(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】クランプ及びクランプ付ワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20230613BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20230613BHJP
F16B 19/00 20060101ALI20230613BHJP
F16B 2/08 20060101ALI20230613BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H02G3/30
H01B7/00 301
F16B19/00 Q
F16B2/08 U
B60R16/02 623D
(21)【出願番号】P 2022004971
(22)【出願日】2022-01-17
(62)【分割の表示】P 2018240850の分割
【原出願日】2018-12-25
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】木下 博仁
【審査官】木村 励
(56)【参考文献】
【文献】実開平1-158884(JP,U)
【文献】特開2007-80623(JP,A)
【文献】特開2009-168138(JP,A)
【文献】特開2006-105366(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
H01B 7/00
F16B 19/00
F16B 2/08
B60R 16/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを保持する保持部と、
前記保持部の外周面の一部に設けられ、被固定部に固定される固定部と、を有し、
前記固定部は、
前記保持部側に向く第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する土台部と、
前記土台部の前記第2面から前記保持部と離間する方向に延びる支軸と、
前記支軸の先端に設けられ、前記被固定部に係止可能に形成された係止部と、
前記土台部よりも弾性率の低い材料からなり、前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出する振動抑制部材と、を有し、前記土台部は、前記保持部と一体に形成されてい
て、
前記支軸の外周を全周に亘って包囲する筒状のばね部を更に有し、
前記ばね部は、前記支軸よりも弾性率が低い材料からなるクランプ。
【請求項2】
前記ばね部は、前記支軸の外周を前記支軸の延出方向の全長に亘って包囲するように形成されている請求項1に記載のクランプ。
【請求項3】
前記支軸は、円柱状に形成されており、
前記ばね部は、円筒状に形成されており、
前記振動抑制部材は、平面視において前記ばね部の外周を囲む円環状に形成されている請求項1又は請求項2に記載のクランプ。
【請求項4】
ワイヤハーネスを保持する保持部と、
前記保持部の外周面の一部に設けられ、被固定部に固定される固定部と、を有し、
前記固定部は、
前記保持部側に向く第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する土台部と、
前記土台部の前記第2面から前記保持部と離間する方向に延びる支軸と、
前記支軸の先端に設けられ、前記被固定部に係止可能に形成された係止部と、
前記土台部よりも弾性率の低い材料からなり、前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出する振動抑制部材と、を有し、前記土台部は、前記保持部と一体に形成されていて、
前記土台部の前記第2面には、溝部が形成されており、
前記振動抑制部材の一部が前記溝部に嵌合されているクランプ。
【請求項5】
ワイヤハーネスを保持する保持部と、
前記保持部の外周面の一部に設けられ、被固定部に固定される固定部と、を有し、
前記固定部は、
前記保持部側に向く第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する土台部と、
前記土台部の前記第2面から前記保持部と離間する方向に延びる支軸と、
前記支軸の先端に設けられ、前記被固定部に係止可能に形成された係止部と、
前記土台部よりも弾性率の低い材料からなり、前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出する振動抑制部材と、を有し、前記土台部は、前記保持部と一体に形成されていて、
前記土台部の平面形状は、前記係止部の平面形状よりも大きく形成されており、
前記振動抑制部材は、前記係止部よりも平面形状の大きい貫通穴を有する環状に形成されているクランプ。
【請求項6】
前記振動抑制部材は、複数の分割体を有し、
前記複数の分割体は、前記土台部の前記第2面において互いに離間して設けられている請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のクランプ。
