019045172
(32)【優先日】2019-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】道越 久人
【審査官】河合 俊英
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-236035(JP,A)
【文献】特開2014-130894(JP,A)
【文献】特開2008-42074(JP,A)
【文献】特開2004-193476(JP,A)
【文献】特開2002-208673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 25/07
H01L 23/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、
前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、
を有し、
前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、
前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄い半導体装置。
【請求項2】
前記第3の電極板の第1の領域の厚さは、0.1mm以上であって、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップの厚さ以下である請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、
前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、
を有し、
前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、
前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されている請求項1または請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されている請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記第1の電極板、前記第2の電極板及び前記第3の電極板は、熱伝導率が10W/m・K以上であって、線膨張係数は17.0ppm/K以下であって、体積抵抗率1μΩ・m以下である請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記接合材は、銅または銀を含む請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記第3の電極板は、前記第1の領域から前記第2の領域に向かって徐々に厚さが厚くなっている請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項8】
前記第1の電極は、ゲート電極であり、
前記第2の電極は、ソース電極であり、
前記第3の電極は、ドレイン電極である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項9】
前記第1の電極は、ゲート電極であり、
前記第2の電極は、エミッタ電極であり、
前記第3の電極は、コレクタ電極である請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項10】
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップは、縦型トランジスタを含む請求項1から請求項9のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項11】
前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップは、炭化珪素半導体チップである請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の半導体装置。
【請求項12】
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、
前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、
前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、
前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、
を有し、
前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、
前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されており、
前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、
前記接合材は、銅または銀を含み、
前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されており、
前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄い半導体装置。
【請求項13】
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、
第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、
前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、
前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、
前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、
前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、
前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、
前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、
前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、
を有し、
