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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】手すり
(51)【国際特許分類】
   E04F 11/18 20060101AFI20230613BHJP
【FI】
E04F11/18
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019035248
(22)【出願日】2019-02-28
(65)【公開番号】P2020139314
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2022-02-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000112185
【氏名又は名称】ビニフレーム工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】吉野 貴之
(72)【発明者】
【氏名】瀬川 葉一
【審査官】須永 聡
(56)【参考文献】
【文献】実開平05-047180(JP,U)
【文献】登録実用新案第3202232(JP,U)
【文献】米国特許第04403767(US,A)
【文献】特開2007-138651(JP,A)
【文献】特開2006-193935(JP,A)
【文献】実開昭49-142730(JP,U)
【文献】特開平09-228700(JP,A)
【文献】特開2006-342522(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
E04H 17/00-17/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱と笠木と下弦材と格子とを備える手すりであって、
笠木および下弦材の対向する側には長手方向に連続する空間が設けてあり、それぞれの空間には格子の長手方向の一端部と他端部が挿入し、
格子は、笠木および下弦材の前記空間を囲む側壁部のいずれかにのみ固定具で固定してあり、格子の外周壁部における見付側が見込み方向の中央よりも幅広に形成してあることを特徴とする手すり。
【請求項2】
前記空間は、笠木と下弦材の上下に対向する箇所で、かつ前記笠木と下弦材の内部に入り込むように溝状に形成してあり、格子は、溝状の空間の側壁部にのみ固定してあることを特徴とする請求項1記載の手すり。
【請求項3】
格子は、笠木と下弦材の空間内に、長手側の一端および他端を離した状態で空間の側壁部に固定してあることを特徴とする請求項1又は2記載の手すり。
【請求項4】
格子は、外周部の見込み側壁部の一部に凹凸があることを特徴とする請求項1、2又は3記載の手すり。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不快な音鳴りの対策を施した手すりに関するものである。
【背景技術】
【0002】
手すりは、躯体に間隔をあけて複数立設する支柱と、支柱間の上部を架け渡す笠木と、
支柱間の下部を架け渡す下弦材と、笠木と下弦材の間に間隔をあけて複数立設する格子と
から構成するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-342522号公報
【文献】意匠登録第403759号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
格子に風が吹き付けたときに、格子が振動して笠木や下弦材に断続的に接触して不快な金
属音を発生する。このことから、手すりに金属材同士が接触する箇所を設けると、風など
の外的な影響で格子が動くことで金属部位同士の接触、いわゆるメタルタッチが発生する。これを抑えるためには、特開2006-342522号公報のように、何らかの対策を
施す必要があった。
【0005】
本発明は、上記課題を鑑みてなされたものであり、風などの外的要因で格子が振動して
も不快な音鳴りの発生を抑えることのできる手すりを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち請求項1記載の発明は、支柱と笠木と下弦材と格子とを備える手すりであ
って、笠木および下弦材の対向する側には長手方向に連続する空間が設けてあり、それぞれの空間には格子の長手方向の一端部と他端部が挿入し、格子は、笠木および下弦材の前
