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特許7294649エリア検出器の保護方法、エリア検出器用保護デバイス、並びに当該保護デバイスを有するX線検出器システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】エリア検出器の保護方法、エリア検出器用保護デバイス、並びに当該保護デバイスを有するX線検出器システム
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20230613BHJP
   G01T 1/17 20060101ALI20230613BHJP
   G01N 23/20008 20180101ALI20230613BHJP
   G01N 23/207 20180101ALI20230613BHJP
【FI】
G01T7/00 A
G01T1/17 D
G01N23/20008
G01N23/207
【請求項の数】 18
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019134870
(22)【出願日】2019-07-22
(65)【公開番号】P2020046419
(43)【公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-04-22
(31)【優先権主張番号】18195713.5
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250339
【氏名又は名称】株式会社リガク
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クハルチク ダミアン
【審査官】松平 佳巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-231030(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0263865(US,A1)
【文献】特開2008-167929(JP,A)
【文献】特表2010-510490(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0145798(US,A1)
【文献】特開2004-361100(JP,A)
【文献】国際公開第2018/136582(WO,A1)
【文献】特開平06-300848(JP,A)
【文献】米国特許第05486700(US,A)
【文献】実開昭48-064755(JP,U)
【文献】実開平04-061754(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 7/00
G01T 1/17
G01N 23/20008
G01N 23/207
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体との衝突からエリア検出器を保護するため、前記エリア検出器上に取付可能に設計され、かつ、前記エリア検出器上に取り付けられるように構成される保護デバイスであって、
保護される前記エリア検出器の周縁部表面の少なくとも一部を覆うように設計される取付フレーム、
前記取付フレーム上に配置されて、前記取付フレームによって囲まれる前記エリア検出器の内側領域で起こりうる前記物体の衝突を検出及び示唆するように構成される光カーテンを有する第1センサユニット、並びに、
前記取付フレーム上に配置されて、前記エリア検出器の前記周縁部表面で起こりうる前記物体の衝突を検出及び示唆するように構成される少なくとも1つのセンサを有する第2センサユニット、
を有する保護デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の保護デバイスであって、保護されるべき前記エリア検出器は、X線分析システムの2D X線検出器である、保護デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の保護デバイスであって、前記物体は、X線発生装置、ゴニオメータ、又は、X線回折計の任意の他の可動部品である、保護デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、前記第1センサユニット及び前記第2センサユニットとやり取りする少なくとも1つの論理ユニットをさらに有し、
前記少なくとも1つの論理ユニットは、衝突する恐れがあることを示唆する少なくとも1つの信号を、前記第1センサユニット及び/又は前記第2センサユニットから受信する際に、前記物体並びに/又は前記エリア検出器のために衝突警告信号及び/若しくは停止信号を生成するように構成される、
保護デバイス。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、前記光カーテンの少なくとも1つの受光器が、少なくとも1つの関連する光エミッタによって放出される少なくとも1つの光ビームの中断又は減衰を検出するときに、起こり得る前記物体との衝突は示唆される、保護デバイス。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、
前記第1センサユニットの前記光カーテンは、複数の光エミッタ及び関連する受光器によって構成され、
前記複数の光エミッタ及び関連する受光器の配置は、前記複数の光エミッタの各々が、関連する受光器によって放出される光ビームを検出できるようになされる、
保護デバイス。
【請求項7】
請求項6に記載の保護デバイスであって、光エミッタと受光器の隣接する対は、要求される空間分解能を備える光カーテンを構成するように配置される、保護デバイス。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、
前記第1センサユニットは、コリメートバーをさらに有し、
前記コリメートバーは、前記複数の光エミッタと複数の受光器と一致する複数の穴を備え、前記複数の光エミッタの各々の各光ビームを個別にコリメートし、前記複数の受光器の各々の受容角を個別にコリメートするために供される、
保護デバイス。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、