【請求項7】
ワイヤハーネスを保持する保持部と、
前記保持部の外周面の一部に設けられ、被固定部に固定される固定部と、を有し、
前記固定部は、
前記保持部側に向く第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する土台部と、
前記土台部の前記第2面から前記保持部と離間する方向に延びる支軸と、
前記支軸の先端に設けられ、前記被固定部に係止可能に形成された係止部と、
前記土台部よりも弾性率の低い材料からなり、前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出する振動抑制部材と、を有し、前記土台部は、前記保持部と一体に形成されていて、
前記振動抑制部材のうち前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出された部分が断面視半円状に形成されているクランプ。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載のクランプと、
前記保持部に保持される前記ワイヤハーネスと、を有するクランプ付ワイヤハーネス。
【請求項9】
前記ワイヤハーネスは、
電線と、
前記電線が内部に収容され、外周が前記保持部によって包囲された外装部材と、
前記保持部によって包囲された部分の前記外装部材の内部空間に設けられたスペーサと、を有し、
前記スペーサは、前記電線の外周面と前記外装部材の内周面との間の空間を埋めるように形成されている請求項8に記載のクランプ付ワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランプ及びクランプ付ワイヤハーネスに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ワイヤハーネスを車体等の被固定部に固定するためのクランプが種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。この種のクランプは、ワイヤハーネスを保持する保持部と、車体に固定される固定部とを有している。固定部は、基端が保持部に接続された支軸と、支軸の先端に形成され、車体に係止される係止部と、支軸を挟んで両側に設けられた一対のコイルばねとを有している。支軸の周囲に配置した一対のコイルばねによって、車体からクランプを通じてワイヤハーネスに伝わる衝撃を吸収している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、上記クランプでは、車体の振動等に伴ってコイルばねが単振動を繰り返すことになり、振動自体を減衰させにくいため、この点においてなお改善の余地があった。
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、振動を減衰させることのできるクランプ及びクランプ付ワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するクランプによれば、ワイヤハーネスを保持する保持部と、前記保持部の外周面の一部に設けられ、被固定部に固定される固定部と、を有し、前記固定部は、前記保持部側に向く第1面と前記第1面とは反対側の第2面とを有する土台部と、前記土台部の前記第2面から前記保持部と離間する方向に延びる支軸と、前記支軸の先端に設けられ、前記被固定部に係止可能に形成された係止部と、前記土台部よりも弾性率の低い材料からなり、前記土台部の前記第2面から前記係止部側に突出する振動抑制部材と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のクランプ及びクランプ付ワイヤハーネスによれば、振動を減衰させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】一実施形態のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略構成図。
【
図2】一実施形態のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略断面図(
図1における2-2断面図)。
【
図4】一実施形態のクランプの一部を示す概略斜視図。
【
図6】変更例のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略断面図。
【
図7】変更例のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略断面図。
【
図9】変更例のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略断面図。
【
