(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】変速制御方法及び変速制御システム
(51)【国際特許分類】
F16H 61/02 20060101AFI20230613BHJP
F16H 59/18 20060101ALI20230613BHJP
F16H 59/40 20060101ALI20230613BHJP
F16H 59/42 20060101ALI20230613BHJP
F16H 59/66 20060101ALI20230613BHJP
F16H 63/50 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F16H61/02
F16H59/18
F16H59/40
F16H59/42
F16H59/66
F16H63/50
(21)【出願番号】P 2021520535
(86)(22)【出願日】2019-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2019019931
(87)【国際公開番号】W WO2020234973
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2021-11-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】下山 広樹
(72)【発明者】
【氏名】上野 宗利
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健文
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/124220(WO,A1)
【文献】特開2005-282741(JP,A)
【文献】特開2011-133069(JP,A)
【文献】特開2008-075718(JP,A)
【文献】特開2009-092176(JP,A)
【文献】特開2001-021025(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 61/02-61/04
F16H 59/18-59/20
F16H 59/40-59/42
F16H 59/66
F16H 63/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動変速機を搭載した車両において、変速時に前記自動変速機の入力軸回転数を所定の目標入力軸回転数に制御する変速制御方法であって、
変速中の前記入力軸回転数の基本的な目標値である基本目標同期回転数を設定し、
変速がダウンシフトであって前記車両のアクセル開度が0より大きく前記車両に対する駆動力要求がある場合に、前記車両の加速意図の有無を判定し、
前記アクセル開度が所定の加速意図判定基準領域を超えて前記加速意図が有ると判定した場合には、前記基本目標同期回転数を増加補正した第1目標入力軸回転数を前記目標入力軸回転数として設定し、
前記アクセル開度が
前記加速意図判定基準領域以下で前記加速意図が無いと判定した場合には、前記基本目標同期回転数を維持するか又は減少補正した第2目標入力軸回転数を前記目標入力軸回転数として設定する、
変速制御方法。
【請求項2】
請求項1に記載の変速制御方法であって、
前記基本目標同期回転数を、変速中の前記自動変速機の実出力軸回転数に対してフィルタ処理を施して変速後の目標変速比を乗じることで算出する、
変速制御方法。
【請求項3】
請求項2に記載の変速制御方法であって、
前記加速意図判定基準領域を前記車両の走行抵抗に基づいて定める、
変速制御方法。
【請求項4】
請求項
2に記載の変速制御方法であって、
前記加速意図判定基準領域を、実用上使用される範囲として規定された路面勾配
に基づいて定める、
変速制御方法。
【請求項5】
請求項1~4の何れか1項に記載の変速制御方法であって、
前記入力軸回転数を、前記車両に駆動源として搭載された電動モータにより制御する、
変速制御方法。
【請求項6】
自動変速機と、変速時に前記自動変速機の入力軸回転数を所定の目標入力軸回転数に制御する変速制御装置と、を備える車両用の変速制御システムであって、
前記変速制御装置は、
変速中の前記入力軸回転数の基本的な目標値である基本目標同期回転数を算出する基本目標同期回転数設定部と、
変速がダウンシフトであって車両のアクセル開度が0より大きく前記車両に対する駆動力要求がある場合に、前記車両の加速意図の有無を判定する加速意図判定部と、
前記アクセル開度が所定の加速意図判定基準領域を超えて前記加速意図があると判定された場合には、前記基本目標同期回転数を増加側に補正して前記目標入力軸回転数を設定する回転数増加補正部と、
前記アクセル開度が
前記加速意図判定基準領域以下で前記加速意図が無いと判定された場合には、前記基本目標同期回転数を維持又は減少側に補正して前記目標入力軸回転数を設定する回転数減少補正部と、を備える、
変速制御システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変速制御方法及び変速制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