前記第2センサユニットの前記少なくとも1つのセンサは、前記エリア検出器の周縁部表面に沿って起こり得る前記物体の衝突を検出するように、前記取付フレーム上で構成及び配置される近接センサである、
保護デバイス。
【請求項10】
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、
前記第2センサユニットは、可動外側フレーム、及び、前記少なくとも1つのセンサとして少なくとも1つの検知スイッチを有し、
前記外側フレームは、前記取付フレーム及び前記第1センサユニットを少なくとも部分的に覆うように設計され、
前記第2センサユニットは、衝突する前記物体が、前記外側フレームを前記取付フレームへ向けて動かすことで前記少なくとも1つの検知スイッチを始動させるときに、前記エリア検出器の周縁部表面で起こり得る前記物体の衝突を検出及び示唆するように構成される、
保護デバイス。
【請求項11】
請求項10に記載の保護デバイスであって、前記外側フレームと前記取付フレームとの間に配置される少なくとも1つの弾性取付部をさらに有し、
前記少なくとも1つの弾性取付部は、前記外側フレームが非始動位置と始動位置との間で移動可能となるように、前記取付フレームに対して前記外側フレームを弾性的に取り付けるように構成される、
保護デバイス。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の保護デバイスであって、前記少なくとも1つの検知スイッチは、前記外側フレームによって機械的に始動され、機械的始動の際に電気回路を閉じる、すなわち電気信号を生成するように構成される、保護デバイス。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の保護デバイスであって、前記取付フレーム上に配置されるプリント回路基板(PCB)をさらに有し、
前記PCBは、フレーム形状を有し、
前記光カーテンの複数の光エミッタ及び関連する受光器は、前記PCBフレームの互いに反対側に位置するフレーム部上に配置される、
保護デバイス。
【請求項14】
請求項13に記載の保護デバイスであって、前記第2センサユニットの前記少なくとも1つのセンサは、前記PCBフレーム上に配置される、保護デバイス。
【請求項15】
回折X線ビームを検出するように構成されるX線検出器システムであって、
検出器筐体及び該検出器筐体内に収容される少なくとも1つの2D X線センサを有するX線検出器、並びに、
請求項1乃至14のいずれか一項に記載の保護デバイス、
を有し、
当該保護デバイスは、物体-特にX線発生装置、ゴニオメータ、又は、X線回折計の他の可動部-との衝突から前記2D X線センサを保護するため、前記2D X線センサの前方に脱着可能なように取り付けられる、
X線検出器システム。
【請求項16】
X線を発生させるように構成されるX線発生装置、及び、請求項15に記載のX線検出器システムを有するX線分析システム。
【請求項17】
物体の衝突からエリア検出器を保護する方法であって、
前記エリア検出器の前方に請求項1乃至14のいずれか一項に記載の保護デバイスを取り付ける段階、及び、
物体と移動可能な前記エリア検出器との間で起こり得る衝突を当該保護デバイスによって検出する段階、
を有する方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
衝突警告信号及び/又は停止信号を発生させる段階、並びに、
前記エリア検出器及び/又はゴニオメータと結合する少なくとも1つの駆動ユニットへ前記停止信号を供することで、前記エリア検出器及び/又はゴニオメータの移動を停止させる段階、
を有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概してエリア検出器の分野に関する。より詳細には本発明は、物体の衝突からエリア検出器を保護するための保護デバイス及び保護方法に関する。本発明はまた、当該保護デバイスを有するX線検出器システム及びX線分析システムにも関する。
【背景技術】
【0002】
HPC、CCD、又はCMОS技術に基づく2次元エリア検出器(2Dエリア検出器)は今日、電磁放射線を検出するのに広く用いられている。たとえば2次元(すなわち2D)CCD又はCMОSセンサは、写真を撮るカメラ内でも見つけることができる。大きな2DHPC、CCD、又はCMОSセンサもまた、調査システム―たとえばX線分析システム―内の検出器として用いられるようになってきている。そのような2Dエリア検出器は、従来の撮像板よりも便利である。なぜならそのようなセンサは、高い画像解像度及び画像感度でのリアルタイム検出を可能にするからである。
【0003】
X線分析の分野では、150×150mmよりも大きな敏感面積(つまりセンサの高さ×幅)を有する2Dエリア検出器が今日市販されている。そのような大きなエリア検出器利点は、広い立体角範囲にわたって回折されるX線ビームの同時検出器を可能にする大きな立体角範囲を網羅することである。従ってエリア検出器は、広い立体角範囲にわたってX線回折パターンを記録するために空間内で大きく動かされないため、検出時間はさらに短くなり得る。
【0004】
大きな2Dエリア検出器は、外部物体が容易に衝突して損傷する危険性を有することである。たとえばX線回折システムでは、X線検出用の2Dエリア検出器は通常、試料台及び/又はX線源に対して角度並びに半径方向に移動可能な対応するゴニオメータアーム上に取り付けられる。X線源及び試料台もまた、ゴニオメータ上で(静止又は可動状態で)取り付けられてよい。試料台、2D X線検出器、及びX線源との間での間隔又は距離は、実験上の要求に依存して小さくなり得るので、可動エリア検出器と試料台、X線源、試料搬入ロボット、又は他のゴニオメータ部との意図しない衝突を起こす危険性は過小評価されてはならない。そのような敏感エリア検出器との意図しない衝突の危険性は、エリア検出器、試料台、及びX背根源が、実験上の要求に従って互いに調節及び方位が設定されるX線分析システムの初期調節過程中で特に高い。これはすべて、経験の浅い操作者がそのような調節過程を実行しているときにより現実味を帯びる。エリア検出器は通常壊れやすい透過窓(たとえばX線検出器用のベリリウム、マイラー、又はカプトンの窓)でしか保護されていないので、エリア検出器は、そのような衝突によって深刻な損傷を受ける恐れがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の目的は、機械的衝突からそのような敏感エリア検出器を保護することである。