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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】空気清浄機、加湿機及び消臭機
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/70 20060101AFI20230613BHJP
   A61L 9/16 20060101ALI20230613BHJP
   B01D 46/52 20060101ALI20230613BHJP
   F24F 8/108 20210101ALI20230613BHJP
【FI】
F04D29/70 L
A61L9/16 F
A61L9/16 Z
B01D46/52 C
F24F8/108 100
F24F8/108 310
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2017565540
(86)(22)【出願日】2017-01-31
(86)【国際出願番号】 JP2017003262
(87)【国際公開番号】W WO2017135203
(87)【国際公開日】2017-08-10
【審査請求日】2019-11-13
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2016020786
(32)【優先日】2016-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000129194
【氏名又は名称】株式会社カンキョー
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池 英俊
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】五十嵐 康弘
【審判官】関口 哲生
(56)【参考文献】
【文献】実開昭53-132078(JP,U)
【文献】特開平2-26605(JP,A)
【文献】実開昭58-194434(JP,U)
【文献】特開平4-1500(JP,A)
【文献】特開2005-337566(JP,A)
【文献】特開2002-166193(JP,A)
【文献】特開2002-31086(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D29/70
F24F8/108
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円板と、
該円板を回転させるための手段と、
該円板上に設けられ、該円板の回転中心を含む内側領域を囲包する、全体として円筒形のフィルターAであって、該円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折されたフィルターAと、
前記円板上に設けられ、前記円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された、全体として円筒形のフィルターBであって、該フィルターBは、前記円板の回転中心を含む内側領域を囲包し、前記フィルターAの内側に設けられた、フィルターBを具備し、
前記フィルターAと前記フィルターBの間は空間であって構造物が存在せず、
(i) フィルターBの空気抵抗がフィルターAの空気抵抗以下であり、又はフィルターBの高さがフィルターAの高さより低く、
(ii) フィルターBが、フィルターAに供給される空気量を、フィルターBが存在しない場合よりも増大させ、かつ、
(iii) フィルターBが、トータルの空気清浄効率を、フィルターBが存在しない場合よりも高めるようにした、
空気清浄機。
【請求項2】
前記フィルターBの空気抵抗は、前記フィルターAの空気抵抗以下である、請求項1記載の空気清浄機。
【請求項3】
前記円板上に設けられた1又は複数枚の翼をさらに具備する請求項1又は2記載の空気清浄機。
【請求項4】
連続気泡構造体を具備し、該連続気泡構造体はフィルターBの内側に設けられる、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項5】
前記連続気泡構造体の空気抵抗は、前記フィルターBの空気抵抗以下である請求項4記載の空気清浄機。
【請求項6】
前記円板の回転中心近傍であって、前記フィルターA及び前記フィルターBよりも内側において、前記円板に1又は複数の開口が設けられている、請求項1~5のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項7】
