(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】マルチレベル電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/483 20070101AFI20230613BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20230613BHJP
【FI】
H02M7/483
H02M7/48 K
(21)【出願番号】P 2022123686
(22)【出願日】2022-08-03
(62)【分割の表示】P 2019050594の分割
【原出願日】2019-03-19
【審査請求日】2022-08-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000006105
【氏名又は名称】株式会社明電舎
(74)【代理人】
【識別番号】100086232
【氏名又は名称】小林 博通
(74)【代理人】
【識別番号】100092613
【氏名又は名称】富岡 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100104938
【氏名又は名称】鵜澤 英久
(74)【代理人】
【識別番号】100210240
【氏名又は名称】太田 友幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 勇
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-55956(JP,A)
【文献】特開2010-93978(JP,A)
【文献】特開2003-33044(JP,A)
【文献】特開2009-50080(JP,A)
【文献】特開2018-196250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0050537(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直列接続された第1,第2直流リンクキャパシタと、
第1~第4半導体スイッチが当該第1~第4の順に直列接続された半導体直列回路と、
第1~第4スナバコンデンサが当該第1~第4の順に直列接続されたコンデンサ直列回路と、
第1,第2スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第1スナバダイオードと、
第2,第3スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第2,第3スナバダイオードの直列回路と、
第3,第4スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第4スナバダイオードと、
を備え、
半導体直列回路の一端側に位置する第1半導体スイッチの一端が、第1直流リンクキャパシタの正極端に接続され、当該半導体直列回路の他端側に位置する第4半導体スイッチの一端が、第2直流リンクキャパシタの負極端に接続され、
コンデンサ直列回路の一端側に位置する第1スナバコンデンサの一端が、第1直流リンクキャパシタの正極端と第1半導体スイッチとの共通接続点に接続され、当該コンデンサ直列回路の他端側に位置する第4スナバコンデンサの一端が、第2直流リンクキャパシタの負極端と第4半導体スイッチとの共通接続点に接続され、
第1スナバダイオードは、アノードが第1スナバコンデンサに接続され、カソードが第1,第2半導体スイッチの共通接続点に接続され、
第2スナバダイオードは、アノードが第2スナバコンデンサに接続され、カソードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、
第3スナバダイオードは、アノードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが、第3スナバコンデンサに接続され、
第4スナバダイオードは、アノードが第3,第4半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが第4スナバコンデンサに接続され、
フライングキャパシタの正極端が、第2スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に接続され、当該フライングキャパシタの負極端が、第3スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に接続され、
第1スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に、第1抵抗の一端が接続され、当該第1抵抗の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタの共通接続点に接続され、
第2スナバコンデンサと第2スナバダイオードとの共通接続点に、第2抵抗の一端が接続され、当該第2抵抗の他端が、フライングキャパシタの負極端,第3スナバコンデンサ,第4スナバダイオードの共通接続点に接続され、
第3スナバコンデンサと第3スナバダイオードとの共通接続点に、第3抵抗の一端が接続され、当該第3抵抗の他端が、フライングキャパシタの正極端,第2スナバコンデンサ,第1スナバダイオードの共通接続点に接続され、
第4スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に、第4抵抗の一端が接続され、当該第4抵抗の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタの共通接続点に接続されており、
前記第1~第4半導体スイッチそれぞれが、前記フライングキャパシタを含んだ回路に構成されて、スナバ回路が設けられた構成となっている、
ことを特徴とするマルチレベル電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多相のマルチレベル電力変換装置に係り、特に、マルチレベル電力変換装置に備えられたスナバ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の分野で適用されている電力変換装置において、例えば、使用する半導体スイッチング素子等の耐圧を高耐圧化せずに回路自体の高圧化を図った構成としては、半導体スイッチング素子を多数直列に接続したマルチレベル電力変換装置が検討されている。
【0003】
従来のマルチレベル電力変換装置としては、例えば
図4に示すように、複数の相モジュール2と1つの共通モジュール1より構成された5レベル電力変換装置が挙げられる。
図4の共通モジュール1は、直列接続された2つの基本セルCell1,Cell2を有し、各基本セルCell1,Cell2は4つの半導体スイッチ(IGBT)とフライングキャパシタにより構成されている。
【0004】
図4の5レベル電力変換装置が3相の場合は、3台の相モジュール2が共通モジュール1の出力に並列接続される。この構成は、特許文献1に開示されている。なお、
