(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】マイクロ流体基板およびその製造方法、マイクロ流体チップ、および制御方法
(51)【国際特許分類】
B01J 19/00 20060101AFI20230613BHJP
G01N 37/00 20060101ALI20230613BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B01J19/00 321
G01N37/00 101
B81B3/00
(21)【出願番号】P 2018564765
(86)(22)【出願日】2018-06-08
(86)【国際出願番号】 CN2018090366
(87)【国際公開番号】W WO2019041955
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2021-06-02
(31)【優先権主張番号】201710780455.3
(32)【優先日】2017-09-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】510280589
【氏名又は名称】京東方科技集團股▲ふん▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】BOE TECHNOLOGY GROUP CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No.10 Jiuxianqiao Rd.,Chaoyang District,Beijing 100015,CHINA
(73)【特許権者】
【識別番号】507134301
【氏名又は名称】北京京東方光電科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING BOE OPTOELECTRONICS TECHNOLOGY CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 8 Xihuanzhonglu, BDA, Beijing, 100176, P.R.CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100070024
【氏名又は名称】松永 宣行
(74)【代理人】
【識別番号】100195257
【氏名又は名称】大渕 一志
(72)【発明者】
【氏名】ゲン、 ユエ
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ、 ペイジー
(72)【発明者】
【氏名】パン、 フォンチュン
(72)【発明者】
【氏名】グ、 ル
(72)【発明者】
【氏名】チェ、 チュンチョン
(72)【発明者】
【氏名】シュエ、 ハイリン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ、 シビン
【審査官】佐々木 典子
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-230105(JP,A)
【文献】特開2011-237410(JP,A)
【文献】特表2015-531866(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102175744(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 10/00-12/02、
14/00-19/32
G01N 35/00-37/00
B81B 1/00- 7/04
B01C 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と、
前記第1基板に設けられる微小液滴駆動部と、
少なくとも1つの温度センサを含む温度検出部と
を備え、
前記微小液滴駆動部は、複数の制御電極を有する第1電極層を含み、前記複数の制御電極の各々は、微小液滴を駆動してマイクロ流体基板上の所定の経路に沿って移動させる駆動ユニットの一部として構成され、
前記少なくとも1つの温度センサは、前記複数の制御電極に対応する位置に設けられ、各々が対応する前記複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出するように構成され、
少なくとも1つの温度センサの各々による第1基板上の正投影は、対応する複数の制御電極の1つによる第1基板上の正投影と少なくとも部分的に重なり、
前記少なくとも1つの温度センサの各々は、前記第1基板に配置されたPN接合と2つの電極とを含み、ただし、前記PN接合が前記2つの電極の間に配置され、
前記温度検出部および前記微小液滴駆動部は、前記第1基板の同じ側に配置され、
前記温度検出部は前記微小液滴駆動部と前記第1基板との間に配置され、
前記少なくとも1つの温度センサの各々における前記2つの電極の一方の電極は、前記少なくとも1つの温度センサの各々に対応する前記複数の制御電極のうちの1つと一体化される
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項2】
請求項1に記載のマイクロ流体基板において、
前記微小液滴駆動部は、前記複数の制御電極に順次に配置される第1誘電体層及び第1疎水性層をさらに含む
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項3】
請求項2に記載のマイクロ流体基板において、
前記少なくとも1つの温度センサの各々に対応する前記複数の制御電極のうちの1つは、前記第1基板上の正投影が前記少なくとも1つの温度センサの各々による前記第1基板上の正投影から外れた部分を含み、
ビアは、前記複数の制御電極のうちの1つの下方に、且つ前記第1基板の上方に配置され、前記複数の制御電極のうちの1つと制御リード線との間の電気的接続を可能にするように構成される
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項4】
請求項3に記載のマイクロ流体基板において、
前記制御リード線は、前記少なくとも1つの温度センサの各々における前記2つの電極のうちの他方の電極と実質的に同じ層に配置される
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項5】
請求項2に記載のマイクロ流体基板において、
前記少なくとも1つの温度センサは、前記複数の制御電極に一対一に対応する位置に設けられる
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項6】
請求項2に記載のマイクロ流体基板において、
前記少なくとも1つの温度センサの数は、前記複数の制御電極の数よりも少ない
ことを特徴とするマイクロ流体基板。
【請求項7】
少なくとも1つの試薬注入口が設けられた上部基板と、
請求項2~6のいずれか1項に記載のマイクロ流体基板とを備え、
前記上部基板と前記マイクロ流体基板とは液漏れのない状態で互いに接着され、微小液滴をその間で移動させる
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項8】
請求項7に記載のマイクロ流体チップにおいて、
前記上部基板は、第2基板と、基準電極と、第2誘電体層と、第2疎水性層とを含み、 前記第2疎水性層、前記第2誘電体層、前記基準電極及び前記第2基板は、前記マイクロ流体基板における前記第1疎水性層の側に順次に配置され、
前記マイクロ流体基板における前記微小液滴駆動部の前記第2疎水性層および前記第1疎水性層は、前記マイクロ流体基板において微小液滴のための流動空間を形成する
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項9】
請求項8に記載のマイクロ流体チップにおいて、
前記少なくとも1つの温度センサの各々に電気的に結合され、一定の電流を実質的に維持するように構成された可変抵抗器をさらに含む
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項10】
請求項8に記載のマイクロ流体チップにおいて、
前記少なくとも1つの温度センサの各々に電気的に結合され、検出された信号を増幅するように構成された信号増幅回路をさらに含む
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項11】
上部基板と、複数の制御電極を含む微小液滴駆動部、および前記複数の制御電極に対応する位置に設けられる少なくとも1つの温度センサを含む温度検出部を備えるマイクロ流体基板とを含むマイクロ流体チップを制御する方法であって、
