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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】電子機器モジュールの車両への搭載構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/00 20060101AFI20230613BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20230613BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20230613BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B60K1/00
B62D25/08 E
B60R11/02 B
B60H1/00 102R
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021528008
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 IB2019000636
(87)【国際公開番号】W WO2020254846
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】中川 健一
(72)【発明者】
【氏名】大西 将浩
(72)【発明者】
【氏名】森 雅胤
(72)【発明者】
【氏名】申 載敏
(72)【発明者】
【氏名】阿高 雅弘
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-096746(JP,A)
【文献】特開2007-230329(JP,A)
【文献】特開2014-136531(JP,A)
【文献】特開2009-262739(JP,A)
【文献】特開2009-252688(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00
B62D 25/08
B60R 11/02
B60H 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子機器モジュールの車両への搭載構造であって、
前記車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続された、前記車両の前部に搭載された前記電子機器モジュールと、
前記車両の車幅方向に延在して前記電子機器モジュールの後部第一ブラケットを介して吊り下げ支持する車体構造部材と、
前記電子機器モジュールの前部を第二ブラケットを介して吊り下げ支持するラジエータサポートメンバと、を備え、
前記車体構造部材が、前記車両の前後方向において前記電子機器モジュールよりも前記車両の車室側に配されており、かつ、前記車両の上下方向に直角な何れの水平方向に沿って見ても前記電子機器モジュールと重ならず、
前記車体構造部材と前記電子機器モジュールとの間に、前記車室とは反対側からの衝撃力を受けて前記車体構造部材による前記電子機器モジュールの吊り下げ支持を解除する解除機構が設けられている、電子機器モジュールの車両への搭載構造。
【請求項2】
請求項1に記載の搭載構造であって、
前記車体構造部材に吊り下げ支持されている前記電子機器モジュールに対して、前記解除機構によって前記電子機器モジュールの吊り下げ支持が解除されたときに前記電子機器モジュールが前記車体構造部材から脱落する側である脱落側に、前記電子機器モジュールよりも低剛性の補助機器を更に備えている、搭載構造。
【請求項3】
請求項2に記載の搭載構造であって、
前記補助機器が、空調ユニットである、搭載構造。
【請求項4】
請求項3に記載の搭載構造であって、
前記車体構造部材が、前記車両の一対のフロントサスペンションタワーを繋ぐクロスメンバであり、
前記電子機器モジュールが、前記クロスメンバに対して下方に位置して前記水平方向に沿って見て前記クロスメンバと重ならず、
前記空調ユニットが、前記車両のバルクヘッドよりも前方に配置されている、搭載構造。
【請求項5】
請求項3又は4に記載の搭載構造であって、
前記空調ユニットが、その内部に、金属製のチューブフィン式熱交換器を有している、搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器モジュールの車両への搭載構造[an installation structure of an electrical component module in a vehicle]に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1は、ハイブリッド電気自動車(HEV)等のインバータユニットの搭載構造を開示している。インバータユニットは、車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続されている電子機器モジュールの一種である。車両を駆動するバッテリユニットは高電圧を扱うので、このような電子機器モジュールも高電圧を扱う。このため、インバータユニットは、車両が事故に遭遇した際も内部の電子部品を露出させないために高剛性のハウジングを有している。
【0003】
特許文献1に開示されたインバータユニットは、車体の前部[front section]に搭載されており、車体にしっかりと固定されたトレイにブラケットを介して取り付けられている。ブラケットは、車両事故での衝突によってインバータユニットに前方から衝撃力が作用するとインバータユニットと共にトレイから外れる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】日本国特開2013-86681号公報
【発明の概要】
【0005】
しかし、外れたインバータユニット(又はブラケット)がトレイと接触するので、インバータユニットの後方への変位が阻害される。インバータユニットの後方変位が阻害されると、車体前部の潰れストロークが十分に確保できずに衝突エネルギーの吸収が阻害される。
【0006】
