(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】物干具
(51)【国際特許分類】
D06F 53/00 20060101AFI20230613BHJP
B65H 75/38 20060101ALI20230613BHJP
B65H 75/48 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
D06F53/00 B
B65H75/38 S
B65H75/48 A
B65H75/48 C
(21)【出願番号】P 2019117324
(22)【出願日】2019-06-25
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】390021083
【氏名又は名称】森田アルミ工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(72)【発明者】
【氏名】山下 公章
(72)【発明者】
【氏名】木村 天童
【審査官】渡邉 洋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-205622(JP,A)
【文献】実開昭60-157761(JP,U)
【文献】特開2008-119379(JP,A)
【文献】実開平06-008097(JP,U)
【文献】実開昭53-124987(JP,U)
【文献】特開2006-056619(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第108252041(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第107476004(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F53/00-53/04
B65H75/00-75/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
正面に引き出し口を有し、背面を室内の壁面に対向させてその壁面に取り付け可能なケーシングと、
前記ケーシングの内部で、その軸心が前記ケーシングの正背面方向に一致するように突設された中空円筒形の軸受部と、
前記軸受部上に支持され、軸受部を中心に正逆回転可能なドラムと、
前記ドラムに巻き回され、前記ドラムの正逆回転にしたがって繰り出しおよび巻き取り可能な物干しロープと、
前記物干しロープを、前記ケーシングの正面の引き出し口を通じて引き出し可能なように、前記ドラムからの繰り出し方向に対して偏向させるガイド機構と、
前記物干しロープの先端に設けられ、引き出した物干しロープを室内の壁面に係止可能な係止部と、
前記ドラムを前記物干しロープの巻き取り方向に付勢するばねと、
前記軸受部の内部に収容され、その制動軸が前記ドラムと一体に回転することで、前記ドラムに前記物干しロープの巻き取り方向への回転抵抗を与えるロータリーダンパーと、を備える物干し具。
【請求項2】
前記軸受部は、前記ケーシングの背面が内部に向けて円筒形に凹むことで形成されており、
前記ロータリーダンパーは、前記ケーシングの背面から前記軸受部内に嵌め込まれている、請求項1に記載の物干し具。
【請求項3】
前記ばねは、ぜんまいばねであり、
前記ケーシング内で前記ドラムと一体に回転し、前記ぜんまいばねを収納する円筒形のばねケースをさらに備え、
前記ばねケースは、その回転中心に前記軸受部を軸方向に貫通して前記ロータリーダンパーの制動軸と結合されるボス部を有する請求項1または2に記載の物干し具。
【請求項4】
前記ケーシング内で前記ドラムと一体に回転するギアと、
前記ギアと係合するロック位置と前記ギアとの係合が解除されるロック解除位置との間で前記ギアの径方向に進退操作可能なロックピースと、をさらに備え、
前記ギアの各歯は、前記物干しロープの巻き取り方向に歯先が向くように傾斜しており、
前記ロックピースの先端部が、前記ロック位置に向けて前記ギアの歯先側から歯元側へとギアに接触しながら前進する際に、前記ドラムには前記物干しロープの巻き取り方向への引き戻し力が発生するようになっている請求項1から3のいずれかに記載の物干し具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に掛けるタイプの物干具に関する。
【背景技術】
【0002】
室内などの対向する壁面間に物干しロープを架け渡し洗濯物を吊り下げることが可能な、物干し具が知られている。