JP2008-32185Aに記載の従来の変速制御方法において、変速が、アクセルペダルが操作されている状態で行われるダウンシフト(アクセル踏み込みダウンシフト)であるか否かを判定する。そして、アクセル踏み込みダウンシフトであると判定された場合には、変速中に車両が加速することを想定して、変速中における入力軸回転数の基本的な目標値である基本目標同期回転数を増加補正して目標入力軸回転数を設定する。
【発明の概要】
【0003】
しかしながら、変速中の走行状況によっては、アクセルペダルが操作されていて車両に駆動力が作用しても車速が減少する場合がある。このような場合に、上述した目標入力軸回転数の増加補正を行うと、入力軸回転数が最終的な目標出力軸回転数を超え、クラッチ締結時に変速ショックが生じる恐れがあった。
【0004】
このような事情に鑑み、本発明の目的は、アクセル踏み込みダウンシフト時における変速ショックを抑制し得る変速制御方法及び変速制御システムを提供することにある。
【0005】
本発明のある態様によれば、自動変速機を搭載した車両において、変速中に自動変速機の入力軸回転数を所定の目標入力軸回転数に制御する変速制御方法が提供される。この変速制御方法では、変速中の実出力軸回転数及び変速後の目標変速比に基づいて基本目標同期回転数を算出し、変速がダウンシフトであって車両に対する駆動力要求がある場合に、車両の加速意図の有無を判定する。
【0006】
そして、加速意図が有ると判定した場合には、基本目標同期回転数を増加補正した第1目標入力軸回転数を目標入力軸回転数として設定し、加速意図が無いと判定した場合には、基本目標同期回転数を維持するか又は減少補正した第2目標入力軸回転数を目標入力軸回転数として設定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態による変速制御方法が適用される車両のパワートレーン構成を説明する図である。
【
図2】
図2は、車両の制御系を説明するブロック図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の変速制御を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、加速意図判定基準領域の設定方法の一例を説明する図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の変速制御によるアクセル踏み込みダウンシフト中の目標入力軸回転数の経時変化を示すタイムチャートである。
【
図6】
図6は、他の実施形態の変速制御によるアクセル踏み込みダウンシフト中の目標入力軸回転数の経時変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。
【0009】
図1は、本実施形態による変速制御方法が適用される車両100におけるパワートレーン構成を説明する図である。
【0010】
図示のように、本実施形態の車両100は、内燃エンジン1と、モータジェネレータ2と、自動変速機3と、トランスファ19と、を備えている。なお、本実施形態では、自動変速機3、及び変速制御装置として機能する後述する統合コントローラ21により変速制御システムSが構成される。
【0011】
本実施形態の車両100では、前進方向における前方(以下、単に「車両前方」と称する)から順に内燃エンジン1、モータジェネレータ2、及び自動変速機3が配置されている。そして、内燃エンジン1、モータジェネレータ2、及び自動変速機3は、入力軸ax_inを介して相互に結合されている。すなわち、本実施形態の車両100は、内燃エンジン1及びモータジェネレータ2を走行駆動源として備えるハイブリッド車両として構成されている。
【0012】
入力軸ax_inの内燃エンジン1とモータジェネレータ2の間の位置には、第1クラッチ4が設けられている。したがって、この第1クラッチ4の締結及び開放により内燃エンジン1とモータジェネレータ2の間の動力の伝達及び遮断の切替が可能である。
【0013】
第1クラッチ4は、第1ソレノイドバルブ16によりクラッチ作動油流量、及びクラッチ作動油圧を連続的、若しくは段階的に制御することで伝達トルク容量Tc1を変更可能な湿式多板クラッチで構成される。
【0014】
自動変速機3は、入力軸ax_inから出力軸ax_outの間において変速を自動で行うための装置である。具体的に、自動変速機3は、第2クラッチ5と、入力回転センサ12と、出力回転センサ13と、機械式オイルポンプ15と、を有している。
【0015】
第2クラッチ5は、第2ソレノイドバルブ17によりクラッチ作動油流量、及びクラッチ作動油圧を連続的、若しくは段階的に制御することで伝達トルク容量Tc2を変更可能な湿式多板クラッチで構成することができる。
【0016】
第2ソレノイドバルブ17には、統合コントローラ21からの指令に基づき、伝達トルク容量Tc2が所望の目標伝達トルク容量tTc2となるようにソレノイド電流が供給される。
【0017】
