(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】容器把持装置
(51)【国際特許分類】
B25J 15/08 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
B25J15/08 D
(21)【出願番号】P 2019016705
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】390029090
【氏名又は名称】靜甲株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117190
【氏名又は名称】前野 房枝
(74)【代理人】
【識別番号】100081282
【氏名又は名称】中尾 俊輔
(74)【代理人】
【識別番号】100085084
【氏名又は名称】伊藤 高英
(72)【発明者】
【氏名】安藤 史明
【審査官】稲垣 浩司
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-62767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 - 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端側対向面部に形成された把持部により容器を把持する一対のグリッパと、前記各グリッパを前記容器を把持する把持位置と前記容器を開放する開放位置との間で移動させる開閉機構と、を有する容器把持装置であって、
前記開閉機構は、
前記各グリッパ
を回動自在に支承するために並設された一対の支持軸、
前記各支持軸の一方に取り付けられた駆動レバー、
前記各支持軸の他方に取り付けられた作動レバー、
前記駆動レバーおよび前記作動レバーの一方に設けられたカムと前記駆動レバーおよび前記作動レバーの他方に設けられたカムフォロアとからなり前記駆動レバーと前記作動レバーとを連結して開閉駆動を伝達するリンク機構、
並びに、
前記駆動レバーを前記一方の
支持軸を以て回動させる駆動機構
を有していることを特徴とする容器把持装置。
【請求項2】
前記駆動機構は、一端を前記駆動レバーに接続され、他端をばね受けに取付けられており、各グリッパを前記リンク機構を介して常には把持位置に保持する付勢部材を有することを特徴とする請求項1に記載の容器把持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器を搬送しながら充填、施蓋等に供する装置への搭載に好適な容器把持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
充填包装業界等においては、樹脂製、ガラス製、金属製等の各種の容器を搬送しながら容器内に内容物を定量充填し、その後にキャップを取り付けることが行われている。
【0003】
そして、特に樹脂製の容器には、上方の開口部を有する口部と内容物を収容する下方の本体部とを接続するネック部にフランジ部を設け、このフランジ部を利用して容器を搬送するとともに、充填や施蓋に供する搬送装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
前述の容器のフランジ部を利用して容器を搬送する搬送装置における容器把持装置は、容器を把持する把持位置と開放する開放位置とを開閉移動自在な一対のグリッパを有している。これらのグリッパは、それぞれ回転軸をもってフレームに鉛直軸回りに回動自在に支承されており、各回転軸には互いに噛合する歯車が固着されており、両グリッパが同期して把持位置と開放位置とに開閉移動するように形成されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-247530号公報
【文献】特開2013-071757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の容器把持装置には、次のような不都合があった。
【0007】
第1に、両グリッパを開閉させる為の機構は歯車を噛合する構成とされているため、歯車の噛合部分の構造が複雑になる。第2に、歯車の噛合により稼働時間の経過とともに比較的短時間で歯車の噛合部分で摩耗が発生するので、潤滑油の供給が避けられない。第3に、食品の容器を扱う場合、潤滑油や摩耗粉の存在は衛生上の問題があるし、容易に洗浄を行うことができないものであり、メンテナンス性の悪いものであった。
【0008】
