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特許7294680グレーデッド-マルチシェル構造ベースの量子ドット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】グレーデッド-マルチシェル構造ベースの量子ドット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/88 20060101AFI20230613BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20230613BHJP
   B82Y 20/00 20110101ALI20230613BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20230613BHJP
   B82Y 40/00 20110101ALI20230613BHJP
   C01B 25/08 20060101ALN20230613BHJP
【FI】
C09K11/88
G02B5/20
B82Y20/00
B82Y30/00
B82Y40/00
C01B25/08 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020552867
(86)(22)【出願日】2020-05-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-27
(86)【国際出願番号】 KR2020006683
(87)【国際公開番号】W WO2021215576
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2020-09-29
(31)【優先権主張番号】10-2020-0049814
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】512268332
【氏名又は名称】インダストリー-ユニバーシティー コオペレーション ファウンデーション ハンヤン ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】弁理士法人エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク ジャグン
(72)【発明者】
【氏名】イ スンジェ
(72)【発明者】
【氏名】イ ジウン
(72)【発明者】
【氏名】イ チャンジン
【審査官】山本 吾一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/084135(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/131402(WO,A1)
【文献】特表2019-519455(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチレイヤ構造を有するコア(core)と、前記コアを取り囲む内部シェル(inter-shell)と、前記内部シェルを取り囲む外部シェル(outer-shell)とを含み、
前記コアは、同じバンドギャップ及び構造を有する内部コア及び外部コアを含み、
前記内部コアはInmn化合物を含み、前記外部コアはInop化合物を含み、m、n、o及びpは、0.30<m<0.40、0.25<n<0.35、0.15<o<0.20、0.125<p<0.175及びm>o、n>pを満足する正の数であり、
前記内部シェルは、Zn a Se b /Zn c Se d /Zn e Se f マルチレイヤを含む第1内部シェルと、Zn g Se h i /Zn j Se k l マルチレイヤを含む第2内部シェルとを含み、
前記aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、前記a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たし、
前記gは0.1~0.5であり、前記hは0.005~0.020であり、前記iは0.5~2.0であり、前記jは0.1~0.5であり、前記kは0.0025~0.010であり、前記lは1.0~4.0であり、前記g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たす、量子ドット。
【請求項2】
前記内部シェルは、前記コアから前記外部シェル側に行くほど、化合物の組成比が段階的に変化することを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項3】
前記第1内部シェルは、前記コアから前記外部シェル側に行くほど、II族元素の濃度は増加し、第1VI族元素の濃度は減少し、
前記第2内部シェルは、前記コアから前記外部シェル側に行くほど、前記第1VI族元素の濃度は減少し、第2VI族元素の濃度は増加することを特徴とする、請求項に記載の量子ドット。
【請求項4】
前記内部シェルは、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項5】
前記コアは、III-V族化合物、II-VI族化合物、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、前記外部シェルはII-VI族化合物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の量子ドット。
【請求項6】
内部コアを形成後、形成された前記内部コアを取り囲む外部コアを形成して、マルチレイヤ構造を有するコア(core)を形成するステップと、
前記コアを取り囲む内部シェル(inter-shell)を形成するステップと、
前記内部シェルを取り囲む外部シェル(outer-shell)を形成するステップとを含み、
前記コアは、同じバンドギャップ及び構造を有する前記内部コア及び前記外部コアを含み、
前記内部コアはInmn化合物を含み、前記外部コアはInop化合物を含み、m、n、o及びpは、0.30<m<0.40、0.25<n<0.35、0.15<o<0.20、0.125<p<0.175及びm>o、n>pを満足する正の数であり、
前記内部シェルは前記コアを取り囲む第1シェルレイヤ、第2シェルレイヤ、第3シェルレイヤ、第4シェルレイヤおよび第5シェルレイヤを含み、
前記第1シェルレイヤはZn a Se b 化合物を含み、前記第2シェルレイヤはZn c Se d 化合物を含み、前記第3シェルレイヤはZn e Se f 化合物を含み、前記第4シェルレイヤはZn g Se h i 化合物を含み、前記第5シェルレイヤはZn j Se k l 化合物を含み、
前記aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、前記a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たし、
前記gは0.1~0.5であり、前記hは0.005~0.020であり、前記iは0.5~2.0であり、前記jは0.1~0.5であり、前記kは0.0025~0.010であり、前記lは1.0~4.0であり、前記g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たすことを特徴とする、量子ドットの製造方法。
【請求項7】
前記内部シェルを形成するステップは、
120℃~330℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、前記コアを取り囲む第1内部シェルを形成するステップと、