入力回転センサ12は、入力軸ax_inの回転数(以下、単に「入力軸回転数N_in」とも称する)を検出する。なお、入力回転センサ12は、入力軸回転数N_inの検出値(以下、「実入力軸回転数Nd_in」とも称する)を統合コントローラ21に送信する。
【0018】
出力回転センサ13は、出力軸ax_outの回転数(以下、単に「出力軸回転数N_out」とも称する)を検出する。なお、出力回転センサ13は、出力軸回転数N_outの検出値(以下、「実出力軸回転数Nd_out」とも称する)を統合コントローラ21に送信する。
【0019】
機械式オイルポンプ15は、内燃エンジン1により駆動され、第2クラッチ5に作動油を供給するポンプである。なお、第2クラッチ5へ作動油の供給のために、モータジェネレータ2により駆動される電動式サブオイルポンプ14を補助的に用いても良い。
【0020】
トランスファ19は、自動変速機3の出力側に配置される。トランスファ19は、出力軸ax_outの回転を、フロントファイナルドライブ6f及びリアファイナルドライブ6rを介して前輪7fと後輪7rにそれぞれ分配する動力分配機構である。
【0021】
なお、上記構成を有する車両100では、主として、電気走行モード(以下、「EVモード」と称する)とハイブリッド走行モード(以下、「HEVモード」と称する)の2つの動力伝達モードを選択可能である。
【0022】
EVモードでは、第1クラッチ4を解放し且つ第2クラッチ5を締結する。これにより、モータジェネレータ2からの出力のみが、入力軸ax_in及び自動変速機3を介して出力軸ax_outに伝達される。
【0023】
また、HEVモードでは、第1クラッチ4及び第2クラッチ5の双方を締結する。これにより、内燃エンジン1からの出力及びモータジェネレータ2からの出力の双方が、入力軸ax_in及び自動変速機3を介して出力軸ax_outに伝達される。
【0024】
なお、HEVモードにおいて、内燃エンジン1の運転により生成されるエネルギーが余剰となる場合、モータジェネレータ2を発電機として作動させることでこの余剰エネルギーを電力に変換して後述するバッテリ9に蓄電する。これにより、高負荷走行時に当該バッテリに蓄電された電力をモータジェネレータ2の駆動に用いることで内燃エンジン1の燃費を向上させることができる。
【0025】
次に、車両100の制御系について説明する。
【0026】
図2は、車両100の制御系を説明するためのブロック図である。図示のように、車両100の制御系は、統合コントローラ21と、エンジンコントローラ22と、モータコントローラ23と、インバータ8と、を有する。
【0027】
統合コントローラ21は、パワートレーンの動作点を統合制御する装置である。特に、統合コントローラ21は、エンジン回転センサ11により検出されるエンジン回転数Ne、入力回転センサ12により検出される実入力軸回転数Nd_in、出力回転センサ13により検出される実出力軸回転数Nd_out、アクセル開度センサ20により検出されるアクセル開度α(要求負荷)、及びSOCセンサ18により検出されるバッテリ9の蓄電状態(SOC)に基づいてパワートレーンの動作点を制御する。また、統合コントローラ21は、図示しない車速センサの検出値又は所定の演算により車速Vを入力情報として取得する。
【0028】
特に、統合コントローラ21は、本実施形態の変速制御として、モータジェネレータ2を用いて入力軸回転数N_inを、変速後における入力軸回転数N_inの最終的な目標値(以下、「最終目標同期回転数tN_in*」とも称する)に近づける回転同期変速を実行する。
【0029】
具体的に、本実施形態の統合コントローラ21は、実入力軸回転数Nd_inが変速中の目標入力軸回転数tN_inに近づくように、目標モータ回転数tNmを設定する。特に、統合コントローラ21は、目標入力軸回転数tN_inから内燃エンジン1の回転による回転数を除去して目標モータ回転数tNmを演算する。なお、内燃エンジン1の回転による回転数は、エンジン回転数Neを当該内燃エンジン1からモータジェネレータ2までの動力伝達経路の減速比で補正した値(モータジェネレータ2に伝達する正味の回転数)として定まる。
【0030】
エンジンコントローラ22は、内燃エンジン1の所望の動作点(目標エンジントルクtTe)に制御する装置である。より詳細には、エンジンコントローラ22は、統合コントローラ21で規定されるパワートレーンの動作点(目標エンジントルクtTe等)を実現するように、内燃エンジン1の補機として設けられる図示しない空気系アクチュエータ及び燃料系アクチュエータを操作する。
【0031】
モータコントローラ23は、統合コントローラ21で規定されるパワートレーンの動作点(目標モータトルクtTm又は目標モータ回転数tNm等)を実現するように、インバータ8を操作してバッテリ9からモータジェネレータ2への供給電力を調節する。特に、本実施形態のモータコントローラ23は、モータ回転数Nmを統合コントローラ21で演算された目標モータ回転数tNmに一致させるようにインバータ8を操作する。
【0032】
上述の統合コントローラ21、エンジンコントローラ22、及びモータコントローラ23は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたコンピュータ、特にマイクロコンピュータで構成される。
