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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】排水処理設備及び排水処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/04 20230101AFI20230613BHJP
   C02F 1/42 20230101ALI20230613BHJP
【FI】
C02F1/04 C
C02F1/04 G
C02F1/42 E
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019150078
(22)【出願日】2019-08-20
(65)【公開番号】P2021030115
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000132105
【氏名又は名称】株式会社スイレイ
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100083068
【弁理士】
【氏名又は名称】竹中 一宣
(74)【代理人】
【識別番号】100165489
【弁理士】
【氏名又は名称】榊原 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(72)【発明者】
【氏名】加納 壮浩
(72)【発明者】
【氏名】石黒 鈴男
【審査官】高橋 成典
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-98243(JP,A)
【文献】特開2001-104940(JP,A)
【文献】特開平5-115857(JP,A)
【文献】特開2003-211149(JP,A)
【文献】特開2005-329380(JP,A)
【文献】米国特許第04613412(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/02 - 1/18
1/42
B01B 1/00 - 1/08
B01D 1/00 - 8/00
C25D 9/00 - 9/12
13/00 - 21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理材をシャワー洗浄して、前記被処理材に付着した表面処理溶液を回収すると共に、前記表面処理溶液が希釈された表面処理希釈液を排出する回収槽と、
前記表面処理希釈液を濃縮し、濃縮液と蒸留水とに分離する減圧濃縮装置を有する第1排水処理部と、を備え、
前記第1排水処理部は、前記蒸留水の一部から冷却水を生成し、前記冷却水の一部を前記減圧濃縮装置に返送すると共に、前記蒸留水の残りと前記冷却水の残りとを混合させた洗浄水を前記回収槽に返送し、
前記回収槽は、前記洗浄水によって前記被処理材をシャワー洗浄する、
排水処理設備。
【請求項2】
前記第1排水処理部は、
前記蒸留水を冷却して、前記冷却水を生成するチラー装置と、
前記蒸留水と前記冷却水とを混合して前記洗浄水を生成し、前記洗浄水を前記回収槽に返送する洗浄用貯留槽と、
前記蒸留水を貯留し、前記蒸留水を前記洗浄用貯留槽と前記チラー装置とに分配する蒸留水槽と、を有する、
請求項1に記載の排水処理設備。
【請求項3】
前記表面処理溶液を回収された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した一次洗浄排水を排出する一次洗浄槽と、
前記一次洗浄槽により洗浄された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した二次洗浄排水を排出する二次洗浄槽と、
前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水から第1処理水を生成し、前記第1処理水を前記一次洗浄槽と前記二次洗浄槽に返送する第2排水処理部と、を備える、
請求項1又は2に記載の排水処理設備。
【請求項4】
前記第2排水処理部は、
前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水とを貯留する排水貯留槽と、
イオン交換により、前記排水貯留槽に貯留された前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水から、前記第1処理水を生成する第1イオン交換部と、を有する、
請求項3に記載の排水処理設備。
【請求項5】