記空間を囲む側壁部のいずれかのみに固定具で固定してあり、格子の外周壁部における格子の見付側が見込み方向の中央よりも幅広に形成してあることを特徴とする。ここで、格子の上下端部が笠木や下弦材の空間に差し込まれる範囲は、少なくとも、格子を取り付けたときに空間から外れることがなく、溝部を囲む側壁部に固定具をネジ止めできるネジ孔を設けることのできる範囲とする。また、空間は、格子の見込み幅よりもわずかに幅広に設けてあればよく、格子が笠木や下弦材に固定されたときに、前記格子が揺動してもその固定箇所以外の部位が笠木や下弦材と接触しない間隔を有することが望ましい。
【0007】
本発明の請求項2記載の発明は、前記空間は、笠木と下弦材の上下に対向する箇所で、
かつ前記笠木と下弦材の内部に入り込むように溝状に形成してあり、格子は、溝状の空間
の側壁部にのみ固定してあることを特徴とする。ここで溝状の空間は、笠木と下弦材の内
周側にそれぞれが開放しており、格子の上端部と下端部をそれぞれ受け入れることができ
るものであればよい。例えば、下向きコ字型のものが一般的となるが、半円状や多角形状
など、対向側に格子を溝内に受け入れる開放口を有するものであれば限定しない。
【0008】
本発明の請求項3記載の発明は、格子は、笠木と下弦材の空間内に、一端および他端を
離した状態で空間の側壁部に固定してあることを特徴とする。
【0009】
本発明の請求項4記載の発明は、格子は、外周部の見込み側壁部の一部に凹凸があることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明のうち請求項1記載の発明によれば、笠木と下弦材のそれぞれに格子の上端部または下端部を呑み込む空間を設け、さらに、格子の上端部および下端部を空間の側壁部内
周部に沿わせて固定具で固定する。これにより、格子は、笠木と下弦材に対して上端部あるいは下端部の一側部のみが接触するので、格子の上端部と下端部は笠木や下弦材に接触
せず、音鳴り発生の要因を減らすことができる。また、格子の見込み側に凹凸した箇所を設けることで、格子を通過する風の流れに変化を与えられる。これにより、格子の内側見付け周辺でカルマン渦の発生を抑えられ、不快な風鳴音の発生をさらに一層軽減できる。
【0011】
本発明のうち請求項2記載の発明によれば、空間は、笠木と下弦材の内部に納まっていることで、上下の空間に格子の上端部と下端部を呑み込ませたときに、格子の取り付けを
支持する部位が露出せず、音鳴りの発生を抑えるとともに、笠木の下端と下弦材の上端か
ら格子のみが見える連続的な意匠となることから、手すりの外観が良好となる。
【0012】
本発明のうち請求項3記載の発明によれば、格子と笠木および下弦材とを離して固定し
てあるので、格子とその他部材との接触部位が少なくなって、格子が振動したときに当該
格子と笠木および下弦材が当たって生じる不快な金属音の発生が抑えられる。
【0013】
本発明のうち請求項4記載の発明によれば、格子の見込み側に凹凸した箇所を設けることで、格子を通過する風の流れに変化を与えられる。これにより、格子の内側見付け周辺
でカルマン渦の発生を抑えられ、不快な風鳴音の発生をさらに一層軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施による手すりの要部を示す縦断面図である。
図2】(a)(b)は、本実施による手すりの施工手順を示す斜視図である。
図3】本実施による手すりの施工後の状態を示す(a)は、斜視図であり、(b) は、正面図である。
図4】本実施による手すりの格子に風が当たったときの作用を示す縦断面図である。
図5】本発明の手すりの第二実施形態を示す縦断面図である。
図6】本発明の手すりの(a)は、第三実施形態を示す縦断面図であり、(b)は、第四実施形態を示す縦断面図である。
図7】本発明の手すりの(a)は、格子の一例を示す右図が斜視図、左図が横断面 図であり、(b)は、同じく格子の一例を示す右図が斜視図、左図が横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の手すりの実施形態を各図面に基づいて説明する。なお、本実施では縦格
子タイプの手すりに適用したものについて説明する。
本発明の手すりは、図3(a)(b)を参照すれば、支柱1と、笠木2と、下弦材3と、複数の格子4とから構成する。また、本実施による手すりの格子4は、前述したとおり上下に延長する縦格子タイプであり、その格子4を笠木2、下弦材3の間に、かつ支柱1間に一定の間隔をあけて多数配置したものである。
【0016】
笠木(笠木本体)2は、図1図2(a)(b)のように、長尺な押出形材を組み合わせて形成されており、笠木支持材5と、覆い材6とから構成するものである。
【0017】
覆い材6は、本実施のものは、上側の内外のコーナー部がそれぞれ面取りされており、
その断面形状がいわゆる「かまぼこ」型をなしている。また、覆い材6は、下方が開放し
