(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】組成物、積層体、身体化粧シート、美容方法、美容装置、及び、葉焼け防止方法
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20230613BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/36 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/65 20060101ALI20230613BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230613BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/36
A61K8/365
A61K8/65
A61K8/73
A61Q17/04
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2019095276
(22)【出願日】2019-05-21
【審査請求日】2022-03-18
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成29年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業 大学発新産業創出プログラム委託事業「活性酸素光除去技術の事業化検証への可視光敏感水素生成光触媒の開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301023238
【氏名又は名称】国立研究開発法人物質・材料研究機構
(72)【発明者】
【氏名】阿部 英樹
(72)【発明者】
【氏名】本橋 早苗
(72)【発明者】
【氏名】大倉 尚子
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-001774(JP,A)
【文献】特開2015-157282(JP,A)
【文献】特開2006-056825(JP,A)
【文献】特開2005-320258(JP,A)
【文献】特開2002-065864(JP,A)
【文献】特開2000-136112(JP,A)
【文献】国際公開第2008/068913(WO,A1)
【文献】特開2008-079733(JP,A)
【文献】特開2014-001147(JP,A)
【文献】特開2011-000026(JP,A)
【文献】特開2003-335610(JP,A)
【文献】特表2014-519401(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A45D 44/00-44/22
B01J 21/00-38/74
A01G 2/00-31/06
A01N 1/00-65/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式Sn
3
O
4
で表される結晶であって、前記結晶中に価数の異なるSnが2種以上存在する結晶である光触媒粒子であり、波長が400~500nmの可視光の照射により水素を発生可能な
前記光触媒粒子と、
寒天、ゼラチン、コラーゲン、及び、カードランからなる群より選択される少なくとも1種であって、ヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子と、
水と、
アルコール類、及び、有機酸類からなる群より選択される少なくとも1種であって、ヒドロキシ基、及び、カルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有する水素源化合物と、
を含有する組成物。
【請求項2】
前記結晶が2つのSn
2+、及び、Sn
4+O
6八面体からなる構造が規則的に配列されてなる、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記ヒドロゲルが熱可逆性である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
前記
アルコール類が、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ブチレングリコールモノメチルエーテル、3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-3-エトキシブタノール、3-メチル-3-n-プロポキシブタノール、3-メチル-3-イソプロポキシブタノール、3-メチル-3-n-ブトキシシブタノール、3-メチル-3-イソブトキシシブタノール、3-メチル-3-sec-ブトキシブタノール、3-メチル-3-tert-ブトキシシブタノール、及び、3-メトキシブタノールからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記
有機酸類が、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メバロン酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、バニリン酸、ゲンチジン酸、没食子酸、マンデル酸、クマル酸、コーヒー酸、及び、フェルラ酸からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項6】
更に、前記光触媒粒子の表面に吸着した助触媒粒子を含有する、請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記助触媒粒子
が、白金、ルテニウム、ロジウム、銀、金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、硫化モリブデン、硫化ニッケル、及び、硫化タングステン、並びにニッケル、マンガン、ルテニウム、コバルト、及び、イリジウム等の酸化物、水酸化物、及び、リン酸塩からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
化粧料である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
葉焼け防止用である、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項10】
基材と、請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物により前記基材上に形成された組成物層と、を有する積層体。
【請求項11】
前記基材が、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、及び、ポリオレフィン等の合成繊維からなる織布又は不織布;絹、綿、麻、レーヨン、及び、コラーゲン等からなる天然繊維の織布又は不織布;ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、及び、ポリウレタン等のシート;プルラン、及び、デンプン等の薄膜シートからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
請求項11に記載の積層体を有する身体化粧シート。
【請求項13】
請求項12に記載の身体化粧シートを肌表面に貼付するステップを有する美容方法。
【請求項14】
更に、前記身体化粧シートが有する組成物層に可視光を照射するステップを有する請求項13に記載の美容方法。