前記第1イオン交換部は、カートリッジ又はボンベに収納されたイオン交換樹脂を有する、
請求項4に記載の排水処理設備。
【請求項6】
前記表面処理溶液を回収された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した一次洗浄排水を排出する一次洗浄槽を備え、
前記減圧濃縮装置は、前記表面処理希釈液と前記一次洗浄排水とを濃縮し、前記濃縮液と前記蒸留水とに分離し、
前記第1排水処理部は、イオン交換により、前記洗浄水の一部から第2処理水を生成する第2イオン交換部を有し、前記第2処理水を前記一次洗浄槽に返送する、
請求項1又は2に記載の排水処理設備。
【請求項7】
前記第2イオン交換部は、カートリッジ又はボンベに収納されたイオン交換樹脂を有する、
請求項6に記載の排水処理設備。
【請求項8】
被処理材をシャワー洗浄して回収された表面処理溶液が希釈された表面処理希釈液を、回収槽から排出する工程と、
排出された前記表面処理希釈液を減圧濃縮装置によって減圧濃縮して、濃縮液と蒸留水とに分離する工程と、
前記蒸留水の一部を冷却して冷却水を生成して、前記冷却水の一部を前記減圧濃縮装置に返送する工程と、
前記蒸留水の残りと前記冷却水の残りとから洗浄水を生成して、前記洗浄水を前記回収槽に返送する工程と、を含む、
排水処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理設備及び排水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
めっき等の被処理材への表面処理において生じる排水は、シアン、クロム、重金属イオン等の環境負荷の高い物質を含むため、種々の法令、環境基準に対応して、適切に処理されなければならない。
【0003】
例えば、航空機用部品への表面処理(カドミウムめっき等)において使用される表面処理溶液には、シアン化カドミウム(Cd(CN))、シアン化ナトリウム(NaCN)等が含まれている。カドミウムとシアンは、規制物質における有害物質(健康項目)であり、それぞれの排水基準は、カドミウム:0.1mg/L以下、シアン:1mg/L以下となっている。これらの排水基準を満たす排水処理技術を開発することは、容易ではない。また、排水基準を満たすために、排水処理コストの増加が見込まれる。
【0004】
一般に、カドミウムめっきの排水処理では、めっき槽中のめっき液は、外部の専門業者によって引き取られ、処分される。また、回収槽において回収されためっき回収液は、めっき液の濃度の1/4~1/3程度まで濃縮された後、外部の専門業者によって引き取られ、処分される。さらに、被処理材を最初に水洗する一次洗浄処理において排出される第1水洗水は、アルカリ塩素法によりシアンを処理され、pHの調整処理、高分子凝集剤の添加による凝集処理等を経て、放流される。一次洗浄処理の後に被処理材を水洗する二次洗浄処理において排出される第2水洗水は、イオン交換設備により各種イオンを除去され、再利用される。第1水洗水と第2水洗水の処理、イオン交換設備において使用されるイオン交換樹脂の再生は、めっき処理を行う工場内で行われる。
【0005】
以上のような排水処理において、凝集処理により除去されたスラッジは廃棄業者によって引き取られ、スラッジのほとんどが埋め立て処理されるので、発生するスラッジの量を減らすことが望まれる。そこで、特許文献1では、重金属を高濃度に含む廃液を前処理(例えば、アルカリ塩素法によるシアンの処理)した後、前処理した廃液から、菌体を含有する重金属吸着組成物によって重金属を除き、重金属を回収している。前処理した廃液から重金属を除くことによって、発生するスラッジの量を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2004/022728号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1の廃液処理では、酸の添加、キレート剤の添加等によって、菌体に吸着した重金属を回収し、重金属吸着組成物を再生している。したがって、重金属の回収と重金属吸着組成物の再生を行う設備を維持管理するために、多くの費用と労力が必要となる。また、特許文献1は、回収された重金属の処理について開示していない。さらに、特許文献1では、水が再利用されていないので、水を使用する費用も多く掛かる。
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、低コストで、水の利用効率が高い排水処理設備及び排水処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の排水処理設備は、
