(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】清掃装置及びそれを備える弁装置
(51)【国際特許分類】
F16T 1/00 20060101AFI20230613BHJP
F16K 51/00 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
F16T1/00 C
F16K51/00 A
(21)【出願番号】P 2019141257
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000133733
【氏名又は名称】株式会社テイエルブイ
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】萩原 一成
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-190836(JP,A)
【文献】特開2017-155852(JP,A)
【文献】特開2017-008967(JP,A)
【文献】特開2017-219060(JP,A)
【文献】特開2019-002491(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/18-31/34
37/00-51/02
F16T 1/00- 1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路中の対象箇所の異物を除去する清掃機構と、
前記清掃機構の動作を判定する判定装置とを備え、
前記清掃機構は、
前記流路を流通する流体に晒される位置に配置され、温度変化によって変形する変形部材と、
前記変形部材の変形によって前記対象箇所に対して進出及び後退して、前記対象箇所の異物を除去する清掃部材とを有し、
前記判定装置は、
前記清掃部材に連動して変位する磁石と、
前記磁石による磁界を検出する磁気センサと、
前記流路中の流体の温度を検出する温度センサと、
前記磁気センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて前記清掃機構の動作を判定する判定部とを有する清掃装置。
【請求項2】
請求項1に記載の清掃装置において、
前記清掃部材は、前記変形部材の変形に応じて変位することによって前記対象箇所としての開口に進入して、前記開口の異物を除去する清掃装置。
【請求項3】
請求項2に記載の清掃装置において、
前記温度センサは、前記流路における前記開口よりも下流側の流体の温度を検出する清掃装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか1つに記載の清掃装置において、
前記清掃部材は、前記流路を流通する流体に晒される位置に配置され、
前記温度センサは、前記清掃部材に設けられている清掃装置。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか1つに記載の清掃装置において、
前記磁気センサは、ホール素子である清掃装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1つに記載の清掃装置において、
前記変形部材は、温度が低くなるほど前記清掃部材を前記対象箇所へ進出させるように変形し、
前記判定部は、前記磁気センサの検出結果に基づいて前記清掃部材が対象箇所まで進出したことを判定した後、前記温度センサの検出温度が上昇した場合に、前記清掃機構が1回の清掃動作を行ったと判定する清掃装置。
【請求項7】
請求項6に記載の清掃装置において、
前記判定部は、前記清掃機構の清掃動作の回数を計数する清掃装置。
【請求項8】
請求項7に記載の清掃装置において、
前記判定部は、所定の単位時間あたりの前記清掃機構の清掃動作の回数が所定の範囲外の場合に警告を行う清掃装置。
【請求項9】
請求項6に記載の清掃装置において、
前記判定部は、前記磁気センサの検出結果に基づいて前記清掃部材が対象箇所まで進出したことを判定した後、前記温度センサの検出温度が所定の判定温度以上とならない場合に警告を行う清掃装置。
【請求項10】
流体が流通する流路が形成されたケーシングと、
前記流路に設けられた、弁孔を有する弁座と、
前記ケーシングに設けられ、前記弁孔を開閉する弁体と、
請求項1~9の何れか1つに記載の清掃装置とを備え、
前記清掃機構は、対象箇所としての前記弁孔の異物を除去する弁装置。
【請求項11】
請求項10に記載の弁装置において、
前記弁体は、前記ケーシング内にドレンが流入する際には前記弁孔を開く一方、前記ケーシング内に蒸気が流入する際には前記弁孔を閉じるように構成され、
前記変形部材は、前記弁孔を通過した流体に晒される位置に配置され、温度が低くなるほど前記清掃部材を前記弁孔へ進出させるように変形する弁装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、清掃装置及びそれを備える弁装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、温度変化によって変形する変形部材によって清掃部材を変位させて、対象箇所の異物を除去する清掃機構を備えた清掃装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、清掃装置を備えた弁装置が開示されている。この弁装置は、流体が流通する流路が形成されたケーシングと、弁孔を有する弁座と、弁孔を開閉する弁体と、弁孔の異物を清掃する清掃装置とを備えている。弁装置は、ケーシング内にドレンが流入する際には開弁して、ドレンの通過を許容する一方、ケーシング内に蒸気が流入する際には閉弁して、蒸気の通過を阻止する。清掃装置は、流体の温度に応じて清掃を行う清掃機構を有している。清掃機構は、流体の流路に配置され、温度変化によって変形する変形部材と、変形部材の変形に応じて変位することによって弁孔の異物を除去する清掃部材とを有している。変形部材は、弁座の下流側であって、弁孔を通過するドレンに晒される位置に配置されている。
【0004】
弁装置が正常に動作しているときには、ドレンが弁孔から断続的に流出し、変形部材は比較的高温になっている。変形部材は、温度が高くなるほど収縮するように構成されている。そのため、弁装置が正常に動作している際には、変形部材は収縮した状態となっており、それにより、清掃部材は、弁孔から後退した位置に位置している。一方、弁孔に異物が付着して、弁孔からのドレンの流出が長期間停止すると、変形部材は比較的低温となり、伸長する。その結果、清掃部材は、弁孔に進入し、弁孔に付着した異物を押しのけて除去する。弁孔の異物が除去されると、弁孔からのドレンの流出が再開され、やがて変形部材は高温になって収縮する。それに応じて、清掃部材は、弁孔から後退する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のような清掃機構は、清掃の要否(例えば、弁孔の詰まり)をセンシングする必要がなく、さらには、清掃部材の駆動に電力を要しないという利点がある。その反面、清掃部材の駆動に外部からの電気信号等を要しないが故に、清掃機構の動作状況を把握することが難しい。
【0007】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、清掃機構の動作状況を容易に把握することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ここに開示された清掃装置は、流路中の対象箇所の異物を除去する清掃機構と、前記清掃機構の動作を判定する判定装置とを備え、前記清掃機構は、前記流路を流通する流体に晒される位置に配置され、温度変化によって変形する変形部材と、前記変形部材の変形によって前記対象箇所に対して進出及び後退して、前記対象箇所の異物を除去する清掃部材とを有し、前記判定装置は、前記清掃部材に連動して変位する磁石と、前記磁石による磁界を検出する磁気センサと、前記流路中の流体の温度を検出する温度センサと、前記磁気センサ及び前記温度センサの検出結果に基づいて前記清掃機構の動作を判定する判定部とを有する。
【0009】
ここに開示されて弁装置は、流体が流通する流路が形成されたケーシングと、前記流路に設けられた、弁孔を有する弁座と、前記ケーシングに設けられ、前記弁孔を開閉する弁体と、前記清掃装置とを備え、前記清掃機構は、対象箇所としての前記弁孔の異物を除去する。
【発明の効果】
【0010】
前記清掃装置によれば、清掃機構の動作状況を容易に把握することができる。
【0011】
前記弁装置によれば、清掃機構の動作状況を容易に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、ドレントラップの概略構成を示す断面図である。
【
図3】