前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、
前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されており、
前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、
前記接合材は、銅または銀を含み、
前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されており、
前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄く、
前記第3の電極板は、前記第1の領域から前記第2の領域に向かって徐々に厚さが厚くなっている半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体装置に関する。
【0002】
本出願は、2019年3月12日出願の日本出願第2019-045172号に基づく優先権を主張し、前記日本出願に記載された全ての記載内容を援用するものである。
【背景技術】
【0003】
MOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)等の半導体装置は、通常、半導体チップと電極端子とが接続されている状態でモールド樹脂等により固められている。半導体チップに用いられる半導体材料としては、シリコンが一般的であるが、耐圧を向上させるため、Si(シリコン)よりもバンドギャップの広いSiC(炭化珪素)等が用いられ、厚さ方向に電流の流れる縦型トランジスタがある。また、このような縦型トランジスタを複数有する半導体モジュールとなる半導体装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の半導体装置は、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、を有する。更に、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に設置されており、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、第1の半導体チップと第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、を有し、第3の電極板の第1の領域の一方の面が第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、第3の電極板は、第1の領域が第2の領域よりも薄い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】
図1は第1の半導体チップの第1面の平面図である。
【
図2】
図2は第1の半導体チップの第2面の平面図である。
【
図3】
図3は第2の半導体チップの第1面の平面図である。
【
図4】
図4は第2の半導体チップの第2面の平面図である。
【
図6】
図6は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の構造の断面図である。
【
図7】
図7は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の回路図である。
【
図8】
図8は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(1)である。
【
図9】
図9は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(2)である。
【
図10】
図10は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(3)である。
【
図11】
図11は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(4)である。
【
図12】
図12は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(5)である。
【
図13】
図13は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(6)である。
【
図14】
図14は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(7)である。
【
図15】
図15は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(8)である。
【
図16】
図16は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(9)である。
【
図17】
図17は本開示の第1の実施形態に係る半導体装置の変形例の説明図である。
【
図18】
図18は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(1)である。
【
図19】
図19は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(2)である。
【
図20】
図20は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(3)である。
【
図21】
図21は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(4)である。
【
図22】
図22は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(5)である。
【
図23】
図23は本開示の第2の実施形態に係る半導体装置の製造工程の説明図(6)である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[本開示が解決しようとする課題]
従来のSiCを用いた縦型トランジスタを複数有する半導体装置は、耐圧が高く、大電流を流すことができるが、半導体チップにおいて大電流が流れると発熱するため、効率のよい放熱が必要となる。
【0008】
このため、縦型トランジスタを複数有する半導体装置において、効率よく放熱することのできる半導体装置が求められている。
【0009】
[本開示の効果]
本開示によれば、縦型トランジスタを複数有する半導体装置において、効率よく放熱できる。
【0010】
実施するための形態について、以下に説明する。