前記複数の制御電極のうちの1つに第1電圧信号を供給して、微小液滴を前記上部基板と前記マイクロ流体基板との間の所定の経路に沿って移動させるステップと、
前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つに対応する前記複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出するために、前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つに第2電圧信号を供給するステップとを含
み、
前記複数の制御電極のうちの1つに第1電圧信号を供給して、微小液滴を前記上部基板と前記マイクロ流体基板との間の所定の経路に沿って移動させるステップは、
第1電圧信号を供給することによって複数の駆動ユニットの1つをオンにするステップを含み、
前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つに対応する前記複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出するために、前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つに第2電圧信号を供給するステップは、
第2電圧信号を供給することによって、少なくとも1つの温度センサのうちの1つに対応する複数の制御電極のうちの1つに関連する位置にある少なくとも1つの温度センサのうちの1つをオンにするステップを含み、
前記少なくとも1つの温度センサの各々における2つの電極の一方の電極は、前記少なくとも1つの温度センサの各々に対応する前記複数の制御電極のうちの1つと一体化される
ことを特徴とするマイクロ流体チップの制御方法。
【請求項12】
請求項11に記載のマイクロ流体チップの制御方法において、
前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つによって前記位置における温度が所定の範囲内にないことを検出した場合、前記複数の制御電極のうちのいずれか1つへの第1電圧の供給を停止するステップと、
前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つによって前記位置における温度が所定の範囲内にあることを検出するまでに、前記位置における温度を調整するステップと、
前記複数の制御電極のうちの1つへの第1電圧信号の供給を再開するステップと
をさらに含む
ことを特徴とするマイクロ流体チップの制御方法。
【請求項13】
請求項11に記載のマイクロ流体チップの制御方法において、
前記第1電圧信号および前記第2電圧信号の各々は方形波信号である
ことを特徴とするマイクロ流体チップの制御方法。
【請求項14】
請求項13に記載のマイクロ流体チップの制御方法において、
前記第2電圧信号は、前記第1電圧信号の周波数以下の周波数を有するように構成される
ことを特徴とするマイクロ流体チップの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年9月1日に出願された中国特許出願第201710780455.3号の優先権を主張し、その開示内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、マイクロ流体技術の分野に関し、より詳細には、マイクロ流体基板およびその製造方法、マイクロ流体チップおよび制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体制御は、独立した液滴または微小液滴を制御ユニットとする流体制御技術である。微小液滴の動きを精確に操作することによって、微小液滴の融合と分離を実現し、様々な生化学反応を完成することができる。
【0004】
従来のマイクロ流体技術によれば、典型的には、マイクロ流体チップはマイクロ流体チップの制御電極に電圧を印加することによって、液体(より具体的には微小液滴)を所定の方向に移動させるように駆動する。
【0005】
温度の変化に敏感であるかまたは温度制御を必要とする生化学反応については、生化学反応の温度をモニターする必要がある。典型的には、熱電対などの既存の温度センサは、マイクロ流体チップ上で生じる生化学反応の環境温度のモニタリングを実現するように、マイクロ流体チップの外面に直接取り付けられる。
【0006】
従来の温度センサは、通常に比較的大きなサイズを有するので、マイクロ流体チップの比較的大きな領域内の温度のみを検出することができ、微小液滴がマイクロ流体基板上に移動するときにその温度を精確に監視することができない。
【発明の概要】
【0007】
従来のマイクロ流体技術の問題点に対処するために、本開示は、マイクロ流体基板、マイクロ流体基板を含むマイクロ流体チップ、およびマイクロ流体チップを制御する方法を提供する。
【0008】
第1態様は、マイクロ流体基板を提供する。
【0009】
マイクロ流体基板は、第1基板と、第1基板に設けられる微小液滴駆動部と、温度検出部とを含む。微小液滴駆動部は、複数の制御電極を有する第1電極層を含み、複数の制御電極の各々は、微小液滴を駆動してマイクロ流体基板上の所定の経路に沿って移動させる駆動ユニットの一部として構成される。温度検出部は、少なくとも1つの温度センサを含む。
【0010】
前記少なくとも1つの温度センサは、複数の制御電極に対応する位置に設けられ、各々が対応する複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出するように構成される。
【0011】
幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板によれば、少なくとも1つの温度センサの各々による第1基板上の正投影は、それぞれに対応する複数の制御電極の1つによる第1基板上の正投影と少なくとも部分的に重なる。
【0012】
ここで、少なくとも1つの温度センサの各々は、第1基板に配置されたPN接合と2つの電極とを含み、ただしPN接合が2つの電極の間に配置されることができる。
【0013】
幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板によれば、温度検出部および微小液滴駆動部はそれぞれ、第1基板の2つの対向する側に配置される。
【0014】
マイクロ流体基板の他の実施形態によれば、温度検出部および微小液滴駆動部は、第1基板の同じ側に配置される。
【0015】
温度検出部と微小液滴駆動部が第1基板の同じ側に配置されるマイクロ流体基板の上記実施形態では、温度検出部を微小液滴駆動部と第1基板との間に配置することができる。
【0016】
さらに、前記の実施形態によるマイクロ流体基板において、少なくとも1つの温度センサの各々における2つの電極の一方の電極は、少なくとも1つの温度センサの各々に対応する複数の制御電極の1つと一体化されることができる。
【0017】
ここで、微小液滴駆動部は、複数の制御電極に順次に配置される第1誘電体層及び第1疎水性層をさらに含むことができる。
【0018】
さらに、少なくとも1つの温度センサの各々に対応する複数の制御電極の1つは、第1基板上の正投影が少なくとも1つの温度センサの各々による第1基板上の正投影から外れた部分を含むことができる。ビアは、複数の制御電極のうちの1つの下方に且つ第1基板の上方に配置され、複数の制御電極のうちの1つと制御リード線との間の電気的接続を可能にするように構成される。ここで、制御リード線は、前記少なくとも1つの温度センサの各々における2つの電極のうちの他方の電極と実質的に同じ層に配置されることができる。
【0019】
幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板によれば、少なくとも1つの温度センサは、複数の制御電極に一対一に対応する位置に設けられる。
【0020】
マイクロ流体基板の他の実施形態によれば、少なくとも1つの温度センサの数は、複数の制御電極の数よりも少ない。
【0021】
第2態様は、マイクロ流体チップを開示する。マイクロ流体チップは、上部基板とマイクロ流体基板とを含む。上部基板には少なくとも1つの試薬注入口が設けられ、マイクロ流体基板は上述の実施形態のいずれか1つによるマイクロ流体基板に基づくことができる。上部基板とマイクロ流体基板とは液漏れのない状態で互いに接着され、微小液滴をその間で移動させる。
【0022】
マイクロ流体チップの幾つかの実施形態によれば、上部基板は、第2基板と、基準電極と、第2誘電体層と、第2疎水性層とを含む。第2疎水性層、第2誘電体層、基準電極及び第2基板は、マイクロ流体基板における第1疎水性層の側に順次に配置される。マイクロ流体基板における微小液滴駆動部の第2疎水性層および第1疎水性層は、マイクロ流体基板において微小液滴のための流動空間を形成する。