ており、その内外の両端部は、覆い材6の内周側に跳ね上がるように屈曲しており、それぞれが係止部7,7となって笠木支持材5に係止することができるものである。また、覆
い材6は、上記のように下方が開放しており、笠木支持材5を内周側に受け入れた状態で
係止することから、笠木支持材5が手すりの内外いずれからも隠蔽される構造となっている。
【0018】
笠木支持材5は、図1を参照すれば、水平な板材の中央部が上向きに突出し、その突出
した箇所の内周部に上側溝部(空間)8を形成している。さらに、上記の上側溝部8を内
外に挟んだ両側部には、覆い材6の各係止部7,7が係止する被係止部10,10がそれぞれ設けてある。また、上側溝部8の形状は、垂直な両側壁部9a,9aと、両側壁部9a,
9aのそれぞれの上端部の間をつなぐ連結壁部9bとから下向きコ字型に形成するもので
ある。
【0019】
下弦材3は、図1を参照すれば、手すりの内側に配置する内側見付け壁3aと、同じく
外側に配置する外側見付け壁3bと、上記の内側見付け壁3aと外側見付け壁3bのそれぞれの上端間をつなぐ下連結壁部3cとから三方を囲む形状をなしている。さらに、下連
結壁部3cの内外方向の中央には、格子4の下端部を受け入れる上向きコ字型の下側溝部
(空間)11が設けてある。そして、下弦材3の下側溝部11は、笠木2の上側溝部8と
上下に対向する位置に配置され、垂直な両側壁部11a,11aと、その両側壁部11a,
11aの下端間をつなぐ底壁11bとから上向きコ字型に形成される。また、隣接する各
支柱1間の対向する各々の見込み側の側壁部に、下弦材支持部材12がそれぞれ取り付け
てある。そして、前述の下弦材支持部材12で下弦材3を支持するときは、図2(a)(
b) を参照すれば、その下弦材3を支柱1,1間に配置するとともに、支柱1,1間に対
向して取り付けてある下弦材支持部材12に載置する。上記のような状態で下弦材3と
下弦材支持部材12のタッピングホールに固定具13を挿通してねじ込んでいくことにより、支柱1,1間に下弦材3が固定される。さらに、内外の両側壁3a,3bの一方は、下
弦材3から着脱自在な構造となっている。このようにすると、一方の側壁部3a,3bを
外すと、下側溝部11を囲む側壁部3a,3bの外周部が露出し、固定具15を固定しや
すくなる。
【0020】
格子4は、図2(a)(b)のように、断面矩形状をなす中空形材で形成している。ま
た、格子4の太さは、笠木2の上側溝部8と下弦材3の下側溝部11の溝幅よりもわずか
に細く設定してある。これにより、格子4の上端部を上側溝部8に呑み込ませることがで
きるとともに、格子4の下端部を下側溝部11に呑み込ませることができるので、笠木2
と下弦材3の間に多数の格子4を上下の溝部8,11に沿って送り出せるので、各格子4
を所定の位置まで簡単に配置できる。また、上側溝部8と下側溝部11に上端部と下端部
が呑み込まれた格子4に対し、覆い材6と一方の側壁部3aをそれぞれ取り外すことで、
上側溝部8と下側溝部11の側壁部9a,11aの外周部が露出する。これにより、溝8,11の外周部の側方からネジなどの固定具15をねじ込むことで、固定具15の先端が
呑み込まれた格子4に到達し、格子4と笠木2、下弦材3を固定できる。
【0021】
以上のように、本実施による手すりを構成することにより、以下に示す作用・効果を奏
することになる。
各格子4は、図1のように、上側溝部8の内側見付け壁9aまたは外側見付け壁9b、
下側溝部11の一方の側壁部11aにのみ接触するので、各格子4と笠木2、下弦材3と
の接触する箇所が小さくなる。このように、金属製の部位同士の接触がごく狭い範囲になることから、風や地盤振動に伴う手すりへの振動伝達時に、不快な金属音の発生を抑えられる。
以上、本実施の手すりを説明の便宜上、第一実施形態とする。
【0022】
本発明の他の実施形態として、図5のように、笠木支持材5の下部に、格子4を支持す
る上側溝部(空間)28を有する連結材16を設ける。この連結材16は、内側片16a
と外側片16bと、前記内側片16aと外側片16bの上端をつなぐ連結片16cとから
下向きコ字型に形成してある。また、連結材16のコ字をなす内周側の見込み寸法は、格
子4の見込み幅よりもコ字の内周側の幅がわずかに広く形成してあり、連結材16のコ字
の内周側に格子4を配置したときに、格子4を連結材16の内側見付け壁16aか外側見
付け壁16bのいずれかに寄せて配置するものである。さらに、上記の連結材16と笠木
支持材5との固定は、連結材16の連結片16cを笠木支持材5の下端部に配置し、その
上下に重なった箇所に固定具17で固定するものである。また、連結材16は、笠木支持