被処理材をシャワー洗浄して、前記被処理材に付着した表面処理溶液を回収すると共に、前記表面処理溶液が希釈された表面処理希釈液を排出する回収槽と、
前記表面処理希釈液を濃縮し、濃縮液と蒸留水とに分離する減圧濃縮装置を有する第1排水処理部と、を備え、
前記第1排水処理部は、前記蒸留水の一部から冷却水を生成し、前記冷却水の一部を前記減圧濃縮装置に返送すると共に、前記蒸留水の残りと前記冷却水の残りとを混合させた洗浄水を前記回収槽に返送し、
前記回収槽は、前記洗浄水によって前記被処理材をシャワー洗浄する。
【0010】
前記第1排水処理部は、
前記蒸留水を冷却して、前記冷却水を生成するチラー装置と、
前記蒸留水と前記冷却水とを混合して前記洗浄水を生成し、前記洗浄水を前記回収槽に返送する洗浄用貯留槽と、
前記蒸留水を貯留し、前記蒸留水を前記洗浄用貯留槽と前記チラー装置とに分配する蒸留水槽と、を有してもよい。
【0011】
前記表面処理溶液を回収された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した一次洗浄排水を排出する一次洗浄槽と、
前記一次洗浄槽により洗浄された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した二次洗浄排水を排出する二次洗浄槽と、
前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水から第1処理水を生成し、前記第1処理水を前記一次洗浄槽と前記二次洗浄槽に返送する第2排水処理部と、を備えてもよい。
【0012】
前記第2排水処理部は、
前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水とを貯留する排水貯留槽と、
イオン交換により、前記排水貯留槽に貯留された前記一次洗浄排水と前記二次洗浄排水から、前記第1処理水を生成する第1イオン交換部と、を有してもよい。
【0013】
前記第1イオン交換部は、カートリッジ又はボンベに収納されたイオン交換樹脂を有してもよい。
【0014】
前記表面処理溶液を回収された前記被処理材を洗浄し、前記被処理材を洗浄した一次洗浄排水を排出する一次洗浄槽を備え、
前記減圧濃縮装置は、前記表面処理希釈液と前記一次洗浄排水とを濃縮し、前記濃縮液と前記蒸留水とに分離し、
前記第1排水処理部は、イオン交換により、前記洗浄水の一部から第2処理水を生成する第2イオン交換部を有し、前記第2処理水を前記一次洗浄槽に返送してもよい。
【0015】
前記第2イオン交換部は、カートリッジ又はボンベに収納されたイオン交換樹脂を有してもよい。
【0016】
上記目的を達成するため、本発明の排水処理方法は、
被処理材をシャワー洗浄して回収された表面処理溶液が希釈された表面処理希釈液を、回収槽から排出する工程と、
排出された前記表面処理希釈液を減圧濃縮装置によって減圧濃縮して、濃縮液と蒸留水とに分離する工程と、
前記蒸留水の一部を冷却して冷却水を生成して、前記冷却水の一部を前記減圧濃縮装置に返送する工程と、
前記蒸留水の残りと前記冷却水の残りとから洗浄水を生成して、前記洗浄水を前記回収槽に返送する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、低コストで、水の利用効率が高い排水処理設備及び排水処理方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態1に係る排水処理設備の構成を示す模式図である。
図2】本発明の実施の形態1に係る第1排水処理部の構成を示す模式図である。
図3】本発明の実施の形態1に係る第2排水処理部の構成を示す模式図である。
図4】本発明の実施の形態1に係る表面処理希釈液の排水処理方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の実施の形態2に係る排水処理設備の構成を示す模式図である。
図6】本発明の実施の形態2に係る第1排水処理部の構成を示す模式図である。
図7】本発明の実施の形態2に係る表面処理希釈液と一次洗浄排水の排水処理方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る排水処理設備について、図面を参照して説明する。
【0020】
(実施の形態1)
図1図4を参照して、本発明の実施の形態1に係る排水処理設備10を説明する。