従来の物干し具として、特許文献1のように、正面に引き出し口を有し、背面を室内の壁面に対向させて壁掛け可能なケーシングと、ケーシングの内部で、その軸心が前記ケーシングの正背面方向に一致するように突設された軸受部と、前記軸受部上に支持され、軸受部を中心に正逆回転可能なドラムと、前記ドラムに巻き回され、前記ドラムの正逆回転にしたがって繰り出しおよび巻き取り可能な物干しロープと、とを備える物干し具が存在する。
【0003】
この物干し具では、物干しロープを、ケーシングの正面の引き出し口を通じて引き出し可能なように、ケーシングに内蔵されるガイド機構により、ドラムからの繰り出し方向に対して偏向させている。物干しロープの先端には、引き出した物干しロープを室内の壁面に係止可能なタブ状の係止部が設けられている。
またロープの不使用時には、自動的に巻き取れるように、ケーシングにドラムを前記物干しロープの巻き取り方向に付勢するばねが内蔵されている。
その反面、巻き取り速度があまりに速いと、ロープの端部が暴れて人間や室内の物品に当たって危険であるため、ドラムの正面側にロープの巻き取り方向への回転抵抗を与えるロータリーダンパーを連設し、巻き取り速度を減速している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1の物干し具の場合、軸受部の軸方向にドラムとロータリーダンパーとを並列させているため、物干し具の正背面方向の奥行寸法が大きくなり、不使用時にも壁面から突出し、嵩張ってしまう。
【0006】
そこで本発明の解決すべき課題は、いわゆる壁掛けタイプの物干し具について、正背面方向の奥行寸法を小さくしてコンパクト化を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するため、発明にかかる物干し具を、正面に引き出し口を有し、背面を室内の壁面に対向させてその壁面に取り付け可能なケーシングと、前記ケーシングの内部で、その軸心が前記ケーシングの正背面方向に一致するように突設された中空円筒形の軸受部と、前記軸受部上に支持され、軸受部を中心に正逆回転可能なドラムと、前記ドラムに巻き回され、前記ドラムの正逆回転にしたがって繰り出しおよび巻き取り可能な物干しロープと、前記物干しロープを、前記ケーシングの正面の引き出し口を通じて引き出し可能なように、前記ドラムからの繰り出し方向に対して偏向させるガイド機構と、前記物干しロープの先端に設けられ、引き出した物干しロープを室内の壁面に係止可能な係止部と、前記ドラムを前記物干しロープの巻き取り方向に付勢するばねと、前記軸受部の内部に収容され、その制動軸が前記ドラムと一体に回転することで、前記ドラムに前記物干しロープの巻き取り方向への回転抵抗を与えるロータリーダンパーと、を備える構成としたのである。
【0008】
壁掛けタイプの物干し具を、ロータリーダンパーがドラムを支持する軸受部に内蔵された構成とすることで、ロータリーダンパーとドラムとが軸受部の軸方向に並列する従来の構成と比較して、正背面方向の奥行寸法を小さくすることができ、コンパクト化が図られる。
【0009】
発明にかかる物干し具において、前記軸受部は、前記ケーシングの背面が内部に向けて円筒形に凹むことで形成されており、前記ロータリーダンパーは、前記ケーシングの背面から前記軸受部内に嵌め込まれている構成を採用するのが好ましい。
【0010】
物干し具の軸受部をケーシングの外面に設けられた凹部として構成し、この凹部にロータリーダンパーをはめ込むように構成すると、ケーシングを分解することなく、ロータリーダンバーをつけ外しする作業を行うことができるため、ロータリーダンパーの保守点検あるいは交換等の作業が容易となる。
【0011】
発明にかかる物干し具において、前記ばねは、ぜんまいばねであり、前記ケーシング内で前記ドラムと一体に回転し、前記ぜんまいばねを収納する円筒形のばねケースをさらに備え、前記ばねケースは、その回転中心に前記軸受部を軸方向に貫通して前記ロータリーダンパーの制動軸と結合されるボス部を有する構成を採用するのが好ましい。
【0012】
物干し具にロープ巻き取り用のぜんまいばねを収納するばねケースを設けることで、ぜんまいばねが他の部品と干渉して動作不良等が起こることが防がれる。ばねケースにボス部を設け、これをロータリーダンパーの制動軸と結合することで、ばねケースを介して、簡単な構造で制動軸をドラムと一体に回転させることが可能となる。
【0013】
発明にかかる物干し具において、前記ケーシング内で前記ドラムと一体に回転するギアと、前記ギアと係合するロック位置と前記ギアとの係合が解除されるロック解除位置との間で前記ギアの径方向に進退操作可能なロックピースと、をさらに備える構成を採用するのが好ましい。
ここで、前記ギアの各歯は、前記物干しロープの巻き取り方向に歯先が向くように傾斜しており、前記ロックピースの先端部が、前記ロック位置に向けて前記ギアの歯先側から歯元側へとギアに接触しながら前進する際に、前記ドラムには前記物干しロープの巻き取り方向への引き戻し力が発生するようになっている構成を採用するのがより好ましい。