260℃~320℃の温度範囲内で前記成長温度を段階的に増加させながら、前記第1内部シェルを取り囲む第2内部シェルを形成するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項8】
前記第1内部シェルを形成するステップは、
120℃~210℃の温度範囲内で前記成長温度を段階的に増加させながら、前記コアを取り囲む前記第1シェルレイヤを形成するステップと、
240℃~270℃の温度範囲内で前記成長温度を段階的に増加させながら、前記第1シェルレイヤを取り囲む前記第2シェルレイヤを形成するステップと、
300℃~330℃の温度範囲内で前記成長温度を段階的に増加させながら、前記第2シェルレイヤを取り囲む前記第3シェルレイヤを形成するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の量子ドットの製造方法。
【請求項9】
前記第2内部シェルを形成するステップは、
260℃~300℃の温度範囲内で前記成長温度を段階的に増加させながら、前記第1内部シェルを取り囲む前記第4シェルレイヤを形成するステップと、
320℃の前記成長温度で前記第4シェルレイヤを取り囲む前記第5シェルレイヤを形成するステップとをさらに含むことを特徴とする、請求項に記載の量子ドットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、量子ドット及びその製造方法に係り、より詳細には、グレーデッド-マルチシェル構造ベースの量子ドット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
量子ドット(quantum dot)は、コロイド性半導体結晶体であって、数ナノメートル~数十ナノメートルの大きさを有し、高い色純度、色再現性及び光安定性などに利点がある。
【0003】
具体的には、量子ドットは、半導体結晶の粒子サイズを調節することによって様々な範囲の発光波長を制御することができ、溶液工程が可能であるので製造工程が簡単であるという利点があり、次世代発光物質として脚光を浴びている。
【0004】
例えば、量子ドットは、コア(core)と、コアを取り囲むシェル(shell)とを含むことができ、ここで、コアは、InP(indium phosphide)化合物をベースとして形成され、シェルは、ZnS化合物をベースとして形成され得る。
【0005】
しかし、上述したInP/ZnSベースの量子ドットは、InPコアとZnSシェルとの間の格子定数(lattice constant)の差による格子不一致(lattice mismatch)を誘発してしまい、広い半値幅特性及び不均一なシェルエピタキシャル成長(shell epitaxial growth)特性が発生するという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、グレーデッド構造ベースの内部シェルをコアと外部シェルとの間に形成することで、格子不一致(lattice mismatch)を最小化し、量子閉じ込め効果(quantum confinement)を極大化することができる量子ドット及びその製造方法を提供しようとする。
【0007】
また、本発明は、グレーデッド昇温成長プロセス(graded heating-up growth process)を介して内部シェルを形成することで、熱膨張係数(thermal expansion coefficient;TEC)の不一致を最小化して光学的特性を向上させることができる量子ドット及びその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一実施例に係る量子ドットは、コア(core)と、コアを取り囲む内部シェル(inter-shell)と、内部シェルを取り囲む外部シェル(outer-shell)とを含み、ここで、内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、化合物の濃度が段階的に変化することができる。
【0009】
内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、化合物の組成比が段階的に変化することができる。
【0010】
内部シェルは、マルチレイヤ(multi-layer)を有する第1内部シェルと、マルチレイヤを有する第2内部シェルとを含むことができる。
【0011】
第1内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、II族元素の濃度は増加し、第1VI族元素の濃度は減少し、第2内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、第1VI族元素の濃度は減少し、第2VI族元素の濃度は増加することができる。
【0012】
第1内部シェルは、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤを含み、ここで、aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たすことができる。
【0013】
第2内部シェルは、ZnSe/ZnSeマルチレイヤを含み、ここで、gは0.1~0.5であり、hは0.005~0.020であり、iは0.5~2.0であり、jは0.1~0.5であり、kは0.0025~0.010であり、lは1.0~4.0であり、g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たすことができる。
【0014】
内部シェルは、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0015】
コアは、III-V族化合物、II-VI族化合物、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、外部シェルはII-VI族化合物を含むことができる。
【0016】
本発明の一実施例に係る量子ドットの製造方法は、コア(core)を形成するステップと、コアを取り囲む内部シェル(inter-shell)を形成するステップと、内部シェルを取り囲む外部シェル(outer-shell)を形成するステップとを含み、ここで、内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、化合物の濃度が段階的に変化することができる。
【0017】
内部シェルを形成するステップは、120℃~330℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1内部シェルを形成するステップと、260℃~320℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1内部シェルを取り囲む第2内部シェルを形成するステップとをさらに含むことができる。
【0018】
第1内部シェルを形成するステップは、120℃~210℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1シェルレイヤを形成するステップと、240℃~270℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1シェルレイヤを取り囲む第2シェルレイヤを形成するステップと、300℃~330℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第2シェルレイヤを取り囲む第3シェルレイヤを形成するステップとをさらに含むことができる。