図3は、清掃部材が弁孔へ進入した状態の清掃機構を示す拡大断面図である。
【
図4】
図4は、清掃部材の位置と磁気センサによって検出される磁界との関係を示すグラフである。
【
図5】
図5は、判定部による判定制御のフローチャートである。
【
図6】
図6は、変形例に係る判定装置の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、ドレントラップ100の概略構成を示す断面図である。
【0014】
ドラントラップ100は、流体が流通する流路が形成されたケーシング1と、流路に設けられた、弁孔21を有する弁座2と、ケーシング1に設けられ、弁孔21を開閉する弁体3と、清掃装置4とを備えている。ドレントラップ100は、弁装置の一例である。
【0015】
ドレントラップ100に流入する流体は、ドレン(復水)及び蒸気である。ドレントラップ100は、ドレンの通過を許容する一方、蒸気の流通を阻止する。つまり、弁体3は、ケーシング1内にドレンが流入する際には弁孔21を開く一方、ケーシング1内に蒸気が流入する際には弁孔21を閉じるように構成されている。
【0016】
詳しくは、ケーシング1は、本体11と底12とがボルトで締結された密閉容器である。ケーシング1の内部には、流入路13と、弁室14と、流出路15とが形成されている。流入路13は、弁室14の上部に連通している。流出路15は、弁室14の下部に連通している。流入路13、弁室14及び流出路15によって、流体の流路が形成されている。流体は、流入路13から弁室14に流入し、弁室14を通過して、流出路15から流出する。流入路13の上流端は、ケーシング1から外方に開口し、流入口を形成している。流出路15の下流端は、ケーシング1から外方に開口し、流出口を形成している。
【0017】
弁座2は、ケーシング1内であって、弁室14おける流出路15の開口端に設けられている。弁座2は、弁室14から流出路15の上流端にネジ締結されている。弁座2には、弁室14と流出路15とを連通させる弁孔21が形成されている。弁孔21は、清掃装置4が清掃する対象箇所としての開口の一例である。
【0018】
弁体3は、中空の球形状に形成されている。弁体3は、所謂、フロートである。弁体3は、弁室14に移動自在に収容されている。弁室14には、弁体3が弁室14の底に位置するときに弁体3を支持する複数の受け部19が設けられている。弁体3は、弁室14の底に位置するときに、受け部19と弁座2とによって安定的に支持されている。このとき、弁体3は、弁座2に着座して、弁孔21を閉じる。
【0019】
ドレントラップ100の基本的な動作について説明する。
【0020】
ドレントラップ100は、例えば、蒸気システムの配管に設けられている。ドレントラップ100には、配管を流通する蒸気及びドレンが流入する。弁室14にドレンが少ない場合又はドレンが貯留されていない場合、弁体3は弁座2に着座して、弁孔21を閉じている。ケーシング1にドレンが流入すると、ドレンは、流入路13を通って弁室14に流入する。弁室14のドレンの貯留量が増加していくと、弁体3はドレンによって浮上し、弁座2から離座して弁孔21を開く。これにより、弁室14のドレンは、弁孔21から流出路15へ流出する。弁孔21から流出したドレンは、流出路15を通って、ケーシング1から流出する。
【0021】
一方、ケーシング1に蒸気が流入すると、蒸気は、弁室14のうちドレンの上方の空間に滞留する。弁孔21が開いている間は、弁室14のドレンは流出路15へ流出していく。弁室14の蒸気が増加し、ドレンが減少していくと、やがて弁体3が弁座2に着座して弁孔21を閉じる。その結果、弁室14から流出路15への蒸気の流出が阻止される。
【0022】
その後、弁室14内の蒸気が凝縮したり、ケーシング1内にドレンが流入したりして、弁室14内のドレンの貯留量が増加すると、前述の如く、弁体3が浮上して弁孔21が開き、弁室14からのドレンの流出が再開される。
【0023】
このように、ドレントラップ100は、蒸気の通過を阻止しながら、ドレンを断続的に通過させる。
【0024】
次に、清掃装置4について説明する。清掃装置4は、対象箇所としての弁孔21の異物を除去する清掃機構5と、清掃機構5の動作を判定する判定装置6とを備えている。
【0025】
清掃機構5は、それ自体の温度変化によって変形する変形部材51と、弁孔21の異物を除去する清掃部材52とを有している。
【0026】
変形部材51は、流路を流通する流体に晒される位置に配置されている。変形部材51は、いわゆる温度応動部材である。例えば、変形部材51は、熱膨張係数の異なる2種類の金属を接着した板状のバイメタルで形成されていてもよい。変形部材51は、バイメタルで形成された平板状の線条を捩じり、それを所定の軸心周りに螺旋状に巻いて形成されている。つまり、変形部材51は、全体としてはコイル形状をしている。変形部材51は、低温になるとコイル形状の半径が小さくなってコイル形状の全長が長くなり、高温になると該半径が大きくなって該全長が短くなる。このように、変形部材51は、コイル形状の軸心方向に収縮した、比較的高温の第1状態と該軸心方向に伸長した、比較的低温の第2状態との間で、温度変化に応じて変形する。
【0027】
清掃部材52は、変形部材51の変形によって弁孔21(即ち、流路中の対象箇所)に対して進出及び後退する。清掃部材52は、所定の軸心Xの方向に延びる略円柱の棒状に形成されている。清掃部材52の一端部である第1端部52aは、清掃部材52のうち第1端部52a以外の部分よりも細く形成されている。第1端部52aの外径は、弁孔21の内径よりも小さくなっている。清掃部材52は、変形部材51の変形に応じて変位することによって弁孔21に進入して、弁孔21の異物を除去する。
【0028】
清掃部材52は、軸心Xの方向に摺動自在にガイド55に支持されている。ガイド55は、中空状、例えば、円筒状に形成されている。清掃部材52は、ガイド55のうち円筒の軸心方向の両端の壁部55a,55bを貫通している。清掃部材52の第1端部52aがガイド55から外部に露出していると共に、清掃部材52の第2端部52b(第1端部52aとは反対側の端部)もガイド55から外部に露出している。ガイド55には、ガイド55の内外を連通させる複数の開口55dが形成されている。
【0029】
変形部材51は、ガイド55の内側において、清掃部材52の中間部52cに巻き付けられている。変形部材51のコイル形状の軸心は、清掃部材52の軸心Xと一致している。変形部材51の一端は、清掃部材52が貫通する、ガイド55の壁部55b(ガイド55の円筒の軸心方向の両端の壁部のうち第2端部52bに近い方の壁部)に固定されている。変形部材51の他端は、清掃部材52に設けられた受け部52dに固定されている。これにより、変形部材51が伸長すると、第1端部52aがガイド55から離れる方向に清掃部材52が変位する。一方、変形部材51が収縮すると、第1端部52aがガイド55に近づく方向に清掃部材52が変位する。
【0030】
清掃機構5は、ケーシング1に形成された収容室16に配置されている。収容室16は、弁孔21の軸心の方向に延びるように、流出路15から分岐して形成されている。すなわち、収容室16と流出路15とは連通している。収容室16は、底12に形成された開口と、該開口を塞ぐように底12に取り付けられたキャップ17とで区画されている。清掃部材52の軸心Xが弁孔21の軸心と一致し且つ、第1端部52aが弁孔21の近くに位置し、第2端部52bが弁孔21から離れて位置する状態で、ガイド55が収容室16に収容されている。清掃部材52のうち少なくとも第1端部52aは、流出路15内に位置している。そのため、清掃部材52は、流路を流通する流体に晒される位置(より詳しくは、弁孔21よりも下流側の流体に晒される位置)に配置されている。
【0031】
流出路15を流通する流体の一部は、収容室16に流入する。収容室16に流入した流体は、開口55dを介してガイド55の内部に流入する。つまり、変形部材51は、弁孔21を通過した流体に晒される位置に配置されている。変形部材51の温度は、変形部材51の周囲の流体(即ち、収容室16内部の流体)の温度に応じて変化する。変形部材51は、前述の如く、温度が低くなるほど伸長する。第1端部52aが弁孔21の近くに位置するように清掃機構5が配置されているので、変形部材51は、温度が低くなるほど清掃部材52を弁孔21へ進出させる。
【0032】
尚、清掃部材52は、キャップ17を貫通して、収容室16の外側まで延びている。第2端部52bは、キャップ17の外側に位置している。
【0033】
判定装置6は、清掃部材52に連動して変位する磁石61と、磁石61による磁界を検出する磁気センサ62と、流路中の流体の温度を検出する温度センサ63と、判定部64とを有している。判定部64は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて清掃機構5の動作を判定する。