【0033】
以下、本実施形態による統合コントローラ21の変速制御についてより詳細に説明する。
【0034】
図3は、本実施形態の変速制御を説明するフローチャートである。なお、本実施形態において、統合コントローラ21は、
図3に示す処理を所定の演算周期で繰り返し実行する。
【0035】
先ず、ステップS10において、統合コントローラ21は、アクセル開度α及び車速Vに基づき、予め定められる変速マップ(
図4)を参照して、車両100がダウンシフトを実行すべきタイミングであるか否かを判定する。
【0036】
具体的に、統合コントローラ21は、アクセル開度α及び車速Vの少なくとも一方が所定の制御周期の間に変化して、車両100の動作点がダウンシフト線(
図4の破線)を跨ぐように変化した場合に、ダウンシフトを実行すべきと判断する。
【0037】
なお、統合コントローラ21は、ステップS10の判定結果が否定的である場合には、本ルーチンを終了する。一方、肯定的である場合には、統合コントローラ21はステップS20以降の処理を実行する。
【0038】
ステップS20において、統合コントローラ21は、変速中の入力軸回転数N_inの基本的な目標値である基本目標同期回転数tbN_inを演算する。
【0039】
より詳細には、統合コントローラ21は、実出力軸回転数Nd_outにノイズや高周波振動成分を除去するフィルタ処理を施した値に対して目標変速比γを乗じることで基本目標同期回転数tbN_inを演算する。
【0040】
また、本実施形態の変速制御における目標変速比γは、実出力軸回転数Nd_outに対する実入力軸回転数Nd_inの比として定められる。
【0041】
具体的に、基本目標同期回転数tbN_inは、下記の式(1)に基づいて演算される。
【0042】
【0043】
ステップS30において、統合コントローラ21は、変速がアクセル踏み込みダウンシフトであるか否かを判定する。
【0044】
ここで、アクセル踏み込みダウンシフトとは、アクセル開度αが0より大きいとき(車両100のドライバによるアクセル操作が検出される場合)に実行されるダウンシフトを意味する。
【0045】
したがって、統合コントローラ21は、上記ステップS10を前提として本ステップS30においてアクセル開度αが0より大きいか否かを判定することによって、実質的に変速がアクセル踏み込みダウンシフトであるか否かを判定している。
【0046】
統合コントローラ21は、変速がアクセル踏み込みダウンシフトでないと判断した場合には、ステップS40に進み、式(1)の基本目標同期回転数tbN_inを目標入力軸回転数tN_inに設定する。
【0047】
一方、統合コントローラ21は、変速がアクセル踏み込みダウンシフトであると判断した場合、ステップS50の処理に移行する。
【0048】
ステップS50において、統合コントローラ21は、加速意図の有無を判断するための加速意図判定基準領域R(α,V)を演算する。
【0049】
ここで、「加速意図の有無」とは、ダウンシフト中のアクセル操作(駆動力要求)が、実際に車両100を加速させることを目的としているか否かということを意味する。すなわち、車両100が走行する路面の走行抵抗によっては、車速Vを過度に減少させないために、車両100に一定の駆動力を与える必要があることが想定される。その場合は、アクセル操作が検出されても、当該アクセル操作が現実に車両100の加速(車速Vの増加)を伴うものであるとは限らない。例えば、車両100が登坂路を走行する場合には、ドライバがアクセルペダルを一定量操作していたとしても路面勾配の影響で車速Vが減少し、この状態でダウンシフトが開始されることも想定される。
【0050】
したがって、本実施形態の加速意図判定基準領域R(α,V)は、ダウンシフト中のアクセル操作が現実に車両100の加速を伴うか否かを判断する観点から定める車両100の動作点O(α,V)の好適な基準範囲として設定される。
【0051】
図4は、加速意図判定基準領域R(α,V)の設定方法の一例を説明する図である。
【0052】
図示のように、本実施形態の加速意図判定基準領域R(α,V)は、所定範囲のアクセル開度α及び車速Vから画定される領域である。例えば、加速意図判定基準領域R(α,V)は、アクセル開度αが30~40%程度且つ車速Vが数km/h~約60km/hの範囲として画定されている。なお、ここでは、2速から1速へのダウンシフト、或いは3速から2速へのダウンシフトを想定して加速意図判定基準領域R(α,V)を画定している。しかしながら、これに限られず、4速から3速へのダウンシフトなどのより高変速段の他のダウンシフトを想定して、加速意図判定基準領域R(α,V)の範囲を高車速側に拡大しても良い。
【0053】
すなわち、加速意図判定基準領域R(α,V)は、一般的に車両100に作用する走行抵抗の範囲を想定し、当該範囲の走行抵抗に抗して車速Vを過度に減少させないようにするための駆動力を得ることのできる動作点O(α,V)の範囲として規定される。
【0054】