【0019】
第1シェルレイヤはZnSe化合物を含み、第2シェルレイヤはZnSe化合物を含み、第3シェルレイヤはZnSe化合物を含み、ここで、aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たすことができる。
【0020】
第2内部シェルを形成するステップは、260℃~300℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1内部シェルを取り囲む第4シェルレイヤを形成するステップと、320℃の成長温度で第4シェルレイヤを取り囲む第5シェルレイヤを形成するステップとをさらに含むことができる。
【0021】
第4シェルレイヤはZnSe化合物を含み、第5シェルレイヤはZnSe化合物を含み、ここで、gは0.1~0.5であり、hは0.005~0.020であり、iは0.5~2.0であり、jは0.1~0.5であり、kは0.0025~0.010であり、lは1.0~4.0であり、g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たすことができる。
【発明の効果】
【0022】
一実施例によれば、本発明は、グレーデッド構造ベースの内部シェルをコアと外部シェルとの間に形成することで、格子不一致(lattice mismatch)を最小化し、量子閉じ込め効果(quantum confinement)を極大化することができる。
【0023】
一実施例によれば、本発明は、グレーデッド昇温成長プロセス(graded heating-up growth process)を介して内部シェルを形成することで、熱膨張係数(thermal expansion coefficient;TEC)の不一致を最小化することができ、これを通じて光学的特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施例に係る量子ドットを説明するための図である。
図2】本発明の一実施例に係る量子ドットの具現例を説明するための図である。
図3】一実施例に係る量子ドットのバンドギャップエネルギーダイヤグラムを説明するための図である。
図4】一実施例に係る量子ドットのバンドギャップエネルギー特性を説明するための図である。
図5A-E】一実施例に係るレッド発光量子ドットの光学的特性を説明するための図である。
図6A-E】一実施例に係るグリーン発光量子ドットの光学的特性を説明するための図である。
図7】一実施例に係る量子ドットの製造方法を説明するための図である。
図8】一実施例に係るレッド発光量子ドットの製造方法についての例示を説明するための図である。
図9】一実施例に係るグリーン発光量子ドットの製造方法についての例示を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本文書の様々な実施例が添付の図面を参照して記載される。
【0026】
実施例及びこれに使用された用語は、本文書に記載された技術を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、当該実施例の様々な変更、均等物、及び/又は代替物を含むものと理解しなければならない。
【0027】
以下で様々な実施例を説明するにおいて、関連する公知の機能又は構成についての具体的な説明が発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。
【0028】
そして、後述する用語は、様々な実施例における機能を考慮して定義された用語であって、これは、使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わり得る。したがって、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて行われるべきである。
【0029】
図面の説明に関連して、類似の構成要素に対しては類似の参照符号が使用され得る。
【0030】
単数の表現は、文脈上明らかに別の意味を示すものでない限り、複数の表現を含むことができる。
【0031】
本文書において、「A又はB」又は「A及び/又はBのうちの少なくとも1つ」などの表現は、共に並べられた項目の全ての可能な組み合わせを含むことができる。
【0032】
「第1」、「第2」、「第一」、又は「第二」などの表現は、当該構成要素を、順序又は重要度に関係なく修飾することができ、ある構成要素を他の構成要素と区分するために用いられるだけで、当該構成要素を限定しない。
【0033】
ある(例:第1)構成要素が他の(例:第2)構成要素に「(機能的に又は通信的に)連結されて」いるとか、「接続されて」いると言及された際には、前記ある構成要素が前記他の構成要素に直接的に連結されるか又は別の構成要素(例:第3構成要素)を介して連結され得る。
【0034】
本明細書において、「~するように構成された(又は設定された)(configured to)」は、状況によって、例えば、ハードウェア的又はソフトウェア的に「~に適した」、「~する能力を有する」、「~するように変更された」、「~するように作られた」、「~ができる、」又は「~するように設計された」と相互互換的に(interchangeably)使用され得る。
【0035】
ある状況では、「~するように構成された装置」という表現は、その装置が他の装置又は部品と共に「~できる」ことを意味し得る。
【0036】
例えば、文句「A、B、及びCを行うように構成された(又は設定された)プロセッサ」は、当該動作を行うための専用プロセッサ(例:エンベデッドプロセッサ)、又はメモリ装置に格納された1つ以上のソフトウェアプログラムを実行することによって、当該動作を行うことができる汎用プロセッサ(例:CPU又はapplication processor)を意味し得る。
【0037】
また、「又は」という用語は、排他的論理和「exclusive or」よりは、包含的論理和「inclusive or」を意味する。
【0038】
すなわち、別に言及しない限り、又は文脈から明らかでない限り、「xがa又はbを用いる」という表現は、包含的な自然順列(natural inclusive permutations)のいずれか1つを意味する。
【0039】
上述した具体的な実施例において、発明に含まれる構成要素は、提示された具体的な実施例によって単数又は複数で表現された。
【0040】
しかし、単数又は複数の表現は、説明の便宜のために提示した状況に適するように選択されたものであって、上述した実施例が単数又は複数の構成要素に制限されるものではなく、複数で表現された構成要素であっても単数で構成されてもよく、単数で表現された構成要素であっても複数で構成されてもよい。
【0041】
一方、発明の説明では具体的な実施例について説明したが、様々な実施例が内包する技術的思想の範囲から逸脱しない限り、様々な変形が可能であることは勿論である。
【0042】
したがって、本発明の範囲は、説明された実施例に限定されて定められてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなく、この特許請求の範囲と均等なものによって定められなければならない。
【0043】
図1は、本発明の一実施例に係る量子ドットを説明するための図である。
【0044】
図1を参照すると、一実施例に係る量子ドット100は、グレーデッド構造ベースの内部シェルをコアと外部シェルとの間に形成することで、格子不一致を最小化し、量子閉じ込め効果を極大化することができる。
【0045】
また、量子ドット100は、グレーデッド昇温成長プロセスを介して内部シェルを形成することで、熱膨張係数(TEC)の不一致を最小化することができ、これを通じて光学的特性を向上させることができる。