本発明の他の目的は、容易かつ費用対効果良く製造可能で、かつ、任意のエリア検出器設計に対して取付可能な保護設計を供することである。本発明の他の目的は、X線分析システムの機能を損なうことなく前記X線分析システム内に設置可能な小型設計の保護デバイスを供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の問題及び他の問題を解決するため、本発明は、物体との衝突からエリア検出器を保護する保護デバイスを供する。当該保護デバイスは、前記エリア検出器上に取付可能に設計され、かつ、前記エリア検出器上に取り付けられるように構成されて、保護される前記エリア検出器の周縁部表面の少なくとも一部を覆うように設計される取付フレーム、前記取付フレーム上に配置されて、前記取付フレームによって囲まれる前記エリア検出器の内側領域で起こりうる前記物体の衝突を検出及び示唆するように構成される光カーテンを有する第1センサユニット、並びに、前記取付フレーム上に配置されて、前記エリア検出器の周縁領域で起こりうる前記物体の衝突を検出及び示唆するように構成される少なくとも1つのセンサを有する第2センサユニットを有する。
【0007】
前記エリア検出器の内側領域は、敏感検出器領域-すなわち放射線を検出する前記検出器センサによって覆われる領域-であってよい。前記検出器の周縁領域は、前記内側領域を取り囲み、かつ、放射線に対して敏感ではない。
【0008】
保護される前記エリア検出器は、X線を検出するように構成される2D X線検出器であってよい。前記2D X線検出器は、X線分析システム―特にX線回折計―用に設計されてよい。前記2D X線検出器は、前記X線分析システムのゴニオメータ(のアーム)上に取り付けられる静止又は可動状態の検出器として用いられてよい。前記X線エリア検出器は、半導体系2D X線センサ―たとえばHPC、CCD、又はCMOSセンサ―を有してよい。前記2D X線検出器は、前記2D X線センサを読み出す読み出し電子機器、並びに、前記2D X線センサ及び対応する読み出し電子機器を受ける筐体をさらに有してよい。さらに前記2D X線検出器は、前記X線センサの前方に配置される透過窓を有してよい。前記透過窓は、X線ビームに対して透明で、かつ、環境から前記敏感X線センサを保護するように配置されてよい。本発明の保護デバイスの仕様は、X線エリア検出器に限定されないことに留意して欲しい。むしろ当該保護デバイスは、任意の種類の電磁放射線を検出する機能を有する任意の種類のエリア検出器に用いられてよい。
【0009】
物体の衝突から前記エリア検出器を保護するため、当該保護デバイスは、該保護デバイスの前方(たとえば当該検出器の透過窓の前方)で脱着可能に取り付けられてよい。この目的のため、当該保護デバイスの裁置フレームは、保護される前記エリア検出器の形状及び寸法に従って設計及び寸法設定されてよい。具体的には前記取付フレームは、取り付けられた状態で、前記敏感領域を覆うことなく前記エリア検出器の周縁部のみを覆うような形状をとり、かつ、設計されてよい。さらに前記裁置フレームには、前記エリア検出器(エリア検出器の筐体)の前方又は側方で前記裁置フレームを固定する少なくとも1つの迅速固定素子(たとえば少なくとも1つのクランプ素子)が供されてよい。
【0010】
衝突物体は、静止物体又は可動物体-たとえばX線発生装置、該X線発生装置又はX線検出器が上に裁置可能なゴニオメータ、又は、X線分析システムの他の部品(具体的にはX線回折計)-であってよい。従って前記エリア検出器及び前記衝突物体は、相互に移動可能なX線分析システムの構成要素-具体的にはX線回折計-であってよい。前記エリア検出器及び前記衝突物体がX線分析システムの構成要素-具体的にはX線回折計-である上述の実施形態から離れると、前記エリア検出器は、大規模の2D領域にわたって所望の物理量(たとえば電磁放射線、熱放射等)を検出するように構成される(任意の種類のエリアサイズ及び/又はエリアの幾何学形状を有する)任意の種類のエリア検出器であってよい。さらに前記物体は、前記2Dエリア検出器と接触可能な任意の(静止又は可動)物体であってよい。
【0011】
当該保護デバイスは、前記第1センサユニット及び前記第2センサユニットとやり取りする少なくとも1つの論理ユニットをさらに有してよい。前記少なくとも1つの論理ユニットは、前記エリア検出器と衝突する恐れがあることを示唆する少なくとも1つの信号を、前記第1センサユニット及び/又は前記第2センサユニットから受信する際に、前記物体並びに/又は前記エリア検出器に少なくとも1つの衝突警告信号及び/若しくは少なくとも1つの停止信号を生成するように構成されてよい。前記少なくとも1つの衝突警告信号に応じて、操作者は、前記物体及び/又は前記エリア検出器の移動を停止することができるため、前記物体と前記エリア検出器との衝突を回避することができる。あるいはその代わりに、(現代のX線分析システムのように)前記物体及び/又は前記エリア検出器が、少なくとも1つの駆動ユニットによって自動的に駆動される場合、前記停止信号は、前記駆動ユニットに、前記物体及び/又は前記エリア検出器のさらなる移動を停止させることで、前記物体と前記エリア検出器との衝突を回避することができる。従って、前記警告信号及び/若しくは前記停止信号を生成して(移動する)前記物体並びに/又は(移動する)前記エリア検出器へ送ることによって、衝突が実効的に起こる前に前記物体と前記エリア検出器との衝突は回避され得る。
【0012】
前記第1センサユニットの光カーテンは、複数の光エミッタ及び関連する受光器によって構成されてよい。前記複数の光エミッタ及び関連する受光器の配置は、各受光器が関連する光エミッタによって放出される対応光ビームを検出できるようになされてよい。光エミッタと受光器の隣接対は、要求される空間分解能の光カーテンを構成するように配置されてよい。前記光カーテンの要求される空間分解能は、光エミッタと受光器の隣接する対間の距離(つまり前記光カーテンの隣接する光ビーム間の距離)を適切に調節することによって得られ得る。たとえば光エミッタと受光器の前記対は、5mm以下の最小の物体サイズを検出するため、隣接光ビーム間の前記距離が5mm以下となるように配置されてよい。たとえば衝突する可能性のある前記衝突物体が5mmよりも大きいことがわかっている場合、光エミッタと受光器の前記対は、隣接する光ビーム間の前記距離が5mmよりも長くなるように配置されてよい。そのような場合、前記物体を検出するのに必要な分解能を与えるためには、隣接する光ビーム間の前記距離は5mmよりも大きい距離で十分である。