【請求項15】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物を用いて肌表面に組成物層を形成するステップと、
前記組成物層に可視光を照射するステップと、
を備え、
前記可視光によって前記光触媒粒子が励起され、前記ヒドロゲル中に含有される水素源化合物から供給されるH
+
を還元し、H
2
を発生して、前記H
2
が前記ヒドロゲル中を移動して前記肌表面に移動し、
前記可視光と共に存在する紫外線により発生する活性酸素種を前記H
2
により消去し、
前記肌表面に存在する抗酸化物質が前記組成物層内を移動しにくく、前記光触媒粒子と接触しにくく、よって、前記抗酸化物質が、前記光触媒粒子の作用により分解されることが少ない
美容方法。
【請求項16】
顔を覆うドーム部と、前記ドーム部に配置された請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物を吐出するための組成物吐出部と、前記ドーム部に配置された少なくとも1つの光源とを有する美容装置。
【請求項17】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物を用いて植物の器官表面に組成物層を形成する工程と、
前記組成物層を介して前記器官表面に可視光を照射する工程と、
前記可視光によって前記光触媒粒子が励起され、前記ヒドロゲル中に含有される水素源化合物から供給されるH
+
を還元し、H
2
を発生して、前記H
2
が前記ヒドロゲル中を移動して前記肌表面に移動し、
前記可視光と共に存在する紫外線により発生する活性酸素種を前記H
2
により消去し、
前記器官表面に存在する抗酸化物質が前記組成物層内を移動しにくく、前記光触媒粒子と接触しにくく、よって、前記抗酸化物質が、前記光触媒粒子の作用により分解されることが少ない
植物の葉焼け防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組成物、積層体、身体化粧シート、美容方法、美容装置、及び、葉焼け防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水素ガスを発生させ、上記水素ガスと活性酸素種(ROS:Reactive Oxygen Species)と反応させることで、皮膚にとって有害な活性酸素種を取り除く化粧料が知られている。
【0003】
このような化粧料として、特許文献1には、「水と反応して水素ガスを発生する水素発生化合物を含む水素発生剤と、水を含む水素発生助剤と、が個別に包装され、肌に塗布するときに、これらを混合して水素ガスを含有する混合剤を得る化粧料であって、前記水素発生剤と無機系吸湿剤との混合粉末を封入した第1包装体と、前記水素発生助剤を封入した第2包袋体と、を備え、少なくとも前記第1包装体がガスバリア性フィルムから構成された、化粧料」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らが上記化粧料について検討したところ、一度水素を発生させると、効果が速やかに失われやすいという問題があることを知見した。そこで本発明は、活性酸素種の消去性能がより長期にわたって維持されやすい組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、積層体、身体化粧シート、美容方法、美容装置、及び、葉焼け防止方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、以下の構成により上記課題を達成することができることを見出した。
【0007】
[1] 可視光の照射により水素を発生可能な光触媒粒子と、ヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子と、水と、水素源化合物とを含有する組成物。
[2] 上記光触媒粒子が、化学式Sn3O4で表される結晶であって、上記結晶中に価数の異なるSnが2種以上存在する結晶である、[1]に記載の組成物。
[3] 上記結晶が2つのSn2+、及び、Sn4+O6八面体からなる構造が規則的に配列されてなる、[1]又は[2]に記載の組成物。
[4] 上記ヒドロゲルが熱可逆性である、[1]~[3]のいずれかに記載の組成物。
[5] 上記水溶性高分子が、寒天、ゼラチン、コラーゲン、及び、カードランからなる群より選択される少なくとも1種である、[1]~[4]のいずれかに記載の組成物。
[6] 上記水素源化合物が、ヒドロキシ基を有する[1]~[5]のいずれかに記載の組成物。
[7] 上記水素源化合物が、炭素数2又は3のアルコールである、[1]~[6]のいずれかに記載の組成物。
[8] 更に、上記光触媒粒子の表面に吸着した助触媒粒子を含有する、[1]~[7]のいずれかに記載の組成物。
[9] 化粧料である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[10] 葉焼け防止用である、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物。
[11] 基材と、[1]~[8]のいずれかに記載の組成物により上記基材上に形成された組成物層と、を有する積層体。
[12] [11]に記載の積層体を有する身体化粧シート。
[13] [12]に記載の身体化粧シートを肌表面に貼付するステップを有する美容方法。
[14] 更に、上記身体化粧シートが有する組成物層に可視光を照射するステップを有する[13]に記載の美容方法。
[15] [1]~[8]のいずれかに記載の組成物を用いて肌表面に組成物層を形成するステップと、上記組成物層に可視光を照射するステップと、を有する美容方法。
[16] 顔を覆うドーム部と、上記ドーム部に配置された[1]~[8]のいずれかに記載の組成物を吐出するための組成物吐出部と、上記ドーム部に配置された少なくとも1つの光源とを有する美容装置。
[17] [1]~[8]のいずれかに記載の組成物を用いて植物の器官表面に組成物層を形成する工程と、上記組成物層を介して上記器官表面に可視光を照射する工程と、を有する植物の葉焼け防止方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、活性酸素種の消去性能がより長期にわたって維持されやすい組成物を提供できる。また、本発明によれば、積層体、身体化粧シート、美容方法、美容装置、及び、葉焼け防止方法も提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本組成物を肌表面に塗布し、肌表面に組成物層(膜)を形成した状態の断面模式図である。
【
図3】身体化粧シートである積層体の一形態である顔用の化粧マスクの模式図である。
【
図5】ドーム部の表面に2次元マトリクス状に配置された複数の光源の平面図を示した。
【
図8】紫外線照射によるカテキンの分解試験の結果を表すグラフである。
【
図9】活性酸素消去試験における、光照射時間(横軸)と、液中の過酸化水素含有量の変化(縦軸)との関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施形態に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0011】
[組成物]
本発明の実施形態に係る組成物(以下「本組成物」ともいう。)は可視光の照射により水素を発生可能な光触媒粒子(以下、単に「光触媒粒子」ともいう。)と、ヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子と、水と、水素源化合物とを含有する組成物である。