【0023】
さらに、マイクロ流体チップは、少なくとも1つの温度センサの各々に電気的に結合され、一定の電流を実質的に維持するように構成された可変抵抗器をさらに含むことができる。
【0024】
マイクロ流体チップは、少なくとも1つの温度センサの各々に電気的に結合され、検出された信号を増幅するように構成された信号増幅回路をさらに含むことができる。
【0025】
第3態様では、本開示は、マイクロ流体チップを制御する方法をさらに提供する。マイクロ流体チップは、上部基板とマイクロ流体基板とを含む。マイクロ流体基板は、複数の制御電極を含む微小液滴駆動部と、少なくとも1つの温度センサを含む温度検出部とを含む。少なくとも1つの温度センサは、複数の制御電極に対応する位置に設けられる。
【0026】
この方法は、
【0027】
複数の制御電極のうちの1つに第1電圧信号を供給して、上部基板とマイクロ流体基板との間の所定の経路に沿って微小液滴を移動させるステップと、
【0028】
少なくとも1つの温度センサのうちの1つに対応する複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出するために、前記少なくとも1つの温度センサのうちの1つに第2電圧を供給するステップとを含む。
【0029】
幾つかの実施形態によれば、この方法は、
【0030】
少なくとも1つの温度センサのうちの1つによって前記位置における温度が所定の範囲内にないことを検出した場合、複数の制御電極のうちのいずれか1つへの第1電圧の供給を停止するステップと、
【0031】
少なくとも1つの温度センサのうちの1つによって前記位置における温度が所定の範囲内にあることを検出するまでに、前記位置における温度を調整するステップと、
【0032】
複数の制御電極のうちの1つへの第1電圧信号の供給を再開するステップとをさらに含む。
【0033】
この方法では、一態様として、第1電圧信号および第2電圧信号の各々は方形波信号であってもよい。さらに一態様として、第2電圧信号は、第1電圧信号の周波数以下の周波数を有するように構成される。
【図面の簡単な説明】
【0034】
本明細書で開示される本発明の様々な実施形態を明確に説明するために、以下に、実施形態の説明における添付の図面を簡単に紹介する。
【0035】
これらの図面は、本開示の実施形態のすべてではなく、一部のみを表すものとみなされることに留意されたい。当業者であれば、これらの添付図面に示す構造に基づいて他の実施形態が明らかになるであろう。
【0036】
【
図1】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板の構造を示す概略図である。
【0037】
【
図2】本発明の他の実施形態によるマイクロ流体基板の構造を示す概略図である。
【0038】
【
図3A】本開示の1つの実施形態による制御電極の配置を示すマイクロ流体基板の配線の概略図である。
【0039】
【
図3B】本開示の別の実施形態による制御電極の配置を示す概略図である。
【0040】
【
図3C】本開示のさらに別の実施形態による制御電極の配置を示す概略図である。
【0041】
【
図3D】本開示のさらに別の実施形態による制御電極の配置を示す概略図である。
【0042】
【
図4】本発明のさらに他の実施形態によるマイクロ流体基板の構造を示す概略図である。
【0043】
【
図5】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの構造の概略図である。
【0044】
【
図6A】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの断面図である。
【0045】
【
図6B】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップにおける対応する各温度センサによって出力される電圧信号(Vtemp)を増幅するための信号増幅回路の回路図である
【0046】
【
図7】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法のフローチャートを示す。
【0047】
【
図8】本開示のいくつかの実施形態による
図7に示すマイクロ流体基板の製造方法における温度検出部を基板に形成するステップのフローチャートを示す。
【0048】
【
図9A】本開示の他の実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法のフローチャートを示す。
【0049】
【
図9B】本開示の幾つかの実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS902のフローチャートを示す。
【
図9C】本開示の幾つかの実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS903のフローチャートを示す。
【
図9D】本開示の幾つかの実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS904のフローチャートを示す。
【
図9E】本開示の幾つかの実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS906のフローチャートを示す。
【0050】
【
図9F】本開示の他の実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS906以前のステップのフローチャートを示す。
【0051】
【
図9G】本開示のさらに他の実施形態による
図9Aに示すマイクロ流体基板の製造方法のステップS906以前のステップのフローチャートを示す。
【0052】
【
図10】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図11】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図12】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図13】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図14】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図15】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図16】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図17】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図18】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【
図19】それぞれ
図9Aに示す方法の各ステップS901~S910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0053】
【
図20】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの制御方法のフローチャートである。
【0054】
【
図21】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの駆動方法の駆動信号の時系列チャートである。
【0055】
【
図22A】本開示の実施形態によるマイクロ流体チップの駆動方法の温度検出ステップにおけるマイクロ流体チップを示す図である。
【
図22B】本開示の実施形態によるマイクロ流体チップの駆動方法の微小液滴駆動ステップにおけるマイクロ流体チップを示す図である。
【0056】
【
図23】本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップ内の所定の経路に沿って移動する微小液滴に対する制御のシーケンスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
本開示の様々な実施形態及び実施例は以下に記載され、本開示の他の利点および効果は、本明細書に開示される内容から当業者によって容易に理解されることができる。
【0058】
明らかに、記載された実施形態は、それらのすべてではなく、本開示における実施形態の一部に過ぎない。本開示はまた、異なる実施形態を通じて実施または適用することができ、また、本開示の精神から逸脱することなく、異なる視点および用途に基づいて様々な修正または変更を行うこともできる。