図2は、判定装置6の機能ブロック図である。判定装置6は、
図2に示すように、記憶部65と表示部66と通信部67とをさらに有していてもよい。
【0034】
キャップ17には、判定装置6のケーシング68が取り付けられている。清掃部材52のうちキャップ17の外側に延びている部分は、ケーシング68内に挿入されている。清掃部材52の第2端部52bは、ケーシング68に形成されたガイド孔69に挿入されている。ガイド孔69は、清掃部材52を軸心Xの方向に案内する。
【0035】
磁石61は、清掃部材52に設けられている。具体的には、磁石61は、清掃部材52のうちガイド孔69に挿入された部分、即ち、第2端部52bに設けられている。
【0036】
磁気センサ62は、ケーシング68のうちガイド孔69の近傍(即ち、磁石61の近傍)に設けられている。磁気センサ62は、清掃部材52の変位に基づく磁石61の磁界の変化を検出する。磁石61は、清掃部材52に連動して変位するので、磁界の変化を検出することは、実質的に清掃部材52の変位を検出することに等しい。磁気センサ62は、ホール素子であり得る。ホール素子である磁気センサ62は、例えば、ホールICであってもよい。
【0037】
温度センサ63は、流路における弁孔21よりも下流側の流体の温度を検出する。具体的には、温度センサ63は、清掃部材52に設けられている。温度センサ63は、流体に晒される状態で清掃部材52に設けられていてもよく、流体に晒されない状態で清掃部材52の内部に組み込まれていてもよい。清掃部材52は流路の流体に晒される位置に配置されているので、清掃部材52の温度は、流体の温度に近い温度となっている。温度センサ63が流体に晒される場合には、温度センサ63は、流体の温度を直接的に検出する。温度センサ63が流体に晒されていない場合には、温度センサ63は、清掃部材52の温度を検出することによって、流体の温度を間接的に検出する。温度センサ63は、清掃部材52の第1端部52aの近傍に設けられている。温度センサ63の配線は、清掃部材52の内部を通って、第2端部52bの端縁から外部へ延び、ケーシング68内の判定部64に接続されている(図示せず)。
【0038】
判定部64は、プロセッサを有していてもよい。判定部64は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果が入力されている。判定部64は、検出結果にA/D変換等の処理を施す。例えば、判定部64は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果を記憶部65に保存する。例えば、判定部64は、清掃機構5の動作として、清掃機構5が清掃動作を行ったか否かを磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて判定する。詳しくは、磁石61が清掃部材52と連動して変位するので、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52の変位を評価する。さらに、温度センサ63は、弁孔21の下流側の流体に晒されている清掃部材52に設けられているので、判定部64は、温度センサ63の検出結果に基づいて弁孔21の下流側の流体の温度を評価する。判定部64は、これらの清掃部材52の変位及び弁孔21の下流側の流体の温度に基づいて、清掃機構5の清掃動作が行われたか否かを判定する。
【0039】
さらには、判定部64は、清掃機構5の清掃動作の回数を計数する。判定部64は、計数結果を表示部66に表示させる。判定部64は、計数結果を記憶部65に保存してもよいし、通信部67を介して外部装置に送信してもよい。判定部64による判定の詳細は、後述する。
【0040】
続いて、清掃機構5の動作について説明する。
図3は、清掃部材52が弁孔21へ進入した状態の清掃機構5を示す拡大断面図である。
【0041】
ドレントラップ100が前述のような動作を継続していくと、ドレントラップ100の内部にスケール等の異物が堆積する場合がある。特に、弁孔21は、流路が絞られており、異物が堆積しやすい。その結果、弁孔21が異物で詰まる場合がある。そのような場合に、清掃機構5が弁孔21の異物を除去する。
【0042】
ドレントラップ100が正常に動作している場合(即ち、弁孔21に異物が詰まっていない場合)は、清掃機構5の清掃部材52は、
図1に示すように、第1端部52aが弁孔21から後退した状態となる位置(以下、この位置を「第1位置P1」と称する)に位置している。例えば、弁体3が弁孔21を開いている場合には、弁孔21から流出路15に流出したドレンの一部が、収容室16に流入する。収容室16に流入したドレンは、開口55dを介してガイド55の内部に流入する。蒸気システムを流通しているドレンは比較的高温であるため、ガイド55に流入したドレンによって変形部材51は加熱される。変形部材51は、高温になると収縮した第1状態となり、清掃部材52を第1位置P1へ移動させる。このとき、清掃部材52の第1端部52aが弁孔21から後退している。すなわち、変形部材51の第1状態は、清掃部材51を弁孔21から後退させた状態である。
【0043】
また、弁体3が弁孔21を閉じている場合には、流出路15における流体の流通が停止しているので、収容室16への高温のドレンの流入も停止している。そのため、収容室16に滞留するドレンは、ケーシング1を介して放熱し得る。しかし、この場合には、流通を阻止された蒸気がケーシング1内に滞留している。この蒸気によって、収容室16のドレンの温度低下が抑制され、変形部材51の伸長も抑制される。
【0044】
蒸気システムが運転を継続している場合には、しばらくすると、ドレントラップ100に高温のドレンが流入してくる。その結果、収容室16に再び、高温のドレンが流入する。そのため、弁孔21の開閉が正常に繰り返されている間は、清掃部材52は、第1位置P1又は第1位置P1の近傍に位置することになる。
【0045】
一方、弁孔21が異物で詰まってしまうと、ケーシング1にドレンが流入しても、ドレンが流通できない。そのため、弁室14にはドレンが滞留し、新たなドレンが流入できなくなる。弁室14及び収容室16を含むケーシング1に滞留するドレンは、ケーシング1を介して外部に放熱する。弁孔21が異物で詰まった場合には、異物を除去しない限り、ドレンの流通は再開されない。その結果、変形部材51は、第1状態よりも低温となり、伸長した第2状態となる。変形部材51は、
図3に示すように、清掃部材52を弁孔21の方へ変位させ、第1端部52aが弁孔21へ進入する。清掃部材52は、弁孔21を弁孔21の下流側から貫通する。第1端部52aが弁孔21へ進入すると、弁孔21を塞ぐ異物を第1端部52aが除去する。第1端部52aが弁孔21を貫通した状態の清掃部材52の位置を第2位置P2と称する。すなわち、変形部材51の第2状態は、第1状態よりも低温であって、清掃部材52を弁孔21に進出させた状態である。
【0046】
このとき、第1端部52aによる貫通だけでは、弁孔21を塞ぐ異物を完全には除去することができない場合もあり得る。しかし、第1端部52aが異物を貫通すると、第1端部52aと残留する異物との間に隙間が形成され、その隙間を通ってドレンが流通するようになる。このドレンの流れによって弁孔21に残留する異物が除去される。こうして、弁孔21の異物が概ね除去される。
【0047】
弁孔21からのドレンの流出が再開されると、ケーシング1への高温のドレンの流入も再開され、やがて収容室16にも高温のドレンが再び流入する。すると、変形部材51が収縮して、清掃部材52が第1位置P1へ移動する。こうして、ドレントラップ100が正常に動作するようになる。
【0048】
このように、清掃機構5は、電気信号による制御及び人的操作なしに、自動で弁孔21を清掃する。
【0049】
清掃機構5のこのような清掃動作において、磁気センサ62によって検出される磁界(以下、単に「検出磁界」ともいう)は、清掃部材52の変位に応じて変化する。
図4は、清掃部材52の位置と磁気センサ62の検出磁界との関係を示すグラフである。詳しくは、
図1,3に示すように、清掃部材52が第1位置P1(
図1)に位置するときに磁石61が磁気センサ62に最も接近し、清掃部材52が第2位置P2(
図3)に位置するときに磁石61が磁気センサ62から最も離れるように、磁気センサ62は配置されている。磁気センサ62の検出磁界は、磁石61と磁気センサ62との距離の2乗に反比例する。そのため、
図4に示すように、清掃部材52が第1位置P1から第2位置P2へ移動するに従って、検出磁界は大幅に減少していく。
【0050】