本組成物により上記課題が解決される機序については必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下のとおり推測している。なお、以下に説明する機序は推測であり、以下の機序によらず本発明の解決しようとする課題が解決される場合であっても本発明の範囲に含まれる。
【0012】
本発明者らは、特許文献1の化粧料において活性酸素種の消去性能が経時的に維持されにくい要因の一つが、水素発生化合物、具体的には水酸化マグネシウム粉末等の水素源化合物と助剤(水)との反応等によって水素を発生させている点にあると推測している。すなわち、上記反応が一旦開始してしまうと、その反応が継続している間のみ、水素ガスが得られ、反応が終了すると水素ガスが得られなくなってしまうからである。
【0013】
活性酸素種は肌の老化、具体的にはしみ、しわ、及び、くすみ等の原因になることが知られ、紫外線(特に「UV-A」と呼ばれる波長域の光)の照射を受けることでも発生すると考えられている。
上記化粧料によれば、反応が継続している間は、活性酸素種を消去することができるものの、その後に、肌に紫外線照射を受けて活性酸素種が発生したとしても、その時点で反応が終了してしまっていれば、所望の効果が得られないことになる。
また、逆に、活性酸素種の発生の有無にかかわらず、一旦反応が開始してしまえば、消去対象である活性酸素種が存在しないか、少量しか存在しない場合であっても、水素ガスが発生してしまう。
例えば、使用者が紫外線の照射を受けにくい環境下にある場合であっても、言い換えれば、活性酸素種が生じにくい環境下にあっても、それとは無関係に水素ガスが発生し続け、活性酸素種との反応に寄与しないまま水素ガスが散逸して失われるため、効率が悪いという問題があった。
【0014】
本発明者らは、紫外線照射によって活性酸素種が発生すること、及び、自然光には紫外線に加えて生体にとって比較的害の少ないと考えられる可視光が含まれることに着目した。すなわち、肌が自然光の照射を受けている場合、紫外線と同時に可視光の照射も受けていることに着目した。
本発明者らは、自然光の照射を受けて活性酸素種が生成する場合に、それと並行して可視光の照射により水素を発生させれば、活性酸素種が発生する時機に合わせて水素を発生させ、必要十分な範囲で活性酸素種を消去できることを着想した。
【0015】
そこで、可視光の照射により水素を発生可能な公知の光触媒粒子を用いると、所望の効果が得られるか、また、特許文献1の水素発生剤を光触媒粒子に置き換えるだけで所望の効果が得られるのかについて検討した。
その結果、上記によれば確かに長期間にわたって水素ガスを発生させることができるものの、例えば、化粧料として肌に適用したとしても所望の活性酸素消去性能が得られない場合があることを知見した。そればかりか、組成物を適用した被適用物をより酸化してしまうという、意図しない効果が得られる場合があることを知見した。
上記は、特許文献1のような化粧料において、水素発生剤を光触媒粒子に置き換えることにより初めて知見された新たな課題であった。
【0016】
本発明者らは上記の原因を究明するため、様々な試験を行い、鋭意検討してきた。その結果、後段の実施例に記載した試験により、その原因を明らかにするに至った。
試験の詳細は後述するが、その内容は、上記光触媒粒子にカテキン水溶液を加え、可視光の照射したときの、カテキン水溶液中におけるカテキンの含有量の変化を調べた簡素なものである。この試験の結果、所定時間経過した後にカテキンの含有量が低下している、すなわち、光触媒粒子の作用により、カテキン(被適用物)が分解されてしまうことがわかった。
【0017】
本発明者らは、上記試験結果から、その原因を精査したところ、光触媒粒子の水素発生機構に起因して、上記問題が発生した可能性を見出した。
すなわち、上記光触媒粒子は、可視光の照射を受けると、価電子帯(バレンスバンド)の電子が伝導帯(コンダクションバンド)に励起され、上記励起された電子によって光触媒粒子が存在する媒体中のH+をH2に還元する。この際、カテキンが、H+の供給源となってしまったものと推測された。
【0018】
本発明者らは、上記現象について、単に、カテキンが水素源になったと認識するだけでなく、類まれなる洞察力により、光触媒粒子を肌に適用した場合に所望の活性酸素消去性能が得られない場合がある原因にもなっていると推測した。
【0019】
一般に、生体内には、元来、活性酸素種を消去する機構が備わっていると考えられている。そのような機構を担う物質、いわゆる抗酸化物質としては、ビタミンC、ビタミンE、グルタチオン、ユビキノン、及び、カロテノイド色素等が知られている。
本発明者らは、上記実験結果から、光触媒粒子の作用により上記の様な抗酸化物質が水素源として消費されてしまう結果、所望の効果が得られないものと推測したのである。
【0020】
本発明者らは、紫外線照射により惹起される活性酸素種の生成と並行して水素を発生せしめ、かつ、抗酸化物質を失わせしめることのない方法を鋭意検討し続け、本発明を完成させた。
【0021】
本組成物は、上記光触媒粒子と、ヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子と、水と、水素源化合物とを含有する。本組成物を被適用物(例えば、肌表面)に適用した場合、被適用物上には組成物層が形成される。この組成物層は、典型的には、光触媒粒子が分散されたヒドロゲルである。
ここで、ヒドロゲルは組成物層において水溶性高分子の3次元網目構造に起因して半透膜として機能するものと推測される。すなわち、組成物層において、可視光の照射により発生した水素は組成物層中を容易に移動することができるものの、一方で、上記の抗酸化物質は組成物層中を移動しにくい(透過しにくい)。このように、本組成物を用いて形成された組成物層は上記の特性を有するため、例えば、肌表面に適用した場合に、肌表面、及び/又は、肌中に存在するビタミン、及び、色素等(以下、単に「抗酸化物質」という。)がヒドロゲル中に移動しにくく、その結果、抗酸化物質が光触媒粒子と接触しにくいため、分解されにくいものと推測される。
【0022】
図1には、本組成物を肌表面に塗布し、肌表面に組成物層(膜)を形成した状態の断面模式図を示した。
本組成物を用いて形成された組成物層10が肌11表面に配置されており、組成物層10はヒドロゲル13と、上記ヒドロゲル13中に分散された光触媒粒子14とを有している。なお、
図1中において、組成物層の厚み、及び、光触媒粒子の大きさ・形状等はそれぞれ模式的なものであり、実際の厚み、大きさ、及び、形状を限定するものではない。
【0023】
肌11に組成物層10を介して自然光が照射(図中「hν」と示した。)されると、光触媒粒子14が励起され、ヒドロゲル13中に含有される水素源化合物から供給されるH+を還元し、H2を発生する。このH2は、矢印F1に示したようにヒドロゲル13中を移動して、肌11に到達する。
【0024】
一方、肌11では、自然光に含まれる紫外線により、活性酸素種(図中「A」として示した。)が発生する。この活性酸素種と水素とが反応することで、活性酸素種は消去される。
なお、活性酸素種としては特に制限されないが、スーパーオキシドアニオンラジカル、ヒドロキシラジカル、ヒドロペルオキシラジカル、一重項酸素、及び、過酸化水素等が挙げられる。
【0025】
一方で、活性酸素種は、抗酸化物質(図中「B」として示した。)によっても消去され得る。この抗酸化物質は、ヒドロゲル13中を移動することができないため、言い換えれば、水素分子と比較して、分子のサイズが大きく、ヒドロゲルにより排除されてしまうため、図中矢印F2で示したとおり、組成物層10内を移動しにくく、光触媒粒子14と接触しにくい結果、光触媒粒子の作用により意図せず分解されることが少ないものと推測される。