【0014】
物干し具にロックピースを設けることで、物干し具の使用時に、壁面間に物干しロープをかけ渡した状態でロックピースをロック位置に操作してドラムをロックしておくと、物干しロープがばねの力で意図せずして巻き取られてしまうことが防止される。
物干し具の使用後には、ロックピースをロック解除位置に操作すると、ドラムのロックが解除され、物干しロープはばねの力で自動的に巻き取られる。
また、物干し具のギアの歯を上記のように傾斜させることで、ロックピースをロック位置へと操作するにしたがって、ギアの隣接する歯と歯の間未満の距離だけドラムが微少に巻き取り方向へと回転する力が発生する。
ドラムの微少な回転に伴い、壁面間にかけ渡された物干しロープにテンションが付与されるため、物干しロープの緩みや撓みが防止される。
【発明の効果】
【0015】
発明にかかる壁掛けタイプの物干し具を、以上のように構成したため、正背面方向の奥行寸法を小さくすることができ、コンパクト化が図られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は物干し具の斜視図、(b)は物干し具の使用状態を示す側面図
【
図4】(a)は
図1(a)のA-A断面図、(b)は
図1(a)のB-B断面図
【
図5】ロータリーダンパーの取り付け状態を示す斜視図
【
図7】ロックピースとギアとのかみ合いを示す斜視図
【
図8】ロックピースとギアとのかみ合いを示す平面図
【
図9】ロックピースとギアとのかみ合いを示す平面図
【
図10】ロックピースとギアとのかみ合いを示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1から
図4に示す実施形態の物干し具1は、室内などの壁面Wに取り付けられ、使用時には物干しロープ41を壁面W間にかけ渡し、そこにハンガーhを吊るすなどして洗濯物を干すのに用いられる。不使用時には物干しロープ41が邪魔にならないようにケーシング10内に収容する。
【0018】
図3のように、実施形態の物干し具1は、ケーシング10に、軸受部20、ロータリーダンパー30、物干しロープ41が巻き回されギア42が付属するドラム40、ぜんまいばね53が収納されたばねケース50、物干しロープ41のガイド機構60、ギア42のロック機構70が収納されてなる。
【0019】
図3のように、ケーシング10は、正面側のカバー11と、このカバー11が被せられる背面側のベース12とからなる。カバー11は、正面板、左右の側面板、上下の端面板からなって背面側に開口し、正面板の下部には、引き出し口11aおよびダイヤル穴11bが左右に並列して形成されている。
図3のようにベース12は、その正面側の上部に、扁平な円筒形の収納凹部12aが形成され、その正面側の下部には、開口を有するガイド機構支持部12b、軸が立設されたロック機構支持部12cが左右に並列して形成されている。
【0020】
図2のように、ベース12は、その背面側の上下にフック12dが形成されている。このフック12dを、壁面Wにトラスねじbで固定されたプレートPのフック孔Hに引っ掛けることで、ケーシング10を壁面Wに取り付け可能となっている。
【0021】
図3から
図5のように軸受部20は、ベース12の背面から正面の側の収納凹部12aに向けて円筒形に凹むことで、ベース12と一体に形成されている。
軸受部20は、大径部21と小径部22とを有し、大径部21の根元箇所には段部23が形成されている。また、大径部21の外周には、ガイド爪21aが形成されている。小径部22の先端には挿入口22aが、小径部22の外周にはスリット22bが、それぞれ形成されている。
【0022】
図3から
図5のように、ロータリーダンパー30は、ベース12の背面の側から軸受部20にはめ込まれ、ねじ等の適宜手段を用いて固定されている。
ロータリーダンパー30は、円筒形のダンパー本体31と、ダンパー本体31から左右に張り出すフランジ32と、ダンパー本体31の軸心から延びる制動軸33とを有する。軸受部20にはめ込まれた際には、フランジ32が段部23に当接することで位置決めされる。
ダンパー本体31には、オイル等の流体が封入されており、その流体の粘性抵抗により制動軸33が回転する際に回転抵抗が与えられるようになっている。
図3のように、制動軸33のダンパー本体31からの突出箇所は、その断面が円形ではない異形断面に形成されている。
【0023】
図3および
図4のように、円筒形のドラム40はベース12の収納凹部12aに収納され、軸受部20の大径部21上に支持されて、大径部21を中心に回転可能となっている。大径部21のガイド爪21aが、ドラム40の内周に係合し、ドラム40の回転に従って摺動するようになっている。