そこで、本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、歯車を用いることなく、また潤滑油を使用することなく、簡単な構造で、容器を把持することのできる容器把持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するため、本発明の第1の態様に係る容器把持装置は、先端側対向面部に形成された把持部により容器を把持する一対のグリッパと、前記各グリッパを容器を把持する把持位置と容器を開放する開放位置との間で移動させる開閉機構とを有する容器把持装置であって、前記開閉機構は、前記各グリッパの回動自在に支承するために並設された一対の支持軸、前記各支持軸の一方に一端を取り付けられた駆動レバー、前記各支持軸の他方に取り付けられた作動レバー、前記駆動レバーおよび前記作動レバーの一方に設けられたカムと前記駆動レバーおよび前記作動レバーの他方に設けられたカムフォロアとからなり前記駆動レバーと前記作動レバーとを連結して開閉駆動を伝達するリンク機構、並びに、前記駆動レバーを前記一方の支持軸を以て回動させる駆動機構を有していることを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、駆動機構により、前記駆動レバーを回動させ、前記リンク機構を介して各グリッパを前記把持位置と前記開放位置との間で開閉移動させることができ、従来の歯車を用いる構成に比べて簡単な形状とすることができる。また、従来の歯車を用いる構成に比べて摩耗粉の発生がなく、潤滑油を必要としないので、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0011】
また、本発明の第2の態様に係る容器把持装置は、駆動機構は、一端を前記駆動レバーに接続され、他端をばね受けに取付けられており、各グリッパを前記リンク機構を介して常には把持位置に保持する付勢部材を有することを特徴とする。
【0012】
このような構成によれば、前記駆動レバーを前記付勢部材の付勢力に抗して伸長させる方向に動作させることにより、常には把持位置に位置する一対のグリッパを開放位置に移動させることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の容器把持装置によれば、リンク機構を作動させることにより容器を把持することができる。これにより従来の歯車を用いる構成に比べて簡単な形状とすることができ、耐久性の向上を図ることができ、潤滑油の使用を省くことができ、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る容器把持装置の実施形態の要部を示す縦断側面図
【
図4】
図1のグリッパが開放位置で対称に開いた状態を説明する説明図(一部透視図)
【
図5】
図1のグリッパが開放位置で非対称に開いた状態を説明する説明図(一部透視図)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る容器把持装置について、
図1乃至
図5を参照して説明する。
【0018】
本実施形態の容器把持装置1は、
図1から
図3に示すように、全体が形成されており、スパウト付きパウチのような肉厚の薄い軟質な樹脂製の容器2を把持できるものである。容器2は、
図1に示すように、上方の開口部を有する口部2aと内容物を収容する下方の本体部2cとによって形成されている。この容器2においては、口部2aが比較的剛性が高いので、本実施形態の容器把持装置1においては口部2aの本体部2c側に位置するネック部2bを把持するように形成されている。
【0019】
本実施形態の容器把持装置1は、
図1に示す容器2のネック部2bを把持する一対のグリッパ3a、3bを有しており、当該グリッパ3a、3bは把持位置(
図2の実線位置)と開放する開放位置(
図4)とを開閉移動自在に形成されている。また、本実施形態における一対のグリッパ3a、3bは、図中一点鎖線にて示す一対のグリッパ3a、3bの把持位置における対向面間を対称面Cとして対称、例えば開度θが10度程度(
図4)をなすように開閉移動するようになっている。
【0020】
一対のグリッパ3a、3bは、略平板状に形成されており、その厚さ方向を鉛直方向に向けるとともに、その長手方向の先端部を容器2に向けて水平方向に延出されている。また、先端部の対向面部には、把持位置に移動した際に、容器2のネック部2bの外面に当接して容器2を把持する把持部3cが対向配置されている。把持部3cは平面視略矩形状に形成されている。一対のグリッパ3a、3bは、支持軸4a、4bをもって装置の回転基板5に鉛直軸回りに回動自在に支承されている。各グリッパ3a、3bは各支持軸4a、4bの上端部に着脱自在に取り付けられている。一対のグリッパ3a、3bは、開閉機構6によって、水平面内に沿って開閉移動自在に形成されている。
【0021】
開閉機構6について説明する。一方の支持軸4aの回転基板5より下方に突出している下端部には、駆動レバー7の一端部が着脱自在に取り付けられており、駆動レバー7の他端部には、一対のグリッパ3a、3bを常に把持位置に保持する付勢部材としての引っ張りばね8の一端が着脱自在に取り付けられている。この引っ張りばね8の他端は、回転基板5に設けられたばね受け9に取り付けられている。他方の支持軸4bの回転基板5より下方に突出している下端部には、作動レバー10の一端部が着脱自在に取り付けられている。駆動レバー7の高さ位置は作動レバー10の高さ位置より上方になっている。駆動レバー7と作動レバー10とはリンク機構11により連結されている。なお、駆動レバー7の高さ位置を作動レバー10の高さ位置下方にしてもよい。また、付勢部材としては、一対のグリッパ3a、3bを常に開放位置に保持するようにしてもよい。
【0022】
