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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】光導波路型受光素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/107 20060101AFI20230613BHJP
   G02B 6/12 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
H01L31/10 B
G02B6/12 301
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020035029
(22)【出願日】2020-03-02
(65)【公開番号】P2021141111
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000154325
【氏名又は名称】住友電工デバイス・イノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100136722
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼木 邦夫
(74)【代理人】
【識別番号】100174399
【弁理士】
【氏名又は名称】寺澤 正太郎
(72)【発明者】
【氏名】米田 昌博
(72)【発明者】
【氏名】沖本 拓也
【審査官】吉岡 一也
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-207675(JP,A)
【文献】特開2013-110207(JP,A)
【文献】特開2002-324911(JP,A)
【文献】特開2001-177143(JP,A)
【文献】特開2015-149332(JP,A)
【文献】特開2018-148209(JP,A)
【文献】国際公開第2012/029897(WO,A1)
【文献】特開平08-162663(JP,A)
【文献】特開平06-232442(JP,A)
【文献】特開平07-038141(JP,A)
【文献】特開平09-283786(JP,A)
【文献】米国特許第06495380(US,B2)
【文献】中国特許出願公開第105405917(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02-31/0392,31/08-31/119
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1導電型を有する第1半導体層と、
前記第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、
前記第1半導体層の前記第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、
を備え、
前記光導波路構造は、
前記第1半導体層上に設けられた光導波コア層と、
前記光導波コア層上に設けられたクラッド層と、
を含み、
前記導波路型フォトダイオード構造は、
前記第1半導体層上に設けられ、前記光導波コア層と光結合された光吸収層と、
前記光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記光吸収層との間に設けられた、前記第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、
前記増倍層と前記光吸収層との間に設けられ、前記光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第3半導体層と、
を含み、
前記光導波路構造と前記導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、前記第1半導体層と前記導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さく、
前記増倍層及び前記第3半導体層は、前記第1半導体層の前記第1領域と前記光導波コア層との間に延在している、光導波路型受光素子。
【請求項2】
前記第1半導体層の前記第1領域と前記光導波コア層との間の前記増倍層及び前記第3半導体層は、前記光導波路構造の全域にわたって設けられている、請求項1に記載の光導波路型受光素子。
【請求項3】
前記導波路型フォトダイオード構造は、
前記第1半導体層の前記第2領域と前記増倍層との間に設けられた、前記第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープのバッファ層と、
前記バッファ層と前記増倍層との間に設けられ、前記増倍層より高い不純物濃度の第1導電型を有する第4半導体層と、
を更に含み、
前記バッファ層及び前記第4半導体層は、前記第1半導体層の前記第1領域と前記増倍層との間に延在している、請求項1または請求項2に記載の光導波路型受光素子。
【請求項4】
前記導波路型フォトダイオード構造は、前記第3半導体層と前記光吸収層の間に設けられた第5半導体層を更に含む、請求項1または2に記載の光導波路型受光素子。
【請求項5】
第1導電型を有する第1半導体層と、
前記第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、
前記第1半導体層の前記第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、
を備え、
前記光導波路構造は、
前記第1半導体層上に設けられた第6半導体層と、
前記第6半導体層上に設けられた光導波コア層と、
前記光導波コア層上に設けられたクラッド層と、
を含み、
前記導波路型フォトダイオード構造は、
前記第1半導体層上に設けられ、前記光導波コア層と光結合された光吸収層と、
前記光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、
前記第1半導体層と前記光吸収層との間に設けられた、前記第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、
前記増倍層と前記光吸収層との間に設けられ、前記光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第7半導体層と、
を含み、
前記光導波路構造と前記導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、前記第1半導体層と前記導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さく、
前記第6半導体層は、前記第7半導体層よりも低い不純物濃度の第2導電型を有し、前記第1界面において前記増倍層及び前記第7半導体層と接する、光導波路型受光素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光導波路型受光素子に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体光集積素子及びその製造方法に関する技術が開示されている。この文献に記載された半導体光集積素子は、半導体基板上に形成されたフォトダイオード領域と、フォトダイオード領域の側面に対してバットジョイント結合した光導波路領域とを備える。フォトダイオード領域は、n型クラッド層上に順に積層された光吸収層及びp型クラッド層を含む。光導波路領域は、n型クラッド層上に順に積層された光導波路層及び上側クラッド層を含む。光導波路層は、傾斜したバットジョイント側面に対する這い上がり部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-110207号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造とが共通の基板上に集積された光導波路型受光素子が研究・開発されている。このような光導波路型受光素子は、例えば、40Gb/s以上といった高速な伝送レートを有する、多値変調方式とデジタルコヒーレント受信方式とを組み合わせた光伝送システムの受信フロントエンドとして用いられる。光導波路型受光素子は、光吸収層を含むフォトダイオードのための半導体積層部と、光導波コア層を含む光導波路のための半導体積層部とのバットジョイント構造を基板上に形成することにより作製される。
【0005】