ここで、磁気センサ62は、清掃部材52が第2位置P2の方へ移動する途中で磁石61の磁界を検出できなくなるのではなく、清掃部材52が第2位置P2に位置するときにも磁石61の磁界を検出する。つまり、磁気センサ62は、清掃部材52の第1位置P1と第2位置P2との間の全区間において磁石61の磁界を検出するように構成されている。このため、検出磁界に基づいて、清掃部材52が第1位置P1と第2位置P2との間のどこに位置するのかを判定することができる。
【0051】
それに加えて、温度センサ63は、流路中の流体の温度を検出している。ドレントラップ100が正常に動作している際には、ケーシング1内の流体の温度は比較的高温となる。一方、弁孔21に異物が詰まった際には、ケーシング1内の流体の温度は比較的低温となる。そのため、温度センサ63によって検出される温度(以下、単に「検出温度」ともいう)に基づいて、流路における流体の流通状態を判定することができる。
【0052】
このとき、温度センサ63は、弁孔21の下流側の流路の流体の温度を検出している。弁孔21の下流側の流体は、弁孔21の開閉及び弁孔21の詰まりの有無の影響を受けやすい。つまり、弁孔21の下流側の流体の温度は、弁孔21の開閉及び弁孔21の詰まりの有無に対して比較的早く反応する。そのため、温度センサ63の検出温度に基づいて、流路における流体の流通状態を素早く判定することができる。
【0053】
判定装置6の判定部64は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて清掃機構5の動作(例えば、清掃機構5が清掃動作を行った否か)を判定している。
【0054】
例えば、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52が弁孔21まで進出したことを判定した後、温度センサ63の検出温度が上昇した場合に、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定する。さらに、判定部64は、清掃機構5の清掃動作の回数を計数する。それに加えて、判定部64は、清掃機構5の不具合を診断している。例えば、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52が弁孔21まで進出したことを判定した後、温度センサ63の検出温度が所定の判定温度以上とならない場合に警告を行う。
【0055】
判定部64の詳しい判定制御について、
図5のフローチャートを参照しながら説明する。
図5は、判定部64による判定制御のフローチャートである。
【0056】
判定部64は、ステップS1において、温度センサ63の検出温度Tが所定の判定温度Trよりも低いか否かを判定する。判定温度Trは、弁孔21に異物が詰まっているか否かを判定できる清掃部材52の温度である。例えば、判定温度Trは、変形部材51が第1状態となるときの環境下における清掃部材52の温度と変形部材51が第2状態となるときの環境下における清掃部材52の温度との間の温度であって、ドレントラップ100が通常の動作をしている際にはそこまで低下しない温度である。検出温度Tが判定温度Trよりも低い場合には、弁孔21に異物が詰まった状態、即ち、弁孔21の清掃が必要な状態であると判定することができる。判定部64は、検出温度Tが判定温度Tr以上である場合には、ステップS1の判定を繰り返し行う。一方、検出温度Tが判定温度Trよりも低い場合には、判定部64はステップS2へ進む。
【0057】
判定部64は、ステップS2において、計時を開始する。つまり、検出温度Tが判定温度Trよりも低くなってからの時間が、判定部64によって計時される。
【0058】
続いて、判定部64は、ステップS3において、磁気センサ62の検出磁界Hが所定の下限値H2よりも小さくなったか否かを判定する。下限値H2は、
図4に示すように、清掃部材52が実質的に第2位置P2に位置すると判定できる値であって、例えば清掃部材52が第2位置P2に位置するときの検出磁界よりも少し大きい値である。つまり、検出磁界Hが下限値H2よりも小さいことは、清掃部材52が実質的に第2位置P2まで進出していることを意味する。検出磁界Hが下限値H2よりも小さい場合には、判定部64は、ステップS6へ進む。一方、検出磁界Hが下限値H2以上である場合には、判定部64は、ステップS4へ進む。
【0059】
ステップS4においては、判定部64は、タイムアウトか否かを判定する。ステップS4では、ステップS2において計時を開始してからの経過時間が所定の第1判定時間を超えた場合にタイムアウトであると判定される。第1判定時間は、検出温度Tが判定温度Trを下回ることによって弁孔21の清掃が必要であると判定されてから清掃部材52が第2位置P2に到達するであろうと想定される時間又はその時間に余裕を持たせた時間に設定されている。弁孔21が詰まると、ケーシング1内への新たなドレン又は蒸気の流入が停止するので、清掃部材52の周囲のドレンの温度はしだいに低下していく。清掃部材52の周囲のドレンの温度の低下速度は、主としてドレントラップ100の放熱性能に依存する。そのため、検出温度Tが判定温度Trを下回ってから清掃部材52が第2位置P2に到達するまで(即ち、変位部材51が第2状態となるまで)の時間は、概ね予測できる。ステップS2で計時を開始してからの経過時間が第1判定時間を過ぎていない場合には、判定部64は、ステップS3に戻る。つまり、ステップS2で計時を開始してから第1判定時間を経過するまでは、判定部64は、検出磁界Hが下限値H2を下回ること、即ち、清掃部材52が第2位置P2に到達することを待つ。
【0060】
尚、ステップS4においてタイムアウトを判定することは、清掃部材52の進出速度を判定することに実質的に等しい。つまり、検出温度Tが判定温度Trのときには、変形部材51の温度も判定温度Trに近い値となっている。そのため、そのときの変形部材51の変形状態は概ね決まっており、清掃部材52の位置も概ね決まっている。つまり、検出温度Tが判定温度Trを下回ってから清掃部材52が第2位置P2に到達するまでの時間を評価することは、検出温度Tが判定温度Trを下回ったときの清掃部材52の位置から第2位置P2まで清掃部材52が変位する際の清掃部材52の進出速度を評価することに実質的に等しい。
【0061】
一方、清掃部材52の第2位置P2への到達を待っている間に経過時間が第1判定時間を超えると、判定部64は、警告を行う(ステップS5)。つまり、検出温度Tが判定温度Trを下回ってから第1判定時間が経過しても清掃部材52が第2位置P2へ到達していないということは、清掃機構5の不具合の可能性がある。清掃機構5の不具合としては、変形部材51の劣化及び清掃部材52の摺動抵抗の増加などが挙げられる。判定部64は、このような状況を警告によってユーザに報知することができる。警告の方法は、様々である。例えば、判定部64は、表示部66の表示態様を警告に相当する態様に変更してもよい。あるいは、表示部66に警告を表示できる場合には、判定部64は、表示部66に警告を表示させてもよい。あるいは、判定部64は、通信部67を介して外部装置へ警告を発してもよい。
【0062】
判定部64は、警告を行った後は、判定制御を終了する。
【0063】
ステップS6においては、判定部64は、検出温度Tが判定温度Tr以上か否かを判定する。判定温度Trは、前述の如く、弁孔21に異物が詰まっているか否かを判定できる温度である。検出温度Tが判定温度Tr以上となることは、弁孔21の異物の詰まりが解消し、弁孔21から流出するドレンが或る程度高温になったことを意味する。つまり、ステップS6においては、弁孔21の詰まりが解消されたか否かが判定される。検出温度Tが判定温度Tr以上の場合には、判定部64は、ステップS9へ進む。一方、検出温度Tが判定温度Trよりも低い場合には、判定部64は、ステップS7へ進む。
【0064】
ステップS7においては、判定部64は、タイムアウトか否かを判定する。ステップS7では、ステップS3において検出磁界Hが下限値H2よりも小さくなってからの経過時間(すなわち、清掃部材52が弁孔21を貫通してからの経過時間であり、この時間を以下、「貫通時間」ともいう)が所定の第2判定時間を超えた場合にタイムアウトであると判定される。第2判定時間は、清掃部材52が弁孔21を貫通してから高温のドレンが弁孔21から再び流出するようになると想定される時間又はその時間に余裕を持たせた時間に設定されている。清掃部材52が弁孔21を貫通して弁孔21からドレンが少しでも流出し始めてから、弁孔21に残留する異物もドレンにより除去され、ケーシング1内に貯留されていたドレンと入れ替わって高温のドレンがケーシング1内に流入し、弁孔21から高温のドレンが流出するまでの時間は、或る程度予測できる。遅くとも高温のドレンが弁孔21から流出し始めるであろうと想定される時間に、第2判定時間が設定されている。
【0065】
貫通時間が第2判定時間を過ぎていない場合には、判定部64は、ステップS6に戻る。つまり、貫通時間が第2判定時間を超えるまでは、判定部64は、検出温度Tが判定温度Tr以上となること、即ち、弁孔21の詰まりが解消することを待つ。