リンク機構11は、駆動レバー7および作動レバー10の一方、本実施形態においては駆動レバー7の長手方向の中央部分に設けられたカムフォロアとしての回転ローラ13と、駆動レバー7および作動レバー10の他方、本実施形態においては作動レバー10の他端部分に設けられたカムとしての上下方向に貫通するあらかじめ設定された所定形状のカム孔12と、を有している。回転ローラ13は、カム孔12の内部に対して外周面の一部が接触して摺動するように配置されている。回転ローラ13は、カム孔12に係合されている。また、回転ローラ13は、ローラ軸14の下端部に回転自在にして着脱自在に取り付けられている。ローラ軸14は、その長手方向を鉛直方向にして配置されており、上端部が駆動レバー7の他端部に取り付けられている。なお、回転ローラ13を作動レバー10に設け、カム孔12を駆動レバー7に設ける構成としてもよい。
【0023】
さらに、本実施形態においては、把持位置における駆動レバー7を支持する支持軸4aの軸心と回転ローラ13の軸心とを含む仮想平面と、駆動レバー7を支持する支持軸4aの軸心と作動レバー10を支持する支持軸4bの軸心とを含む仮想平面とのなす角度θ1が29.75度をなすように形成されている(
図2)。また、開放位置における駆動レバー7を支持する支持軸4aの軸心と回転ローラ13の軸心とを含む仮想平面と、駆動レバー7を支持する支持軸4aの軸心と作動レバー10を支持する支持軸4bの軸心とを含む仮想平面とのなす角度θ2が20度をなすように形成されている。
【0024】
そして、駆動レバー7を引っ張りばね8の付勢力に抗して伸長させる方向に動作させることにより、一対のグリッパ3a、3bを、把持位置から開放位置に移動させることができ、伸長させた引っ張りばね8を復帰させることで一対のグリッパ3a、3bを開放位置から把持位置に移動させることができるように形成されている。なお、駆動レバー7の駆動については、カム駆動や、偏心ローラ駆動や、シリンダなどのアクチュエータによる駆動などの公知の構成から設計コンセプトなどに応じて選択することができる。また、
図5に示すように、異なる形状のカム孔12аを備えた作動レバー10аに交換することで、一対のグリッパ3a、3bの開放位置における開度を非対称、例えば駆動レバー7の開度θを10度とし、作動レバー10aの開度θを5度とする構成とすることができる。したがって、カム孔12аの形状により一対のグリッパ3a、3bの動作と開度と開放状態とのそれぞれを制御することができる。このとき、駆動レバー7と作動レバー10の両方を交換してもよい。
【0025】
次に、本実施形態の容器把持装置1の作用を説明する。
【0026】
駆動レバー7を引っ張りばね8の付勢力に抗して伸長させる方向に動作させると、一方の支持軸4aが反時計方向に回転する。また、駆動レバー7の動作に伴って回転ローラ13がカム孔12内を転動することで、他方の支持軸4bが時計方向に回転する。すなわち、開閉機構6よって、一対の支持軸4a、4bが同期して逆方向に回転し、両グリッパ3a、3bが開放位置に移動する(
図4)。この時、リンク機構11は、回転ローラ13が回転しつつ回転ローラ13の外周面がカム孔12の内面に当接しながら移動する。
【0027】
両グリッパ3a、3bが容器2のネック部2bを挟むように把持位置に移動すると、駆動レバー7が元の位置に復帰し、
図1に示すように一対のグリッパ3a、3bの対向する把持部3cによってネック部2bが把持される。
【0028】
このように、本実施形態の容器把持装置1によれば、開閉機構6によって、一対のグリッパ3a、3bを開閉することができる。また、リンク機構11は、回転ローラ13が回転しつつ回転ローラ13の外周面がカム孔12の内面に当接しながら移動するので、従来の歯車を用いる構成に比べて簡単な形状とすることができるし、従来の歯車を用いる構成と異なり摩耗粉の発生がなく、潤滑油を必要としないので、メンテナンスを容易に行うことができる。
【0029】
なお、
図5に示すように、一対のグリッパ3a、3bの開放位置における開度を非対称とする、すなわちカム孔12аの形状の異なる作動レバー10аを用いて一対のグリッパ3a、3bを非対称に開くことも可能となる。これにより、たとえば、口部2aが本体部2c側の片側によって配置されている容器(図示せず)、すなわち、一対のグリッパ3a、3bの位置が容器に対して非対称の位置にある場合であっても容器を容易かつ確実に把持することができる。
【0030】
なお、本発明は、前述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の特徴を損なわない限度において種々変更することができる。例えば、容器に関しても、軟質な樹脂製の容器に限定されず、硬質な樹脂製容器、ガラス製容器、金属製容器等に対しても本発明を良好に適用することができる。また、容器の把持位置も前述の実施の形態のようにネック部に限らない。
【符号の説明】
【0031】
1 容器把持装置
2 容器
2b ネック部
3a、3b グリッパ
3c 把持部
6 開閉機構
7 駆動レバー
8 引っ張りばね
10 作動レバー
11 リンク機構
12 カム孔
13 回転ローラ
C 対称面
θ 開度