【0046】
例えば、量子ドット100は、レッド(red)発光量子ドット、またはグリーン(green)発光量子ドットであってもよい。
【0047】
以下で説明する「族(Group)」は、元素周期表の族を意味することができる。
【0048】
また、「I族」は、IA族及びIB族を含むことができ、I族元素の例として、Li、Na、K、Ru、及びCsを含むことができるが、これに限定されない。
【0049】
「II族」は、IIA族及びIIB族を含むことができ、II族元素の例として、Cd、Zn、Hg及びMgを含むことができるが、これに限定されない。
【0050】
「III族」は、IIIA族及びIIIB族を含むことができ、III族元素の例として、Al、In、Ga及びTlを含むことができるが、これに限定されない。
【0051】
「IV族」は、IVA族及びIVB族を含むことができ、IV族元素の例として、Si、Ge及びSnを含むことができるが、これに限定されない。
【0052】
「V族」は、VA族を含むことができ、V族元素の例として、N、P、As、Sb及びBiを含むことができるが、これに限定されない。
【0053】
「VI族」は、VIA族を含むことができ、VI族元素の例として、S、Se及びTeを含むことができるが、これに限定されない。
【0054】
具体的には、量子ドット100は、コア(core)110と、コア110を取り囲む内部シェル(inter-shell)120,130と、内部シェル120,130を取り囲む外部シェル(outer-shell)140とを含むことができ、ここで、内部シェル120,130は、コア110から外部シェル140側に行くほど、化合物の濃度が段階的に変化することができる。すなわち、内部シェル120,130は、グレーデッド(graded)構造で形成され得る。
【0055】
コア110は、III-V族化合物、II-VI族化合物、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含み、外部シェル140はII-VI族化合物を含むことができる。
【0056】
例えば、III-V族化合物は、GaN、GaP、GaAs、GaSb、AlN、AlP、AlAs、AlSb、InN、InP、InAs、InSb及びこれらの組み合わせから選択される二元素化合物と、GaNP、GaNAs、GaNSb、GaPAs、GaPSb、AlNP、AlNAs、AlNSb、AlPAs、AlPSb、InGaP、InNP、InNAs、InNSb、InPAs、InPSb及びこれらの組み合わせから選択される三元素化合物と、GaAlNP、GaAlNAs、GaAlNSb、GaAlPAs、GaAlPSb、GaInNP、GaInNAs、GaInNSb、GaInPAs、GaInPSb、InAlNP、InAlNAs、InAlNSb、InAlPAs、InAlPSb及びこれらの組み合わせから選択される四元素化合物とのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0057】
また、II-VI族化合物は、CdSe、CdTe、ZnO、ZnS、ZnSe、ZnTe、HgS、HgSe、HgTe、MgSe、MgS及びこれらの組み合わせから選択される二元素化合物と、CdSeS、CdSeTe、CdSTe、ZnSeS、ZnSeTe、ZnSTe、HgSeS、HgSeTe、HgSTe、CdZnS、CdZnSe、CdZnTe、CdHgS、CdHgSe、CdHgTe、HgZnS、HgZnSe、HgZnTe、MgZnSe、MgZnS及びこれらの組み合わせから選択される三元素化合物と、HgZnTeS、CdZnSeS、CdZnSeTe、CdZnSTe、CdHgSeS、CdHgSeTe、CdHgSTe、HgZnSeS、HgZnSeTe、HgZnSTe及びこれらの組み合わせから選択される四元素化合物とのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0058】
より具体的な例を挙げると、コア110は、InP化合物、InGaP化合物、InAlP化合物、InBP化合物、及びGaP化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0059】
好ましくは、コア110はInP化合物を含み、外部シェル140はZnS化合物を含むことができる。
【0060】
一方、コア110は、内部コア(inner-core)及び外部コア(outer-core)を含むマルチレイヤ(multi-layer)で形成されることもできる。
【0061】
例えば、外部コアは、内部コアと同じバンドギャップ及び構造で具現されてもよく、内部コアに比べて相対的に薄い厚さで具現されてもよい。
【0062】
より具体的には、量子ドット100がレッド発光量子ドットである場合、単一のコアで所望のレッド波長(620~630nm)のバンドギャップエネルギーに該当するコアサイズを形成する場合に、オストワルド熟成(ostwald ripening)現象によって、非常に広いコアサイズ分布(FWHMの増加)をもたらすことがある。
【0063】
反面、本発明は、コア110をマルチレイヤコアプロセスを介して、オストワルド熟成現象を抑制して、所望のレッド波長(620~630nm)のバンドギャップエネルギーに該当するコアサイズを、均一なサイズ分布を維持しながら形成(調節)することができる。
【0064】
例えば、内部コアはIn化合物を含み、外部コアはIn化合物を含むことができ、ここで、mは0.30~0.40であり、nは0.25~0.35であり、oは0.15~0.20であり、pは0.125~0.175であり、m~pは、m>o、n>pの条件を満たすことができる。
【0065】
内部シェル120,130は、II-III-VI族化合物、III-III-II-VI族化合物、及びこれらの組み合わせのうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0066】
また、内部シェル120,130は、マルチレイヤ(multi-layer)を有する第1内部シェル120、及びマルチレイヤを有する第2内部シェル130を含むことができる。
【0067】
例えば、内部シェル120,130は、ZnSe化合物、ZnSeS化合物、ZnTe化合物、ZnTeSe化合物、ZnTeSeS化合物、及びZnTeS化合物のうちの少なくとも1つを含むことができる。好ましくは、第1内部シェル120はZnSe化合物を含み、第2内部シェル130はZnSeS化合物を含むことができる。
【0068】
内部シェル120,130は、コア110から外部シェル140側に行くほど、化合物の組成比が段階的に変化することができる。
【0069】
すなわち、第1内部シェル120及び第2内部シェル130は、外部シェルの格子不一致(lattice mismatch)を最小化できる組成比で設計され得、これにより、格子不一致を最小化して、均一なエピタキシャル成長(epitaxial growth)を介した光学特性の改善(量子収率の増加及び半値幅の減少)を期待することができる。
【0070】
具体的には、第1内部シェル120は、コア110から外部シェル140側に行くほど、II族元素の濃度は増加し、第1VI族元素の濃度は減少することができる。また、第2内部シェル130は、コア110から外部シェル140側に行くほど、第1VI族元素の濃度は減少し、第2VI族元素の濃度は増加することができる。
【0071】
好ましくは、第1内部シェル120及び第2内部シェル130を構成するII族元素は、Zn元素であり、第1VI族元素はSe元素であり、第2VI族元素はS元素であってもよい。
