IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友電工デバイス・イノベーション株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-高周波増幅器 図1
  • 特許-高周波増幅器 図2
  • 特許-高周波増幅器 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】高周波増幅器
(51)【国際特許分類】
   H03F 3/60 20060101AFI20230613BHJP
   H03F 3/24 20060101ALI20230613BHJP
   H03F 1/34 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H03F3/60
H03F3/24
H03F1/34
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019077053
(22)【出願日】2019-04-15
(65)【公開番号】P2020178162
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-01-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(72)【発明者】
【氏名】木元 雄資
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-040869(JP,A)
【文献】特開2005-318373(JP,A)
【文献】特開平10-065465(JP,A)
【文献】特開2011-176394(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122271(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03F 3/46- 3/66
H03F 1/00- 3/45
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子に提供された入力高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタと前記出力端子との間で互いに直列に接続された、前記入力高周波信号の基本波についての整合回路、前記基本波に対する高調波についての反射回路、及び、前記出力端子に現れる高調波を抽出する抽出回路と、
前記抽出回路により抽出された前記高調波の位相および強度を調整する処理回路と、
前記処理回路により処理された高調波を前記反射回路により反射された高調波と合波して前記トランジスタに与える合波回路と、
を備え
前記抽出回路は、一端が解放され前記基本波について1/4波長の長さを有する伝送線と、前記基本波について1/4波長の長さを有し、一端が当該伝送線の他端に接続され、他端が前記出力端子に接続された他の伝送線と、を含む、
高周波増幅器。
【請求項2】
前記高調波は前記基本波の2倍波である、
請求項1に記載の高周波増幅器。
【請求項3】
前記反射回路は前記合波回路と前記整合回路との間に設けられた前記高調波についての1/4波長の長さを有する伝送線路である、
請求項1又は2に記載の高周波増幅器。
【請求項4】
前記合波回路は、一端が解放され前記基本波について1/4波長の長さを有する伝送線と、前記基本波について1/4波長の長さを有し、一端が前記伝送線の他端に接続され、他端が前記反射回路に接続された他の伝送線と、を含む、
請求項1~3のいずれか1項に記載の高周波増幅器。
【請求項5】
前記処理回路は、前記抽出された高調波を増幅もしくは減衰する他のトランジスタと、前記抽出された高調波の位相を変える伝送線と、を含み、
前記他のトランジスタと前記トランジスタは同じ大きさのトランジスタである、
請求項1~のいずれか1項に記載の高周波増幅器。
【請求項6】
前記処理回路は、前記抽出回路と前記他のトランジスタとの間に、前記基本波を除去するフィルタをさらに備える、
請求項に記載の高周波増幅器。
【請求項7】
入力端子と、
出力端子と、
前記入力端子に提供された入力高周波信号を増幅するトランジスタと、
前記トランジスタと前記出力端子との間で互いに直列に接続された、前記入力高周波信号の基本波についての整合回路、前記基本波に対する高調波についての反射回路、及び、前記出力端子に現れる高調波を抽出する抽出回路と、
前記抽出回路により抽出された前記高調波の位相および強度を調整する処理回路と、