図4の第1,第2ダイオードD1,D2は第9,第10スイッチングデバイスS9,S10(IGBT)に置き換えてもよい。この場合、第9スイッチングデバイスS9のコレクタ端子を第3スイッチングデバイスS3と第4スイッチングデバイスS4との共通接続点に接続し、第10スイッチングデバイスS10のエミッタ端子を第5スイッチングデバイスS5と第6スイッチングデバイスS6との共通接続点に接続する。さらに、
図4内の各半導体スイッチ,スイッチングデバイス(またはダイオード)は、複数の半導体スイッチ,スイッチングデバイス(またはダイオード)を直列接続または並列接続する構成としてもよい。
【0005】
基本セルCell1,Cell2は、
図5に示すような二種類のスイッチングパターン(MODE1,MODE2)を有する。電流経路に応じて2種類のスイッチングパターン(MODE1,MODE2)を選択することで第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2の充電または放電を選択し、第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2の電圧を制御することができる。ここで、
図5中(および後述の各図中)の丸印は、導通中の半導体スイッチ,スイッチングデバイスを示す。
【0006】
IGBTにはオン状態からオフ状態に移行するまでに時間がかかることから基本セルCell1,Cell2の2つのMODE(スイッチングパターン)の移行時には一度すべての半導体スイッチをオフしてからもう一つのスイッチングパターンに移行する必要がある。このすべての半導体スイッチがオフの状態(
図5(a))をデッドタイムと呼ぶ。デッドタイムはフライングキャパシタの直流短絡を防ぐために設ける。
【0007】
基本セルCell1,Cell2が相モジュール2を介して交流出力端子に電流を流していると、デッドタイム中に半導体スイッチ,スイッチングデバイスに並列接続されているダイオードが導通して電流が流れる現象が起きる。これを転流と定義する。この転流現象により、
図6(b)のような過電圧(2E)が第1スイッチングデバイスS1に印加される問題が発生する。
【0008】
第1,第2直流リンクキャパシタC
DC1,C
DC2を2Eの電圧に制御し、第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2をEの電圧に制御すると、転流現象が起きていないときには共通モジュール1と相モジュール2を接続する接点の電位は、
図6(a)に示すように常に2E,E,0,-E,-2Eに保たれる(電位の基準点はNP端子(第1,第2直流リンクキャパシタC
DC1,C
DC2の共通接続点)とする)。
【0009】
ここで、
図6(b)に示すように、第2半導体スイッチSf2と第4半導体スイッチSf4のダイオードに電流が流れる転流現象が発生すると、第2半導体スイッチSf2→第4半導体スイッチSf4→第2スイッチングデバイスS2→第3スイッチングデバイスS3→第4スイッチングデバイスS4→交流出力端子を介して電流が流れる。その結果、共通モジュール1の出力電位が2E,0,0,-E,-2Eとなり、第1スイッチングデバイスS1に2Eが印加されてしまう。
【0010】
同様に上下対称の回路構成であることから、
図7に示すように第8スイッチングデバイスS8に2Eが印加される現象も起きる。第1,第8スイッチングデバイスS1,S8に2Eが印加されることにより、以下の(1),(2)の問題が生じる。
【0011】
(1)第1,第8スイッチングデバイスS1,S8に過電圧が印加されるため、第1,第8スイッチングデバイスS1,S8が過電圧損傷等を引き起こすおそれがある。これにより、5レベル電力変換装置の信頼性が低下する可能性がある。
【0012】
(2)交流出力端子の電位が+Eまたは-Eのときに上記の基本セルCell1,Cell2のスイッチングパターンが移行する場合、交流出力端子の電位が不変(+Eまたは-E)であることが望ましい。しかし、
図6(b)に示す転流期間中、交流出力端子の電位は0となる。これにより、電力変換装置の出力電圧の精度が劣化する可能性がある。
【0013】
そこで、上記(1),(2)の問題点を解消するために、マルチレベル電力変換装置にスナバ回路を設けた構成が検討されている。
図8にスナバ回路を設けた5レベル電力変換装置の構成例を示す。
図8中の破線は電流経路を表す。
【0014】
図8に示すようにスナバ回路として第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点と第2半導体スイッチSf2の一端(つまりNP端子)との間、および、第5半導体スイッチSf5の一端(つまりNP端子)と第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点の間に、第1,第2スナバコンデンサCf1、Cf2を接続する。
【0015】
これにより、共通モジュール1のデッドタイム時においても電流は第1,第2スナバコンデンサCf1、Cf2を通るようになる。これは第1スナバコンデンサCf1が充電されている場合、第1スナバコンデンサCf1の上側の端子の電位はNP端子の電位よりも高くなるので、第2半導体スイッチSf2と第4半導体スイッチSf4のダイオードが導通しなくなるためである。したがって、
図6、
図7のような過電圧現象を抑制することができる。
【0016】
また、第1,第2スナバコンデンサCf1、Cf2の電圧は第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2と接続することで一定に保つことができる。
【0017】
図9に第1スナバコンデンサCf1の電圧の充電・放電方法を示す。第2,第3半導体スイッチSf2,Sf3をオンし、第1スナバコンデンサCf1を第1フライングキャパシタFC1と接続することで、第1フライングキャパシタFC1と同じ電圧に制御可能である。第2スナバコンデンサCf2の充電・放電方法も同様である。
【0018】
基本セルCell,Cell2の2種類のスイッチングパターン(MODE1,MODE2)のいずれにおいても、第1スナバコンデンサCf1の上側の端子の電位は+E,第2スナバコンデンサCf2の下側の端子の電位は-Eに保たれている。5レベル電力変換装置の運転中、基本セルCell1,Cell2はデッドタイム期間を除く大半の期間において上記2種類のスイッチングパターン(MODE1,MODE2)のいずれかを選択しているため、第1,第2スナバコンデンサCf1,Cf2の静電容量を第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2よりも十分小さくすることで、第1,第2スナバコンデンサCf1、Cf2の電圧を+Eまたは-Eに制御することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
図8に示したような回路構成(以下、単に従来構成と適宜称する)では共通モジュール1の転流時に生じる過電圧を防ぐことはできるが、特定経路(例えば第1直流リンクキャパシタC
DC1の正極側、および、第2直流リンクキャパシタC
DC2の負極側の経路)上の配線インダクタンスに起因するサージ電圧を防ぐことはできない。
【0021】