排水処理設備10は、図1に示すように、めっき槽20により表面処理が施された被処理材から表面処理溶液を回収する回収槽100と、回収槽100により表面処理溶液を回収された被処理材を洗浄する一次洗浄槽200と、一次洗浄槽200により洗浄された被処理材を洗浄する二次洗浄槽300と、を備える。さらに、排水処理設備10は、回収槽100から排出される表面処理希釈液を処理する第1排水処理部400と、一次洗浄槽200から排出される一次洗浄排水と二次洗浄槽300から排出される二次洗浄排水とを処理する第2排水処理部500と、を備える。排水処理設備10を構成する槽、装置等は、配管によって接続されており、各種の水は配管を介して移送される。
【0021】
本実施の形態において、被処理材は、例えば、めっき槽20においてカドミウムめっき処理を施された後、めっき槽20から回収槽100、一次洗浄槽200、二次洗浄槽300の順に搬送される。めっき槽20は、カドミウム、シアン化ナトリウム等を含む表面処理溶液(めっき液)を貯留している。
【0022】
回収槽100は、搬送された被処理材に洗浄水を噴射する、図示しないシャワー洗浄部を有する。回収槽100に搬送された被処理材は、シャワー洗浄部からの洗浄水によって、シャワー洗浄される。これにより、被処理材に付着している表面処理溶液が回収槽100に回収される。回収槽100は、表面処理溶液が洗浄水により希釈された表面処理希釈液を、第1排水処理部400に配管を介して排出する。
【0023】
一次洗浄槽200は、貯留した洗浄水によって、回収槽100によりシャワー洗浄され、表面処理溶液を回収された被処理材を洗浄する。一次洗浄槽200は、被処理材を洗浄した洗浄水を、一次洗浄排水として第2排水処理部500に排出する。
【0024】
二次洗浄槽300は、回収槽100と同様に、図示しないシャワー洗浄部を有する。二次洗浄槽300は、シャワー洗浄部から噴射する洗浄水によって、一次洗浄槽200により洗浄された被処理材をシャワー洗浄する。二次洗浄槽300は、被処理材を洗浄した洗浄水を、二次洗浄排水として第2排水処理部500に排出する。
【0025】
次に、第1排水処理部400を説明する。第1排水処理部400は、回収槽100から排出された表面処理希釈液を濃縮し、濃縮液と蒸留水とに分離した後、蒸留水の一部から冷却水を生成し、冷却水の一部を後述する減圧濃縮装置420に返送すると共に、蒸留水の残りと冷却水の残りとを混合させた洗浄水を回収槽100に返送する。
第1排水処理部400は、図2に示すように、第1排水貯留槽410と、減圧濃縮装置420と、濃縮液貯留槽430と、蒸留水槽440と、冷却用貯留槽450と、チラー装置460と、洗浄用貯留槽470と、を有する。
【0026】
第1排水貯留槽410は、回収槽100から排出された表面処理希釈液を貯留する。また、第1排水貯留槽410は、表面処理希釈液を減圧濃縮装置420に配管を介して移送する。
【0027】
減圧濃縮装置420は、第1排水貯留槽410から移送された表面処理希釈液を濃縮して、表面処理希釈液を濃縮した濃縮液と蒸留水とに分離する。減圧濃縮装置420は、濃縮液を濃縮液貯留槽430に排出する。濃縮液貯留槽430は、減圧濃縮装置420が濃縮した濃縮液を貯留する。貯留された濃縮液は、例えば、外部の専門業者によって引き取られ、有価金属等を回収される。
【0028】
蒸留水槽440は、減圧濃縮装置420が排出した蒸留水を貯留し、蒸留水を30℃~50℃まで放冷する。また、蒸留水槽440は、放冷した蒸留水の一部を冷却用貯留槽450(チラー装置460)に分配し、放冷した蒸留水の残りを洗浄用貯留槽470に分配する。
【0029】
冷却用貯留槽450は、分配された蒸留水の一部をチラー装置460に移送する。一方、冷却用貯留槽450には、後述するように、チラー装置460により生成された冷却水のうちの減圧濃縮装置420に移送される冷却水の残りが返送される。これにより、冷却用貯留槽450では、分配された蒸留水の一部とチラー装置460により生成された冷却水が混合され、蒸留水槽440の蒸留水の水温よりも低い水温の冷却水(例えば、30℃未満の冷却水)が生成される。なお、実質的には、分配された蒸留水の一部とチラー装置460から返送された冷却水を混合された冷却水が、冷却用貯留槽450に貯留され、チラー装置460に移送され、冷却される。
さらに、冷却用貯留槽450は、蒸留水槽440の蒸留水の水温よりも低い水温の冷却水(すなわち、チラー装置460により生成された冷却水の残り)を洗浄用貯留槽470に移送する。
【0030】