なお、抗酸化物質としては特に制限されないが、ビタミンC、ビタミンE、カロテノイド、グルタチオン、及び、ポリフェノール等が挙げられる。
【0026】
以下では、本組成物が含有する各成分について詳述する。
【0027】
〔光触媒粒子〕
本組成物は可視光の照射により水素を発生可能な光触媒粒子を含有する。組成物中における光触媒粒子の含有量としては特に制限されないが、一般に、組成物の全固形分に対して、0.1~99質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。固形分量は、用途に応じて適宜定めることができる。例えば、組成物を化粧料として用いる場合にあっては、特に化粧水として用いるのであれば、より固形分を低く、クリームとして用いるのであれば、より固形分を高くすればよい。
なお、組成物は、光触媒粒子の1種を単独で含有してもよく、2種以上を併せて含有してもよい。組成物が2種以上の光触媒粒子を含有する場合、2種以上の光触媒粒子の合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0028】
光触媒粒子としては、可視光の照射により水素を発生可能であれば公知の触媒を特に制限なく使用可能である。なお、本明細書において可視光とは、波長が400~1000nmの光を意味し、400~800nmが好ましい。
光触媒粒子としては、例えば、CaFeO3、及び、TaNO等の可視光感応型の光触媒粒子を利用することもできる。
【0029】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、光触媒粒子としては、化学式Sn3O4で表される結晶であって、上記結晶中に価数の異なるSnが2種以上存在する結晶が好ましい。更に、上記結晶は、2つのSn2+、及び、Sn4+O6八面体からなる構造が規則的に配列されてなることが好ましい。
【0030】
すなわち、上記光触媒粒子は、化学式Sn3O4で表される結晶であることが好ましく、2つのSn2+とSn4+O6八面体(Octahedra)とからなる構造が規則的に配列されてなることがより好ましく、言い換えれば、(Sn2+)2(Sn4+)O4で表される混合原子価Sn酸化物の結晶であることがより好ましい。
【0031】
上記の光触媒粒子であるSn3O4は、バレンスバンド(valence band)とコンダクションバンド(conduction band)との間のエネルギーギャップ(バンドギャップ)が2.5eVであり、両バンドのエネルギー値の間に、H+をH2に変える基準電位が存在する。バンドギャップが2.5eVであることにより、500nm付近より短波長の青色光を吸収して、バレンスバンドの電子をコンダクションバンドに励起することができる。また、両バンドのエネルギー値の間にH+/H2基準電位が存在することにより、励起された電子が水素源化合物から供給されるH+を還元する事によって効率的にH2に変えることができる。
【0032】
このような光触媒粒子としては、特開2015-157282号公報の0014~0021段落に記載の光触媒粒子、及び、RSC Advances,2014年,4,1266-1269に記載の光触媒粒子等が挙げられ、上記の内容は本明細書に組み込まれる。
更に、驚くべきことに本発明者らの検討によれば、Sn3O4は毒性(急性経口毒性、皮膚刺激性、及び、眼刺激性)もより低い点でより好ましい。
【0033】
<助触媒粒子>
本組成物は、光触媒粒子の表面に吸着した助触媒粒子を含有していることが好ましい。光触媒粒子の表面に助触媒粒子が吸着する形態としては特に制限されないが、光触媒粒子が、助触媒粒子を担持する助触媒担持複合粒子であることが好ましい。
【0034】
助触媒粒子としては特に制限されないが、可視光照射によって、水素発生反応をより効率的に進行させることが可能であるものが好ましい。
具体的には、白金、ルテニウム、ロジウム、銀、金、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、硫化モリブデン、硫化ニッケル、及び、硫化タングステン等が挙げられ、なかでも、白金が好ましい。
また、助触媒粒子の他の形態としては、ニッケル、マンガン、ルテニウム、コバルト、及び、イリジウム等の酸化物、水酸化物、及び、リン酸塩等も使用可能である。
【0035】
助触媒粒子の粒子径は、特に制限されないが、0.5~50nmが好ましい。助触媒粒子の担持量(含有量)は、助触媒担持複合粒子の重量を1とすると、0.0001~0.1が好ましい。
【0036】
光触媒粒子に助触媒粒子を担持させる方法としては特に制限されず、公知の方法が使用できる。湿式反応法としては、含浸法、光還元法、化学還元法、及び、吸着法等が挙げられる。
乾式反応法としては、原子層堆積法(Atomic Layer Deposition)、スパッタ法、及び、蒸着法等が挙げられる。
より具体的には、特開2015-157282号公報の0022段落に記載された方法も適用でき、上記内容は本明細書に組み込まれる。
【0037】
〔ヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子〕
本組成物はヒドロゲルを形成可能な水溶性高分子(以下、単に「水溶性高分子」ともいう。)を含有する。組成物中における水溶性高分子の含有量としては特に制限されないが、一般に、組成物中の全固形分に対して0.1%~99質量%が好ましく、1~20質量%が好ましい。
組成物は、水溶性高分子の1種を単独で含有してもよく、2種以上を併せて含有してもよい。組成物が2種以上の水溶性高分子を含有する場合、2種以上の水溶性高分子の合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
本明細書において、ヒドロゲルとは、水を含有するゲルを意味する。
【0038】
ゲル化能を有する水溶性高分子としては特に制限されないが、例えば、寒天、ゼラチン、コラーゲン、及び、カードラン等の非架橋型(形成されるヒドロゲルが熱可逆性である);アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ペクチン、及び、カラギーナン等の架橋型;が挙げられる。なかでも、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、水溶性高分子としては寒天、ゼラチン、コラーゲン、及び、カードランからなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、寒天、ゼラチン、及び、コラーゲンからなる群より選択される少なくとも1種がより好ましい、寒天、及び、ゼラチンからなる群より選択される少なくとも1種が更に好ましい。
【0039】
上記水溶性高分子は、3次元網目構造を有する多孔質体を形成する。上記多孔質体の孔径としては、半透膜(水素を透過し、抗酸化物質を透過させにくい膜)としての機能を有していれば特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、0.01~10μmが好ましく、0.1~2μmがより好ましい。
なお、本明細書において、多孔質体の孔径は、水溶性高分子、又は、イオンに対する半透膜特性の有無によって評価される孔径を意味する。具体的には、ナトリウムイオン(Na+)、塩素イオン(Cl-)、及び、エピカテキンエピガロール分子の透過性の有無により孔径を見積もることができる。
【0040】
〔水素源化合物〕