光伝送システムの受信フロントエンドとして用いられる光導波路型受光素子には、高い受信感度が要求される場合がある。一つの解決策として、導波路型フォトダイオード構造にアバランシェ増倍作用を持たせることが考えられる。その場合、フォトダイオードを構成する光吸収層とその下の半導体層との間に、アバランシェ増倍のための増倍層を設けるとよい。しかしながら多くの場合、バットジョイント界面はウェットエッチングにより形成されるので、基板の主面に垂直な方向に対して傾斜している(例えば特許文献1を参照)。従って、増倍層の側面もまた、該方向に対して傾斜することとなる。その場合、増倍層の側面付近においては他の部分と比較して空乏化が進まず、空乏化幅が他の部分と比較して狭くなってしまう。このため、増倍層の側面付近において他の部分よりも最大電界(Emax)が大きくなり、エッジブレークダウンが発生し易くなるという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造を備え、増倍層の空乏化幅を均一に近づけることができる光導波路型受光素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態に係る光導波路型受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層の第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた光導波コア層と、光導波コア層上に設けられたクラッド層と、を含む。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、光導波コア層と光結合された光吸収層と、光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、第1半導体層と光吸収層との間に設けられた、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、増倍層と光吸収層との間に設けられ、光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第3半導体層と、を含む。光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。増倍層及び第3半導体層は、第1半導体層の第1領域と光導波コア層との間に延在している。
【0008】
別の実施形態に係る光導波路型受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層の第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた第6半導体層と、第6半導体層上に設けられた光導波コア層と、光導波コア層上に設けられたクラッド層と、を含む。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、光導波コア層と光結合された光吸収層と、光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、第1半導体層と光吸収層との間に設けられた、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、増倍層と光吸収層との間に設けられ、光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第7半導体層と、を含む。光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。第6半導体層は、第7半導体層よりも低い不純物濃度の第2導電型を有し、第1界面において増倍層及び第7半導体層と接する。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造を備え、増倍層の空乏化幅を均一に近づけることができる光導波路型受光素子を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る光導波路型受光素子を備える受光デバイスの構成を示す平面図である。
図2図2は、図1に示されたII-II線に沿った断面を示している。
図3図3は、図2の一部を拡大して示している。
図4図4は、図1に示されたIV-IV線に沿った断面を示している。
図5図5は、図1に示されたV-V線に沿った断面を示している。
図6図6は、比較例としての光導波路型受光素子102の構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。
図7図7の(a)は、比較例の増倍層11Aの側面付近を拡大して示す図である。図7の(b)は、増倍層11Aの厚み方向における電界強度の変化を示す図である。
図8図8の(a)は、第1実施形態の増倍層11の側面付近を拡大して示す図である。図8の(b)は、増倍層11の厚み方向における電界強度の変化を示す図である。
図9図9は、第1変形例に係る光導波路型受光素子2Bの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。
図10図10は、第2変形例に係る光導波路型受光素子2Cの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。
図11図11は、第3変形例に係る光導波路型受光素子2Dの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。
図12図12は、第2実施形態に係る光導波路型受光素子2Eの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。
図13図13の(a)は、第2実施形態の増倍層11Aの側面11j付近を拡大して示す図である。図13の(b)は、増倍層11Aの厚み方向における電界強度の変化を示す図である。
図14図14は、光導波路型受光素子の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に、本開示の実施形態を列記して説明する。一実施形態に係る光導波路型受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層の第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた光導波コア層と、光導波コア層上に設けられたクラッド層と、を含む。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、光導波コア層と光結合された光吸収層と、光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、第1半導体層と光吸収層との間に設けられた、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、増倍層と光吸収層との間に設けられ、光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第3半導体層と、を含む。光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。増倍層及び第3半導体層は、第1半導体層の第1領域と光導波コア層との間に延在している。
【0012】
この光導波路型受光素子では、導波路型フォトダイオード構造が増倍層及び第3半導体層を含む。増倍層は、第1半導体層と光吸収層との間に設けられたキャリア増倍層であって、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型を有するか、またはアンドープである。第3半導体層は、増倍層と光吸収層との間に設けられた電界降下層であって、光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する。このように、導波路型フォトダイオード構造が増倍層及び第3半導体層を含むことにより、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造を好適に実現することができる。また、この光導波路型受光素子では、光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。言い換えると、バットジョイント界面が第1半導体層の上面に垂直な方向に対して傾斜している。前述したように、増倍層の側面が同様に傾斜している場合、増倍層の側面付近においては他の部分と比較して空乏化が進まず、空乏化幅が他の部分と比較して狭くなってしまう。しかしながら、この光導波路型受光素子では、増倍層及び第3半導体層が、第1半導体層の第1領域と光導波コア層との間に延在している。故に、側面の傾斜に起因する空乏化幅のばらつきが低減される。すなわち、この光導波路型受光素子によれば、増倍層の空乏化幅を均一に近づけることができるので、増倍層において部分的に最大電界(Emax)が大きくなることを抑制し、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができる。