【0066】
一方、弁孔21の詰まりの解消を待っている間に貫通時間が第2判定時間を超えると、判定部64は、警告を行う(ステップS8)。つまり、清掃部材52が弁孔21を貫通してから第2判定時間が過ぎても弁孔21の詰まりが解消しないということは、清掃部材52の第1端部52aの破損等の不具合の可能性や、異物の粘性が大きいために清掃部材52による貫通では異物を適切に除去できないといった可能性がある。判定部64は、このような状況を警告によってユーザに報知することができる。警告の方法は、ステップS5と同様である。
【0067】
判定部64は、警告を行った後は、判定制御を終了する。
【0068】
ステップS9においては、判定部64は、検出磁界Hが所定の上限値H1よりも大きくなったか否かを判定する。上限値H1は、
図4に示すように、清掃部材52が実質的に第1位置P1に位置すると判定できる値であって、例えば清掃部材52が第1位置P1に位置するときの検出磁界よりも少し小さい値である。つまり、検出磁界Hが上限値H1よりも大きいことは、清掃部材52が実質的に第1位置P1まで後退していることを意味する。検出磁界Hが上限値H1よりも大きい場合には、判定部64は、清掃機構5の1回の清掃動作が完了したと判定し、ステップS12へ進む。つまり、このフローチャートの例では、判定部64は、清掃部材52が弁孔21まで進出した後、温度センサ63の検出温度が上昇したことに加えて、清掃部材52が第1位置P1まで後退した場合に、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定する。一方、検出磁界Hが上限値H1以下である場合には、判定部64は、ステップS10へ進む。
【0069】
ステップS10においては、判定部64は、タイムアウトか否かを判定する。ステップS10では、ステップS6において検出温度Tが判定温度Tr以上となってからの経過時間(以下、単に「後退時間」ともいう)が所定の第3判定時間を超えた場合にタイムアウトであると判定される。第3判定時間は、検出温度Tが判定温度Tr以上となることによって弁孔21の詰まりが解消したと判定されてから清掃部材52が第1位置P1に到達すると想定される時間又はその時間に余裕を持たせた時間に設定されている。弁孔21の詰まりが解消されると、流出路15及び収容室16には高温のドレンが流入し、清掃部材52の周囲のドレンの温度は上昇していく。高温のドレンの温度は、ドレントラップ100が組み込まれた蒸気システムに依存して概ね決まっている。また、清掃部材52の温度は、変形部材51の温度と概ね同じである。そのため、遅くてもいつまでに変形部材51が第1状態(すなわち、清掃部材52を第1位置P1まで変位させる状態)となるかは概ね予測できる。後退時間が第3判定時間を過ぎていない場合には、判定部64は、ステップS9に戻る。つまり、後退時間が第3判定時間を超えるまでは、判定部64は、検出磁界Hが上限値H1以上となること、即ち、清掃部材52が第1位置P1に到達することを待つ。
【0070】
尚、ステップS10においてタイムアウトを判定することは、清掃部材52の後退速度を判定することに実質的に等しい。つまり、検出温度Tが判定温度Trのときには、変形部材51の変形状態は概ね決まっており、清掃部材52の位置も概ね決まっている。検出温度Tが判定温度Tr以上となってから清掃部材52が第1位置P1に到達するまでの時間を評価することは、検出温度Tが判定温度Tr以上となったときの清掃部材52の位置から第1位置P1まで清掃部材52が変位する際の後退速度を評価することに実質的に等しい。
【0071】
一方、清掃部材52の第1位置P1への到達を待っている間に第3判定時間を経過すると、判定部64は、警告を行う(ステップS11)。つまり、検出温度Tが判定温度Tr以上となってから第3判定時間が経過しても清掃部材52が第1位置P1へ到達していないということは、変形部材51の劣化及び清掃部材52の摺動抵抗の増加などの不具合又は、清掃部材52が弁孔21に引っ掛かって後退不能となっている等の可能性がある。判定部64は、このような状況を警告によってユーザに報知することができる。警告の方法は、ステップS5と同様である。
【0072】
判定部64は、警告を行った後は、判定制御を終了する。
【0073】
ステップS12においては、判定部64は、清掃機構5の清掃動作の回数を計数する。つまり、判定部64は、清掃機構5の清掃回数を1回増加させる。判定部64は、清掃機構5の清掃回数を記憶部65に保存する。判定部64は、清掃機構5の清掃回数を表示部66に表示させる。また、判定部64は、清掃回数を通信部67を介して外部装置に送信する。
【0074】
続いて、判定部64は、ステップS13において、単位時間あたりの清掃回数、即ち、清掃頻度が所定の判定回数Pより多いか否かを判定する。例えば、判定部64は、過去1週間あたりの清掃回数が判定回数Pよりか多いかを判定する。単位時間あたりの清掃回数が多い場合には、弁孔21が詰まりやすい等の理由が考えられる。清掃部材52の第1端部52aの破損又は清掃部材52の弁孔21への進入量が不十分である等の理由によって、清掃部材52による弁孔21の異物の除去が不十分となって弁孔21が詰まりやすくなる可能性がある。
【0075】
単位時間あたりの清掃回数が判定回数Pより多い場合には、判定部64は、警告を行う(ステップS14)。判定部64は、前述のような状況を警告によってユーザに報知することができる。警告の方法は、ステップS5と同様である。
【0076】
一方、単位時間あたりの清掃回数が判定回数P以下の場合には、判定部64はステップS1へ戻る。
【0077】
このように、判定部64は、ステップS1からの処理を繰り返すことによって、清掃機構5の動作を判定して清掃動作の回数を計数すると共に、清掃機構5の不具合を診断する。ユーザは、表示部66を見れば清掃機構5の清掃回数を知ることができるので、清掃機構5が適切に動作しているか否かを判断することができる。さらには、表示部66に警告が表示されている場合には、ユーザは、清掃機構5の不具合を知ることができ、清掃機構5の点検を行い得る。
【0078】
清掃装置4は、清掃部材52に連動して変位する磁石61と磁石61による磁界を検出する磁気センサ62とを有しているので、磁気センサ62の検出磁界に基づいて清掃機構5の動作状況を容易に把握することができる。それに加えて、清掃装置4は、流路の流体の温度を検出する温度センサ63を有している。流体の温度は、流路の流体の流通状態を反映している。判定部64は、流路の流体の流通状態を考慮しつつ清掃部材52の変位を評価することによって、清掃機構5の動作状況をより厳密に判定することができる。
【0079】
また、磁気センサ62を採用することによって、清掃部材52の変位を清掃部材52と非接触のセンサで実質的に検出することができる。変形部材51が流体に晒されている構成においては、流体が比較的高温の場合、清掃部材52も高温になり得る。磁気センサ62は、清掃部材52と非接触なので、磁気センサ62が高温となることが防止される。つまり、高温の環境下においても、清掃機構5の動作状況を容易に把握することができる。
【0080】
さらに、磁気センサ62がホール素子を含んでいるので、磁石61による磁界の変化を連続的に検出することができ、ひいては、清掃部材52の変位を連続的に検出することができる。つまり、清掃部材52が或る位置(例えば、第1位置P1)から移動したとか、或る位置(例えば、第2位置P2)に到達したとかいったことだけでなく、清掃部材52がどこまで変位したかとか、清掃部材52がどこに位置しているか等を検出することができる。さらには、清掃部材52の変位量や速度も知ることができる。
【0081】
また、磁気センサ62は、清掃部材52が第1位置P1と第2位置P2との間の全区間において磁石61の磁界を検出するように構成されている。そのため、磁気センサ62の検出磁界に基づいて、清掃部材52が第1位置P1と第2位置P2との間のどこに位置するのかを判定することができる。さらには、清掃部材52が第1位置P1又は第2位置P2へ達したか否かを容易に判定することができるので、清掃機構5の清掃動作が完全に行われたか否かを容易に判定することができる。
【0082】
また、清掃部材52のうち対象箇所の異物を除去する第1端部52aと反対側の端部である第2端部52bに磁石61が配置されているので、磁気センサ62を対象箇所とは離れた位置、即ち、対象箇所に影響を与えない位置に配置することができる。つまり、対象箇所は流路中に位置しているので、磁気センサ62を流体の流通に影響を与えない位置に配置することができる。前述の構成の場合、磁気センサ62をケーシング1の外部に配置することができる。
【0083】