【0013】
前記光カーテンの少なくとも1つの受光器が、該受光器に係る光エミッタによって放出される対応光ビームの中断又は(強い)減衰を検出するときに、前記エリア検出器と物体との間で起こり得る衝突が、前記第1センサユニットによって示唆されてよい。そのような光ビームの中断又は減衰は、物体が前記光カーテンを通るといつも起こる。上で説明したように、前記光カーテンを備える当該保護デバイスが前記エリア検出器の前方(たとえば前記透過窓の前方)に取り付けられ得るので、前記エリア検出器と接近する物体との間で起こり得る衝突が、前記物体が当該検出器の表面に衝突する前に十分余裕をもって検出され、かつ、示唆され得る。
【0014】
光エミッタと受光器の対のアレイからなる前記光カーテンを有する前記第1センサユニットは、少なくとも1つのコリメーションバーをさらに有してよい。前記少なくとも1つのコリメーションバーは、前記光エミッタと受光器と一致する複数のコリメーション穴(コリメーションスリット)を有してよい。前記複数のコリメーション穴(コリメーションスリット)は、各光エミッタの各光ビームを個別にコリメートし、かつ、各受光器の受容角を個別にコリメートするように設計されてよい。
【0015】
前記第2センサユニットの少なくとも1つのセンサは近接センサであってよい。前記近接センサは、前記エリア検出器の周縁表面で起こり得る前記物体の衝突を検出するように前記取付フレーム上で構成及び配置されてよい。前記近接センサは、誘導近接センサ、容量近接センサ、又は光電近接センサとして設計されてよい。前記近接センサは、衝突物体に接することなく前記フレームの付近で前記衝突物体の存在を検出することができる。従って少なくとも1つの近接センサを有する前記第2センサユニットは、前記エリア検出器の周縁表面を、起こり得る衝突から実効的に保護することを可能にする。
【0016】
代替変形例によると、前記第2センサユニットは、可動外側フレーム及び少なくとも1つのスイッチを有する機械センサとして設計されてよい。前記少なくとも1つのスイッチは、一の面上の前記可動外側フレームと他の面上の前記取付フレーム又は任意の他の素子-たとえば該取付フレーム上に設けられるプリント回路基板-との間に設けられてよい。前記可動外側フレームは、物体が前記可動外側フレームに衝突するときに、前記可動外側フレームと前記取付フレームとの間に配置される前記少なくとも1つのスイッチを始動させるように設計されてよい。
【0017】
前記少なくとも1つのスイッチは、前記可動外側フレームによって機械的に始動されるように構成されるマイクロスイッチであってよい。少なくとも1つの前記マイクロスイッチは、機械的始動の際に電気回路を閉じるすなわち電気信号を生成するように構成されてよい。衝突物体が前記可動外側フレームに衝突するとき、前記可動外側フレームは、前記取付フレームへ向かって移動することで、前記少なくとも1つのスイッチを始動させてよい。前記の始動したスイッチは、前記可動外側フレームと物体との衝突を示唆する電気信号を引き起こしてよい。前記可動外側フレームは、物体との衝突から当該検出器の周縁表面を実効的に保護する。前記物体は、前記取付フレームすなわち前記エリア検出器の表面から(少なくとも数mm)離間して配置される前記可動外側フレームにしか衝突しないためである。
【0018】
前記第2センサユニットが外側フレーム及び少なくとも1つのスイッチを有する実施形態では、当該保護デバイスは、前記外側フレームと前記取付フレームとの間に配置される少なくとも1つの弾性取付部をさらに有してよい。前記少なくとも1つの弾性取付部は、前記取付フレームに対して前記外側フレームを弾性的に取り付けるように構成されてよい。それにより前記外側フレームは、スイッチ始動位置(つまり前記外側フレームが前記少なくとも1つのスイッチと接している位置)とスイッチ開放位置(つまり前記外側フレームが前記少なくとも1つのスイッチから離間している位置)との間で移動することができる。前記少なくとも1つの弾性取付部は、前記外側フレームに応力が加えられていないときに、前記外側フレームを前記スイッチ開放位置(つまり前記離間している位置)に保持する(又は戻す)ように設計されてよい。さらに衝突物体が前記外側フレームに及ぼす衝突応力すなわち衝突力が、弾性力を上回るのに十分な強さである場合、前記少なくとも1つの弾性取付部は、スイッチ始動位置へ移動するように設計されてよい。前記少なくとも1つの弾性取付部は、ばね(たとえばコイルばね)であってよい。
【0019】
当該保護デバイスは、前記取付けフレーム上に配置されるプリント回路基板(PCB)をさらに有してよい。前記PCBはフレーム形状を有してよい。前記PCBフレームの形状は、前記取付けフレームの形状と一致してよい。前記光カーテンの光エミッタ及びそれに係る受光器は、前記PCBフレームの対向するフレーム部上に配置されてよい。さらに前記少なくとも1つの第2センサユニットも、前記PCBフレーム上に配置されてよい。従って前記第1センサユニットと第2センサユニットの構成要素は、前記PCBフレーム上でコンパクトかつ費用対効果よく集積されてよい。
【0020】
さらに回折X線ビームを検出するように構成されるX線検出器システムが供される。当該X線検出器システムは、検出器筐体及び該検出器筐体内に収容される少なくとも1つの2D X線センサを有するX線検出器、並びに、上述の保護デバイスを有する。当該保護デバイスは、物体との衝突から前記2D X線センサを保護するため、前記2D X線センサの前方に脱着可能なように取り付けられる。前記衝突物体は、X線発生装置、ゴニオメータ(ゴニオメータアーム)、試料搬送ロボット、又は、X線回折計の任意の他の可動部であってよい。
【0021】
前記X線検出器は、前記2D X線センサの前方で前記検出器筐体内に設けられるX線透過窓(たとえばベリリウム窓、マイラー窓、又はカプトン窓)をさらに有してよい。そのような場合、当該保護デバイスは、前記X線透過窓の前方に配置されてよい。
【0022】
さらにX線分析システム―たとえばX線回折計―がさらに供される。当該X線分析システムは、X線を発生させるように構成されるX線発生装置及び上述のX線検出器システムを有する。当該X線分析システムは、試料台、並びに、該試料台に対して所望の角度位置及び/又は半径位置へ前記X線検出器を少なくとも移動させるように構成される可動ゴニオメータをさらに有してよい。当該X線分析システムはまた、当該X線分析システムのX線検出器及び/又はゴニオメータ(ゴニオメータアーム)を移動させる少なくとも1つの駆動ユニットをも有してよい。