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。以下の説明では、同一または対応する要素には同一の符号を付し、それらについて同じ説明は繰り返さない。
【0012】
〔1〕 本開示の一態様に係る半導体装置は、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、を有し、前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄い。
【0013】
これにより、第1の半導体チップにおいて発生した熱は、第1の電極に伝えられ、第2の半導体チップにおいて発生した熱は、厚さの薄い第1の領域、第1の半導体チップを介し、第1の電極に伝えられ、第1の電極において放熱される。従って、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップにおいて発生した熱を効率よく放熱することが可能となる。
【0014】
〔2〕 前記第3の電極板の第1の領域の厚さは、0.1mm以上であって、前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップの厚さ以下であってもよい。この場合、第1の半導体チップの第3の電極及び第2の半導体チップの第2の電極から出力される電流を第2の領域に向けて流しやすくしながら、第1の半導体チップ及び第2の半導体チップとの線膨張係数との差の影響を抑制できる。さらに、第2の半導体チップにおいて発生した熱を、より効率よく第1チップの半導体チップに放熱することができる。
【0015】
〔3〕 前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、を有し、前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されていてもよい。この場合、第1の導電層から第1の半導体チップの第1の電極に信号を付与でき、第2の導電層から第2の半導体チップの第1の電極に信号を付与できる。
【0016】
〔4〕 前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されていてもよい。この場合、放熱しやすくなる。
【0017】
〔5〕 前記第1の電極板、前記第2の電極板及び前記第3の電極板は、熱伝導率が10W/m・K以上であって、線膨張係数は17.0ppm/K以下であって、体積抵抗率1μΩ・m以下であってもよい。この場合、熱抵抗を低くしやすく、剥離を生じにくくしやすい。
【0018】
〔6〕 前記接合材は、銅または銀を含んでもよい。この場合、熱抵抗を更に低くしやすい。
【0019】
〔7〕 前記第3の電極板は、前記第1の領域から前記第2の領域に向かって徐々に厚さが厚くなっていてもよい。この場合、第1の領域と第2の領域との間で厚さを緩やかに変化させられる。
【0020】
〔8〕 前記第1の電極は、ゲート電極であり、前記第2の電極は、ソース電極であり、前記第3の電極は、ドレイン電極であってもよい。この場合、例えば電界効果トランジスタを構成できる。
【0021】
〔9〕 前記第1の電極は、ゲート電極であり、前記第2の電極は、エミッタ電極であり、前記第3の電極は、コレクタ電極であってもよい。この場合、例えば絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor:IGBT)を構成できる。
【0022】
〔10〕 前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップは、縦型トランジスタを含んでもよい。この場合、高耐圧を得ながら大電流を流しやすい。
【0023】
〔11〕 前記第1の半導体チップ及び前記第2の半導体チップは、炭化珪素半導体チップであってもよい。この場合、優れた耐圧を得やすく、大電流を流しやすい。
【0024】
〔12〕 本開示の他の一態様に係る半導体装置は、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、を有し、前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されており、前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、前記接合材は、銅または銀を含み、前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されており、前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄い。
【0025】
〔13〕 本開示の更に他の一態様に係る半導体装置は、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第1の半導体チップと、第1面に第1の電極及び第2の電極を有し、前記第1面とは反対の第2面に第3の電極を有する第2の半導体チップと、前記第1の半導体チップの第2の電極と接合材により接合された第1の電極板と、前記第2の半導体チップの第3の電極と接合材により接合された第2の電極板と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に設置されており、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれた第1の領域と、前記第1の半導体チップと前記第2の半導体チップとの間に挟まれていない第2の領域とを有する第3の電極板と、前記第1の電極板の一方の面の一部に設けられた第1の絶縁膜と、前記第1の絶縁膜の上に設けられた第1の導電層と、前記第3の電極板の一方の面の一部に設けられた第2の絶縁膜と、前記第2の絶縁膜の上に設けられた第2の導電層と、を有し、前記第1の半導体チップの第1の電極と前記第1の導電層とは接合材により接合されており、前記第2の半導体チップの第1の電極と前記第2の導電層とは接合材により接合されており、前記第3の電極板の前記第1の領域の一方の面が前記第2の半導体チップの第2の電極と接合材により接合されており、他方の面が前記第1の半導体チップの第3の電極と接合材により接合されており、前記接合材は、銅または銀を含み、前記第1の電極板の他方の面には、ヒートシンクが接続されており、前記第3の電極板は、前記第1の領域が前記第2の領域よりも薄く、前記第3の電極板は、前記第1の領域から前記第2の領域に向かって徐々に厚さが厚くなっている。