従って、本発明の目的は、好適に衝突エネルギーを吸収することのできる、車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続されている電子機器モジュールの車両への搭載構造を提供することにある。
【0007】
本発明の特徴による電子機器モジュールの車両への搭載構造では、車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続された電子機器モジュールが車両の前部又は後部に搭載されている。電子機器モジュールは、車両の車幅方向に延在する車体構造部材に支持されている。車体構造部材は、電子機器モジュールとは車両の上下方向に直角な何れの水平方向に沿って見ても電子機器モジュールと重ならない。車体構造部材と電子機器モジュールとの間には、車室とは反対側からの衝撃力を受けて車体構造部材による電子機器モジュールの支持を解除する解除機構が設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第一実施形態に係る搭載構造を示す斜視図である。
図2図2は、上記搭載構造における解除機構を示す一部断面斜視図である。
図3図3は、上記解除機構の分解斜視図である。
図4図4は、上記搭載構造を示す側断面図(衝突前)である。
図5図5は、上記搭載構造を示す側断面図(衝突後)である。
図6図6は、第二実施形態に係る搭載構造を示す斜視図である。
図7図7は、上記搭載構造における解除機構を示す一部断面斜視図である。
図8図8は、上記解除機構の分解斜視図である。
図9図9は、上記搭載構造を示す側断面図(衝突前)である。
図10図10は、上記搭載構造を示す側断面図(衝突後)である。
図11図11は、第三実施形態に係る搭載構造を示す側断面図(衝突前)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ実施形態に係る電子機器モジュールの車両への搭載構造について説明する。
【0010】
(第一実施形態)
図1図5を参照しつつ、第一実施形態の搭載構造を説明する。本実施形態の搭載構造は、図1に示されるように、車両の前部(車室[passenger compartment]より前方部分)に、より具体的には、いわゆるエンジンコンパートメント内に構築されている。ただし、本実施形態の車両は電気自動車(EV)であり、エンジンコンパートメント内には内燃機関ではなくてモータジェネレータ(MG)等(図示せず)が搭載されている。MGは、電動機[electric motor]として機能するとともに、車両減速時には回生発電を行う発電機[electric generator]としても機能する。従って、以下、「エンジンコンパートメント」の語ではなく「モータルーム」の語を用いる。
【0011】
モータルームには、上述したMGのための電子機器モジュール1が搭載されている。本実施形態の電子機器モジュール1は、充放電ユニットであり、MGを駆動するためのバッテリユニット(後述する第三実施形態参照)を外部電源で充電するAC/DC充電器、DC/DCコンバータ及びジャンクションボックスを収納している。即ち、電子機器モジュール1は、車両に搭載された、車両を駆動する電力を蓄える上述したバッテリユニットと電気的に接続されている。MGは、電子機器モジュール1の下方に搭載されている。電子機器モジュール1は、アルミ合金製のハウジングを備えており、(例えば、車両が事故に遭遇した際に)外部から衝撃を受けても(容易には)潰れない[(hardly)collapse]。
【0012】
搭載構造は、電子機器モジュール1に加えて、車両の車幅方向[lateral direction of the vehicle]に延在するクロスメンバ2も備えている。クロスメンバ2は、車体構造部材[vehicle body structure member]である。電子機器モジュール1は、一対の第一ブラケット1a(図2参照)と、一対の第二ブラケット1bとを有している。電子機器モジュール1の後部が、第一ブラケット1aを介してクロスメンバ2によって支持されている。また、電子機器モジュール1の前部が、一対の第二ブラケット1bを介してラジエタサポートメンバ3によって支持されている。ラジエタサポートメンバ3も、車体構造部材である。本実施形態の車両では、MGやMGのためのインバータなどを液冷しており、このためのラジエータがラジエタサポートメンバ3によって支持されている。
【0013】
クロスメンバ2は、一対のフロントサスペンションタワー7aを繋ぐタワーバー(タワーブレース)である。クロスメンバ2は、車体剛性を向上させる。本実施形態のクロスメンバ2は、アルミ合金製である。クロスメンバ2の両端は、それぞれフロントサスペンションタワー7aにボルトやナットで固定されている。クロスメンバ2は、一対の中間ブラケット[intermediate brackets]2aを有しており、一対の中間ブラケット2aは、上述した第一ブラケット1aと共に後述する解除機構4(図2及び図3参照)を構築している。中間ブラケット2aも、アルミ合金製であり、ボルト2bでクロスメンバ2の本体に固定されている(図2及び図3参照)。クロスメンバ2は、車両の前後方向[longitudinal direction of the vehicle]において電子機器モジュール1よりも車室側に配されている[disposed more closely to the passenger compartment than]。車室とモータルームとは、バルクヘッド6によって隔てられている。
【0014】
図4に示されるように、クロスメンバ2は、車両の上下方向[vertical direction of the vehicle]に直角な、何れの水平方向に沿って見ても電子機器モジュール1とは重ならない[not overlap]。以下、この互いに重ならない状態を単に「上下方向に互いにオフセットされている」とも言う。電子機器モジュール1の後部は、その第一ブラケット1aを介してクロスメンバ2から吊り下げされるように、クロスメンバ2によって支持されている。なお、電子機器モジュール1の前部も、その第二ブラケット1bを介してラジエタサポートメンバ3から吊り下げされるように、ラジエタサポートメンバ3によって支持されている。第一ブラケット1a及び第二ブラケット1bはスチール製であり、ボルト1cによって電子機器モジュール1のハウジングに結合されている。