したがって、車両100のアクセル開度αがこのように定めた加速意図判定基準領域R(α,V)以下の領域に存在する場合には、検出されるアクセル操作は車両100を現実に加速させる意図が実行されものではなく、走行抵抗に抗して車速Vを過度に減少させない意図であると推定することができる。
【0055】
逆に、車両100のアクセル開度αが加速意図判定基準領域R(α,V)を超える領域に存在する場合には、車両100に作用する走行抵抗に抗するために必要な駆動力を超える要求駆動力が生じていると考えられるため、車両100を現実に加速させる意図があると判断することができる。
【0056】
特に、
図4に示す加速意図判定基準領域R(α,V)は、走行抵抗として実用上使用される範囲の路面勾配を想定して定められる。
【0057】
なお、加速意図判定基準領域R(α,V)は、上述の実用上使用される範囲の路面勾配などの既知の情報に基づいて定められる場合には、これを統合コントローラ21のメモリなどに予め記憶させておくことができる。
【0058】
一方で、統合コントローラ21が、車両100が走行する路面の走行抵抗をリアルタイムに取得し、この取得した走行抵抗に基づいて加速意図判定基準領域R(α,V)を逐次演算しても良い。
【0059】
図3に戻り、統合コントローラ21は、上記ステップS50の処理を完了すると、ステップS60の処理に移行する。
【0060】
ステップS60において、統合コントローラ21は、ステップS50において設定した加速意図判定基準領域R(α,V)を用いて、車両100に加速意図があるか否かを判定する。
【0061】
より詳細には、統合コントローラ21は、車両100の動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)を超えている場合には加速意図が有ると判断する。一方、統合コントローラ21は、加速意図判定基準領域R(α,V)内に含まれるか、若しくは加速意図判定基準領域R(α,V)を下回る場合には、加速意図が無いと判断する。
【0062】
なお、動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)に含まれる場合は、厳密には、加速意図が無いとまで断ずることはできない。しかしながら、この場合においても、加速意図が無いものとみなして、少なくとも後述する基本目標同期回転数tbN_inに対する増加補正を行わないようにする。
【0063】
そして、統合コントローラ21は、加速意図が有ると判断した場合にはステップS70に移行し、加速意図が無いと判断した場合にはステップS80に移行する。
【0064】
ステップS70において、統合コントローラ21は回転数増加補正処理を実行する。具体的に、統合コントローラ21は、ステップS20で求めた基本目標同期回転数tbN_inに正の補正量ΔN+を加算して第1目標入力軸回転数tN_in1を求める。
【0065】
具体的に、第1目標入力軸回転数tN_in1は以下の式(2)により得られる。
【0066】
【0067】
そして、統合コントローラ21は、第1目標入力軸回転数tN_in1を目標入力軸回転数tN_inとして設定し、モータコントローラ23に出力する。
【0068】
一方、ステップS80において、統合コントローラ21は回転数減少補正処理を実行する。具体的に、統合コントローラ21は、ステップS20で求めた基本目標同期回転数tbN_inに0又は負の補正量ΔN-を加算して第2目標入力軸回転数tN_in2を求める。
【0069】
具体的に、第2目標入力軸回転数tN_in2は以下の式(3)により得られる。
【0070】
【0071】
なお、上記ステップS60において動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)内に含まれていると判断された場合には、補正量ΔN-を0に設定することが好ましい。
【0072】
そして、統合コントローラ21は、第2目標入力軸回転数tN_in2を目標入力軸回転数tN_inとして設定し、モータコントローラ23に出力する。
【0073】
以上説明した
図3の変速制御によれば、アクセル踏み込みダウンシフト時に車両100の加速意図が有ると判断された場合には、基本目標同期回転数tbN_inをプラス側にオフセット補正した第1目標入力軸回転数tN_in1が目標入力軸回転数tN_inとして設定される。
【0074】
一方、アクセル踏み込みダウンシフト時に加速意図が無いと判断された場合には、基本目標同期回転数tbN_inをマイナス側にオフセット補正した第2目標入力軸回転数tN_in2が目標入力軸回転数tN_inとして設定される。
【0075】
次に、本実施形態の変速制御によるアクセル踏み込みダウンシフト中の入力軸回転数N_inの挙動について説明する。
【0076】
図5は、本実施形態の変速制御によるアクセル踏み込みダウンシフト中の目標入力軸回転数tN_inの経時変化を示すタイムチャートである。なお、ここでは、本実施形態の変速制御の理解を容易化するために、アクセル踏み込みダウンシフト中の車速は一定とする。
【0077】
また、
図5では、加速意図が有ると判断された場合の目標入力軸回転数tN_inの経時変化を実線で示す。また、動作点O(α,V)が