【0023】
本発明のさらに他の態様によると、物体の衝突からエリア検出器を保護する方法が供される。当該方法は、前記エリア検出器の前方に上述の保護デバイスを取り付ける段階、及び、物体と移動可能な前記エリア検出器との間で起こり得る衝突を当該保護デバイスによって検出する段階を有する。当該検出器はX線検出器であってよい。前記物体は、X線分析システムのX線源、試料台、又は、ゴニオメータ部であってよい。前記起こり得る衝突の検出は、X線回折実験及び/又は当該X線分析システムの初期調節中に(連続的に)実行されてよい。
【0024】
当該方法は、衝突警告信号及び/又は停止信号を発生させる段階をさらに有してよい。当該方法は、前記エリア検出器及び/又はゴニオメータと結合する少なくとも1つの駆動ユニットへ前記停止信号を供することで、前記エリア検出器及び/又はゴニオメータ(ゴニオメータアーム)の移動を停止させる段階をさらに有してよい。前記少なくとも1つの駆動ユニットへ前記停止信号を供給する段階は、前記少なくとも1つの駆動ユニットの少なくとも1つの論理ユニットへ前記停止信号を供する段階を有してよい。前記少なくとも1つの論理ユニットは、前記少なくとも1つの駆動ユニットを制御して、前記停止信号受信後に前記少なくとも1つの駆動ユニットを停止させるように構成される。
【0025】
前記衝突警告信号は、当該検出器と物体との間で起こり得る衝突をユーザーへ示唆する光信号及び/又は音響信号であってよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
本願で説明する本発明のさらなる詳細、態様、及び利点は以降の図面から明らかとなる。
図1】本発明による保護デバイスの3次元像を表している。
図2a図1の保護デバイスの第1センサユニットの構成要素を表している。
図2b図1の保護デバイスの第1センサユニットの機能図を表している。
図2c図1の保護デバイスの第1センサユニットの写真を示している。
図3a】第1センサユニットの光ビームの角度分布を表している。
図3b】第1センサユニットの光ビームの角度分布を表している。
図4】一部が組み立てられた状態の図1の保護デバイスを表している。
図5】本発明による方法の流れ図を表している。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以降の説明では、限定ではない説明目的で、本願で与えられる本発明を完全に理解するために具体的詳細が明らかにされる。本願のエリア検出器用の保護方法が、以降で説明する具体的詳細から保護範囲内で異なり得るのは、当業者には明らかである。
【0028】
図1を参照する。図1は、本発明によるエリア検出器を保護する保護デバイス100の分解図を表している。保護デバイス100は、取付フレーム120、プリント回路基板フレーム(PCBフレーム)140、及び外側フレーム160を有する。
【0029】
取付フレーム120は、PCB140及び外側フレーム160を受けるように設計される。従って取付フレーム120は、PCB140及び外側フレーム160用の支持フレームとして機能する。しかも取付フレーム120は、保護されるべきエリア検出器200上で着脱可能に取り付けられるように設計される。エリア検出器200は図4に表されている。エリア検出器200は、電磁放射線を検出するように構成される半導体系エリアセンサ-たとえばHPCセンサ、CCDセンサ、又はCMOSセンサ-を含んでよい。一の実施形態によると、エリア検出器200は、回折X線ビームを検出するX線検出器であってよい。
【0030】
保護デバイス100の取付フレーム120は、3つのフレームバー121,122,123を有する。3つのフレームバー121,122,123は、1つのフレームを構成するように互いに配置される。フレームバー121,122,123の各々は、(わずかに)突出した外側縁部121a,122a,123aを有する。外側縁部121a,122a,123a上には、PCBフレーム140が取り付けられる。図1の取付フレーム120はU字形状を有する。図示されたU字形状は、単なる1つの典型的なフレーム設計である。他のフレーム形状も考えられ得る。たとえばフレーム120は、4つのフレームバーを備える長方形形状-つまりフレームの側部毎に1つのフレームバーを備える-を有してよい。取付フレーム120の形状並びに/又は寸法が、保護されるべきエリア検出器(前方検出器領域)の形状及び/若しくは形態に合わせて調節されることは明らかである。従ってフレームバー121,122,123の設計及び寸法は、検出器200の敏感領域250に実質的に対応する内側開領域126を画定する取付フレーム120が得られるようになされる(図4参照)。従ってフレームバー121,122,123は、電磁放射線(たとえばX線)に対して敏感ではないエリア検出器200の周縁領域しか覆わなくてよい。
【0031】
取付フレーム120は、フレームバー121,122,123に対して横方向に配置される取付バー130a,130b及び取付素子132b,134bをさらに有してよい。取付素子132b,134bは、互いに対向する取付フレーム120の両側面上で対称となるように配置されてよい。図1及び図4は、右側フレーム側部の取付素子132b,134bのみを表している。左側の取付素子は取付フレーム120によって隠されている。側部に配置される取付バー130a,130b及び取付素子132a,134bは、保護デバイス100が検出器200に着脱可能なように取り付けられ得るような取付系を構成するように設計される。
【0032】
取付バー130a,130b及び取付素子132a,134b(及び反対側の対応部位)の設計及び寸法は、図4の検出器200の機械的構成に対応するようになされる。他の型の検出器200では、取付バー130a,130b及び取付素子132a,134bの設計及び寸法を変更する必要があると思われる。
【0033】
取付バー130a,130b及び取付素子132a,134bは、フレームバー121,122,123の側部に取り付けられる別個の素子として設計されてよい。あるいはその代わりに取付バー130a,130b及び取付素子132a,134bは、図1に示されているように、フレームバー121,122,123と一体形成されてよい。
【0034】