本組成物は水素源化合物を含有する。組成物中における水素源化合物の含有量としては特に制限されないが、一般に、組成物中の全固形分に対して0.1~10質量%が好ましく、0.1~1質量%がより好ましい。
組成物は、水素源化合物の1種を単独で含有してもよく、2種以上を併せて含有してもよい。組成物が2種以上の水素源化合物を含有する場合、2種以上の水素源化合物の合計含有量が上記数値範囲内であることが好ましい。
【0041】
水素源化合物は、H+を供給可能な化合物であれば、特に制限されないが、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、分子中にカルボキシ基、水酸基、スルホン酸(塩)基、ホスホン酸(塩)基、アミノ基、アミド基、及び、4級アンモニウム塩基等の親水性基を有する化合物(親水性化合物)が好ましく、ヒドロキシ基、及び、カルボキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の基を有することがより好ましく、ヒドロキシ基を有することが更に好ましい。
【0042】
親水性化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、及び、tert-ブチルアルコール等のアルキルアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、及び、ブチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;3-メチル-3-メトキシブタノール、3-メチル-3-エトキシブタノール、3-メチル-3-n-プロポキシブタノール、3-メチル-3-イソプロポキシブタノール、3-メチル-3-n-ブトキシシブタノール、3-メチル-3-イソブトキシシブタノール、3-メチル-3-sec-ブトキシブタノール、3-メチル-3-tert-ブトキシシブタノール、及び、3-メトキシブタノール等のアルコキシアルコール類;等のアルコール類が挙げられる。
【0043】
また、親水性化合物としては、例えば、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、メバロン酸、キナ酸、及び、シキミ酸等の脂肪族ヒドロキシ酸類;サリチル酸、バニリン酸、ゲンチジン酸、没食子酸、マンデル酸、クマル酸、コーヒー酸、及び、フェルラ酸等の芳香族ヒドロキシ酸等;の有機酸類も使用できる。
【0044】
また、親水性化合物としては、例えば、スクロース、ラクトース、マルトース、トレハロース、グルコース、ガラクトース、マンノース、アラビノース、キシロース、及び、マルトトリオース等の糖類;グリコーゲン、水溶性デンプン、及び、フルクタン等の多糖類;等も使用できる。
【0045】
なかでも、より優れた本発明の効果を有する組成物が得られる点で、水素源化合物としては、アルコール類、及び、有機酸類からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、中でも、アルコール類がより好ましく、炭素数2又は3のアルコールが更に好ましい。
【0046】
〔その他の成分〕
本組成物は、本発明の効果を奏する範囲内においてその他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては特に制限されないが、酸化防止剤、ゲル化剤、溶剤(水、及び、水素源化合物は含まれないものとする)、その他の触媒、界面活性剤、香料、色素、及び、保存料等が挙げられる。
【0047】
特に制限されないが、本組成物は、架橋剤を実質的に含有しないことが好ましい。架橋剤としては特に制限されないが、例えば、金属イオン化合物、カチオン性ポリマー、及び、多官能性エポキシ化合物等が挙げられる。
金属イオン化合物としては、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、カリウム等を含む酸化物や水酸化物、塩類等が挙げられ、例えば、水酸化アルミニウム、カリミョウバン、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミニウムグリシネート、酢酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、含水珪酸アルミニウム、メタケイ酸アルミニウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、塩化マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、カオリン、合成ヒドロタルサイト、及び、水酸化カリウム等が挙げられる。
これらを実質的に含有しないとは、本組成物中における上記架橋剤の含有量が、0.1質量%未満であることを意味し、0.01質量%未満であることが好ましく、0.001質量%未満であることがより好ましい。
【0048】
[組成物の用途]
本組成物の用途としては特に制限されないが、本組成物を用いて得られる組成物層に可視光が照射されると分子状の水素が発生し、上記分子状の水素はヒドロゲルを透過して、被適用物へと移動可能であることから、化粧料、及び、葉焼け防止剤として使用することが好ましい。
【0049】
〔化粧料〕
上記組成物を化粧料として使用する場合、その形態としては特に制限されず、上記組成物を含有する化粧水、クリーム、ジェル、及び、軟膏等が挙げられる。なかでも、より簡便に適用できる点で、基材と、組成物を用いて上記基材上に形成された組成物層とを有する積層体の形態であって、身体に貼付して用いる身体化粧シートであることが好ましい。
【0050】
<積層体>
図2には、上記積層体の断面模式図を示した。積層体20は、基材21と、基材21上に形成された組成物層10とを有している。積層体20は基材21の一方側の主面に組成物層10を有しているが積層体としては上記に制限されず、基材の両側の主面に組成物層を有していてもよい。
【0051】
基材としては特に制限されず、公知の基材が使用可能である。基材としては、例えば、不織布、偏布、合成樹脂のフィルム、及び、耐水紙等が使用でき、それらの積層体を使用することもできる。具体的には、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリウレタン、及び、ポリオレフィン等の合成繊維からなる織布又は不織布;絹、綿、麻、レーヨン、及び、コラーゲン等からなる天然繊維の織布又は不織布;ナイロン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、及び、ポリウレタン等のシート;プルラン、及び、デンプン等の薄膜シート;等も使用できる。これらの基材の厚みとしては特に制限されないが、0.05~2.0mm程度で、基材の表面に親水処理、及び、疎水処理をしてもよい。
【0052】
なかでも、より効率的に水素を発生可能な点で、上記基材は可視光領域において透明であることが好ましい。可視光領域において透明とは、400~800nmの波長に対する平均透過率が60%以上であることを意味し、70%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
また、基材の紫外線透過率としては特に制限されないが、315~380nmの紫外線(UV-A)の透過率が60%以下であることが好ましい。上記の様な基材は、すでに説明した基材に公知の紫外線吸収剤を含有されることにより作成可能である。
【0053】
また、基材は、組成物層から剥離可能に形成されていてもよい。このような場合、積層体の組成物層側を肌表面に向けて積層体を肌表面に貼付した後、基材を積層体から剥離させて使用する。このように構成することで、後述する美容方法において、可視光の照射によってより効率的に水素を発生させることができる。