図10】変更例のクランプ付ワイヤハーネスを示す概略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、一実施形態について添付図面を参照して説明する。なお、添付図面は、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際とは異なる場合がある。
【0009】
図1に示すクランプ付ワイヤハーネス1は、ワイヤハーネス10と、1つ又は複数(ここでは、3つ)のクランプ40とを有している。
ワイヤハーネス10は、2個又は3個以上の電気機器(機器)を電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、ハイブリッド車や電気自動車等の車両の前部に設置されたインバータ11と、そのインバータ11よりも車両の後方に設置された高圧バッテリ12とを電気的に接続する。ワイヤハーネス10は、例えば、車両の床下等を通るように配索される。インバータ11は、車両走行の動力源となる車輪駆動用のモータ(図示略)と接続される。インバータ11は、高圧バッテリ12の直流電力から交流電力を生成し、その交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ12は、例えば、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0010】
ワイヤハーネス10は、1本又は複数本(ここでは、2本)の電線20と、電線20の両端部に取り付けられた一対のコネクタC1と、複数の電線20を一括して包囲する外装部材30とを有している。各電線20の一端部はコネクタC1を介してインバータ11と接続され、各電線20の他端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ12と接続されている。各電線20は、例えば、車両の前後方向に延びるように長尺状に形成されている。各電線20は、例えば、二次元状又は三次元状に曲げられるように形成されている。例えば、各電線20は、ワイヤハーネス10の配索経路に応じた所定形状に曲げられて形成されている。各電線20は、例えば、高電圧・大電流に対応可能な高圧電線である。各電線20は、例えば、自身に電磁シールド構造を有しないノンシールド電線であってもよいし、自身に電磁シールド構造を有するシールド電線であってもよい。外装部材30は、例えば、飛翔物や水滴から電線20を保護する。複数の電線20を収容した外装部材30は、クランプ40により車両の車体等に固定される。
【0011】
図2に示すように、各電線20は、導体よりなる芯線21と、芯線21の外周を被覆する絶縁被覆22とを有する被覆電線である。芯線21としては、例えば、複数の金属素線を撚り合わせてなる撚り線、内部が中実構造をなす柱状の1本の金属棒からなる柱状導体(単芯線やバスバ等)や内部が中空構造をなす筒状導体(パイプ導体)などを用いることができる。また、芯線21としては、撚り線、柱状導体や筒状導体を組み合わせて用いてもよい。芯線21の材料としては、例えば、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。芯線21は、例えば、押出成形によって形成されている。
【0012】
芯線21の長さ方向と直交する平面によって芯線21を切断した断面形状(つまり、横断面形状)は、任意の形状にすることができる。芯線21の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成されている。本実施形態の芯線21の横断面形状は、円形状に形成されている。
【0013】
絶縁被覆22は、例えば、芯線21の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。絶縁被覆22は、例えば、合成樹脂などの絶縁材料によって構成されている。絶縁被覆22は、例えば、芯線21に対する押出成形(押出被覆)によって形成することができる。
【0014】
外装部材30は、全体として長尺の筒状をなしている。外装部材30の内部空間30Xには、複数の電線20が挿通されている。複数の電線20は、例えば、内部空間30Xにおいて、車両上下方向に並んで配置されている。外装部材30は、複数の電線20の外周を全周に亘って包囲するように形成されている。外装部材30としては、例えば、金属製又は樹脂製のパイプや、樹脂製のプロテクタ、樹脂等からなり可撓性を有するコルゲートチューブやゴム製の防水カバー又はこれらを組み合わせて用いることができる。金属製のパイプの材料としては、銅系やアルミニウム系などの金属材料を用いることができる。樹脂製のプロテクタやコルゲートチューブの材料としては、例えば、導電性を有する樹脂材料や導電性を有さない樹脂材料を用いることができる。樹脂材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。本実施形態の外装部材30は、環状凹部と環状凸部とが長さ方向に沿って交互に連設された蛇腹構造を有するコルゲートチューブである。
【0015】