チラー装置460は、移送された蒸留水を冷却して冷却水を生成する。チラー装置460は、生成された冷却水の一部を、図示しないクーリングタワーを介して減圧濃縮装置420に移送する。減圧濃縮装置420に移送された冷却水は、減圧濃縮装置420の冷却水として、再利用される。また、チラー装置460は、生成された冷却水の残りを冷却用貯留槽450に返送する。
【0031】
洗浄用貯留槽470は、移送された蒸留水の残りと冷却水の残りとを混合して、洗浄水を生成する。洗浄用貯留槽470は、生成された洗浄水を回収槽100に返送する。本実施の形態では、移送された蒸留水と冷却水とを混合する比率を調整することにより、洗浄水の水温を調整できる。回収槽100は、返送された洗浄水を被処理材のシャワー洗浄に使用する。
【0032】
以上のように、第1排水処理部400は、減圧濃縮装置420の減圧濃縮により、表面処理希釈液から蒸留水を分離し、蒸留水の一部を冷却して生成された冷却水の一部を減圧濃縮装置420の冷却水として再利用する。また、第1排水処理部400では、蒸留水の残りと冷却水の残りとを混合して水温を調整された洗浄水が、回収槽100におけるシャワー洗浄の洗浄水として再利用される。したがって、第1排水処理部400は、表面処理希釈液を少ない処理設備又は処理工程によって処理して、水を効率よく再利用できる。これにより、第1排水処理部400は、設備の維持管理に掛かる費用と労力を抑制でき、低コストを実現できる。また、処理工程が少ないので、第1排水処理部400は水の利用効率を高くできる。
【0033】
さらに、第1排水処理部400は、蒸留水を蒸留水槽440に一旦貯留して、冷却用貯留槽450と洗浄用貯留槽470とに分配する。また、第1排水処理部400は、冷却水を冷却用貯留槽450に一旦貯留して洗浄用貯留槽470に移送する。したがって、第1排水処理部400は、表面処理希釈液の排水量、冷却水と洗浄水の使用量等に対応して、処理された水を効率よく再利用できる。
【0034】
次に、第2排水処理部500を説明する。第2排水処理部500は、一次洗浄槽200が排出した一次洗浄排水と二次洗浄槽300が排出した二次洗浄排水とから第1処理水を生成し、生成された第1処理水を一次洗浄槽200と二次洗浄槽300とに返送する。第2排水処理部500は、図3に示すように、第2排水貯留槽510と、第1イオン交換部520と、第1処理水貯留槽530と、を有する。
【0035】
第2排水貯留槽510は、一次洗浄槽200が排出した一次洗浄排水と二次洗浄槽300が排出した二次洗浄排水とを貯留する。第2排水貯留槽510では、一次洗浄排水と二次洗浄排水が混合される。また、第2排水貯留槽510は、一次洗浄排水と二次洗浄排水とを混合された排水(以下、混合排水と記載)を、第1イオン交換部520に配管を介して移送する。
【0036】
第1イオン交換部520は、混合排水から純水を生成する。第1イオン交換部520は、生成した純水を、第1処理水として第1処理水貯留槽530に移送する。第1イオン交換部520は、フィルタ522と、活性炭塔524と、カチオン交換塔526と、アニオン交換塔527、528と、を有する。
【0037】
フィルタ522は、混合排水に含まれる濁質を除去する。活性炭塔524は、活性炭により、混合排水に含まれる有機物を除去する。カチオン交換塔526とアニオン交換塔527、528は、それぞれ、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂を有し、混合排水に含まれる各種イオンを除去する。
【0038】
カチオン交換塔526とアニオン交換塔527、528のイオン交換樹脂は、それぞれ、カートリッジ、ボンベ等に収納されていることが好ましい。これにより、第1イオン交換部520における保守が容易になり、排水処理設備10の停止期間を短くできる。例えば、イオン交換樹脂の再生を外部の専門業者に委託して、迅速にイオン交換樹脂を再生できる。
【0039】
第1処理水貯留槽530は、第1処理水(すなわち純水)を貯留する。また、第1処理水貯留槽530は、第1処理水を、図示しない熱交換器とクーリングタワーとを介して、一次洗浄槽200と二次洗浄槽300に返送する。一次洗浄槽200と二次洗浄槽300に返送された第1処理水は、被処理材を洗浄する洗浄水として、再利用される。
【0040】
表面処理希釈液と一次洗浄排水と二次洗浄排水の排水処理方法を説明する。
【0041】
まず、表面処理希釈液の排水処理方法を説明する。図4は、回収槽100から排出された表面処理希釈液の排水処理方法を示すフローチャートである。