図3から
図5のように、ドラム40(および後述するドラム結合部51a)は、その外周にスチールワイヤーなどからなる物干しロープ41が巻き回されている。また、ドラム40の一端部は拡径してその外周に歯42aが並列するギア42となっている。
図8から
図10のように、ドラム40に付属するギア42の歯42aは、ドラム40の物干しロープ41の巻き取り方向に向けて歯先が寝るように傾斜している。
【0024】
物干しロープ41はその一端がドラム40の固定溝44に固定され、ドラム40の回転に従って、ドラム40に巻き取ったりドラム40から繰り出したりすることができるようになっている。
図1、
図3から
図5のように、物干しロープ41の他端には、係止部としてのタブ43が取り付けられている。タブ43は、カバー11の引き出し口11aを通じて物干し具1の外部に突出している。物干し具1の使用時には、
図1のように、タブ43をつまんで物干しロープ41を引き出し、壁面Wに固定されたタブ止めTに引っ掛けることで物干しロープ41を壁面W間にかけ渡すことが可能となっている。
【0025】
図3のように、タブ43は、円筒形のタブ本体43aと、タブ本体43aに差し込まれるロープ留め43bと、タブ本体43aの端面を閉鎖するキャップ43cとからなる。
物干しロープ41の端部は、ロープ留め43bに固定されている。タブ本体43aの外周には、係止溝43dが形成されており、この係止溝43dでタブ止めTに係合させることが可能となっている。
【0026】
図3および
図4のように、円筒形のばねケース50は、ベース12の収納凹部12aにドラム40と並列して収納されている。
ばねケース50は、軸受部20の小径部22上に支持され、小径部22を中心にドラム40と一体に回転可能となっている。
ばねケース50は、ケース本体51と、蓋52とからなり、内部にぜんまいばね53を収納している。
図5(b)のように、ケース本体51は、円筒形のドラム結合部51aを有し、ドラム結合部51aには、周方向に並列する結合爪51bが形成されている。このドラム結合部51aはドラム40に被せられ、結合爪51bの係合によりドラム40に対して結合されている。
ぜんまいばね53はその内端が軸受部20のスリット22bに差し込まれ折り返し固定され、その外端がケース本体51に適宜手段により固定されている。ドラム40が物干しロープ41の繰り出し方向に回転すると、ぜんまいばね53には、ドラム40に物干しロープ41の巻き取り方向への回転力が与えられるように、弾性力が蓄積されるようになっている。
【0027】
図4および
図5のように、ばねケース50の蓋52の中心には、ボス部52aが形成されており、その中心には異形断面の軸穴が設けられている。
このボス部52aは軸受部20の先端の挿入口22aに差し込まれて、ロータリーダンパー30の制動軸33にはめ合わされ、結合されている。
したがって、ばねケース50と一体にドラム40が回転すると、ロータリーダンパー30の制動軸33がともに回転し、ロータリーダンパー30により回転抵抗が与えられるようになっている。
このため、ケーシング10から引き出された物干しロープ41が、ぜんまいばね53の力でドラム40が回転し、巻き取られていく場合に、そのドラム40の回転速度はロータリーダンパー30により減速されることになる。
【0028】
図3、
図4および
図6のように、ガイド機構60は、ベース12のガイド機構支持部12bに取り付けられている。
ガイド機構60は、ガイド本体61と、スプール62と、ガイドカバー63とからなる。ガイド本体61は、正面側に対向する支持板61aを有し、この支持板61a間にスプール62が回転可能に支持されている。ガイド本体61は、背面側に係合片61bを有し、この係合片61bがガイド機構支持部12bの開口縁に係合している。
スプール62はドラム40の外周に隣接し、かつスプール62の回転軸は、ドラム40の回転軸に対してほぼ垂直となっている。
ガイドカバー63は、送り出し口63aを有し、ガイド本体61にかぶせられている。送り出し口63aは、ケーシング10の引き出し口11aと対向している。
【0029】
物干しロープ41は、スプール62に接触し、かつガイドカバー63の送り出し口63aを挿通している。
したがって、物干しロープ41は、ドラム40とカバー11の引き出し口11aの間で、ガイド機構60を経由することで、ドラム40からの送り出し方向からスプール62によりカバー11の引き出し口11aと一致する方向に偏向されて、ケーシング10の引き出し口11aから引き出しやすくなっている。
【0030】
図3のように、ロック機構70は、ベース12のロック機構支持部12cに取り付けられている。
図6のように、ロック機構70は、ロックピース71と、変換軸72と、ダイヤル73とからなる。
