(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-06-12
(45)【発行日】2023-06-20
(54)【発明の名称】レーザ加工装置およびレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/04 20140101AFI20230613BHJP
B23K 26/082 20140101ALI20230613BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20230613BHJP
【FI】
B23K26/04
B23K26/082
G02B26/10 104Z
(21)【出願番号】P 2018183123
(22)【出願日】2018-09-28
【審査請求日】2021-03-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000233332
【氏名又は名称】ビアメカニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 勇輝
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/038606(WO,A1)
【文献】特開2017-013092(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0078013(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00 - 26/70
G02B 26/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
位置情報に基づいてガルバノスキャナによりレーザ発振器から出射されたレーザパルスを集光レンズを介して被加工物に走査して当該被加工物を穴あけ加工するようにしたレーザ加工装置において、
前記被加工物を穴あけ加工する前に前記位置情報で示される位置毎に当該被加工物の表面の厚み方向から見た高さを検出するセンサを設け、前記ガルバノスキャナがレーザパルスを走査する際の走査位置は、前記センサが検出した検出値に基づいて求めた数値で前記位置情報で示される位置を補正したものであり、
前記位置情報で示される位置は、穴あけ位置であることを特徴とするレーザ加工装置。
【請求項2】
位置情報に基づいてガルバノスキャナによりレーザ発振器から出射されたレーザパルスを集光レンズを介して被加工物に走査することにより被加工物を穴あけ加工するようにしたレーザ加工方法において、
前記被加工物を穴あけ加工する前に前記位置情報で示される位置毎に当該被加工物の表面の厚み方向から見た高さを
センサを用いて検出しておき、前記ガルバノスキャナがレーザパルスを走査する際の走査位置は、当該走査位置において前記センサで検出した検出値に基づいて求めた数値で前記位置情報で示される位置を補正したものであり、
前記位置情報で示される位置は、穴あけ位置であることを特徴とするレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板にレーザを使用して穴あけ加工等を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント基板にレーザを使用して穴あけ加工等を行うレーザ加工装置においては、
レーザ発振器から出射されたレーザパルスをガルバノスキャナにより2次元方向へ偏向し、集光レンズ(Fθレンズ)を介してテーブルに載置されたプリント基板に照射するようになっている。
この場合、例えば、特許文献1に開示されているように、プリント基板の厚みを一様と見做し、測定したテーブルの高さに基づいて計算した位置にプリント基板の表面があるとし、その高さを基準にしてレーザ照射系のZ軸方向(プリント基板の厚み方向)の位置を調整するようにしている。
【0003】
図4はワークとなるプリント基板の断面図である。
図4において、1はプリント基板、2はレーザ照射系に備えられる集光レンズ(Fθレンズ)を介してプリント基板1に照射されるレーザパルスである。
図4では誇張して図示しているが、プリント基板1の表面には詳細に見れば凹凸がある。基準とする高さと異なる箇所においては、集光レンズの特性に起因するテレセントリック誤差が生じる。
例えば
図4の場合、高さH0を基準となるように装置を設定すれば、基準より低い高さのB点ではLbだけ左側にずれたB’点に、基準より高い高さのC点ではLcだけ右側にずれたC’点に穴等の加工が行なわれる。
【0004】
プリント基板の高密度化が増々進んでいる最近では、このような表面の凹凸に起因するテレセントリック誤差に基づく加工の位置ずれが無視できなくなっている。
レーザ加工における位置ずれを補正する方式として、例えば、特許文献2に開示されているように、テスト用基板に加工を行い、ここで測定した位置ずれに基づき補正するものが知られている。