【0054】
積層体には、更に剥離層を積層してもよい。剥離層は、組成物層上に積層され、組成物層の保護のため、積層することができる。剥離層としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、ポリブチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム;ポリエチレンフィルム、及び、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム;クラフト紙、グラシン紙、及び、上質紙等の紙にポリエチレンなどのプラスチックがラミネートされたラミネート紙;等が挙げられる。
剥離層は、片面をシリコーン処理等の疎水化処理したものがより好ましい。剥離層は、疎水化処理した面で、組成物層に積層される。
【0055】
(身体化粧シート)
図3には、身体化粧シートである上記積層体の一形態である顔用の化粧マスクの模式図を示した。化粧マスク30は、上記積層体を顔面に貼付できるよう裁断したものであり、
図2のS2面が顔に接する側に、S1面が反対側になるように顔に貼付して使用される。
【0056】
図3の化粧マスク30は4つの角部が円弧状に形成された平面視略台形状のマスク本体と、マスク本体の両目との対応位置において瞼が開いたときの輪郭に沿うように形成された2つの切り込み31と、鼻及び口との対応位置にそれぞれの輪郭に沿うように開けられた2つの穴(32、33)と、顔の立体形状の変化に対応するためにマスク本体の周縁に設けられた複数の切り込み34とを有している。
図3に示す化粧マスクにおいて、口に対応する穴が開けられた側の端部がマスク本体の下端である。この化粧マスクを顔に貼付することにより、パックを行なうことができる。
【0057】
化粧マスク、及び、マスク本体の平面形状は、肌に貼り付けたときに視覚、及び/又は、呼吸の邪魔にならないように、両目、鼻、及び、口に対応する位置に、穴、及び/又は、切込みを有することが好ましく、両目、鼻、及び、口の輪郭に沿った穴、及び/又は、切込みを有するものがより好ましい。
なお、上記身体化粧料である積層体を顔面に適用する場合の形態を説明するもので、上記積層体を他の部位(首、腕、足、胸部、腹部、及び、背中等)に適用する場合には、裁断、穴、及び、切込み等の形成を行なってもよいが、裁断、穴、及び、切込み等の形成を行なうことなく、そのまま、例えば長方形、正方形、平行四辺形、ひし形、五角形、及び、六角形等の多角形;円形、長円形、楕円形;等の形状としてもよい。
【0058】
(美容方法)
上記身体化粧シートを用いた美容方法としては特に制限されないが、より優れた効果が得られる点で以下のステップを有することが好ましい。
・身体化粧シートを肌表面に貼付するステップ
身体化粧シートを肌表面に貼付する方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0059】
また、より優れた効果が得られる点で、上記美容方法は上記のステップの後で更に以下のステップを有することが好ましい。
・組成物層に可視光を照射するステップ
組成物層に可視光を照射する方法としては特に制限されないが、例えば、基材側から可視光を照射し、基材を透過した可視光を組成物層に照射する方法が挙げられる。本ステップを有する美容方法によれば、可視光の照射により発生した水素が肌上(肌内部)の活性酸素種をより消去しやすい。その結果、より優れた効果が得られる。
【0060】
〔葉焼け防止剤〕
本発明の組成物は葉焼け防止剤として使用することも好ましい。「葉焼け」は、特定の種類の植物の葉が強い日差しにさらされ、変色し、又は、枯れてしまう現象として知られている。近年の研究により、この葉焼けの原因が、葉緑体で発生する活性酸素にあることが明らかにされている。一般に、植物が自然光の下で光合成を行う際、葉緑体が吸収したエネルギーはCO2の固定に使用されるものの、過剰な光照射下では、CO2の固定に使用されなかった光エネルギーによって活性酸素種が発生し、この活性酸素種によって「葉焼け」といわれる酸化的障害が引き起こされると推測されている。
【0061】
本発明の組成物を植物の器官(葉、及び、茎等)に塗布することで、上記器官上に組成物層を形成することができる。上記組成物層は、これまで説明したとおり可視光の照射により水素を発生するとともに、ヒドロゲルを有しているために、植物表面の抗酸化物質と光触媒粒子とを分離できる。上記によれば、植物の器官上における活性酸素種を効果的に除去することができ、葉焼けを抑制することができる。
【0062】
組成物を植物の器官に塗布する方法としては特に制限されないが、例えば、スプレー塗布等が好ましい。
葉焼け防止剤である本組成物が適用可能な植物としては特に制限されないが、C3植物、C4植物、及び、CAM植物当が挙げられる。なかでもより優れた効果が得られる点で、C3植物が好ましい。C3植物としては特に制限されないが、シロイヌナズナ、及び、ダイコン等のアブラナ科植物;タバコ、及び、ジャガイモ等のナス科植物;イネ、及び、コムギ等のイネ科植物;ダイズ、及び、エンドウ等のマメ科植物;ホウレンソウ等のアカザ科植物;ヤマザクラ、及び、バラ等のバラ科植物;ハルジオン、及び、タンポポ等のキク科植物;カボチャ、及び、キュウリ等のウリ科植物;サツマイモ等のヒルガオ科植物;ウチョウラン等のラン科植物;等が挙げられる。
【0063】
C4植物としては、トウモロコシ、サトウキビ、及び、アワ等のイネ科植物;アマランサス等のヒユ科植物;等が挙げられる。
CAM植物としては、パイナップル等のパイナップル科植物;デフューサ、及び、オプンティア等のサボテン科植物;キダチアロエ、及び、アロエベラ等のアロエ科植物;等が挙げられる。
【0064】
[組成物の製造方法]
本組成物の製造方法としては特に制限されず、上記の各成分を混合することにより製造することができる。各成分の混合順序、及び、混合方法としては特に制限されず、公知の方法を用いることができる。
【0065】
[美容装置]
本発明の実施形態に係る美容装置は、顔を覆うドーム部と、上記ドーム部に配置された上記組成物を吐出するための組成物吐出部と、上記ドーム部に配置された少なくとも1つの光源とを有する美容装置であって、上記組成物吐出部により吐出された組成物により、使用者の顔面に形成された組成物層に所定の波長の可視光を照射して肌表面で水素を発生させる美容装置である。
【0066】
図4は、本美容装置の一例を表す模式図である。美容装置40は、半球状のドーム部41と、本体42とから形成されている。ドーム部41は、開口部を有しており、使用者45は上記開口部に顔をあてて本美容装置を使用する。ドーム部41には、複数の光源43が配置されており、使用者の顔面に光を照射できるようそれぞれの光源が配置されている。また、ドーム部には、ノズル44が配置されており、図示しないポンプにより、同じく図示しない組成物が収容された容器から配管を経て組成物を吸引し、使用者の顔面に組成物を吐出できるよう、組成物吐出部が構成されている。
【0067】
光源43は、ドーム部41の表面(使用者側表面)に2次元マトリクス状に複数配置されている。
図5には、ドーム部41の表面に2次元マトリクス状に配置された複数の光源43の平面図を示した。光源43は、発光素子51と、発光素子51の周囲に配置された透明封止材52と、透明封止材の周囲に配置された反射材53とから形成されている。発光素子としては特に制限されないがLED(light emitting diode)を用いることができる。透明封止材としては特に制限されないが、樹脂を用いることができる。また、反射材としては例えば、金属膜等が使用できる。