プレート状のロックピース71は、ギア42に接近および離反する方向にスライド可能にロック機構支持部12cにはめ込まれている。
ロックピース71は、その先端部71aがギア42の歯42aと補完形状をなしてかみ合い可能となっており、ギア42に接近するロック位置で歯42aにかみ合い、ギア42から離反するロック解除位置で歯42aとのかみ合いが解除されるようになっている。
【0031】
また、ロックピース71は、その側面間を貫通する三角形状の窓71bを有しており、先端部71aと窓71bの間に、側面から突出するばね片71cを有している。このばね片71cは、ベース12に対して固定されており、ロックピース71がギア42に接近するにつれて、ばね片71cの撓み変形量が大きくなるようになっている。
このため、ばね片71cの復元弾性により、ロックピース71には、常時ロック解除位置に向けた力が付与されている。
【0032】
変換軸72は、ロック機構支持部12cに立設された軸に差し込まれており、当該軸を中心に回転可能となっている。変換軸72の一端は長円柱形のカム部72aとなっており、ロックピース71の窓71bにはめ込まれている。
変換軸72の他端にはダイヤル73が被せられ、ダイヤル73は、カバー11のダイヤル穴11bを通じて物干し具1の外部に突出している。ダイヤル73を回すことで、変換軸72を回転操作可能となっている。
変換軸72が一方向に回転すると、カム部72aがロックピース71の窓71bの縁を押すことで、ロックピース71はロック位置に向けてギア42に接近する。
また、変換軸72が他方向に回転すると、カム部72aがロックピース71の窓71bの縁から離れて押す力から解放され、ロックピース71はばね片71cの復元力によりロック解除位置に向けてギア42から離反する。
このため、変換軸72に結合されたダイヤル73を回転させることで、ロックピース71をロック位置とロック解除位置の間でスライド操作可能となる。
【0033】
図8のように、ロックピース71がロック解除位置にある時、ギア42はロックされていないため、ドラム40は回転可能となり、物干しロープ41の引き出し長さを自由に調節することができる。
物干しロープ41を所望の長さに引き出した状態のままで手を離すと、ぜんまいばね53の作用でドラム40は巻き取り方向に回転し、自動的に物干しロープ41は巻き取られてしまう。
これを防ぐために、ダイヤル73を回転させて、
図9のようにロックピース71をロック位置にスライド操作する。ロックピース71がロック位置にある時、その先端部71aはギア42の歯42aとかみ合い、ギア42はロックされる。このため、ドラム40は回転不能となり、物干しロープ41の長さを固定不能となる。
【0034】
ここで、
図9のように、ロックピース71の先端部71aとギア42の歯42aのかみ合いが浅い状態で、物干しロープ41にゆるみが生じている場合に、
図10のように、さらにダイヤル73を回転させてロックピース71を前進させる。
すると、上述したようにギア42の歯42aは、その刃先が物干しロープ41の巻き取り方向に寝るように傾斜しているため、ロックピース71の前進に伴って、ギア42にロープの巻き取り方向への引き戻し力が発生し、
図9から
図10のように、ギア42は巻き取り方向に微少量回転する。したがって、
図10のように、物干しロープ41にテンションが付与され、洗濯物等を吊るしやすくなる。
【0035】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲内およびこれと均等の意味でのすべての修正と変形を含む。
【符号の説明】
【0036】
1 物干し具
10 ケーシング
11 カバー
11a 引き出し口
11b ダイヤル穴
12 ベース
12a 収納凹部
12b ガイド機構支持部
12c ロック機構支持部
12d フック
20 軸受部
21 大径部
21a ガイド爪
22 小径部
22a 挿入口
22b スリット
23 段部
30 ロータリーダンパー
31 ダンパー本体
32 フランジ
33 制動軸
40 ドラム
41 物干しロープ
42 ギア
42a 歯
43 タブ
43a タブ本体
43b ロープ留め
43c キャップ
43d 係止溝
44 固定溝
50 ばねケース
51 ケース本体
51a ドラム結合部
51b 結合爪
52 蓋
52a ボス部
53 ぜんまいばね
60 ガイド機構
61 ガイド本体
61a 支持板
61b 係合片
62 スプール
63 ガイドカバー
63a 送り出し口
70 ロック機構
71 ロックピース
71a 先端部
71b 窓
71c ばね片
72 変換軸
72a カム部
73 ダイヤル
W 壁面
h ハンガー
P プレート
b トラスねじ
H フック孔
T タブ止め