【0026】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示の一実施形態(以下「本実施形態」と記す)について詳細に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。また、図面における長さや大きさ等は、説明のための便宜上、実際のものとは異なる場合がある。
【0027】
〔第1の実施形態〕
第1の実施形態における半導体装置には、第1の半導体チップと第2の半導体チップが用いられている。第1の半導体チップと第2の半導体チップは、同一の構造のものであり、SiC基板に縦型トランジスタが形成されている。
【0028】
具体的には、
図1に示されるように、第1の半導体チップ10の第1面10aには、ゲート電極11、ソース電極12、ケルビンソース電極14が形成されており、第1面10aとは反対の第2面10bには、ドレイン電極13が形成されている。同様に、
図3に示されるように、第2の半導体チップ20の第1面20aには、ゲート電極21、ソース電極22、ケルビンソース電極24が形成されており、第1面20aとは反対の第2面20bには、ドレイン電極23が形成されている。尚、本願においては、第1面と第2面は互いに反対側の面である。
【0029】
本願においては、ゲート電極11、21を第1の電極と記載し、ソース電極12、22を第2の電極と記載し、ドレイン電極13、23を第3の電極と記載する場合がある。
【0030】
次に、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20が用いられた縦型の半導体モジュールである半導体装置について、
図5に基づき説明する。尚、
図5における説明では、第1の半導体チップ10のケルビンソース電極14及び第2の半導体チップ20のケルビンソース電極24については省略する。
【0031】
図5に示される半導体装置は、第1の半導体チップ10の第1面10aのソース電極12とN電極板30とは接合材81により接合されている。また、第2の半導体チップ20の第2面20bのドレイン電極23とP電極板40とは接合材84により接合されている。第1の半導体チップ10の第2面10bと第2の半導体チップ20の第1面20aとの間には、O電極板50が設けられている。第1の半導体チップ10の第2面10bのドレイン電極13とO電極板50の一方の面50aとは、接合材82により接合されており、第2の半導体チップ20の第1面20aのソース電極22とO電極板50の他方の面50bとは、接合材83により接合されている。尚、本願においては、一方の面と他方の面は互いに反対側の面である。
【0032】
N電極板30及びP電極板40は入力端子であり、P電極板40には高電圧が印加される。O電極板50は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の駆動による出力の出力端子である。このような半導体装置において、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を駆動すると発熱することから、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の熱を放熱するため、ヒートシンク70が設けられている。
図5に示される半導体装置においては、P電極板40には高電圧が印加されるため、P電極板40とヒートシンク70との間における絶縁をとるために、絶縁シート60が設けられている。
【0033】
尚、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20は、SiCにより形成された縦型トランジスタであり、N電極板30、P電極板40及びO電極板50は、銅等により形成されている。接合材81、82、83、84は、Sn-Cuハンダ等により形成されており、ヒートシンク70は、Al(アルミニウム)やCu(銅)等により形成されている。絶縁シート60は、ポリイミド等の絶縁性を有する有機材料により形成されている。
【0034】
一般的に、金属は熱伝導率が高く熱を伝えやすいが、P電極板40とヒートシンク70との間に設けられた絶縁シート60は絶縁体であるため、極めて熱伝導率が低い。このため、第1の半導体チップ10や第2の半導体チップ20において発生し、P電極板40に伝導した熱は、絶縁シート60により妨げられ、ヒートシンク70に効率よく伝えることができない。即ち、第1の半導体チップ10や第2の半導体チップ20において発生した熱は、P電極板40に伝導するが、P電極板40とヒートシンク70との間の熱抵抗が高いため、絶縁シート60により熱伝導が妨げられる。このため、第1の半導体チップ10や第2の半導体チップ20が高温となってしまう。
【0035】
(半導体装置)
次に、第1の実施形態における半導体装置について、
図6に基づき説明する。
図6に示される半導体装置は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を用いて形成される縦型の半導体モジュールである。
図7は、本実施形態における半導体装置の回路図を示すが、便宜上、
図6における説明では、第1の半導体チップ10のケルビンソース電極14及び第2の半導体チップ20のケルビンソース電極24については省略する。
【0036】
図7に示されるように、本実施形態における半導体装置は、第1の半導体チップ10のソース電極12がN電極板130に接続されており、第2の半導体チップ20のドレイン電極23がP電極板140に接続されている。第1の半導体チップ10のドレイン電極13及び第2の半導体チップ20のソース電極22はともに、O電極板150に接続されている。本願においては、N電極板130を第1の電極板と記載し、P電極板140を第2の電極板と記載し、O電極板150を第3の電極板と記載する場合がある。
【0037】
本実施形態における半導体装置は、
図6に示されるように、N電極板130の一方の面130aには、一部に第1の絶縁膜131が形成されており、第1の絶縁膜131の上には、第1の導電層132が形成されている。また、O電極板150は、N電極板130とP電極板140との間に挟まれる第1の領域151と、第1の領域151も厚い第2の領域152とを有しており、第1の領域151と第2の領域152との間は、厚さが徐々に変化する第3の領域153となっている。従って、O電極板150は、N電極板130とP電極板140との間に挟まれていない第2の領域152よりも、N電極板130とP電極板140との間に挟まれる第1の領域151が薄く形成されている。O電極板150は第2の領域152の側において、不図示の外部接続端子と接続される。O電極板150の一方の面150aの第1の領域151、第3の領域153、第2の領域152の一部には、第2の絶縁膜154が形成されており、第2の絶縁膜154の上には、第2の導電層155が形成されている。