ステップS10においては、被処理材をシャワー洗浄して回収された表面処理溶液が希釈された表面処理希釈液を、回収槽100から排出する。回収槽100から排出された表面処理溶液は、第1排水貯留槽410を介して減圧濃縮装置420に移送される。
【0042】
ステップS20においては、減圧濃縮装置420によって表面処理希釈液を減圧濃縮して、濃縮液と蒸留水とに分離し、濃縮液を濃縮液貯留槽430に排出し、蒸留水を蒸留水槽440に排出する。ここで、濃縮液は、例えば、外部の専門業者によって引き取られ、有価金属等を回収される。また、蒸留水は、蒸留水槽440に貯留され、30℃~50℃まで放冷される。
【0043】
ステップS30においては、蒸留水槽440に貯留された蒸留水の一部を、冷却用貯留槽450を介してチラー装置460に分配し、チラー装置460によって蒸留水の一部から冷却水を生成する。そして、生成された冷却水の一部を、減圧濃縮装置420の冷却水として、減圧濃縮装置420に返送する。
【0044】
ステップS40においては、蒸留水槽440に貯留された蒸留水の残りを洗浄用貯留槽470に分配し、生成された冷却水の残りを、冷却用貯留槽450を介して洗浄用貯留槽470に移送する。そして、蒸留水の残りと冷却水の残りとから洗浄水を生成して、生成された洗浄水を回収槽100に返送する。回収槽100に返送された洗浄水は、被処理材のシャワー洗浄に使用される。本実施の形態では、移送された蒸留水と冷却水とを混合する比率を調整することにより、洗浄水の水温を調整できる。
以上の工程により、回収槽100から排出された表面処理希釈液を処理できる。
【0045】
一次洗浄排水と二次洗浄排水の排水処理方法では、まず、第2排水貯留槽510に貯留されている混合排水(一次洗浄排水と二次洗浄排水とを混合された排水)を、第1イオン交換部520に移送し、第1イオン交換部520によって混合排水から第1処理水(純水)を生成する。第1イオン交換部520では、移送された混合排水を、フィルタ522、活性炭塔524、カチオン交換塔526、アニオン交換塔527、528の順に通過させ、第1処理水(純水)を生成する。
最後に、生成された第1処理水を、被処理材を洗浄する洗浄水として、一次洗浄槽200と二次洗浄槽300とに返送する。以上により、一次洗浄排水と二次洗浄排水とを処理できる。
【0046】
以上のように、排水処理設備10は、減圧濃縮とイオン交換により、表面処理希釈液と一次洗浄排水と二次洗浄排水とを処理して水を再利用しているので、化学薬品の使用を抑制し、コストを削減できる。また、排水処理設備10は、表面処理希釈液を少ない処理設備又は処理工程によって処理して、水を効率よく再利用できる。これにより、第1排水処理部400は、設備の維持管理に掛かる費用と労力を抑制して低コストを実現でき、水の利用効率を高くできる。さらに、排水処理設備10は、表面処理希釈液の排水量、冷却水と洗浄水の使用量等に対応して、処理された水を効率よく再利用できる。
また、イオン交換樹脂がカートリッジ、ボンベ等に収納されているので、第1イオン交換部520の保守が容易になり、排水処理設備10の停止期間を短くできる。イオン交換樹脂の再生を外部の専門業者に委託して、迅速にイオン交換樹脂を再生できる。
【0047】
(実施の形態2)
実施の形態1では、第1排水処理部400は表面処理希釈液を処理しているが、第1排水処理部400は表面処理希釈液と一次洗浄排水とを処理してもよい。また、第1排水処理部400は、第2処理水を生成して、生成された第2処理水を一次洗浄槽200に返送してもよい。
【0048】
本実施の形態の排水処理設備10は、図5に示すように、回収槽100と一次洗浄槽200と二次洗浄槽300と第1排水処理部400と第2排水処理部500とを備える。本実施の形態のめっき槽20と回収槽100と二次洗浄槽300は、実施の形態1と同様であるので、本実施の形態の一次洗浄槽200と第1排水処理部400と第2排水処理部500について、説明する。
【0049】
本実施の形態の一次洗浄槽200は、実施の形態1の一次洗浄槽200と同様に、貯留した洗浄水によって表面処理溶液を回収された被処理材を洗浄する。本実施の形態の一次洗浄槽200は、被処理材を洗浄した洗浄水を、一次洗浄排水として第1排水処理部400に排出する。
【0050】
本実施の形態の第1排水処理部400は、図5に示すように、回収槽100から排出された表面処理希釈液と一次洗浄槽200から排出された一次洗浄排水とを処理する。具体的には、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを濃縮し、濃縮液と蒸留水とに分離した後、蒸留水の一部から冷却水を生成し、生成された冷却水の一部を減圧濃縮装置420に返送する。さらに、蒸留水の残りと冷却水の残りとを混合させた洗浄水の一部を回収槽100に返送し、洗浄水の残りから第2処理水を生成して、生成された第2処理水を一次洗浄槽200に返送する。