【0068】
図6は、
図5の光源のA-A′断面図を示した。光源43は、基板61上に配置されており、基板61上には、図示しない配線が配置されており、複数の発光素子51を個別に駆動できるよう形成されている。このとき、発光特性(蛍光波長)の異なるLEDを用いると、照射する光の波長を任意に制御可能である。
例えば、予め使用者の肌の状態を調査し、集中的に水素を発生させたい部分に青色の光を照射する等の使用方法が可能である。
【0069】
図7には本美容装置の機能ブロック図を示した。制御コンピュータ70、及び、電力供給部71が本体内42に収容され、光源72と組成物吐出部73とが上記と電気的に接続されている。制御コンピュータ70は、ハードウェア的には、CPU(中央演算処理装置)のようなプロセッサと、メモリ(RAM(Random Access Memory)、及び、ROM(Read Only Memory))等の記録媒体と、通信ユニットを含んでおり、プロセッサが記録媒体に記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することによって、美容装置として機能する。
【0070】
制御部74は、複数の光源のそれぞれの駆動、光の照射の強さ、組成物吐出部における吐出のタイミング、及び、吐出量等を制御する。
電力供給部71は、バッテリ75を有しており、制御コンピュータ、照射部、及び、組成物吐出部に駆動用の電力を供給する。なお、本美容装置はバッテリを有していなくてもよいし、電力供給部を本体の外に配置する形態であってもよい。
【0071】
組成物吐出部73は、ドーム部に配置されたノズルと、組成物を収容するためのタンクと、タンクに収容された組成物をノズルから吐出するためのポンプと、これらを接続する配管とを有し、制御部からの信号により、所定のタイミングで、所定量の組成物を使用者の顔面に吐出できるよう構成されている。
【0072】
次に、本美容装置の動作について説明する。まず、使用者45は、本美容装置40のドーム部41が有する開口に顔面をあてる。次に、ドーム部41が有するノズル44から組成物を吐出され、使用者45の顔面に組成物層が形成される。このとき、組成物はポンプによってタンクから吸引され、ノズル44から吐出される。
吐出量としては特に制限されず、組成物の固形分、及び、得られる組成物層の膜厚に応じて適宜定めればよい。
【0073】
次に、上記組成物層に対して光源から光照射される。照射される光の波長としは可視光を含んでいれば特に制限されないが、組成物が含有する光触媒粒子の種類に応じて、より水素が発生しやすい波長の光を照射することが好ましい。
本美容装置においては、2次元マトリクス状に配置された光源を有するため、使用者45の顔面の特定の位置に、所望の波長の光を所望の強さにより照射することができる。すなわち、使用者45の顔面の状況、例えば、シワ、シミ、及び、くすみ等の気になる部分に対してより強く光照射することができる。
【実施例】
【0074】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0075】
[紫外線照射によるカテキンの分解試験]
カテキン水溶液(Fresh Solution)を準備した。次に、特開2015-157282号公報の0033~0035段落に記載の白金粒子が担持された光触媒粒子(Sn
3O
4)を合成した。
上記カテキン水溶液に対して、光触媒粒子のみを添加した試料(A)、寒天のみを添加した試料(B)、及び、寒天を分散させてから光触媒粒子を添加した試料(C)を準備した。各試料について、一晩、可視光(波長>400nm)を照射し、照射後の各試料についての可視光吸収スペクトルを調べた。結果を
図8に示した。
なお、
図8中のDのスペクトルは、カテキン水溶液そのもののスペクトルである。
【0076】
図8の結果から、光触媒粒子のみを加えた試料Aでは、試料Dと比較して、より大きく変化しており、液中のカテキンの含有量が減少したことがわかった。
また、試料Cは、試料A及び試料Bと比較して、スペクトルの変化がより小さく、液中のカテキンの含有量がより多いことがわかった。
【0077】
[活性酸素消去試験]
20質量ppmの過酸化水素水溶液を準備し、活性酸素の消去性能を測定した。
まず、上記過酸化水素水溶液に質量比10%の酪酸を溶解させ、光照射(波長>400nm、~3時間)を行った(試料E)。
また、上記過酸化水素水溶液に質量比10%の酪酸を溶解させ更に300mgのSn3O4(上記と同様のもの)を分散させ、上記と同様の条件で光照射した(試料F)。
また、上記過酸化水素水溶液に質量比10%の水溶性でんぷんを溶解させ、更に、300mgのSn3O4(上記と同様のもの)を分散させ、上記と同様の条件で光照射した(試料G)。
また、上記過酸化水素水溶液に質量比10%のショ糖を溶解させ、更に、300mgのSn3O4(上記と同様のもの)を分散させ、上記と同様の条件で光照射した(試料H)。
【0078】
上記試験における光照射時間(横軸)と、液中の過酸化水素含有量の変化(縦軸)との関係を
図9に示した。
図9の凡例中、「VIS+lactic acid」とあるのは、試料Eの結果を、「Sn
3O
4+Vis+lactic acid」とあるのは、試料Fの結果を、「Sn
3O
4+Vis+starch」とあるのは、試料Gの結果を、「Sn
3O
4+Vis+sugar」とあるのは試料Hの結果をそれぞれ示している。
【0079】
上記の結果から、水素源化合物と光触媒粒子とを含有する試料F~Hは、試料Eと比較して、より過酸化水素の含有量が減少している(活性酸素が消去されている)ことがわかった。
【0080】
[葉焼け防止試験]
観葉植物(モンステラ)を準備し、葉の表面に異なった厚みの白金担持Sn
3O
4(寒天分散)を噴霧・固定後、10000Lxの白色光を照射した(後述する
図10中、「Pt/Sn
3O
4@Agar」と記載した。)。同様にして、葉の表面に寒天水溶液を噴霧・固定後、10000Lxの白色光を照射した(
図10中「Agar」と記載した。)。また、同様にして、白金担持酸化チタン(寒天分散)を同様に噴霧・固定後、10000Lxの白色光を照射した(
図10中「Pt/TiO
2@Agar」と記載した。)。
照射後の葉の色の変化を
図10に示した。
図10中、破線で囲った領域が光を照射した領域であり、
図10中、白く表示されているほど葉焼けが発生していることを表している。
【0081】
図10に記載した結果から、光触媒粒子と寒天とを含有する組成物を適用した場合、優れた葉焼け防止効果が得られることがわかった。
【0082】
[光触媒粒子の急性経口毒性]
光触媒粒子として用いたSn3O4について、急性経口毒性を以下の方法により評価した。試験は、8週齢のラット、Crl:CD(SD)、SPFの雌性を用いて実施した。試験方法は、OECD GUIDELINE FOR TESTING OF CHEMICALS Acute Oral Toxicity - Fixed Dose Procedure Adopted: 17th December 2001 (TG420)を参考にし、2000mg/kg用量で実施した見当付け試験の1匹で死亡が認められなかったため、同用量を4匹に追加投与した。供試動物は見当付け試験を含め、計5匹とした。
その結果、2000mg/kg用量で死亡は認められなかった。一般状態、体重、及び、剖検所見では、いずれも特記すべき変化は認められなかった。
以上の結果、本試験条件下においてSn3O4をラットに単回経口投与したときのLD50は雌性において2000mg/kgを超えるものと推察されGHS区分は「区分5または区分外」であることが推察された。