保護デバイス100は、取付フレーム120と外側フレーム160との間に配置される(単一の)PCBフレーム140をさらに有する。PCBフレーム140はU字形状を有する。U字形状のPCBフレーム140は、互いに反対側に配置される2つのフレーム部141,142を有する。しかも2つのフレーム部141,142は、PCBフレーム140の底部又は上部に配置されるPCBベース部によって互いに接続される。当然のこととして、他のPCBフレーム140形状-たとえば2つの水平に配置されるフレーム部及び2つの垂直に配置されるフレーム部を備える長方形のPCBフレーム形状-もまた考えられ得る。2つの水平に配置されるフレーム部及び2つの垂直に配置されるフレーム部はそれぞれ、内側開口領域146を備えるPCBフレーム140を構成するように互いに離間する。PCBフレームの部141,142,143によって構成されるPCBフレーム140は、取付フレーム120と実質的に同一の形状を有する。より具体的には、PCBフレーム140は、取付フレーム120によって画定される内部開口領域126と実質的に同一な領域形状及び領域寸法を有する内部開口領域146を画定する。PCBフレームの領域形状及び領域寸法は、保護されるべきエリア検出器200の形状及び形式に合わせて調節されてよい。
【0035】
PCBフレーム140は、保護デバイス100が有する第1センサユニットの一部であってよい。第1センサユニットは、複数の光エミッタ147及びそれに係る受光器148を有する。複数の光エミッタ147及びそれに係る受光器148は、開口領域146内に光カーテンを構成するように反対に配置されるフレームの部141,142上に配置される。PCBフレーム140が単一部材として設計されるので、複数の光エミッタ147及びそれに係る受光器148は、互いに精密に位置合わせされ得る。それにより光ビーム信号は(衝突物体が導入されるまで)長時間にわたって変化しない。第1センサユニットについては、以降の図2a、図2b、及び図2cとともにより詳細に説明する。
【0036】
保護デバイス100は外側フレーム160をさらに有する。外側フレーム160は、2つの垂直に配置される外側フレームバー161,162及び2つの水平に配置される外側フレームバー163,164を有する単一部材として形成される。2つの垂直に配置される外側フレームバー161,162及び2つの水平に配置される外側フレームバー163,164はそれぞれ、互いに反対側に位置する。外側フレームバー161,162,163,164によって構成される外側フレーム160は、取付フレーム120及びPCBフレーム140によって画定される内部開口領域126,146と実質的に同一な領域形状及び領域寸法を有する内部開口領域166を画定する。
【0037】
外側フレーム160の一の機能は、PCBフレーム140とその関連電子素子(つまり光エミッタ147と受光器148)及び電気ケーブル接続を衝突物体並びに環境から保護することである。外側フレーム160は、弾性取付部及び機械スイッチ(図1には示されていない)をさらに有する第2センサユニットの一部である。機械スイッチは、外側フレーム160に対向するPCBフレームの面上に配置されるマイクロスイッチである。機械スイッチは、外側フレーム160によって始動する際に電気信号を発生させるように構成される。さらに弾性取付部は、所定の弾性力を有するバネ150として設計されてよい。図1の保護デバイス100は4つのバネ150を有する。4つのバネ150は、外側フレーム160に対向するPCBフレームの面上に配置される対応ピン152によって支持される。よってピン152は、保護デバイス100が取り付けられるときに、外側フレーム160内に形成される貫通穴154によって変動可能なように支持されて良い。従って外側フレーム160は、バネ150を介してPCBフレーム140(又はその下に位置する取付フレーム120)に弾性的に取り付けられてよい。取付フレーム120に対する外側フレーム160及びPCBフレーム140の取付方向は、図1の矢印2によって表されている。第2センサユニットの機能について、図4とともにより詳細に説明する。
【0038】
図2a,2b,2cとともに、第1センサユニットについてさらに説明する。図2aは、PCBフレーム140を表している。PCBフレーム140上では、複数の光エミッタ147及び受光器(又は光検出器)148が、対応するエミッタ-受光器対を構成するように互いに向かい合って配置される。エミッタ-受光器対のPCBフレーム140上での配置は、各エミッタ-受光器対間の光ビーム(つまりは光カーテンのすべてのビーム)がPCBフレーム表面に対して実質的に並行に進むようになされる。光エミッタ147として、赤外発光ダイオード(IRダイオード)が用いられてよい。各IRダイオードは、(パルス又は連続波)赤外光ビーム(IRビーム)を受光器148へ放出するように構成されてよい。受光器148として、赤外光トランジスタ(IR光トランジスタ)が用いられてよい。各IR光トランジスタは、係るIRダイオードによって発生する(パルス又は連続波)IRビームを検出するように構成される。
【0039】
図2aでさらに表されているように、光エミッタ147及び受光器148は、PCBフレーム部141,142上で交互に配置されている。PCBフレーム部141上に配置される各光エミッタ147(受光器148)には、PCBフレーム部142上に関連する受光器148(光エミッタ147)が与えられる。よってPCBフレーム部141(又はPCBフレーム部142)上に配置される光エミッタ147によって放出される光は、PCBフレーム部142(又はPCBフレーム部141)上で光エミッタ147と正反対の位置に配置される関連の受光器148によって検出される(図2b参照)。そのようにして構成される光エミッタ147と受光器148の対は、互いに反対側に配置されるPCBフレーム部141,142に沿って配置される。それによりPCBフレーム140によって取り囲まれる全開口領域146を覆う光カーテンが生成される。開口領域146が敏感検出器領域250に実質的に対応するので、敏感検出器領域250は光カーテンによって完全に覆われる。
【0040】