【0013】
上記の光導波路型受光素子において、第1半導体層の第1領域と光導波コア層との間の増倍層及び第3半導体層は、光導波路構造の全域にわたって設けられてもよい。その場合、光導波路型受光素子を製造する際に、第1半導体層上の全面に増倍層及び第3半導体層を成長させればよいので、製造工程を簡易にできる。
【0014】
上記の光導波路型受光素子において、導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層と増倍層との間に設けられた、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープのバッファ層と、バッファ層と増倍層との間に設けられ、増倍層より高い不純物濃度の第1導電型を有する第4半導体層と、を更に含み、バッファ層及び第4半導体層は、第1半導体層の第1領域と増倍層との間に延在してもよい。第4半導体層により、逆バイアス電圧印加時のバッファ層の電界強度をキャリア増倍が発生しない程度に抑えて、空乏幅を拡大することができる。故に、当該フォトダイオードのCR時定数をより小さくすることができ、その結果、より高速(広帯域)の高周波応答特性を実現することができる。
【0015】
上記の光導波路型受光素子において、導波路型フォトダイオード構造は、第3半導体層と光吸収層の間に設けられた第5半導体層を更に含んでもよい。第5半導体層の厚さを調整することにより、光導波コア層の厚さ方向の中心位置と、光吸収層の厚さ方向の中心位置とを互いに精度良く合わせることができる。故に、光吸収層が薄膜化された場合であっても、光吸収層と光導波コア層とのモードフィールド不整合に起因する結合損失を低減することができる。
【0016】
別の実施形態に係る光導波路型受光素子は、第1導電型を有する第1半導体層と、第1半導体層の第1領域上に設けられた光導波路構造と、第1半導体層の第1領域と隣接する第2領域上に設けられた導波路型フォトダイオード構造と、を備える。光導波路構造は、第1半導体層上に設けられた第6半導体層と、第6半導体層上に設けられた光導波コア層と、光導波コア層上に設けられたクラッド層と、を含む。導波路型フォトダイオード構造は、第1半導体層上に設けられ、光導波コア層と光結合された光吸収層と、光吸収層上に設けられた第2導電型を有する第2半導体層と、第1半導体層と光吸収層との間に設けられた、第1半導体層より低い不純物濃度の第1導電型またはアンドープの増倍層と、増倍層と光吸収層との間に設けられ、光吸収層よりも高い不純物濃度の第2導電型を有する第3半導体層と、を含む。光導波路構造と導波路型フォトダイオード構造との界面を第1界面とし、第1半導体層と導波路型フォトダイオード構造との界面を第2界面とするとき、第1界面と第2界面との成す角が90°より小さい。第6半導体層は、第3半導体層よりも低い不純物濃度の第2導電型を有し、第1界面において増倍層及び第3半導体層と接する。
【0017】
この光導波路型受光素子においても、上述した光導波路型受光素子と同様、導波路型フォトダイオード構造が増倍層及び第3半導体層を含む。これにより、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造を好適に実現することができる。また、この光導波路型受光素子では、第1半導体層と光導波コア層との間に、第3半導体層よりも低い不純物濃度の第2導電型を有する第6半導体層が設けられている。そして、第6半導体層は、第1界面において増倍層及び第3半導体層と接する。この場合、逆バイアス印加時に、増倍層の側面付近の領域に対して第6半導体層からキャリアが補填されるので、増倍層の側面付近の空乏化幅が拡大される。すなわち、この光導波路型受光素子によれば、増倍層の空乏化幅を中央部分から側面付近にわたって均一に近づけることができるので、増倍層において部分的に最大電界(Emax)が大きくなることを抑制し、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の光導波路型受光素子の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。以下の説明では、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。なお、以下の説明においてアンドープとは、例えば不純物濃度が1×1015cm-3以下といった極めて低い濃度であることをいう。
【0019】
本発明の実施形態は、高速・大容量光通信システムで使用されるアバランシェフォトダイオード(APD)に関するものであり、導波路型構造による高速・感度性能と高信頼性実現に関するものである。また、デジタルコヒーレント光通信システムで使用される90°ハイブリッド機能がモノリシックに集積された多チャネル集積受光素子に関するものであり、APD構造集積による高感度性能と高信頼性実現に関するものである。
【0020】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係る光導波路型受光素子を備える受光デバイスの構成を示す平面図である。図2図1に示されたII-II線に沿った断面を示しており、図3図2の一部を拡大して示している。図4は、図1に示されたIV-IV線に沿った断面を示している。図5は、図1に示されたV-V線に沿った断面を示している。なお、図5では、絶縁膜16,17の図示を省略している。
【0021】
図1に示すように、本実施形態の受光デバイス1Aは、光導波路型受光素子2Aと、信号増幅部3A,3Bとを備えている。光導波路型受光素子2Aは、略矩形状といった平面形状を有しており、例えばInPといった化合物半導体から成る基板上に光導波路が形成されて成る。光導波路型受光素子2Aは、2つの入力ポート4a,4bと、光分岐部(光カプラ)5とを有する。また、光導波路型受光素子2Aは、該基板上に形成された受光素子部6a~6dと、キャパシタ部7a~7dとを更に有する。すなわち、光導波路型受光素子2Aは、光導波路と受光素子部6a~6dとが共通基板上にモノリシックに集積された構造を備えている。
【0022】
光導波路型受光素子2Aは、所定の方向Aに沿って延びる一対の端縁2a,2bを有する。2つの入力ポート4a,4bは、光導波路型受光素子2Aの端縁2a,2bのうち、一方の端縁2aに設けられている。2つの入力ポート4a,4bのうち一方の入力ポート4aには、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying:4位相偏移変調)方式によって変調された4つの信号成分を含む光信号Laが受光デバイス1Aの外部より入力される。また、他方の入力ポート4bには、局部発振光Lbが入力される。入力ポート4a,4bそれぞれは、光導波路部8a,8bそれぞれを介して光分岐部5と光学的に結合されている。なお、光導波路部8a,8bは、屈折率が比較的大きい材料(例えばInGaAsP)から成るコア層と、屈折率が該コア層よりも小さい材料(例えばInP)から成り該コア層を覆うクラッド層とによって好適に構成される。
【0023】
光分岐部5は、90°光ハイブリッドを構成する。すなわち、光分岐部5は、MMI(Multi-Mode Interference:多モード光干渉)カプラによって構成されており、光信号Laと局部発振光Lbとを相互に干渉させることによって、光信号Laを、QPSK方式によって変調された4つの信号成分Lc1~Lc4それぞれに分岐する。なお、これら4つの信号成分Lc1~Lc4のうち、信号成分Lc1及びLc2は偏波状態が互いに等しく、同相(In-phase)関係を有する。また、信号成分Lc3及びLc4の偏波状態は、互いに等しく且つ信号成分Lc1及びLc2の偏波状態とは異なっている。信号成分Lc3及びLc4は、直角位相(Quadrature)関係を有する。
【0024】