【0038】
O電極板150の第3の領域153では、第1の領域151の側から第2の領域152の側に向かって、徐々に厚さが厚くなっており、これに対応してN電極板130の側面130c及びP電極板140の側面140cは、傾斜した形状で形成されている。尚、O電極板150の第1の領域151は、第1の半導体チップ10と第2の半導体チップ20との間に挟まれている。
【0039】
また、第1の半導体チップ10の第1面10aのゲート電極11と、N電極板130の一方の面130aに形成された第1の絶縁膜131の上の第1の導電層132とが接合材181により接合されている。第1の半導体チップ10の第1面10aのソース電極12と、N電極板130の一方の面130aとが接合材182により接合されている。第2の半導体チップ20の第2面20bのドレイン電極23と、P電極板140の一方の面140aとが接合材186により接合されている。
【0040】
また、第1の半導体チップ10の第2面10bのドレイン電極13と、O電極板150の第1の領域151の他方の面150bとが接合材183により接合されている。第2の半導体チップ20の第1面20aのゲート電極21と、O電極板150の第1の領域151の一方の面150aに形成された第2の絶縁膜154の上の第2の導電層155とが接合材184により接合されている。第2の半導体チップ20の第1面20aのソース電極22と、O電極板150の第1の領域151の一方の面150aとが接合材185により接合されている。
【0041】
N電極板130及びP電極板140は入力端子であり、P電極板140には高電圧が印加される。O電極板150は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の駆動の出力の出力端子である。
【0042】
本実施形態においては、N電極板130の他方の面130bにヒートシンク170が接続されている。N電極板130は高電圧が印加されないため、N電極板130の他方の面130bにヒートシンク170を直接接続することができる。従って、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を駆動することにより発生した熱は、接合材182等を介しN電極板130に伝導し、更に、ヒートシンク170に伝導する。N電極板130とヒートシンク170との間には、熱伝導を妨げる絶縁体は設けられてはいないため、N電極板130に伝導した熱を効率よくヒートシンク170に伝えることができ、効率的に放熱がなされる。
【0043】
尚、本実施形態においては、
図6に示されるように、P電極板140の他方の面140bに絶縁シート160を介しヒートシンク171を設けてもよい。この場合、絶縁シート160により、P電極板140とヒートシンク171との間の熱伝導が妨げられるが、放熱に寄与するため、ヒートシンク171も設けた方が好ましい。
【0044】
本実施形態においては、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20は、SiCにより形成された縦型トランジスタである。また、接合材181~186は、Sn-Cuハンダ等により形成されているが、熱伝導率の高いCuを含む銅焼結接合材や、Ag(銀)を含む銀焼結接合材を用いることにより、より一層熱抵抗を低くすることができる。
【0045】
また、ヒートシンク170、171は、AlやCu等により形成されている。第1の絶縁膜131及び第2の絶縁膜154は、ポリイミド等の絶縁性を有する有機材料により形成されている。
【0046】
また、本実施形態においては、N電極板130、P電極板140及びO電極板150は、熱伝導率が10W/m・K以上であって、線膨張係数は17.0ppm/K以下であって、体積抵抗率1μΩ・m以下であることが好ましい。熱伝導率は150W/m・K以上であることがより好ましい。線膨張係数は7.5ppm/K以下であることがより好ましい。第1の半導体チップ10や第2の半導体チップ20とヒートシンク170、171との間等の熱抵抗を低くするためには、N電極板130、P電極板140及びO電極板150の熱伝導率が高い方が好ましい。また、N電極板130、P電極板140及びO電極板150の線膨張係数と第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を形成しているSiCの熱膨張係数4.0ppm/Kとの差が大きいと、剥離等が生じる場合がある。このため、N電極板130、P電極板140及びO電極板150の線膨張係数は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20を形成しているSiCの熱膨張係数4.0ppm/Kに近い値であることが好ましい。また、N電極板130、P電極板140及びO電極板150は、第1の半導体チップ10のソース電極12及びドレイン電極13、第2の半導体チップ20のソース電極22及びドレイン電極23と接続され、配線の一部となる。よって、N電極板130、P電極板140及びO電極板150は、低抵抗、即ち、体積抵抗率が低い値であることが好ましい。このため、本実施形態においては、例えば、N電極板130、P電極板140及びO電極板150は、銅、鉄ニッケル(Fe-Ni)合金、銅タングステン合金(Cu-W合金)、モリブデン、銅/鉄ニッケル合金/銅が厚み方向に積層された積層材等により形成されている。
【0047】
O電極板150の第1の領域151は薄い方が、第2の半導体チップ20において生じた熱を第1の半導体チップ10を介し、ヒートシンク170に伝えやすい。しかしながら、あまりに薄すぎると第1の半導体チップ10のドレイン電極13及び第2の半導体チップ20のソース電極22から出力される電流を第2の領域152に向けて十分に流すことができなくなる。また、O電極板150の第1の領域151が厚すぎると、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20との線膨張係数との差が顕著となることから、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の厚さ以下であることが好ましい。