図1及び図2aでさらに表されているように、光エミッタ147及び受光器148は、対応するPCB部141,142の内側端部141a,142aの付近に配置されてよい。従って、他のセンサ部品を配置するのに利用可能な自由空間がPCBフレーム部141,142(図2aのフレーム領域144a,144b参照)上及びフレーム部143上に十分に存在する。たとえばフレーム領域144a,144bは、第2センサユニット用の複数のマイクロスイッチを配置するのに利用されてよい。さらにフレーム部143上の空間は、第1センサユニットの受光器からの信号、及び/又は、第1センサユニットのマイクロスイッチからの信号を評価するように構成される1つ以上の論理ユニット145(図2cも参照のこと)を実装するために利用されてよい。従って図示されたPCBフレーム設計は、小型の補語デバイス設計を容易にする。なぜなら第1センサユニットと第2センサユニットのすべての必要な部品はPCBフレーム140上で統合可能だからである。
【0041】
第1センサユニットの光カーテンについては基本的に、複数の光エミッタ147及び関連する受光器148が、互いに反対側に配置される水平フレーム部141,142上に配置されるU字形状のPCBフレーム140とともに説明してきた。本発明は、そのような光カーテンの設計に限定されない。たとえばPCBフレーム140が、2つの水平に配置されるフレーム部と2つの垂直に配置されるフレーム部を備える長方形形状を有する場合、複数の光エミッタ147と関連する受光器148が、垂直方向に位置合わせされた光ビームによる光カーテンを構成するように2つの反対側に配置される垂直フレーム部上に配置されることも考えられる。さらにPCBフレーム140が長方形の形状を有する場合、複数の光エミッタ147と関連する受光器148の第1サブセットを2つの反対側に配置される水平フレーム部上に配置し、かつ、複数の光エミッタ147と関連する受光器148の第2サブセットを2つの反対側に配置される垂直フレーム部上に配置することで、水平方向にも垂直方向にも配置される光ビームを備える光カーテンを構成することも考えられる。水平方向にも垂直方向にも配置される光ビームを備える光カーテンを有することによって、検出精度はさらに改善され得る。
【0042】
光エミッタ147と受光器148の対応する対によって生成される光カーテンの技術的機能について、図2bとともにさらに説明する。図2bは、反対側に配置されるPCBフレーム部141,142上での光エミッタ147と受光器148の対の配置を示すブロック図を表している。PCBフレーム部141,142上での光エミッタ147と受光器148の隣接対間の距離は、光カーテンによって実現されるべき空間分解能に依存して調節される。一の実施形態によると、光エミッタ147と受光器148の隣接対間の距離は、5mm以下の分解能しきい値が実現可能となるように事前設定されてよい。それは、分解能しきい値よりも短い直径を有する物体しか検出されずに光カーテンを通過できないことを意味する。他の実施形態によると、衝突する可能性のある物体のサイズが5mmよりも大きいことがわかっている場合には、光エミッタ147と受光器148の隣接対間の距離は、光カーテンの分解能しきい値が5mmよりも大きくなるように事前設定されてよい。光カーテンの空間分解能が、光エミッタ147と受光器148の隣接対間の距離に依存し、かつ、光エミッタ147と受光器148は、ある寸法を有するので、光カーテンの分解能は、使用される光エミッタ147と受光器148の寸法によって制限され得る。PCBフレーム140上で光エミッタ147と受光器148のとり得る最近接配置を実現するため、隣接する光エミッタ147と受光器148は、PCBフレーム140上の2本の線内でジグザグに配置されてよい。
【0043】
光カーテンを動作させるため、光カーテンの光エミッタ147及び受光器148に給電する少なくとも1つの電源が供される。さらに光カーテンの各受光器148とやり取りする論理ユニット145が供される。論理ユニット145は、図2a及び図2cに表されているようにPCBフレーム140上に統合されてよい。論理ユニット145は、アナログ信号増幅器、及び、光カーテンの各受光器148によって検出される信号と、参照信号(たとえば10V参照信号)とを比較するように構成される信号比較器を有してよい。あるいはその代わりに参照信号が利用できない場合、異なる受光器148から受信した検出信号同士が比較されることも考えられ得る。1つ以上の光信号において、異なる信号同士の比較又は参照信号との比較が、(強い)光の減衰を示す場合、物体が光カーテンと衝突したことが示唆される。従って第1センサユニットの光カーテンによって、その光カーテンによって覆われる開口領域146を通り抜けている物体を検出することが可能である。
【0044】
上述したように、光カーテンの空間分解能は、光エミッタ147と受光器148の隣接対間の距離に依存する。距離に加えて、光カーテンの分解能に影響する他のパラメータが存在する。このパラメータは、各光エミッタ147によって発生する光ビームのビーム広がり角度である。各光エミッタ147の光ビームが大きな角度範囲にわたって広がる場合、クロストーク効果が観測される恐れがある。つまり特定の受光器148の信号は、その受光器のちょうど反対側に配置される関連光エミッタ147によって発生する光ビームだけではなく、受光器148から外れて配置される隣の光エミッタによる影響も受ける。そのような場合、衝突物体が検出されるのは、反対側の光エミッタ147及び一部の外れた光エミッタ147からの複数の光ビームを中断又は(強く)減衰する場合のみである。これは実際には、衝突物体が大きくなければならないので、光カーテンの分解能が低下することを意味する。
【0045】
クロストーク効果を減少させるため、隣接する光エミッタ147と受光器148との間の距離は、すべての光エミッタ147を一のPCBフレーム部141上に並べて取り付け、かつ、すべての受光器148を反対側のPCBフレーム部142上に並べて取り付ける代わりに、図1図2a、及び図2bで表されているように、PCBフレーム部141,142間での光エミッタ147と受光器148の取付位置を互い違いにすることによって2倍になり得る。
【0046】
クロストーク効果をさらに減少させるため、第1センサユニットは、コリメートバー149(図2a及び図2b参照)をさらに有してよい。コリメートバー149は、光エミッタ147と受光器148の位置と一致する複数の穴(又はスリット)149aを有してよい。この目的のため、コリメートバー149は、PCBフレーム部141,142の各内側端部に沿って配置される。それにより穴の位置は、各対応する光エミッタ147及び受光器148の位置と一致する(図2a及び図2c参照)。従ってコリメート穴149aを備えるコリメートバー149は、各光エミッタ147の各光ビームを個別にコリメートし、かつ、各受光器148の受容角を個別にコリメートするために供される。