受光素子部6a~6dは、アバランシェ増倍型のPINフォトダイオードとしての構成を有しており、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、この順で並んで配置されている。受光素子部6a~6dそれぞれは、光導波路部8c~8fそれぞれを介して光分岐部5の4つの出力端と光学的に結合されている。受光素子部6a~6dのカソードには、一定のバイアス電圧が供給される。受光素子部6a~6dそれぞれは、4つの信号成分Lc1~Lc4それぞれを光分岐部5から受け、これら信号成分Lc1~Lc4それぞれの光強度に応じた電気信号(光電流)を生成する。光導波路型受光素子2A上には、受光素子部6a~6dのアノードに電気的に接続された信号出力用電極パッド21a~21dが設けられている。信号出力用電極パッド21a~21dは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿って並んで設けられている。信号出力用電極パッド21a~21dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a~20dそれぞれを介して、信号増幅部3A,3Bの信号入力用電極パッド61a~61dそれぞれと電気的に接続されている。
【0025】
キャパシタ部7a~7dは、半導体からなる下地層、この下地層の上に積層された下部金属層および上部金属層、および下部金属層と上部金属層との間に挟まれた絶縁膜(図2に示す絶縁膜17)によって構成される、いわゆるMIM(Metal-Insulator-Metal)キャパシタである。下部金属層および上部金属層は、例えばTiW/Au若しくはTi/Au/Ptといった積層構造を有する。キャパシタ部7a~7dそれぞれは、光導波路型受光素子2A上において受光素子部6a~6dそれぞれに対し方向Aに沿って並んで(隣り合って)配置されており、受光素子部6a~6dそれぞれのカソードにバイアス電圧を供給するバイアス配線と、基準電位配線(GND線)との間に電気的に接続される。すなわち、上部金属層に覆われていない下部金属層の部分上には、絶縁膜17に開口が形成されている。該開口から露出した下部金属層上にはバイアス配線42(図2を参照)が設けられており、下部金属層はバイアス配線42と電気的に接続されている。また、上部金属層上には基準電位(GND)配線が設けられており、上部金属層は基準電位配線と電気的に接続されている。これらのキャパシタ部7a~7dによって、受光素子部6a~6dのカソードと、図示しないバイパスコンデンサとの間のインダクタンス成分を設計的に揃えることができる。
【0026】
キャパシタ部7a~7dそれぞれは、下部金属層に接続されたバイアス電圧側電極パッド22a~22dそれぞれと、上記他方の金属層に接続された基準電位側電極パッド23a~23dそれぞれとを有する。基準電位側電極パッド23a~23dは、方向Aと交差する(例えば直交する)方向Bにおいて、バイアス電圧側電極パッド22a~22dと光導波路型受光素子2Aの端縁2bとの間に配置されている。
【0027】
バイアス電圧側電極パッド22a~22dそれぞれには、ボンディングワイヤ20i~20mそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20i~20mそれぞれの他端は、図示しないバイアス電圧源と電気的に接続されている。ボンディングワイヤ20i~20mは、受光素子部6a~6dそれぞれにバイアス電圧を供給する配線の一部を構成する。
【0028】
基準電位側電極パッド23a~23dそれぞれには、ボンディングワイヤ20e~20hそれぞれの一端が接続されている。ボンディングワイヤ20e~20hは、ボンディングワイヤ20a~20dに沿って設けられており、ボンディングワイヤ20e~20hそれぞれの他端は、信号増幅部3A,3Bの基準電位用電極パッド62a、62c、62d及び62fそれぞれに接続されている。
【0029】
信号増幅部3A及び3Bは、受光素子部6a~6dから出力された電気信号(光電流)を増幅する増幅器(TIA:Trans Impedance Amplifier)である。信号増幅部3Aは、2つの信号入力用電極パッド61a及び61bを有しており、信号入力用電極パッド61a及び61bに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。また、信号増幅部3Bは、2つの信号入力用電極パッド61c及び61dを有しており、信号入力用電極パッド61c及び61dに入力された電気信号の差動増幅を行って一つの電圧信号を生成する。信号入力用電極パッド61a~61dは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aにこの順で並んで配置されている。前述したように、信号入力用電極パッド61a~61dそれぞれは、ボンディングワイヤ20a~20dそれぞれを介して信号出力用電極パッド21a~21dそれぞれと電気的に接続されている。
【0030】
また、信号増幅部3Aは、3つの基準電位用電極パッド62a,62b,及び62cを更に有する。基準電位用電極パッド62a~62cは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿ってこの順で並んで配置されている。信号入力用電極パッド61aは基準電位用電極パッド62a及び62bの間に配置されており、信号入力用電極パッド61bは基準電位用電極パッド62b及び62cの間に配置されている。同様に、信号増幅部3Bは、3つの基準電位用電極パッド62d,62e,及び62fを更に有する。基準電位用電極パッド62d~62fは、光導波路型受光素子2Aの端縁2bに沿って、方向Aに沿ってこの順で並んで配置されている。上述した信号入力用電極パッド61cは基準電位用電極パッド62d及び62eの間に配置されており、信号入力用電極パッド61dは基準電位用電極パッド62e及び62fの間に配置されている。前述したように、信号増幅部3A,3Bの基準電位用電極パッド62a、62c、62d及び62fそれぞれは、ボンディングワイヤ20e~20hそれぞれを介して基準電位側電極パッド23a~23dそれぞれと電気的に接続されている。
【0031】
図2には4つの受光素子部6a~6dのうち2つの受光素子部6c,6dの断面構造が示されており、図3には受光素子部6dの断面構造が示されているが、他の受光素子部6a,6bの断面構造もこれらと同様である。図4には6つの光導波路部8a~8fのうち1つの光導波路部8fの断面構造が示されているが、他の光導波路部8a~8eの断面構造もこれと同様である。図5には、受光素子部6dと光導波路部8fとの接合部分の断面構造が示されているが、他の接合部分(受光素子部6aと光導波路部8cとの接合部分、受光素子部6bと光導波路部8dとの接合部分、及び受光素子部6cと光導波路部8eとの接合部分)の断面構造もこれと同様である。
【0032】
図5に示すように、受光素子部6a~6d及び光導波路部8c~8fは、共通の基板9上に集積されている。基板9は、例えば半絶縁性のInP基板である。受光素子部6a~6dの断面構造について、受光素子部6dを例に説明する。図3に示すように、受光素子部6dは、基板9上に設けられた高濃度のn型の導電型を有する半導体層10と、n型半導体層10の領域D(第2領域、図5参照)上に設けられた導波路型フォトダイオード構造19とを有する。導波路型フォトダイオード構造19は、n型半導体層10上に設けられた光吸収層13、光吸収層13上に設けられたp型の導電型を有する半導体層14、及びp型半導体層14上に設けられたp型コンタクト層15を有する。更に、導波路型フォトダイオード構造19は、n型半導体層10と光吸収層13との間に設けられた増倍層11、及び増倍層11と光吸収層13との間に設けられたp型電界制御層12を有する。n型半導体層10は本実施形態における第1半導体層であり、p型半導体層14は本実施形態における第2半導体層であり、p型電界制御層12は本実施形態における第3半導体層である。
【0033】