外装部材30の横断面形状は、任意の形状にすることができる。外装部材30の横断面形状は、例えば、円形状、半円状、多角形状、正方形状や扁平形状に形成されている。本実施形態の外装部材30の横断面形状は、円形状に形成されている。すなわち、本実施形態の外装部材30は、円筒状に形成されている。
【0016】
図1に示すように、複数のクランプ40は、ワイヤハーネス10の長さ方向において所定の間隔を空けて設けられている。各クランプ40は、外装部材30の外周面に取り付けられている。
【0017】
図2に示すように、各クランプ40は、ワイヤハーネス10を保持する保持部50と、被固定部である車体のパネル200に固定される固定部60とを有している。
保持部50は、全体として、外装部材30に外嵌可能な大きさの筒状(ここでは、円筒状)をなしている。保持部50は、互いに係止可能とされたロック部51と被ロック部52との係止を解除することにより、保持部50を開いた状態にすることができる。保持部50を開くことにより、保持部50の内側にワイヤハーネス10を嵌合することができる。また、クランプ40では、保持部50を閉じることにより、保持部50の内側にワイヤハーネス10を保持することができる。クランプ40では、ロック部51と被ロック部52とが係止することにより、保持部50が閉じた状態でロックされる。このように保持部50がロックされた状態では、保持部50が外装部材30の外周を全周に亘って包囲し、その部分に対して保持部50が所定の締め付け力を作用させることができるようになっている。このため、保持部50がロックされると、保持部50によってワイヤハーネス10(具体的には、外装部材30)が保持される。なお、保持部50がロックされた状態では、例えば、保持部50の内周面の少なくとも一部が、外装部材30の外周面に接触している。
【0018】
固定部60は、保持部50の外周面の一部に形成されている。固定部60は、例えば、保持部50の外周面のうちロック部51及び被ロック部52と離間した位置に設けられている。
図2に示した固定部60は、保持部50の外周面のうち車両上下方向(つまり、図中上下方向)の下部に位置する外周面に設けられている。
【0019】
固定部60は、土台部70と、支軸80と、支軸80の先端に形成された係止部81と、ばね部90と、振動抑制部材100とを有している。土台部70は、例えば、保持部50と一体に形成されている。支軸80は、例えば、土台部70と一体に形成されている。係止部81は、例えば、支軸80と一体に形成されている。本実施形態のクランプ40では、保持部50と土台部70と支軸80と係止部81が連続して一体に形成された単一部品になっている。例えば、保持部50と土台部70と支軸80と係止部81は一体成形した樹脂成形品である。これら保持部50と土台部70と支軸80と係止部81とは、例えば、互いに同じ材料からなる。保持部50、土台部70、支軸80及び係止部81の材料としては、例えば、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ABS樹脂などの合成樹脂を用いることができる。保持部50、土台部70、支軸80及び係止部81の材料としては、例えば、鉄系やアルミニウム系の金属材料を用いることができる。
【0020】
土台部70は、保持部50側を向く第1面70A(ここでは、上面)と、その第1面70Aとは反対側の第2面70B(ここでは、下面)とを有している。土台部70の第1面70Aの略中央部に保持部50が形成されている。土台部70の第2面70Bは、被固定部である車体のパネル200に対向している。
【0021】
土台部70は、例えば、円板状に形成されている。土台部70の平面形状の大きさは、例えば、係止部81の平面形状よりも大きく形成されている。ここで、本明細書において、「円板状」とは、平面形状が略円形で所定の厚さを有するものを指す。なお、「円板状」においては、直径に対する厚さの大小は問わない。また、部分的に凹部や凸部が形成されているものも「円板状」に含まれるものとする。また、本明細書において、「平面視」とは、対象物を土台部70の第1面70Aの法線方向(
図2の上下方向)から視ることを言い、「平面形状」とは、対象物を土台部70の第1面70Aの法線方向から視た形状のことを言う。
【0022】
土台部70の第2面70Bには、第1面70A側に向かって凹む溝部70Xが設けられている。溝部70Xは、その底面が土台部70の厚さ方向の中途に位置するように形成されている。溝部70Xの底面は、例えば、円弧状の断面を有している。例えば、溝部70Xの断面形状は半円状に形成されている。
【0023】
図3に示すように、溝部70Xは、例えば、環状に形成されている。溝部70Xは、例えば、第2面70Bの外周縁に沿って円環状(リング状)に形成されている。溝部70Xは、平面視において、係止部81の外周縁を全周に亘って囲むように、円環状に形成されている。
【0024】