電極と、
該電極と、前記円板、前記フィルターA及び前記フィルターBの少なくともいずれかとの間に電圧を印加する手段と
を具備し、かつ、
前記電極は、該電極と、前記円板、前記フィルターA及び前記フィルターBの少なくともいずれかとの間で連続的にコロナ放電を行うものである、請求項1~6のいずれか1項に記載の空気清浄機。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに水分を保持させた空気加湿機。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに消臭成分を保持させた空気消臭機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気清浄機、加湿機及び消臭機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、ファンとフィルターを利用した空気清浄機が種々知られている。これらの原理は、ファンを用いて空気を強制的にフィルターに送り込んでフィルターを通過させることにより空気中の塵埃等をフィルターに捕捉させて空気を清浄化するものである。通常多く用いられている空気清浄機は、ファンとフィルターを完全に分離し、ファンによって風をフィルターに当てるタイプのものである。また、特許文献1には、円筒状のシロッコファンの側壁部分をフィルターで構成し、羽根車を回転させて空気流を該円筒の内側から外側に、フィルターを通して流通させることにより空気清浄を行う空気清浄機も提案されている。
【0003】
本願発明者らは、先に、フィルターを波状に曲折させると共に該フィルター自体を回転させることにより、フィルターに羽根車の翼とフィルターの機能の両方を持たせることができ、このようにすることにより同一性能ならば従来の空気清浄機よりも小型化することができることを見出し、この原理に基づく空気清浄機及び加湿機を特許出願した(特許文献2)。さらに、この先に出願した空気清浄機及び加湿機において、前記フィルターを導電性材料で構成すると共に特定の位置に高圧電極を設け、フィルターと高圧電極との間に電圧をかけることにより、空気清浄機及び加湿機の効率をさらに高めることができることを見出し、この原理に基づく空気清浄機及び加湿機について特許を取得している(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-206436号公報
【文献】特開2001-120933号公報
【文献】特許第3350031号掲載公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、特許文献3記載の空気清浄機よりも単位体積当りの空気浄化能力を向上させ、ひいては性能が同等な場合にはより小さな消費電力で動作する新規な空気清浄機並びにそれを含む加湿機及び消臭機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、特許文献3に記載された空気清浄機において、円板上に、円板と共に回転する空気抵抗体を設けることにより、該空気抵抗体により風が起こってフィルターを通過する空気量を増大することができ、それによって空気清浄効率が高くなり、ひいては消費電力を低減できることを見出し、本発明を完成した。
【0007】
すなわち、本発明は、
円板と、
該円板を回転させるための手段と、
該円板上に設けられ、該円板の回転中心を含む内側領域を囲包する、全体として円筒形のフィルターAであって、該円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折されたフィルターAと、
前記円板上に設けられ、前記円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された、全体として円筒形のフィルターBであって、該フィルターBは、前記円板の回転中心を含む内側領域を囲包し、前記フィルターAの内側に設けられた、フィルターBを具備し、
前記フィルターAと前記フィルターBの間は空間であって構造物が存在せず、
(i) フィルターBの空気抵抗がフィルターAの空気抵抗以下であり、又はフィルターBの高さがフィルターAの高さより低く、
(ii) フィルターBが、フィルターAに供給される空気量を、フィルターBが存在しない場合よりも増大させ、かつ、
(iii) フィルターBが、トータルの空気清浄効率を、フィルターBが存在しない場合よりも高めるようにした、