前記処理回路により処理された高調波を前記反射回路により反射された高調波と合波して前記トランジスタに与える合波回路と、
を備え、
前記合波回路は、一端が解放され前記基本波について1/4波長の長さを有する伝送線と、前記基本波について1/4波長の長さを有し、一端が前記伝送線の他端に接続され、他端が前記反射回路に接続された他の伝送線と、を含む、
高周波増幅器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高周波信号を増幅する高周波増幅器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、無線通信、レーダー等の用途においてマイクロ波などの高周波を増幅する高周波増幅器が用いられている。このような高周波増幅器としては、電力損失を抑えるために高効率な動作を可能にしたF級もしくは逆F級などの増幅器が知られている。例えば、下記特許文献1に記載の増幅器は、増幅対象となる基本波信号に対する奇数次の高調波信号を発生させる奇数次高調波信号発生回路と、奇数次の高調波信号を基本波信号と合成する矩形波信号生成回路とを備えている。また、下記特許文献2に記載の増幅器は、第1のトランジスタにより増幅されたRF信号に含まれる高調波を第2のトランジスタに供給する高調波供給回路と、RF信号に含まれる基本波を第2のトランジスタに供給する基本波供給回路とを備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2005-204208号公報
【文献】国際公開2017-122271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した特許文献1に記載の構成においては、高調波信号を発生させる信号源が必要とされているため、消費電力が増加する。また、上述した特許文献2に記載の構成においては、トランジスタの出力側の寄生成分により真性トランジスタ端面までに高調波の減衰が生じ、真性トランジスタ端面における高調波のインピーダンスを真の最適なインピーダンスに設定できず、受動素子による整合だけでは増幅器全体の電力効率を十分に改善することはできない。
【0005】
そこで、本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、電力効率を十分に向上させることが可能な高周波増幅器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一側面に係る高周波増幅器は、入力端子と、出力端子と、入力端子に提供された入力高周波信号を増幅するトランジスタと、トランジスタと出力端子との間で互いに直列に接続された、入力高周波信号の基本波についての整合回路、基本波に対する高調波についての反射回路、及び、出力端子に現れる高調波を抽出する抽出回路と、抽出回路により抽出された高調波の位相および強度を調整する処理回路と、処理回路により処理された高調波を反射回路により反射された高調波と合波してトランジスタに与える合波回路と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電力効率を十分に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る高周波増幅器1の概略構成を示すブロック図である。
図2図1の高周波増幅器1の構成を示す回路図である。
図3】従来の増幅器と高周波増幅器1の入力電力に対する出力電力及び電力付加効率(PAE)を比較したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
[高周波増幅器の構成]
【0010】
図1は、一実施形態に係る高周波増幅器1の構成を示すブロック図である。高周波増幅器1は、無線通信、レーダー等の用途に用いられ、高周波信号を増幅する。図1に示すように、高周波増幅器1は、入力端子PIN、出力端子POUT、入力整合回路3、トランジスタ5、高調波反射回路7、基本波整合回路9、高調波抽出回路13、移相器15、増幅器17、及び合波回路19を含む。入力端子PINは、高周波信号源21から特性インピーダンスZを有する伝送線23を介して高周波信号(RF信号)受ける。一方、出力端子POUTは、特性インピーダンスZを有する負荷25に接続される。高調波反射回路7、基本波整合回路9、及び高調波抽出回路13は、入力端子PINと出力端子POUTとの間で互いに直列に接続されている。
【0011】