また、従来構成のスナバ回路は、主に相モジュール2を想定(例えば第1スイッチングデバイスS1等が電流iをターンオフした際に発生し得るサージ電圧L*di/dtを想定)したものとなっている。
【0022】
そこで、フライングキャパシタを含んだ回路(例えば、共通モジュール1の各Cell1,Cell2)においても、スナバ回路を適用して、配線インダクタンスに起因してスイッチングデバイスのターンオフ時に発生するサージ電圧を抑制することが考えられるが、具体的な構成については出現していない。
【0023】
以上示したようなことから、マルチレベル電力変換装置において、配線インダクタンスに起因してスイッチングデバイスのターンオフ時に発生し得るサージ電圧を抑制することにより、スイッチングデバイスの破損を抑制し、装置の信頼性を向上させることが課題となる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、前記従来の問題に鑑み、案出されたもので、その一態様は、直列接続された第1,第2直流リンクキャパシタと、第1~第4半導体スイッチが当該第1~第4の順に直列接続された半導体直列回路と、第1~第4スナバコンデンサが当該第1~第4の順に直列接続されたコンデンサ直列回路と、第1,第2スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第1スナバダイオードと、第2,第3スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第2,第3スナバダイオードの直列回路と、第3,第4スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第4スナバダイオードと、を備えたマルチレベル電力変換装置である。
【0025】
当該一態様によるマルチレベル電力変換装置では、半導体直列回路の一端側に位置する第1半導体スイッチの一端が、第1直流リンクキャパシタの正極端に接続され、当該半導体直列回路の他端側に位置する第4半導体スイッチの一端が、第2直流リンクキャパシタの負極端に接続されている
また、コンデンサ直列回路の一端側に位置する第1スナバコンデンサの一端が、第1直流リンクキャパシタの正極端と第1半導体スイッチとの共通接続点に接続され、当該コンデンサ直列回路の他端側に位置する第4スナバコンデンサの一端が、第2直流リンクキャパシタの負極端と第4半導体スイッチとの共通接続点に接続されている。
【0026】
また、第1スナバダイオードは、アノードが第1スナバコンデンサに接続され、カソードが第1,第2半導体スイッチの共通接続点に接続され、第2スナバダイオードは、アノードが第2スナバコンデンサに接続され、カソードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、第3スナバダイオードは、アノードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが第3スナバコンデンサに接続され、第4スナバダイオードは、アノードが第3,第4半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが第4スナバコンデンサに接続されている。
【0027】
また、フライングキャパシタの正極端が、第2スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に接続され、当該フライングキャパシタの負極端が、第3スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に接続されている。
【0028】
そして、第1スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に、第1抵抗の一端が接続され、当該第1抵抗の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタの共通接続点に接続され、第2スナバコンデンサと第2スナバダイオードとの共通接続点に、第2抵抗の一端が接続され、当該第2抵抗の他端が、フライングキャパシタの負極端,第3スナバコンデンサ,第4スナバダイオードの共通接続点に接続され、第3スナバコンデンサと第3スナバダイオードとの共通接続点に、第3抵抗の一端が接続され、当該第3抵抗の他端が、フライングキャパシタの正極端,第2スナバコンデンサ,第1スナバダイオードの共通接続点に接続され、第4スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に、第4抵抗の一端が接続され、当該第4抵抗の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタの共通接続点に接続されている、ことを特徴とするものである。
【0029】
他の態様においては、直流リンクキャパシタと、第1~第4半導体スイッチが当該第1~第4の順に直列接続された半導体直列回路と、第1~第4スナバコンデンサが当該第1~第4の順に直列接続されたコンデンサ直列回路と、第1,第2スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第1スナバダイオードと、第2,第3スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第2,第3スナバダイオードの直列回路と、第3,第4スナバコンデンサの両者間に挿入接続された第4スナバダイオードと、を備えたマルチレベル電力変換装置である。
【0030】
当該他の態様によるマルチレベル電力変換装置では、半導体直列回路の一端側に位置する第1半導体スイッチの一端が、直流リンクキャパシタの正極端に接続され、当該半導体直列回路の他端側に位置する第4半導体スイッチの一端が、直流リンクキャパシタの負極端に接続されている。
【0031】
また、コンデンサ直列回路の一端側に位置する第1スナバコンデンサの一端が、直流リンクキャパシタの正極端と第1半導体スイッチとの共通接続点に接続され、当該コンデンサ直列回路の他端側に位置する第4スナバコンデンサの一端が、直流リンクキャパシタの負極端と第4半導体スイッチとの共通接続点に接続されている。
【0032】
また、第1スナバダイオードは、アノードが第1スナバコンデンサに接続され、カソードが第1,第2半導体スイッチの共通接続点に接続され、第2スナバダイオードは、アノードが第2スナバコンデンサに接続され、カソードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、第3スナバダイオードは、アノードが第2,第3半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが第3スナバコンデンサに接続され、第4スナバダイオードは、アノードが第3,第4半導体スイッチの共通接続点に接続され、カソードが第4スナバコンデンサに接続されている。
【0033】
また、フライングキャパシタの正極端が、第2スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に接続され、フライングキャパシタの負極端が、第3スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に接続されている。