【0072】
図2は、本発明の一実施例に係る量子ドットの具現例を説明するための図である。
【0073】
言い換えると、図2は、図1を通じて説明した一実施例に係る量子ドットに対する例示を説明する図であって、以降、図2を通じて説明する内容において、図1を通じて説明した内容と重複する説明は省略する。
【0074】
図2を参照すると、一実施例に係る量子ドットは、InPコア210と、InPコア210を取り囲む第1内部シェル220と、第1内部シェルを取り囲む第2内部シェル230と、第2内部シェルを取り囲むZnS外部シェル240とを含むことができる。
【0075】
また、第1内部シェル220及び第2内部シェル230は、InPコア210からZnS外部シェル240側に行くほど、化合物の濃度が段階的に変化することができ、第1内部シェル220及び第2内部シェル230のそれぞれはマルチレイヤ(multi-layer)で具現され得る。
【0076】
具体的には、第1内部シェル220は、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤを含み、ここで、aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たすことができる。
【0077】
すなわち、第1内部シェル220は、コア210を取り囲むZnSe化合物ベースの第1シェルレイヤと、第1シェルレイヤを取り囲むZnSe化合物ベースの第2シェルレイヤと、第2シェルレイヤを取り囲むZnSe化合物ベースの第3シェルレイヤとを含むことができる。
【0078】
また、第2内部シェル230は、ZnSe/ZnSeマルチレイヤを含み、ここで、gは0.1~0.5であり、hは0.005~0.020であり、iは0.5~2.0であり、jは0.1~0.5であり、kは0.0025~0.010であり、lは1.0~4.0であり、g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たすことができる。
【0079】
例えば、一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドットである場合に、gは、g=jの条件を満たし、一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドットである場合に、gは、g<jの条件を満たすことができる。
【0080】
図3は、一実施例に係る量子ドットのバンドギャップエネルギーダイヤグラムを説明するための図である。
【0081】
図3を参照すると、図3の(a)は、InP/ZnS構造ベースの量子ドットのバンドギャップエネルギーダイヤグラム(band-gap energy diagram)を示し、図3の(b)は、InP/ZnSeS/ZnS構造ベースの量子ドットのバンドギャップエネルギーダイヤグラムを示し、図3の(c)は、InP/ZnSe/ZnSeS/ZnS構造ベースの量子ドット(一実施例に係る量子ドット)のバンドギャップエネルギーダイヤグラムを示す。
【0082】
図3の(a)~(c)を参照すると、InP/ZnS構造ベースの量子ドット(Eg,InP core<Eg,ZnS shell)は、InPコア内の量子閉じ込め効果(quantum confinement effect)を介して量子井戸(quantum well)を形成し、これにより、InPコア(5.93A)とZnSシェル(5.42A)との間に格子定数の差によって約8.6%の格子不一致を誘発してしまい、広い半値幅特性及び不均一なシェルエピタキシャル成長特性を示すことを確認することができる。
【0083】
ZnSeS内部シェルを備えるInP/ZnSeS/ZnS構造ベースの量子ドットにおいても、約4.6%~8.6%の高い格子不一致を示すことを確認することができる。
【0084】
反面、一実施例に係る量子ドット(InP/ZnSe/ZnSeS/ZnS構造ベースの量子ドット)は、InPコアからZnS外部シェル側に行くほど化合物の濃度(及び組成比)が段階的に変化するZnSe(5.66A)/ZnSe1-x(5.66~5.42A、ここで、xは、正の実数)内部シェルを備えることによって、広い半値幅特性及び不均一なシェルエピタキシャル成長特性を改善することができる。
【0085】
具体的には、ZnSe(5.66A)/ZnSe1-x内部シェルは、InPコアのバンドギャップエネルギー(1.35eV)よりは大きく、ZnS外部シェル(3.6eV)のバンドギャップエネルギーよりは小さいエネルギーでバンド整列(band alignment)が可能であり、格子不一致を緩和(4.6%)させることで、広い半値幅特性及び不均一なシェルエピタキシャル成長特性を改善することができる。
【0086】
図4は、一実施例に係る量子ドットのバンドギャップエネルギー特性を説明するための図である。
【0087】
図4を参照すると、一実施例に係る量子ドットの格子定数(lattice constant)によるバンドギャップエネルギー特性(energy band-gap)は、下記表1のようにまとめることができる。
【0088】
【表1】
【0089】
図4及び表1によれば、既存の量子ドット(InP/ZnS構造ベースの量子ドット)は、InPコアとZnS外部シェルとの格子定数の差による格子定数の不一致を誘発したが、一実施例に係る量子ドット(InP/ZnSe/ZnSeS/ZnS構造ベースの量子ドット)は、InPコアとZnS外部シェルとの間にZnSe/ZnSeS内部シェルを挿入することで、格子定数の不一致を最小化することができる。
【0090】
例えば、ZnSe/ZnSeS内部シェルの第1内部シェル(ZnSe層)は、3個のレイヤ(layer)で形成され、第2内部シェル(ZnSeS層)は、2個のレイヤで形成されてもよく、各レイヤは、隣接するInPコア又はZnS外部シェルとの格子定数の不一致を最小化できるように、バンドギャップエンジニアリングが行われ得る。
【0091】
図5A乃至図5Eは、一実施例に係るレッド発光量子ドットの光学的特性を説明するための図である。
【0092】
図5A乃至図5Eを参照すると、参照符号510は、一実施例に係るレッド発光量子ドット(InP/ZnSe/ZnSeS/ZnS)の波長(wavelength)の変化による吸光度特性(absorption)を示し、参照符号520は、一実施例に係るレッド発光量子ドットの波長の変化による発光強度特性(PL intensity)を示す。
【0093】
参照符号530~550は、一実施例に係るレッド発光量子ドットのXRD(X ray diffraction)分析結果、SAED(selected area electron diffraction)イメージ、及びTEM(transmission electron microscopy)イメージをそれぞれ示す。
【0094】
例えば、一実施例に係るレッド発光量子ドットのInPコアは、In/Inマルチレイヤで形成され、レッド発光量子ドットの第1内部シェルは、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成され、第2内部シェルは、ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成されてもよい。
【0095】
参照符号510~550によれば、一実施例に係るレッド発光量子ドットは、高い結晶性((111)結晶、(220)結晶及び(311)結晶)を示し、約7.74±1.9nmの大きさで形成されることを確認することができる。
【0096】
また、一実施例に係るレッド発光量子ドット(RQD)の光学特性は、下記表2のようにまとめることができる。
【0097】
【表2】