材5の長手方向に沿って一続きに連続して配置してある。このようにすると、連結材16
の下方が笠木支持材5の全長に亘って開放していることにより、その直線状に開放した箇
所に複数の格子4を呑み込ませることができる。したがって、所定本数の格子4をまとめ
て上下の連結材16の間に配置し、各格子4を所定の位置にスライドして連結材16の側
方から固定具15で固定することで、従来の一般的な格子手すりよりも効率的な施工がで
きる。
なお、図示は省略するが、下弦材3の上部には、上向きコ字状の連結材16を固定する
ことができる。こちらは、笠木支持材5の下部に固定した連結材16の向きを変えて使用
することもできる。
以上、本実施の手すりを説明の便宜上、第二実施形態とする。
【0023】
本発明の手すりは、上記した各実施形態のほか、特許請求の範囲内であれば変更ができ
る。
上記では、第一実施形態として、笠木2に上側溝部8を、下弦材3に下側溝部11をそれぞれ設けて、その上下の溝部8,11に格子4の上端部と下端部を呑み込ませて固定し
たものについて説明した。さらに、第二実施形態として、笠木2の下端部および下弦材3
の上端部に、断面コ字型の連結材16を設け、その連結材16のコ字の内周部に、格子2
の上端部と下端部をそれぞれ呑み込ませて固定するものについて説明をした。
それ以外に、格子4とできるだけ接触しない状態で笠木2と下弦材3の間に配置できる
構造のものであれば限定しない。たとえば、図6(a)のものは、笠木2の下端部および
下弦材3の上端部のそれぞれに、水平片26aと垂直片26bとからL字型をなす連結材
26を固定具17で固定したものである(第三実施形態とする。)。こちらは連結材26
の内周側に格子4を受け入れる空間38が形成される。さらに、図6(b)のものは、笠
木支持材5の中央やや内側寄りの箇所から下方に垂下した垂下片35が設けてある。この
垂下片35の外側壁部に、格子4の一側壁部を沿わせ、その互いの当接箇所に固定具17
を固定したものである(第四実施形態とする。)。こちらは、垂下片35と笠木支持材5とで囲まれた箇所に格子4を受け入れる空間48が形成される。上記した第三実施形態、第四実施形態のように形成したものは、いずれも格子4と笠木2及び下弦材3との接触が小さくなるので、格子4に風が当たる、あるいは、格子4に躯体からの振動が伝わったときの音鳴りの発生が抑えられる。
なお、図示は省略するが、第三実施形態の下弦材3の上部には、上記の連結材26と同
じ構造のものが固定してあり、また、第四実施形態の下弦材3の上部にも、上記の垂下片
35と同じ構造の起立片が一体的に設けることもできる。さらに、図示は省略するが、垂
下片35や起立片を笠木支持材5の見込み方向に間隔をあけた二箇所に設け、第一~第二
実施形態の上側溝部8,28および下側溝部11のようにコ字型の空間にすることもでき
る。
【0024】
また、本発明の手すりは、上記した格子4と笠木2および下弦材3との固定構造とする
ことに加えて、格子4の断面形状を矩形以外の形状に変更することによっても、音鳴りを
抑えることができる。具体的に、図7(a)のように、格子24の外周壁部における見込
み方向の中央Pを窪ませ、内側端部と外側端部が張り出した構造とし、いわゆる「砂時計
型」の断面形状とした。さらに、図7(b)のように、格子34の見込み方向の外側の両
側壁部にのみ凸部が設けてある、いわゆる「T字型」の断面形状とした。このように形成
すると、格子24,34に当たった風が内側に抜けるときに、カルマン渦の発生が抑えられることによる、ブーンという振動音の発生を抑制し、ヒューという笛吹き音のような音鳴りの発生も抑えることが期待できる。なお、前述では格子24,34の断面が「砂時計型」と「T字型」のものについて説明したが、格子24,34の見込み側の側壁部9a,11aに凹凸を有するものであれば、カルマン渦の発生を抑えられることは、たとえば、意匠登録第403759号公報などで周知であることから、その形状を限定するものではない。
【符号の説明】
【0025】
1 支柱
2 笠木
3 下弦材
3a 内側見付け壁部
3b 外側見付け壁部
3c 下連結壁部
4、24、34 格子
5 笠木支持材
6 覆い材
7 係止部
8 上側溝部(笠木側)
9a 両側壁部
9b 連結壁部
10 被係止部
11 下側溝部(下弦材側)
11a 両側壁部
11b 底壁
12 下弦材支持部材
13,15,17 固定具
14 遮音材
16,26 連結材
16a 内側片
16b 外側片
16c 連結片
26a 水平片
26b 垂直片
35 垂下片
P 見込み方向の中央
Q 見込み方向外側の端部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7