【0048】
このため、O電極板150の第1の領域151の厚さは、0.1mm以上であって、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の厚さ以下であることが好ましい。従って、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20の厚さが0.35mmであるとすると、O電極板150の第1の領域151の厚さは、0.1mm以上、0.35mm以下であることが好ましい。また、O電極板150の第2の領域152は、第1の領域151よりも厚く形成されており、例えば、O電極板150の第2の領域152の厚さは、約1.5mmである。O電極板150の第2の領域152が第1の領域151より厚いため、O電極板150を取り扱いやすく、O電極板150を介した放熱も可能である。さらに、O電極板150から電流を引き出す際の電圧降下も抑制することができる。
【0049】
第1の半導体チップ10では、ドレイン電極13に印加される電圧と比べて、ソース電極12に印加される電圧は、ゲート電極11に印加される電圧との差が小さく、比較的近い電圧である。従って、N電極板130の一方の面130aに形成される第1の絶縁膜131の膜厚を薄くすることが可能であり、第1の絶縁膜131の膜厚は、10μm以上、40μm以下が好ましい。
【0050】
尚、第1の導電層132の膜厚は、5μm以上、20μm以下が好ましい。第1の絶縁膜131及び第1の導電層132は薄い方が、N電極板130の一方の面130aとの段差が小さくなり、第1の半導体チップ10の第1面10aと接合材181及び182による接合がしやすくなる。しかしながら、第1の絶縁膜131の膜厚が薄すぎると絶縁性が低下し、第1の導電層132が薄すぎると導電性が低下する。このため、第1の絶縁膜131及び第1の導電層132の膜厚は、上記範囲であることが好ましい。
【0051】
ところで、第1の半導体チップ10の第1面10aに形成されるゲート電極11の面積は、ソース電極12の面積と比べて狭い。これは、ソース電極12は電流を流すための電極であるため、面積が広い方が好ましいが、ゲート電極11は制御のための電極であるため、面積が狭くても特性上問題が生じることはないからである。
【0052】
従って、第1の半導体チップ10において生じた熱は、ソース電極12及び接合材182を介し、N電極板130に伝えられ、更に、N電極板130の他方の面130bに接続されているヒートシンク170に効率よく伝えられ、放熱される。
【0053】
同様に、第2の半導体チップ20では、ドレイン電極23に印加される電圧と比べて、ソース電極22に印加される電圧は、ゲート電極21に印加される電圧との差が小さく、比較的近い電圧である。従って、O電極板150の一方の面150aに形成される第2の絶縁膜154の膜厚を薄くすることが可能であり、膜厚は、10μm以上、40μm以下が好ましい。
【0054】
尚、第2の導電層155の膜厚は、5μm以上、20μm以下が好ましい。第2の絶縁膜154及び第2の導電層155は薄い方が、O電極板150の第1の領域151における一方の面150aとの段差が小さくなり、第2の半導体チップ20の第1面20aと接合材184及び185による接合がしやすくなる。しかしながら、第2の絶縁膜154の膜厚が薄すぎると絶縁性が低下し、第2の導電層155が薄すぎると導電性が低下する。このため、第2の絶縁膜154及び第2の導電層155の膜厚は、上記範囲であることが好ましい。
【0055】
ところで、第2の半導体チップ20の第1面20aに形成されるゲート電極21の面積は、ソース電極22の面積と比べて狭い。これは、ソース電極22は電流を流すための電極であるため、面積が広い方が好ましいが、ゲート電極21は制御のための電極であるため、面積が狭くても特性上問題が生じることはないからである。
【0056】
第2の半導体チップ20において生じた熱の一部は、第2の半導体チップ20の第1面20aより、ソース電極22、接合材185、O電極板150の第1の領域151、接合材183、第1の半導体チップ10、接合材182、N電極板130の順に伝導する。N電極板130に伝導した熱は、N電極板130の他方の面130bに接続されているヒートシンク170に伝導し、ヒートシンク170により放熱がなされる。
【0057】
また、第2の半導体チップ20において生じた熱の他の一部は、第2の半導体チップ20の第2面20bに設けられたドレイン電極23及び接合材186を介し、P電極板140に伝導する。P電極板140に伝導した熱は、P電極板140の他方の面140bより、絶縁シート160を介し、ヒートシンク171に伝導し、ヒートシンク171において放熱される。絶縁シート160は熱伝導率が低く、熱抵抗が高いため、P電極板140とヒートシンク171との間の熱の伝導は良好ではなく、ヒートシンク171による放熱はあまり効率的ではないが、ヒートシンク171は放熱に寄与するため設けた方が好ましい。
【0058】
(半導体装置の製造方法)
次に、本実施形態における半導体装置の製造方法について、
図8~
図14に基づき説明する。
【0059】
最初に、
図8に示されるように、N電極板130、第1のゲート電極端子111、第1のケルビンソース電極端子114、第2のゲート電極端子121、第2のケルビンソース電極端子124が形成されているリードフレームを用意する。リードフレームは、Cu等により形成されている金属板を打ち抜き加工することにより形成されている。よって、N電極板130、第1のゲート電極端子111、第1のケルビンソース電極端子114、第2のゲート電極端子121、第2のケルビンソース電極端子124は、不図示のリードフレームの枠と接続されている。リードフレームの枠は半導体装置の製造工程の最後で切り取られ、製造される半導体装置には枠が残ることはないため、本実施形態における説明では、便宜上、リードフレームの枠を省略して説明する。本実施の形態においては、N電極板130の一方の面130aの一部には第1の絶縁膜131が形成されており、第1の絶縁膜131の上には、第1の導電層132、133が形成されている。第1の絶縁膜131は、膜厚が約10μmのポリイミド等により形成されており、第1の導電層132、133は、膜厚が5μm~20μmのCu膜により形成されている。
【0060】
次に、
図9に示されるように、N電極板130の一方の面130aに第1の半導体チップ10の第1面10aを接合材181、182、187により接合する。具体的には、