【0098】
表2によれば、一実施例に係るレッド発光量子ドットは、既存のInP/ZnS構造ベースのレッド発光量子ドットと比較して、量子収率は約45%増加し、半値幅は約25nm減少したことを確認(光学的特性の向上を確認)することができる。
【0099】
図6A乃至図6Eは、一実施例に係るグリーン発光量子ドットの光学的特性を説明するための図である。
【0100】
図6A乃至図6Eを参照すると、参照符号610は、一実施例に係るグリーン発光量子ドット(InP/ZnSe/ZnSeS/ZnS)の波長(wavelength)の変化による吸光度特性(absorption)を示し、参照符号620は、一実施例に係るグリーン発光量子ドットの波長の変化による発光強度特性(PL intensity)を示す。
【0101】
参照符号630~650は、一実施例に係るグリーン発光量子ドットのXRD(X ray diffraction)分析結果、SAED(selected area electron diffraction)イメージ、及びTEM(transmission electron microscopy)イメージをそれぞれ示す。
【0102】
例えば、一実施例に係るグリーン発光量子ドットの第1内部シェルは、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成され、第2内部シェルは、ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成されてもよい。
【0103】
参照符号610~650によれば、一実施例に係るグリーン発光量子ドットは、高い結晶性((111)結晶、(220)結晶及び(311)結晶)を示し、約4.7±1.1nmの大きさで形成されることを確認することができる。
【0104】
また、一実施例に係るグリーン発光量子ドット(GQD)の光学特性は、下記表3のようにまとめることができkる。
【0105】
【表3】
【0106】
表3によれば、一実施例に係るグリーン発光量子ドットは、既存のInP/ZnS構造ベースのグリーン発光量子ドットと比較して、量子収率は約42%増加し、半値幅は約14nm減少したことを確認(光学的特性の向上を確認)することができる。
【0107】
図7は、一実施例に係る量子ドットの製造方法を説明するための図である。
【0108】
言い換えると、図7は、図1乃至図6を通じて説明した一実施例に係る量子ドットの製造方法を説明するための図であって、以下で図7を通じて説明する内容において、図1乃至図6を通じて説明した内容と重複する説明は省略する。
【0109】
図7を参照すると、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、コア(core)を形成することができる。
【0110】
好ましくは、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法を通じて形成されるコアは、InP化合物を含むことができる。
【0111】
また、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、内部コア(inter-core)を形成し、形成された内部コアを取り囲む外部コア(outer-core)を形成することもできる。
【0112】
例えば、内部コアはIn化合物を含み、外部コアはIn化合物を含むことができ、ここで、mは0.30~0.04であり、nは0.25~0.35であり、oは0.15~0.20であり、pは0.125~0.175であり、m~pは、m>o、n>pの条件を満たすことができる。
【0113】
より具体的な例を挙げると、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、インジウムアセテート(indium acetate)0.3mmol、10mLの1-オクタデセン(1-octadecene、ODE)及び0.9mmolのパルミチン酸(palmitic acid、PA)を、三つ口フラスコ(3-neck flask)に入れ、真空下で150℃で加熱することができ、1時間後、反応器内の雰囲気を窒素(N)に切り替えることができる。
【0114】
次に、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃に加熱した後、トリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine、TMS3P)0.15mmolの溶液を迅速に注入し、反応させて内部コアを形成することができる。
【0115】
次に、ステップ710において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、別途の反応器を介して、インジウムアセテート(indium acetate)0.2mmol、5mLの1-オクタデセン(1-octadecene、ODE)、0.6mmolのパルミチン酸(Palmitic acid、PA)及びトリス(トリメチルシリル)ホスフィン(tris(trimethylsilyl)phosphine、TMS3P)0.1mmolの外部コア混合物溶液を内部コア反応器にゆっくりと滴下して、外部コアを形成することができる。
【0116】
ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、コアを取り囲む内部シェル(inter-shell)を形成することができる。
【0117】
具体的には、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、マルチレイヤ(multi-layer)を有する第1内部シェル及び第2内部シェルを形成することができ、好ましくは、第1内部シェルはZnSe化合物を含み、第2内部シェルはZnSeS化合物を含むことができる。
【0118】
より具体的な例を挙げると、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、亜鉛ステアレート(Zinc stearate)3mmolを10mLの1-オクタデセン混合溶液に速やかに注入して、330℃で30分間反応させることができる。
【0119】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、Se-TOP1.6M濃度0.5mlを注入して330℃で、30分間反応させ、連続的にSe-TOP1.6M濃度0.06ml、S-TOP2M濃度2mlを注入して120分間反応させて、第1内部シェル(ZnS)/第2内部シェル(ZnSeS)を形成することができる。
【0120】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、反応終了後、常温に迅速に冷やした量子ドット溶液にエタノールを入れて沈殿を形成し、これを遠心分離によって分離して、ヘキサンまたはトルエンに再分散させることができる。
【0121】
一方、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法を通じて形成される内部シェルは、コアから外部シェル側に行くほど、化合物の濃度が段階的に変化することができる。
【0122】
具体的には、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、コアの成長後、第1内部シェル及び第2内部シェルの高い結晶性及び均一なシェル成長のために、高温での成長プロセスを必要とする。しかし、このような高温での成長プロセスは、コアと内部シェルとの間、第1内部シェルと第2内部シェルとの間の高いTEC不一致(thermal expansion coefficient mismatch)を誘発して、界面(interface)の結晶欠陥を誘発することがある。