図2に示すように、土台部70の第2面70Bの中央部には、支軸80が形成されている。支軸80は、その基端部が土台部70の第2面70Bに接続されている。支軸80の基端部は、例えば、土台部70と連続して一体に形成されている。支軸80は、土台部70の第2面70Bから保持部50と離間する方向に延びるように形成されている。支軸80は、例えば、保持部50の径方向に沿って延びるように柱状に形成されている。本実施形態の支軸80は、円柱状に形成されている。
【0025】
支軸80の先端部には、係止部81が形成されている。係止部81は、例えば、支軸80と連続して一体に形成されている。係止部81は、支軸80の先端から側方に突出するように形成されている。係止部81は、例えば、支軸80の先端の周方向全周から側方に突出するように形成されている。係止部81は、例えば、円錐状に形成されている。係止部81は、パネル200に形成された取付孔200Xに挿入及び係止可能に形成されている。具体的には、係止部81は、取付孔200Xに挿入可能に、且つ取付孔200Xに挿入後に取付孔200Xの周縁のパネル200に係止可能なように弾性変形可能に形成されている。なお、取付孔200Xは、例えば、平面視円形状に形成されている。
【0026】
係止部81は、支軸80の延出方向と直交する方向に最も広がった部分の幅、ここでは円錐の底面82の直径が取付孔200Xの開口径よりも大きく設定されている。係止部81は、底面82の直径が取付孔200Xの開口径以下となるように弾性変形可能に形成されている。
【0027】
係止部81を取付孔200Xに挿入させていくと、円錐の底面82の直径が小さくなるように係止部81が弾性変形しつつ取付孔200X内を進んでいく。そして、係止部81が取付孔200Xを通り抜けると、係止部81が元の形状に戻るように弾性復帰し、係止部81の底面82が取付孔200Xの周縁に係止される。これにより、クランプ40が車体のパネル200に固定され、クランプ40に保持されたワイヤハーネス10が車体に固定される。
【0028】
ばね部90は、支軸80の外周を包囲するように形成されている。ばね部90は、例えば、支軸80の外周を全周に亘って包囲するように形成されている。ばね部90は、例えば、支軸80の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。ばね部90は、例えば、支軸80の外周を支軸80の延出方向の全長に亘って包囲するように形成されている。すなわち、ばね部90は、土台部70の第2面70Bから係止部81まで支軸80の延出方向に延びるように形成されている。ばね部90は、例えば、土台部70の第2面70Bに接触するとともに、係止部81の底面82に接触している。ばね部90は、内部に支軸80を収容する筒状に形成されている。
【0029】
図4に示すように、本実施形態のばね部90は、円柱状の支軸80を内部に収容する円筒状に形成されている。すなわち、本実施形態のばね部90は、円筒ばねである。本実施形態のばね部90は、円柱状の貫通孔90Xを有している。貫通孔90Xには、支軸80が充填されている。
【0030】
ばね部90は、例えば、支軸80と一体的に形成されている。但し、ばね部90の材料としては、支軸80とは異なる材料が用いられる。ばね部90の材料としては、例えば、支軸80を構成する材料と弾性率の異なる材料を用いることができる。ばね部90の材料としては、例えば、支軸80を構成する材料よりも弾性率の低い材料を用いることができる。ばね部90の材料としては、例えば、支軸80を構成する材料よりも高粘弾性かつ軟質な粘弾性体を用いることができる。ばね部90の材料としては、例えば、ゴム材料や発泡材料を用いることができる。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。このようなばね部90は、例えば、二色成形によって支軸80と一体的に形成することができる。
【0031】
図2に示すように、振動抑制部材100は、土台部70の第2面70Bから係止部81側に向かって突出するように形成されている。振動抑制部材100は、例えば、パネル200の取付面200Aに対向するように形成されている。振動抑制部材100は、例えば、パネル200に向く先端面100Aが曲面状に形成されている。振動抑制部材100は、例えば、円形状の断面を有している。振動抑制部材100は、例えば、その一部が土台部70の溝部70Xに嵌合されている。例えば、振動抑制部材100の一部は、溝部70Xに圧入されている。例えば、振動抑制部材100は、断面視において、半円部分が溝部70Xに嵌合され、残りの半円部分が土台部70の第2面70Bからパネル200側に向かって突出するように形成されている。すなわち、振動抑制部材100のうち土台部70の第2面70Bから係止部81側に突出した部分が半円状の断面を有している。
【0032】
図3に示すように、振動抑制部材100は、例えば、環状に形成されている。振動抑制部材100は、例えば、土台部70の第2面70Bの外周縁に沿って円環状(リング状)に形成されている。例えば、振動抑制部材100は、平面視において、係止部81の外周縁を全周に亘って囲むように、円環状に形成されている。換言すると、振動抑制部材100は、係止部81の外形よりも大きい貫通穴100Xを有する円環状に形成されている。