空気清浄機を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記本発明の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに水分を保持させた空気加湿機を提供する。
【0009】
さらに本発明は、上記本発明の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに消臭成分を保持させた空気消臭機を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の空気清浄機は、空気清浄効率が公知の空気清浄機よりも高く、したがって、同等の性能を発揮する場合には消費電力を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施例における円筒形フィルターの分解斜視図である。
図2図1に示す円筒形フィルターの斜視図である。
図3】本発明の一実施例におけるフィルター内側凸部先端のホットメルト接着剤による架橋帯の断面図である。
図4】本発明の一実施例におけるフィルター内側凸部先端の櫛状シートによる架橋の断面図である。
図5】本発明の一実施例における、重ねて接着して高さを高くした円筒形フィルターの斜視図である。
図6】本発明の一実施例における、折り曲げ幅を長短交互にしたフィルターの断面図である。
図7】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBを有する円板の分解斜視図である。
図8】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBを有する円板の斜視図である。
図9】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと翼を有する円板の分解斜視図である。
図10】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと翼を有する円板の斜視図である。
図11】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと翼を有する円板周縁部の断面図である。
図12】本発明の一実施例における、翼が外側で円筒形フィルターAとBを有する円板周縁部の断面図である。
図13】本発明の一実施例における、幅広の円筒形フィルターAと幅広の翼を有する円板の斜視図である。
図14】本発明の一実施例になる空気清浄機の分解斜視図である。
図15図14に示す空気清浄機の斜視図である。
図16図14及び図15に示す空気清浄機の断面図である。
図17】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと連続気泡構造体の分解斜視図である。
図18】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと連続気泡構造体の斜視図である。
図19】本発明の一実施例における、円筒形フィルターAとBと連続気泡構造体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記のとおり、本発明の空気清浄機は、円板と、該円板を回転させるための手段と、該円板上に設けられ、該円板の回転中心を含む内側領域を囲包する、全体として円筒形のフィルターAであって、該円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折されたフィルターAとを具備する。
【0013】
以下の説明において、「上」、「下」、「上部」、「下部」、「上方」、「下方」は、円板を水平に保持した場合の位置関係であり、使用時における位置関係を示すものではない。
【0014】
全体として円筒形のフィルターAの一実施例の分解斜視図を図1に、同斜視図を図2に示す。図1及び図2中の10は波状に曲折されたフィルターA、12は、フィルターA10の頂部に固着された上部端板、14はフィルターA10の底部に固着された下部端板である。上部端板12と下部端板14は、必須的ではないが、回転時の遠心力によるフィルターAの変形を防止する効果を発揮するので設けることが好ましい。なお、「全体として円筒形」(以下、単に「円筒形」ということがある)とは、波状のフィルターを細かく波状とは見ずに巨視的に見れば、図2からわかるように内外方向に厚みのある円筒形(図2に示す例では、上部端板12を頂面、下部端板14を底面とする円筒形)であることを意味する。
【0015】