n型半導体層10は、n型オーミック電極41(図3を参照)とオーミック接触を成す。n型半導体層10は、例えばSiドープInP層である。n型半導体層10のSiドーピング濃度は、例えば1×1017cm-3以上である。n型半導体層10の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。増倍層11は、電子注入型のキャリア増倍層であって、n型半導体層10より低い不純物濃度のn型か、またはi型(アンドープ)の導電型を有する。増倍層11は、例えばSiドープInAlAs層である。増倍層11のSiドーピング濃度は、例えば3×1016cm-3以下である。増倍層11の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。p型電界制御層12は、光吸収層13の電界を降下するために設けられる層である。p型電界制御層12は、光吸収層13よりも高い不純物濃度のp型の導電型を有する。p型電界制御層12は、例えばZnドープInP層、またはZnドープInAlGaAs層である。p型電界制御層12のZnドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3以上である。p型電界制御層12の厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0034】
光吸収層13は、例えばアンドープInGaAs層、若しくはZnドーピング濃度が3×1016cm-3以下である低濃度p型InGaAs層である。光吸収層13の厚さは、例えば0.1μm~0.4μmである。p型半導体層14は、例えばZnドープInP層である。p型半導体層14のZnドーピング濃度は、例えば2×1017cm-3以上である。p型半導体層14の厚さは、例えば1μm~2.5μmである。p型コンタクト層15は、例えばZnドープInGaAs層である。p型コンタクト層15のZnドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3以上である。p型コンタクト層15の厚さは、例えば0.1μm~0.3μmである。
【0035】
なお、光吸収層13とp型半導体層14との間に、両層間のヘテロエネルギー障壁(ΔEv,ΔEc)を緩和させる組成グレーデッド(傾斜)層が設けられてもよい。この組成グレーデッド層の導電型は、アンドープか、若しくはZnドーピング濃度が1×1017cm-3以下のp型である。また、p型半導体層14とp型コンタクト層15の間に、p型のヘテロ障壁緩和層が設けられてもよい。このヘテロ障壁緩和層は、例えばドーピング濃度が1×1018cm-3以上である2層のZnドープInGaAsPからなる。2層それぞれのバンドギャップ波長は、例えば1.1μm及び1.3μmである。
【0036】
n型半導体層10の一部、増倍層11、p型電界制御層12、光吸収層13、p型半導体層14、及びp型コンタクト層15は、所定の光導波方向(本実施形態では図1の方向B)に延びるメサ構造を構成しており、このメサ構造は、一対の側面を有する。このメサ構造の一対の側面は、例えばFeドープInPといった半絶縁性材料からなる埋込領域18によって埋め込まれている。光導波方向と直交する方向におけるメサ構造の幅は、例えば1.5~3μmである。メサ構造の高さは、例えば2~3.5μmである。
【0037】
受光素子部6dは、2層の絶縁膜16,17を更に有する。絶縁膜16,17は、メサ構造の上面から埋込領域18上にかけて設けられて、これらを覆って保護している。絶縁膜16,17は、例えば絶縁性シリコン化合物(SiN、SiON、またはSiO)膜である。また、絶縁膜16,17は、メサ構造の上面に開口を有しており、該開口により絶縁膜16,17から露出したp型コンタクト層15の上には、p型オーミック電極31が設けられている。
【0038】
p型オーミック電極31は、例えばAuZn若しくはPtとp型コンタクト層15との合金からなる。そして、p型オーミック電極31上には、配線32が設けられている。配線32は、光導波方向(第2の方向B)に延びており、p型オーミック電極31と信号出力用電極パッド21dとを電気的に接続する。配線32は例えばTiW/Au若しくはTi/Pt/Auといった積層構造を有しており、信号出力用電極パッド21dは例えばAuメッキによって形成される。
【0039】
絶縁膜16,17は、受光素子部6dのメサ構造から離れたn型半導体層10の上にも、別の開口を有する。該開口により絶縁膜16,17から露出したn型半導体層10の上には、カソードとしてのn型オーミック電極41が設けられている。n型オーミック電極41は、例えばAuGe若しくはAuGeNiとn型半導体層10との合金からなる。そして、n型オーミック電極41上にはバイアス配線42が設けられている。バイアス配線42は、キャパシタ部7dの下部金属層まで延びており、下部金属層とn型オーミック電極41とを電気的に接続している。
【0040】
キャパシタ部7dは、基板9上に順に積層された、絶縁膜16、下部金属層、絶縁膜(層間膜)17、及び上部金属層を有する。キャパシタを構成する上下部の金属層は、例えばTiW/Au若しくはTi/Au/Ptといった積層構造からなる。上部金属層に覆われていない下部金属層の部分上では、絶縁膜17に開口が形成されている。該開口から露出した下部金属層上には、バイアス配線42が設けられている。バイアス配線42は、光導波方向(第2の方向B)において光導波路型受光素子2Aの端縁2bから遠ざかる向きに延びており、下部金属層とバイアス電圧側電極パッド22dとを電気的に接続する。また、上部金属層上には、基準電位側電極パッド23dに繋がる配線が設けられている。この配線は、光導波方向(第2の方向B)において光導波路型受光素子2Aの端縁2bに近づく向きに延びており、基準電位側電極パッド23dに接続する。
【0041】
基板9にはビア51が設けられている。ビア51は、金属製の導電材であり、例えばAuメッキである。ビア51は、基板9の表(おもて)面から裏面まで貫通して設けられている。キャパシタ部7dの上部金属層は、基準電位側電極パッド23dを介して、表面側のビア51の一端と電気的に接続されている。裏面側のビア51の他端は、信号増幅部3A及び3Bと共通の基準電位線(GND電位線)に接続される。
【0042】
なお、バイアス配線42、及び基準電位側電極パッド23dに繋がる配線は、例えばTiW/Au若しくはTi/Au/Ptといった積層構造を有する。基準電位側電極パッド23d、バイアス電圧側電極パッド22d、及びビア51は、例えばAuメッキによって形成される。
【0043】
続いて、光導波路部の断面構造について説明する。図4及び図5に示すように、光導波路部8fは、基板9上に設けられたn型半導体層10と、n型半導体層10の領域Dと隣接する領域E(第1領域)上に設けられた光導波路構造80とを含んで構成されている。光導波路構造80は、n型半導体層10上に設けられた光導波コア層81と、光導波コア層81上に設けられたクラッド層82とを含んで構成されている。更に、光導波路部8fは、n型半導体層10と光導波路構造80との間に設けられた増倍層11及びp型電界制御層12を含む。
【0044】
n型半導体層10は、受光素子部6dと共通の半導体層であり、光導波路部8fにおいては下部クラッド層として機能する。n型半導体層10は、受光素子部6dにおける基板9上から、光導波路部8fにおける基板9上にわたって設けられている。同様に、増倍層11及びp型電界制御層12は、受光素子部6dと共通の半導体層であり、n型半導体層10の領域Dと光吸収層13との間から、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間にわたって延在している。本実施形態では、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間の増倍層11及びp型電界制御層12は、光導波路構造80の全域(すなわち、積層方向から見た光導波路部8a~8fの全域)にわたって設けられている。光導波路部8a~8fにおけるn型半導体層10、増倍層11及びp型電界制御層12の組成、ドーピング濃度及び厚さは、受光素子部6dと同じである。
【0045】
図5に示すように、光導波路部8fと受光素子部6dとは互いにバットジョイント結合を成しており、光導波コア層81と光吸収層13とは互いに接している。これにより、光導波コア層81と光吸収層13とは互いに光学的に結合されている。バットジョイント界面は、例えばウェットエッチングにより形成される。故に、バットジョイント界面は、n型半導体層10の上面10a(すなわちn型半導体層10と増倍層11との界面)に垂直な方向に対して傾斜している。言い換えると、光導波路構造80と導波路型フォトダイオード構造19との界面を第1界面C1とし、n型半導体層10の領域Dと導波路型フォトダイオード構造19との界面を第2界面C2とするとき、第1界面C1と第2界面C2との成す角θは90°より小さい。
【0046】