入力整合回路3は、トランジスタ5の入力インピーダンスを伝送線23の特性インピーダンスに整合する。具体的には、トランジスタ5の制御端子(ゲート端子)からトランジスタ5を見込んだインピーダンスを、入力整合回路3の伝送線23に接続される端子から当該トランジスタを見込んだ時に、伝送線23の特性インピーダンスに一致するように整合させる。
【0012】
トランジスタ5は、RF信号を増幅する、例えば、電界効果型トランジスタ(FET)である。以下の説明では、トランジスタをFETとして説明するが、バイポーラトランジスタであっても同様の説明が当てはまる。トランジスタ5の入力であるゲートは、伝送線23及び入力整合回路3を介してRF信号が入力される。トランジスタ5のソースは接地され、またそのドレインは、高調波反射回路7および基本波整合回路9を介して出力端子POUTに接続されている。
【0013】
高調波反射回路7、基本波整合回路9は、それぞれ伝送線路で構成され、特有のインピーダンスと特有の長さを有する。高調波反射回路7は、トランジスタ5の出力に含まれる基本波成分を透過し、一方、高調波成分をトランジスタ5に向けて反射する。基本波整合回路9は、トランジスタ5のドレイン端面から出力端子POUT側を見込んだインピーダンスを、トランジスタ5の出力電力や電力付加効率などの設計パラメータを最適化する最適負荷インピーダンスに整合する。
【0014】
入力端子PINから入力されるRF信号は基本波の他に高調波成分を含んでいることが一般的である。また、トランジスタ5の入出力特性は非線形であり、歪を全く含まない(高調波成分を全く含まない)RF信号を入力した場合であっても、その増幅信号には有意な高調波成分が現れる。高調波反射回路7は、この高調波成分をトランジスタ5に向けて反射し、基本波を専ら通過させる。基本波整合回路9は、通過した基本波について最適負荷インピーダンスに整合する。
【0015】
高調波抽出回路13は、基本波整合回路9を透過して出力端子POUTに現れる高調波成分を抽出する。高調波反射回路7はトランジスタ5の出力に現れる高調波成分の大部分を反射するが、透過量をゼロとすることは原理的に不可能である。また、基本波整合回路9も専ら基本波を通過し、基本波以外の高調波成分を反射、もしくは吸収するが、基本波整合回路9の出力において高調波成分をゼロとすることは不可能である。出力端子POUTには僅かではあるが有意な大きさの高調波成分が現れる。高調波抽出回路13は、この出力端子POUTに現れた高調波成分を抽出し、移相器(処理回路)15によりその位相を回転することにより調整し、増幅器(処理回路)17はその強度を増幅または減衰することにより調整する。そして、この様にして処理された高周波成分は、高調波についての合波回路19を介して、高調波反射回路7によって反射された高調波と合波されてトランジスタ5のドレインに与えられる。
【0016】
上述したように、トランジスタ5の出力信号中には必ず高調波成分が含まれる。高調波成分が出力伝送線路等の外部回路を介して負荷25に与えられると、トランジスタ5のドレイン抵抗や外部回路において余分な電力が消費されることになる。従って、トランジスタ5についてドレイン出力から負荷25を見込んだ時に、高調波についての反射強度が大きく設定されるほうが好ましい。外部回路に高調波成分が出力されていないことと等価になる。また、高調波を反射させることで、トランジスタ5のドレイン端面で波形成形することで電力損失を抑制することができる。
【0017】
しかしながら、従来の基本波整合回路のみの出力整合回路では、高調波成分についての反射強度を十分高めることができなかった。基本波について最適な整合を行った場合、必ずしも高調波成分についての最適な反射条件を与えることにはならなかった。また、高調波反射回路と基本波整合回路を直列に接続する構成の場合、高調波反射回路によって基本波についての整合条件が最適な値からシフトしてしまうこともあった。高調波反射回路と基本波整合回路の一方が他方についての最適条件を阻害する要素となる場合があった。
【0018】
さらに、一般にトランジスタ5は素子部分(半導体素子に含まれる部分)と当該素子部分を外部に引出し外部回路と接続する部分(ボンディングワイヤ、ボンディングパッド、リード端子等)で構成される。素子部分について、基本波、高調波いずれについてもその整合条件、反射条件が満足された場合であっても、ボンディングワイヤ、ボンディングパッド、リード端子等を含む実際のデバイスとして回路を構成した場合には、整合条件、反射条件について満足な組合せを得ることが困難であった。
【0019】