【0034】
そして、第1スナバコンデンサと第1スナバダイオードとの共通接続点に、第1抵抗の一端が接続され、当該第1抵抗の他端が、直流リンクキャパシタの負極端と第4スナバコンデンサとの共通接続点に接続され、第2スナバコンデンサと第2スナバダイオードとの共通接続点に、第2抵抗の一端が接続され、当該第2抵抗の他端が、フライングキャパシタの負極端,第3スナバコンデンサ,第4スナバダイオードの共通接続点に接続され、第3スナバコンデンサと第3スナバダイオードとの共通接続点に、第3抵抗の一端が接続され、当該第3抵抗の他端が、フライングキャパシタの正極端,第2スナバコンデンサ,第1スナバダイオードの共通接続点に接続され、第4スナバコンデンサと第4スナバダイオードとの共通接続点に、第4抵抗の一端が接続され、当該第4抵抗の他端が、直流リンクキャパシタの正極端と第1スナバコンデンサとの共通接続点に接続されている、ことを特徴とするものである。
【0035】
他の態様においては、第1スナバコンデンサ,第1スナバダイオード,第1抵抗の共通接続点に、第1アバランシェ素子のアノードが接続され、当該第1アバランシェ素子のカソードが、直流リンクキャパシタの正極端と第1スナバコンデンサとの共通接続点に接続され、第2スナバコンデンサ,第2スナバダイオード,第2抵抗の共通接続点に、第2アバランシェ素子のアノードが接続され、当該第2アバランシェ素子のカソードが、フライングキャパシタの正極端,第2スナバコンデンサ,第1スナバダイオードの共通接続点に接続され、フライングキャパシタの負極端,第3スナバコンデンサ,第4スナバダイオードの共通接続点に、第3アバランシェ素子のアノードが接続され、当該第3アバランシェ素子のカソードが、第3スナバコンデンサ,第3スナバダイオード,第3抵抗の共通接続点に接続され、直流リンクキャパシタの負極端と第4スナバコンデンサとの共通接続点に、第4アバランシェ素子のアノードが接続され、当該第4アバランシェ素子のカソードが、第4スナバコンデンサ,第4スナバダイオード,第4抵抗の共通接続点に接続されている、ことを特徴しても良い。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、マルチレベル電力変換装置において、配線インダクタンスに起因してスイッチングデバイスのターンオフ時に発生し得るサージ電圧を抑制することにより、スイッチングデバイスの破損を抑制し、装置の信頼性の向上に貢献可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】実施例1によるマルチレベル電力変換装置を示す回路構成図。
【
図2】実施例2によるマルチレベル電力変換装置を示す回路構成図。
【
図3】実施例3によるマルチレベル電力変換装置を示す回路構成図。
【
図4】従来のマルチレベル電力変換装置の一例を示す回路構成図。
【
図10】配線インダクタンスに起因するサージ電圧発生を示す図。
【
図11】参考例1によるマルチレベル電力変換装置を示す回路構成図。
【
図12】参考例1によるマルチレベル電力変換装置の動作例(放電時)を示す図。
【
図13】参考例1によるマルチレベル電力変換装置の動作例を示す図。
【
図14】参考例2によるマルチレベル電力変換装置を示す回路構成図。
【
図15】参考例2によるマルチレベル電力変換装置のスイッチングパターンを示す図。
【
図16】参考例2によるマルチレベル電力変換装置の配線インダクタンスに起因するサージ電圧発生を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0038】
本発明の実施形態によるマルチレベル電力変換装置は、フライングキャパシタを含んだ回路を有したものであって、単に従来構成に示すようなスナバ回路を適用するものとは、全く異なるものである。
【0039】
すなわち、本実施形態によるマルチレベル電力変換装置では、フライングキャパシタを含んだ回路に構成されている各半導体スイッチに対し、スナバコンデンサ,スナバダイオード,抵抗を有したスナバ回路を、それぞれ設けた構成である。
【0040】
このような構成のスナバ回路を、フライングキャパシタを含んだ回路に適用することにより、単に従来構成のスナバ回路を適用した場合と比較して、配線インダクタンスによる影響を小さくすることができる。
【0041】
これにより、配線インダクタンスに起因してスイッチングデバイスのターンオフ時に発生し得るサージ電圧を抑制することにより、スイッチングデバイスの破損を抑制し、装置の信頼性の向上に貢献可能となる。
【0042】
本実施形態のマルチレベル電力変換装置は、前述のようにスナバコンデンサ,スナバダイオード,抵抗を有したスナバ回路を、フライングキャパシタを含んだ回路に適用した構成であれば良く、種々の分野(例えばマルチレベル電力変換装置技術,スナバ回路技術,フライングキャパシタ技術等の分野)の技術常識を適宜適用して設計することが可能であり、その一例として後述の実施例1~3が挙げられる。
【0043】
なお、
図4~
図10に示すものと同様のものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0044】
≪参考例1≫
まず、
図8に示した従来構成に着目すると、以下に示すことが言える。
図8の従来構成の場合、共通モジュール1の転流時に生じる過電圧を防ぐことはできるが、特定経路(第1直流リンクキャパシタC
DC1の正極側、および、第2直流リンクキャパシタC
DC2の負極側の経路)上の配線インダクタンスに起因するサージ電圧を防ぐことはできない。
【0045】
図10にその例を示す。
図10中の破線の丸で囲んだ半導体スイッチ,スイッチングデバイスは導通している。また、
図10の電流経路に配線インダクタンスLが存在する。よって、相モジュール2の第1スイッチングデバイスS1が電流iをターンオフした際に配線インダクタンスLのインダクタンス値Lに比例したサージ電圧L*di/dtが第1スイッチングデバイスS1に発生する。
【0046】
このとき、第1スイッチングデバイスS1に印加される電圧は、第1,第2直流リンクキャパシタCDC1,CDC2の電圧合計値が2E,第1,第2フライングキャパシタFC1,FC2の電圧合計値がEとすると、E+Ldi/dtとなる。インダクタンス値Lが大きい場合、第1スイッチングデバイスS1の印加電圧が大きくなるため第1スイッチングデバイスS1の過電圧破損につながる可能性があった。
【0047】
そこで、例えば
図11に示すようにマルチレベル電力変換装置を構成することが考えられる。
図11では、各相共通の共通モジュール1と、1相以上の相モジュール2と、各相共通のスナバ回路3と、を備え、直流-交流変換、または、交流-直流変換を行えるように構成されている。なお、
図1では、簡略化して相モジュール2を1相分のみ示している。
【0048】