光導波コア層81は、屈折率がn型半導体層10よりも大きく且つn型半導体層10と格子整合できる材料(例えばInGaAsP)からなる。一例では、光導波コア層81のInGaAsPのバンドギャップ波長は1.05μmである。光導波コア層81の厚さは、例えば0.3μm~0.5μmである。クラッド層82は、屈折率が光導波コア層81よりも小さく且つ光導波コア層81と格子整合できる材料(例えばアンドープInP)からなる。クラッド層82の厚さは例えば1μm~3μmであり、クラッド層82の上面の高さとp型コンタクト層15の上面の高さとは互いに揃っている。図4に示すように、n型半導体層10の一部、増倍層11、p型電界制御層12、光導波コア層81、及びクラッド層82は、所定の光導波方向に延びるメサ構造を構成している。n型半導体層10及びクラッド層82と光導波コア層81との屈折率差、並びにこのメサ構造によって、光導波コア層81内に光信号が閉じ込められ、光信号を受光素子部6dへ伝搬することができる。なお、このメサ構造の側面及び上面は、2層の絶縁膜16,17に覆われることによって保護されている。
【0047】
以上の構成を備える本実施形態の光導波路型受光素子2Aによって得られる効果について説明する。光導波路型受光素子2Aでは、導波路型フォトダイオード構造19が増倍層11及びp型電界制御層12を含む。増倍層11は、n型半導体層10と光吸収層13との間に設けられたキャリア増倍層であって、n型半導体層10より低い不純物濃度のn型か、またはアンドープである。p型電界制御層12は、増倍層11と光吸収層13との間に設けられた電界降下層であって、光吸収層13よりも高い不純物濃度を有する。このような増倍層11及びp型電界制御層12を導波路型フォトダイオード構造19が含むことによって、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造19を好適に実現することができる。
【0048】
ここで、図6は、比較例としての光導波路型受光素子102の構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。この光導波路型受光素子102は、導波路型フォトダイオード構造19を構成する光吸収層13とその下のn型半導体層10との間に、アバランシェ増倍のための増倍層11A及びp型電界制御層12Aを有する。但し、増倍層11A及びp型電界制御層12Aは受光素子部にのみ設けられ、光導波路部には設けられていない。
【0049】
多くの場合、バットジョイント界面はウェットエッチングにより形成されるので順メサ構造となり、基板9の主面に垂直な方向に対してフォトダイオード側に傾斜する。従って、増倍層11Aの側面もまた、同様に傾斜することとなる。図7の(a)は、このような場合の増倍層11Aの側面付近を拡大して示す図である。図中の破線で囲まれた領域は、空乏化された領域を表している。増倍層11Aの側面11jが傾斜している場合、その傾斜角度に応じて、p型電界制御層12Aと増倍層11Aとの界面の光導波方向における長さが、n型半導体層10と増倍層11Aとの界面の同方向における長さよりも短くなる。故に、逆バイアスを印加する際、増倍層11Aの側面11j付近の領域において負電荷が不足し、増倍層11Aの他の部分と比較して空乏化が進まず、当該領域の空乏化幅Wsが、他の部分の空乏化幅Wcと比較して狭くなってしまう。
【0050】
図7の(b)は、厚み方向における電界強度の変化を示す図であって、グラフG11は増倍層11Aの側面11j付近の電界強度の変化を表し、グラフG12は増倍層11Aの他の領域における電界強度の変化を表す。図7の(b)に示すように、上記の空乏化幅Ws,Wcの関係故に、増倍層11Aの側面11j付近の最大電界Emax1は、増倍層11Aの他の部分の最大電界Emax2よりも大きくなる。従って、バットジョイント界面においてエッジブレークダウンが発生し易くなり、また、側面11j付近の領域に増倍電流が集中するため信頼性が低下するといった問題が生じる。
【0051】
このような問題に対し、本実施形態の光導波路型受光素子2Aでは、増倍層11及びp型電界制御層12が、n型半導体層10の領域Dと光吸収層13との間から、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間にわたって延在している。図8の(a)は、このような場合の増倍層11の側面付近を拡大して示す図である。図中の破線で囲まれた領域は、空乏化された領域を表している。増倍層11及びp型電界制御層12がn型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間に延在している場合、同図に示されるように、p型電界制御層12と増倍層11との界面の光導波方向における長さと、n型半導体層10と増倍層11との界面の同方向における長さとの違いが解消される。故に、空乏化幅がバットジョイント界面まで均一に近づき、側面11jの傾斜に起因する空乏化幅のばらつきが低減される。すなわち、本実施形態の光導波路型受光素子2Aによれば、増倍層11の空乏化幅を均一に近づけることができる。
【0052】
図8の(b)は、増倍層11の厚み方向における電界強度の変化を示す図である。本実施形態によれば、増倍層11の側面11j付近の最大電界Emaxは、増倍層11の他の部分の最大電界と同等になる。すなわち、増倍層11において部分的に最大電界Emaxが大きくなることを抑制することができる。従って、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができ、また増倍電流の集中による信頼性の低下を回避することができる。
【0053】
また、本実施形態のように、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間の増倍層11及びp型電界制御層12は、光導波路構造80の全域にわたって設けられてもよい。その場合、光導波路型受光素子2Aを製造する際に、n型半導体層10上の全面に増倍層11及びp型電界制御層12を成長させればよいので、製造工程を簡易にできる。
【0054】
(第1変形例)
図9は、上記実施形態の第1変形例に係る光導波路型受光素子2Bの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Bは、上記実施形態の光導波路型受光素子2Aの構成に加えて、バッファ層111及びn型電界制御層112を更に備えている。
【0055】
バッファ層111は、n型半導体層10と増倍層11との間に設けられており、n型半導体層10の領域D上から領域E上にわたって延在している。バッファ層111の導電型は、n型半導体層10より低い不純物濃度のn型か、またはアンドープである。バッファ層111は例えばSiドープInP層である。バッファ層111のSiドーピング濃度は、例えば1×1016cm-3以下である。バッファ層111の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。光導波路部において、バッファ層111は第2の下部クラッド層として機能する。
【0056】
n型電界制御層112は、バッファ層111の電界を降下するために設けられる層であって、本変形例における第4半導体層である。n型電界制御層112は、バッファ層111と増倍層11との間に設けられており、バッファ層111と共に、n型半導体層10の領域D上から領域E上にわたって延在している。n型電界制御層112の不純物濃度は、増倍層11より高く、例えば1×1018cm-3以上である。n型電界制御層112は、例えばSiドープInP層である。
【0057】
本変形例では、n型電界制御層112により、逆バイアス電圧印加時のバッファ層111の電界強度をキャリア増倍が発生しない程度に抑えて、空乏幅を拡大することができる。故に、受光素子部のCR時定数をより小さくすることができ、その結果、より高速(広帯域)の高周波応答特性を実現することができる。
【0058】
(第2変形例)
図10は、上記実施形態の第2変形例に係る光導波路型受光素子2Cの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Cは、上記実施形態の光導波路型受光素子2Aの構成に加えて、ヘテロ障壁緩和層113を更に備えている。ヘテロ障壁緩和層113は、本変形例における第5半導体層である。ヘテロ障壁緩和層113は、n型半導体層10の領域D上におけるp型電界制御層12と光吸収層13との間に設けられており、n型半導体層10の領域E上には延在していない。ヘテロ障壁緩和層113は、p型電界制御層12と光吸収層13との間のヘテロエネルギー障壁を緩和するために設けられる。