【0033】
図2に示すように、振動抑制部材100は、土台部70の第2面70Bからの突出量が、土台部70の第2面70Bからの支軸80の突出量よりも短く設定されている。振動抑制部材100は、クランプ40がパネル200に固定されたときに、パネル200の取付面200Aに接触する。振動抑制部材100は、例えば、曲面状に形成された先端面100Aが取付面200Aに接触する。
【0034】
図5に示すように、振動抑制部材100は、例えば、土台部70と別体に形成されている。振動抑制部材100は、例えば、土台部70に対して後から取り付けられる。振動抑制部材100は、例えば、係止部81の先端部側(図中下方)から土台部70の溝部70Xに向かって挿入され、溝部70X内に圧入される。この際に、振動抑制部材100の貫通穴100X内に係止部81及び支軸80が挿通される。
【0035】
振動抑制部材100の材料としては、例えば、土台部70を構成する材料よりも高い衝撃吸収性を有する材料を用いることができる。振動抑制部材100の材料としては、例えば、土台部70を構成する材料よりも高粘弾性かつ軟質な粘弾性体を用いることができる。振動抑制部材100の材料としては、例えば、ばね部90と同じ材料であってもよいし、ばね部90と異なる材料であってもよい。振動抑制部材100の材料としては、例えば、ゴム材料や発泡材料を用いることができる。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0036】
次に、本実施形態の作用効果を説明する。
(1)支軸80の基端が接続される土台部70の第2面70Bに、その第2面70Bから係止部81側に突出する振動抑制部材100を設けるようにした。この構成によれば、支軸80の先端に形成された係止部81がパネル200に係止されたときに、土台部70よりも弾性率の低い振動抑制部材100をパネル200の取付面200Aに接触させることができる。ここで、車両走行時等に車体のパネル200に振動が発生した場合には、振動抑制部材100が弾性変形し、その振動抑制部材100の変形量及び変形速度によって振動エネルギーを吸収することができる。これにより、クランプ40からワイヤハーネス10に伝わる振動を減衰させることができる。この結果、振動に伴う電線20の断線やクランプ40の破損といった問題の発生を抑制することができる。
【0037】
(2)また、土台部70の第2面70Bに振動抑制部材100を設けるようにしたため、土台部70の第1面70A側の構造(例えば、保持部50の構造)が振動抑制部材100の存在によって制限されることがない。このため、振動抑制部材100の存在に関わらず、保持部50の構造を自由に設計することができる。これにより、例えばワイヤハーネス10の大きさや外形形状が変更になった場合であっても、その変更に容易に対応することができる。
【0038】
(3)支軸80よりも弾性率の低い材料からなるばね部90を、支軸80の外周を全周に亘って包囲するように形成した。この構成によれば、車体のパネル200に振動が発生した場合に、ばね部90が弾性変形することによって、クランプ40からワイヤハーネス10に伝わる衝撃を吸収することができる。また、支軸80がばね部90に包囲されているため、そのばね部90によって支軸80の変形量を抑えることができる。これらにより、パネル200等からクランプ40に振動が付与された場合であっても、支軸80が破損するといった問題の発生を抑制することができる。
【0039】
(4)ばね部90を、支軸80の外周を支軸80の延出方向の全長に亘って包囲するように形成した。この構成によれば、ばね部90によって、支軸80の全長に亘ってその支軸80の変形量を抑えることができる。このため、パネル200等からクランプ40に振動が付与された場合であっても、支軸80が破損するといった問題の発生を好適に抑制することができる。
【0040】
(5)支軸80を円柱状に形成し、ばね部90を円筒状に形成し、振動抑制部材100をばね部90の外周を囲む円環状に形成した。この構成によれば、円筒状のばね部90及び円環状の振動抑制部材100によって、どの方向から振動が付与された場合であっても、その振動を一様に吸収することができる。
【0041】
(6)土台部70の第2面70Bに形成された溝部70Xに振動抑制部材100の一部を嵌合した。この構成によれば、振動抑制部材100の一部を溝部70Xに嵌合することによって、振動抑制部材100を土台部70に取り付けることができる。このため、振動抑制部材100を土台部70と別体で形成した場合であっても、振動抑制部材100を容易に土台部70に取り付けることができる。
【0042】
(7)土台部70の平面形状を、係止部81の平面形状よりも大きく形成し、振動抑制部材100を、係止部81よりも平面形状の大きい貫通穴100Xを有する環状に形成した。この構成によれば、振動抑制部材100の貫通穴100X内に係止部81及び支軸80を挿通させることができるため、振動抑制部材100を土台部70と別体で形成した場合であっても、振動抑制部材100を土台部70に容易に取り付けることができる。