共通モジュール1は、直列接続された第1,第2直流リンクキャパシタCDC1,CDC2を有している。第1直流リンクキャパシタCDC1の正極端には、第1半導体スイッチSf1の一端が接続されている。第1直流リンクキャパシタCDC1の負極端には、第2半導体スイッチSf2の一端が接続されている。第1半導体スイッチSf1の他端と第2半導体スイッチSf2の他端との間には、第1フライングキャパシタFC1が接続されている。
【0049】
第1半導体スイッチSf1と第1フライングキャパシタFC1の共通接続点と第2半導体スイッチSf2と第1フライングキャパシタFC1の共通接続点との間には、第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4が直列接続されている。
【0050】
第2直流リンクキャパシタCDC2の正極端には、第5半導体スイッチSf5の一端が接続されている。第2直流リンクキャパシタCDC2の負極端には、第6半導体スイッチSf6の一端が接続されている。第5半導体スイッチSf5の他端と第6半導体スイッチSf6の他端との間には、第2フライングキャパシタFC2が接続されている。
【0051】
第5半導体スイッチSf5と第2フライングキャパシタFC2の共通接続点と第6半導体スイッチSf6と第2フライングキャパシタFC2の共通接続点との間には、第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8が直列接続されている。
【0052】
相モジュール2は、第1半導体スイッチSf1の一端と第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点との間には、第1,第2スイッチングデバイスS1,S2が直列接続されている。
【0053】
第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点と第6半導体スイッチSf6の一端との間には、第7,第8スイッチングデバイスS7,S8が直列接続されている。第1,第2スイッチングデバイスS1,S2の共通接続点と、第7,第8スイッチングデバイスS7,S8の共通接続点との間には、第3,第4,第5,第6スイッチングデバイスS3,S4,S5,S6が直列接続されている。
【0054】
前記第3,第4スイッチングデバイスS3,S4の共通接続点と第5,第6スイッチングデバイスS5,S6の共通接続点との間には、第1,第2ダイオードD1,D2が直列接続されている。なお、この第1,第2ダイオードD1,D2は、第9,第10スイッチングデバイス(IGBT等)に置き換えても良い。
【0055】
スナバ回路3は、第1半導体スイッチSf1の一端と第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点との間には、第1スナバコンデンサCf1が接続されている。第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点と第2半導体スイッチSf2の一端との間には、第2スナバコンデンサCf2が接続されている。
【0056】
第5半導体スイッチSf5の一端と第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点との間には、第3スナバコンデンサCf3が接続されている。第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点と第6半導体スイッチSf6の一端との間には、第4スナバコンデンサCf4が接続されている。
【0057】
また、前記第1~第4スナバコンデンサCf1~Cf4には、第1~第4スナバダイオードDf1~Df4がそれぞれ直列接続されている。
【0058】
図11の場合、第1スナバダイオードDf1は、アノードが第1スナバコンデンサCf1に接続され、カソードが第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点に接続されている。第2スナバダイオードDf2は、アノードが第3,第4半導体スイッチSf3,Sf4の共通接続点に接続され、カソードが第2スナバコンデンサCf2に接続されている。
【0059】
第3スナバダイオードDf3は、アノードが第3スナバコンデンサCf3に接続され、カソードが第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点に接続されている。第4スナバダイオードDf4は、アノードが第7,第8半導体スイッチSf7,Sf8の共通接続点に接続され、カソードが第4スナバコンデンサCf4に接続されている。
【0060】
前記のように第1~第4スナバコンデンサCf1~Cf4それぞれに第1~第4スナバダイオードDf1~Df4を直列接続したことにより、第1,第2ダイオードDf1,Df2の直列回路、および、第3,第4ダイオードDf3,Df4の直列回路が構成され、当該各直列回路には、第5,第6抵抗Rf5,Rf6がそれぞれ並列接続されている。
【0061】
図11に示した電力変換装置のスナバ回路3の放電経路は、
図12に示すとおりとなる。まず、第1,第2直流リンクキャパシタC
DC1,C
DC2の電圧合計値2Eよりも第1,第2スナバコンデンサCf1,Cf2の電圧合計値が高くなると、第1,第2スナバコンデンサCf1,Cf2の電圧は第5抵抗Rf5を介して放電される。第3,第4スナバコンデンサCf3,Cf4も同様にして第6抵抗R6で放電される。そして、第1,第2スナバコンデンサCf1,Cf2の電圧合計値が2Eまで低下すると放電動作が終了することとなる。
【0062】
図13は、第1スイッチングデバイスS1をターンオフした場合の動作例を示すものである。第1スナバコンデンサCf1と第1ダイオードD1,第4スナバコンデンサCf4と第4ダイオードD4を第1,第8スイッチングデバイスS1,S8の一端にも接続することで相モジュール2の第1,第8スイッチングデバイスS1,S8に印加されるサージ電圧Ldi/dtを吸収することができる。
【0063】
配線インダクタンスLに流れていた電流は、第1スイッチングデバイスS1のターンオフ直後に第1スナバコンデンサCf1→第1スナバダイオードDf1→第3半導体スイッチSf3→第1半導体スイッチSf1を通って流れ続ける。よって、配線インダクタンスLによるサージ電圧Ldi/dt分のエネルギーをスナバコンデンサCf1が吸収するため、第1スイッチングデバイスS1に印加されるサージ電圧を低減することが可能となる。第8スイッチングデバイスS8をターンオフした場合での動作も同様である。
【0064】
ゆえに、
図11に示したような電力変換装置によれば、従来装置と比較して、以下に示すことが言える。すなわち、配線インダクタンスに起因して、スイッチングデバイスのターンオフ時に発生し得るサージ電圧を抑制することができる。これにより、スイッチングデバイスの過電圧破損を低減できるため、電力変換装置の信頼性の向上に貢献可能となる。
【0065】
≪参考例2≫
参考例1に示した電力変換装置において、フライングキャパシタを有した回路部に着目すると、
図14に示すような3レベル電力変換装置の構成が挙げられる。
【0066】
図14の電力変換装置では、一個のフライングキャパシタFCと4つの半導体スイッチSa~Sd(IGBTなど)により1アームが構成されており、直流リンクキャパシタCdcの電圧をVdc,フライングキャパシタFCの電圧をVdc/2に制御して動作する構成となっている。