【0051】
本実施の形態の第1排水処理部400は、図6に示すように、第1排水貯留槽410と減圧濃縮装置420と濃縮液貯留槽430と蒸留水槽440と冷却用貯留槽450とチラー装置460と洗浄用貯留槽470と第2イオン交換部480と第2処理水貯留槽490とを有する。本実施の形態の濃縮液貯留槽430と蒸留水槽440と冷却用貯留槽450とチラー装置460は、実施の形態1と同様であるので、第1排水貯留槽410と減圧濃縮装置420と洗浄用貯留槽470と第2イオン交換部480と第2処理水貯留槽490について説明する。
【0052】
本実施の形態の第1排水貯留槽410は、回収槽100から排出された表面処理希釈液と一次洗浄槽200から排出された一次洗浄排水を貯留する。また、第1排水貯留槽410は、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを混合された排水を減圧濃縮装置420に移送する。減圧濃縮装置420は、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを混合された排水を、減圧濃縮し、濃縮液と蒸留水とに分離する。減圧濃縮装置420は、濃縮液を濃縮液貯留槽430に移送し、蒸留水を蒸留水槽440に移送する。実施の形態1と同様に、冷却水が、冷却用貯留槽450とチラー装置460により、蒸留水の一部から生成される。生成された冷却水の一部は、減圧濃縮装置420に返送される。
【0053】
本実施の形態の洗浄用貯留槽470は、蒸留水槽440から移送された蒸留水(蒸留水の残り)と冷却用貯留槽450から移送された冷却水(冷却水の残り)とを混合して、洗浄水を生成する。また、洗浄用貯留槽470は、生成された洗浄水の一部を回収槽100に返送する。本実施の形態においても、移送された蒸留水と冷却水とを混合する比率を調整することにより、洗浄水の水温を調整できる。回収槽100は、返送された洗浄水を被処理材のシャワー洗浄に使用する。
一方、洗浄用貯留槽470は、生成された洗浄水の残りを第2イオン交換部480に移送する。
【0054】
第2イオン交換部480は、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを塔内に有する混床式イオン交換塔である。第2イオン交換部480は、イオン交換により、生成された洗浄水の残りから純水を生成する。また、第2イオン交換部480は、生成された純水を、第2処理水として第2処理水貯留槽490に移送する。
【0055】
第2イオン交換部480のイオン交換樹脂は、カートリッジ、ボンベ等に収納されていることが好ましい。これにより、第2イオン交換部480における保守が容易になり、排水処理設備10の停止期間を短くできる。例えば、イオン交換樹脂の再生を外部の専門業者に委託して、迅速にイオン交換樹脂を再生できる。
【0056】
第2処理水貯留槽490は第2処理水(純水)を貯留する。また、第2処理水貯留槽490は第2処理水を一次洗浄槽200に返送する。一次洗浄槽200に返送された第2処理水は、被処理材を洗浄する洗浄水として再利用される。
【0057】
以上のように、本実施の形態の第1排水処理部400は、実施の形態1の第1排水処理部400と同様に、蒸留水の一部を冷却して生成した冷却水の一部を減圧濃縮装置420の冷却水として再利用する。また、蒸留水の残りと冷却水の残りとを混合して水温を調整された洗浄水の一部が、回収槽100におけるシャワー洗浄の洗浄水として再利用される。さらに、洗浄水の残りから第2処理水が生成され、生成された第2処理水が一次洗浄槽200の洗浄水として再利用される。したがって、本実施の形態の第1排水処理部400は、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを、少ない処理設備又は処理工程によって処理して、水を効率よく再利用できる。また、第1排水処理部400は、実施の形態1と同様に、低コストを実現でき、水の利用効率を高くできる。さらに、第1排水処理部400は、表面処理希釈液と一次洗浄排水の排水量、冷却水と洗浄水の使用量等に対応して、処理された水を効率よく再利用できる。
【0058】