【0059】
本開示の実施形態に基づいて、創造的な労働を支払わないことを前提として当業者によって取得される他のすべての実施形態は、本開示の保護範囲に含まれる。矛盾がないことを前提として、以下の実施形態および実施形態の特徴を組み合わせることができることに留意されたい。
【0060】
第1態様では、本開示はマイクロ流体基板を提供する。
【0061】
マイクロ流体基板は、第1基板と、第1基板に設けられる微小液滴駆動部と、温度検出部とを備える。微小液滴駆動部は、複数の制御電極を有する第1電極層を含み、複数の制御電極の各々は、微小液滴を駆動してマイクロ流体基板における所定の経路に沿って移動させる駆動ユニットの一部として構成される。温度検出部は、少なくとも1つの温度センサを含む。
【0062】
少なくとも1つの温度センサはさらに、対応する複数の制御電極のうちの1つに関連する位置における温度を少なくとも1つの温度センサの各々によって検出するように、複数の制御電極に対応する位置に設けられる。
【0063】
ここで、前記位置は、マイクロ流体基板における所定の経路に沿って移動しているときの微小液滴の現在位置であってもよいが、微小液滴の現在位置以外の位置であってもよく、例えば、微小液滴が次に到達しようとする位置であってもよい。他の可能性もある。
【0064】
図1は本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板の構造を示す概略図である。この図に示すように、マイクロ流体基板は、第1基板11と、微小液滴駆動部13と、温度検出部12とを備える。温度検出部12及び微小液滴駆動部13は、第1基板11に順次配置されている。
【0065】
微小液滴駆動部13は、第1基板11に順次に配置された第1電極層131、第1誘電体層132及び第1疎水性層133を含む。第1電極層131は、複数の制御電極134を含む。
【0066】
温度検出部12は、マイクロ流体チップのマイクロ流体基板用の温度検出ユニット(すなわち温度センサ)である複数の温度センサを含む。
【0067】
複数の温度センサは、第1基板11と平行な平面に配列され、複数の制御電極134に一対一に対応するように構成される。対応する温度センサと制御電極134との対は、第1基板11と垂直な方向で互いに重なるように配置される(すなわち、温度センサによる基板上の正投影は温度センサに対応する制御電極134による基板11上の正投影と重なっている)。
【0068】
前記の実施形態によるマイクロ流体基板では、複数の温度センサを含む温度検出部12がマイクロ流体基板に組み込まれ、複数の温度センサと微小液滴駆動部13の複数の制御電極134とは、一対一に互いに対応するように構成される。このような構成は、制御電極と対応する温度センサとが精確に一致することを保証し、マイクロ流体チップのマイクロ流体基板における所定の経路に沿って移動する微小液滴の温度の精確な監視に有用である。
【0069】
前記のマイクロ流体基板では、第1基板11は、ガラス、シリコン、石英、ポリマー(ポリジメチルシロキサンまたはPDMSなど)、または他の材料の成分を有することができる。第1電極層131は、Al、Cu、Mo、Ti、Crなどの金属、これらの金属のいずれか2つの合金、またはインジウム錫酸化物(ITO)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)の薄膜のような透明導電材料の成分を含むことができる。第1誘電体層132は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、PPDMS、パリレンなどを有することができる。第1疎水性層133は、PTFE、フッ素樹脂、PMMA、または有機ポリマなどを有することができる。
【0070】
温度検出部12の各温度センサ(すなわち温度センサ)は、接地電極121と、N型層122およびP型層123からなるPN接合とを含む。接地電極121は第1基板に、PN接合は接地電極121に、それぞれ設けられる。このように、各温度センサのPN接合は、接地電極121と対応する制御電極134との間に実質的に配置されている。
【0071】
図1に示すマイクロ流体基板の上記実施形態では、温度検出部12の各温度センサにおいて、PN接合が接地電極121と接地電極121に対応する制御電極134との間に設けられることにより、微小液滴駆動部13の第1電極層131における制御電極134を微小液滴駆動部13の電極、および温度検出部12の各温度センサの電極の両方として構成することができる。このように、マイクロ流体基板の構造を簡素化し、製造コストを低減することができ、マイクロ流体基板の厚さも減少させることができる。
【0072】
温度検出部12の各温度センサにおける接地電極121は、微小液滴駆動部13の第1電極層131と同様に、Al、Cu、Mo、Ti、Crなどの金属、これらの金属のいずれか2つの合金、またはインジウム錫酸化物(ITO)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)の薄膜のような透明導電材料などを含むことができる。N型層122は、アモルファスシリコンにリンをドープすることによって形成され、P型層123はアモルファスシリコンにホウ素をドープすることにより形成されることができる。
【0073】
このように、温度検出部12の各温度センサは、半導体材料を用いた比較的容易で簡単な製造プロセスによって第1基板11に直接的に集積することができ、製造コストは比較的低い。
【0074】
図1に示すマイクロ流体基板の前記の実施形態では、温度検出部12および微小液滴駆動部13は、第1基板11の同じ側に順次に配置されている。しかしながら、実際には、温度検出部12と微小液滴駆動部13のマイクロ流体基板における相対位置に制限がない。温度検出部12および微小液滴駆動部13は、例えば、第1基板11の2つの対向する側に配置されることができる。
【0075】
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板では、温度検出部12の複数の温度センサと、微小液滴駆動部13の複数の制御電極134は、一対一に互いに対応するように構成される。
【0076】
他の対応関係も可能であることに留意されたい。一実施形態では、複数の温度センサの数は、微小液滴駆動部13の複数の制御電極134の数よりも少なくなるように構成されることができる。例えば、複数の制御電極134は、複数の温度センサの数の2倍であり、したがって、1つの温度センサは、1つおきの制御電極134の下方の位置に対応して配置されるように構成されることができる。
【0077】
図2は本開示の他の実施形態によるマイクロ流体基板を示す。
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板では、温度検出部22および微小液滴駆動部23は実質的に、第1基板21の2つの対向する側に配置されている。
【0078】
また、
図2に示すように、
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板における微小液滴駆動部23は、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板と同様に、第1基板21上に順次配置さる、第1電極層231、第1誘電体層232、及び第1疎水性層233を含む。
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板における微小液滴駆動部13は、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板における微小液滴駆動部13と実質的に同じ構成及び同じ組成を有するので、ここでその説明は省略する。
【0079】
さらに、
図2に示すように、
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板における温度検出部22は、第1基板21の微小液滴駆動部23に対向する(すなわち、離れた)側に配置されている。
図1に示す実施形態と同様に、温度検出部22も複数の温度センサを備え、各温度センサは、第1基板21との距離が増えるように配置された、接地電極221と、N型層222およびP型層223からなるPN接合と、駆動電極224とを含む。
【0080】