【0067】
図14において、第1~第4半導体スイッチSa~Sdは直列接続されており、当該直列一端側に位置する第1半導体スイッチSaの一端が、直流リンクキャパシタCdcの正極端に接続され,当該直列他端側に位置する第4半導体スイッチSdの一端が、直流リンクキャパシタCdcの負極端に接続されている。
【0068】
第1,第2半導体スイッチSa,Sbの共通接続点と、第3,第4半導体スイッチSc,Sdの共通接続点と、の間にはフライングキャパシタFCが接続されている。第2,第3半導体スイッチSb,Scの共通接続点は、交流出力端子となる。
【0069】
図14の電力変換装置の場合、第1~第4半導体スイッチSa~Sdを適宜導通させることにより、
図15に示すような4種類のスイッチングパターンを適宜選択し、3レベルの電圧を出力することができる。したがって、流れる相電流I1の方向に応じてスイッチングパターンを選択することにより、フライングキャパシタFCの充電または放電を選択し、当該フライングキャパシタFCの電圧を制御することができる。ここで、
図15中の「ON」は、導通中の半導体スイッチを示す。
【0070】
図14の電力変換装置において、参考例1に示したスナバ回路3を単に適用すると、例えば
図16に示したような構成となる。
【0071】
図16の電力変換装置の場合、2つの半導体スイッチに対して1つのスナバ回路が接続されているに等しい構成となっている。すなわち、半導体スイッチSa~Sdごとにはスナバ回路が接続されていないため、例えば2素子分の配線インダクタンス(例えば
図16中のL)によるサージ電圧が発生し得る。
【0072】
例えば
図14の経路k1に配線インダクタンスがある場合、第1,第2半導体スイッチSa,Sbのサージ電圧が大きくなり、経路k2に配線インダクタンスがある場合には、第3,第4半導体スイッチSc,Sdのサージ電圧が大きくなり得る。これにより、各半導体スイッチSa~Sdにおいては、素子の耐圧を超えて破損等に至る可能性がある。
【0073】
≪実施例1≫
図1は、実施例1による電力変換装置を示すものであり、参考例1,2等に基づいて見出されたものである。なお、参考例1,2等と同様のものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0074】
図1の電力変換装置では、半導体スイッチSa~Sdに対し、スナバコンデンサ(C1~C4),スナバダイオード(Ds1~Ds4),抵抗(R1~R4)を有したスナバ回路が、それぞれ設けられた構成となっている。
【0075】
図1の電力変換装置においては、直列接続された第1,第2直流リンクキャパシタCdc1,Cdc2を有している。また、第1~第4半導体スイッチSa~Sdが当該第1~第4の順に直列接続された直列回路(以下、単に半導体直列回路と適宜称する)を有し、当該半導体直列回路の一端側に位置する第1半導体スイッチSaの一端が、第1直流リンクキャパシタCdc1の正極端に接続され、当該半導体直列回路の他端側に位置する第4半導体スイッチSdの一端が、第2直流リンクキャパシタCdc2の負極端に接続されている。
【0076】
また、第1~第4スナバコンデンサC1~C4が当該第1~第4の順に直列接続された直列回路(以下、単にコンデンサ直列回路と適宜称する)を有しており、当該コンデンサ直列回路の一端側に位置する第1スナバコンデンサC1の一端が、第1直流リンクキャパシタCdc1の正極端と第1半導体スイッチSaとの共通接続点に接続され、当該コンデンサ直列回路の他端側に位置する第4スナバコンデンサC4の一端が、第2直流リンクキャパシタCdc2の負極端と第4半導体スイッチSdとの共通接続点に接続されている。
【0077】
第1~第4スナバコンデンサC1~C4には、第1~第4スナバダイオードDs1~Ds4がそれぞれ直列接続されている。
【0078】
具体的には、第1,第2スナバコンデンサC1,C2の両者間に第1スナバダイオードDs1が挿入接続され、第2,第3スナバコンデンサC2,C3の両者間に第2,第3スナバダイオードDs2,Ds3の直列回路が挿入接続され、第3,第4スナバコンデンサC3,C4の両者間に第4スナバダイオードDs4が挿入接続されている。
【0079】
第1スナバダイオードDs1は、アノードが第1スナバコンデンサC1に接続され、カソードが第1,第2半導体スイッチSa,Sbの共通接続点に接続されている。第2スナバダイオードDs2は、アノードが第2スナバコンデンサC2に接続され、カソードが第2,第3半導体スイッチSb,Scの共通接続点に接続されている。
【0080】
第3スナバダイオードDs3は、アノードが第2,第3半導体スイッチSb,Scの共通接続点に接続され、カソードが第3スナバコンデンサC3に接続されている。第4スナバダイオードDs4は、アノードが第3,第4半導体スイッチSc,Sdの共通接続点に接続され、カソードが第4スナバコンデンサC4に接続されている。
【0081】
フライングキャパシタFCの正極端は、第2スナバコンデンサC2と第1スナバダイオードDs1との共通接続点に接続され、フライングキャパシタFCの負極端は、第3スナバコンデンサC3と第4スナバダイオードDs4との共通接続点に接続されている。
【0082】
第1スナバコンデンサC1と第1スナバダイオードDs1との共通接続点には、第1抵抗R1の一端が接続され、当該第1抵抗R1の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタCdc1,Cdc2の共通接続点に接続されている。
【0083】
第2スナバコンデンサC2と第2スナバダイオードDs2との共通接続点には、第2抵抗R2の一端が接続され、当該第2抵抗R2の他端が、フライングキャパシタFCの負極端,第3スナバコンデンサC3,第4スナバダイオードDs4の共通接続点に接続されている。
【0084】
第3スナバコンデンサC3と第3スナバダイオードDs3との共通接続点には、第3抵抗R3の一端が接続され、当該第3抵抗R3の他端が、フライングキャパシタFCの正極端,第2スナバコンデンサC2,第1スナバダイオードDs1の共通接続点に接続されている。
【0085】
第4スナバコンデンサC4と第4スナバダイオードDs4との共通接続点には、第4抵抗R4の一端が接続され、当該第4抵抗R4の他端が、第1,第2直流リンクキャパシタCdc1,Cdc2の共通接続点に接続されている。
【0086】
図1の電力変換装置において、第1~第4スナバコンデンサC1~C4は、第1,第2直流リンクキャパシタCdc1,Cdc2による電圧Vdcの半分の電圧、またはフライングキャパシタFCの電圧であるVdc/2に充電されることとなる。
【0087】
そして、第1半導体スイッチSaに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第1スナバダイオードDs1が導通し、第1スナバコンデンサC1に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第1半導体スイッチSaに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第1スナバコンデンサC1の電圧は、第1抵抗R1を通して第1直流リンクキャパシタCdc1に放電され、Vdc/2に戻る。