【0123】
そこで、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、グレーデッド昇温成長プロセス(graded heating-up growth process)を適用して成長温度を段階的に変化させることによって、TEC不一致を最小化して内部シェルを成長させることができ、これを通じて、結晶欠陥を最小化して高い光学的特性を実現することができる。
【0124】
また、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、SILAR(successive ironic layer adsorption and reaction)合成法を用いて、コア上に内部シェルを成長させることができる。
【0125】
具体的には、一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドットである場合に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、120℃~330℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1内部シェルを形成し、260℃~320℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1内部シェルを取り囲む第2内部シェルを形成することができる。
【0126】
例えば、第1内部シェルは、ZnSe化合物を含む第1シェルレイヤと、ZnSe化合物を含む第2シェルレイヤと、ZnSe化合物を含む第3シェルレイヤとを備えることができ、ここで、aは0.3~0.6であり、bは0.2~0.3であり、cは0.36~0.72であり、dは0.16~0.24であり、eは0.39~0.78であり、fは0.14~0.21であり、a~fは、a<c<e、及びb>d>fの条件を満たすことができる。
【0127】
また、第2内部シェルは、ZnSe化合物を含む第4シェルレイヤと、ZnSe化合物を含む第5シェルレイヤとを含むことができ、ここで、gは0.1~0.5であり、hは0.005~0.020であり、iは0.5~2.0であり、jは0.1~0.5であり、kは0.0025~0.010であり、lは1.0~4.0であり、g~lは、g≦j、h>k、及びi<lの条件を満たすことができる。
【0128】
より具体的には、一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドットである場合に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、120℃~210℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1シェルレイヤを形成することができる。
【0129】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、240℃~270℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1シェルレイヤを取り囲む第2シェルレイヤを形成することができる。
【0130】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、300℃~330℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第2シェルレイヤを取り囲む第3シェルレイヤを形成することができる。
【0131】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、260℃~300℃の温度範囲内で第3シェルレイヤを取り囲む第4シェルレイヤを形成することができる。
【0132】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃の成長温度で第4シェルレイヤを取り囲む第5シェルレイヤを形成することができる。
【0133】
一方、一実施例に係る量子ドットがグリーン発光量子ドットである場合に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、200℃~300℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1内部シェルを形成し、260℃~320℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1内部シェルを取り囲む第2内部シェルを形成することもできる。
【0134】
より具体的には、一実施例に係る量子ドットがグリーン発光量子ドットである場合に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、200℃~220℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、コアを取り囲む第1シェルレイヤを形成することができる。
【0135】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、240℃~260℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第1シェルレイヤを取り囲む第2シェルレイヤを形成することができる。
【0136】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、280℃~300℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第2シェルレイヤを取り囲む第3シェルレイヤを形成することができる。
【0137】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、260℃~300℃の温度範囲内で成長温度を段階的に増加させながら、第3シェルレイヤを取り囲む第4シェルレイヤを形成することができる。
【0138】
次に、ステップ720において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃の成長温度で第4シェルレイヤを取り囲む第5シェルレイヤを形成することができる。
【0139】
一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドット又はグリーン発光量子ドットである場合のグレーデッド昇温成長プロセスは、以降、図8乃至図9を通じてより具体的に説明する。
【0140】
ステップ730において一実施例に係る量子ドットの製造方法は、内部シェルを取り囲む外部シェル(outer-shell)を形成することができる。好ましくは、外部シェルはZnS化合物を含むことができる。
【0141】
図8は、一実施例に係るレッド発光量子ドットの製造方法についての例示を説明するための図である。
【0142】
図8を参照すると、参照符号800は、一実施例に係る量子ドットがレッド発光量子ドットである場合に、グレーデッド昇温成長プロセス(graded heating-up growth process)を用いた量子ドットの製造方法を示す。
【0143】
参照符号800によれば、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、InPコアと、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成される第1内部シェルと、ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成される第2内部シェルと、ZnS外部シェルとを含むことができる。