図4の加速意図判定基準領域R(α,V)を下回った上で加速意図が無いと判断された場合の入力軸回転数N_inの経時変化を点線で示す。さらに、動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)内に含まれて加速意図が無いと判断された場合の入力軸回転数N_inの経時変化を一点鎖線で示す。
【0078】
すなわち、
図5の実線グラフは、第1目標入力軸回転数tN_in1の経時変化を表す。また、
図5の点線グラフは、補正量ΔN
-が0未満に設定された場合の第2目標入力軸回転数tN_in2の経時変化を表す。
【0079】
また、実線L1及びL2は、最終的な第1目標入力軸回転数tN_in1の値及び最終的な第2目標入力軸回転数tN_in2の値を示している。さらに、破線L3は最終目標同期回転数tN_in*を示したものである。
【0080】
図5に示すように、本実施形態の変速フェーズは、変速前の準備フェーズを経た後の第1フェーズ、第2フェーズ、及び第3フェーズにより構成される。
【0081】
具体的に、変速制御が開始(
図3のステップS10のYes)されてから時刻t0までの準備フェーズでは、変速動作の準備のため制御(第2クラッチ5を開放等)が行われる。
【0082】
そして、時刻t0において、変速フェーズが準備フェーズから第1フェーズに移行して入力軸回転数N_inの制御が開始される。この第1フェーズに移行するタイミングにおいて上記ステップS60及びステップS70の処理にしたがう目標入力軸回転数tN_inが設定される。
【0083】
すなわち、加速意図が有ると判断された場合、第1フェーズ及び第2フェーズ中における目標入力軸回転数tN_inとして、基本目標同期回転数tbN_inをプラス側にオフセット補正した第1目標入力軸回転数tN_in1が設定される。
【0084】
このため、入力軸回転数N_inは、第1目標入力軸回転数tN_in1に近づくように増大する。
【0085】
一方、動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)を下回った上で加速意図が無いと判断された場合、第1フェーズ及び第2フェーズ中における目標入力軸回転数tN_inとして、基本目標同期回転数tbN_inをマイナス側にオフセット補正した第2目標入力軸回転数tN_in2が設定される。
【0086】
このため、入力軸回転数N_inは、第2目標入力軸回転数tN_in2に近づくように増大する。
【0087】
さらに、動作点O(α,V)が加速意図判定基準領域R(α,V)内に含まれた上で加速意図が無いと判断された場合、第1フェーズ及び第2フェーズ中における目標入力軸回転数tN_inとして、補正量ΔN-が略0に設定された第2目標入力軸回転数tN_in2(すなわち、基本目標同期回転数tbN_in)が設定される。
【0088】
このため、入力軸回転数N_inは、基本目標同期回転数tbN_inに近づくように増大する。なお、本実施形態では、加速意図の有り無しで第1フェーズにおける目標入力軸回転数tN_inの変化速度を変更させている。しかしながら、
図6に示すように、入力軸回転数N_inの変化速度と基本目標同期回転数tbN_inの変化速度を同じに調節しても良い。
【0089】
次に、時刻t1において、変速フェーズが第1フェーズから第2フェーズに移行する。第2フェーズは、入力軸回転数N_inを第1フェーズの突入時に設定された目標入力軸回転数tN_inに安定的に収束させるために所定時間、目標入力軸回転数tN_inを維持する。
【0090】
そして、時刻t2において、変速フェーズが第2フェーズから第3フェーズに移行する。
【0091】
第3フェーズでは、目標入力軸回転数tN_inを最終目標同期回転数tN_in*に設定する。これにより、入力軸回転数N_inは、第1フェーズ及び第2フェーズで設定されていた第1目標入力軸回転数tN_in1又は第2目標入力軸回転数tN_in2から最終目標同期回転数tN_in*に収束する。そして、入力軸回転数N_inが最終目標同期回転数tN_in*に安定すると、第2クラッチ5が締結されて変速制御が完了する。
【0092】
以上説明した本実施形態の変速制御の技術的意義を背景技術を参照しつつ説明する。
【0093】
以下、本実施形態の前提となる背景技術について説明する。なお、説明の簡略化のため、背景技術の説明においても本実施形態と同様の要素には同一の符号を付す。
【0094】
車両100に対する駆動力要求を伴うアクセル踏み込みダウンシフト時は、駆動力要求が無い場合と比べて実出力軸回転数Nd_outの増加率が大きい。これにより、実出力軸回転数Nd_outをフィルタ処理して得られる基本目標同期回転数tbN_in(式(1)参照)を目標入力軸回転数tN_inとして設定すると、目標入力軸回転数tN_inは実出力軸回転数Nd_outの増加に遅れて追従することとなる。
【0095】
したがって、背景技術では、アクセル踏み込みダウンシフト時には、基本目標同期回転数tbN_inの遅れを補償する観点から、基本目標同期回転数tbN_inをプラス側にオフセット補正した値(すなわち、第1目標入力軸回転数tN_in1)を目標入力軸回転数tN_inに設定していた。