フィルターA10は、円板(後述)の回転中心を含む内側領域を囲包し、円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された形状を有している。この形状自体は、特許文献2及び特許文献3に記載されているとおり公知である。フィルターA10の好ましい各実施例の部分拡大図を図3及び図4に示す。
【0016】
波状のフィルターAの回転時の変形を防止するために、フィルターA10の内側(円板の回転中心側)の各頂部を、架橋帯16により架橋してもよい。フィルター各頂部稜線のピッチは1~10mm程度、好ましくは2~5mm程度に架橋帯により固定される。図3に示す実施例では、波状のフィルターA10の内側の各頂部が、架橋帯16(図1)であるホットメルト接着剤層16aにより架橋されている。このホットメルト接着剤層の幅(上下方向の幅)は、通常、1~3mm程度、好ましくは2mm程度である。図4に示す実施例では、波状のフィルターA10の内側(円板の回転中心側)の各頂部が、架橋帯である櫛状のシート16bにより架橋されている。櫛状のシート16bは、例えば、厚さ0.2~1.5mm程度、好ましくは厚さ0.7mm程度の紙、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等で形成することができる。あるいは、波状のフィルターA10の内側の各頂部は、架橋帯である厚さ0.2~1.5mm程度、好ましくは厚さ0.7mmの紙、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等のシートに、厚さ0.2~1mm程度、好ましくは厚さ0.5mmのホットメルト接着剤やポリエチレン等の比較的融点の低い(80~150℃程度)シートが積層された幅1~10mm程度、好ましくは幅2mmのシート(図示せず)で架橋してもよい。これらの架橋帯は、1個でもよいが、フィルターA10の回転時の変形を効果的に防止するために複数(例えばフィルターの高さが80~200mm程度では4本~10本)設けることが好ましい。架橋帯を複数設ける場合、各架橋帯同士の間隔は、通常、10mm~30mm程度である。なお、フィルターの直径が小さく回転速度が遅い場合は、架橋帯は設けなくてもフィルターAの変形はほとんど起きない。
【0017】
フィルターA10の折り曲げ幅は、図3及び図4に示すように均一でもよいし、図6に示すように長短交互でもよい。図6のようにフィルターの折り曲げ幅を長短交互にすると、フィルター凹部の開口面積を広くすることができるので、この部分の空気抵抗増加による空気浄化効果の低下を抑えられる。
【0018】
上部端板12及び下部端板14は、例えば、厚さ0.2~1.5mm程度、好ましくは厚さ0.7mmの紙あるいはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等のプラスチックのシートに、厚さ0.2~1mm程度、好ましくは厚さ0.5mmのホットメルト接着剤やポリエチレン等の比較的融点の低い(80~150℃程度)シートが積層されたものであってよく、熱板を押し付けることでホットメルト接着剤又は低融点シートが溶融してフィルターA10の端部と各端板が接着される。なお、厚さ0.5~1.5mm程度、好ましくは厚さ1mmのポリエチレンシートであれば、積層せず単層のシートでも端板として用いることができ、フィルターAに固定できる。
【0019】
各端板も、上記した架橋帯と同様、フィルターAの回転時の変形防止に役立つので、上記架橋帯に代えて、又は上記架橋帯と共に、図2に示す円筒形フィルターA10を複数個積み重ねて用いることもできる(図5)。
【0020】
図7は、本発明の好ましい一実施例の分解斜視図である。図7に示すように、上記した円筒形フィルターA10は、円板20上に設けられる(なお、図7には後述するフィルターBも描かれている)。フィルターA10は、円板20に固着され、円板20が回転すると、フィルターA10も同時に回転する。図7に示すように、フィルターA10は、円板20の回転中心20aを含む内側領域を囲包する。好ましくは、回転中心は円板の円中心であって、フィルターA10の中心は、円板20の回転中心20aと一致する。円板20は、図7に示すように、回転中心20aを含む中心部分が、円板を回転させるための手段(モーター等、図示せず)の軸受を受容するために、図7に示すように凸状に突出していてもよい。このような形状を有するものも、本発明でいう「円板」に該当する。円板20には、空気の流通のために、1又は複数の開口部20bを形成してもよい。回転している円板の中心側は、空気が空気抵抗体の回転により外側に移動するので負圧になる。このため、円板の中心側に開口20bがあると、該開口20bを介して空気が流入して風量が大きくなり空気浄化効果を高くすることができる。この場合、円板20下側の空気吸込孔32aから空気が供給される(図14)。