さらに、温度センサ63は、弁孔21の下流側の流体の温度を検出するので、弁孔21の清掃前後の流体の温度変化を迅速に検出することができる。つまり、弁孔21に異物が詰まっている場合には、ケーシング1における流体の流通が停止するので、ケーシング1のどの場所においても流体の温度は低温となり得るる。逆に、弁孔21に異物が詰まっていない場合には、ケーシング1において流体が流通しているので、ケーシング1のどの場所においても流体の温度は高温となり得る。そのため、ケーシング1のどの場所で流体の温度を検出しても、弁孔21に異物が詰まっているか否かを判定し得る。その中でも、弁孔21の下流側の流路は、弁孔21が詰まっているか否かの影響を即座に受ける。そのため、弁孔21の下流側の流体の温度も弁孔21が詰まっているか否かの影響を即座に受ける。その結果、弁孔21の下流側の流体の温度を検出することによって、弁孔21の清掃前後の流体の温度変化を迅速に検出することができる。
【0084】
また、弁孔21の下流側の流体に晒されている清掃部材52に温度センサ63を設けることによって、弁孔21の清掃前後の流体の温度変化をさらに迅速に検出することができる。清掃部材52は、弁孔21に対して進出及び後退するので、弁孔21の比較的近傍に配置されている。それに加えて、弁孔21の異物を除去する際には清掃部材52が弁孔21を貫通しているので、清掃部材52は、弁孔21を流通する流体に晒されている。清掃後は弁孔21を流通するドレンの温度が徐々に上昇していく。清掃部材52の温度も弁孔21を流通するドレンの温度に即座に対応して変化する。その結果、弁孔21の清掃前後の流体の温度変化をさらに迅速に検出することができる。
【0085】
以上のように、清掃装置4は、流路中の対象箇所の異物を除去する清掃機構5と、清掃機構5の動作を判定する判定装置6とを備え、清掃機構5は、流路を流通する流体に晒される位置に配置され、温度変化によって変形する変形部材51と、変形部材51の変形によって対象箇所に対して進出及び後退して、対象箇所の異物を除去する清掃部材52とを有し、判定装置6は、清掃部材52に連動して変位する磁石61と、磁石61による磁界を検出する磁気センサ62と、流路中の流体の温度を検出する温度センサ63と、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて清掃機構5の動作を判定する判定部64とを有する。
【0086】
この構成によれば、清掃機構5は、変形部材51がその温度変化によって変形する。清掃部材52は、変形部材51の変形によって変位させられ、対象箇所の異物を除去する。このように、清掃機構5は、人的操作や外部からの電気信号なしに、変形部材51の温度に依存する変形を駆動源として、対象箇所の異物を除去できる。
【0087】
このとき、清掃部材52に連動して磁石61も変位する。この磁石61による磁界を磁気センサ62が検出する。これにより、磁石61による磁界の変化に基づいて清掃部材52の変位を把握することができる。さらに、温度センサ63が流路中の流体の温度を検出しているので、その検出温度に基づいて流体の流通の状況を把握することができる。清掃部材52の変位と流体の温度とを組み合わせることによって、清掃部材52が対象箇所の清掃の必要性に応じて動作したのか、及び、清掃部材52の清掃が適切に完了したのかといった清掃機構5の動作及びその適否をより詳細に判定することができる。このように、清掃装置4は、清掃機構5の動作状況を容易に把握することができる。
【0088】
また、清掃部材52は、変形部材51の変形に応じて変位することによって対象箇所としての開口(例えば、弁孔21)に進入して、開口の異物を除去する。
【0089】
この構成によれば、清掃部材52の清掃対象は、開口である。清掃部材52は、開口に進入することによって開口の異物を除去する。この構成にでは、清掃部材52が異物を押しのけることができずに開口に進入できないとか、清掃部材52が異物を部分的に押しのけることができても残留する異物に引っ掛かって開口から後退できないといった状況が起こるかもしれない。しかし、そのような場合であっても、磁気センサ62が磁石61による磁界を検出することによって清掃動作52の動きを把握することができ、さらには、温度センサ63が流体の温度を検出することによって開口の異物が除去されたか否かを把握することができる。
【0090】
さらに、温度センサ63は、流路における開口よりも下流側の流体の温度を検出する。
【0091】
この構成によれば、温度センサ63は、開口に異物が詰まった影響を即座に受ける場所の流体の温度を検出するので、流体の流通状況を迅速に把握することができる。
【0092】
また、清掃部材52は、流路を流通する流体に晒される位置に配置され、温度センサ63は、清掃部材52に設けられている。
【0093】
この構成によれば、清掃部材52の温度は、流路を流通する流体の温度に応じて変化する。つまり、温度センサ63は、清掃部材52が晒されている流体の温度を直接的又は間接的に検出する。清掃部材52は対象箇所の異物を除去するので、清掃後に流体の流通が再開されたときに清掃部材52は流体の温度の変化を即座に反映する。温度センサ63を清掃部材52に設けることによって、清掃の前後における流体の温度変化を即座に検出することができる。
【0094】
また、磁気センサ62は、ホール素子である。
【0095】
この構成によれば、清掃部材52の変位に基づく磁界の変化を連続的に検出することができる。例えば、磁気センサ62としては、リードスイッチを含むセンサを採用することもできる。しかし、そのようなセンサは、磁石61がリードスイッチをON/OFFさせる位置に存在するか否かしか判定することができない。それに対し、ホール素子は、磁界の大きさをリニアに出力することができる。そのため、ホール素子を含む磁気センサ62は、清掃部材52が或る位置に存在するか否かだけでなく、清掃部材52の連続的な変位を判定することができる。例えば、清掃部材52が対象箇所の方へ変位したけれども、対象箇所に達することなく元の位置へ戻ったとか、清掃部材52が対象箇所へ進出したまま戻っていないとかといった状況を把握することができる。このように、清掃部材52の動作をより詳細に知ることができる。
【0096】
さらに、変形部材51は、温度が低くなるほど清掃部材52を対象箇所へ進出させるように変形し、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52が対象箇所まで進出したことを判定した後、温度センサ63の検出温度が上昇することによって、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定する。
【0097】
この構成によれば、対象箇所の清掃が不要なときには流路の流体の温度が比較的高く、対象箇所の清掃が必要なときには流路の流体の温度が比較的低くなるような環境下で清掃装置4が使用される。流路の流体の温度が低くなると、変形部材51の温度も低下し、それに応じた変形部材51の変形によって清掃部材52が対象箇所へ進出させられる。このような状況において、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52が対象箇所まで進出したことを判定した後、温度センサ63の検出温度が上昇することによって、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定する。清掃部材52が対象箇所まで進出することによって、対象箇所の異物を除去する。しかし、清掃部材52が対象箇所まで進出するとすぐに対象箇所の異物が除去されるとは限らず、異物が部分的に除去されて形成された隙間を流体が流通して異物が洗い流されることによって異物が除去される場合もある。清掃部材52が対象箇所に進出したことだけでは、清掃が適切に完了したかまでは判定することが難しい場合もある。そこで、判定部64は、その後に温度センサ63の検出温度が上昇することをもって清掃機構5の1回の清掃動作を判定する。対象箇所の異物が除去されると流体の流通が再開され、流体の温度が上昇する。判定部64は、流体の温度上昇を検出した場合に、清掃が適切に完了したことを判定する。その結果、判定部64は、清掃機構5の清掃動作を正確に判定することができる。
【0098】
また、判定部64は、清掃機構5の清掃動作の回数を計数する。
【0099】
この構成によれば、判定部64が清掃機構5の清掃動作の回数を計数するので、ユーザは計数結果に基づいて清掃機構5が適切に動作しているか否かを判断することができる。
【0100】
それに加えて、判定部64は、所定の単位時間あたり(例えば、直近の1週間)の清掃機構5の清掃動作の回数が所定の範囲外の場合に警告を行う。
【0101】
この構成によれば、判定部64は、清掃機構5の清掃動作の頻度を監視して、頻度が適切でない場合に警告を行う。例えば、清掃機構5の清掃動作の頻度が多すぎる場合には判定部64が警告を行う。これにより、ユーザは、清掃機構5及び清掃装置4の点検を適切な時期に行うことができる。