【0096】
一方、既に説明したように、車両100の走行シーンによっては、駆動力要求が検出されたとしても車速Vが減少した状態でダウンシフトが行われる場合がある。すなわち、既に説明したように、路面状況に応じた一定の走行抵抗が生じる走行シーンにおいては、車速Vを過度に減少させないように走行抵抗に抗する駆動力を車両100に与えつつも、車速Vが低下してダウンシフトが開始されることがある。
【0097】
しかしながら、背景技術の変速制御では、このような車速Vの増加を伴わないアクセル踏み込みダウンシフトにおいても、基本目標同期回転数tbN_inをプラス側にオフセット補正した第1目標入力軸回転数tN_in1が目標入力軸回転数tN_inに設定されることとなる。
【0098】
その結果、変速中の実入力軸回転数Nd_inが過剰に大きくなり、実入力軸回転数Nd_inが最終目標同期回転数tN_in*をオーバーシュートした状態で第2クラッチ5が締結されて変速ショックが生じるという問題が生じていた。
【0099】
このような背景技術の問題に対して、本実施形態では、アクセル踏み込みダウンシフト時において、加速意図の有無の判定結果に基づいて、現実に車両100が加速すると想定される場合とそうでない場合においてそれぞれ、第1目標入力軸回転数tN_in1(基本目標同期回転数tbN_inをプラス側にオフセット補正した値)及び第2目標入力軸回転数tN_in2(基本目標同期回転数tbN_inと同一かマイナス側にオフセットした値)を目標入力軸回転数tN_inに設定する。
【0100】
これにより、アクセル踏み込みダウンシフト中におけるに入力軸回転数N_inをより好適に調節することができ、変速ショックの発生を抑制することができる。
【0101】
特に、アクセル踏み込みダウンシフト中に基本目標同期回転数tbN_inがプラス側にオフセット補正されることで発生する上記オーバーシュート、及びこれに起因する変速ショックの発生を防止することができる。
【0102】
以下、上述した本実施形態の構成による作用効果についてより詳細に説明する。
【0103】
本実施形態では、自動変速機3を搭載した車両100において、変速中に自動変速機3の入力軸回転数N_inを所定の目標入力軸回転数tN_inに制御する変速制御方法が提供される。
【0104】
この変速制御方法では、変速中の入力軸回転数N_inの基本的な目標値である基本目標同期回転数tbN_inを設定し(
図3のステップS20)、変速がダウンシフトであって車両100に対する駆動力要求がある場合(すなわち、アクセル踏み込みダウンシフトである場合)に、車両100の加速意図の有無を判定する(
図3のステップS30、ステップS50、及びステップS60)。
【0105】
加速意図が有ると判定した場合(ステップS60のYes)には、基本目標同期回転数tbN_inを増加補正した第1目標入力軸回転数tN_in1を目標入力軸回転数tN_inとして設定する(ステップS70)。また、加速意図が無いと判定した場合(ステップS60のNo)には、基本目標同期回転数tbN_inを維持するか又は減少補正した第2目標入力軸回転数tN_in2を目標入力軸回転数tN_inとして設定する(ステップS80)。
【0106】
これにより、アクセル踏み込みダウンシフト時において実際の車速Vの増加を伴う場合及びそうではない場合を推定し、その判定結果に応じて基本目標同期回転数tbN_inに対する増減補正を行うことができる。結果として、アクセル踏み込みダウンシフト中に、上述した基本目標同期回転数tbN_inの遅れをもたらす車速Vの増加が生じるか否かに応じて入力軸回転数N_inを好適に調節することができる。
【0107】
特に、本実施形態の変速制御方法においては、基本目標同期回転数tbN_inを、変速中の自動変速機3の実出力軸回転数Nd_outにフィルタ処理を施して変速後の目標変速比γを乗じることで算出する(上記式(1)参照)。
【0108】
このように定められる基本目標同期回転数tbN_inは、車速Vの増加を伴うアクセル踏み込みダウンシフト時には、フィルタ処理の作用で実出力軸回転数Nd_outの増加に対して遅れて追従する。このようなシーンにおいて、本実施形態では、基本目標同期回転数tbN_inを増加補正した第1目標入力軸回転数tN_in1が目標入力軸回転数tN_inに設定される。このため、基本目標同期回転数tbN_inの実出力軸回転数Nd_outに対する追従遅れが補償されることとなるので、当該追従遅れに起因する変速ショックを抑制することができる。
【0109】
一方、基本目標同期回転数tbN_inは、車速Vの増加を伴わないアクセル踏み込みダウンシフト時には、実出力軸回転数Nd_outの増加に対する遅れが小さい。このようなシーンにおいて、本実施形態では、基本目標同期回転数tbN_inが維持又は減少補正された第2目標入力軸回転数tN_in2が目標入力軸回転数tN_inに設定される。このため、変速中の目標入力軸回転数tN_inを基本目標同期回転数tbN_in以下に調節される。結果として、実入力軸回転数Nd_inの最終目標同期回転数tN_in*に対するオーバーシュートに起因する変速ショックの発生を抑制することができる。