駆動電極224は、Al、Cu、Mo、Ti、Crなどの金属、これらの金属のいずれか2つの合金、またはインジウム錫酸化物(ITO)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)の薄膜のような透明導電材料などを含むことができる。接地電極221およびPN接合の組成は、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板における接地電極121およびPN接合部を参照することができ、その詳細な説明は省略する。
【0081】
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板は、駆動電極224の第1基板21から離れた側に配置された、例えば樹脂のパッケージング構造または保護カバープレートであり得る保護層24をさらに備える。したがって、温度検出部22は、保護層24と第1基板21との間に実質的に配置される。
【0082】
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板と比較して、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板は、温度検出部22の各温度センサのための駆動電極224および保護層24を配置する必要がない。
図1に示された実施形態によるマイクロ流体基板は、
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板よりも薄い厚さ及び単純な積層構造を有し、製造プロセスがより簡単である。
【0083】
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板では、各温度センサによる第1基板11上の正投影は、各温度センサに対応する制御電極134による第1基板11上の正投影内にある。
【0084】
さらに、各温度センサによる第1基板11上の正投影の面積は、対応する制御電極134による第1基板11上の正投影の面積よりも小さいように構成される。
図1に示すマイクロ流体基板の断面図では、対応する制御電極134の、各温度センサを超えて延びた部分が存在する(すなわち、対応する制御電極134の一部による第1基板11上の正投影は、各温度センサ12による第1基板11上の正射影の外側にある)。
【0085】
対応する制御電極134の前記部分(すなわち、延びた部分)の下方にビアが配置されるようにさらに構成することができる。ビアは、制御電極134と制御リード線とを電気的に接続するために利用される。この特徴は、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板を含むマイクロ流体チップの全体の配線を容易にする。
【0086】
さらに、この特徴は、制御リード線が隣接する2つの制御電極134の間の空間を占有しないようにするので、隣接する2つの制御電極の間の距離を可能な限り小さくすることを可能にし、微小液滴の移動方向を容易に制御することができる。
【0087】
各温度センサによる基板上の正投影は、
図2に示す実施形態によるマイクロ流体基板に示すように、各温度センサに対応する制御電極による基板上の正投影に一致するように(精確に重なるように)構成されることができることに留意されたい。
【0088】
図3Aは本開示の1つの実施形態によるマイクロ流体基板の配線を示す概略図である。
図3Aに示すように、マイクロ流体基板は、第1基板31、複数の接地電極321、及び複数の制御電極334を含む。複数の接地電極321及び複数の制御電極334は、第1基板31に配置される。説明を簡略化するために、この図では温度検出部及び微小液滴駆動部の他の構成を省略している。
【0089】
図3Aに示すように、この実施形態によるマイクロ流体基板は、複数の制御ピン32および複数の温度ピン33を含み、それぞれに電圧信号を印加するように構成されている。複数の制御ピン32及び複数の温度ピン33は、第1基板31の互いに対向する2つの側面にそれぞれ配置されている(
図3Aに示すように、複数の制御ピン32は第1基板31の右側に、複数の温度ピン33は第1基板31の左側に、それぞれ配置されている)。
【0090】
複数の制御ピン32の各々は、制御リード線34を介して制御電極334に電気的に結合されるかまたは接続されており、複数の温度ピン33の各々は、温度リード線35を介して接地電極321に電気的に接続されてからそれに対応する温度センサに電気的に結合される。
【0091】
このような構成によれば、温度リード線および制御ロード線を広げて分布させることができ、マイクロ流体基板の配線を容易にすることができる。
【0092】
本開示の他の実施形態によれば、複数の制御ピン32および複数の温度ピン33は、第1基板31の隣接する両側(すなわち、図面に示す第1基板31の角を形成する両側)または第1基板31の同じ側(
図3B、3C、3Dに示す他の3つの実施形態に示すように)に配置されてもよい。
【0093】
ここで、各制御リード線34および対応する制御電極334(すなわち、各制御リード線34に電気的に接続された制御電極334)は、第1基板31における2つの異なる層に配置されることができ、ただし、この2つの異なる層がそれらを接続する位置に設けられる1つまたは複数のビアによって電気的に接続される。
【0094】
図4は本開示のさらに他の実施形態によるマイクロ流体基板の構造を示す。
図4に示すように、
図4に示す実施形態によるマイクロ流体基板は、第1基板41、温度検出部42、および微小液滴駆動部43を含む。温度検出部42および微小液滴駆動部43は、第1基板41に順次に配置される。
【0095】
また、
図4に示すように、温度検出部42は、接地電極421、N型層422およびP型層423からなるPN接合をそれぞれ含む複数の温度センサを備える。微小液滴駆動部43は、第1基板41に順次に配置された、第1電極層431、第1誘電体層432、および第1疎水性層433を含む。温度検出部42および微小液滴駆動部43のそれぞれの構成および他の関連する記述については、前記の
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板を参照することができる。
【0096】
図4に示す実施形態によるマイクロ流体基板では、第1電極層431は、複数の制御電極334を含み、複数の制御電極334の各々は、ビア37を介して制御リード線34に電気的に接続されるかまたは結合される。制御リード線34は、接地電極421と実質的に同じ層に配置される。ビア37は、第1基板41に垂直な方向で複数の制御電極334それぞれの下方(すなわち、複数の制御電極334の各々の第1基板41に接近する面)かつ温度センサ42の側面に配置される。
【0097】
各制御リード線34は、対応する接地電極421と実質的に同じ層に配置されることにより、複数の制御リード線34と複数の接地電極421とを単一の1回限りのパターニングプロセスによって一緒に(すなわち、同時に)形成することができるので、製造プロセスが簡素化される。
【0098】
一態様として、同様に、前記の制御ピン32および温度ピン33を、接地電極421と実質的に同じ層に配置して、製造プロセスをさらに単純化することもできる。
【0099】
なお、前記の実施形態に加えて、一部の制御リード線が制御電極と実質的に同じ層に配置されるが、他の制御リード線が制御電極とは異なる層に配置されるように構成してもよい。例えば、他の制御電極に囲まれた制御リード線をそれに対応する制御電極とは異なる層に配置し、他の制御電極に囲まれていない制御リード線をそれに対応する制御電極と実質的に同じ層に配置することができる。これらの構成により、制御リード線による、隣接する制御電極間の領域の占有を回避することができる。
【0100】
あるいは、全ての制御リード線が制御電極と実質的に同じ層に配置されるように構成することができる。この配置は、
図3Bに示すように、制御リード線が他の制御電極によって囲まれなかった場合に適している。
【0101】
図3Aに示す実施形態では、複数の制御電極334が行と列を有するマトリクス状に配置されているが、複数の制御電極334の配置は、本実施形態に限定されず、実用上必要に応じて異なる設計とすることができる。例えば、複数の制御電極は、(1つまたは複数の)直線、交差線、またはグリッドとして配置することができるが、これらに限定されない。
【0102】
例えば、
図3Bは複数の制御電極が交差線に配置された実施形態を示す。
図3Cは、2つの平行な行と2つの平行な列とが互いに交差したグリッドとして複数の制御電極が配置された別の実施形態を示す。
【0103】
図3Aに示す実施形態では、複数の制御電極334はそれぞれ矩形であるが、各制御電極の形状は実用上必要に応じて、多角形や不規則な形状などの異なる設計とすることができ、これに限定されない。
図3Dは、複数の制御電極がそれぞれ六角形の形状である実施形態を示す。
【0104】
さらに、
図3B~