【0102】
また、判定部64は、磁気センサ62の検出結果に基づいて清掃部材52が対象箇所まで進出したことを判定した後、温度センサ63の検出温度が所定の判定温度以上とならない場合に警告を行う。
【0103】
この構成によれば、判定部64は、清掃機構5の動作を監視して、清掃部材52が対象箇所まで進出したにもかかわらず流体の温度が適切に上昇しない場合に警告を行う。清掃部材52が対象箇所まで進出したということは、対象箇所の清掃箇所の清掃が必要な状況であり、それに応じて清掃部材52が異物の除去を試みたことを意味する。それにもかかわらず、流体の温度が適切に上昇しないということは、清掃が適切に行われていない。そこで、判定部64は、清掃部材52が対象箇所に進出したにもかかわらず流体の温度が適切に上昇しない場合に警告を行う。これにより、ユーザは、清掃機構5及び清掃装置4の点検を適切な時期に行うことができる。
【0104】
さらに、清掃部材52は、棒状に形成されており、清掃部材52の第1端部52a(一端部)が対象箇所の異物を除去し、清掃部材の第2端部52b(他端部)に磁石61が設けられている。
【0105】
この構成によれば、磁石61が設けられている、清掃部材52の第2端部52bは、対象箇所の異物を除去する第1端部52aと反対側の端部である。そのため、磁気センサ62を対象箇所とは離れた位置、即ち、対象箇所に影響を与えない位置に配置することができる。
【0106】
また、ドレントラップ100(弁装置)は、流体が流通する流入路13、弁室14及び流出路15(流路)が形成されたケーシング1と、流路に設けられた、弁孔21を有する弁座2と、ケーシング1に設けられ、弁孔21を開閉する弁体3と、清掃装置4とを備え、清掃機構5は、対象箇所としての弁孔21の異物を除去する。
【0107】
この構成によれば、変形部材51の温度は、流路を流通する流体の温度に依存して変化する。例えば、弁孔21が異物で詰まると流路における流体の流通が停止する。流路を流体が流通しているときと流体の流通が停止しているときとでは変形部材51の周囲の流体の温度は変化する。変形部材51は、その温度変化を利用して清掃部材52を変位させる。清掃部材52は、変形部材51の変形によって変位させられ、弁孔21の異物を除去する。すなわち、弁孔21が異物で詰まった際の変形部材51の温度変化による変形によって、清掃部材52は弁孔21の方へ変位して異物を除去する。このように、清掃機構5では、変形部材51の温度に依存する変形を駆動源とする。そして、清掃機構5は、弁孔21に異物が詰まっているか否かに応じて清掃部材52を動作させて、清掃部材52に弁孔21の異物を除去させる。
【0108】
このとき、清掃部材52に連動して磁石61も変位する。この磁石61による磁界を磁気センサ62が検出する。これにより、磁石61による磁界の変化に基づいて清掃部材52の変位を把握することができる。その結果、清掃機構5の動作状況を容易に把握することができる。それに加えて、温度センサ63が流路中の流体の温度を検出しているので、その検出温度に基づいて流体の流通の状況を把握することができる。清掃部材52の変位と流体の温度とを組み合わせることによって、清掃部材52が対象箇所の清掃の必要性に応じて動作したのか、及び、清掃部材52の清掃が適切に完了したのかといった清掃機構5の動作及びその適否をより詳細に判定することができる。
【0109】
さらに、弁体3は、ケーシング1内にドレンが流入する際には弁孔21を開く一方、ケーシング1内に蒸気が流入する際には弁孔21を閉じるように構成され、変形部材51は、弁孔21を通過した流体に晒される位置に配置され、温度が低くなるほど清掃部材52を弁孔21へ進出させるように変形する。
【0110】
この構成によれば、ドレントラップ100は、ドレンの流通を許容する一方、蒸気の流通を阻止する。変形部材51は、弁孔21を通過する流体、即ち、ドレンに晒されている。ドレントラップ100に流入する蒸気及びドレンは、比較的高温なので、変形部材51は、ドレンが弁孔21を通過している間は比較的高温に維持される。
【0111】
一方、弁孔21に異物が詰まってドレンの流通が停止すると、変形部材51の周囲温度は、ドレンが流通している場合に比べて低くなり得る。それにより、変形部材51の温度は、ドレンが流通していたときと比べて低くなる。変形部材51は、温度が低くなるほど清掃部材52を弁孔21へ進出させる。その結果、清掃部材52は、やがて弁孔21に進入し、弁孔21の異物を除去する。弁孔21の異物が除去されると、ドレンの弁孔21の通過が再開され、変形部材51は比較的高温となり、清掃部材52を後退させる。
【0112】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0113】
例えば、清掃装置4が適用される弁装置は、ドレントラップ100に限定されるものではない。例えば、フロート式ではないドレントラップに清掃装置4が適用されてもよい。あるいは、ドレンの通過を許容する一方、蒸気の通過を阻止するような弁装置ではなく、流体の流れを制御する弁装置であれば、任意の弁装置に清掃装置4を適用することができる。弁装置にスケール等の異物が堆積することによって流体の流通が停止してしまう弁装置であれば、変形部材51の温度を異物の有無に応じて変化させる、ひいては、変形させることができるので、清掃装置4を採用することができる。
【0114】
また、清掃機構5は、清掃部材52が弁孔21を貫通するようにして弁孔21を清掃するものに限定されない。例えば、弁体のシール面と弁座のシール面との間に進入及び後退するように清掃部材52が配置され、シール面に付着した異物を清掃部材52が清掃するような構成であってもよい。つまり、清掃の対象箇所は弁孔21等の開口に限定されない。対象箇所がどのような場合であっても、変形部材51の温度変化に起因する変形によって清掃部材52が変位させられる構成であれば、清掃部材の変位を磁気センサによって実質的に検出する清掃装置を採用することができる。
【0115】
さらに、変形部材51は、バイメタルに限定されるものではない。例えば、温度に応じて膨張及び収縮する感温液又はワックス等を含む熱応動要素によって変形部材が形成されていてもよい。
【0116】
また、変形部材51は、バイメタルで形成されているとしても、その形状は、前述のようなコイル形状に限定されるものではない。バイメタルの変形によって清掃部材52を変位させることができる限り、バイメタルは任意に形成することができる。
【0117】
また、変形部材51及び清掃部材52は、弁孔21の下流側に配置されているが、これに限られるものではない。変形部材51が流路を流通する流体に晒される限り、変形部材51及び清掃部材52は、任意の場所に配置することができる。変形部材51及び清掃部材52は、弁孔21の上流側に配置されてもよい。例えば、弁孔21の上流側に弁体が存在しない弁装置においては、そのような構成を採用し得る。
【0118】
磁石61の位置は、清掃部材52の第2端部52bに限定されるものではない。磁気センサ62が磁石61の磁界を検出できる限り、磁石61は、清掃部材52の任意の位置(例えば、中間部52c)に配置することができる。さらには、磁石61は、清掃部材52と連動して変位する限り、清掃部材52に直接配置されていなくてもよい。清掃部材52に連動する別の部材が設けられている場合には、その別の部材に磁石61が設けられていてもよい。
【0119】
磁気センサ62も、判定装置6のケーシング68以外の場所(例えば、ドレントラップ100のケーシング1)に配置されていてもよい。つまり、磁石61の磁界を検出できる限り、任意の場所に配置することができる。
【0120】
磁気センサ62は、ホール素子に限定されない。例えば、磁気センサ62は、磁石61によってリードスイッチのON及びOFFが切り替えられるセンサであってもよい。ただし、前述の如く、ホール素子を含む磁気センサ62は、連続的な磁界の変化を検出できる点で好ましい。
【0121】
温度センサ63の位置は、清掃部材52の第1端部52aの近傍に限定されない。例えば、温度センサ63は、清掃部材52の第2端部52b又は中間部52cに設けられていてもよい。温度センサ63は、流路中の流体の温度を検出する限り、清掃部材52以外の場所に設けてもよい。例えば、温度センサ63は、ケーシング1又は清掃機構5のガイド55に設けられてもよい。また、温度センサ63が温度を検出する流体は、弁孔21よりも下流側の流体に限定されず、流路中のどの部分の流体であってもよい。例えば、温度センサ63は、ケーシング1のうち流入路13又は弁室14を区画する部分に設けられてもよい。温度センサ63は、流路中の流体の温度を直接的に検出してもよいし、ケーシング1等の温度を検出することによって流体の温度を間接的に検出してもよい。
【0122】