【0088】
第2半導体スイッチSbに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第2スナバダイオードDs2が導通し、第2スナバコンデンサC2に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第2半導体スイッチSbに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第2スナバコンデンサC2の電圧は、第2抵抗R2を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0089】
第3半導体スイッチScに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第3スナバダイオードDs3が導通し、第3スナバコンデンサC3に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第3半導体スイッチScに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第3スナバコンデンサC3の電圧は、第3抵抗R3を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0090】
第4半導体スイッチSdに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第4スナバダイオードDs4が導通し、第4スナバコンデンサC4に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第4半導体スイッチSdに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第4スナバコンデンサC4の電圧は、第4抵抗R4を通して第2直流リンクキャパシタCdc2に放電され、Vdc/2に戻る。
【0091】
以上示したように実施例1によれば、半導体スイッチSa,Sb,Sc,Sdに対してスナバ回路がそれぞれ設けられた構成となっているため、例えば単に従来構成のスナバ回路を適用した場合と比較して、配線インダクタンスによる影響を小さくできることが判る。
【0092】
≪実施例2≫
実施例1の場合、第1~第4スナバコンデンサC1~C4の電圧がVdc/2と低いため、サージ電圧に対して吸収すべきエネルギーが大きくなる。このため、スイッチング周波数が高い場合には、例えば第1,第4抵抗R1,R4で消費する電力が大きくなってしまうおそれがある。これにより、スイッチング損失の増加や抵抗の大型化を招くおそれがある。
【0093】
そこで、実施例2では、
図2に示すように電力変換装置を構成して、第1~第4スナバコンデンサC1~C4の電圧が高くなるようにし、サージ電圧に対して吸収すべきエネルギーを抑制できるようにした。なお、
図1に示すものと同様のものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0094】
図2の電力変換装置においては、第1,第2直流リンクキャパシタCdc1,Cdc2の替わりに直流リンクキャパシタCdcを有し、第1~第4半導体スイッチSa~Sdの半導体直列回路の一端側に位置する第1半導体スイッチSaの一端が、直流リンクキャパシタC
dcの正極端に接続され、当該半導体直列回路の他端側に位置する第4半導体スイッチSdの一端が、直流リンクキャパシタC
dcの負極端に接続されている。
【0095】
また、第1~第4スナバコンデンサC1~C4のコンデンサ直列回路の一端側に位置する第1スナバコンデンサC1の一端が、直流リンクキャパシタCdcの正極端と第1半導体スイッチSaとの共通接続点に接続され、当該コンデンサ直列回路の他端側に位置する第4スナバコンデンサC4の一端が、直流リンクキャパシタCdcの負極端と第4半導体スイッチSdとの共通接続点に接続されている。
【0096】
第1抵抗R1においては、当該第1抵抗R1の一端が、第1スナバコンデンサC1と第1スナバダイオードDs1との共通接続点に接続され、当該第1抵抗R1の他端が、直流リンクキャパシタCdcの負極端と第4スナバコンデンサC4との共通接続点に接続されている。
【0097】
第4抵抗R4においては、当該第4抵抗R4の一端が、第4スナバコンデンサC4と第4スナバダイオードDs4との共通接続点に接続され、当該第4抵抗R4の他端が、直流リンクキャパシタCdcの正極端と第1スナバコンデンサC1との共通接続点に接続されている。
【0098】
図2の電力変換装置において、第1,第4スナバコンデンサC1,C4は、直流リンクキャパシタCdcの電圧であるVdcに充電されることとなる。また、第2,第3スナバコンデンサC2,C3は、フライングキャパシタFCの電圧であるVdc/2に充電されることとなる。
【0099】
そして、第1半導体スイッチSaに印加される電圧がVdcの値を超えた場合には、第1スナバダイオードDs1が導通し、第1スナバコンデンサC1に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第1半導体スイッチSaに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第1スナバコンデンサC1の電圧は、第1抵抗R1を通して直流リンクキャパシタCdcに放電され、Vdcに戻る。
【0100】
第2半導体スイッチSbに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第2スナバダイオードDs2が導通し、第2スナバコンデンサC2に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第2半導体スイッチSbに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第2スナバコンデンサC2の電圧は、第2抵抗R2を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0101】
第3半導体スイッチScに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第3スナバダイオードDs3が導通し、第3スナバコンデンサC3に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第3半導体スイッチScに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第3スナバコンデンサC3の電圧は、第3抵抗R3を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0102】
第4半導体スイッチSdに印加される電圧がVdcの値を超えた場合には、第4スナバダイオードDs4が導通し、第4スナバコンデンサC4に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第4半導体スイッチSdに印加され得るサージ電圧を抑制できる。第4スナバコンデンサC4の電圧は、第4抵抗R4を通して直流リンクキャパシタCdcに放電され、Vdcに戻る。