図3Dは、複数の制御電極の様々な配置のみを示し、配線を省略している。
図3A~
図3Dに示す制御電極の数は、単に例示のためのものであり、本開示の範囲を限定するものではない。
【0105】
実用上、隣接する制御電極間の距離は、約50~500μm、好ましくは約50~200μmになるように構成することができる。この距離は、微小液滴の駆動の精度を保証することができる。
【0106】
各制御電極は、約500μm~3mmのサイズを有することができる。ここで、制御電極の大きさは、制御電極の輪郭形状の外接円の直径、すなわち制御電極の輪郭形状上の2点間の最大距離と定義される。例えば、制御電極が長方形の形状である場合、制御電極のサイズは、実質的に長方形の対角線の長さである。
【0107】
第2態様では、本開示は、前記の実施形態のいずれか1つによるマイクロ流体基板を含むマイクロ流体チップをさらに提供する。
【0108】
具体的には、
図5は本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの構造を示す。
図5に示すように、マイクロ流体チップは、平行に配列され液漏れのない状態で互いに接着される上部基板51とマイクロ流体基板52とを含む。上部基板51には、少なくとも1つの試薬注入口53が設けられている。
【0109】
図6Aは本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体チップの断面図である。
図6Aに示すマイクロ流体チップでは、上部基板51は、第2基板511と、基準電極512と、第2誘電体層513と、第2疎水性層514とを含む。基準電極512、第2誘電体層513及び第2疎水性層514は、第1および第2基板511の一側(
図6Aに示す第2基板511の下方)に順次に配置されている。
【0110】
上部基板51とマイクロ流体基板52との間の空間は、微小液滴53の流動空間として構成される。マイクロ流体チップのマイクロ流体基板52は実質的に、
図1に示すマイクロ流体基板からなる。その説明は前記の様々な実施形態を参照することができ、ここでは繰り返さない。
図6Aに示す実施形態の他に、マイクロ流体チップのマイクロ流体基板は、
図1に示す実施形態以外の実施形態によるマイクロ流体基板を含むこともできる。
【0111】
マイクロ流体チップの上部基板51とマイクロ流体基板52との間に液漏れ防止用の接着を実現するために、上部基板51とマイクロ流体基板52とはシール材を用いて接着されることができる。
【0112】
上部基板51の第2基板511は、ガラス、単結晶シリコン、石英、PDMSなどのような高分子量ポリマなどの透明な材料を含むことができる。基準電極512は、ITOまたはIZOなどの透明な導電性材料を含むことができる。第2誘電体層513は、酸化シリコン、窒化シリコン、ポリ(2メチルシロキサン)および他の材料を含むことができる。第2疎水性層514は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート、または有機ポリマーなどを含むことができる。
【0113】
上部基板51の上面側から微小液滴の移動を観察する必要があるため、上部基板51は透明に構成されている。
【0114】
該マイクロ流体チップでは、マイクロ流体基板の複数の制御電極および上部基板の基準電極は、実質的に複数の駆動ユニットを形成し、微小液滴を駆動して上部基板とマイクロ流体基板との間の所定の経路に沿った各位置に移動させるように構成される。マイクロ流体基板の少なくとも1つの温度センサは、複数の駆動ユニットに対応する位置に設けられる。少なくとも1つの温度センサの各々は、微小液滴の各位置への移動中に微小液滴の温度を検出することができる。
【0115】
一態様として、マイクロ流体チップは、微小液滴が到着する前に、温度が所定の範囲、例えば69.0~71.0℃の範囲内にあることを保証するためにマイクロ流体チップ内の任意の位置の温度を調節する温度調節モジュールをさらに含むことができる。
【0116】
一態様として、マイクロ流体チップは、マイクロ流体基板における温度検出部の各温度センサにそれぞれ結合され、各温度センサによって得られた温度検出信号を増幅するように構成された複数の信号増幅回路をさらに含む。
【0117】
幾つかの実施形態によれば、各信号増幅回路は、対応する各温度センサによって出力された電圧信号(Vtemp)を増幅して増幅電圧信号(Vout)として出力するように構成される。一態様として、各信号増幅回路は、少なくとも1つの信号増幅サブ回路を含むことができ、少なくとも1つの信号増幅ユニットは、電圧信号の段階的な増幅を実現するように直列に電気的に結合されることができる。
【0118】
図6Bは、本開示の特定の実施形態によるマイクロ流体チップにおける各対応する温度センサによって出力される電圧信号(Vtemp)を増幅するための信号増幅回路の回路図を示す。ここで、信号増幅回路は、電圧信号(Vtemp)の段階的な増幅を実現するための実質的に直列に接続された、第1レベルの信号増幅サブ回路と、第2レベルの信号増幅サブ回路と、第3レベルの信号増幅サブ回路とからなる実質的に3レベルの信号増幅回路である。
図6Bに示す信号増幅回路は、出力電圧信号の元電圧信号(Vtemp)を3倍に増幅することができる。
【0119】
図6Bに示す信号増幅回路は、単なる例示である。各信号増幅回路にnレベルの信号増幅サブ回路を含めることにより、元電圧信号(Vtemp)のn倍の増幅を実現することができる。ここで、nは任意の整数とすることができる。
【0120】
前記のマイクロ流体チップでは、マイクロ流体チップは、前記のいずれか1つの実施形態によるマイクロ流体基板を含む。温度検出部は、マイクロ流体基板の基板(すなわち、第1基板)に組み込まれ、温度センサと制御電極は一対一に互いに対応するように構成される。このような構成は、制御電極と対応する温度センサとの精確な位置合わせを保証し、マイクロ流体チップにおけるマイクロ流体基板上に移動する微小液滴の温度を精確に監視するのに有用である。
【0121】
第3態様では、本開示は、マイクロ流体基板の製造方法をさらに提供する。この方法は、前記の実施形態のいずれかによるマイクロ流体基板を製造するために利用することができる。
【0122】
図7は本開示の幾つかの実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法のフローチャートを示す。この方法を利用して、
図1に示す実施形態によるマイクロ流体基板を製造することができる。
【0123】
図7に示すように、本方法は実質的に、S701~S704にそれぞれ記載された以下のステップを含む。
【0124】
S701:複数の温度センサを含む温度検出部を第1基板上に形成するステップと、
【0125】
S702:温度検出部に第1電極層を形成するステップであって、第1電極層は複数の制御電極を含み、複数の温度センサは、複数の制御電極に一対一に対応する位置に設けられ、温度センサと制御電極との各対応する対は、第1基板に垂直な方向に互いに重なる(すなわち、温度センサによる第1基板上の正投影は、温度センサに対応する制御電極による第1基板上の正投影と重なる)ように配置される、
【0126】
S703:第1電極層上に第1誘電体層を形成するステップと、そして
【0127】
S704:第1誘電体層上に第1疎水性層を形成するステップとを含む。
【0128】
ここで、前記製造方法によっては、マイクロ流体基板の基板(第1基板)に温度検出部を組み込み、温度センサと制御電極とを一対一に対応する位置に配置することができる。このような構成は、制御電極と対応する温度センサとの精確な位置合わせを保証し、マイクロ流体チップにおけるマイクロ流体基板上に移動する微小液滴の温度の精確な監視に有用である。
【0129】
図8は、本開示の幾つかの実施形態による
図7に示すマイクロ流体基板の製造方法における、温度検出部を第1基板に形成するステップ(すなわち、S701)のフローチャートを示す。
【0130】
図8に示すように、温度検出部を第1基板上に形成するステップ(すなわち、S701)は、
【0131】
S701a:複数の接地電極を第1基板上に形成するステップと、
【0132】
S701b:複数の接地電極に複数のPN接合を形成して、各接地電極とその上に配置された対応するPN接合とが一緒に温度センサを温度検出部に形成するステップとを含む。
【0133】
図8に示すステップおよび
図7に示すステップによって、
図1に示す構成のマイクロ流体基板を製造することができる。
【0134】