【0015】
本実施形態では、空調システム[air-conditioning system]の空調ユニット[A/C unit]5は、電子機器モジュール1と車室との間、より具体的には、電子機器モジュール1とバルクヘッド6との間に配されている。空調ユニット5は、バルクヘッド6に近接して搭載されている。空調ユニット5の樹脂製のA/Cハウジング5bの内部には樹脂製のダクトやブロアファンなどのA/C部品5cが収納されており、空調ユニット5は外部から衝撃を受けて潰れる補助機器[auxiliary device]である。即ち、空調ユニット5(補助機器)の剛性は電子機器モジュール1の剛性よりも低く、空調ユニット5は、電子機器モジュール1よりも潰れやすい(変形しやすい)。
【0016】
言い換えれば、電子機器モジュール1と空調ユニット5とを車両に搭載された位置に配置した状態から、電子機器モジュール1を前後方向に移動して固定された空調ユニット5に押圧させると、空調ユニット5の変形量の方が電子機器モジュール1の変形量(変形しない場合を含む)よりも明らかに大きくなる。このような静的負荷[static loading]と同様に、衝突のような動的負荷[dynamic loading]によっても空調ユニット5の変形量の方が電子機器モジュール1の変形量よりも明らかに大きくなる。
【0017】
A/Cハウジング5bの内部には、コンデンサ5a等の他の部品も収納されている。コンデンサ5aは、金属製のチューブフィン式熱交換器であり、バルクヘッド6に近接して、上下方向において電子機器モジュール1とオーバーラップする位置に配置されている。バルクヘッド6には、コンデンサ5aを通過した空調された空気[conditioned air]を車室に導入する開口も形成されている。コンデンサ5aへの空気を制御する樹脂製のエアシャッタなどのA/C部品5cもA/Cハウジング5b内に収納されている。
【0018】
上述した解除機構4について、図2及び図3を参照しつつ詳しく説明する。解除機構4は、クロスメンバ2と電子機器モジュール1との間に構築されている。解除機構4は、車室とは反対側(本実施形態では前方)からの衝撃力を受けてクロスメンバ2による電子機器モジュール1の支持を解除する。本実施形態では、一対の解除機構4が設けられているが、それらは同一の構造を有しているためそれらの一方を例にして説明する。解除機構4は、主として、上述した電子機器モジュール1の第一ブラケット1aとクロスメンバ2の中間ブラケット2aとで構築されている。第一ブラケット1aは、前板1e、一対の側板1f及び上板1gとからなるアングル材である。第一ブラケット1aの前板1e及び一対の側板1fは、角ばったU字形の水平断面を有している。前板1eには、上述したボルト1cが挿通されるボルト孔1dが形成されている。第一ブラケット1aの上板1gと中間ブラケット2aとがボルト4a及びナットによって共締めされる。このため、上板1gにはボルト4aが挿通されるボルト孔が形成されている。ボルト4aは、解除機構4の構成部品の一つであるが、電子機器モジュール1の一部ではないし、クロスメンバ2の一部でもない。
【0019】
一方、中間ブラケット2aは、長円状本体2cの中央から箱状部2dが側方に突出された形状を有している。長円状本体2cがクロスメンバ2の本体にボルト2bによって固定される。箱状部2dは、長円状本体2cから下方にも突出されている。箱状部2dの上面は開放されている。箱状部2dの底板から後板(車室側の板)にかけて切欠きボルト孔[cutout bolt hole]2eが形成されている。切欠きボルト孔2eは、底板ではボルト4aを挿通するボルト孔を後板に向けて切り欠いて拡張した形状を有しており、後板ではボルト4aの頭(及びワッシャ4b)を通過させるのに十分な大きさを有している。切欠きボルト孔2eは解除機構4の重要な構成要素の一つである。
【0020】
ワッシャ4bが取り付けられたボルト4aを切欠きボルト孔2eと上板1gに形成されたボルト孔に挿通した後にナットで締結することで、解除機構4が締結される。解除機構4の締結は、車両の通常使用では解除されない。しかし、(例えば、車両が事故に遭遇した際に)車室とは反対側(本実施形態では前方)から電子機器モジュール1に衝撃力が作用すると、その衝撃力はボルト4aの頭部を中間ブラケット2aに対して後方に変位させる。この結果、ボルト4aの頭部が切欠きボルト孔2eを通って後方へと変位し、ボルト4a及び第一ブラケット1aが中間ブラケット2aから外れる。即ち、クロスメンバ2による電子機器モジュール1の支持が解除される。ワッシャ4bは、座面の凹みを防止してボルト4aによる安定した締結を提供すると共に、解除時にはボルト4aの頭部のスライドを促進する。
【0021】
なお、第一ブラケット1aは、電子機器モジュール1のハウジングと一体的に構成されてもよい。しかし、このように第一ブラケット1aを独立して設けることで、異なるレイアウト寸法を持つ搭載構造への適用を容易にできる。即ち、電子機器モジュール1の搭載性に汎用性を持たせることができる。第二ブラケット1bも同様である。また、本実施形態の場合、電子機器モジュール1のハウジングとクロスメンバ2(中間ブラケット2aを含む)とはアルミ合金製である。ここで、アルミ合金よりも金属としては柔軟なスチール製の第一ブラケット1a(第二ブラケット1b)を介して電子機器モジュール1のハウジングとクロスメンバ2とを結合することで、微小変位や振動を第一ブラケット1a(第二ブラケット1b)で吸収できる。(アルミ系金属[アルミ合金]は振動耐久性及び減衰性が鉄系金属[スチール]より低い。)
【0022】
上述した搭載構造が、車両が衝突した際(前方から衝撃力を受けた際)にどのように機能するかを、図4及び図5を参照しつつ説明する。図4は、衝突前の状態を示しており、電子機器モジュール1、クロスメンバ2及び空調ユニット5は既に説明した位置関係を呈している。一方、図5は、衝突後(又は衝突中)の状態を示している。車両が前方から衝撃力を受けた場合、まず、一対のフロントサイドメンバ7bにクラッシュボックス7cを介して取り付けられたフロントバンパレインフォース7dに衝撃力が作用する。この結果、クラッシュボックス7cが潰れて衝突エネルギーを吸収した後、フロントサイドメンバ7bやラジエタサポートメンバ3に衝撃力が作用する。