【0047】
コリメートされた光ビーム及びコリメートされた受容角の角度分布が、図3a及び図3bに表されている。図3aは、光エミッタ147からの光ビームの強度の角度分布を表している。プロット310からわかるように、規格化された光ビーム強度の角度分布は、角度が0°から外れると急激に減少する。ここで角度は、互いに反対側に配置される光エミッタ147と受光器148の対応対に直接接続する想像線に対して測定される。光エミッタ147の電子部品は、角度幅を可能な限り小さくするようにうまく選ばれなければならない。コリメートバー149の穴149aに光ビームを通過させることによって、この角度幅はさらに狭くなる。従ってコリメートバー149は、隣接する光エミッタ147間でのクロストークが減少し得るように高度にコリメートされた光ビームを生成する。同様に図3bに示されたプロット320からわかるように、各受光器148の受容角もまた、うまく選ばれた電子部品によってさらに狭くなる。その受容角の範囲は、受光器148の前方に直接コリメートバー149のコリメート穴149aを設けることによって、さらに狭くなる。つまり入射角の大きな光ビームが遮断され、クロストークは抑制される。
【0048】
図4からわかるように、PCBフレーム140は、取付フレーム120上に取り付けられる。たとえばPCBフレーム140は、接合されているか、さもなければ側部から取付フレームに固定されてよい。光カーテンを実装するPCBフレーム140が、取付フレーム120の隆起した外側縁部121a,122a,123a上に取り付けられるので、光カーテンは、取付フレーム120によって画定される内部開口領域126から十分に離間して配置される。従って外側フレームの開口領域166を通り抜けて移動する衝突物体10(図4の矢印はこの移動を示唆している)は、光カーテンによって検出され、かつ、取付フレーム120の内部開口領域126を通り抜けて敏感な前面250で検出器200と衝突する前に、物体10は止まり得る。
【0049】
外側フレーム160は、ばね150を介して、PCBフレーム140又は取付フレーム120に弾性的に取り付けられる。外側フレーム160を開放位置―つまり外側フレームが、下に位置するPCBフレーム140上に取り付けられるマイクロスイッチに触れない(すなわち始動させない)位置―に保持するように構成される保持素子156(たとえばねじ)が供されてよい。外側フレーム160は2つの機能を有する。第1の機能は、物体10が外側フレーム160に衝突することで(図4の矢印12‘は外側フレームとの衝突を示している)、外側フレーム160がPCBへ向かって移動し、マイクロスイッチが始動することによる検知機能である。
【0050】
第2の機能は、外側フレームが、下に存在するPCBフレーム140及び検出器200を環境並びに物体の衝突から保護する機能である。特に物体の衝突は、外側フレーム160に取り付けられたばねによって弱められる。
【0051】
図5と共に、上述の保護デバイス100の利用についてさらに論じる。図5は、図4で表されている、エリア検出器200を保護する方法の流れ図を表している。エリア検出器200は、X線分析システム(図4には示されていない)で用いられるX線エリア検出器であってよい。
【0052】
方法の第1段階S10によると、保護デバイス100は、エリア検出器200の前方に取り付けられる。取付は、取付バー130a,130bの両方の上に配置される取付素子132b,134b(図4参照)を介して実行されてよい。図4では、右手側の取付バー130b用の取付素子132b、134bしか見えず、左手側の取付バー130a用の取付素子132a、134aは隠れている。図4で表されているように、保護デバイス100は、エリア検出器200の前方に取り付けられている。その際フレーム状保護デバイス100は、エリア検出器200のわずかな周縁領域しか覆わず、敏感領域250を完全に開いたままにする。従って取り付けられた保護デバイス100は、検出器200の放射線検出に有害な影響を及ぼさない。しかも取付素子132a,132bの設計は、保護デバイス100の全体が、検出器筐体の側部で着脱可能に取り付けられてよい。
【0053】
保護デバイス100が検出器200の前方に取り付けられた後、後続の第2段階S20では、保護デバイスは、エリア検出器100と物体10との間で起こり得る衝突を検出する。検出段階は、検出器の測定中及び/または初期の検出器調整処理中に連続的に実行されてよい。検出は、保護デバイス100の第1センサユニット及び/又は第2センサユニットの信号の読み取り、並びに、第1センサユニット及び/又は第2センサユニットの読み取られた信号と、対応する参照信号(たとえば参照電圧)との比較を含んでよい。第1センサユニット及び/又は第2センサユニットの読み取られた信号が、対応する参照信号値からずれている場合、衝突警告信号及び/又は停止信号が、後続の第3段階S30において生成されてよい。
【0054】
図5に表された方法の一の実施形態によると、生成された停止信号は、エリア検出器を駆動させるように構成された少なくとも1つの駆動ユニットへ供されてよい(段階S40)。停止信号を少なくとも1つの駆動ユニットへ供する段階は、少なくとも1つの駆動ユニットの少なくとも1つの論理ユニットへ信号を供する段階を含んでよい。少なくとも1つの論理ユニットは、少なくとも1つの駆動ユニットを制御し、かつ、停止信号の受信後に少なくとも1つの駆動ユニットを停止するように構成されてよい。
【0055】
方法の段階S40の代わりに又はS40に加えて、物体が検出器200に衝突する可能性があることをユーザーへ警告するため、生成された衝突警告信号がそのユーザーへ供されてよい。ユーザーは続いて検出器200の移動を停止してよい。
【0056】
上述の保護デバイス100は、次のような利点を有する。保護デバイスのフレーム状設計は、容易に製造可能で、かつ、任意のエリア検出器(又は検出器筐体)上で設置可能である。さらに第1センサユニットの光エミッタ147と受光器148のみならず第2センサユニットのマイクロスイッチもすべてPCBフレーム140上に統合されることで、保護デバイス100は、検出器の構成要素が高度に統合されることを示している。従って、検出器の敏感な前面を保護するのにわずかな空間しか必要とせず、かつ、分析システム-たとえばX線分析システム-の機能を損なわない小型の設計が実現される。
図1
図2a
図2b
図2c
図3a
図3b
図4
図5