このように製造されたマイクロ流体基板では、温度検出部の各温度センサにおいて、接地電極と接地電極に対応する制御電極との間にPN接合が配置されているので、第1電極層の各制御電極を、微小液滴駆動部用の電極および温度検出部における各温度センサ用の電極の両方として構成することができる。これにより、マイクロ流体基板の構造を単純化し、製造コストを低減し、マイクロ流体基板の厚さを減少させることができる。
【0135】
図9Aは、本開示の他の実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法のフローチャートを示す。
【0136】
図9Aに示すように、本方法は、具体的にS901-S910にそれぞれ記載された以下のステップを含み、製造工程全体のステップを実行した後の中間製品はそれぞれ
図10~
図19に示される。
【0137】
S901:第1導電層を第1基板上に形成するステップと、
【0138】
図10は、第1導電層102を第1基板101に形成するステップS901の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0139】
ここで、第1導電層は、Al、Cu、Mo、Ti、Crなどの金属、これらの金属のいずれか2つの合金、またはインジウム錫酸化物(ITO)又はインジウム亜鉛酸化物(IZO)の薄膜のような透明導電材料などを含むことができる。
【0140】
S902:第1導電層上に第1パターニング処理を施すことにより、複数の接地電極を形成するステップと、
【0141】
具体的には、
図9Bに示すように、ステップS902は、サブステップS902a~S902cにそれぞれ記載された以下のサブステップを含むことができる。
【0142】
S902a:フォトレジスト層を第1導電層に形成するステップと、
【0143】
S902b:フォトレジスト層を露光してパターンを有するマスク層を形成するステップと、そして
【0144】
S902c:第1導電層をマスク層でエッチングして複数の接地電極を取得するステップとを含む。
【0145】
図11は、第1パターニング処理を施すことにより複数の接地電極103を形成するステップS902の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。ただし、ステップS902においては、複数の制御ピン、複数の温度ピン、複数のリード線(複数の制御リード線、複数の温度リード線、またはその両方を含む)を同時に形成することも可能である。
【0146】
S903:N型層を複数の接地電極に形成するステップと、
【0147】
具体的には、
図9Cに示すように、ステップS903は、以下のサブステップS903a~S903bを含むことができる。
【0148】
S903a:第1アモルファスシリコン層を複数の接地電極上に形成するステップと、
【0149】
S903b:第1アモルファスシリコン層にN型ドーピング(例えば、リンをドーピング)を行い、N型層を形成するステップとを含む。
【0150】
図12は、N型層104を複数の接地電極103に形成するステップS903の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0151】
S904:P型層をN型層に形成するステップと、
【0152】
具体的には、
図9Dに示すように、ステップS904は、以下のサブステップS904a~S904bを含むことができる。
【0153】
S904a:第2アモルファスシリコン層をN型層に形成するステップと、
【0154】
S904b:第2アモルファスシリコン層にP型ドーピング(例えば、ホウ素をドーピング)を行い、P型層を形成するステップとを含む。
【0155】
図13は、P型層105をN型層104に形成するステップS904の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0156】
S905:N型層とP型層とに第2パターニング処理を施すことにより、複数のPN接合を形成するステップと、
【0157】
図14は、N型層104とP型層105とに第2パターニング処理を施すことにより複数のPN接合106を複数の接地電極103に形成するステップS905の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。各接地電極103にはPN接合が形成されている。
【0158】
S906:複数のPN接合を有する第1基板に平坦化処理を行うステップと、
【0159】
具体的には、
図9Eに示すように、ステップS906は、
【0160】
S906a:複数のPN接合を有する基板に誘電体材料層をコーティングするステップと、
【0161】
S906b:基板に対してその上面が複数のPN接合の上面と実質的に同じ距離を有するように、誘電体材料層にパターニング処理を施すステップとを含む。
【0162】
ここで、誘電体材料層は、酸化シリコン、窒化シリコン、PDMS、またはパリレンなどを含むことができる。
【0163】
図15は、平坦化層107を隣接するPN接合106の間に配置して第1基板101に対してその上面が複数のPN接合106の上面と実質的に同じ距離を有するようするステップS906の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。一態様として、ビアを平坦化層107に形成することができる。
【0164】
S907:第2導電層を複数のPN接合に形成するステップと、
【0165】
図16は、平坦化層107および複数のPN接合106の上面に実質的に配置された第2導電層108を平坦化処理を施した第1基板に形成するステップS907の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0166】
S908:第2導電層に第3パターニング処理を施すことにより、複数の制御電極を有する第1電極層を形成するステップと、
【0167】
図17は、第2導電層108に第3パターニング処理を施すことにより複数の制御電極109を有する第1電極層を形成するステップS908の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。実施形態では、各制御電極がビアを介して制御リード線に電気的に接続するようにビアが平坦化層107に配置される。
【0168】
S909:第1誘電体層を第1電極層に形成するステップと、
【0169】
具体的には、ステップS909は、積層工程によって実現することができる。第1誘電体層は、シリコン酸化物、シリコン窒化物、PDMS、またはパリレンなどを含むことができる。
【0170】
図18は、第1誘電体層110を複数の制御電極109に形成するステップS909の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0171】
S910:第1疎水性層を第1誘電体層に形成するステップと、を含む。
【0172】
具体的には、ステップS910は、積層工程によって実現することができる。疎水性層は、ポリテトラフルオロエチレン、フッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート、または有機ポリマーなどを含むことができる。
【0173】
図19は、第1疎水性層111を第1誘電体層110に形成するステップS910の後に製造されたマイクロ流体基板の中間製品を示す。
【0174】
他の実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法によれば、前記実施形態のステップS901~S905(その中間製品は
図10~
図14にそれぞれ示されている)は、
図9Fに示す以下のステップS9031、S9032、S9041、S9042に置き換えることができる。
【0175】
S9011:第1導電層を第1基板に形成するステップと、
【0176】
S9021:第1導電層に第1パターニング処理を施すことにより、複数の接地電極を形成するステップと、
【0177】
S9031:N型層を複数の接地電極に形成するステップと、
【0178】
S9041:N型層に第4パターニング処理を施すことにより、複数のPN接合におけるパターン化されたN型層を形成するステップと、
【0179】
S9051:P型層をN型層に形成するステップと、
【0180】
S9061:P型層に第5パターニング処理を施すことにより、複数のPN接合におけるパターン化されたP型層を形成し、パターン化されたN型層およびパターン化されたP型層が一緒に複数のPN接合を形成するステップ。
【0181】
さらに別の実施形態によるマイクロ流体基板の製造方法によれば、
図10に示すように、ステップS901~905(その中間製品が
図10~
図14に示されている)は、
図9Gに示す以下のステップに置き換えることができる。
【0182】
S9012:第1導電層を第1基板に形成するステップと、