【0023】
続いて、フロントサイドメンバ7bやラジエタサポートメンバ3をフロントアッパメンバ7eに接続する中間部材7fが潰れて、第二ブラケット1bを介して電子機器モジュール1に衝撃力が作用する。このとき、第二ブラケット1bが潰れて、衝撃力が電子機器モジュール1に直接作用することもある。電子機器モジュール1が衝撃力を受けると、クロスメンバ2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。電子機器モジュール1はクロスメンバ2に対して下方に(オーバーラップなく)オフセットされているので、電子機器モジュール1は、クロスメンバ2に衝突することなく、車体に対して後方に変位する。即ち、クロスメンバ2は、電子機器モジュール1の後方変位を阻害しない。従って、電子機器モジュール1の後方変位によって車両前部の潰れストロークが十分に確保され、衝突エネルギー吸収が促進される。車体構造部材であるクロスメンバ2が電子機器モジュール1の後方変位を阻害すると、不十分な潰れストロークによって衝突エネルギーが十分に吸収されない。
【0024】
さらに、本実施形態では、電子機器モジュール1と車室の間、即ち、電子機器モジュール1の後方に、補助機器としての空調ユニット5が配置されている。電子機器モジュール1は、この空調ユニット5を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ後方に変位する。従って、効率よく衝突エネルギーを吸収できる。特に、本実施形態の場合、空調ユニット5がバルクヘッド6に近接配置されているため、空調ユニット5の後方変位はバルクヘッド6によって制限される。この結果、空調ユニット5は確実に潰されるので、さらに効率よく衝突エネルギーを吸収できる。なお、空調ユニット5をバルクヘッド6よりも前方のモータルーム内に配置することで、車室内容積が増え、車室内の居住性[comfortability]が向上する。
【0025】
また、空調ユニット5は、その内部に金属製のチューブフィン式熱交換器であるコンデンサ5aがバルクヘッド6に最も近接して配置されている。補助機器としての空調ユニット5は外部からの衝撃で潰れて衝突エネルギーを吸収するが、そのコンデンサ5aは、比較的潰れにくい。仮に、電子機器モジュール1の第一ブラケット1aがバルクヘッド6に達すると衝撃力が集中的に作用してバルクヘッド6を車室側に変形させてしまう。しかし、本実施形態では、コンデンサ5aがバルクヘッド6に最も近接して配置されているので、コンデンサ5aが、変形しつつ第一ブラケット1aを受け止める。この結果、電子機器モジュール1は、上述した潰れストロークの終端で確実に受け止められる。
【0026】
また、その際、空調ユニット5の内部において、金属製のコンデンサ5aの前方に配置された樹脂製のA/C部品5cは、電子機器モジュール1がコンデンサ5aによって受け止められる過程で潰れて衝突エネルギーを吸収する。即ち、衝突エネルギーを吸収する補助機器である空調ユニット5の上述したA/C部品5cは、エネルギー吸収部品として機能している。なお、空調システムの冷媒のためのコンプレッサは、従来の内燃機関車と同様にモータルーム内の空調ユニット5の外部に設けられてもよいし、空調ユニット5の内部に設けられてもよい。金属製で潰れにくいコンプレッサを空調ユニット5の内部に設ける場合は、コンプレッサはコンデンサ5aの前方には設けずに、前方から見てコンデンサ5aと重ならないようにコンデンサ5aに対して側方にオフセットさせる。
【0027】
なお、本実施形態の車両(EV)では、車両の駆動輪と機械的に接続された電動機としてのMGが、電子機器モジュール1と電気的に接続された。しかし、車両がハイブリッド電気自動車(HEV)の場合は、内燃機関の出力軸と機械的に接続された電動機も電子機器モジュール1に電気的に接続され得る。この場合、車両の駆動輪と機械的に接続された電動機と内燃機関の出力軸と機械的に接続された電動機とが統合された単一の電動機でもよいし、互いに別々の電動機でもよい。これらの電動機は発電機として回生発電可能なモータジェネレータであってもよい。
【0028】
本実施形態の搭載構造は、車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続された、車両の前部に搭載された電子機器モジュール1と、車幅方向に延在して電子機器モジュール1を支持する車体構造部材(クロスメンバ)2と、を備えている。車体構造部材2は、前後方向において電子機器モジュール1よりも車室側(即ち、後方)に配されており、かつ、電子機器モジュール1とは上下方向にオフセットされている(水平方向に沿って見て重ならない)。また、車体構造部材2と電子機器モジュール1との間には、車室とは反対側(即ち、前方)からの衝撃力を受けて車体構造部材2による電子機器モジュール1の支持を解除する解除機構4が設けられている。このため、電子機器モジュール1が上記衝撃力を受けると、車体構造部材2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。支持が解除された電子機器モジュール1は、車体構造部材2によって阻害されることなく後方変位する。この結果、車体前部の潰れストロークを十分に確保することができ、衝突エネルギーを吸収できる。
【0029】
車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットは、通常、高電圧を扱うので、このバッテリユニットと電気的に接続された電子機器モジュール1も高電圧を扱う。このため、電子機器モジュール1は、容易には潰れないように高剛性のハウジングを有する。しかし、高剛性のハウジングを有する電子機器モジュール1は、潰れないために衝突エネルギーを吸収できない。また、電子機器モジュール1は、潰れないために衝突時の車体変形に伴って他の剛体部品と干渉すると、大きなピーク荷重が発生する。しかし、本実施形態の電子機器モジュール1は、衝突時に車体構造部材2による支持から解放され、他の剛体部品と干渉することなく後方に変位し得る。
【0030】