【0021】
本発明の空気清浄機では、円板上に、空気抵抗体が設けられている。「空気抵抗体」は、円板と共に回転すると、羽根車の原理で円板の回転中心から放射状に流れる空気流を増大させる構造である。空気抵抗体を設けることにより、フィルターAを通過する空気流量が増大するので、空気清浄効率を高めることができる。
【0022】
空気抵抗体は、フィルターAの内側に配置してもよいし、外側に配置してもよい。内側に配置した場合には、空気抵抗体が羽根車となって、フィルターAに向かう空気流が増大する。空気抵抗体をフィルターAの外側に配置した場合でも、羽根車の原理により、フィルターAの外側から空気を吸引するので、やはりフィルターAに向かう空気流が増大する。
【0023】
空気抵抗体の好ましい例としては、フィルターAと同様な構造を有する、円筒形の波状フィルターBを挙げることができる。フィルターBは、円板の半径方向に凹凸が形成されるように波状に曲折された、全体として円筒形であって、該フィルターBは、前記円板の回転中心を含む内側領域を囲包し、前記フィルターAの内側に設けられる。図7は、フィルターB22を具備する空気清浄機の好ましい一実施例の分解斜視図、図8は、同斜視図を示す。フィルターB22は、フィルターAの相似形であってフィルターA10と同軸に配置されることが好ましい。フィルターBも、フィルターAと同様、上端部に上部端板24を有し、下端部に下部端板26を有することが好ましい。なお、フィルターBは、先に説明したフィルターAと同様な構造を有しており、フィルターAについての説明は全てそのままフィルターBにも当てはまる。なお、フィルターBは複数設けてもよい。
【0024】
フィルターBをフィルターAの内側に設けた場合、フィルターBが羽根車となってフィルターAに向かう空気流を増大させることが可能である。この場合、フィルターAに供給される空気量が増大するので、空気清浄効率がフィルターA単独の場合よりも高くなる。さらに、フィルターB自体もフィルターであるので、フィルターB自体によっても空気が清浄化されるので、空気清浄効率がさらに高くなる。
【0025】
もっとも、空気がフィルターBを通過する際にフィルターBにおいて空気抵抗を生じるので、条件によってはフィルターAに供給される空気量が減少して、トータルの空気清浄効率が低下する恐れもある。これに鑑み、内側のフィルターBの空気抵抗を外側のフィルターAの空気抵抗以下にすることでトータルのフィルターユニット(フィルターAとフィルターB)としての空気浄化効果は高くなる。すなわち、フィルターの表面積はフィルターの高さが同じであれば直径に比例する。従って、高さが同じでフィルター凹凸のピッチが円筒形フィルターAとBで同じであれば、内側の円筒形フィルターBの方が表面積は小さくなる。また、空気がフィルターに流入する時の入口となるフィルター凹部の開口総面積も直径に比例する。従って、高さが同じでフィルター凹凸のピッチが円筒形フィルターAとBで同じであれば、内側の円筒形フィルターBの方が凹部の開口総面積は小さくなる。各々のフィルター間に空隙がほとんどない場合、各フィルターを通過する空気量はほぼ同じなので、外側のフィルターAと内側のフィルターBでは、フィルターの素材が同じ場合、フィルターBの方が空気抵抗が大きくなってしまい、フィルターユニット全体としての空気浄化効果が律速されてしまう。この場合、上記のとおり、内側のフィルターBの空気抵抗を外側のフィルターAの空気抵抗以下にすることでトータルのフィルターユニットとしての空気浄化効果を高めることができる。空気抵抗を下げるには目の粗いフィルターを用いればよい。
【0026】
また、円筒形フィルターBの高さが円筒形フィルターAの高さより低ければ、空気は、円筒形フィルターBの上側を通過してそのまま円筒形フィルターAに到達する。このように空気の一部をバイパスさせることで、円筒形フィルターBの空気抵抗が大きいことがフィルターユニット全体の空気浄化効果を低下させるのを防ぐこともできる。
【0027】
空気抵抗体の好ましい例としては、さらに、円板上に設けられた1又は複数枚の翼、好ましくは複数枚の翼を挙げることができる。翼は、フィルターBに代えて設けることもできる(図13)し、フィルターBに加えて設けることもできる(図9図11)。
【0028】