【0083】
[光触媒粒子の眼刺激性]
光触媒粒子として用いたSn3O4について、眼刺激性を以下の方法により評価した。試験は、SkinEthic(商標)HCE法による眼刺激性試験代替法を用いた。
本試験は、OECD GUIDELINE FOR THE TESTING OF CHEMICALS Test No.492、及び、EYE IRRITATION TEST METHOD:SOLID IN VITRO PREDICTION ASSAY FOR ACUTE OCULAR IRRITATION OF SOLID CHEMICALS-Standard Operating Procedureに準じて実施した。眼刺激性評価の原理はMTT法による角膜上皮再生モデルの細胞生存率(MTT viability(%))を指標とした。
SkinEthic(商標)HCE(角膜上皮再生モデル)を、維持培地にて一昼夜プレインキュベートし、資料を上皮側から暴露した。なお、陰性コントロールとしてPBS(-)、刺激性コントロールとしてMethyl acetateを用いた。陰性コントロール及び刺激性コントロールは30μLを暴露した。Sn3O4は上皮側を30μLのPBS(-)で湿らせた後、30mgを暴露した。その後、新鮮な維持培地にて4時間培養した。培養後、PBS(-)による洗浄操作により試料を完全に除去し、角膜上皮モデルを新鮮な維持培地に浸漬させ30分間培養した。更に、新鮮な維持培地にて18時間の後培養を行った。その後、角膜上皮再生モデルを1.0mg/mLの3-(4,5-Dimethyl-2-thiazolyl)-2,5-diphenyl-2H-tetrazolium bromide(MTT)を含有する維持培地に移し、3時間培養した。その後、角膜上皮再生モデルをイソプロパノールに2時間以上浸漬してブルーホルマザンを抽出し、マイクロプレートリーダーにて570nmにおける吸光度を測定した。
MTTviability(%)は陰性コントロールを暴露した角膜上皮再生モデルの吸光度に対する百分率で表した。試験成立の判定基準及び試料の刺激性判定基準は表1、及び、表2にそれぞれ示した。
【0084】
【0085】
【0086】
得られた陰性、及び、刺激性コントロールの結果は表1に示した試験成立判定基準をすべて満たしていたことから、本試験は適正に行われたと判断した。試料暴露後の細胞生存率、及び、吸光度を表3に示した。表2に示す判定基準より試験試料は無刺激性と判定された。
【0087】
【0088】
[光触媒粒子の皮膚刺激性]
光触媒粒子として用いたSn3O4について、皮膚刺激性を以下の方法により評価した。試験は、SKINETHIC SKIN IRRITATION法による皮膚一次刺激性代替法を用い、Sn3O4の皮膚一次刺激性を評価した。
本試験は、OECD Guidelines for the Testing of Chemicals Test No.439、及び、European Center for the Validation of Alternative Methods(ECVAM)にて公開されているプロトコールである、SKINETHIC SKIN IRRITATION TEST-42bis TEST METHOD FOR PREDICTION OF ACUTE SKIN IRRITATION OF CHEMICALS: 42 MINUTES APPLICATION +42 HOURS POST-INCUBATION-Standard Operating Procedureに準じて実施された。皮膚一次刺激性評価の原理は、MTT法による皮膚モデルの細胞生存率(MTT viability(%))を指標とした。
【0089】
SkinEthic(商標)-RHEを、増殖培地にて24時間インキュベーションし、維持培地に移した。10μLの滅菌精製水を表皮側から滴下し、均一にした後、その上から試験試料16mgを表皮側から暴露した。なお、陰性コントロールとしてPBS(-)、刺激性コントロールとして5%SDS水溶液を用いた。試験試料を42分間暴露した後、速やかに試験試料を洗浄操作により皮膚モデルから除去し、新鮮な増殖培地にて更に42時間培養した。培養後、皮膚モデルを1.0mg/mLのMTTを含有する維持培地に移し、3時間培養した。その後、皮膚モデルをイソプロパノールに2時間浸漬することによりブルーホルマザンを抽出し、抽出液の570nmにおける吸光度をマイクロプレートリーダーにて測定した。
MTT viability(%)は、陰性コントロールを暴露した皮膚モデルの吸光度に対する百分率で表した。試験成立の判定基準、及び、試験試料の皮膚一次刺激性判定基準は表4、及び、表5にそれぞれ示した。
【0090】
【0091】
【0092】
得られた陰性、及び、刺激性コントロールの結果は表4に示した試験成立判定基準を全て満たしていたことから、本試験は適正に行われたと判断した。MTT試験による細胞生存率の結果は表6に示した。表5に示す判定基準により試験試料(酸化スズ)は無刺激性と判定された。
【0093】
【0094】
[水素発生試験]
石英製セル中に満たした水270cc中にショ糖10gを溶解したのち、特開2015-157282号公報に記載された方法により作成したSn
3O
4触媒粉末を0.3g投入し、反応液を調製した。次に、上記反応液を攪拌しながらXeランプ全光照射(フィルタなし)で1時間照射し、その後Y-43フィルタを挿入し波長>400ナノメートルの可視光照射に切り替えて、連続照射した。この際のセル気相中の含有水素濃度をガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製「GC8A」)にて適時定量した。結果を
図11に示した。
【0095】
石英製セル中に満たした水270cc中にショ糖10gと塩化白金酸3.98mgを溶解したのち、特開2015-157282号公報に記載された方法により作成したSn
3O
4を0.3g投入し、攪拌しながらXeランプ全光照射(フィルタなし)で1時間照射した。この過程で、Sn
3O
4触媒は、表面に助触媒:Ptナノ粒子が光析出する結果、Pt/Sn
3O
4(助触媒担持複合粒子)に変わる。その後Y-43フィルタを挿入し、波長>400ナノメートルの可視光照射に切り替えて、連続照射した。この際のセル気相中の含有水素濃度をガスクロマトグラフ(株式会社島津製作所製「GC8A」)にて適時定量した。結果を
図11に示した。
【0096】
図11は、異なる光触媒粒子による水素発生量の比較結果を示しており、横軸は反応時間(光照射時間)、縦軸は水素発生量を示している。
図11中、「Sn3O4 in sugared agar」とあるのは、助触媒を担持しない光触媒粒子を用いた場合、「Pt/Sn3O4 in sugared agar」とあるのは、助触媒を担持した光触媒粒子(助触媒担持複合粒子)を用いた場合の結果をそれぞれ示している。
【0097】
図11に示した結果から、光触媒粒子が助触媒担持複合粒子であるとより多くの水素が発生することがわかった。一方で、助触媒粒子を用いない場合であっても、実用的な水準で水素が発生することがわかった。
【符号の説明】
【0098】
10 :組成物層
11 :肌
13 :ヒドロゲル
14 :光触媒粒子
20 :積層体
21 :基材
30 :化粧マスク
40 :美容装置
41 :ドーム部
42 :本体
43 :発光素子
43 :光源
44 :ノズル
45 :使用者
51 :発光素子
52 :透明封止材
53 :反射材
61 :基板
70 :制御コンピュータ
71 :電力供給部
72 :光源
73 :組成物吐出部
74 :制御部
75 :バッテリ