【0103】
以上示したように実施例2によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する他に、以下のことが言える。すなわち、スイッチング損失の低減や、第1,第4抵抗R1,R4の小型化に貢献することが可能となる。
【0104】
≪実施例3≫
実施例2の場合、配線インダクタンスによるサージエネルギーを、第1~第4スナバコンデンサC1~C4で吸収することになる。このため、第1~第4スナバコンデンサにおいて大型化してしまうおそれがある。
【0105】
そこで、実施例3では、
図3に示す電力変換装置のように、第1~第4スナバコンデンサC1~C4に対し、アバランシェ特性を持つ第1~第4アバランシェ素子Z1~Z4をそれぞれ並列接続した構成とすることで、第1~第4スナバコンデンサC1~C4が吸収しきれないエネルギーを、当該第1~第4アバランシェ素子Z1~Z4にバイパスできるようにした。なお、
図2に示すものと同様のものには同一符号を付する等により、その詳細な説明を適宜省略する。
【0106】
図3の電力変換装置においては、第1スナバコンデンサC1,第1スナバダイオードDs1,第1抵抗R1の共通接続点に、第1アバランシェ素子Z1のアノードが接続され、当該第1アバランシェ素子Z1のカソードが、直流リンクキャパシタCdcの正極端と第1スナバコンデンサC1との共通接続点に接続されている。
【0107】
第2スナバコンデンサC2,第2スナバダイオードDs2,第2抵抗R2の共通接続点には、第2アバランシェ素子Z2のアノードが接続され、当該第2アバランシェ素子Z2のカソードが、フライングキャパシタFCの正極端,第2スナバコンデンサC2,第1スナバダイオードDs1の共通接続点に接続されている。
【0108】
フライングキャパシタFCの負極端,第3スナバコンデンサC3,第4スナバダイオードDs4の共通接続点には、第3アバランシェ素子Z3のアノードが接続され、当該第3アバランシェ素子Z3のカソードが、第3スナバコンデンサC3,第3スナバダイオードDs3,第3抵抗R3の共通接続点に接続されている。
【0109】
直流リンクキャパシタCdcの負極端と第4スナバコンデンサC4との共通接続点には、第4アバランシェ素子Z4のアノードが接続され、当該第4アバランシェ素子Z4のカソードが、第4スナバコンデンサC4,第4スナバダイオードDs4,第4抵抗R4の共通接続点に接続されている。
【0110】
第1~第4アバランシェ素子Z1~Z4の動作開始電圧においては、それぞれ第1~第4半導体スイッチSa~Sdの各耐圧に合わせて設定することが可能である。
【0111】
図3の電力変換装置において、第1,第4スナバコンデンサC1,C4は、直流リンクキャパシタCdcの電圧であるVdcに充電されることとなる。また、第2,第3スナバコンデンサC2,C3は、フライングキャパシタFCの電圧であるVdc/2に充電されることとなる。
【0112】
そして、第1半導体スイッチSaに印加される電圧がVdcの値を超えた場合には、第1スナバダイオードDs1が導通し、第1スナバコンデンサC1に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第1半導体スイッチSaに印加され得るサージ電圧を抑制できる。
【0113】
また、第1スナバコンデンサC1に印加される電圧が第1アバランシェ素子Z1の動作開始電圧を超過した場合には、第1アバランシェ素子Z1が動作し、当該印加される電圧が当該動作開始電圧を超過して上昇しないように、バイパスする。第1スナバコンデンサC1の電圧は、第1抵抗R1を通して直流リンクキャパシタCdcに放電され、Vdcに戻る。
【0114】
第2半導体スイッチSbに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第2スナバダイオードDs2が導通し、第2スナバコンデンサC2に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第2半導体スイッチSbに印加され得るサージ電圧を抑制できる。
【0115】
また、第2スナバコンデンサC2に印加される電圧が第2アバランシェ素子Z2の動作開始電圧を超過した場合には、第2アバランシェ素子Z2が動作し、当該印加される電圧が当該動作開始電圧を超過して上昇しないように、バイパスする。第2スナバコンデンサC2の電圧は、第2抵抗R2を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0116】
第3半導体スイッチScに印加される電圧がVdc/2の値を超えた場合には、第3スナバダイオードDs3が導通し、第3スナバコンデンサC3に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第3半導体スイッチScに印加され得るサージ電圧を抑制できる。
【0117】
また、第3スナバコンデンサC3に印加される電圧が第3アバランシェ素子Z3の動作開始電圧を超過した場合には、第3アバランシェ素子Z3が動作し、当該印加される電圧が当該動作開始電圧を超過して上昇しないように、バイパスする。第3スナバコンデンサC3の電圧は、第3抵抗R3を通してフライングキャパシタFCに放電され、Vdc/2に戻る。
【0118】
第4半導体スイッチSdに印加される電圧がVdcの値を超えた場合には、第4スナバダイオードDs4が導通し、第4スナバコンデンサC4に電流が流れることになり、発生し得るサージ電圧をバイパスできることとなる。これにより、第4半導体スイッチSdに印加され得るサージ電圧を抑制できる。
【0119】
また、第4スナバコンデンサC4に印加される電圧が第4アバランシェ素子Z4の動作開始電圧を超過した場合には、第4アバランシェ素子Z4が動作し、当該印加される電圧が当該動作開始電圧を超過して上昇しないように、バイパスする。第4スナバコンデンサC4の電圧は、第4抵抗R4を通して直流リンクキャパシタCdcに放電され、Vdcに戻る。
【0120】
以上示したように実施例3によれば、実施例2と同様の作用効果を奏する他に、以下のことが言える。すなわち、第1~第4スナバコンデンサC1~C4が吸収しきれないエネルギーを、第1~第4アバランシェ素子Z1~Z4を介してバイパスでき、スナバ回路の小型化に貢献することが可能となる。
【0121】
以上、本発明において、記載された具体例に対してのみ詳細に説明したが、本発明の技術思想の範囲で多彩な変形および修正が可能であることは、当業者にとって明白なことであり、このような変形および修正が特許請求の範囲に属することは当然のことである。
【符号の説明】
【0122】
Cdc…直流リンクキャパシタ
Cdc1,Cdc2…第1,第2直流リンクキャパシタ
FC…フライングキャパシタ
Sa~Sd…第1~第4半導体スイッチ
C1~C4…第1~第4スナバコンデンサ
Ds1~Ds4…第1~第4スナバダイオード
R1~R4…第1~第4抵抗
Z1~Z4…第1~第4アバランシェ素子