図9図11には、フィルターBの内側に複数の翼28を設けた好ましい一実施例が記載されている。翼28は、円板20の回転中心20aを中心として放射状に配置され、円板20の凸状部の麓からフィルターB22までの間に配置されている。翼28は、回転中心20aの周囲に実質的に等間隔に、例えば外径Φ500mm程度では、4枚~300枚程度配置することが好ましい。翼28も円板上に固定されているので、円板が回転すると翼も回転する。好ましい一実施例では、翼28は円板20と一体成型されている。翼28の、円板20とは反対側の先端は、円板が回転した時の遠心力により外側に撓むのを防ぐためにリング30が翼28と一体成型されている。この円板20の外側に向かって円筒形フィルターB22、円筒形フィルターA10の順に取り付けられている。取付け方法としては、下部端板はフィルターA10の外縁からフィルターB22の内縁を覆い更に円板20と重なり合っており、この重なり合った部分で接着されている。フィルターAとBの円板20との接着側と反対側は、2枚の上部端板12、24でそれぞれ固定されているが、1枚の端板で一緒に固定されてもよい。
【0029】
この実施例では、翼28の回転により、羽根車の原理でフィルターB22に供給される空気流が増大し、ひいては空気清浄効率が増大する。
【0030】
図11は、この実施例の部分模式断面図であり、各記号は板厚や高さや幅等の寸法を示す。すなわち、
aは、端板の厚さ0.2~1.5mm程度、好ましくは厚さ0.7mmの紙あるいはポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレン等のプラスチックのシート、
bは、端板の厚さ0.2~1mm程度、好ましくは厚さ0.5mmのホットメルト接着剤やポリエチレン等の比較的融点の低い(80~150℃程度)シート、
cは、円板の厚さ1~3mm程度、好ましくは厚さ2mm、
dとeは、フィルターの高さ5~500mm程度、好ましくは高さ80~200mm程度、
fは、翼の高さ5~500mm程度、好ましくは高さ80~200mm程度、
gは、翼の幅5~300mm程度、好ましくは幅60~150mm程度、
hは、翼とフィルターの間隙0~50mm程度、好ましくは5~10mm程度、
iとkは、フィルターの幅10~100mm程度、好ましくは幅20~40mm程度、
jは、フィルターとフィルターの間隙0~50mm程度、好ましくは5~10mm程度、
mは、フィルターユニットの外径Φ50~1000mm程度、好ましくは外径Φ200~500mm程度、
を示す。
bの厚さで示される層に円板とフィルターがそれぞれ重なっているのは、bの層が溶着時に熱で溶けて円板やフィルターが食い込んでいるためである。
高さf、幅gで示される翼が平行四辺形になっているのは、射出成型時の抜き勾配のためである。翼の形状は平行四辺形の平板に限定されるものではなく、図11における翼の左端の線のように台形でもよいし、平板ではなく一般的なシロッコファンの翼形状のように湾曲していてもよい。向きも回転軸を中心とした半径線に沿う必要はなく、半径線に対して傾いていてもよい。
【0031】
図12は、翼28をフィルターA10の外側に配置した実施例の部分模式断面図である。このように、翼28は、フィルターA10の外側に、円板20の周縁上に配置してもよい。この場合、翼28が円板20と共に回転すると、羽根車の原理により、翼28が円板20の中心側から空気を吸い込み、フィルターB22及びフィルターA10を通過する空気量が増大し、ひいては空気清浄効率が増大する。
【0032】
図13は、フィルターBを設けず、フィルターA10のすぐ内側に複数枚の翼28を設けた実施例を示す。このように、翼28を設ける場合、フィルターBは省略してもよい。
【0033】
空気抵抗体の好ましい例としては、さらに、円板上に設けられた連続気泡構造体を挙げることができる。図17図19には、フィルターB22の内側に連続気泡構造体44を設けた好ましい一実施例が記載されている。連続気泡構造体とは、ウレタンフォームや天然海綿スポンジのように、多数の気泡体で構成され、それぞれの気泡は繋がっており、気体が通り抜けることができる構造体をいう。図18図19では、連続気泡構造体44の外周面は、フィルターB22の内周面から離れているが、フィルターB22の内周面と接していても良い。また、連続気泡構造体44の上面は、フィルターB22の上面と同じ高さになっているが、フィルターB22の上面よりも凹んでいても良いし盛り上がっていても良い。
【0034】
連続気泡構造体44の材質は、ウレタンフォームや、ウレタンフォームに活性炭やカーボンブラックを練り込んだり、表面に添着したりしたものが好ましい。なお、図では連続気泡構造体44をハニカム模様で示しているが、これは単なる作図上の記号であって、具体的な形状を示すものではない。
【0035】