【0183】
S9022:N型層を第1導電層に形成するステップと、
【0184】
S9032:P型層をN型層に形成するステップと、
【0185】
S9042:第1導電層、N型層、P型層に第6パターニング処理を施すことにより、それぞれに対応する複数の接地電極と複数のPN接合を形成するステップ。
【0186】
第4の態様では、本開示は、マイクロ流体チップの制御方法をさらに提供する。ここで、マイクロ流体チップは、前記の実施形態のいずれか1つによるマイクロ流体チップであってもよく、上部基板およびマイクロ流体基板を含むことができる。マイクロ流体基板は、複数の制御電極を含む微小液滴駆動部と、少なくとも1つの温度センサを含む温度検出部とを備える。少なくとも1つの温度センサは、複数の制御電極に対応する位置に設けられる。
【0187】
この方法は実質的に以下のステップを含む動作段階を含む。
【0188】
複数の制御電極のうちの1つに第1電圧信号を供給して、微小液滴を駆動して上部基板とマイクロ流体基板との間の所定の経路に沿って移動させる微小液滴駆動ステップと、
【0189】
少なくとも1つの温度センサの1つに第2電圧を供給して、少なくとも1つの温度センサの1つに対応する複数の制御電極の1つに関連する位置における温度を検出する温度検出ステックと、を含む。
【0190】
このように、微小液滴駆動ステップは、実質的に、第1電圧信号を供給することによって複数の駆動ユニットの1つをオンにするステップを含み、温度検出ステップは、第2電圧信号を供給することによって、少なくとも1つの温度センサのうちの1つに対応する複数の制御電極のうちの1つに関連する位置にある少なくとも1つの温度センサのうちの1つをオンにするステップを含む。
【0191】
図20は、
図5及び
図6Aに示すマイクロ流体チップに適する、本発明の特定の実施形態によるマイクロ流体チップの制御方法のフローチャートである。
図20に示すように、この制御方法は、
【0192】
S201:第1制御電極と基準電極に第1電圧を印加する微小液滴駆動ステップと、
【0193】
ここで、第1制御電極は、マイクロ流体チップのマイクロ流体基板における第1電極層の複数の制御電極のうちの1つであり、現在の微小液滴の位置及び所定の移動経路に基づいて複数の制御電極から確定することができる。
【0194】
S202:第1制御電極およびそれに対応する接地電極に第2電圧を印加し、温度検出ステップにおける基準電極を浮遊(またはオフ)するステップと、を含む。
【0195】
図21は、本開示の実施形態によるマイクロ流体方法における駆動信号の時系列チャートである。
【0196】
具体的には、
図21に示すように、方形波信号X1は微小液滴駆動電圧信号として使用されており、方形波信号X2は温度検出駆動電圧信号として使用されている。方形波形信号X1(微小液滴駆動電圧信号)が低レベルのときに温度検出が行われ、方形波形信号X1(微小液滴駆動信号)が高レベルのときに微小液滴の駆動が行われる。図示の例では、微小液滴駆動電圧信号の周波数は、おおよそ0.1~10Hzの範囲であり、温度検出駆動電圧信号の周波数は、微小液滴駆動電圧信号の周波数以下である。
【0197】
図22Aおよび
図22Bはそれぞれ、本発明の実施形態に係るマイクロ流体チップの駆動方法における温度検出ステップ及び微小液滴駆動ステップにおけるマイクロ流体チップを示す。
【0198】
方形波信号X1が低レベルのときには、
図22Aに示すように、第1制御電極301及びこれに対応する接地電極303に電圧が印加され、基準電極302が浮遊またはオフする。
【0199】
これは、PN接合型温度センサの動作原理として、電流が変化しない場合、PN接合の電圧が所定の温度範囲内の温度と直線関係にあるためである。このため、実装の時には、第1制御電極301および第1制御電極301に対応する接地電極303による回路に、可変抵抗器304を直列に接続することができる。
【0200】
可変抵抗304を調整することにより、第1制御電極301およびそれに対応する接地電極303による回路の電流がほぼ一定または一定に維持され、第1制御電極301とこれに対応する接地電極303との間の電圧(Vtemp)を検出することにより、第1制御電極301に対応する領域における温度を確定することができる。
【0201】
矩形波信号X1が高レベルのときには、
図22Bに示すように、第1制御電極301と基準電極302に電圧が印加され、接地電極303を浮遊させる。これにより、微小液滴駆動ステップでは、制御電極の充電シーケンスを変更することによって微小液滴を移動させるように制御することができる。具体的には、微小液滴の所定の移動経路に応じて、対応する制御電極を順次に充電することができる。
【0202】
図23は、本開示の幾つかの実施形態による微小液滴の移動を制御するためのシーケンスを示す概略図である。
図24に示すように、制御電極401に対応する領域にある微小液滴は、制御電極405に対応する領域への
図23の矢印に示す経路に沿って移動するように制御される。
【0203】
このため、制御電極の充電シーケンスは、制御電極402、制御電極403、及び制御電極404に電圧を順次印加することになる。最後に、制御電極405に電圧を印加することにより、微小液滴を所定の経路に沿って移動させて、目的地、すなわち制御電極405に対応する領域に到達させる。
【0204】
実施形態による方法は、外部回路の制御によって、微小液滴駆動ステップと温度検出ステップとの間の切り替えを実現することができる。温度変化に敏感な特定の生化学反応に関しては、温度をリアルタイムで検出することができ、さらに温度制御を行うための外部手段によってこれらの反応を円滑に進行させることができる。
【0205】
一態様として、制御方法は、以下のサブステップを含む温度調節ステップをさらに含むことができる:
【0206】
S301:少なくとも1つの温度センサの1つによって前記位置における温度が所定の範囲内にないことを検出した場合、複数の制御電極のうちのいずれか1つへの第1電圧の供給を停止するステップと、
【0207】
S302:少なくとも1つの温度センサの1つによってその位置における温度が所定の範囲内にあることを検出するまでに、温度を調整するステップと、
【0208】
S303:複数の制御電極のうちの1つへの第1電圧信号の供給を再開する。
【0209】
この方法によれば、ある位置における温度が所定の範囲内にあるか否かを温度センサによって検出し、この位置における温度が所定の範囲内にない場合には動作段階を停止するという効果を実現することができる。温度調節後に温度が所定の範囲内にある場合、例えば温度調節モジュールを用いて、動作段階を再開することができる。したがって、最大の反応効率のために最適な反応温度を確保することができる。
【0210】
ここで、温度調節モジュールは、特定の位置における温度が所定の範囲内にない場合、その位置に移動してその位置における温度を所定の範囲内に調節する可動式加熱抵抗であることができる。
【0211】
実施形態によるマイクロ流体チップでは、マイクロ流体基板の複数の制御電極および上部基板の基準電極は、実質的に複数の駆動ユニットを形成し、これらの駆動ユニットは、微小液滴を上部基板とマイクロ流体基板との間の所定の経路に沿った各位置に移動させるように配置される。マイクロ流体基板の少なくとも1つの温度センサは、複数の駆動ユニットに対応する位置に配置されることができる。少なくとも1つの温度センサの各々は、該位置にある微小液滴の温度がその位置に対応する範囲内にあるかどうかを検出するように構成される。
【0212】
マイクロ流体チップの各位置に対応する温度の範囲は、各位置で実質的に同じでも、異なってもなるように設定することができる(すなわち、各位置の温度範囲を個別にプログラムすることができる)。
【0213】
微小液滴が特定の位置に移動するように動作段階によって駆動すると、微小液滴の温度は、この特定の位置に対応する1つの温度センサによって検出される。微小液滴の温度が、その特定の位置に対して特にプログラムされた範囲内にある場合、微小液滴は次の位置に移動するようにすることができる。さもなければ、動作段階を停止して、微小液滴の温度をその範囲内に収まるまで調節し、次いで微小液滴を次の位置に移動させることができる。
【0214】
以上、特定の実施形態を詳細に説明したが、その説明は単なる例示のためのものである。したがって、上記で説明した多くの態様は、特に断りのない限り、必要なまたは必須の要素として意図されない。
【0215】
当業者にとっては、本発明の精神および範囲を超えず、本開示の実施形態、および前記の実施形態に様々な変更または同等の行為を加えることができ、その範囲は、そのような変更または同等の構成を包含するように最も広い解釈が与えられるべきである。