【0059】
ヘテロ障壁緩和層113の導電型は、p型電界制御層12より低い不純物濃度のp型か、またはアンドープである。ヘテロ障壁緩和層113のバンドギャップは、p型電界制御層12のバンドギャップと光吸収層13のバンドギャップとの間である。ヘテロ障壁緩和層113は、例えばZnドープInGaAsP層であり、そのバンドギャップ波長は例えば1.25μmまたは1.40μmである。或いは、ヘテロ障壁緩和層113は、バンドギャップ波長が連続的に変化する組成グレーデッド(傾斜)層であってもよい。ヘテロ障壁緩和層113のSiドーピング濃度は、例えば1×1017cm-3以下である。ヘテロ障壁緩和層113の厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0060】
本変形例では、ヘテロ障壁緩和層113の厚さを調整することにより、光導波コア層81の厚さ方向の中心位置と、光吸収層13の厚さ方向の中心位置とを互いに精度良く合わせることができる。故に、光導波路型受光素子2Cの高速化のため光吸収層13が薄膜化された場合であっても、光吸収層13と光導波コア層81とのモードフィールド不整合に起因する結合損失を低減することができ、高感度化との両立を実現することができる。
【0061】
(第3変形例)
図11は、上記実施形態の第3変形例に係る光導波路型受光素子2Dの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Dは、上記実施形態の電子注入型の増倍層11を、ホール注入型の増倍層11Cに変更した構成を備える。なお、以下に説明する点を除いて、光導波路型受光素子2Dの構成は、上記実施形態の光導波路型受光素子2Aと同様である。
【0062】
具体的に説明すると、光導波路型受光素子2Dの受光素子部6dは、基板9上に設けられた高濃度のp型の導電型を有する半導体層101と、p型半導体層101の領域D上に設けられた導波路型フォトダイオード構造117とを有する。導波路型フォトダイオード構造117は、p型半導体層101上に設けられた光吸収層114、光吸収層114上に設けられたn型の導電型を有する半導体層115、及びn型半導体層115上に設けられたn型コンタクト層116を有する。更に、導波路型フォトダイオード構造117は、p型半導体層101と光吸収層114との間に設けられた増倍層11C、及び増倍層11Cと光吸収層114との間に設けられたn型電界制御層12Cを有する。p型半導体層101は本実施形態における第1半導体層であり、n型半導体層115は本実施形態における第2半導体層であり、n型電界制御層12Cは本実施形態における第3半導体層である。
【0063】
p型半導体層101は、p型オーミック電極(不図示)とオーミック接触を成す。p型半導体層101は、例えばZnドープInP層である。p型半導体層101のZnドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3以上である。p型半導体層101の厚さは、例えば1μm以上2μm以下である。増倍層11Cは、ホール注入型のキャリア増倍層であって、i型(アンドープ)の導電型を有する。増倍層11Cは、例えばアンドープInP層である。増倍層11Cの厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。n型電界制御層12Cは、光吸収層114の電界を降下するために設けられる層である。n型電界制御層12Cは、光吸収層114よりも高い不純物濃度のn型の導電型を有する。n型電界制御層12Cは、例えばSiドープInP層、またはSiドープInAlGaAs層である。n型電界制御層12CのSiドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3以上である。n型電界制御層12Cの厚さは、例えば0.025μm以上0.100μm以下である。
【0064】
光吸収層114は、例えばアンドープInGaAs層、若しくはSiドーピング濃度が3×1016cm-3以下である低濃度n型InGaAs層である。光吸収層114の厚さは、例えば0.1μm~0.4μmである。n型半導体層115は、例えばSiドープInP層である。n型半導体層115のSiドーピング濃度は、例えば2×1017cm-3以上である。n型半導体層115の厚さは、例えば1μm~2.5μmである。n型コンタクト層116は、例えばSiドープInGaAs層である。n型コンタクト層116のSiドーピング濃度は、例えば1×1018cm-3以上である。n型コンタクト層116の厚さは、例えば0.1μm~0.3μmである。n型コンタクト層116の上には、n型オーミック電極131が設けられている。
【0065】
なお、光吸収層114とn型半導体層115との間に、両層間のヘテロエネルギー障壁(ΔEv,ΔEc)を緩和させる組成グレーデッド(傾斜)層が設けられてもよい。この組成グレーデッド層の導電型は、アンドープか、若しくはSiドーピング濃度が1×1017cm-3以下のn型である。また、n型半導体層115とn型コンタクト層116の間に、n型のヘテロ障壁緩和層が設けられてもよい。このヘテロ障壁緩和層は、例えばドーピング濃度が1×1018cm-3以上である2層のSiドープInGaAsPからなる。2層それぞれのバンドギャップ波長は、例えば1.1μm及び1.3μmである。
【0066】
p型半導体層101の一部、増倍層11C、n型電界制御層12C、光吸収層114、n型半導体層115、及びn型コンタクト層116は、光導波方向に延びるメサ構造を構成しており、このメサ構造は、一対の側面を有する。このメサ構造の一対の側面は、例えばFeドープInPといった半絶縁性材料からなる埋込領域18(図3を参照)によって埋め込まれている。
【0067】
n型オーミック電極131は、例えばAuZn若しくはPtとn型コンタクト層116との合金からなる。そして、n型オーミック電極131上には、配線132が設けられている。配線132は、光導波方向に沿って延びており、n型オーミック電極131と信号出力用電極パッド21dとを電気的に接続する。配線132は例えばTiW/Au若しくはTi/Pt/Auといった積層構造を有する。
【0068】
p型半導体層101は、受光素子部6dにおける基板9上から、光導波路部8fにおける基板9上にわたって設けられている。同様に、増倍層11C及びn型電界制御層12Cは、受光素子部6dと共通の半導体層であり、p型半導体層101の領域Dと光吸収層114との間から、p型半導体層101の領域Eと光導波コア層81との間にわたって延在している。本実施形態においても、p型半導体層101の領域Eと光導波コア層81との間の増倍層11C及びn型電界制御層12Cは、光導波路構造80の全域(すなわち、積層方向から見た光導波路部8a~8fの全域)にわたって設けられている。光導波路部8a~8fにおけるp型半導体層101、増倍層11C及びn型電界制御層12Cの組成、ドーピング濃度及び厚さは、受光素子部6dと同じである。
【0069】
上記実施形態では、電子のイオン化率(α)がホールのイオン化率(β)よりも大きい電子注入型の増倍層11を例示したが、本変形例のように、βがαよりも大きいホール注入型の増倍層11Cを備える構成であっても、上記実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0070】
(第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る光導波路型受光素子2Eの構造を示す断面図であって、図1のV-V線に対応する断面を示している。光導波路型受光素子2Eは、第1実施形態の増倍層11及びp型電界制御層12に代えて、増倍層11A及びp型電界制御層12Aを備える。増倍層11Aは、第1実施形態の増倍層11と同じ組成及び厚さを有するが、n型半導体層10の領域Dと光吸収層13との間にのみ設けられ、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間には延在していない。同様に、p型電界制御層12Aは、第1実施形態のp型電界制御層12と同じ組成及び厚さを有するが、n型半導体層10の領域Dと光吸収層13との間にのみ設けられ、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間には延在していない。p型電界制御層12Aは、本変形例における第7半導体層である。
【0071】