さらに、本発明の好ましい態様として、コロナ放電を行うための高圧電極を具備したものを挙げることができる。すなわち、この態様では、高圧電極と、円板、フィルターA及び少なくとも1種の空気抵抗体の少なくともいずれかとの間に電圧を印加する手段とを具備し、かつ、高圧電極は、該高圧電極と、円板、フィルターA及び少なくとも1種の空気抵抗体の少なくともいずれかとの間で連続的にコロナ放電を行うものである。コロナ放電により、フィルターユニット内部空間に位置する、清浄すべき空気は、放電空間を通過してからフィルターを通過する。これにより、清浄すべき空気中に含まれる埃が帯電してフィルターに付着し易くなるので、空気清浄効果が一層高まる。このような埃を帯電してフィルターに付着させる手段は、フィルターの目を粗くしても高い集塵効率を発揮することができるので、フィルターBの目を粗くして空気抵抗をフィルターAより低くする際に有効である。
【0036】
図14は、フィルターA、フィルターB及び翼並びに高圧電極を具備する、本発明の好ましい一実施例の分解斜視図であり、図15は同斜視図であり、図16は同模式断面図である。図14中、32はベース板であり、ベース板32上にはモーター34が搭載されている。モーター34は回転軸34aを有し、この回転軸34aは、円板20の回転中心20aに固定され、回転軸34aが回転すると、円板及び円板上に搭載されたフィルターA、フィルターB及び翼28が回転する。ベース板32上には、多数の透孔(排気口)が設けられた円筒状のカバー36が載置されている。このカバー36は、ベース板32上に搭載されているので、円板20が回転しても回転しない。カバー36の端面上には、ドーナツ状の頂部カバー38が搭載されている。頂部カバー38は中央部分に開口があり開口縁部が上方に伸びて筒状になっている。この筒部に線状の高圧電極40を通す透孔42aが設けられている。透孔42aを外側から空気吸込口38a側へ通過した高圧電極40(好ましくは直径50~100μmのタングステン線に金メッキした線)は、頂部カバー38の開口部である空気吸込口38a(図14)内の先端に透孔42bを有する5本の柱の透孔を順次通過した後、透孔42aから外に出ることにより、リング状に配置される。高圧電極のリング中心と回転中心は同じ回転軸上にあることが望ましい。なお、図16に示される高圧電極40は、透孔42aを通過後、図面奥側に曲り透孔42bを3ヶ所通過したところまでが描かれている。
【0037】
高圧電極40は高圧発生器(図示せず)から、2~20kV程度のプラス又はマイナスの高電圧が印加できるようになっている。高圧電極40との間でコロナ放電を行うアース極は、円板20、又は上部端板12若しくは24、又は、フィルターA若しくはBがその役割を担う。
【0038】
円板20がアース極の場合、円板20自体が導電性を有していてもよいし、円板20表面の任意の範囲に導電材を印刷や塗装してもよい。円板20の導電性を有する部分は軸受のナット、モータ軸、モータベアリング、モータケーシングの順に電気的に繋がっており、モータケーシングから基板(図示せず)を介してアースされる(図16)。
【0039】
上部端板12又は24がアース極の場合、端板自体が導電性を有していてもよいし、端板表面の任意の範囲に導電材を印刷や塗装してもよい。端板の導電性を有する部分は導電塗料の経路、軸受のナット、モータ軸、モータベアリング、モータケーシングの順に電気的に繋がっており、モータケーシングから基板(図示せず)を介してアースされる(図16)。フィルターA又はBがアース極の場合、フィルター繊維自体が導電性を有していてもよいし、フィルター内に導電性を有する破砕活性炭を保持していてもよい。フィルターの導電性を有する部分は導電塗料の経路、軸受のナット、モータ軸、モータベアリング、モータケーシングの順に電気的に繋がっており、モータケーシングから基板(図示せず)を介してアースされる(図16)。
【0040】
連続気泡構造体44がアース極の場合、連続気泡構造体が導電性を有していてもよいし、連続気泡構造体表面の任意の範囲に導電材を印刷や塗装してもよい。連続気泡構造体の導電性を有する部分は導電塗料の経路、軸受のナット、モータ軸、モータベアリング、モータケーシングの順に電気的に繋がっており、モータケーシングから基板(図示せず)を介してアースされる。
【0041】
この実施例の空気清浄機の使用時には、モータを回転させることにより、フィルターユニット(フィルターA及びB)並びに翼を回転させると共に高圧発生器に高電圧を発生させ、高圧電極40に電位を付与する。モータの回転速度は、特に限定されず、フィルターの形状や装置の寸法により適宜選択されるが、通常、50~3000rpm程度、好ましくは100~1000rpmである。そうすると、フィルターや翼等の空気抵抗体によって風が起こり、フィルターや翼等の空気抵抗体により囲包された、フィルターユニット内部空間中に存在する空気は、フィルターや翼等の空気抵抗体を通過して、カバー36の空気排出口36aから吹き出される。これと同時に、頂部カバー38の空気吸込口38aとベース板32の空気吸込孔32aから空気が吸入される。