しかしながら、この方式においては、ワークとなるプリント基板そのものの表面の凹凸に起因する位置ずれを補正するものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4272667号公報
【文献】特開平10-301052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、レーザ加工において、テレセントリック誤差に基づく加工の位置ずれを抑えることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工装置は、位置情報に基づいてガルバノスキャナによりレーザ発振器から出射されたレーザパルスを集光レンズを介して被加工物に走査して当該被加工物を加工するようにしたレーザ加工装置において、前記被加工物を加工する前に前記位置情報で示される位置毎に当該被加工物の表面の厚み方向から見た高さを検出するセンサを設け、前記ガルバノスキャナがレーザパルスを走査する際の走査位置は前記センサが検出した検出値に基づいて求めた数値で前記位置情報を補正したものであることを特徴とする。
【0008】
また、本願において開示される発明のうち、代表的なレーザ加工方法は、位置情報に基づいてガルバノスキャナによりレーザ発振器から出射されたレーザパルスを集光レンズを介して被加工物に走査することにより被加工物を加工するようにしたレーザ加工方法において、前記被加工物を加工する前に前記位置情報で示される位置毎に当該被加工物の表面の厚み方向から見た高さを検出しておき、前記ガルバノスキャナがレーザパルスを走査する際の走査位置は当該走査位置において前記センサで検出した検出値に基づいて求めた数値で前記位置情報を補正したものであることを特徴とする。
【0009】
なお、本願において開示される発明の代表的な特徴は以上の通りであるが、ここで説明していない特徴については、後述する発明を実施するための形態において説明しており、また特許請求の範囲にも示した通りである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、レーザ加工において、テレセントリック誤差に基づく加工の位置ずれを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。
【
図3】
図1における変位テーブルの内容を示す図である。
【
図5】ワークとなるプリント基板の表面における一つの区画内を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図を用いて説明する。
【実施例】
【0013】
以下、本発明の一実施例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例となるレーザ加工装置のブロック図である。各構成要素や接続線は、主に実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、レーザ加工装置として必要な全てを示している訳ではない。
このレーザ加工装置では、加工テーブル12に載置されたプリント基板1とレーザ照射系13とを相対移動させることにより、プリント基板1の所定の位置にレーザ照射系13からレーザパルスを照射させ、穴あけ加工を行うようになっている。
【0014】
レーザ照射系13の内部には、レーザ発振器から出射されたレーザパルスを集光レンズ14を介してプリント基板1に走査するガルバノスキャナ15が設けられている。またレーザ照射系13には、プリント基板1の表面の凹凸を検出する変位センサ16が搭載されている。この変位センサ16は、プリント基板1のZ軸方向(プリント基板の厚み方向)から見て任意位置の表面の高さを検出するとともに特定高さを基準にしての変位量を検出し、それを出力するようになっている。
変位センサ16は、例えば
図4の場合、A点の高さH0を基準とすれば、B’点では変位量は-Bh、C’点では変位量は+Chと検出する。
【0015】
17は装置全体の動作を制御する全体制御部で、例えばプログラム制御の処理装置によって実現され、その中の各構成要素や接続線は、論理的なものも含むものとする。また各構成要素の一部は全体制御部17と別個に設けられていてもよい。また、各構成要素や各構成要素間を接続する線は、主に本実施例を説明するために必要と考えられるものを示してあり、ここで説明するもの以外の構成要素や制御機能を有しているものする。
全体制御部17には、与えられた位置情報に従ってガルバノスキャナ15の位置決め動作を制御するガルバノスキャナ制御部18、穴あけ位置毎に1エントリとして情報を登録する変位テーブル19、加工プログラムを格納するためのプログラム記憶部20がそれぞれ設けられている。
【0016】
このレーザ加工装置では、穴あけ加工を行うに先立って全体制御部17の制御の下で以下のように動作する。