【0043】
(8)振動抑制部材100のうち土台部70の第2面70Bから係止部81側に突出した部分を断面視半円状に形成した。この構成によれば、振動抑制部材100のうち土台部70の第2面70Bから係止部81側に突出した部分を断面視矩形状に形成した場合に比べて、振動抑制部材100に座屈が発生することを好適に抑制できる。
【0044】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0045】
・上記実施形態では、溝部70Xを断面視半円状に形成したが、溝部70Xの形状は特に限定されない。
例えば
図6に示すように、土台部70の第2面70Bに、断面視矩形状の溝部70Yを形成するようにしてもよい。この場合には、溝部70Yに振動抑制部材110の一部が嵌合される。この振動抑制部材110は、例えば、平面視矩形状の断面を有する形状に形成されている。
図6に示した例では、振動抑制部材110のうち土台部70の第2面70Bよりも係止部81側に突出する部分が断面視半円状に形成されている。但し、振動抑制部材110のうち土台部70の第2面70Bよりも係止部81側に突出する部分を断面視矩形状に形成してもよい。すなわち、振動抑制部材110全体の断面形状を矩形状に形成するようにしてもよい。
【0046】
・上記実施形態では、溝部70X及び振動抑制部材100を円環状に形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、溝部70X及び振動抑制部材100を矩形の環状(枠状)に形成するようにしてもよい。
【0047】
・上記実施形態では、土台部70を平面視円形状に形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、土台部70を平面視矩形状に形成してもよい。
・上記実施形態では、溝部70X及び振動抑制部材100を環状に形成するようにしたが、これに限定されない。
【0048】
例えば
図7に示すように、振動抑制部材120を、複数の分割体121によって構成するようにしてもよい。複数の分割体121は、それぞれ独立して形成されており、土台部70の第2面70Bにおいて互いに離間した位置に設けられている。各分割体121は、例えば、柱状に形成されている。例えば、各分割体121は、円柱状に形成されている。
図7に示した各分割体121の係止部81側に向く先端部121Aは、半球状に形成されている。但し、各分割体121全体を円柱状に形成するようにしてもよい。
【0049】
また、例えば
図8に示すように、平面視矩形状に形成された土台部70の第2面70Bの四隅に溝部70Yを形成するようにしてもよい。4つの溝部70Yは、それぞれ独立して形成されており、土台部70の第2面70Bにおいて互いに離間した位置に設けられている。各溝部70Yには、分割体121が嵌合されている。
【0050】
このように複数の分割体121によって振動抑制部材120を構成する場合には、各分割体121を取り付ける際に、各分割体121が係止部81に干渉することを抑制できる。このため、例えば土台部70の平面形状を係止部81の平面形状よりも小さく形成した場合であっても、係止部81に干渉することなく、各分割体121を土台部70に取り付けることができる。
【0051】
・各分割体121の形状は特に限定されない。例えば、各分割体121を、球状又は半球状に形成するようにしてもよい。
・上記実施形態では、土台部70の第2面70Bに溝部70Xを形成し、その溝部70Xに振動抑制部材100の一部を嵌合させることにより、振動抑制部材100を土台部70に取り付けるようにしたが、これに限定されない。
【0052】
例えば
図9に示すように、溝部70Xの形成を省略してもよい。この場合には、例えば土台部70の第2面70Bに、接着剤等により振動抑制部材130を接着するようにしてもよい。
図9に示した振動抑制部材130は、断面視半円状に形成されており、平面部分が土台部70の第2面70Bに接着されている。
【0053】
図10に示すように、外装部材30の内部空間30Xにスペーサ140を設けるようにしてもよい。スペーサ140は、例えば、外装部材30の長さ方向においてクランプ40の保持部50によって包囲された部分に設けられている。スペーサ140は、電線20の外周面と外装部材30の内周面との間の空間を埋めるように形成されている。スペーサ140は、例えば、各電線20の外周面を全周に亘って密着状態で被覆している。スペーサ140は、例えば、外装部材30の内周面を全周に亘って密着状態で被覆している。このスペーサ140は、各電線20を保持する電線保持部として機能する。
【0054】
スペーサ140の材料としては、例えば、振動抑制部材100と同様の材料を用いることができる。例えば、スペーサ140の材料としては、ゴム材料や発泡材料を用いることができる。ゴム材料としては、例えば、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ニトリルゴム、ブチルゴム、エチレンプロピレンゴムなどを用いることができる。