【0042】
これにより、頂部カバー38の空気吸込口38aとベース板32の空気吸込孔32aから空気が吸入された空気中の塵埃は、コロナ放電により帯電され、空気がフィルターB及びフィルターAを通過する際にフィルターB及びフィルターAに捕捉され、清浄化された空気がカバー36の空気排出口36aから吹き出される。
【0043】
なお、上記各実施例ではベース板は水平面に平行であるが、垂直であってもよい。頂部カバー38の空気吸込口が上方向を向いているが天井に取り付けられた場合は下方向となる。
【0044】
以上、本発明の空気清浄機について説明したが、本発明の空気清浄機内の少なくとも上記フィルターAに水分又は消臭液を保持させることにより、空気清浄機は、空気加湿機又は空気消臭機としても機能する。したがって、本発明は、上記本発明の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに水分を保持させた空気加湿機及び上記本発明の空気清浄機を含み、かつ、該空気清浄機内の少なくとも前記フィルターAに消臭成分を保持させた空気消臭機をも提供する。これは、例えば、回転するフィルターに、図示しない管からシャワー状に水あるいは消臭液を吹き付けること等により容易に達成することができる。ベース板が水平面に垂直な場合は、管から滴下することでフィルターに水あるいは消臭液を保持させることができる。フィルターが回転しているので吹き付けや滴下の場所は1ヶ所でよい。このようなフィルターを用いると、フィルターを通過する際に空気が水分を吸収する、あるいは、空気中の悪臭成分をフィルターの消臭成分が吸収するので、空気清浄と加湿と消臭を同時に行うことができる。本願発明の構成では円筒形フィルターを3つ使うことも可能であり、それぞれを空気清浄、加湿、消臭に特化させることで高性能な空気清浄加湿消臭機が実現できる。
【0045】
実験例
特許文献3記載の空気清浄機と本願発明の試作機(図14~16に示す実施例)で集塵性能の比較試験を行った。特許文献3記載の空気清浄機内の円筒形フィルターは、外形Φ310mm、内径Φ260mm、フィルターの高さ73mmであり、本願発明の試作機の円筒形フィルターAは、外形Φ310mm、内径Φ234、フィルターの高さ73mm、円筒形フィルターBは、外形Φ224mm、内径Φ148mm、フィルターの高さ73mm、翼の外縁はΦ138mmの円周上にあり60°等分割で6枚、高さは73mmである。この本願発明試作機の各寸法を図11において説明すると、m=Φ310mm、k=38mm、j=5mm、i=38mm、h=5mm、g=29mm、p=73mmとなる。特許文献3記載の空気清浄機、又は本願発明の試作機を、幅4m×奥行4m×高さ1.875m=30m3のチャンバー内中央に設置し、チャンバー内を200CPMのタバコの煙で満たした後、特許文献3記載の空気清浄機、又は、本願発明試作機を運転した。高圧電極に印加した電圧は-16kVであった。
【0046】
煙の減衰を比較したところ、160CPMから80CPMに半減する時間及びその時の消費電力は、特許文献3記載の空気清浄機では、4.0分、80Wh、本願発明試作機では、4.0分、40Whであった。円筒形フィルターの外形及び高さは、特許文献3記載の空気清浄機と本願発明試作機では同じであり、タバコの煙を160CPMから80CPMに半減する時間も同じであったが、消費電力は本願試作機が特許文献3記載の空気清浄機の半分であった。
【0047】
消費電力が半分になった理由は次のとおりである。特許文献3記載の空気清浄機では、ファンの役割をする円筒形フィルターが1つしかなく、このため回転速度を上げ大量の空気を処理して煙を除去していたが、本願発明試作機では、円筒形フィルターが2つ、つまりファンが2つあるのと同じためにファンの回転速度をさほど上げなくて済む、また、2段階のフィルターで煙を除去するので、除去率が高く、空気の処理量が少なくて済むからである。
【符号の説明】
【0048】
10 フィルターA
12 上部端板
14 下部端板
16 架橋帯
20 円板
22 フィルターB
24 上部端板
26 下部端板
28 翼
30 リング
32 ベース板
34 モータ
36 カバー
38 頂部カバー
40 高圧電極
42 透孔
44 連続気泡構造体
図1
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