本実施形態では、出力端子POUTに現れる高調波成分を、増幅または減衰してトランジスタ5のドレイン出力に与えることで、トランジスタ5について高調波反射強度を増大させ、出力端子POUTに現れる基本波成分を増大させる構成を提供する。
【0020】
図2を参照して、高周波増幅器1の具体的な回路構成について説明する。
【0021】
図2に示すように、高周波増幅器1は、トランジスタ5と出力端子POUTとの間を接続し、伝送線路21a~21d、及びインダクタとキャパシタの並列回路で示されている平面導波路31を含む主伝送線路と、主伝送線路のノードCからトランジスタ17aを介して主伝送線路のノードCに戻る副伝送線路とで構成される。
【0022】
高調波反射回路7は、基本波整合回路9と合波回路19との間の主伝送線路のノードCに接続され、長さがλ/8に相当する伝送線路7aを含む。ここでλは基本波の波長であり、λ/8は2倍波についての1/4の長さを有する伝送線路である。伝送線路7aの一端は解放(オープン)されているので、主伝送線路上のノードCは2倍波成分に対してはショートとみなすことができ、主伝送線路を伝搬する2倍波についての反射回路を構成する。
【0023】
高調波抽出回路13は、基本波についてλ/4の長さを有する二つの伝送線路13a,13bを含む。伝送線路13bの一端は解放されており、伝送線路13bの他端は伝送線路13aの一端に接続され、伝送線路13aの他端は主伝送線路上のノードC2を介して出力端子POUTに接続されている。その結果、副伝送線路上の二つの伝送線路13a,13bの間のノードCは基本波についてショートと見做すことができる。一方、ノードCは2倍波についてはオープンとなる。そして、伝送線路13aも基本波についてλ/4の長さを有するので、伝送線路13aの他端に接続された主伝送線路上のノードCは、基本波および2倍波について、ともにオープンとなる。
【0024】
伝送線路13a及び二つの伝送線路21c,21dは、基本波整合回路9を構成する。特に、2倍波についての反射回路を構成する伝送線路7aが主伝送線路上に挿入されているので、その下流側に当該伝送線路7aにより乱された主伝送線路の特性インピーダンスを、基本波について整合する必要がある。伝送線路13a,13bがともに2倍波の半波長の長さを有するので、基本波整合回路9を構成する伝送線路13a,21c,21dは2倍波に対しては影響を与えない。その結果、伝送線路7aで反射せず漏洩した2倍波は、その一部がノードCから副伝送線路に流れ込む。
【0025】
ノードCを経て副伝送線路に流れ込んだ2倍波は、伝送線路15a,17bを介してトランジスタ17aに至り、トランジスタ17aで増幅あるいは減衰された後、伝送線路17c,15bを介して合波回路19に至る。トランジスタ17aはトランジスタ5と同一種類および同一サイズのトランジスタである。伝送線路15a、15bは副伝送線路に流れ込んだ2倍波の位相を変える移相器15を構成する。また、伝送線路15aの一端は抵抗、インダクタ、キャパシタで構成されるフィルタ回路29に接続されている。このフィルタ回路29は、副伝送線路に流れ込んだ基本波成分がトランジスタ17aに影響を与えないようにその成分を除去するために、高調波抽出回路13とトランジスタ17aとの間に挿入される。基本波と2倍波のそれぞれの成分の大きさは、一般に前者が圧倒的に大きい。基本波整合回路9を構成する伝送線路21c,21d,13aによって基本波が副伝送線路に流れ込むことを抑制しているが、フィルタ回路29により、副伝送線路に流れ込んだ基本波成分がトランジスタ17aに至ることを防止している。このため、このフィルタ回路29は周波数遮断特性の優れたフィルタ構成とすることが望ましい。伝送線路17cの他端は、移相器15を構成する伝送線路15bの一端に接続される。
【0026】
合波回路19は、いずれもその基本波についてλ/4の長さを有する二つの伝送線路19a,19bを含む。すなわち、2倍波については半波長の長さを有する。伝送線路19bの一端は解放され、伝送線路19bの他端が伝送線路19aの一端に接続されている。また、伝送線路19aの他端は、主伝送線路上のトランジスタ5と伝送線路7aとの間のノードCに接続されている。伝送線路19bの一端が解放されているので、二つの伝送線路19a,19bの間のノードCは基本波についてショート、2倍波についてオープンとみなすことができる。その結果、主伝送線路上のノードCについて基本波、2倍波ともにオープンとみなすことができる。すなわち、合波回路19は、高調波抽出回路13に含まれる二つの伝送線路13a,13bと同様の作用を呈する。すなわち、主伝送線路上の伝送線路21a,21bと伝送線路19aとは、基本波について整合回路として作用し、2倍波については何らの効果も与えない。