図5のフローチャートに示す判定制御は、一例に過ぎず、判定部64の制御はこれに限定されるものではない。判定部64が磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて清掃機構5の動作を判定する限り、フローチャート中の任意のステップを省略したり、ステップの順番を変更したり、複数のステップを並行して処理してもよい。また、清掃機構5の清掃回数の計数は、判定部64の制御において必須ではない。例えば、判定部64は、清掃機構5の清掃動作があったことを判定した場合に、その旨を単に記憶部65に記憶、表示部66に表示、又は、通信部67を介して外部装置に送信するだけであってもよい。清掃機構5の不具合の診断は、判定部64の制御において必須ではない。さらに、判定部64は、清掃機構5の不具合を診断する場合、不具合があると判定しても必ずしも警告を行う必要はなく、判定結果を記憶部65に保存したり、通信部67を介して外部装置に送信したりしてもよい。
【0123】
清掃装置4が判定する清掃機構5の動作は、清掃動作に限定されない。清掃装置4は、清掃機構5が単に動作しているか否かを判定してもよい。例えば、判定部64は、変形部材51が変形する程度の温度変化を温度センサ63が検出したときに、磁気センサ62が磁界の変化を検出するか否かを判定することによって、清掃部材52が変位すべき環境下において適切に変位しているかを判定してもよい。あるいは、判定部64は、温度センサ63の検出温度に対応する位置に清掃部材52が位置するか否かを判定することによって、清掃機構5が適切に動作しているか否かを判定してもよい。例えば、判定部64は、温度センサ63の検出温度が清掃部材52が第1位置P1に位置するべきときに実際に清掃部材52が第1位置P1に位置するか否か、又は、温度センサ63の検出温度が清掃部材52が第2位置P2に位置するべきときに実際に清掃部材52が第2位置P2に位置するか否かを判定してもよい。
【0124】
また、前述の例では、判定部64は、清掃部材52が弁孔21まで進出した後、温度センサ63の検出温度が上昇したことに加えて、清掃部材52が第1位置P1まで後退した場合に、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定している。ただし、清掃機構5の1回の清掃動作の判定はこれに限定されない。例えば、判定部64は、清掃部材52が弁孔21まで進出した後、温度センサ63の検出温度が上昇した場合に、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定してもよい。あるいは、判定部64は、清掃部材52が弁孔21まで進出した後、清掃部材52が第1位置P1まで後退した場合に、清掃機構5が1回の清掃動作を行ったと判定してもよい。
【0125】
前述のステップS4では、検出温度Tが判定温度Trを下回ってから清掃部材52が第2位置P2に到達するまでの時間によって実質的に清掃部材52の進出速度の適否が判定されている。しかし、清掃部材52の進出速度の判定は、これに限定されない。例えば、磁気センサ62の検出磁界に基づいて検出される清掃部材52の位置の時間変化から清掃部材52の進出速度を求めてもよい。ステップS10における清掃部材52の後退速度についても同様である。また、清掃部材52の速度又は清掃に要する時間は、清掃部材52の進出と退出とで別々に評価しなくてもよい。つまり、判定部64は、清掃部材52が清掃動作を開始してから清掃動作を完了するまでの平均速度又はそれに要する全体の時間を評価してもよい。
【0126】
ステップS7においては、判定部64は、検出磁界Hが下限値H2よりも小さくなってから検出温度が判定温度Tr以上となるまでの時間を貫通時間とし、貫通時間に基づいてタイムアウトか否かを判定している。しかし、貫通時間は、これに限らず、検出磁界Hが下限値H2よりも小さくなってから検出磁界Hが下限値H2よりも大きくなるまでの時間(すなわち、清掃部材52が第2位置P2に達してから第2位置P2から後退し始めるまでの時間)としてもよい。
【0127】
判定部64は、ステップS3,S9において、検出磁界Hに代えて、清掃部材52の位置に基づいて判定を行ってもよい。つまり、判定部64は、
図4に示す、清掃部材52の位置と検出磁界Hとの関係に基づいて検出磁界Hを清掃部材52の位置に変換した後、清掃部材52の位置が所定の位置に達したか否かを判定してもよい。この場合、清掃部材52の位置と磁気センサ62の検出磁界との関係を示す式等を、予め記憶部65に記憶しておけばよい。
【0128】
また、ステップS13,14では、清掃頻度が判定回数Pより多い場合に警告を行っているが、警告を行う条件はこれに限定されない。判定部64は、清掃頻度が多すぎる場合に警告を行うだけでなく、清掃頻度が少なすぎる場合に警告を行ってもよい。例えば、判定部64は、過去1か月あたりの清掃回数が所定の判定回数よりも少ない場合に警告を行ってもよい。この場合、判定回数は、流体(蒸気)の質(銅の析出量、清缶剤の種類等)に応じて決定することができる。
【0129】
判定装置6は、前述の構成に限定されない。例えば、判定装置6は、表示部66及び/又は通信部67を有していなくてもよい。例えば、判定装置6が表示部66を有していない場合、判定部64は、清掃機構5の動作状況の判定結果を通信部67を介して外部装置へ送信してもよい。判定装置6が通信部67を有していない場合、判定部64は、清掃機構5の動作状況の判定結果を表示部66に表示してもよい。判定装置6が表示部66及び通信部67を有していない場合、判定部64は、清掃機構5の動作状況の判定結果を記憶部65に保存するだけでもよい。その場合、ユーザは、判定装置6の記憶部65にアクセスして、判定結果を取得する。
【0130】
清掃装置4において、清掃機構5と判定装置6とは一体的に形成されていなくてもよい。例えば、判定装置6の一部が、判定装置6の他の部分から分離されていてもよい。
図6は、変形例に係る判定装置206の機能ブロック図である。判定装置206は、取得装置207と外部装置208とを有している。取得装置207は、ドレントラップ100に取り付けられる。取得装置207と外部装置208とは、無線通信を行う。
【0131】
取得装置207は、磁石61と磁気センサ62と温度センサ63とを有している。取得装置207は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果を処理する処理部271と、記憶部272と、外部装置208と通信を行う通信部273とをさらに有している。外部装置208は、取得装置207と通信を行う通信部281と、記憶部282と、表示部283と、判定部284を有している。
【0132】
処理部271は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果にA/D変換等の処理を施す。処理部271は、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果(A/D変換後)を記憶部272に保存したり、記憶部272に保存された検出結果を通信部272を介して外部装置208に送信したりする。
【0133】
判定部284は、前記判定部64と同様に機能する。すなわち、判定部284は、通信部281を介して取得装置207から受信した、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果に基づいて清掃機構5の動作を判定する。判定部284の清掃機構5の動作の判定内容は、判定部64と同様である。判定部284は、清掃機構5の清掃動作の回数又は警告等を表示する必要がある場合には、前述の表示部66に代えて表示部283に表示する。判定部284は、取得装置207から受信した、磁気センサ62及び温度センサ63の検出結果並びに清掃機構5の動作の判定結果等を記憶部282に保存する。
【0134】
このように、判定装置206のうち取得装置207は、磁石61による磁界及び流路の流体の温度を検出し、その検出結果を保存するだけで、検出結果に基づく清掃機構5の動作の判定は行わなくてもよい。外部装置208が清掃機構5の動作の判定を行う。尚、取得装置207と外部装置208との通信は、無線であっても有線であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
以上説明したように、ここに開示された技術は、清掃装置及びそれを備えた弁装置について有用である。
【符号の説明】
【0136】
100 ドレントラップ(弁装置)
1 ケーシング
2 弁座
21 弁孔(対象箇所、開口)
3 弁体
4 清掃装置
5 清掃機構
51 変形部材
52 清掃部材
52a 第1端部(一端部)
52b 第2端部(他端部)
6,206 判定装置
61 磁石
62 磁気センサ
63 温度センサ
64,284 判定部