また、本実施形態の搭載構造は、電子機器モジュール1と車室との間に、電子機器モジュール1よりも低剛性の補助機器(空調ユニット)5を更に備えている。従って、電子機器モジュール1は、補助機器5を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ後方に変位する。この結果、効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0031】
また、本実施形態の搭載構造では、補助機器5が、空調ユニット5である。従って、車両がEVやHEVである場合に、搭載構造を車両前部に効果的に構築でき、優れた衝突エネルギー吸収特性を有する車両前部構造を構築できる。また、空調ユニット5がモータルーム内に配置されるため、車室内の居住性が向上する。
【0032】
ここで、本実施形態の搭載構造では、車体構造部材2が、一対のフロントサスペンションタワー7aを繋ぐクロスメンバ2である。電子機器モジュール1が、車両前部に搭載され、かつ、クロスメンバ2に対して下方にオフセットされている(下方に位置して水平方向に沿って見て重ならない)。空調ユニット5は、バルクヘッド6よりも前方に配置されている。モータルーム内の下方はフロントサスペンション機構や転舵する駆動輪(前輪)やドライブシャフトと繋がるMGなどのドライブトレーンが配置される。従って、電子機器モジュール1をクロスメンバ(タワーバー)2によって上方から吊り下げ支持することで、モータルーム内のスペース効率が向上する。また、空調ユニット5が潰れる際には、空調ユニット5はバルクヘッド6によって後方から受け止められる。この結果、空調ユニット5は確実に潰されるので、さらに効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0033】
さらに、本実施形態の搭載構造では、空調ユニット5が、その内部に、金属製のチューブフィン式熱交換器(コンデンサ)5aを有している。従って、コンデンサ5aが、変形しつつも、後方変位する電子機器モジュール1を受け止める。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。
【0034】
(第二実施形態)
図6図10を参照しつつ、第二実施形態の搭載構造を説明する。本実施形態の搭載構造における電子機器モジュール1は、後輪と接続されたMGのためのインバータユニットである。電子機器モジュール(インバータユニット)1は、車両に搭載された、車両を駆動する電力を蓄える上述したバッテリユニット(後述する第三実施形態参照)と電気的に接続されている。電子機器モジュール1は、アルミ合金製の箱型のハウジングを備えており、(例えば、車両が事故に遭遇した際に)外部から衝撃を受けても(容易には)潰れない。ハウジング内には、パワーモジュールや平滑コンデンサなどの電子機器が収納されている。また、電子機器モジュール(インバータユニット)1は、車両の駆動輪又は内燃機関の出力軸と機械的に接続されたMG(電動機)とも電気的に接続されている。
【0035】
また、本実施形態の搭載構造における、解除機構4は、上述した第一実施形態の解除機構4と同一である。従って、電子機器モジュール1及び解除機構4の同一の構成要素には同一の参照符号を付して、詳しい説明は省略する。ただし、本実施形態では、電子機器モジュール1は、車両の後部[rear section]に前後反転して搭載される。即ち、車両後部に搭載された電子機器モジュール1は、同一側面で車両衝突時の衝撃力を受ける。また、電子機器モジュール1は、(吊り下げ支持されるのではなく、)下方から支持される。このため、第一ブラケット1a及び第二ブラケット1bは、上下反転して電子機器モジュール1のハウジングに取り付けられる。即ち、第一実施形態において説明したように、第一ブラケット1a及び第二ブラケット1bによって、電子機器モジュール1の搭載性に汎用性がもたらされている。
【0036】
本実施形態の搭載構造は、図6に示されるように、車両の後部(車室より後方部分)、より具体的には、ラゲッジルーム内に構築されている。上述した電子機器モジュール1は、ラゲッジルーム内に搭載されている。MGは、電子機器モジュール1の下方に搭載されている。本実施形態では、車両の駆動輪(後輪)と機械的に接続された電動機としてのMGが、電子機器モジュール1と電気的に接続されている。なお、前輪が内燃機関及びMGにより駆動され、かつ、後輪がMGのみで駆動される四輪駆動HEVや、前輪も後輪もMGによって駆動される四輪駆動EVなど、パワートレーンにはバリエーションが考えられる。
【0037】
本実施形態の搭載構造は、電子機器モジュール1に加えて、車両の車幅方向に延在するクロスメンバ2を備えている。クロスメンバ2は、車体構造部材である。上述したように、電子機器モジュール1は、一対の第一ブラケット1aと、一対の第二ブラケット1bとを有している。電子機器モジュール1の前部が、第一ブラケット1aを介してクロスメンバ2によって支持されている。また、電子機器モジュール1の後部が、一対の第二ブラケット1bを介してリア側クロスメンバ13によって支持されている。リア側クロスメンバ13も、車体構造部材である。クロスメンバ2は、一対のリアサイドメンバ17b(図9参照)を繋いでおり、車体剛性も向上させる。本実施形態のクロスメンバ2は、アルミ合金製である。クロスメンバ2の両端は、それぞれリアサイドメンバ17bにボルトやナットで固定されている。本実施形態のクロスメンバ2は、第一実施形態の中間ブラケット2aを有しておらず、その本体に箱状部2dを一体的に[monolithically]有している(図7参照)。
【0038】
クロスメンバ2の箱状部2dは、電子機器モジュール1の第一ブラケット1aと共に解除機構4(図7及び図8参照)を構築している。クロスメンバ2は、前後方向において電子機器モジュール1よりも車室側に配されている。図9に示されるように、クロスメンバ2は、電子機器モジュール1とは上下方向にオフセットされている(水平方向に沿って見て重ならない)。電子機器モジュール1の前部は、第一ブラケット1aを介してクロスメンバ2によって下方から支持されている。電子機器モジュール1の後部も、第二ブラケット1bを介してリア側クロスメンバ13によって下方から支持されている。
【0039】