【0027】
上述した高周波増幅器1においては、トランジスタ5の出力から2倍波を抽出して、その2倍波を振幅及び位相を調整した後にトランジスタ5のドレインにフィードバックできる。これにより、トランジスタ5のドレインにおいて2倍波の強度を大きくすることができ、相対的に、出力端子POUTに現れる基本波を大きくすることができ、高周波増幅器1の全体としての電力効率を向上させることができる。より具体的には、2倍波の反射強度を大きくすることができ、受動回路のみで高調波処理回路を構成した場合に比べて、波形成形により熱損失を軽減することができ、高周波増幅器1としての電力効率を向上させることができる。
【0028】
図3は、高周波増幅器1における入力電力に対する出力電力及びPAE(電力付加効率)について、本実施形態において2倍波の合成を行わない場合(図3(a))と本実施形態において2倍波の合成を行った場合(図3(b))を比較したものである。それぞれのグラフにおいてグラフG1が入力電力に対する出力電力の変化を示し、グラフG2が入力電力に対するPAEを示す。このように、入力電力が20dBmの時の出力電力がともに約31dBmと同等であるにも係らず、2倍波についての合成回路を備えた本実施形態では最大電力付加効率が従来値の62%から約73%程度まで向上した。
【0029】
本実施形態では、トランジスタ5のドレインに2倍波を帰還することにより、高調波反射回路7で反射されてトランジスタ5に戻る2倍波を等価的に大きくし、その結果、基本波についての高効率化を図ることができる。すなわち、高周波増幅器1においては、トランジスタ5のドレインにおいて伝送線路7aによって高調波を反射させ、高調波抽出回路13、移相器15、増幅器17、及び合波回路19を経由して、高調波を抽出した後にその高調波の振幅及び位相を調整してから出力に合波することができる。これにより、トランジスタ5の真性部の端面における高調波の電圧反射係数Γを十分に向上させることができる。
【0030】
また、高周波増幅器1においては、高調波抽出回路13が伝送線路13a,13bを含み、合波回路19が伝送線路19a,19bを含んでいる。このような構成によれば、高調波抽出回路13及び合波回路19によってトランジスタ5の出力の基本波の伝搬特性に影響を与えることなく高調波を抽出した後に出力に合波することができる。
【0031】
さらに、高周波増幅器1にはフィルタ回路29が設けられている。これにより、トランジスタ5の出力から高調波を効率的に抽出してその出力にフィードバックすることができる。
【0032】
また、本実施形態では、トランジスタ5のドレインから基本波の周波数の2倍の周波数成分である2倍波を抽出してフィードバックしている。このような構成によって、トランジスタ5のドレインにおいて擬似的な矩形波に変換された電圧信号を効率的に発生させることができる。
【0033】
また、本実施形態では、増幅器17がトランジスタ5と同一のサイズのトランジスタ17aを含んで構成されている。このような構成により、二つのトランジスタについての設計パラメータを共通化することができる。
【0034】
以上、好適な実施の形態において本発明の原理を図示し説明してきたが、本発明は、そのような原理から逸脱することなく配置および詳細において変更され得ることは、当業者によって認識される。本発明は、本実施の形態に開示された特定の構成に限定されるものではない。したがって、特許請求の範囲およびその精神の範囲から来る全ての修正および変更に権利を請求する。
【0035】
上記実施形態では、高調波抽出回路13によってトランジスタ5の出力から2倍波を抽出して、抽出した2倍波をトランジスタの出力に合波しているが、この2倍波は、3倍波、4倍波等の任意の高調波とされてもよい。また、上記実施形態における副伝送線路の様な高調波処理回路を複数設けそれぞれ別個の高調波について処理する構成としてもよい。このような場合にも、トランジスタ5の真性部の端面における高調波の電圧反射係数Γを十分に向上させ電力効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0036】
1…高周波増幅器、5…トランジスタ、7…高調波反射回路、9…基本波整合回路、13…高調波抽出回路、7a,13a,13b…伝送線路、15…移相器、15a,15b…伝送線路、17…増幅器、17a…トランジスタ、19…合波回路、19a,19b,21a~21d…伝送線路、29…フィルタ回路。
図1
図2
図3