【0144】
また、第1内部シェルのZnSeレイヤ、ZnSeレイヤ及びZnSeレイヤのそれぞれは、第1~第3シェルレイヤであり、第2内部シェルのZnSeレイヤ及びZnSeレイヤのそれぞれは、第4~第5シェルレイヤであり得る。
【0145】
具体的には、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃の成長温度(growth temp.)でInPコアを形成することができる。
【0146】
例えば、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、InPコアを形成した後に、形成されたInPコアに対する精製(purification)過程を行うことができる。
【0147】
すなわち、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、InPコアを形成した後に、遠心分離機(centrifuge)を用いた精製過程を行うことで、コアの形成過程で発生した副産物(side product)を除去することができる。
【0148】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、150℃の成長温度でZn前駆体を注入し、210℃の成長温度でSe前駆体を注入して、第1シェルレイヤを形成することができ、第1シェルレイヤの形成過程において、Se前駆体を注入する前に、120℃の成長温度でInP化合物を注入することもできる。
【0149】
すなわち、InP化合物は有機溶媒に分散しているので、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、有機溶媒の沸点(110℃)以上の温度(120℃)でInP化合物を注入して、有機溶媒を気化させることができる。
【0150】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、240℃の成長温度でZn前駆体を注入し、270℃の成長温度でSe前駆体を注入して、第2シェルレイヤを形成することができる。
【0151】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、300℃の成長温度でZn前駆体を注入し、330℃の成長温度でSe前駆体を注入して、第3シェルレイヤを形成することができる。
【0152】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、260℃の成長温度でZn前駆体を注入し、300℃の成長温度でSe前駆体及びS前駆体を注入して、第4シェルレイヤを形成することができる。
【0153】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃の成長温度でZn前駆体、Se前駆体及びS前駆体を注入して、第5シェルレイヤを形成することができる。
【0154】
一方、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、内部シェル(第1~第5シェルレイヤ)を形成した後、230℃の成長温度でZnS外部シェルを形成することができる。
【0155】
図9は、一実施例に係るグリーン発光量子ドットの製造方法についての例示を説明するための図である。
【0156】
図9を参照すると、参照符号900は、一実施例に係る量子ドットがグリーン発光量子ドットである場合に、グレーデッド昇温成長プロセス(graded heating-up growth process)を用いた量子ドットの製造方法を示す。
【0157】
参照符号900によれば、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、InPコアと、ZnSe/ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成される第1内部シェルと、ZnSe/ZnSeマルチレイヤで形成される第2内部シェルと、ZnS外部シェルとを含むことができる。
【0158】
また、第1内部シェルのZnSeレイヤ、ZnSeレイヤ及びZnSeレイヤのそれぞれは、第1~第3シェルレイヤであり、第2内部シェルのZnSeレイヤ及びZnSeレイヤのそれぞれは、第4~第5シェルレイヤであり得る。
【0159】
具体的には、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、180℃の成長温度(growth temp.)でInPコアを形成することができる。
【0160】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、200℃の成長温度でSe前駆体を注入し、220℃の成長温度でZn前駆体を注入して、第1シェルレイヤを形成することができる。
【0161】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、240℃の成長温度でSe前駆体を注入し、260℃の成長温度でZn前駆体を注入して、第2シェルレイヤを形成することができる。
【0162】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、280℃の成長温度でSe前駆体を注入し、300℃の成長温度でZn前駆体を注入して、第3シェルレイヤを形成することができる。
【0163】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、260℃の成長温度でSe前駆体及びS前駆体を注入し、300℃の成長温度でZn前駆体を注入して、第4シェルレイヤを形成することができる。
【0164】
次に、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、320℃の成長温度でZn前駆体、Se前駆体及びS前駆体を注入して、第5シェルレイヤを形成することができる。
【0165】
一方、一実施例に係る量子ドットの製造方法は、内部シェル(第1~第5シェルレイヤ)を形成した後、230℃の成長温度でZnS外部シェルを形成することができる。
【0166】
結局、本発明を用いれば、グレーデッド構造ベースの内部シェルをコアと外部シェルとの間に形成することで、格子不一致を最小化し、量子閉じ込め効果を極大化することができる。
【0167】
また、グレーデッド昇温成長プロセスを介して内部シェルを形成することで、熱膨張係数(TEC)の不一致を最小化して光学的特性を向上させることができる。
【0168】
以上のように、実施例が、たとえ限定された図面によって説明されたが、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、前記の記載から様々な修正及び変形が可能である。例えば、説明された技術が説明された方法と異なる順序で行われたり、及び/又は説明されたシステム、構造、装置、回路などの構成要素が説明された方法と異なる形態で結合又は組み合わせられたり、他の構成要素又は均等物によって代替又は置換されたりしても適切な結果が達成され得る。
【0169】
したがって、他の具現、他の実施例及び特許請求の範囲と均等なものも、後述する特許請求の範囲の範囲に属する。
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図6A
図6B
図6C
図6D
図6E
図7
図8
図9