本実施形態では、オーディオユニット15が、電子機器モジュール1と車室との間に配されている。オーディオユニット15は、リアシート8のすぐ後ろに配され、その前側下端がフロント側クロスメンバ16に固定されている。オーディオユニット15の内部にはスピーカやウーファーダクト等のオーディオ部品が収納されており、オーディオユニット15は外部から衝撃を受けて潰れる補助機器である。即ち、オーディオユニット15(補助機器)の剛性は電子機器モジュール1の剛性よりも低く、オーディオユニット15は、電子機器モジュール1よりも潰れやすい(変形しやすい)。オーディオユニット15の内部には、アンプユニット15aも収納されている。アンプユニット15aは、金属(アルミ合金)製のハウジングを有している。ハウジングはアンプの熱を放熱するヒートシンクとしても機能する。アンプユニット15aは、上下方向において電子機器モジュール1とオーバーラップする位置に配置されている。なお、フロント側クロスメンバ16の位置に、車室とラゲッジルームとを隔てるバルクヘッドが設けられてもよい。
【0040】
上述したように、第一ブラケット1a(及び第二ブラケット1b)は上下反転して電子機器モジュール1のハウジングに取り付けられているが、解除機構4は、図8及び9に示されるように、第一実施形態の解除機構4と同様の構造を有している。
【0041】
上述した搭載構造が、他の車両が後方から衝突した際(後方から衝撃力を受けた際)にどのように機能するかを、図9及び図10を参照しつつ説明する。図9は、衝突前の状態を示しており、図10は、衝突後(又は衝突中)の状態を示している。車両が後方から衝撃力を受けた場合、まず、一対のリアサイドメンバ17bにクラッシュボックス17c(図6参照)を介して取り付けられたリアバンパレインフォース17dに衝撃力が作用する。この結果、クラッシュボックス17cが潰れて衝突エネルギーを吸収した後、リアサイドメンバ17bやリア側クロスメンバ13に衝撃力が作用する。
【0042】
続いて、リアサイドメンバ17bが潰れて、第二ブラケット1bを介して電子機器モジュール1に衝撃力が作用する。このとき、第二ブラケット1bが潰れて、衝撃力が電子機器モジュール1に直接作用することもある。電子機器モジュール1が衝撃力を受けると、クロスメンバ2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。電子機器モジュール1はクロスメンバ2に対して上方に(オーバーラップなく)オフセットされているので、電子機器モジュール1は、クロスメンバ2に衝突することなく、車体に対して前方に変位する。即ち、クロスメンバ2は、電子機器モジュール1の前方変位を阻害しない。従って、電子機器モジュール1の前方変位によって車両後部の潰れストロークが十分に確保され、衝突エネルギー吸収が促進される。車体構造部材であるクロスメンバ2が電子機器モジュール1の前方変位を阻害すると、不十分な潰れストロークによって衝突エネルギーが十分に吸収されない。
【0043】
さらに、本実施形態では、電子機器モジュール1と車室の間、即ち、電子機器モジュール1の前方に、補助機器としてのオーディオユニット15が配置されている。電子機器モジュール1は、このオーディオユニット15を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ前方に変位する。従って、効率よく衝突エネルギーを吸収できる。オーディオユニット15の前方変位は、フロント側クロスメンバ16やリアシート8によって制限される。この結果、オーディオユニット15は確実に潰されるので、さらに効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0044】
また、オーディオユニット15は、その内部に金属製ハウジングを有するアンプユニット15aを有している。補助機器としてのオーディオユニット15は外部からの衝撃で潰れて衝突エネルギーを吸収するが、そのアンプユニット15aは、比較的潰れにくい。アンプユニット15aは、第一実施形態のコンデンサ5aと同様に、変形しつつ第一ブラケット1aを受け止める。アンプユニット15aは、前方変位しても、フロント側クロスメンバ16やリアシート8によって受け止められる。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。なお、本実施形態でも、内燃機関の出力軸と機械的に接続された電動機が電子機器モジュール1に電気的に接続され得る。例えば、車両前部に搭載された電動機が、ワイヤリングハーネスによって車両後部に搭載された電子機器モジュール1と電気的に接続される。
【0045】
本実施形態の搭載構造は、車両を駆動する電気を蓄えるバッテリユニットと電気的に接続された、車両の後部に搭載された電子機器モジュール1と、車幅方向に延在して電子機器モジュール1を支持する車体構造部材(クロスメンバ)2と、を備えている。車体構造部材2は、前後方向において電子機器モジュール1よりも車室側(即ち、前方)に配されており、かつ、電子機器モジュール1とは上下方向にオフセットされている(水平方向に沿って見て重ならない)。また、車体構造部材2と電子機器モジュール1との間には、車室とは反対側(即ち、後方)からの衝撃力を受けて車体構造部材2による電子機器モジュール1の支持を解除する解除機構4が設けられている。このため、電子機器モジュール1が上記衝撃力を受けると、車体構造部材2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。支持が解除された電子機器モジュール1は、車体構造部材2によって阻害されることなく前方変位する。この結果、車体後部の潰れストロークを十分に確保することができ、衝突エネルギーを吸収できる。
【0046】
また、本実施形態の搭載構造は、電子機器モジュール1と車室との間に、電子機器モジュール1よりも低剛性の補助機器(オーディオユニット)15を更に備えている。従って、電子機器モジュール1は、補助機器15を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ方に変位する。この結果、効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0047】
また、本実施形態の搭載構造では、電子機器モジュール1が車両の後部に搭載されており、補助機器15がオーディオユニット15である。従って、車両がEVやHEVである場合に、搭載構造を車両後部に効果的に構築でき、優れた衝突エネルギー吸収特性を有する車両後部構造を構築できる。