図2はレーザ加工のワークとなるプリント基板の平面図であるが、このプリント基板1の各穴あけ位置3の位置情報は、プログラム記憶部20に格納された加工プログラムの中に組込まれている。この位置情報に基づきプリント基板1をレーザ照射系13に対して相対移動させ、変位センサ16を各穴あけ位置3の上面位置に位置合わせし、変位センサ16にその変位量を検出させ、変位テーブル19に登録する。
【0017】
次に、上記にようにして全ての穴あけ位置3の変位量を変位テーブル19に登録した後、それぞれの位置での変位量を読出し、それぞれの変位量に対してガルバノスキャナ15の位置決めをどれほど補正すればよいかを示す補正値を所定の計算式により求め、変位テーブル19に登録する。
なお、変位量から補正値を算出する計算式は、実験等により求められたものでもよい。
【0018】
図3に変位テーブル19の内容を示すが、a1、a2、a3・・・は穴あけ位置3を示す位置情報、h1、h2、h3・・・はそれぞれの位置での変位量、k1、k2、k3・・・はそれぞれの位置での補正値である。
なお、ここでの変位テーブル19はデータ相互の論理的関係を説明するためのものであり、各種のデータが必ずしも図示の通りに登録されている必要はない。要は、穴あけ位置a1、a2、a3・・・のそれぞれの補正値k1、k2、k3・・・が上記した論理的関係で得られるようになっていればよい。
【0019】
例えば
図4の場合、高さH0を基準となるように装置を設定すれば、穴あけ位置が高さH0であれば補正は不要で補正値はゼロ、変位量が-BhであるB’点のための補正値としてはLbだけ右側に補正する値、変位量が+ChであるC’点のための補正値としてはLcだけ左側に補正する値となる。
【0020】
このレーザ加工装置においては、上記にようにして全ての穴あけ位置3の補正値を求めたプリント基板1に穴あけ加工を行う場合、全体制御部17の制御の下で以下のように動作する。
すなわち、一つの穴あけ位置3に穴をあける場合、加工プログラムから与えられる穴の位置情報に基づいて変位テーブル19から該当する補正値を読出して位置情報を補正しガルバノスキャナ制御部18に与える。ガルバノスキャナ制御部18はこの補正された位置情報に基づきガルバノスキャナ15の位置決め動作を制御する。他の穴あけ位置3についても同様に動作する。
【0021】
以上の実施例によれば、ワークとなるプリント基板1そのものの穴あけ位置3の変位量に基づいて加工位置が補正されるので、テレセントリック誤差に基づく加工の位置ずれを防ぐことができる。
【0022】
なお、以上の実施例においては、変位センサ16は全ての穴あけ位置3の変位量を検出するようにした。プリント基板1の表面の凹凸が緩やかな変化の場合には、例えば、以下のようにすることができる。
すなわち、プリント基板1の表面を格子状に区分けした複数の区画に分け、穴あけ加工を行うに先立って各区画内の特定位置での変位量を求め、当該変位量と補正値を変位テーブル19に登録しておく。
【0023】
前記各区画内の特定位置での変位量としては、例えば
図5に示すように、各区画31内での中央位置P0の一箇所の変位量とするとか、対角線上であって中央部にある四辺形32の各頂点P1~4での変位量の平均値とするとか、各区画31内での適当な複数箇所での変位量の平均値とする。
【0024】
プリント基板1に穴あけ加工を行う場合、穴の位置情報に基づいて、穴あけ位置3が属する区画の補正値を変位テーブル19から読出し、位置情報を補正する。
以上のようにすれば、変位テーブル19に登録するエントリは区画の数だけとなり、全ての穴あけ位置分を登録する場合よりもエントリ数を少なくすることができる。
なお、プリント基板1の表面を複数の領域に分割し、一つの領域の加工が終わる毎にプリント基板1とレーザ照射系13との相対移動を行い、隣の領域の加工に移る方式の場合、一つの領域を前記区画と一致させるようにしてもよい。
【0025】
また、以上の実施例においては、一つの穴あけ位置3に穴をあける毎に変位テーブル19から補正値を読み出している。
しかしながら、そもそもプログラム記憶部20に格納された加工プログラムの中に組込まれている位置情報を補正値で補正し、加工プログラムから位置情報がガルバノスキャナ制御部18に与えられる段階ですでに補正されているようにしてもよい。
【0026】
以上、実施例に基づき本発明を具体的に説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもなく、様々な変形例が含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1:プリント基板、2:レーザパルス、3:穴あけ位置、12:加工テーブル、
13:レーザ照射系、14:集光レンズ、15:ガルバノスキャナ、
16:変位センサ、17:全体制御部、18:ガルバノスキャナ制御部、
19:変位テーブル、20:プログラム記憶部、31:区画