図6に示されるように、N電極板130の一方の面130aに形成されている第1の導電層132と第1の半導体チップ10の第1面10aのゲート電極11とを接合材181により接合する。同時に、N電極板130の一方の面130aと第1の半導体チップ10の第1面10aのソース電極12とを接合材182により接合する。同様に、第1の導電層133と第1の半導体チップ10の第1面10aのケルビンソース電極14とを接合材187により接合する。この際、第1の絶縁膜131が露出している領域にソルダーレジストを塗布しておくと、ソルダーレジストは接合材となるハンダをはじくため、接合材181、182、187を容易に分離させることができる。尚、第1の絶縁膜131が接合材となるハンダをはじく材料である場合には、ソルダーレジストは塗布しなくともよい。
【0061】
次に、
図10に示されるように、第1の半導体チップ10の第2面10bのドレイン電極13に、O電極板150の第1の領域151の他方の面150bを
図6に示される接合材183により接合する。このように接合されたO電極板150の一方の面150aの第1の領域151の一部から第3の領域153、第2の領域152の一部には、第2の絶縁膜154が形成されており、第2の絶縁膜154の上には、第2の導電層155、156が形成されている。
【0062】
次に、
図11に示されるように、O電極板150の一方の面150aの第1の領域151に、第2の半導体チップ20の第1面20aを
図6に示される接合材184、185等により接合する。具体的には、O電極板150の一方の面150aの第1の領域151に形成されている第2の絶縁膜154の上の第2の導電層155と第2の半導体チップ20の第1面20aのゲート電極21とを接合材184により接合する。同時に、O電極板150の第1の領域151の一方の面150aと第2の半導体チップ20の第1面20aのソース電極22とを接合材185により接合する。同様に、O電極板150の一方の面150aの第2の絶縁膜154の上の第2の導電層156と第2の半導体チップ20の第1面20aのケルビンソース電極24とを接合材により接合する。
【0063】
次に、
図12に示されるように、ワイヤボンディングにより、第1のゲート電極端子111、第1のケルビンソース電極端子114、第2のゲート電極端子121、第2のケルビンソース電極端子124を接続する。具体的には、N電極板130の一方の面130aの第1の導電層132と第1のゲート電極端子111とをボンディングワイヤ191により接続する。第1の導電層132は、第1の半導体チップ10のゲート電極11と接続されているため、ボンディングワイヤ191による接続により、第1の半導体チップ10のゲート電極11と第1のゲート電極端子111とが電気的に接続される。
【0064】
また、N電極板130の一方の面130aの第1の導電層133と第1のケルビンソース電極端子114とをボンディングワイヤ192により接続する。第1の導電層133は、第1の半導体チップ10のケルビンソース電極14と接続されているため、ボンディングワイヤ192による接続により、第1の半導体チップ10のケルビンソース電極14と第1のケルビンソース電極端子114とが電気的に接続される。
【0065】
また、O電極板150の一方の面150aの第2の導電層155と第2のゲート電極端子121とをボンディングワイヤ193により接続する。第2の導電層155は、第2の半導体チップ20のゲート電極21と接続されているため、ボンディングワイヤ193による接続により、第2の半導体チップ20のゲート電極21と第2のゲート電極端子121とが電気的に接続される。
【0066】
また、O電極板150の一方の面150aの第2の導電層156と第2のケルビンソース電極端子124とをボンディングワイヤ194により接続する。第2の導電層156は、第2の半導体チップ20のケルビンソース電極24と接続されているため、ボンディングワイヤ194による接続により、第2の半導体チップ20のケルビンソース電極24と第2のケルビンソース電極端子124とが電気的に接続される。
【0067】
次に、
図13に示されるように、第2の半導体チップ20の第2面20bのドレイン電極23にP電極板140を
図6に示される接合材186により接合する。
【0068】
次に、
図14に示されるように、第1の半導体チップ10、第2の半導体チップ20、N電極板130、P電極板140、O電極板150の一部をトランスファモールド成形しモールド樹脂190により固める。これにより、第1の半導体チップ10、第2の半導体チップ20、N電極板130の一方の面130a、P電極板140の一方の面140a、O電極板150の第1の領域151、第3の領域153、第2の領域152の一部がモールド樹脂190により覆われる。尚、P電極板140の他方の面140bはモールド樹脂190に覆われることなく露出しており、
図15に示されるように、N電極板130の他方の面130bはモールド樹脂190に覆われることなく露出している。
図14は、P電極板140側の斜視図であり、
図15は、N電極板130側の斜視図である。
【0069】
次に、
図16に示されるように、N電極板130の他方の面130bに、ヒートシンク170を直接接続し、P電極板140の他方の面140bに、絶縁シート160を介し、ヒートシンク171を接続する。尚、図示はしないが、N電極板130に接続されるN極入力バスバー、P電極板140に接続されるP極入力バスバーを設けてもよい。
【0070】
以上の工程により、本実施形態における半導体装置を製造することができる。
【0071】
(変形例)
本実施形態における半導体装置は、
図17に示されるように、N電極板130にはN極入力端子部135が設けられていてもよく、P電極板140にはP極入力端子部145が設けられていてもよい。N極入力端子部135及びP極入力端子部145は、モールド樹脂190よりも外に出ている。N極入力端子部135はN電極板130と一体に形成されたものであってもよく、また、別々に形成されたものを接続したものであってもよい。同様に、P極入力端子部145はP電極板140と一体に形成されたものであってもよく、また、別々に形成されたものを接続したものであってもよい。
【0072】
〔第2の実施形態〕
次に、第2の実施形態における半導体装置について、本実施形態における半導体装置の製造方法に基づき説明する。本実施形態における半導体装置は、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20が複数設けられているものである。本実施形態における説明では、第1の半導体チップ10が2個、第2の半導体チップ20が2個設けられている場合について説明する。従って、断面構造は、