【0048】
ここで、本実施形態の搭載構造では、車体構造部材2が、一対のリアサイドメンバ17bを繋ぐクロスメンバ2である。また、電子機器モジュール1が、クロスメンバ2に対して上方にオフセットされている(上方に位置して水平方向に沿って見て重ならない)。ラゲッジルーム(リアサイドメンバ17b)の下方はリアサスペンション機構や駆動輪(後輪)やドライブシャフトと繋がるMGなどドライブトレーンが配置される。従って、リアサイドメンバ17bを繋ぐクロスメンバ2によって電子機器モジュール1を下方から支持することで、ラゲッジルームのフロア下のスペース効率が向上する。
【0049】
さらに、本実施形態の搭載構造では、オーディオユニット15が、その内部に、金属製のアンプユニット15aを有している。従って、アンプユニット15aが、変形しつつも、前方変位する電子機器モジュール1を受け止める。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。
【0050】
(変形例)
第二実施形態における補助機器はオーディオユニット15であった。しかし、電子機器モジュール1よりも低剛性の補助機器として空調ユニットを車両後部に搭載してもよい。近年、前席用空調ユニットに加えて、後席用空調ユニットも搭載する車両も販売されている。このような車両では、後席用空調ユニットが車両後部に搭載されることがある。本変形例では、第二実施形態の説明に用いた図6図10において、参照符号15が空調ユニットを示し、参照符号15aがコンデンサ(金属製のチューブフィン式熱交換器)を示す。従って、本変形例によっても、第二実施形態によってもたらされる上述した利点が同様にもたらされる。
【0051】
特に、本変形例の搭載構造では、補助機器が、空調ユニット15である。従って、車両がEVやHEVである場合に、搭載構造を車両後部に効果的に構築でき、優れた衝突エネルギー吸収特性を有する車両後部構造を構築できる。
【0052】
また、本変形例の搭載構造では、空調ユニット15が、その内部に、金属製のチューブフィン式熱交換器(コンデンサ)15aを有している。従って、コンデンサ15aが、変形しつつも、前方変位する電子機器モジュール1を受け止める。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。
【0053】
(第三実施形態)
図11を参照しつつ、第三実施形態の搭載構造を説明する。本実施形態の車両もEVであり、車室のフロア下にバッテリユニットBを備えている。本実施形態の搭載構造では、補助機器は、バッテリユニットBの温度を制御するバッテリ温調ユニット[battery thermo-control unit]25である。電子機器モジュール1としてのインバータユニット、車体構造部材としてのクロスメンバ2、及び、それらの周辺の車体構造は、上述した第二実施形態と同じである。従って、それらの同一の構成要素には同一の参照符号を付して、詳しい説明は省略する。
【0054】
EVのバッテリユニットBは、その動作環境に応じて、暖められたり、冷却されたりする。例えば、バッテリユニットBは、低温環境下での始動時には暖められ、高負荷連続運転時には冷却される。本実施形態のバッテリ温調ユニット25は、冷却水[coolant]を用いて、バッテリユニットBを温度制御する。バッテリ温調ユニット25は、その内部に、冷却水を冷やすクーラ25aと冷却水を温めるヒータ25bとを有している。クーラ25aとバッテリユニットBとは、クーラ循環配管で接続されている。ヒータ25bとバッテリユニットBとは、ヒータ循環配管で接続されている。バッテリユニットB内の配管は図示されていないが、冷却水がバッテリユニットB内の配管を流れることでバッテリユニットBが温度制御される。
【0055】
本実施形態のクーラ25aは、金属製の熱交換器であり、冷媒を利用している。このため、クーラ25aは、冷媒循環配管を介してコンプレッサ25dと接続されている。コンプレッサ25dは冷媒を循環させるポンプとしても機能する。クーラ25aの内部で、冷却水の熱が冷媒に伝えられ、冷却水が冷やされる。本実施形態のクーラ25aやコンプレッサ25dは、空調システムのエバポレータやコンプレッサとしても機能する。(空調システムのエバポレータやコンプレッサがクーラ25aやコンプレッサ25dとして利用される。)
【0056】
ヒータ25bは、電力を用いて発熱するヒータでもよいし、車両に搭載されたヒートポンプシステムを用いてもよい。ヒートポンプシステムを用いる場合、ヒータ25bも金属製の熱交換器になり得る。クーラ25a(及びヒータ25b)は、上下方向において電子機器モジュール1とオーバーラップする位置に配置されている。冷却水の循環配管上には、冷却水を循環させるポンプ25cや、循環経路を切り替えるバルブ(図示せず)が設けられている。バッテリ温調ユニット25の内部には、配管や冷却水のリザーバタンクなどの部品も収納されており、バッテリ温調ユニット25は、外部から衝撃を受けて潰れる。
【0057】
本実施形態では、バッテリ温調ユニット25が、電子機器モジュール1と車室との間に配されている。バッテリ温調ユニット25は、リアシート8のすぐ後ろに配され、その前側下端がフロント側クロスメンバ16に固定されている。なお、フロント側クロスメンバ16の位置に、車室とラゲッジルームとを隔てるバルクヘッドが設けられてもよい。
【0058】
上述した搭載構造が、他の車両が後方から衝突した際(後方から衝撃力を受けた際)には、まず、リアバンパレインフォース17dに衝撃力が作用して、クラッシュボックス17cが潰れて衝突エネルギーが吸収される。続いて、リアサイドメンバ17bが潰れて、第二ブラケット1bを介して電子機器モジュール1に衝撃力が作用する。このとき、第二ブラケット1bが潰れて、衝撃力が電子機器モジュール1に直接作用することもある。電子機器モジュール1が衝撃力を受けると、クロスメンバ2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。電子機器モジュール1は、クロスメンバ2に衝突することなく、車体に対して前方に変位する。電子機器モジュール1の前方変位によって車両後部の潰れストロークが十分に確保され、衝突エネルギー吸収が促進される。