更に、光導波路型受光素子2Eは、p型半導体層83を備える。p型半導体層83は、本変形例における第6半導体層である。p型半導体層83はn型半導体層10の領域E上に設けられ、光導波コア層81はp型半導体層83上に設けられている。すなわち、p型半導体層83は、n型半導体層10の領域Eと光導波コア層81との間に設けられている。光導波コア層81、クラッド層82およびp型半導体層83は、本実施形態における光導波路構造80Bを構成する。
【0072】
光導波コア層81と光吸収層13とは互いに光学的に結合されている。光導波路構造80Bと導波路型フォトダイオード構造19とのバットジョイント界面は、例えばウェットエッチングにより形成される。故に、バットジョイント界面は、n型半導体層10の上面(すなわちn型半導体層10と増倍層11Aとの界面)に垂直な方向に対して傾斜している。言い換えると、光導波路構造80Bと導波路型フォトダイオード構造19との界面を第1界面C3とし、n型半導体層10の領域Dと導波路型フォトダイオード構造19との界面を第2界面C4とするとき、第1界面C3と第2界面C4との成す角θは90°より小さい。
【0073】
p型半導体層83は、屈折率がn型半導体層10よりも大きく且つn型半導体層10と格子整合できる材料(例えばInGaAsP)からなる。一例では、p型半導体層83のInGaAsPのバンドギャップ波長は光導波コア層81と等しく、例えば1.05μmである。p型半導体層83は、例えばZnドーピング濃度が3×1016cm-3以下である低濃度p型InGaAsP層である。p型半導体層83の不純物濃度は、p型電界制御層12Aの不純物濃度よりも低い。p型半導体層83の厚さは、例えば0.050μm以上0.200μm以下である。p型半導体層83は、第1界面C3に沿って導波路型フォトダイオード構造19の側面上を這い上がっており、第1界面C3において、増倍層11A、p型電界制御層12A、光吸収層13、及びp型半導体層14と接している。
【0074】
クラッド層82は、屈折率がp型半導体層83及び光導波コア層81よりも小さく且つ光導波コア層81と格子整合できる材料(例えばアンドープInP)からなる。n型半導体層10の一部、p型半導体層83、光導波コア層81、及びクラッド層82は、光導波方向に延びるメサ構造を構成している。n型半導体層10及びクラッド層82とp型半導体層83及び光導波コア層81との屈折率差、並びにこのメサ構造によって、p型半導体層83及び光導波コア層81内に光信号が閉じ込められ、光信号を受光素子部6dへ伝搬することができる。なお、このメサ構造の側面及び上面は、2層の絶縁膜16,17(図4を参照)に覆われることによって保護されている。
【0075】
本実施形態の光導波路型受光素子2Eにおいても、第1実施形態と同様、導波路型フォトダイオード構造19が増倍層11A及びp型電界制御層12Aを含む。これにより、アバランシェ増倍作用を有する導波路型フォトダイオード構造19を好適に実現することができる。
【0076】
また、本実施形態の光導波路型受光素子2Eでは、n型半導体層10と光導波コア層81との間に、p型電界制御層12Aよりも低い不純物濃度のp型半導体層83が設けられている。そして、p型半導体層83は、第1界面C3において増倍層11A及びp型電界制御層12Aと接する。図13の(a)は、このような場合の増倍層11Aの側面11j付近を拡大して示す図である。図中の破線で囲まれた領域は、空乏化された領域を表している。p型半導体層83が増倍層11A及びp型電界制御層12Aと接する場合、逆バイアス印加時に、増倍層11Aの側面11j付近の領域に対してp型半導体層83からキャリアが補填されるので、同図に示されるように、増倍層11Aの側面11j付近の空乏化幅Wsが拡大される。すなわち、この光導波路型受光素子2Eによれば、増倍層11Aの空乏化幅を中央部分から側面11j付近にわたって均一に近づけることができる。
【0077】
図13の(b)は、増倍層11Aの厚み方向における電界強度の変化を示す図である。本実施形態によれば、増倍層11Aの側面11j付近の最大電界Emaxは、増倍層11Aの他の部分の最大電界と同等になる。すなわち、増倍層11Aにおいて部分的に最大電界Emaxが大きくなることを抑制することができる。従って、エッジブレークダウンを発生しにくくすることができ、また増倍電流の集中による信頼性の低下を回避することができる。
【0078】
以上、本発明を実施例に基づいて具体的に説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において変更可能である。例えば、上述した各実施形態及び各変形例を、必要な目的及び効果に応じて互いに組み合わせてもよい。また、各半導体層の具体的な組成は、上記の例示に限定されない。また、上記実施形態では、共通の基板9上に光導波路部8a~8f及び受光素子部6a~6dが集積された構成を例示したが、基板9上に、他のInP系電子デバイス(例えば、ヘテロ接合バイポーラトランジスタ)、キャパシタ及び抵抗を含む光電変換回路が更に集積されてもよい。また、上記実施形態では、基板9上にn型半導体層10が設けられているが、基板がn型の半導体基板である場合には、n型半導体層10は省略されてもよい。その場合、n型の半導体基板が第1半導体層となり、上記の説明におけるn型半導体層10と他の半導体層との関係は、全てn型の半導体基板と他の半導体層との関係に読み替えられる。
【0079】
また、上述した各実施形態及び各変形例では、4位相偏移変調(QPSK)や直交振幅変調(QAM,Quadrature Amplitude Modulation)を用いるコヒーレント検波方式で使用される集積受光素子に本発明を適用する場合を示したが、NRZ(Non-Return to Zero)やPAM4(4値パルス振幅変調)といった強度変調信号を直接検波する光導波路型受光素子に本発明を適用してもよい。
【0080】
図14は、そのような光導波路型受光素子の例を示す平面図である。図14に示す光導波路型受光素子2Fは、半絶縁性の基板9(図14では不図示)と、基板9上に設けられたn型半導体層10と、n型半導体層10上に設けられた光導波路部8及び受光素子部6とを備える。光導波路部8は、上述した各実施形態及び各変形例のうちいずれかの光導波路構造80(80B)を有する。受光素子部6は、上述した各実施形態及び各変形例のうちいずれかの導波路型フォトダイオード構造19を有する。更に、この光導波路型受光素子2Fは、上述した増倍層11(または11A)及びp型電界制御層12(または12A)を備える。
【0081】
なお、この例では、基準電位側電極パッド23とp型オーミック電極上の配線とが、ワイヤ71を介して電気的に接続されている。また、n型オーミック電極上に設けられたバイアス配線は、光導波路部8及び受光素子部6の両側に設けられた一対のバイアス電圧側電極パッド22e,22fと電気的に接続されている。
【符号の説明】
【0082】
1A…受光デバイス
2A~2F…光導波路型受光素子
2a,2b…端縁
3A,3B…信号増幅部
4a,4b…入力ポート
5…光分岐部
6,6a~6d…受光素子部
7a~7d…キャパシタ部
8,8a~8f…光導波路部
9…基板
10…n型半導体層
10a…上面
11,11A,11C…増倍層
11j…側面
12,12A…p型電界制御層
12C…n型電界制御層
13…光吸収層
14…p型半導体層
15…p型コンタクト層
16,17…絶縁膜
18…埋込領域
19…導波路型フォトダイオード構造
20a~20m…ボンディングワイヤ
21a~21d…信号出力用電極パッド
22a~22f…バイアス電圧側電極パッド
23,23a~23d…基準電位側電極パッド
31…p型オーミック電極
32…配線
41…n型オーミック電極
42…バイアス配線
51…ビア
61a~61d…信号入力用電極パッド
62a~62f…基準電位用電極パッド
71…ワイヤ
80,80B…光導波路構造
81…光導波コア層
82…クラッド層
83…p型半導体層
101…p型半導体層
102…光導波路型受光素子
111…バッファ層
112…n型電界制御層
113…ヘテロ障壁緩和層
114…光吸収層
115…n型半導体層
116…n型コンタクト層
117…導波路型フォトダイオード構造
131…n型オーミック電極
132…配線
C1~C4…界面
D,E…領域
La…光信号
Lb…局部発振光
Lc1~Lc4…信号成分
Ws,Wc…空乏化幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14