図6と同様である。
【0073】
最初に、
図18に示されるように、N電極板130の一方の面130aに、各々の第1の半導体チップ10の第1面10aを接合材181、182、187により接合する。尚、N電極板130の一方の面130aの一部には第1の絶縁膜131が形成されており、第1の絶縁膜131の上には、第1の導電層132、133が形成されている。具体的には、N電極板130の一方の面130aに形成されている第1の導電層132と各々の第1の半導体チップ10の第1面10aのゲート電極11とを接合材181により接合する。同時に、N電極板130の一方の面130aと各々の第1の半導体チップ10の第1面10aのソース電極12とを接合材182により接合する。更に、第1の導電層133と各々の第1の半導体チップ10の第1面10aのケルビンソース電極14とを接合材187により接合する。
【0074】
次に、
図19に示されるように、第1の半導体チップ10の第2面10bのドレイン電極13に、O電極板150の第1の領域151の他方の面150bを接合材183により接合する。このように接合されたO電極板150の一方の面150aの第1の領域151の一部から第3の領域153、第2の領域152の一部には、第2の絶縁膜154が形成されている。第2の絶縁膜154の上には、第2の導電層155、156が各々2つ形成されている。
【0075】
次に、
図20に示されるように、O電極板150の一方の面150aの第1の領域151に、各々の第2の半導体チップ20の第1面20aを接合材184、185等により接合する。具体的には、O電極板150の一方の面150aの第1の領域151に形成されている第2の絶縁膜154の上の第2の導電層155と各々の第2の半導体チップ20の第1面20aのゲート電極21とを接合材184により接合する。同時に、O電極板150の第1の領域151の一方の面150aと各々の第2の半導体チップ20の第1面20aのソース電極22とを接合材185により接合する。同様に、第2の導電層156と各々の第2の半導体チップ20の第1面20aのケルビンソース電極24とを接合材により接合する。
【0076】
次に、
図21に示されるように、ワイヤボンディングにより、第1のゲート電極端子111、第1のケルビンソース電極端子114、第2のゲート電極端子121、第2のケルビンソース電極端子124を接続する。
【0077】
具体的には、N電極板130の一方の面130aの2つの第1の導電層132の各々と第1のゲート電極端子111とをボンディングワイヤ191により接続する。N電極板130の一方の面130aの第1の導電層133の各々と第1のケルビンソース電極端子114とをボンディングワイヤ192により接続する。O電極板150の一方の面150aの第2の導電層155の各々と第2のゲート電極端子121とをボンディングワイヤ193により接続する。O電極板150の一方の面150aの第2の導電層156の各々と第2のケルビンソース電極端子124とをボンディングワイヤ194により接続する。
【0078】
次に、
図22に示されるように、各々の第2の半導体チップ20の第2面20bのドレイン電極23とP電極板140とを接合材により接合する。
【0079】
次に、
図23に示されるように、2つの第1の半導体チップ10、2つの第2の半導体チップ20、N電極板130、P電極板140、O電極板150の一部をトランスファモールド成形しモールド樹脂190により固める。これにより、第1の半導体チップ10、第2の半導体チップ20、N電極板130の一方の面130a、P電極板140の一方の面140a、O電極板150の第1の領域151、第3の領域153、第2の領域152の一部がモールド樹脂190により覆われる。
【0080】
尚、P電極板140の他方の面140bはモールド樹脂190に覆われることなく露出しており、N電極板130の他方の面130bはモールド樹脂190に覆われることなく露出している。
【0081】
以上の工程により、本実施形態における半導体装置を製造することができる。
【0082】
尚、上記以外の内容については、第1の実施形態と同様である。
【0083】
また、上記のおける説明では、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20をMOSFETとして説明したが、第1の半導体チップ10及び第2の半導体チップ20は、SiCにより形成された他の形式のトランジスタであってもよい。例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)の場合、ゲート電極11に相当する第1の電極がゲート電極となり、ソース電極12に相当する第2の電極がエミッタ電極となり、ドレイン電極13に相当する第3の電極がコレクタ電極となる。
【0084】
以上、実施形態について詳述したが、特定の実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された範囲内において、種々の変形及び変更が可能である。
【符号の説明】
【0085】
10 第1の半導体チップ
10a 第1面
10b 第2面
11 ゲート電極(第1の電極)
12 ソース電極(第2の電極)
13 ドレイン電極(第3の電極)
14 ケルビンソース電極
20 第2の半導体チップ
20a 第1面
20b 第2面
21 ゲート電極(第1の電極)
22 ソース電極(第2の電極)
23 ドレイン電極(第3の電極)
24 ケルビンソース電極
30 N電極板
40 P電極板
50 O電極板
50a 一方の面
50b 他方の面
60 絶縁シート
70 ヒートシンク
81、82、83、84 接合材
111 第1のゲート電極端子
114 第1のケルビンソース電極端子
121 第2のゲート電極端子
124 第2のケルビンソース電極端子
130 N電極板
130a 一方の面
130b 他方の面
130c 側面
131 第1の絶縁膜
132 第1の導電層
133 第1の導電層
135 N極入力端子部
140 P電極板
140a 一方の面
140b 他方の面
140c 側面
145 P極入力端子部
150 O電極板
150a 一方の面
150b 他方の面
151 第1の領域
152 第2の領域
153 第3の領域
154 第2の絶縁膜
155 第2の導電層
156 第2の導電層
160 絶縁シート
170 ヒートシンク
171 ヒートシンク
181~187 接合材
190 モールド樹脂
191~194 ボンディングワイヤ