【0110】
また、本実施形態における変速制御方法では、アクセルペダル操作量としてのアクセル開度αが加速意図判定基準領域R(α,V)を越える場合に加速意図が有ると判定し、アクセル開度αが加速意図判定基準領域R(α,V)以下である場合に加速意図が無いと判定する。
【0111】
これにより、車両100のドライバの加速意図の有無を、アクセルペダル操作量という具体的なパラメータを用いて容易に実現することができる。
【0112】
さらに、本実施形態における変速制御方法では、加速意図判定基準領域R(α,V)を車両100の走行抵抗に基づいて定める。
【0113】
これにより、意図しない車速Vの減少を回避する観点から、車両100に一定程度の前進方向への駆動力を与えることが要求される走行抵抗を生じる路面状況を想定した加速意図判定基準領域R(α,V)を定めることができる。結果として、ドライバが加速をするつもりは無いもののアクセルペダルを操作しているシーンをより確実に判定することができ、アクセル踏み込みダウンシフト時であっても車両100の加速を伴わないシーンにおいて、基本目標同期回転数tbN_inがプラス側に補正することをより確実に抑制できる。
【0114】
特に、本実施形態では、走行抵抗は、実用上使用される範囲として規定された路面勾配を含む(
図4参照)。
【0115】
これにより、車両100に一定程度の前進方向への駆動力を与えることが要求される路面状況として一般的な登坂路に関し、現実的に考えられる勾配の大きさを想定して、当該勾配に抗するために要求される駆動力(アクセルペダル操作量)から、加速意図判定基準領域R(α,V)を定めることができる。したがって、加速意図判定基準領域R(α,V)を、加速意図の有無の判断基準としてより好適に設定することができる。
【0116】
また、入力軸回転数N_inを、車両100に駆動源として搭載された電動モータとしてのモータジェネレータ2により制御する。
【0117】
これにより、回転同期変速を、モータジェネレータ2を用いた電気的制御により実現することができる。
【0118】
さらに、本実施形態では、自動変速機3と、変速中に自動変速機3の入力軸回転数N_inを所定の目標入力軸回転数tN_inに制御する変速制御装置としての統合コントローラ21と、を備える車両用の変速制御システムSが提供される。
【0119】
そして、変速制御装置としての統合コントローラ21は、変速中の入力軸回転数N_inの基本的な目標値である基本目標同期回転数tbN_inを算出する基本目標同期回転数設定部(
図3のステップS20)と、変速がダウンシフトであって車両100に対する駆動力要求がある場合(すなわち、アクセル踏み込みダウンシフトである場合)に、車両100の加速意図の有無を判定する加速意図判定部と(
図3のステップS30、ステップS50、及びステップS60)、を有する。
【0120】
加速意図判定部により加速意図があると判定された場合(ステップS60のYes)には基本目標同期回転数tbN_inを増加補正した第1目標入力軸回転数tN_in1を目標入力軸回転数tN_inとして設定する回転数増加補正部(ステップS70)と、加速意図判定部により加速意図が無いと判定された場合(ステップS60のNo)には、基本目標同期回転数tbN_inを維持するか又は減少補正した第2目標入力軸回転数tN_in2を目標入力軸回転数tN_inとして設定する回転数減少補正部と(ステップS80)、を備える。
【0121】
これにより、上記変速制御方法を実行するために好適なシステム構成が実現されることとなる。
【0122】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0123】
また、本実施形態において、
図4に示した加速意図判定基準領域R(α,V)において、アクセル開度αの範囲(上限と下限)は車速Vの大きさに対して略一定に設定されている。しかしながら、加速意図判定基準領域R(α,V)のアクセル開度αの上限又は下限を、車速Vの大きさに応じて変更しても良い。
【0124】
例えば、上記実施形態では、変速時にモータジェネレータ2を用いて入力軸回転数N_inを調節する例を説明した。しかしながら、入力軸回転数N_inを調節するためのアクチュエータはモータジェネレータ2に限られるものではない。例えば、第1クラッチ4を締結して内燃エンジン1の出力を適宜制御することで、上記実施形態の変速制御における入力軸回転数N_inの調節を行うようにしても良い。
【0125】
また、上記実施形態では、車両100に対する要求駆動力をアクセル開度α(すなわち、車両100のドライバによるアクセルペダル操作量)に基づいて推定する例を説明した。しかしながら、車両100に対する要求駆動力の推定の方法はこれに限られるものではない。例えば、車両100にいわゆる自動運転機能又は運転補助機能が搭載される場合には、車両100のユーザの指定或いは走行条件に基づいて自動運転コントローラ又は運転補助コントローラが演算する要求駆動力相当のパラメータに基づいて、車両100に対する要求駆動力を推定しても良い。