本実施の形態の第2排水処理部500は、二次洗浄槽300が排出した二次洗浄排水から第1処理水を生成し、生成した第1処理水を二次洗浄槽300に返送する。本実施の形態の第2排水処理部500のその他の構成は、実施の形態1の第2排水処理部500と同様である。
【0059】
次に、表面処理希釈液と一次洗浄排水の排水処理方法を説明する。なお、二次洗浄排水の排水処理方法は、実施の形態1と同様である。
【0060】
図7は、表面処理希釈液と一次洗浄排水の排水処理方法を示すフローチャートである。
ステップS15においては、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを排出する。具体的には、回収槽100から表面処理希釈液を第1排水貯留槽410に排出し、一次洗浄槽200から一次洗浄排水を第1排水貯留槽410に排出する。表面処理希釈液と一次洗浄排水は、第1排水貯留槽410において混合され、減圧濃縮装置420に移送される。
【0061】
ステップS25においては、減圧濃縮装置420によって、表面処理希釈液と一次洗浄排水とを混合された排水を減圧濃縮して、濃縮液と蒸留水とに分離する。そして、濃縮液を濃縮液貯留槽430に排出し、蒸留水を蒸留水槽440に排出する。ここで、濃縮液は、例えば、外部の専門業者によって引き取られ、有価金属等を回収される。また、蒸留水は、蒸留水槽440に貯留され、30℃~50℃まで放冷される。
【0062】
ステップS30においては、実施の形態1のステップS30と同様に、蒸留水の一部から冷却水を生成する。そして、生成された冷却水の一部を、減圧濃縮装置420の冷却水として、減圧濃縮装置420に返送する。
【0063】
ステップS45においては、蒸留水槽440に貯留された蒸留水の残りを洗浄用貯留槽470に分配し、生成された冷却水の残りを洗浄用貯留槽470に移送する。そして、蒸留水の残りと冷却水の残りとから洗浄水を生成し、生成された洗浄水の一部を回収槽100に返送する。回収槽100に返送された洗浄水は、被処理材のシャワー洗浄に使用される。本実施の形態では、移送された蒸留水と冷却水とを混合する比率を調整することにより、洗浄水の水温を調整できる。また、生成された洗浄水の残りを第2イオン交換部480に移送する。
【0064】
ステップS50においては、第2イオン交換部480によって、洗浄水の残りから第2処理水(純水)を生成し、生成された第2処理水を一次洗浄槽200に返送する。一次洗浄槽200に返送された第2処理水は、被処理材の洗浄に使用される。
以上の工程により、表面処理希釈液と一次洗浄水とを処理できる。
【0065】
以上のように、本実施の形態の排水処理設備10は、減圧濃縮とイオン交換により、表面処理希釈液と一次洗浄排水と二次洗浄排水とを処理して水を再利用しているので、化学薬品の使用を抑制し、コストを削減できる。また、本実施の形態の排水処理設備10は、表面処理希釈液と一次洗浄排水を少ない処理設備又は処理工程によって処理して、水を効率よく再利用できる。さらに、本実施の形態の排水処理設備10は、実施の形態1と同様に、表面処理希釈液と一次洗浄排水の排水量、冷却水と洗浄水の使用量等に対応して、処理された水を効率よく再利用できる。
【0066】
以上、本発明における複数の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0067】
例えば、実施の形態1の排水処理設備10は、一次洗浄排水と二次洗浄排水とを処理する第2排水処理部500に代えて、一次洗浄排水を処理する第2排水処理部500と二次洗浄排水を処理する第2排水処理部500の2つの第2排水処理部500を備えてもよい。
【0068】
また、実施の形態1の排水処理設備10は、一次洗浄排水と二次洗浄排水とを処理する第2排水処理部500に代えて、一次洗浄排水を処理する実施の形態2の第1排水処理部400と、二次洗浄排水を処理する第2排水処理部500とを備えてもよい。
【符号の説明】
【0069】
10 排水処理設備
20 めっき槽
100 回収槽
200 一次洗浄槽
300 二次洗浄槽
400 第1排水処理部
410 第1排水貯留槽
420 減圧濃縮装置
430 濃縮液貯留槽
440 蒸留水槽
450 冷却用貯留槽
460 チラー装置
470 洗浄用貯留槽
480 第2イオン交換部
490 第2処理水貯留槽
500 第2排水処理部
510 第2排水貯留槽
520 第1イオン交換部
522 フィルタ
524 活性炭塔
526 カチオン交換塔
527、528 アニオン交換塔
530 第1処理水貯留槽
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7