【0055】
以上説明したスペーサ140を設けたことによって、外装部材30内での電線20のばたつきを抑制することができる。これにより、例えばパネル200側からクランプ40を通じてワイヤハーネス10に振動が伝達された場合であっても、その振動に伴って電線20が振動することを抑制できる。このため、振動に伴って電線20が断線することを好適に抑制できる。
【0056】
・
図10に示した変更例において、スペーサ140を、外装部材30の長さ方向の略全長に亘って設けるようにしてもよい。
・
図10に示した変更例において、スペーサ140の外周面と外装部材30の内周面との間に隙間が存在していてもよい。
【0057】
・
図10に示した変更例において、スペーサ140の内周面と電線20の外周面との間に隙間が存在していてもよい。
・上記実施形態では、ばね部90を支軸80と一体的に形成するようにしたが、これに限定されない。例えば、ばね部90を、支軸80とは別部品で構成するようにしてもよい。この場合には、例えば、一対の半割筒部によってばね部90を構成し、それら一対の半割筒部を支軸80を間に挟んだ状態で合体させることにより、支軸80の外周を包囲するばね部90を形成するようにしてもよい。
【0058】
・上記実施形態における係止部81の形状は特に限定されない。係止部81は、パネル200の取付孔200Xに挿入及び係止可能に形成されていれば、その形状は特に限定されない。
【0059】
・上記実施形態では、支軸80を円柱状に形成したが、これに限定されない。例えば、支軸80を四角柱状や三角柱状などの角柱状に形成してもよい。この場合には、ばね部90は角筒状に形成される。
【0060】
・上記実施形態におけるばね部90を省略してもよい。
・上記実施形態における保持部50の形状は特に限定されない。保持部50は、ワイヤハーネス10を保持可能な形状であれば、その形状は特に限定されない。
【0061】
・上記実施形態では、保持部50と土台部70とを一体に形成したが、例えば、保持部50と土台部70とを別体に形成するようにしてもよい。
・上記実施形態のワイヤハーネス10に取り付けられる複数のクランプ40は、全て同じ構造を有する必要はない。例えば、3つのクランプ40のうち1つのみが振動抑制部材100を有する構造を採用し、残りの2つが振動抑制部材100を有さない構造を採用してもよい。
【0062】
・上記実施形態では特に言及していないが、外装部材30の内部に電磁シールド部材を設ける構成を採用してもよい。電磁シールド部材は、例えば、複数の電線20を一括して包囲するように設けられる。電磁シールド部材は、例えば、外装部材30の内周面と電線20の外周面との間に設けられる。電磁シールド部材としては、例えば、可撓性を有する編組線や金属箔を用いることができる。また、編組線としては、複数の金属素線が編成された編組線や、金属素線と樹脂素線とを組み合わせて編成された編組線を用いることができる。樹脂素線としては、例えば、パラ系アラミド繊維等の絶縁性及び耐剪断性に優れた強化繊維を用いることができる。
【0063】
・上記実施形態では、外装部材30を略真円筒状に形成したが、これに限定されず、外装部材30を楕円筒状や角筒状に形成してもよい。
・上記実施形態では、外装部材30の内部に挿通される電線20が2本であったが、特に限定されるものではなく、車両の仕様に応じて電線20の本数は変更することができる。例えば、外装部材30の内部に挿通される電線は、1本であってもよいし、3本以上であってもよい。例えば、外装部材30に挿通される電線として、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えば、ランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を追加した構成としてもよい。また、低圧電線のみであってもよい。
【0064】
・上記実施形態における外装部材30を省略してもよい。
・車両におけるインバータ11と高圧バッテリ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。
【0065】
・上記実施形態では、ワイヤハーネス10によって接続される電気機器としてインバータ11及び高圧バッテリ12を採用したが、これに限定されない。例えば、インバータ11と車輪駆動用のモータとを接続する電線に採用してもよい。すなわち、車両に搭載される電気機器間を電気的に接続するものであれば適用可能である。
【符号の説明】
【0066】
1…クランプ付ワイヤハーネス、10…ワイヤハーネス、20…電線、30…外装部材、30X…内部空間、40…クランプ、50…保持部、60…固定部、70…土台部、70X,70Y…溝部、80…支軸、81…係止部、90…ばね部、100,110,120,130…振動抑制部材、100X…貫通穴、121…分割体、140…スペーサ。