【0059】
さらに、本実施形態では、電子機器モジュール1と車室の間、即ち、電子機器モジュール1の前方に、電子機器モジュール1より低剛性の補助機器であるバッテリ温調ユニット25が配置されている。電子機器モジュール1はバッテリ温調ユニット25を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ前方に変位し、効率よく衝突エネルギーが吸収される。バッテリ温調ユニット25の前方変位は、フロント側クロスメンバ16やリアシート8によって制限される。この結果、バッテリ温調ユニット25は確実に潰されるので、さらに効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0060】
また、バッテリ温調ユニット25は、その内部に金属製の熱交換器であるクーラ25a(及びヒータ25b)を有している。補助機器としてのバッテリ温調ユニット25は外部から衝撃によって潰れて衝突エネルギーを吸収するが、そのクーラ25a(及びヒータ25b)は、金属製であり比較的潰れにくい。クーラ25a(及びヒータ25b)は、第一実施形態のコンデンサ5aと同様に、変形しつつ第一ブラケット1aを受け止める。クーラ25a(及びヒータ25b)は、前方変位しても、フロント側クロスメンバ16やリアシート8によって受け止められる。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。なお、本実施形態でも、内燃機関の出力軸と機械的に接続された電動機が電子機器モジュール1に電気的に接続され得る。
【0061】
本実施形態の搭載構造においても、電子機器モジュール1が後方から衝撃力を受けると、車体構造部材2による電子機器モジュール1の支持が解除機構4によって解除される。支持が解除された電子機器モジュール1は、車体構造部材2によって阻害されることなく前方変位する。この結果、車体後部の潰れストロークを十分に確保することができ、衝突エネルギーを吸収できる。
【0062】
また、本実施形態の搭載構造は、電子機器モジュール1と車室との間に、電子機器モジュール1よりも低剛性の補助機器(バッテリ温調ユニット)25を更に備えている。従って、電子機器モジュール1は、補助機器25を潰して衝突エネルギーを吸収しつつ方に変位する。この結果、効率よく衝突エネルギーを吸収できる。
【0063】
また、本実施形態の搭載構造では、電子機器モジュール1が車両の後部に搭載され、かつ、補助機器25がバッテリ温調ユニット25である。従って、車両がEVやHEVである場合に、搭載構造を車両後部に効果的に構築でき、優れた衝突エネルギー吸収特性を有する車両後部構造を構築できる。
【0064】
ここで、本実施形態の搭載構造では、車体構造部材2が、一対のリアサイドメンバ17bを繋ぐクロスメンバ2である。また、電子機器モジュール1が、クロスメンバ2に対して上方にオフセットされている。ラゲッジルーム(リアサイドメンバ17b)の下方はリアサスペンション機構や駆動輪(後輪)やドライブシャフトと繋がるMGなどドライブトレーンが配置される。従って、リアサイドメンバ17bを繋ぐクロスメンバ2によって電子機器モジュール1を下方から支持することで、ラゲッジルームのフロア下のスペース効率が向上する。
【0065】
さらに、本実施形態の搭載構造では、バッテリ温調ユニット25が、その内部に、金属製のクーラ25a(及びヒータ25b)を有している。従って、クーラ25a(及びヒータ25b)が、変形しつつも、前方変位する電子機器モジュール1を受け止める。この結果、電子機器モジュール1は、潰れストロークの終端で確実に受け止められる。
【0066】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されない。例えば、第一実施形態の電子機器モジュール1は、第二実施形態のようなインバータユニットでもよい。また、上記第二及び第三実施形態におけるクロスメンバ2は、一対のリアサイドメンバ17bにボルトなどによって固定された。しかし、車体構造部材のクロスメンバ2はリアサイドメンバ17b間に溶接されたクロスメンバであってもよい。
【0067】
また、上記実施形態の解除機構4は、そのボルト4aがスライドして切欠きボルト孔2eを通して中間ブラケット2aから脱落する、スライド脱落機構であった。このようなスライド脱落機構において、ボルト4aが第一ブラケット1aに一体的に[monolithically]形成されてもよい。なお、この場合のボルト4aは「ボルト」ではなく第一ブラケット1aから上方に突出された係合突起であるが、この係合突起は解除機構4の一部であり、第一ブラケット1a(即ち、電子機器モジュール1)の一部ではない。即ち、ボルト4aや上述した係合突起は、水平方向に沿って見てクロスメンバ2(中間ブラケット2a)と重なりえる。上述した係合突起は、切欠きボルト孔2eを通して中間ブラケット2aに圧入される。
【0068】
さらに、上記実施形態の解除機構4は、上述したようにスライド脱落機構であった。しかし、例えば、第一ブラケット1aと中間ブラケット2aとがエンジニアリングプラスチックを介して一体的に[integrally]接合されるように第一ブラケット1aと中間ブラケット2aとの結合体をインサート成形してもよい。そして、車室とは反対側からの衝撃力を受けてエンジニアリングプラスチックが破壊されてクロスメンバ(車体構造部材)2による電子機器モジュール1の支持を解除する解除機構でもよい。解除機構は、このような破断脱落機構でもよい。破断脱落機構は、エンジニアリングプラスチックを用いずに、金属部分に設けた脆弱部で構築することもできる。
【符号の説明】
【0069】
1 電子機器モジュール
1a 第一ブラケット
1b 第二ブラケット
2 クロスメンバ(車体構造部材)
4 解除機構
5 空調ユニット(補助機器)
5a コンデンサ(チューブフィン式熱交換器)
6 バルクヘッド
15 オーディオユニット(補助機器)
15a アンプユニット
25 バッテリ温調ユニット(補助機器)
25a クーラ(熱交換器)
25b ヒータ
B バッテリユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11